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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006372
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】浄水装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/50 20060101AFI20220105BHJP
   C02F 3/32 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C02F1/50 531R
C02F3/32
C02F1/50 510A
C02F1/50 520B
C02F1/50 540A
C02F1/50 550C
C02F1/50 560H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020108548
(22)【出願日】2020-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】507241779
【氏名又は名称】株式会社ウイルステージ
(74)【代理人】
【識別番号】100158768
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 達也
(72)【発明者】
【氏名】大谷 洋
【テーマコード(参考)】
4D040
【Fターム(参考)】
4D040DD03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】できるだけ簡素な構成でありながら、良質な水質が得られる浄水装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る浄水装置は、エアレーション手段と、上記エアレーション手段により空気が供給されるオゾン発生手段と、上記オゾン発生手段によりオゾンが供給される浄化槽と、上記浄化槽に枯草菌(Bacillus subtilis)種に属するバクテリアを供給する枯草菌供給手段とを備えている。枯草菌種に属するバクテリアは納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を浄化する浄水装置であって、
エアレーション手段と、
上記エアレーション手段により供給される空気に含まれる酸素をオゾン化するオゾン発生手段と、
上記オゾン発生手段によりオゾン処理された被処理水に枯草菌(Bacillus subtilis)種に属するバクテリアを供給する枯草菌供給手段と、
を備えた
ことを特徴とする浄水装置。
【請求項2】
上記枯草菌種に属するバクテリアは納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)である
ことを特徴とする請求項1に記載の浄水装置。
【請求項3】
上記オゾン発生手段は、間欠的にオゾン発生を行う
ことを特徴とする請求項1または2に記載の浄水装置。
【請求項4】
上記枯草菌種に属するバクテリアが沈殿した後に、上澄みの浄化水を取り出し貯水する貯水槽をさらに設けた
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の浄水装置。
【請求項5】
上記被処理水を導入する経路に上記オゾン発生手段によりオゾンを発生させる
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の浄水装置。
【請求項6】
上記オゾン発生手段により発生したオゾンを100μm以下の微細気泡であるファインバブルとするファインバブル化手段をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の浄水装置。
【請求項7】
上記エアレーション手段及び上記オゾン発生手段が太陽光発電で駆動される
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の浄水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は簡易型の浄水装置に関するものである。特に、発展途上国等においては下水道や上水道等のインフラが無い場所も多く、そういった場所でも設置可能な浄水装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
2019年時点において、6億人以上もの人が安心して飲料水を確保できない生活をしていると、ユニセフは報告している。そういった発展途上国等の人々のために、できるだけ簡便に上水のインフラを提供することは、世界全体が共有すべき大きな課題である。
【0003】
NGO等が井戸を掘る機材を提供する支援を行っているが、安全な水を得るためには深い井戸を掘ることが必要であり、技術的、資金的に容易なことではない。
また、川や湖の水は汚れ、それを浄化するための浄水装置を導入することは、さらに困難なことと考えられている。
【0004】
例えば、先進国の上水道のための浄化システムにおいては、オゾン処理が広く用いられている。オゾンは強い酸化力を持ち、殺菌や有機物の分解だけではなく、脱臭効果も有している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開08-73202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、オゾン処理の後に、さらに有機物を除去するための生物活性炭処理が必要である。生物活性炭処理においては、活性炭の効果を維持するための逆洗等の複雑な機構が必要であり、さらに活性炭の交換等のメンテナンスも必要であるため、水道局のように十分な維持管理能力を持つ施設でしか使用できない。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、発展途上国等においても維持管理が容易な簡便な浄水装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る浄水装置は、被処理水を浄化する浄水装置であって、
エアレーション手段と、
上記エアレーション手段により供給される空気に含まれる酸素をオゾン化するオゾン発生手段と、
上記オゾン発生手段によりオゾン処理された非処理水に枯草菌(Bacillus subtilis)を供給する枯草菌供給手段と、
を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
そして、上記枯草菌種に属するバクテリアとしては納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)が最も好適である。
また、上記オゾン発生手段は、間欠的にオゾン発生を行うものが望ましい。
さらに、上記枯草菌が沈殿した後に、上澄みの浄化水を取り出し貯水する貯水槽をさらに設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
オゾン処理により、大腸菌や藻類、カビ等が殺菌され、安全な水質が得られることや、オゾンの脱臭効果により、異臭が抑制されることは良く知られている。本発明においては、このオゾンの優れた性質を活用し、簡易な構成でありながら、十分な浄化能力を示す浄水装置を提供することを目指した。
【0011】
そのために、オゾン処理とともに、枯草菌による生物的浄化を行った。
汚水に含まれる微生物や有機物と接触することで、オゾンは安全な酸素に変わる。そして、残存するオゾンも、投入された枯草菌と接触することで、ほぼすべてのオゾンが酸素に変わり、処理水はオゾンを含まない安全なものとなる。このように、活性炭等のオゾン除去手段を特に用いずとも、オゾンを完全に除去することができる。
【0012】
また、枯草菌はオゾンに対して一定の耐性を持つため、大腸菌等が殺菌されても、枯草菌の多くは生き残り、十分な有機物分解能力を維持することができる。オゾンが低分子化、親水性化した溶存有機物を枯草菌は無機化し、炭酸ガスとして空気中に放出させる。この際に、枯草菌は大量の溶存酸素を必要とするが、エアレーション手段により供給される酸素とともに、オゾンから変化した大量の酸素も活用することで、高効率の溶存有機物分解能力を発揮できる。
【0013】
このように、オゾン処理と枯草菌による処理の組み合わせは、相互に阻害することなく、むしろ、相互に補完し、且つ促進しあうという相乗効果を持つ組み合わせである。
【0014】
なお、枯草菌は空気中に存在する常在菌であり、一般細菌の中でも特に安全な菌種である。腸内活性を高めるためのサプリメントとしても使用されている。したがって、最終的な浄水に多少の枯草菌が混入したとしても、飲料水としての危険性は高くはない。もし、先進国並みの水質基準を満たしたいならば、煮沸、少量の塩素殺菌、紫外線照射、高分子フィルターろ過といった簡単な追加処理を行うことで、より安全な飲料水として使用することができる。
【0015】
生物活性炭処理と比較すると、枯草菌による処理は、導入コストが極めて廉価になり、また維持管理が容易になるという大きなメリットがある。また、枯草菌は極めて繁殖力が旺盛であり、季節や場所を問わず、繁殖を行うことは容易であるため、本発明の浄水装置は、いつでも、且つどこでも導入し維持管理ができるシステムである。
【0016】
枯草菌の中でも納豆菌は特に繁殖力が強く、さらに容易に繁殖させることができる。また、納豆菌はポリグルタミン酸を分泌するため、溶存有機物を分解、無機化するだけではなく、懸濁有機物を凝集し、沈殿分離を行うという優れた浄化能力も有している。
【0017】
また、オゾン発生手段を間欠駆動することで、高圧部を持つオゾン発生手段であても、長寿命化を図れる。それだけではなく、オゾン濃度が過度に高濃度化することを防ぐことで、枯草菌に対する酸化負荷が軽減され、枯草菌の働きを常に活発化できるというメリットも生じる。さらに、オゾン発生手段の消費電力を抑えられることも重要である。電力インフラが十分ではない地域であっても、太陽光発電等の自然エネルギーを用いた発電システムで駆動できる浄水システムを提供できる。
オゾン処理と枯草菌処理により浄化された水は、枯草菌が凝集させた懸濁有機物と一緒に沈殿したのちに上澄みを貯水槽に移すことで、容易にきれいな水を貯水できる。
【0018】
さらに、オゾンをファインバブル化することで、オゾンの溶解率が大幅に向上し、また、殺菌能力および有機物分解能力も向上する。一方で、ファインバブルの枯草菌への影響は限定的であるため、枯草菌の有機物分解能力は十分に発揮される。
【0019】
以上のように、本発明の浄水装置は、極めて簡素な構成でありながら、容易に安全な水を提供することができる。特に、システムが廉価で、維持管理が容易であるため、発展途上国のように、経済力や維持管理能力、電力等のインフラに制約がある地域でも導入が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態1の浄水装置の模式図である。
図2】本発明の浄水装置を用いた浄水処理の機能ブロック図である。
図3】本発明の実施の形態2の浄水装置の模式図である。
図4】本発明の実施の形態3の浄水装置の模式図である。
図5】本発明の実施の形態4の浄水装置に模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の浄水装置に関して、いくつかの良好な実施の形態を以下に図を用いて説明する。
なお、本発明は以下に示す実施の形態に限定されるものではなく、同様の発明概念を含むものである。
【0022】
実施の形態1.
<浄水装置の基本構成>
まず、図1を用いて浄水装置の基本構成について説明する。
本発明に係る浄水装置は、エアレーション手段2と、上記エアレーション手段2により供給される空気中の酸素をオゾン化するオゾン発生手段3と、上記オゾン発生手段によりオゾンが供給される浄化槽1と、上記浄化槽1に枯草菌を供給する枯草菌供給手段5とを備えている。
【0023】
浄化槽1はオゾンに対する耐性を有する素材からなり、ガラスやステンレス、あるいはオゾン耐性を有する樹脂等から形成されている。浄化槽1は、オゾンが外部に流出しないように密閉されたものが望ましい。被処理水にオゾンが効率良く溶解するためにも、密閉されたものが望ましい。
【0024】
ここで、エアレーション手段2は、例えばエアーポンプであり、空気を送出する装置である。
【0025】
オゾン発生手段3は、プラズマ放電、あるいは紫外線照射等によりオゾンを発生する。オゾン発生手段3は、連続運転しても良いが、本実施の形態では、間欠駆動手段3aにより所定時間だけ駆動する。間欠駆動手段3aは、例えばタイマー制御で、オゾン発生手段3に電力を間欠的に供給する。なお、エアレーション手段2は連続運転であり、オゾン発生手段3のON-OFF状態に拘わらず、常に駆動している。
オゾン発生手段3を間欠駆動するのは、浄化槽1内のオゾン濃度が過度に高濃度になるのを防ぎ、浄化槽1等の耐食を防止し、また、オゾン発生手段3が加熱等により劣化するのを防ぐためである。後述する枯草菌に過度な酸化負荷を掛けることを防ぐこともできる。
【0026】
枯草菌供給手段5は、例えば、培養した枯草菌を蓄えるタンクであり、バルブV2を所定時間開くことで、所望の量の枯草菌を浄化槽1に供給するものである。
ここで枯草菌とは、枯草菌(Bacillus subtilis)種に属するバクテリアである。枯草菌は安全な一般細菌である。オゾン酸化に対して一定の耐性を持ち、また、環境等に対応し活発に繁殖できる旺盛な増殖能力も有している好気性の有機物分解細菌である。
【0027】
枯草菌種のバクテリアとしては、納豆菌(Bacillus subtilis var. natto)が最も好適である。納豆菌はポリグルタミン酸を分泌するため、懸濁有機物(SS)を凝集させる効果が高い。したがって、SSを効率良く凝集沈殿させることができる。したがって、被処理水がSSを高濃度に含む場合には、特に納豆菌が有効である。SSを凝集して除去できるため、オゾンに対するSS負荷を低減し、オゾン発生量を少なく抑えることができる。
【0028】
<浄水装置の基本動作>
次に、図1とともに、、図2を用いて浄水装置の基本動作について説明する。
被処理水(汚水)は、河川や湖等からポンプ等の汲み上げ手段によって汲み上げられ、バルブV1を開くことで浄化槽1内へと導かれる。
【0029】
まず、オゾン処理について述べる。
浄化槽1に導かれた被処理水は、オゾンにより処理される。オゾンは、エアレーション手段2によって供給された空気に含まれる酸素をオゾン発生手段3がオゾン化することで発生し、散気管4等により浄化槽1の被処理水中に導入される。
【0030】
前述のように、エアレーション手段2は連続運転であるが、オゾン発生手段3は間欠運転が望ましい。したがって、オゾン発生手段3が駆動中は、散気管4よりオゾンが発生し、オゾン発生手段3が停止中は、散気管3bより空気が発生する。
オゾン発生手段3の間欠駆動間隔であるが、例えば、10分駆動し、10分停止するといった時間間隔である。
【0031】
オゾン発生手段3により発生したオゾンは被処理水に溶解し、被処理水に含まれるウイルス、バクテリアや藻類、真菌類等の微細生物を酸化し殺菌する。また、被処理水に含まれる有機物を酸化により低分子量化、親水化し、溶存有機物にする。ウイルスや微細生物、あるいはその他の有機物を酸化した後、オゾンは酸素になる。
【0032】
次に、枯草菌よる生物的処理について述べる。
枯草菌供給手段5により、浄化槽1に所定量の枯草菌を供給する。
枯草菌はオゾンに対して一定の耐性を持つため、大腸菌等の微細生物が殺菌されても、枯草菌の多くは生き残り、十分な有機物分解能力を維持することができる。
浄化槽1には、オゾンから変化した大量の酸素があり、また、オゾン発生手段3を停止しても、エアレーション手段2は散気管3bを介して空気を浄化槽に供給するので、十分な酸素がある。好気性細菌である枯草菌は、これらの酸素を使って溶存有機物を二酸化炭素と水に分解する。
【0033】
また、オゾン発生手段3により発生したオゾンの大部分は、被処理水に含まれる微細生物や有機物を酸化することで酸素に変わるが、残存したオゾンも投入した枯草菌とのコンタクトによりほぼすべてのオゾンが酸素に変わり、有害なオゾンは浄化後の水にはほとんど含まれない。
【0034】
以上のように、被処理水の処理としては、オゾン処理の後に、枯草菌による生物的処理が行われる。ただし、枯草菌はオゾンに対して一定の耐性を持つので、枯草菌の投入タイミングは、オゾン発生のタイミングより前であっても良い。投入した枯草菌は1日から数日に渡り、有機物分解能力を維持するため、枯草菌の投入は1日あるいは数日に一回でも良い。あるいは、少量の枯草菌を連続的に浄化槽に流し続けても良い。
【0035】
河川や湖等の水系から汲み上げられた被処理水(汚水)は、汚水導入管4により連続的に浄化槽1に供給しても良いし、一定量を供給し、その一定量を浄化した後に、次の一定量を浄化槽1に供給してやっても良い。
【0036】
被処理水(汚水)を連続的に浄化槽1に供給する場合、バルブV1を常時開いておく。被処理水は、浄化槽1において、オゾン処理と枯草菌による生物的処理により浄化され、浄化槽1から溢れた浄化済水が、浄化済み水排水管6により貯水槽7に導かれ、貯水される。
【0037】
一方、被処理水(汚水)を一定量ずつ浄化する場合には、浄化槽1内に所定量の被処理水が溜まった時点でバルブV1を閉じる。そして、オゾン処理と枯草菌による生物的処理を行った後に、浄化済み水を貯水槽7に移す。例えば、枯草菌を投入後、数時間で枯草菌は浄化槽1の底に大部分は沈むので、その後にバルブV3を開けて、上澄み水を浄化済み水排水管6aから貯水槽7に移すと、枯草菌がほとんど混入しない水が貯水槽7に貯水できる。ただし、枯草菌は安全な一般細菌であるため、少量の枯草菌の混入はそれほど問題にならない場合が多い。
【0038】
なお、浄化槽1の底部に沈殿した枯草菌は、バルブV4を開けて取り出すことができる。例えば、1日、あるいは数日に1回程度、この操作を行う。
【0039】
なお、さらに安全な水にするためには、少量の塩素で殺菌したり、紫外線を照射したり、あるいは煮沸しても良い。
【0040】
<効果検証実験>
以下においては、効果を検証するために行った実験結果(実施例)について述べる。
(実施例1)
生活排水が蓄積した池から採取した水を浄化槽1に4m3貯め、浄化を行った。浄化前の水は臭気があり、また主な水質は以下の通りであった。

COD(化学的酸素要求量):40mg/L
SS(懸濁有機物):47mg/L
大腸菌群数:11000/L
【0041】
この水に対して、まずオゾン処理を行った。エアレーションはエアーポンプを用い、空気の量は40L/分であった。オゾン発生手段はプラズマ放電管を用い、オゾン発生量は0.4g/分であり、10分間オゾンを発生させ、10分間休止するという20分サイクルで、1時間半を掛けて、20gのオゾンを発生させた。
なお、エアーポンプとオゾン発生手段の消費電力は合わせて450Wであり、太陽電池パネルを用いて、これらを駆動した。
【0042】
その後、枯草菌を浄化槽に投入した。枯草菌は広葉樹の枯葉から採取し培養したものである。枯草菌投入後、12時間経過し、枯草菌が浄化槽の底部に沈殿したことを確認後に、上澄み水3m3を貯水槽に移した。
【0043】
貯水槽に移した水の水質は以下の通りであった。

COD(化学的酸素要求量):3mg/L
SS(懸濁有機物):8mg/L
大腸菌群数:検出されず
残留オゾン:検出されず
【0044】
以上のように、COD、SSは大幅に減少し、大腸菌は検出されなかった。また、臭気もほとんどなく、顕著な水質改善効果を確認できた。
【0045】
(実施例2)
実施例1においては、広葉樹の枯葉から採取し培養した枯草菌を用いたが、本実施例においては、食用の市販の納豆から採取した納豆菌を培養して用いた。その他の条件は実施例1と同様である。
【0046】
貯水槽に移した水の水質は以下の通りであった。

COD(化学的酸素要求量):2mg/L
SS(懸濁有機物):2mg/L
大腸菌群数:検出されず
残留オゾン:検出されず
【0047】
実施例1に比べて、SSが大幅に減少した。これは、納豆菌が分泌するポリグルタミン酸が高いSS凝集効果を持ち、SSを効率良く沈殿させたためと考えられる。
【0048】
<その他の構成>
上述したように、図1の構成により良好な浄化性能を持つ浄水装置が得られた。ただし、浄水装置の構成は上記の構成に限らず、例えば、以下のような構成にしても良い。
【0049】
浄化槽1に被処理水を導入する前に、砂ろ過装置等の物理的フィルターを設けても良い。物理的フィルターを設けて、所定以上の大きさのSSを予め除去することで負荷が減少し、オゾン処理の時間を短くしたり、枯草菌の投入量を少なくしたりすることができる。
【0050】
また、浄化槽1内に、枯草菌が定着するろ材を設けても良い。ろ材を設けることで、有機物分解効果が増加し、また、枯草菌の繁殖効果も向上する。
【0051】
さらに、浄化槽1内に紫外線ランプを設けても良い。水に溶解したオゾンは中間過程で酸化能力が大きいOHラジカルを生じるが、紫外線を照射することでOHラジカルの生成が促進され、殺菌効果や有機物分解効果が向上する。
【0052】
<本実施の形態のまとめ>
地球上においては、清浄な水資源を使用できるインフラが整備されていない地域は数多くあり、そのような地域に迅速に設置できる簡易な浄水装置が望まれている。
本発明は、できるだけ簡素な構成でありながら、飲料水、あるいはそれに近い水質が得られる浄水装置を提供するものであり、オゾン処理と生物的処理を組み合わせたものである。
【0053】
オゾン処理により、大腸菌や藻類、カビ等が殺菌され、安全な水質が得られることや、オゾンの脱臭効果により、異臭が抑制されることは良く知られている。本発明においては、このオゾンの優れた性質を活用し、簡易な構成でありながら、十分な浄化能力を示す浄水装置を提供することを目指した。
【0054】
そのために、オゾン処理とともに、枯草菌による生物的浄化を行った。
汚水に含まれる微生物や有機物と接触することで、オゾンは安全な酸素に変わる。そして、残存するオゾンも、投入された枯草菌と接触することで、ほぼすべてのオゾンが酸素に変わり、処理水はオゾンを含まない安全なものとなる。このように、活性炭等のオゾン除去手段を特に用いずとも、オゾンを完全に除去することができる。
【0055】
また、枯草菌はオゾンに対して一定の耐性を持つため、大腸菌等が殺菌されても、枯草菌の多くは生き残り、十分な有機物分解能力を維持することができる。オゾンが低分子化、親水性化した溶存有機物を枯草菌は無機化し、炭酸ガスとして空気中に放出させる。この際に、枯草菌は大量の溶存酸素を必要とするが、エアレーション手段により供給される酸素とともに、オゾンから変化した大量の酸素も活用することで、高効率の溶存有機物分解能力を発揮できる。
【0056】
このように、オゾン処理と枯草菌による処理の組み合わせは、相互に阻害することなく、むしろ、相互に補完し、且つ促進しあうという相乗効果を持つ組み合わせである。
【0057】
なお、枯草菌は空気中に存在する常在菌であり、一般細菌の中でも特に安全な菌種である。腸内活性を高めるためのサプリメントとしても使用されている。したがって、最終的な浄水に多少の枯草菌が混入したとしても、飲料水としての危険性は高くはない。もし、先進国並みの水質基準を満たしたいならば、煮沸、少量の塩素殺菌、紫外線照射、高分子フィルターによる濾過といった簡単な追加処理を行うことで、より安全な飲料水として使用することができる。
【0058】
生物活性炭処理と比較すると、枯草菌による処理は、導入コストが極めて廉価になり、また維持管理が容易になるという大きなメリットがある。また、枯草菌は極めて繁殖力が旺盛であり、季節や場所を問わず、繁殖を行うことは容易であるため、本発明の浄水装置は、いつでも、且つどこでも導入し維持管理ができるシステムである。
【0059】
枯草菌の中でも納豆菌は特に繁殖力が強く、さらに容易に繁殖させることができる。また、納豆菌はポリグルタミン酸を分泌するため、溶存有機物を分解、無機化するだけではなく、懸濁有機物を凝集し、沈殿分離を行うという優れた浄化能力も有している。
【0060】
また、オゾン発生手段を間欠駆動することで、高圧部を持つオゾン発生手段であっても、長寿命化を図れる。それだけではなく、オゾン濃度が過度に高濃度化することを防ぐことで、枯草菌に対する酸化負荷が軽減され、枯草菌の働きを常に活発化できるというメリットも生じる。さらに、オゾン発生手段の消費電力を抑えられることも重要である。電力インフラが十分ではない地域であっても、太陽光発電等の自然エネルギーを用いた発電システムで駆動できる浄水システムを提供できる。
【0061】
オゾン処理と枯草菌処理により浄化された水は、枯草菌が沈殿したのちに上澄みを貯水槽に移すことで、容易にきれいな水を貯水できる。
【0062】
以上のように、本発明の浄水装置は、極めて簡素な構成でありながら、容易に安全な水を提供することができる。特に、システムが廉価で、維持管理が容易であるため、発展途上国のように、経済力や維持管理能力、電力等のインフラに制約がある地域でも導入が可能である。
【0063】
実施の形態2.
図3を用いて、本実施の形態の浄水装置について説明する。なお、図1に示した実施の形態1の浄水装置と同様の機能を示す構成要素については、同じ数字あるいは記号を付した。
【0064】
実施の形態1の浄水装置と異なる点は、オゾン発生手段3により発生したオゾンを浄化槽1に導く際の導入方法である。
実施の形態1においては、散気管3bを用いて、浄化槽1内の被処理水内にオゾンを導いた。
一方、本実施の形態の浄水装置においては、図3に示すように、汚水導入管40内にオゾンを導入する。
そして、汚水導入管40は浄化槽10内の底部近くまで伸びている。
【0065】
<本実施の形態のまとめ>
実施の形態1に示した浄水装置の優れた特長を持ち、且つ、オゾンの被処理水への溶解率を高めた浄水装置を図3に示した。
オゾンを汚水導入管40内に導入することで、オゾンと被処理水の接触時間、接触距離を長くすることができる。これによってオゾンの被処理水への溶解率を向上し、溶解したオゾンによる殺菌や有機物の分解を効果的に行うことができる。特に、汚水導入管40を浄化槽10内の底部近くまで伸ばすことで、この効果は顕著になる。
【0066】
実施の形態3.
図4を用いて、本実施の形態の浄水装置について説明する。なお、図1図2に示した実施の形態1の浄水装置と同様の機能を示す構成要素については、同じ数字あるいは記号を付した。
【0067】
実施の形態2の浄水装置と異なる点は、オゾン処理を行う槽と生物的処理を行う槽を分離したことである。
オゾンを導入した第一浄化槽10aにおいてオゾン処理された水は、中間配管9により第二浄化槽10bに導かれる。枯草菌は、枯草菌提供手段5により、第二浄化槽10bに投入され、この第二浄化槽10bで枯草菌による有機物の分解が行われる。
なお、第一浄化槽10aから第二浄化槽10bへ送水される被処理水中に酸素が含まれるが、さらに枯草菌の有機物分解能力を高めるために、第二浄化槽10bにエアレーション手段20と散気管20aにより空気を導入している。
【0068】
<本実施の形態のまとめ>
実施の形態1や2に示した浄水装置の優れた特長を持ち、且つ、枯草菌による有機物分解特性に優れた浄水装置を図4に示した。
オゾン処理を行う浄化槽と枯草菌による生物的処理を行う浄化槽を分けたことで、オゾンによる枯草菌への酸化負荷が大幅に減少し、枯草菌による有機物の分解能力が向上する。
【0069】
実施の形態4.
図5を用いて、本実施の形態の浄水装置について説明する。なお、図1図2に示した実施の形態1の浄水装置と同様の機能を示す構成要素については、同じ数字あるいは記号を付した。
【0070】
オゾン発生手段3により発生したオゾンをファインバブル化手段3dにより、ファインバブルを生成する。
「ファインバブル」とは、国際標準化機構 (ISO) で定義される微細気泡の固有の名称である(ISO 20480-1:2017)。当該規格においては、微細気泡の直径による性質の違いから、「ファインバブル」をさらに「マイクロバブル」と「ウルトラファインバブル」に分類している。「マイクロバブル」は1μm径から100μm径の大きさの微細気泡であり、「ウルトラファインバブル」は1μm径より小さい微細気泡である。
【0071】
ファインバブルを生成する方法は、どのような方法であっても良い。旋回液流式、加圧溶解式といった一般的な方法でも良いし、スタティックミキサー式や、混合蒸気直接接触凝縮式、超音波キャビテーション式、スパイラルキャビテーション式等の方法であっても良い。
【0072】
本実施の形態においては、低電力で駆動可能な微細孔式を用いた。微細孔を有するオゾン配管外壁に沿ってポンプPによって送水される液流を流す。この液流により微細孔を通して液中に注入されたオゾンをせん断してファインバブル化する。なお、液流は汚水導入管4からの被処理水をポンプ等で圧送しても良い。汚水導入管4からの被処理水には枯草菌が含まれていないため、微細孔を有するオゾン配管表面にバイオフィルムが形成されにくくなるというメリットがある。
【0073】
初期的に発生したファインバブルは、1μmから50μm径のマイクロバブルが主であった。このファインバブルの一部は浄化槽1内をゆっくりと上昇する。ファインバブル化により浮力が小さくなり、毎分1mmから10mm程度の低速で浮上する。したがって、被処理水との接触時間が長くなり、オゾンの溶解率が飛躍的に向上する。
【0074】
また、発生したファインバブルの他の一部は収縮し、1μm径以下のウルトラファインバブルを多数発生する。ウルトラファインバブルの浮力はさらに小さくなり、一方でブラウン運動(熱振動する周りの水分子がランダムに衝突することによって生じる統計的揺らぎに基づく運動)の影響が相対的に大きくなるため、ウルトラファインバブルは浄化槽1内をランダムに動き回る。これにより、被処理水との接触時間はさらに長くなり、被処理水中のオゾン濃度は高濃度になる。さらに、ウルトラファインバブルは負に帯電しているため、正に帯電している有機物を吸着する。そして、ウルトラファインバブルが崩壊する際には微小ではあるが非常に強力なジェット流を生じ、強い殺菌作用や有機物の分解効果が得られる。
【0075】
このように、オゾンをファインバブル化することで、オゾンの溶解率を飛躍的に高めることができると同時に、オゾンによる殺菌力が増し、有機物分解能も向上する。
なお、オゾンナノバブルは長期間に渡り水に残存するので、浄化後の水にも少量のオゾンナノバブルが残留する場合もある。しかし、例えば、本実施の形態において、貯水槽の水に残存するオゾンナノバブルは1ccあたり10000個以下であり、人に対する影響は軽微であり、飲料水として使用したとしても人への害はほとんどない。
また、オゾン耐性を有する枯草菌への影響は大きくなく、オゾンをファインバブル化した被処理水中でも、半数以上の枯草菌は活性を維持していた。
【0076】
<本実施の形態のまとめ>
オゾンをファインバブル発生装置により、微細気泡化したことで、オゾンの溶解率が大幅に向上し、また、殺菌能力および有機物分解能力も向上する。
一方で、ファインバブルの枯草菌への影響は限定的であるため、枯草菌の有機物分解能力は十分に発揮される。
【符号の説明】
【0077】
1 浄化槽
2 エアレーション手段
3 オゾン発生手段
3a 間欠駆動手段
3b 散気手段(散気管)
3d ファインバブル化手段
5 枯草菌供給手段
7 貯水槽
V1~V4 バルブ

図1
図2
図3
図4
図5