(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063728
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】防護管挿脱装置
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20220415BHJP
H02G 7/00 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
H02G1/02
H02G7/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172112
(22)【出願日】2020-10-12
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
(71)【出願人】
【識別番号】000196565
【氏名又は名称】西日本電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴崎 幸司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 靖典
(72)【発明者】
【氏名】志村 柾季
【テーマコード(参考)】
5G352
5G367
【Fターム(参考)】
5G352AC03
5G352AE05
5G352AJ08
5G367BB04
(57)【要約】
【課題】 防護管挿脱作業を1人で行える防護管挿脱装置を提供し配電作業の生産性向上を図ること、従来のホットスティックや回転型操作棒にコントローラや駆動機構を取り付けて1人での作業を実施可能にすること、コントローラの取り付け位置を作業者が操作し易い位置に変更可能とすること及び作業者による防護管の取り扱いを容易にすること。
【解決手段】
架空配電線1に着脱可能で防護管16を進退させる送り機構3及び防護管16を案内する案内部17、18を有する本体部2と、送り機構3を回転させる駆動機構4を有する回転型操作棒5と、本体部2着脱用の着脱操作棒7と、防護管把持機構8、操作レバー9及びコントローラユニット10を有するホットスティック11と、防護管仮預け具15を備え、コントローラユニット10の操作に従って無線信号を駆動機構4に送信することにより、駆動機構4の駆動モータを制御する防護管挿脱装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防護管を架空配電線に装着又は架空配電線から離脱させる防護管挿脱装置であって、
前記防護管を進退させる送り機構及び該送り機構によって進退する前記防護管を案内する案内部を有し、前記架空配電線に着脱可能な本体部と、
絶縁性スティックの上端付近に前記防護管を挟持及び挟持解除可能な防護管把持機構が設けられているとともに、前記絶縁性スティックの下部に前記防護管把持機構を操作するための操作レバー及びコントローラユニットが設けられているホットスティックと、
絶縁性棒状体の上端に前記送り機構と連結可能な回転部が設けられ、かつ、前記絶縁性棒状体の下部に前記回転部を回転させる駆動機構が設けられている回転型操作棒を備え、
前記コントローラユニットは、電池、操作部及び信号送信部を有し、前記操作部の操作に従って前記信号送信部から無線信号を送信することにより、前記駆動機構の動作を制御することが可能であり、
前記駆動機構は、電源部、駆動モータ、信号受信部及び駆動モータ制御部を有し、前記信号受信部で受信した前記無線信号に基づいて、前記駆動モータ制御部が前記駆動モータの回転を制御する
ことを特徴とする防護管挿脱装置。
【請求項2】
前記絶縁性スティックの下部に着脱自在に固定可能、かつ、前記コントローラユニットを保持可能なコントローラユニット取付部材と、
前記絶縁性棒状体の下部に着脱自在に固定可能、かつ、前記駆動機構を保持可能な駆動機構取付部材を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の防護管挿脱装置。
【請求項3】
前記コントローラユニット取付部材は、前記操作レバーの右側近傍及び左側近傍のいずれかに、前記コントローラユニットを選択的に位置させて固定することが可能である
ことを特徴とする請求項2に記載の防護管挿脱装置。
【請求項4】
絶縁性支持棒の上端に前記架空配電線へ引掛けることが可能な掛け止め部を有するとともに、前記絶縁性支持棒の下部に前記防護管を一時的に保持する防護管保持体を有している防護管仮預け具をさらに備えている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の防護管挿脱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空配電線が樹木や建造物に接触するおそれがある箇所等で、絶縁体を保護し絶縁破壊事故や断線事故等を未然に防止する防護管に架空配電線を挿入するため又は既設の防護管を架空配電線から離脱させるために使用する防護管挿脱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、架空配電線が樹木や建造物に接触するおそれがある箇所等で、架空配電線が損傷し絶縁破壊事故や断線事故等を起こすことがないようにするため、架空配電線の周囲に防護管を被せることが行われている。
この防護管に配電線を挿入(防護管を配電線に装着)したり、配電線から離脱させたりするに際しては、特許文献1(特開平8-182135号公報)、特許文献2(特開2003-47115号公報)及び特許文献3(特許第6710010号公報)に記載されているように、防護管挿脱装置を用いるのが一般的である。
そして、防護管挿脱装置は、作業者の感電を防止しながら、電力を供給している架空配電線に対して防護管を挿脱できるようにするため、防護管を進退させる送り機構及び送り機構によって進退する防護管を案内する案内部を有し架空配電線に着脱可能な本体部と、絶縁性スティックの上端付近に防護管を挟持及び挟持解除可能な防護管把持機構が設けられているとともに、絶縁性スティックの下部に防護管把持機構を操作するための操作レバーが設けられているホットスティックと、絶縁性棒状体の上端及び下端に、それぞれ装置本体及び防護管を進退させる駆動機構との接続部を設けた回転型操作棒等を備えている。
そのため、防護管を架空配電線に装着したり架空配電線から離脱させたりする場合には、少なくとも防護管を進退させる駆動機構を操作する作業者と、ホットスティックを保持し防護管把持機構を操作して防護管をセットしたり外したりする作業者が必要である。
【0003】
また、特許文献4(特開2020-78117号公報)には、防護管挿入器において、回転駆動力を発生させるための動力源として、人力によるレバー操作や、ハンドドリル等を利用した駆動装置に置換できる点、動力源を無線又は有線で接続して、離れた位置から操作する構成としても良い点、フットスイッチなどを利用して防護管を直接扱う補助的な作業との間の干渉を避けることができる点及び電線から防護管を引き抜く場合は回転駆動機構を反転させ、挿抜何れの操作にも用いることが可能である点等の記載(段落0030及び0032を参照)がある。
しかし、特許文献4に記載の防護管挿脱装置は、段落0013に記載されているように、雨滴などによるスリップが生じ難い防護管挿入器を提供することを目的としたものであって、動力源の選択、動力源を離れた位置から操作する構成及びフットスイッチなどの利用については簡単に説明しているだけで、どのような動力源を選択し、どのような構成によって動力源を離れた位置から操作するのが良いかに関する具体的な説明はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-182135号公報
【特許文献2】特開2003-47115号公報
【特許文献3】特許第6710010号公報
【特許文献4】特開2020-78117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、従来の防護管挿脱装置を用いて防護管を架空配電線に装着したり架空配電線から離脱させたりする場合には、2人以上の作業者が必要である。
本発明は、防護管挿脱作業を1人で実施することが可能な防護管挿脱装置を提供し、配電作業の生産性向上を図ることを第1の課題としている。
また、本発明は、従来の防護管挿脱装置が備えているホットスティック及び回転型操作棒に、それぞれコントローラ及び駆動機構を取り付けるだけで、防護管挿脱作業を1人で実施できるようにすることを第2の課題とし、ホットスティックにおけるコントローラの取り付け位置を、作業者が操作し易い位置に変更できるようにすることを第3の課題としている。
さらに、防護管を一時的に保持させる防護管仮預け具を設けて、作業者による防護管の取り扱いを容易にすることを第4の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、防護管を架空配電線に装着又は架空配電線から離脱させる防護管挿脱装置であって、
前記防護管を進退させる送り機構及び該送り機構によって進退する前記防護管を案内する案内部を有し、前記架空配電線に着脱可能な本体部と、
絶縁性スティックの上端付近に前記防護管を挟持及び挟持解除可能な防護管把持機構が設けられているとともに、前記絶縁性スティックの下部に前記防護管把持機構を操作するための操作レバー及びコントローラユニットが設けられているホットスティックと、
絶縁性棒状体の上端に前記送り機構と連結可能な回転部が設けられ、かつ、前記絶縁性棒状体の下部に前記回転部を回転させる駆動機構が設けられている回転型操作棒を備え、
前記コントローラユニットは、電池、操作部及び信号送信部を有し、前記操作部の操作に従って前記信号送信部から無線信号を送信することにより、前記駆動機構の動作を制御することが可能であり、
前記駆動機構は、電源部、駆動モータ、信号受信部及び駆動モータ制御部を有し、前記信号受信部で受信した前記無線信号に基づいて、前記駆動モータ制御部が前記駆動モータの回転を制御することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の防護管挿脱装置において、
前記絶縁性スティックの下部に着脱自在に固定可能、かつ、前記コントローラユニットを保持可能なコントローラユニット取付部材と、
前記絶縁性棒状体の下部に着脱自在に固定可能、かつ、前記駆動機構を保持可能な駆動機構取付部材を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の防護管挿脱装置において、
前記コントローラユニット取付部材は、前記操作レバーの右側近傍及び左側近傍のいずれかに、前記コントローラユニットを選択的に位置させて固定することが可能であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1~3のいずれかに記載の防護管挿脱装置において、
絶縁性支持棒の上端に前記架空配電線へ引掛けることが可能な掛け止め部を有するとともに、前記絶縁性支持棒の下部に前記防護管を一時的に保持する防護管保持体を有している防護管仮預け具をさらに備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明の防護管挿脱装置は、本体部、ホットスティック及び回転型操作棒を備え、ホットスティックを構成する絶縁性スティックの上端付近に防護管把持機構が設けられているとともに、絶縁性スティックの下部に防護管把持機構を操作するための操作レバー及びコントローラユニットが設けられ、回転型操作棒を構成する絶縁性棒状体の上端及び下部に、それぞれ送り機構と連結可能な回転部及び回転部を回転させる駆動機構が設けられており、かつ、コントローラユニットが有している操作部の操作に従って無線信号を送信することにより、駆動機構の動作を制御することが可能である。
そのため、送り機構に絶縁性棒状体の上端にある回転部を連結した状態で、ホットスティックを保持している作業者が操作レバーによって防護管把持機構を操作しながら、コントローラユニットを操作することによって駆動機構の動作を制御できるので、防護管挿脱作業を1人で実施することが可能となり、配電作業の生産性を向上できる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る発明による効果に加えて、絶縁性スティックの下部に着脱自在に固定可能、かつ、コントローラユニットを保持可能なコントローラユニット取付部材と、絶縁性棒状体の下部に着脱自在に固定可能、かつ、駆動機構を保持可能な駆動機構取付部材を備えているので、従来の防護管挿脱装置が備えているホットスティック及び回転型操作棒に、それぞれコントローラユニットを保持させたコントローラユニット取付部材及び駆動機構を保持させた駆動機構取付部材を取り付けるだけで、防護管挿脱作業を1人で実施できるようになる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、請求項2に係る発明による効果に加えて、コントローラユニット取付部材は、操作レバーの右側近傍及び左側近傍のいずれかに、コントローラユニットを選択的に位置させて固定することができるので、作業者が右利きか左利きかに応じて、又は作業者が操作レバー9を右手で操作するか左手で操作するかに応じて、コントローラユニットの取り付け位置を作業者が操作し易い位置に変更することができる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、請求項1~3のいずれかに係る発明による効果に加えて、絶縁性支持棒の上端に掛け止め部を有するとともに、絶縁性支持棒の下部に防護管を一時的に保持する防護管保持体を有している防護管仮預け具をさらに備えているので、作業者による防護管の取り扱いが容易となり、防護管挿脱作業を1人でスムーズに実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例に係る防護管挿脱装置の構成を示す図。
【
図2】実施例に係る防護管挿脱装置における本体部の構成を示す図。
【
図3】実施例の回転型操作棒、着脱操作棒及びホットスティックの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施例によって本発明の実施形態を説明する。
【実施例0016】
図1は実施例に係る防護管挿脱装置の構成を示す図である。
図1に示すように、実施例の防護管挿脱装置は、架空配電線1に着脱可能な本体部2、本体部2の送り機構3と連結可能で送り機構3を駆動する駆動機構4が設けられている回転型操作棒5、本体部2の着脱機構6と連結可能で本体部2を架空配電線1に取り付ける際及び架空配電線1から取り外す際に用いる着脱操作棒7、防護管把持機構8、防護管把持機構8を操作するための操作レバー9及びコントローラユニット10が設けられているホットスティック11、並びに絶縁性支持棒12の上端及び下部に、それぞれ掛け止め部13及び樋状の防護管保持体14を有している防護管仮預け具15から構成される。
そして、防護管保持体14に一時的に保持されている防護管16を、ホットスティック11の防護管把持機構8で挟持して、防護管16の端部を本体部2の第1案内部17に挿入し、送り機構3の正回転によって架空配電線1側に進入させることで、防護管16を架空配電線1に装着することができる。
また、架空配電線1に装着されている防護管16の端部を防護管把持機構8で挟持して第2案内部18に引き込み、送り機構3の逆回転によって架空配電線1から離れる方向に送り出すことで、防護管16を架空配電線1から離脱させることができる。
【0017】
図2は実施例に係る防護管挿脱装置における本体部2の構成を示す図である。
図2(A)及び(B)に示すように、実施例の本体部2は、少なくとも一部に中空部を有している案内部材19、防護管16を案内部材19の下辺部に沿って進退させるための送り機構3、本体部2を架空配電線1に着脱自在とするための着脱機構6、防護管16を架空配電線1に装着するに際して防護管16を送り機構3へと導くための第1案内部17、防護管16を架空配電線1から離脱させるに際して防護管16を送り機構3へと導くための第2案内部18から構成されている。
【0018】
図2(B)は、送り機構3の構成を説明するための断面図である。
送り機構3は、案内部材19の上辺部又は着脱機構6の裏側に固定され案内部材19とほぼ平行に下方へ延びる垂下部20と、垂下部20の下部に設けてあるギア部(図示せず)と、ギア部の前方で案内部材19の下辺部の直下に位置するローラ21と、ギア部に駆動機構4からの駆動力を伝達しローラ21を回転させる駆動伝達部(図示せず)と、送り機構3に回転型操作棒5を連結するための回転型操作棒連結部22を有するとともに、
図2(A)及び(B)に示すように、案内部材19の下方にあるローラ21に近接した箇所に設けられている3つの補助ローラ23と、案内部材19の表面側及び裏面側の各補助ローラ23に近接した箇所に設けられている6つのコロ24を有している。
なお、回転型操作棒連結部22の側面には、溝部25が設けてある。
そして、第1案内部17から挿入された防護管16の端部の底面が、ローラ21と補助ローラ23で挟まれる位置に達すると、ローラ21の正回転によって防護管16の底部は案内部材19の下辺部に沿って第2案内部18側へ送られ、防護管16の上部は6つのコロ24を挟みながら第2案内部18の上方側へ送られる。
さらに、防護管16の端部が第2案内部18を通過すると、第2案内部18の途中に設けられている幅広部(図示せず)によって防護管16の上部が押し広げられ、架空配電線1に下側から進入し、その後上部が弾性力で閉まって架空配電線1を覆う状態となる。
逆に、架空配電線1に装着されている防護管16が第2案内部18に引き込まれ、端部の底面がローラ21と補助ローラ23で挟まれる位置に達すると、ローラ21の逆回転によって防護管16の底部は案内部材19の下辺部に沿って第1案内部17側へ送られ、防護管16の上部は6つのコロ24を挟みながら第1案内部17の上方側へ送られる。
その後継続して防護管16を進行させると、防護管16の最後尾がローラ21に達し、防護管16全部が架空配電線1から離脱する。
【0019】
着脱機構6は、案内部材19の上辺部の裏側に固定され案内部材19との間に防護管16が通過できる間隔をもって上下に延びる支持部26、支持部26に沿って上下に延び回転操作することによって上下に移動するネジ軸27、ネジ軸27の上端に固定され案内部材19の上辺部の上方まで延びる電線押さえ部28及びネジ軸27の下端に固定されネジ軸27と着脱操作棒7を連結する着脱操作棒連結部29を有している。
なお、着脱操作棒連結部29の側面には、溝部30が設けてある。
そして、本体部2を架空配電線1に取り付ける際には、着脱操作棒7を着脱操作棒連結部29に連結し、着脱操作棒7でネジ軸27を正回転させて電線押さえ部28を上方に移動させ、架空配電線1の適当な箇所に案内部材19の上辺部と電線押さえ部28を位置させた後に、ネジ軸27を逆回転させて電線押さえ部28を下方に移動させ、案内部材19の上辺部と電線押さえ部28で架空配電線1を挟みつけて固定する。
また、本体部2を架空配電線1から取り外す際には、ネジ軸27を正回転させて電線押さえ部28を上方に移動させた後、本体部2を架空配電線1から離脱させれば良い。
【0020】
図3(A)、(B)及び(C)は、それぞれ実施例の回転型操作棒5、着脱操作棒7及びホットスティック11の構成を示す図である。
回転型操作棒5は、送り機構3の回転型操作棒連結部22に連結可能で、駆動機構4からの駆動力を駆動伝達部及びギア部(図示せず)を介して伝達し、ローラ21を回転させるためのものである。
図3(A)に示すように、回転型操作棒5は、絶縁性棒状体31、絶縁性棒状体31の上端に設けられ送り機構3の駆動伝達部と連結可能な回転部32及び駆動伝達部と回転部32との連結状態を維持するための駆動力伝達連結部33、並びに絶縁性棒状体31の下部に設けられ回転部32を駆動する駆動機構4を備えている。
なお、駆動力伝達連結部33は送り機構3の回転型操作棒連結部22に挿入可能であり、側面には回転型操作棒連結部22の溝部25に差し込まれて両者を外れにくくするためのピン34が設けられている。
【0021】
駆動機構4は、蓄電式の電源部であるリチウムイオン電池35、回転部32を駆動するための直流モータ36、受信アンテナと受信基板からなる信号受信部37及び直流モータ制御部38を備え、全体が防水ケース39で覆われている。
また、防水ケース39は、駆動機構取付部材40に保持されるとともに、駆動機構取付部材40によって絶縁性棒状体31の下部に着脱自在に固定される。
そして、防水ケース39が絶縁性棒状体31の下部に固定された状態において、直流モータ36によって回転する駆動シャフト(図示せず)の回転力が、絶縁性棒状体31の内部に設置されている回転シャフト(図示せず)に伝達され、回転部32が駆動シャフトの回転に応じて作動するようになっている。
なお、駆動機構を取り付ける部材には様々な構造のものを採用できるが、
図3(A)に示す駆動機構取付部材40は、ドライバー等の工具を使わなくても操作できるようにするため、ノブを回転させて取付金具を締めたり緩めたりできる構造のものとしている。
【0022】
着脱操作棒7は、着脱機構6の着脱操作棒連結部29に連結可能で、本体部2を架空配電線1に取り付ける際及び架空配電線1から取り外す際に、着脱操作棒7を中心軸周りに回転させることでネジ軸27を回転させるためのものである。
図3(B)に示すように、着脱操作棒7は、絶縁性を有する棒状体41及び棒状体41の上端に設けられ着脱操作棒連結部29と着脱操作棒7との連結状態を維持するための挿入連結部42を備えており、挿入連結部42は着脱機構6の着脱操作棒連結部29に挿入可能であり、側面には着脱操作棒連結部29の溝部30に差し込まれて両者を外れにくくするためのピン43が設けられている。
【0023】
ホットスティック11は、防護管16を挟持して端部を本体部2の第1案内部17に挿入するため、及び架空配電線1に装着されている防護管16の端部を挟持して第2案内部18に引き込むために用いられるとともに、回転型操作棒5が備えている直流モータ36の回転を制御するためのものである。
図3(C)に示すように、ホットスティック11は、絶縁性スティック44、防護管16を挟持及び挟持解除可能な防護管把持機構8、防護管把持機構8を操作するための操作レバー9並びにコントローラユニット10を備えている。
そして、防護管把持機構8は、絶縁性スティック44の上端付近に設けられ、操作レバー9及びコントローラユニット10は絶縁性スティック44の下部の近い位置に固定されている。
【0024】
操作レバー9は、
図3(C)の矢印に示す方向に操作することで、防護管把持機構8を矢印に示す方向に開閉させることができる。すなわち、操作レバー9を絶縁性スティック44に近づく方向に操作すると操作桿45は下側に移動し、可動クランプ46が固定クランプ47側に移動して防護管把持機構8は閉じた状態となり、逆に操作レバー9を絶縁性スティック44から遠ざかる方向に操作すると防護管把持機構8は開いた状態となる。
また、コントローラユニット10は、筐体内部に乾電池(図示せず)及び駆動機構4の信号受信部37に対して無線信号(通信仕様は、IEEE802.15.4規格に準じた短距離無線)を送信する信号送信部(図示せず)を内蔵し、筐体の一側面に突出し上下又は左右に操作可能なレバー型コントローラ48及びプッシュスイッチ49を備えている。
そして、レバー型コントローラ48の傾き具合に応じて、直流モータ36の回転速度が変化するようになっており、プッシュスイッチ49を押す度に筐体に設けられているLEDランプ(図示せず)の点灯と消灯が切り換わるとともに、直流モータ36の回転方向が切り換わるようになっている(消灯時正転、点灯時逆転)。
筐体は防水構造となっており、コントローラ取付部材50に保持されるとともに、コントローラ取付部材50によって絶縁性スティック44に着脱自在に固定される。
そして、その固定位置は、作業者が右利きか左利きかに応じて、又は作業者が操作レバー9を右手で操作するか左手で操作するかに応じて、操作レバー9の右側近傍とするか左側近傍とするかを選択することができるようになっている。
なお、コントローラを取り付ける部材には様々な構造のものを採用できるが、
図3(C)に示すコントローラ取付部材50は、駆動機構取付部材40と同様に、ドライバー等の工具を使わなくても操作できるようにするため、ノブを回転させて取付金具を締めたり緩めたりできる構造のものとしている。
【0025】
防護管仮預け具15は、架空配電線1に装着する前の防護管16を第1案内部17の手前側で一時的に保持し、防護管16の端部を第1案内部17に挿入し易くするために用いられるものである。
図1に示すように、防護管仮預け具15は、絶縁性支持棒12、絶縁性支持棒12を架空配電線1に吊るした状態とする掛け止め部13及び防護管16を保持する樋状の防護管保持体14から構成される。
掛け止め部13は、絶縁性支持棒12の上端に設けられている鈎状の部材であり、架空配電線1に容易に引掛けることができるようになっている。
防護管保持体14は、防水ケース39やコントローラユニット10の筐体と同様、防護管保持体取付部材に保持されるとともに、防護管保持体取付部材によって絶縁性支持棒12の下部に着脱自在に固定され、上下方向の高さを調節できるようになっている。
【0026】
実施例の防護管挿脱装置を使用して本体部2を架空配電線1に取り付けた後、防護管16を架空配電線1に装着する手順について説明する。
なお、予めコントローラユニット10のLEDランプが消灯しているか確認し、点灯している場合は、プッシュスイッチ49を1回押してLEDランプを消灯させる。
(1)操作レバー9を操作して防護管把持機構8を開閉させ、防護管保持体14に一時的に保持されている防護管16を挟持して端部を第1案内部17に挿入する。
(2)防護管16の端部の底面をホットスティック11の移動によって、ローラ21と補助ローラ23で挟まれる位置まで動かすとともに、コントローラユニット10のレバー型コントローラ48を操作して、直流モータ36を回転させる。
(3)ローラ21の正回転によって防護管16の底部が案内部材19の下辺部に沿って第2案内部18側へ送られ始めたら、操作レバー9を操作して防護管16の挟持状態を解除する。そうすると、防護管16は継続して第2案内部18方向へ送られる。
(4)防護管16の端部が第2案内部18を通過すると、第2案内部18の途中に設けられている幅広部によって防護管16の上部が押し広げられ、架空配電線1に下側から進入し、その後上部が弾性力で閉まって架空配電線1を覆う状態となる。
(5)防護管16全部が架空配電線1を覆う状態となっているか確認し、防護管16の一部が本体部2に残っている場合には、防護管16全部が架空配電線1を覆う状態となるまでホットスティック11で防護管16を押す。
【0027】
次に、実施例の防護管挿脱装置を使用して、架空配電線1に装着されている防護管16を架空配電線1から取り外す手順について説明する。
なお、予めコントローラユニット10のLEDランプが点灯しているか確認し、消灯している場合は、プッシュスイッチ49を1回押してLEDランプを点灯させる。
(A)操作レバー9を操作して防護管把持機構8を開閉させ、装着されている防護管16の端部を挟持して、第2案内部18に引き込む。
(B)防護管16の端部をさらに引き込み、底面がローラ21と補助ローラ23で挟まれる位置まで動かすとともに、コントローラユニット10のレバー型コントローラ48を操作して、直流モータ36を回転させる。
(C)ローラ21の逆回転によって防護管16の底部が案内部材19の下辺部に沿って第1案内部17側へ送られ始めたら、操作レバー9を操作して防護管16の挟持状態を解除する。そうすると、防護管16は継続して第1案内部17方向へ送られる。
(D)防護管16全部がローラ21と補助ローラ23で挟まれる位置を通過すると、防護管16は重力によって本体部2から外れ落下する。防護管16が本体部2に引っ掛かっている場合には、防護管把持機構8で防護管16を挟持して本体部2から外す。
【0028】
以上のように、実施例に係る防護管挿脱装置を使用すれば、ホットスティック11の下部に防護管把持機構8を操作するための操作レバー9及びコントローラユニット10が設けられており、レバー型コントローラ48の操作に従って無線信号が送信され、直流モータ36の回転を制御できるので、防護管挿脱作業を1人で実施することができる。
そして、本発明の効果を確認するため、市販の防護管(長さ3m)を電線に取り付ける作業を、実施例に係る防護管挿脱装置を用いて1人で行った場合と、従来の装置1及び2を用いて2人で行った場合(比較例1及び2)について、作業時間(防護管の取付け作業開始から取付け作業完了までの時間)を計測した。
実施例に係る防護管挿脱装置による平均作業時間を1とした結果を表1に示す。
【表1】
以下、比較試験の方法及び比較例1、2について説明する。
※比較試験の方法:地上から作業し、実施例では熟練度が異なる5名の作業者で、比較例1及び2では熟練度が異なる5組(2名1組)の作業者で実施した。
※比較例1:特許第4353830号公報に記載されている防護管脱着装置のように、油圧で駆動させるローラを用いる装置を用い、一方の作業者がホットスティックで防護管を保持しながら、もう一方の作業者がローラを制御して防護管装着作業を行った。
※比較例2:特許第5738717号公報の段落0004等に記載されているような手動式の防護管装着装置を用い、一方の作業者がホットスティックで防護管を保持しながら、もう一方の作業者が手動で防護管装着作業を行った。
【0029】
上記の結果から、実施例に係る防護管挿脱装置を用いて1人で行った場合と、従来の装置1及び2を用いて2人で行った場合で、作業時間に大きな差は出ないことが判明した。
そして、実施例の作業は1名で行い、比較例1及び2の作業は2名で行うので、本発明の防護管挿脱装置を用いることで、省人化による敷設コスト低減の効果が期待できる。
また、比較試験の結果から、作業時間は作業者の熟練度に左右されることが判明した。特に、実施例の作業時間のばらつきが最も大きいことも分かる。
それから、実フィールドでの作業は、高所作業車のバケット内で行われる場合が多く、十分な作業スペースが確保できない可能性が高いので、作業性が悪く作業時間も長くなることが予想される。
さらに、実フィールドでの作業は、防護管を連結しながら複数本を設置する場合、電柱付近で上下方向や斜め方向に配線されている架空配電線に防護管を設置する場合、作業空間に樹木の枝がある場合など、色々な状況が想定されるので、比較試験のような結果にならない場合もあるものと推察される。
しかしながら、どのような状況であっても、本発明の防護管挿脱装置を用いれば、作業者1名で防護管を架空配電線に装着できることに変わりないので、少々作業時間が延びたとしても、敷設コストの低減効果は維持されるものと推察される。
【0030】
実施例に係る防護管挿脱装置の変形例を列記する。
(1)実施例に係る防護管挿脱装置においては、本体部2の着脱機構6に着脱操作棒連結部29を設け、着脱操作棒連結部29に着脱操作棒7を連結してネジ軸27を回転できるようにしたが、特許文献3(特許第6710010号公報)に記載されている保護管装着機と同様に、本体部2の上部に締め付けノブを設け、着脱操作棒等を用いずに本体部2を架空配電線1に取り付けたり取り外したりしても良い。
そうした場合、本体部2の着脱機構6に着脱操作棒連結部29を設ける必要はなく、着脱操作棒7を備える必要もなくなる。
(2)実施例に係る防護管挿脱装置は、防護管仮預け具15を有していたが、地上で作業する場合や高所作業車に防護管保持装置が装備されている場合のように、防護管16を仮置きできる場所が別途確保できる場合は、防護管仮預け具15は不要となる。また、防護管16を架空配電線1から離脱させる場合も防護管仮預け具15は不要である。
【0031】
(3)実施例の送り機構3は、3つの補助ローラ23及び6つのコロ24を有していたが、補助ローラ23及びコロ24の数は変更可能であり、設けなくても良い。
ただし、設けない場合には、案内部材19の下辺部及び側面部に防護管16の滑りを良くする処理を施した方が良い。
(4)実施例の駆動機構4においては、高出力の電力を供給できる点、充電可能である点、比較的安価で入手が容易である点、多くの種類が提供されている点等を考慮して、直流モータ36に電力を供給するための電源部にリチウムイオン電池35を用いたが、電源部の種類に制限はなく、各種の充電式バッテリーや乾電池等を利用しても良い。
(5)実施例の駆動機構4においては、出力が電流にほぼ比例するために比較的制御が容易である点、始動トルクが大きい点、低電圧で作動可能である点等を考慮して、駆動モータに直流モータ36を用いたが、駆動モータの種類に制限はなく、各種の交流モータやステッピングモータ等を利用しても良い。
(6)実施例の駆動機構4は、防水ケース39で全体を覆ったが、必ずしも防水ケース39で覆う必要はなく、降雨時のみに周囲をカバーで覆うことができるようにしても良い。
また、直流モータからの熱が問題となる場合には、非防水ケースであれば冷却ファンを設け、防水ケースであれば冷却装置を設けるといった対策を追加しても良い。
【0032】
(7)実施例の回転型操作棒5においては、防水ケース39を駆動機構取付部材40によって着脱自在に固定し、ホットスティック11においては、コントローラ10の筐体をコントローラ取付部材50によって着脱自在に固定し、既存の回転型操作棒やホットスティックを利用できるようにしたが、専用の回転型操作棒やホットスティックの場合、防水ケース39やコントローラ10を着脱自在としなくても良い。
また、防護管仮預け具15においては、防護管保持体14を防護管保持体取付部材によって着脱自在に固定し、上下方向の高さを調節できるようにしたが、高さを調整する必要が無ければ、防護管保持体14を着脱自在としなくても良い。
(8)実施例のコントローラ10においては、電力が小さくても良い点、安価で入手が容易である点、使用時間が長くない点等を考慮して、コントローラ11の信号送信部に電力を供給するための電源に乾電池を用いたが、電源の種類に制限はなく、各種のボタン電池、充電式バッテリー、太陽電池等を利用しても良い。
(9)実施例のコントローラ10においては、信号送信部から信号受信部37に送信する無線信号の通信仕様を、IEEE802.15.4規格に準じた短距離無線としたが、ブルートゥース規格をはじめ、他の通信方式も利用可能であり、長距離通信用の機器を利用しても良い。
また、通信状態が良好な場合はアンテナを簡略化したり削除したりすることもできる。
【0033】
(10)実施例のコントローラ10においては、レバー型コントローラ48及びプッシュスイッチ49を用いたが、中立位置を有するレバー型コントローラや音声認識センサを用いて回転速度及び回転方向を制御できるようにしても良い。
また、レバー型コントローラ48に代えてスライド型、回転型、タッチパネル型のコントローラ及び複数のプッシュスイッチのいずれを選択しても良く、プッシュスイッチ49に代えて切り替えスイッチ(スライド型、回転型、揺動型)のいずれを選択しても良い。
なお、音声認識センサによって回転速度及び回転方向を制御できるようにした場合、コントローラ10の筐体は作業者が操作レバー9を操作している時、作業者の口に最も近くなる位置に固定した方が良い。
(11)実施例のコントローラ10には、直流モータ36の回転方向を報知するためのLEDランプを設けていたが、スイッチの操作方向で回転方向が切り換わる場合や、スイッチの状態を見て回転方向が分かる場合には、LEDランプを設けなくても良い。
(12)実施例のコントローラ10を構成する筐体は防水構造となっていたが、必ずしも防水構造とする必要はなく、降雨時のみにカバーで覆うことができるようにしても良い。
(13)実施例の防護管保持体14は、一時的に保持されている防護管が作業中に脱落しにくくなるようにするため樋状であったが、防護管を支持できるものであれば鈎状、筒状等どのような形状であっても良い。