(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063729
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】熱圧着玩具
(51)【国際特許分類】
B29C 65/20 20060101AFI20220415BHJP
A63H 33/30 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
B29C65/20
A63H33/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172115
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003584
【氏名又は名称】株式会社タカラトミー
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 麻美
(72)【発明者】
【氏名】松岡 洋和
(72)【発明者】
【氏名】海保 利佳
(72)【発明者】
【氏名】村上 誠司
【テーマコード(参考)】
2C150
4F211
【Fターム(参考)】
2C150AA01
2C150CA18
2C150DD08
2C150DG01
2C150DG13
2C150EB01
2C150EC03
2C150ED41
2C150EE07
2C150EF16
2C150EF28
2C150FA04
2C150FA42
4F211TA01
4F211TJ13
4F211TJ15
4F211TN07
4F211TQ04
(57)【要約】
【課題】ヒータが露出することによる不具合を可及的に防止することができる熱圧着玩具を提供すること。
【解決手段】 基台と、前記基台に設けられた押当て部と、アームに設けられたヒータとを備え、前記ヒータと前記押当て板との間で、重畳したフィルムを挟持してフィルム同士を熱圧着する熱圧着玩具において、
前記アームには前記ヒータを取り囲むようにカバーが設けられ、前記カバーの下端と前記基台の上面との間には、重畳した前記フィルムを抜き差し可能な程度の隙間が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、前記基台に設けられた押当て部と、アームに設けられたヒータとを備え、前記ヒータと前記押当て部との間で、重畳したフィルムを挟持してフィルム同士を熱圧着する熱圧着玩具において、
前記アームには前記ヒータを取り囲むようにカバーが設けられ、前記カバーの下端と前記基台の上面との間には、重畳した前記フィルムを抜き差し可能な程度の隙間が形成されていることを特徴とする熱圧着玩具。
【請求項2】
前記ヒータは、前記押当て部に対して接離する方向に移動可能に構成され、
前記カバーは、前記ヒータの移動域を取り囲んでいることを特徴とする請求項1に記載の熱圧着玩具。
【請求項3】
前記カバーは透明であり、外部から前記ヒータを見通せることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱圧着玩具。
【請求項4】
前記ヒータは、重畳した前記フィルムの上面に点接触するように構成され、前記ヒータの左右には第1ローラが設けられ、前記基台の前記押当て部の左右には前記ローラに対向して配置された第2ローラが設けられ、前記第1ローラ及び前記第2ローラの一方は駆動ローラであり、前記第1ローラ及び前記第2ローラによって、重畳した前記フィルムを後方に送るように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の熱圧着玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱圧着玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、重畳された熱可塑性のフィルム同士を熱圧着する熱圧着玩具が知られている(例えば、特許文献1参照)。この熱圧着玩具は、基台に設けられた押当て板と、押当て板に対して接離する方向に移動可能なヒータとを備え、押当て板と、押当て板から離間させたヒータとの間に、重畳させたフィルムを配置した後、ヒータを押当て板に近付く方向に移動させて、ヒータと押当て板との間で、重畳させたフィルムを挟持することにより、フィルム同士を熱圧着する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の熱圧着玩具では、ヒータが露出する構造となっているため、誤ってユーザが加熱されたヒータや、熱圧着直後のフィルムに直接触れることができるので好ましくない。また、ヒータと押当て板との間にフィルムよりも厚い異物が入ると、ヒータを損傷する虞がある。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みなされたものであり、ヒータが露出することによる不具合を可及的に防止することができる熱圧着玩具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段は、
基台と、前記基台に設けられた押当て部と、アームに設けられたヒータとを備え、前記ヒータと前記押当て部との間で、重畳したフィルムを挟持してフィルム同士を熱圧着する熱圧着玩具において、
前記アームには前記ヒータを取り囲むようにカバーが設けられ、前記カバーの下端と前記基台の上面との間には、重畳した前記フィルムを抜き差し可能な程度の隙間が形成されていることを特徴とする。
また、第2の手段は、第1の手段であって、前記ヒータは、前記押当て部に対して接離する方向に移動可能に構成され、前記カバーは、前記ヒータの移動域を取り囲んでいることを特徴とする。
【0007】
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段であって、
前記カバーは透明であり、外部から前記熱圧着部と前記ヒータを見通せることを特徴とする。
【0008】
第4の手段は、第3の手段であって、
前記ヒータは、重畳した前記フィルムの上面に点接触するように構成され、前記ヒータの左右には第1ローラが設けられ、前記基台の前記押当て部の左右には前記ローラに対向して配置された第2ローラが設けられ、前記第1ローラ及び前記第2ローラの一方は駆動ローラであり、前記第1ローラ及び前記第2ローラによって、重畳した前記フィルムを後方に送るように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1の手段によれば、熱圧着部及びヒータを取り囲むカバーが設けられているので、ヒータに直接触れることが防止される。また、第2の手段によれば、ヒータの移動域にフィルムよりも厚い異物が入るのを効果的に防止することができる。また、ユーザがヒータ等に直接触れることを防止することができる。
【0010】
第3の手段によれば、カバーを通して外部から熱圧着部とヒータとを見通せるので、フィルムの所望部位を適切に熱圧着することができる。
【0011】
第4の手段によれば、フィルムをミシン感覚で熱圧着することができるとともに、フィルムの向きを変えることができるため、弧状や波形など色々な形で熱圧着することができる。
また、ローラによる送り速度を適切に選択することにより、適切に熱圧着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】熱圧着玩具を正面を底面側から見た斜視図である。
【
図6】ローラユニット及びヒータユニットの斜視図である。
【
図7】
図6のローラユニット及びヒータユニットの分解斜視図である。
【
図8】摘み、レバー、ローラユニット及びヒータユニット及び係止部材の斜視図である。
【
図10】摘み、レバー及び係止部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は熱圧着玩具の正面を底面側から見た斜視図、
図2は熱圧着玩具の背面図である。
以下の説明を分かりやすくするため、最初に、熱圧着玩具100による熱圧着のプロセスを説明する。
先ず、熱圧着対象である重畳されたフィルムF(以下、単に「フィルムF」と言う。)を基台10上にセットする。この場合のセットは、フィルムFを基台10の上面に沿って滑らせ、透明なカバー11と基台10の上面との隙間に正面側からフィルムFを挿入することによりなされる。
次に、基台10の前側の摘み12を操作して電源を投入し、アーム13の前側の摘み14を下げる。すると、カバー11の内側にあるアイドルローラ15a,15bとヒータ16とが一体的に下降し、アイドルローラ15a,15bと下側の駆動ローラ17a,17bとの間、ヒータ16と押当て板23との間でフィルムFが挟み込まれる。この場合、フィルムFはアイドルローラ15a,15bの一方と、下側の駆動ローラ17a,17bの一方とで挟み込まれる場合もある。勿論、熱圧着の途中で、そうなってもよい。
この状態で、アーム13の上側のボタン19を押すと、ヒータ16が加熱され、所定温度に達すると駆動ローラ17a,17bが回転し、熱圧着されたフィルムFが基台10上を滑りながら熱圧着玩具100の後方に送られる。その際、ユーザは、ミシンと同様に、熱圧着されるフィルムFの向きを自由に変えることができる。
【0014】
次に、熱圧着玩具100の具体的な構造を説明する。
(基台10)
熱圧着玩具100は略楕円箱状の基台10を備えている。この基台10の前側には摘み12が設けられている。この摘み12は電源投入用の摘みであり、摘み12の奥には当該摘み12によって操作される電源スイッチ51(
図11参照)が設けられている。
また、この基台10内には、熱圧着玩具100の電源となる乾電池の収容室(図示せず)が形成され、そこには、例えば、単2の電池4本が設置されるようになっている。
図1の符号20は収容室を開閉するカバーを指示している。
さらに、
図4に示すように、基台10内にはモータMが設置されている。モータMは、歯車機構21を介して駆動ローラ17a,17bに連結されている。駆動ローラ17a,17bは所定間隔で同軸に設けられ、駆動ローラ17a,17bの間には、長方形で前後方向に長尺の押当て板23が配置されている。また、押当て板23の中央には温度センサ54が付設されている。押当て板23はコイルスプリング23a、23aによって上方に向けて付勢されている。
【0015】
(アーム13)
アーム13は、基台10の上面右側から弧状に立ち上がった後基台10の上面に平行に延び、アーム13の先端は基台10の上面左側の上方に位置している。このアーム13の先端部前側には摘み14が設けられ、一方、アーム13の上側にはボタン19が設けられている。摘み14は、アイドルローラ15a,15b及びヒータ16を昇降させるためのものであり、ボタン19はヒータ16を加熱させるためのものである。
【0016】
図5はカバー11の斜視図である。アーム13の先端部下側には、楕円筒状の透明のカバー11が垂設されている。カバー11の下端は基台10の上面近くまで延び、カバー11の下端と基台10の上面との間には、フィルムFが入出可能な隙間が形成されている(
図1参照)。また、カバー11の下端部後側には後方に向けて張り出す舌片状の張出し部11aが形成されている。さらに、カバー11の上端には外向きのフランジ11bが形成されている。そして、カバー11は、前後のアーム部分でフランジ11bを挟み込むことで、アーム13に取り付けられている。
【0017】
また、カバー11の上端部周面には前後に各3個ずつスリット11cが形成されている。このスリット11cは放熱のためのものである。
【0018】
(ローラユニット及びヒータユニット)
図6はローラユニット及びヒータユニットの一部を分解して示した斜視図、
図7はローラユニット及びヒータユニットの分解斜視図である。
ローラユニットは、アイドルローラ15a,15bと、アイドルローラ15a,15bが組み付けられたローラヘッド22とを備える。
【0019】
アイドルローラ15a,15bはローラヘッド22の下端部に軸15cを介して支持されている。ローラヘッド22は所定範囲で昇降可能に設けられ、コイルスプリング22dによって下方に向けて付勢されている。また、ローラヘッド22の前面(正面)には、上下に所定間隔で配置された操作片22a,22bが形成されている。
【0020】
一方、ヒータユニットは、面状のヒータ16と、ヒータヘッド24とを備える。ヒータ16はヒータヘッド24の下端部の弧状部分に取り付けられている。弧状部分の曲率半径はアイドルローラ15a,15bの曲率半径と略同一となっている。また、ヒータヘッド24の長孔24aに軸15cが通され、ローラヘッド22に対して所定範囲で上下動可能に取り付けられるとともに、コイルスプリング22dよりも弱いコイルスプリング25によって下方に向けて付勢されている。これによって、ヒータヘッド24の下端は、アイドルローラ15a,15bの下端よりも僅かに下方に突出する。
【0021】
(昇降装置)
図8はローラユニット及びヒータユニットと昇降装置とを示した前面側から見た斜視図、
図9は
図8に示した部位の分解斜視図、
図10は
図9の摘み、レバー及び係止部材を示した斜視図である。
摘み14はレバー30に取り付けられている。レバー30は左右方向に延在するヘッダ30aとヘッダ30aの左右の端から前方に張り出す左右の片30b,30cとから構成されている。左右の片30b,30cは固定部品40の孔41a,41bに挿通され、左右の片30b,30cの間には、ローラヘッド22が位置し、左右の片30b,30cは軸33を介してアーム13内の固定部に取り付けられている。
【0022】
左右の片30b,30cの先端部は、軸33よりも前方に延出され、その延出部は側面視で山形尖頭状に構成されている。一方、軸33の前方には、左右の片30b,30cの先端部に対応する位置に、前後方向に動作可能な係止部材34a,34bが配設されている。係止部材34a,34bの先端(後側の端)は側面視で山形尖頭状に構成されている。この係止部材34a,34bは、コイルスプリング35a,35bによって前方に向けて付勢されている。
また、レバー30のヘッダ30aは、アーム13に固定された固定部品40の孔42から前方に突出する上述の操作片22a,22bの間に位置している。
【0023】
そして、ヘッダ30aは、摘み14の上動位置では、上側の操作片22aに当接し、下側の操作片22bからは離間している。この状態から、摘み14を下げると、左右の片30b,30cの山形尖頭部は、係止部材34a,34bの山形尖頭部と摺接し、遂には、係止部材34a,34bの山形尖頭部を乗り越える。これにより、ローラヘッド22及びヒータヘッド24がコイルスプリング22dの付勢力及び重力によって下降する。一方、一旦下げられた摘み14を上げると、ヘッダ30aが上側の操作片22aを押し上げるとともに、左右の片30b,30cの山形尖頭部は、係止部材34a,34bの山形尖頭部と摺接し、遂には、係止部材34a,34bの山形尖頭部を乗り越える。そして、左右の片30b,30cの山形尖頭部と係止部材34a,34bの山形尖頭部とが係合し、ローラヘッド22及びヒータヘッド24が上動位置に保持される。なお、固定部品40にはヘッダ30aに摺接し、クリック感を醸し出す波形の摺接部43a,43bが形成されている。
【0024】
(制御構成)
図11に示すように、熱圧着玩具100は制御装置50を備えている。そして、制御装置50は、摘み12を操作すると電源スイッチ51がオンされ、レバー30を下げてローラヘッド22及びヒータヘッド24を下降させるとセンサ52がその下降を検知し、その後、ボタン19が押されるとヒータスイッチ53がオンされ、ヒータ16を加熱させる。そして、制御装置50は、温度センサ54で検知した熱圧着部の温度が所定の温度(例えば40度程度(このとき上のヒータ16は70度前後))となった時、モータМを駆動させ、フィルムFを熱圧着しつつ後方へ送る。
なお、制御装置50は、ヒータ16の加熱後、途中で、レバー30を上げたり、ボタン19を押したりすると、メイン電源を切る。再開するには、最初の操作からやり直す必要がある。また、制御装置50は、電源投入後、所定時間内に、レバー30の操作や、ボタン19の押圧がされない場合にも、メイン電源を切る。さらに、制御装置50は、ヒータ16の加熱後所定時間内に熱圧着部の温度が適切な温度に到達しないときには、異物が熱圧着部に入ったとして電源を切る。この際、エラーを報知するようにすることが好ましい。また、制御装置50は、発光ダイオード(LED)55をヒータ16の加熱中例えば赤色に点灯して、加熱中であることを報知する。
【0025】
(効果)
本実施形態の熱圧着玩具100によれば、次のような主たる効果を得ることができる。
すなわち、熱圧着部及びヒータ16の移動域を取り囲むカバー11が設けられているので、熱圧着部及びヒータ16の移動域に異物が入るのを効果的に防止することができる。また、ユーザがヒータ16等に直接触れることを防止することができる。
また、ヒータ16を適宜に上げ下げできるので、フィルムFの端から離れた途中部分からでも熱圧着することができる。
また、駆動ローラ17a,17bでフィルムFを送るので、送り速度を適切に設定することにより、綺麗に熱圧着をすることができるとともに、それとともに、カバー11の大きさを所定の大きさにしておけば、カバー11から出てくるフィルムFの熱圧着部分の温度を適切な値(例えば60度以下)にまで下げることができる。
さらに、カバー11が透明となっているため、外部から内部を見通すことができ、所望箇所を確実に熱圧着することができる。
また、ヒータ16を点接触させているだけなので、自由にフィルムFの向きを変えることができ、丸みを帯びた角の部分を角に沿って熱圧着したり、波形に熱圧着したりすることもできる。これによって、例えばペンケースや飾りリボンやポーチなど色々な物を簡単に作ることができる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態には限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能である。
例えば、ヒータ16に面状ヒータではなく、熱圧着できる程度の点接触が可能であれば、棒状のヒータを用いることができる。
【0027】
また、上記実施形態では、摘み14を操作しない限り連続して熱圧着するものについて説明したが、破線状に熱圧着するものにも適用できる。この場合には、ヒータ16の昇降を繰り返し自動で行わせ、間欠的に熱圧着をするようにしてもよい。
【0028】
また、上記実施形態では、上側のローラをアイドルローラ15a,15bとし、下側のローラを駆動ローラ17a,17bとしたが、逆であってもよい。
【0029】
さらに、上記実施形態では、モータMによってフィルムFを送るようにしたが、手動でフィルムFを送ってもよい。
【0030】
また、アイドルローラ15a,15b及び駆動ローラ17a,17b等のローラを持たない熱圧着装置にも適用できる。
【0031】
また、アイドルローラ15a,15bがヒータ16と一体的でなくてもよい。ヒータ16が下がった位置にある際にヒータ16を挟むようにアイドルローラ15a,15bがあればよく、アイドルローラ15a,15bとは別に昇降可能に設けられてもよく、またアイドルローラ15a,15bは昇降不可能な状態でもよい。
【0032】
また、アーム13とカバー11は一体となっていてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 基台
11 カバー
16 ヒータ
17a,17b 駆動ローラ
19 ボタン
21 歯車機構
22 ローラヘッド
23 押当て板
24 ヒータヘッド
34a,34b 係止部材
35a,35b コイルスプリング
40 固定部品
41a,41b 孔
42 孔
43a,43b 摺接部
50 制御装置
51 電源スイッチ
52 センサ
53 ヒータスイッチ
54 温度センサ
100 熱圧着玩具
F フィルム
M モータ