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特開2022-63733柱梁接合部の耐火被覆構造および耐火被覆方法
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  • 特開-柱梁接合部の耐火被覆構造および耐火被覆方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063733
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】柱梁接合部の耐火被覆構造および耐火被覆方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
E04B1/94 F
E04B1/94 R
E04B1/94 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172119
(22)【出願日】2020-10-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2020年度日本建築学会大会学術講演梗概集、日本建築学会 発行日 令和2年7月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 智紀
(72)【発明者】
【氏名】森田 武
(72)【発明者】
【氏名】広田 正之
(72)【発明者】
【氏名】奥山 孝之
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001DE04
2E001EA09
2E001FA01
2E001FA02
2E001GA12
2E001GA24
2E001HA03
2E001HA21
2E001KA01
2E001LA04
(57)【要約】
【課題】耐火性能を確保するとともに現場で施工しやすい柱梁接合部の耐火被覆構造および耐火被覆方法を提供する。
【解決手段】木質の芯材20と、芯材20の外側に積層配置された複数の耐火被覆材22により構成された柱部材12および梁部材14を接合する柱梁接合部16の耐火被覆構造10であって、柱梁接合部16の外側に積層配置されるとともに、柱部材12または梁部材14の耐火被覆材22の端部に当接配置される複数の板状の耐火被覆材38、40を備え、各層の板状の耐火被覆材38、40の端部の位置が各層間で水平方向または鉛直方向にずれて配置されることによって、端部の位置に形成される耐火被覆材22、38、40の目地が通し目地とならないように形成されているようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質の芯材と、芯材の外側に積層配置された複数の耐火被覆材により構成された柱部材および梁部材を接合する柱梁接合部の耐火被覆構造であって、
柱梁接合部の外側に積層配置されるとともに、柱部材または梁部材の耐火被覆材の端部に当接配置される複数の板状の耐火被覆材を備え、各層の板状の耐火被覆材の端部の位置が各層間で水平方向または鉛直方向にずれて配置されることによって、端部の位置に形成される耐火被覆材の目地が通し目地とならないように形成されていることを特徴とする柱梁接合部の耐火被覆構造。
【請求項2】
柱梁接合部の外側に、耐火被覆材として同一厚さの強化石膏ボードが3層積層配置されることを特徴とする請求項1に記載の柱梁接合部の耐火被覆構造。
【請求項3】
柱梁接合部は、鋼製接合部材または木質部材であり、柱梁接合部が鋼製接合部材である場合には耐火被覆材は下地材を介して鋼製接合部材に留付けられ、柱梁接合部が木質部材である場合には耐火被覆材は下地材を介さずに直接、木質部材に留付けられることを特徴とする請求項1または2に記載の柱梁接合部の耐火被覆構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一つに記載の柱梁接合部の耐火被覆構造を施工する耐火被覆方法であって、
工場において柱部材および梁部材の柱梁接合部から遠い側の芯材の外側に対して耐火被覆材を施工するステップと、その後、建設現場において柱部材および梁部材を建て込んだ後、柱部材および梁部材の柱梁接合部に近い側の残りの芯材の外側と、柱梁接合部の外側に対して複数の板状の耐火被覆材を施工するステップを有することを特徴とする柱梁接合部の耐火被覆方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質構造部材からなる柱と梁を接合した柱梁接合部の耐火被覆構造および耐火被覆方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、本特許出願人は、耐火性能を有する木質構造部材として、「スリム耐火ウッド(登録商標)」を開発し、柱と梁において国土交通大臣認定を受けている。この木質構造部材は、荷重支持部材である木材の周囲に耐火被覆材として強化石膏ボード15mm厚2枚と耐火シート2mm厚1枚を張り、その上に木材の化粧材を設けた構成である。
【0003】
このような構成に関し、本特許出願人は既に特許文献1を提案している。この特許文献1に記載の耐火集成材は、荷重を支持する集成材からなる芯材と、芯材の外側に設けられ、吸熱性および断熱性を有する無機質材料からなる第2燃え止まり層と、第2燃え止まり層の外側に設けられ、加熱により増厚して断熱性を発現するシート状の第1燃え止まり層と、第1燃え止まり層の外側に設けられる仕上げ材とを備えるものである。第2燃え止まり層、第1燃え止まり層、仕上げ材がそれぞれ上記の木質構造部材の強化石膏ボード、耐火シート、化粧材に相当する。
【0004】
上記の木質構造部材からなる柱と梁を接合して建物を構築する場合、火災加熱により柱梁接合部周りの構造性能が低下すると建物の崩壊に繋がるおそれがある。このため、柱梁接合部についても一定の耐火性能を確保する必要がある。
【0005】
このような問題を解決するための従来の技術として、例えば、特許文献2、3に記載の技術が知られている。特許文献2は、柱の仕口部に鋼板片を取り付けて梁を接合するとともに、梁の下面に耐火被覆材を設けたものである。特許文献3は、仕口部に突出部を設けて熱吸収性を高めたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-129431号公報
【特許文献2】特開2014-234688号公報
【特許文献3】特開2017-53098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の従来の木質構造部材からなる柱や梁は、通常、工場で荷重支持部材に耐火被覆材を貼り付けることによって製作される。一方、柱梁接合部は、建設現場で柱と梁の建方後にレベル調整やボルトの締付を行う場合があるため、耐火被覆材を現場で施工する必要がある。そのため柱梁接合部の耐火被覆構造として、耐火性能を確保するとともに現場で施工しやすい構造が求められていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、耐火性能を確保するとともに現場で施工しやすい柱梁接合部の耐火被覆構造および耐火被覆方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る柱梁接合部の耐火被覆構造は、木質の芯材と、芯材の外側に積層配置された複数の耐火被覆材により構成された柱部材および梁部材を接合する柱梁接合部の耐火被覆構造であって、柱梁接合部の外側に積層配置されるとともに、柱部材または梁部材の耐火被覆材の端部に当接配置される複数の板状の耐火被覆材を備え、各層の板状の耐火被覆材の端部の位置が各層間で水平方向または鉛直方向にずれて配置されることによって、端部の位置に形成される耐火被覆材の目地が通し目地とならないように形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の柱梁接合部の耐火被覆構造は、上述した発明において、柱梁接合部の外側に、耐火被覆材として同一厚さの強化石膏ボードが3層積層配置されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の柱梁接合部の耐火被覆構造は、上述した発明において、柱梁接合部は、鋼製接合部材または木質部材であり、柱梁接合部が鋼製接合部材である場合には耐火被覆材は下地材を介して鋼製接合部材に留付けられ、柱梁接合部が木質部材である場合には耐火被覆材は下地材を介さずに直接、木質部材に留付けられることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る柱梁接合部の耐火被覆方法は、上述した柱梁接合部の耐火被覆構造を施工する耐火被覆方法であって、工場において柱部材および梁部材の柱梁接合部から遠い側の芯材の外側に対して耐火被覆材を施工するステップと、その後、建設現場において柱部材および梁部材を建て込んだ後、柱部材および梁部材の柱梁接合部に近い側の残りの芯材の外側と、柱梁接合部の外側に対して耐火被覆材を施工するステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る柱梁接合部の耐火被覆構造によれば、木質の芯材と、芯材の外側に積層配置された複数の耐火被覆材により構成された柱部材および梁部材を接合する柱梁接合部の耐火被覆構造であって、柱梁接合部の外側に積層配置されるとともに、柱部材または梁部材の耐火被覆材の端部に当接配置される複数の板状の耐火被覆材を備え、各層の板状の耐火被覆材の端部の位置が各層間で水平方向または鉛直方向にずれて配置されることによって、端部の位置に形成される耐火被覆材の目地が通し目地とならないように形成されているので、目地からの熱の侵入を抑制して耐火性能を確保することができるとともに現場で容易に施工することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他の柱梁接合部の耐火被覆構造によれば、柱梁接合部の外側に、耐火被覆材として同一厚さの強化石膏ボードが3層積層配置されるので、現場での施工性を向上することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る他の柱梁接合部の耐火被覆構造によれば、柱梁接合部は、鋼製接合部材または木質部材であり、柱梁接合部が鋼製接合部材である場合には耐火被覆材は下地材を介して鋼製接合部材に留付けられ、柱梁接合部が木質部材である場合には耐火被覆材は下地材を介さずに直接、木質部材に留付けられるので、現場での施工性を向上することができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る柱梁接合部の耐火被覆方法によれば、上述した柱梁接合部の耐火被覆構造を施工する耐火被覆方法であって、工場において柱部材および梁部材の柱梁接合部から遠い側の芯材の外側に対して耐火被覆材を施工するステップと、その後、建設現場において柱部材および梁部材を建て込んだ後、柱部材および梁部材の柱梁接合部に近い側の残りの芯材の外側と、柱梁接合部の外側に対して複数の板状の耐火被覆材を施工するステップを有するので、現場で容易に施工することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に係る柱梁接合部の耐火被覆構造および耐火被覆方法の実施の形態を示す梁長手方向の断面図であり、(1)は耐火被覆前、(2)は耐火被覆後である。
図2図2は、本発明に係る柱梁接合部の耐火被覆構造および耐火被覆方法の実施の形態を示す梁短手方向の断面図であり、(1)は耐火被覆前、(2)は耐火被覆後である。
図3図3は、目地部の処理概要図である。
図4図4は、鋼製接合部材の試験体に関する図であり、(1)は温度測定位置、(2)は温度推移である。
図5図5は、木製接合部材の試験体に関する図であり、(1)は温度測定位置、(2)は温度推移である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る柱梁接合部の耐火被覆構造および耐火被覆方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0019】
本実施の形態は、柱梁接合部周りを除いた柱と梁の耐火被覆材を工場で貼り付けることとし、柱梁接合部周りの耐火被覆材は、建設現場での加工や貼り付けが容易となるように強化石膏ボードを用いた乾式の耐火被覆工法としたものである。
【0020】
また、工場で施工した柱と梁の耐火被覆材と柱梁接合部周りの耐火被覆材との境界部にできる目地や、柱梁接合部の入隅部にできる目地は、火災加熱時に隙間が生じて荷重支持部材の燃焼を促進させる弱点部になりやすい。そこで本実施の形態では、耐火被覆材の目地部から熱が入りにくいような耐火上適切な処理を施している。
【0021】
(柱梁接合部の耐火被覆構造)
まず、本発明に係る柱梁接合部の耐火被覆構造の実施の形態について説明する。
【0022】
図1(1)、図2(1)は、建設現場における耐火被覆前の柱梁接合部である。図1(2)、図2(2)は耐火被覆後の柱梁接合部であり、本実施の形態に係る柱梁接合部の耐火被覆構造10である。(1)が工場で耐火被覆材を貼り付ける範囲に相当し、(2)が建設現場での耐火被覆材の施工範囲に相当する。これらの図に示すように、柱部材12と梁部材14が柱梁接合部16を介して接合している。柱梁接合部16は、鋼製接合部材18を用いて構成される。
【0023】
図1(1)、図2(1)に示すように、柱部材12および梁部材14は、木質構造部材である。この木質構造部材は、荷重を支持する集成材からなる芯材20と、芯材20の外側表面に積層配置された平板状の2枚の強化石膏ボード22(耐火被覆材)を備える。なお、梁部材14の最外側の強化石膏ボード22の外側には耐火シート24が配置され、この耐火シート24の外側には化粧材25が配置される。耐火シート24は、加熱により発泡して断熱性を発現するシートである。化粧材25は、木質材料で構成することができる。強化石膏ボード22、化粧材25の1枚の厚さは15mm程度、耐火シート24の厚さは2mm程度を想定しているが、本発明はこれに限るものではない。図2(1)に示すように、柱部材12と梁部材14の芯材20と、柱梁接合部16の鋼製接合部材18の梁短手方向の幅寸法は同じである。
【0024】
図1(1)に示すように、梁部材14の下面の強化石膏ボード22は、柱部材12の側端から長さL(例えばL=200mm程度)だけ梁長手方向に離れた位置より以遠に設けられている。この部分は工場で施工されている。柱梁接合部16の近傍に長さLの区間を設けることで、柱部材12と梁部材14の建方後に柱梁接合部16でレベルの調整やボルトの締付などを行うことが可能である。また、梁部材14の下面の各層の強化石膏ボード22、耐火シート24、化粧材25は、水平方向に所定長さL1(例えばL1=30mm程度)だけずらして配置され、端部は階段状にされている。
【0025】
図2(1)に示すように、梁部材14の側面の強化石膏ボード22、耐火シート24、化粧材25は、上下方向(鉛直方向)に所定長さL2(例えばL2=30mm程度)だけずらして配置され、端部は階段状にされている。
【0026】
柱部材12の側面の各層の強化石膏ボード22と耐火シート24についても、柱部材12の上端から上下方向に所定長さL3(例えばL3=30mm程度)だけずらして配置され、端部は階段状にされている。
【0027】
柱梁接合部16の鋼製接合部材18は、上下に間隔をあけて配置されるベースプレート26、28と、ベースプレート26、28を上下に繋ぐ複数のリブプレート30とを備える。下のベースプレート26は、柱部材12の上端面に固定される。上のベースプレート28には、ネジ棒鋼32およびナット34を介して梁部材14の下面が固定される。上下のベースプレート26、28とリブプレート30によって形成される略矩形状の前後の開口面と、前後方向の中間部の空間には、略矩形状の下地材36が嵌め込まれてベースプレート26、28、リブプレート30に対して接着剤等により固定される。下地材36は、例えばケイ酸カルシウム板で構成することができる。
【0028】
図1(2)、図2(2)に示すように、柱梁接合部16の外側、すなわち前後左右の側面には、同一厚さの鉛直板状の強化石膏ボード38が3層鉛直方向に配置される。このうち内側2層の強化石膏ボード38の端部は柱部材12および梁部材14の側面の強化石膏ボード22の端部に突合配置される。最外側の強化石膏ボード38は、図1(2)では梁部材14の下面の最外側の強化石膏ボード40に当接し、図2(2)では梁部材14の側面の耐火シート24と化粧材25に当接している。強化石膏ボード38は、ビスや接着剤を用いて下地材36に固定される。下地材36を介して鋼製接合部材18に留付けられるので、現場での施工性を向上することができる。
【0029】
また、図1(2)に示すように、柱部材12の側端から梁長手方向の長さLの区間の梁部材14の下面には、同一厚さの水平板状の強化石膏ボード40が3層配置される。各層の強化石膏ボード40の一方の端部は、工場で施工された梁部材14の強化石膏ボード22と耐火シート24と化粧材25の端部に当接している。また、最外側の強化石膏ボード40の他方の端部は、鉛直板状の強化石膏ボード38の上端部に当接している。
【0030】
具体的には、図3に示すように、各層の強化石膏ボード38、40の端部の位置が各層間で水平方向または上下方向にずれて配置されることによって、端部の位置に形成される強化石膏ボード38、40、22の間の目地が通し目地とならないようにしている。柱梁接合部16の入隅部の目地42と、柱部材12と梁部材14の強化石膏ボード22との境界の目地44は通し目地とならないので、これら目地42、44からの熱の侵入を抑制して柱梁接合部16における耐火性能を確保することができる。また、この耐火被覆構造10は、建設現場で容易に施工することができる。
【0031】
本実施の形態によれば、木質構造部材を使用した柱梁接合部の耐火被覆の施工を建設現場で容易に行うことができる。現場で比較的施工しやすい強化石膏ボードやビス等の材料を用いることで、施工性の向上が見込める。現場施工での施工誤差による目地部の隙間に対して適切な処理を施すことで、耐火性能の低下を防ぎ、耐火上の安全性を担保することができる。
【0032】
なお、上記の実施の形態において、強化石膏ボード22の外側には、耐火シート24を必ず設ける必要がある。耐火シート24や強化石膏ボード38、40の外側には防水シートを設けてもよい。また、防水シートの外側に胴縁等を介して木製の化粧材等の仕上げ材を設けてもよい。このようにしても上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0033】
また、上記の実施の形態においては、板状の耐火被覆材が強化石膏ボードである場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、施工性に優れた板状の耐火被覆材であればいかなる材料でもよい。このようにしても上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0034】
また、上記の実施の形態において、柱梁接合部16が鋼製接合部材18で構成される場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、柱梁接合部16を木製の接合部材で構成してもよい。このようにしても上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0035】
(柱梁接合部の耐火被覆方法)
次に、本発明に係る柱梁接合部の耐火被覆方法の実施の形態について説明する。
【0036】
本実施の形態に係る柱梁接合部の耐火被覆方法は、上述した柱梁接合部の耐火被覆構造10を施工する耐火被覆方法である。本方法は、図1(1)および図2(1)に示すように、工場において柱部材12および梁部材14の柱梁接合部16から遠い側の芯材20の外側に対して強化石膏ボード22と耐火シート24を施工するステップと、その後、建設現場において柱部材12および梁部材14を建て込むステップと、その後、図1(2)および図2(2)に示すように、柱部材12および梁部材14の柱梁接合部16に近い側の残りの芯材20の外側と、柱梁接合部16の外側に対して強化石膏ボード38、40を施工するステップを有する。
【0037】
柱梁接合部16の周りの強化石膏ボード38、40の留付けには、無機系接着剤とビスを併用することができる。ビスは現場の留付けの際に使用頻度が高く、施工しやすいため好適である。強化石膏ボード38、40は、施工性を考慮して同一厚さのものを使用することが好ましい。なお、建築基準法告示第1399号より、木材に耐火被覆材として強化石膏ボードを張り1時間の耐火性能を確保する被覆型の木質耐火部材では、強化石膏ボード2枚以上で層厚46mm以上の被覆を施すよう示されているため、後述のとおり耐火試験を行い、1時間の耐火性能を有することを確認している。
【0038】
工場で施工した柱部材12および梁部材14の強化石膏ボード22と柱梁接合部16周りの強化石膏ボード38、40の目地44は、強化石膏ボード22、38、40の小口が突き付けによって形成されることから、通し目地とならないように、図3に示したように、強化石膏ボードの各層を水平方向、鉛直方向に所定長さだけずらして段差状にする。また、柱梁接合部16の入隅部の目地42は、通し目地とならないように段差状にする。
【0039】
次に、強化石膏ボード38、40の施工手順の一例について説明する。
まず、鋼製接合部材18に下地材36を設置した後、梁部材14の芯材20の下面に強化石膏ボード40を下張りし、その下面に強化石膏ボード40を上張りする。強化石膏ボード40は、それぞれビスおよび接着剤で固定する。その後、ファイバーテープ等を目地位置に貼り付けてその上から接着剤を塗り込む。
【0040】
次に、鋼製接合部材18の側面に強化石膏ボード38を下張りする。強化石膏ボード38を上側と下側に分け、これを上から順に張り付け、それぞれ下地材36にビスおよび接着剤で固定する。続いて、この強化石膏ボード38の外側に強化石膏ボード38を上張りする。その後、ファイバーテープ等を目地位置に貼り付けてその上から接着剤を塗り込む。
【0041】
次に、梁部材14の下面の強化石膏ボード40の下面に、3枚目の強化石膏ボード40を張り付ける。続いて、鋼製接合部材18の梁短手方向の側面に3枚目の強化石膏ボード38を張り付ける。その後、鋼製接合部材18の梁長手方向の側面に3枚目の強化石膏ボード38を張り付ける。
【0042】
このような施工手順によれば、図3に示したような目地42、44を容易に形成することができ、目地42、44からの熱の侵入を抑制して耐火性能を確保することができる。
【0043】
(本発明の効果の検証)
次に、本発明の効果を検証するために行った試験および結果について説明する。
【0044】
上記の耐火被覆構造10を模擬した試験体1と、鋼製接合部材の代わりに木製接合部材を用いた試験体2を作製して1時間の耐火性能を調べる耐火試験を行い、試験体各部の温度を測定した。試験体1、2の概要図および温度測定位置、温度測定結果を図4図5に示す。なお、各試験体においては、強化石膏ボード1枚の厚さを15mmとし、現場施工の強化石膏ボードの外側にのみ耐火シートを貼り付けている。そして、その外側に防水シートを貼り付けている。さらに、耐火シートの外側に胴縁を介して木製の仕上げ材を設けている。
【0045】
これらの図に示すように、柱梁接合部周りの芯材表面温度は放冷中に最大となり、それ以降は下降を辿った。柱梁接合部周りの芯材表面温度は、鋼製接合部材の試験体1で最大111.0℃、木製接合部材の試験体2で最大174.5℃となった。一般的に木材は200℃以上で着火する可能性があるが、いずれも200℃以下となった。また、各試験体ともに柱梁接合部周りの芯材表面に変色や炭化は見られなかった。したがって、本実施例の柱梁接合部周りの耐火被覆構造が1時間の耐火部材相当の耐火性能となることが確認された。
【0046】
以上説明したように、本発明に係る柱梁接合部の耐火被覆構造によれば、木質の芯材と、芯材の外側に積層配置された複数の耐火被覆材により構成された柱部材および梁部材を接合する柱梁接合部の耐火被覆構造であって、柱梁接合部の外側に積層配置されるとともに、柱部材または梁部材の耐火被覆材の端部に当接配置される複数の板状の耐火被覆材を備え、各層の板状の耐火被覆材の端部の位置が各層間で水平方向または鉛直方向にずれて配置されることによって、端部の位置に形成される耐火被覆材の目地が通し目地とならないように形成されているので、目地からの熱の侵入を抑制して耐火性能を確保することができるとともに現場で容易に施工することができる。
【0047】
また、本発明に係る他の柱梁接合部の耐火被覆構造によれば、柱梁接合部の外側に、耐火被覆材として同一厚さの強化石膏ボードが3層積層配置されるので、現場での施工性を向上することができる。
【0048】
また、本発明に係る他の柱梁接合部の耐火被覆構造によれば、柱梁接合部は、鋼製接合部材または木質部材であり、柱梁接合部が鋼製接合部材である場合には耐火被覆材は下地材を介して鋼製接合部材に留付けられ、柱梁接合部が木質部材である場合には耐火被覆材は下地材を介さずに直接、木質部材に留付けられるので、現場での施工性を向上することができる。
【0049】
また、本発明に係る柱梁接合部の耐火被覆方法によれば、上述した柱梁接合部の耐火被覆構造を施工する耐火被覆方法であって、工場において柱部材および梁部材の柱梁接合部から遠い側の芯材の外側に対して耐火被覆材を施工するステップと、その後、建設現場において柱部材および梁部材を建て込んだ後、柱部材および梁部材の柱梁接合部に近い側の残りの芯材の外側と、柱梁接合部の外側に対して複数の板状の耐火被覆材を施工するステップを有するので、現場で容易に施工することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明に係る柱梁接合部の耐火被覆構造および耐火被覆方法は、木質構造部材からなる柱と梁を接合した柱梁接合部に有用であり、特に、現場での施工性を向上するのに適している。
【符号の説明】
【0051】
10 柱梁接合部の耐火被覆構造
12 柱部材
14 梁部材
16 柱梁接合部
18 鋼製接合部材
20 芯材
22,38,40 強化石膏ボード(耐火被覆材)
24 耐火シート
25 化粧材
26,28 ベースプレート
30 リブプレート
32 ネジ棒鋼
34 ナット
36 下地材
42,44 目地
図1
図2
図3
図4
図5