(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063771
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】屋根下地構造
(51)【国際特許分類】
E04D 3/40 20060101AFI20220415BHJP
E04D 13/152 20060101ALI20220415BHJP
E04D 5/00 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
E04D3/40 C
E04D13/152 Z
E04D5/00 B
E04D3/40 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172183
(22)【出願日】2020-10-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・2020年2月20日 「GRAND nEXT/COLOR BEST 通気下地屋根構法」カタログ にて公開 ・2020年4月16日 https://www.kmew.co.jp/index.html https:/www.kmew.co.jp/catalog/online.html https://www.catalabo.org/iportal/CatalogViewInterfaceStartUpAction.do?method=startUp&mode=PAGE&volumeID=CATALABO&catalogId=59893590000&pageGroupId=&designID=link&catalogCategoryId=&designConfirmFlg= にて公開 ・2020年2月27日 https://www.kmew.co.jp/index.html https://www.kmew.co.jp/shouhin/roof/tukisitaji/ にて公開 ・2020年3月9日 GRAND nEXT/COLOR BEST 通気下地屋根構法 技術資料 https://www.kmew.co.jp/biz/ https://www.kmew.co.jp/catalog_s/ https://www.catalabo.org/iportal/CatalogViewInterfaceStartUpAction.do?method=startUp&mode=PAGE&volumeID=CATALABO&catalogId=59893580000&pageGroupId=&designID=link&catalogCategoryId=&designConfirmFlg= にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】西田 俊文
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AA02
2E108AS02
2E108AZ01
2E108AZ02
2E108AZ08
2E108BB04
2E108BN01
2E108CV08
2E108GG18
2E108JJ14
(57)【要約】
【課題】軒先換気口により屋根の外観が損なわれにくい屋根下地構造を提供する。
【解決手段】屋根下地構造1は、野地板2と、野地板2上に配置される防水シート3と、防水シート3上に配置される縦桟4と、縦桟4上に配置される横桟5と、軒先換気口51を有する軒先換気部材5と、軒先換気口51と通じる上部換気口6と、軒先換気口51の下方に位置する下水切り部材7と、軒先換気口51の前側に位置する前水切り部材8と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野地板と、
前記野地板上に配置される防水シートと、
前記防水シート上に配置される縦桟と、
前記縦桟上に配置される横桟と、
軒先換気口を有する軒先換気部材と、
前記軒先換気口と通じる上部換気口と、
前記軒先換気口の下方に位置する下水切り部材と、
前記軒先換気口の前側に位置する前水切り部材と、を備える、
屋根下地構造。
【請求項2】
前記下水切り部材と前記前水切り部材との間隔は、基部から先端部に向かう方向で徐々に狭くなるように構成されている、
請求項1に記載の屋根下地構造。
【請求項3】
前記縦桟の長手方向に延びる樋部をケラバにさらに備える、
請求項1又は2に記載の屋根下地構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根下地構造に関する。より詳細には、本発明は、軒先換気口を有する屋根下地構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二重屋根を利用した高断熱建物が記載されている。この高断熱建物は、下部屋根用野地板の上側の透湿性の防風防水シートと上部屋根用野地板との間に、空気が流通可能な屋根側通気層が形成されている。屋根側通気層は、戸外の空気が上部屋根用野地板の軒部分の下方に形成された軒天換気口から流入可能に形成され、且つ、屋根側通気層内の空気が屋根の上端部に形成された棟換気口から排出可能に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の高断熱建物では、軒天井に軒天換気口を形成しているので、軒天換気口が下方から見えて、屋根の外観が損なわれる場合があった。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされており、軒先換気口により屋根の外観が損なわれにくい屋根下地構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る屋根下地構造は、野地板と、前記野地板上に配置される防水シートと、前記防水シート上に配置される縦桟と、前記縦桟上に配置される横桟と、軒先換気口を有する軒先換気部材と、前記軒先換気口と通じる上部換気口と、前記軒先換気口の下方に位置する下水切り部材と、前記軒先換気口の前側に位置する前水切り部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、下水切り部材と前水切り部材により軒先換気口が見えにくくなり、屋根の外観が損なわれにくい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1Aは、本発明に係る屋根下地構造を示す断面図である。
図1Bは、本発明に係る屋根下地構造の軒先部分を示す断面図である。
【
図2】
図2Aは、本発明に係る屋根下地構造のケラバ部分を示す断面図である。
図2Bは、本発明に係る屋根下地構造の隅棟部分を示す断面図である。
【
図3】
図3Aは、本発明に係る屋根下地構造の棟部分を示す断面図である。
図3Bは、本発明に係る屋根下地構造の谷部分を示す断面図である。
【
図4】
図4A及び
図4Bは、本発明に係る屋根下地構造の壁取合い部分を示す断面図である。
【
図5】
図5A~Cは、本発明に係る屋根下地構造の施工順序を示す斜視図である。
【
図6】
図6A~Cは、本発明に係る屋根下地構造の施工順序を示す斜視図である。
【
図7】
図7Aは、本発明に係る屋根下地構造の隅棟部分の施工状態を示す斜視図である。
図7Bは、本発明に係る屋根下地構造の隅棟部分の施工状態を示す断面図である。
【
図8】
図8Aは、本発明に係る屋根下地構造の谷部分の施工状態を示す斜視図である。
図8Bは、本発明に係る屋根下地構造の谷部分の施工状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
(1)概要
本実施形態に係る屋根下地構造100は、野地板1と、防水シート2と、縦桟3と、横桟4と、軒先換気部材5と、上部換気口6と、下水切り部材7及び前水切り部材8と、を備える(
図1A及び
図1B参照)。屋根下地構造100は、横桟4の上に屋根材9が施工され、屋根101が形成される。
【0010】
軒先換気部材5は軒先換気口51を有している。下水切り部材7は、軒先換気口51の下方に位置している。前水切り部材8は軒先換気口51の前側に位置している。したがって、軒先換気口51は、下水切り部材7と前水切り部材8により、屋根101の下方から前方にわたる範囲から見えにくくなる。よって、屋根101の外観が損なわれにくい。また、下水切り部材7により軒先換気口51に向かって下方から吹き上がる雨水を遮るとともに、前水切り部材8で軒先換気口51に向かって前方から吹き付ける雨水を遮ることができ、軒先換気口51に雨水が浸入しにくくなる。
【0011】
また本実施形態に係る屋根下地構造100においては、下水切り部材7と前水切り部材8との間隔が、下水切り部材7及び前水切り部材8の基部から先端部に向かう方向で徐々に狭くなるように構成されていることが好ましい。この場合、下水切り部材7と前水切り部材8との間を通じて軒先換気口51がさらに見えにくくなり、屋根101の外観低下がさらに抑制することができる。また雨水が、下水切り部材7の先端部と前水切り部材8の先端部との間の狭い空間を通じて下水切り部材7と前水切り部材8との間の広い空間に浸入することになり、雨水が急激な減圧を受けて失速しやすくなり、軒先換気口51への雨水の浸入がさらに低減され、屋根101の防水性が向上する。
【0012】
また本実施形態に係る屋根下地構造100は、縦桟3の長手方向に延びる樋部10をケラバ102に備えることが好ましい。この場合、樋部10を通じて排水することができ、屋根101の防水性が向上する。
【0013】
なお、本明細書において、「前方」とは屋根下地構造100及び屋根101の屋外に向かう方向を意味する。屋外に向かう方向とは、屋根101の小屋裏と反対に向かう方向である。例えば、軒先換気口51の前方とは、軒先換気口51から見て屋外に向かう方向(小屋裏と反対に向かう方向)を意味する。
【0014】
(2)詳細
図1A及び
図1Bに示すように、本実施形態に係る屋根下地構造100は、野地板1と、防水シート2と、縦桟3と、横桟4と、軒先換気部材5と、上部換気口6と、下水切り部材7及び前水切り部材8と、を備える。屋根下地構造100は、横桟4の上に複数の屋根材9が施工され、屋根101が形成される。
【0015】
野地板1は、垂木104の上に固定して配置される板状の部材であり、例えば、合板などが使用される。
【0016】
防水シート2は、野地板1上に配置されるシート状の部材であり、透湿系ルーフィング材を使用することができる。透湿系ルーフィング材は、JIS A 6111「屋根用透湿防水シート」の規格を満たすものである。なお、防水シート2が非透湿系のアスファルトルーフィング材を使用することもできるが、透湿性を有する防水シート2を使用することにより、屋根の小屋裏の空間等に湿気が溜まりにくくなり、屋根の劣化が低減される。
【0017】
縦桟3は、防水シート2上に固定して配置される部材である。縦桟3は、屋根勾配の方向(例えば軒棟方向)に延びる形状を有し、木材あるいはプラスチック材で形成されている。防水シート2上には複数の縦桟3が設けられる。複数の縦桟3は、防水シート2上において屋根勾配の方向と直交する方向に並べられている。複数の縦桟3は、垂木104の間隔毎に配置され、垂木103の長手方向に沿って配置される。
【0018】
横桟4は、縦桟3上にビス等で固定して配置される部材である。横桟4は、屋根勾配の方向と直交する方向に延びる形状を有し、木材あるいはプラスチック材で形成されている。縦桟3上には複数の横桟4が設けられる。複数の横桟4は屋根材9の葺き足の間隔で配置されている。各横桟4は複数の縦桟3に架け渡して配置されている。
【0019】
屋根材9は、横桟4上に固定して配置される部材である。屋根材9はセメント硬化物を主成分とする窯業系屋根材や金属製屋根材を使用することができる。屋根材9はビス等の固定具109で横桟4に固定することができる。横桟4上には複数の屋根材9が配置される。屋根勾配の方向で隣接する屋根材9は略半分が重なった状態で配置されている。複数の屋根材9は屋根101の全体にわたって配置され、野地板1、防水シート2,縦桟3、横桟4をカバーしている。
【0020】
そして、屋根材9は、防水シート2と対向して配置されており、屋根材9と防水シート2との間の空間が通気路105として形成されている。通気路105は屋根勾配の方向に沿って形成されている。また防水シート2を通過した湿気は通気路105に進入する。通気路105は、軒先換気口51から上部換気口6にまで連続するように形成される。したがって、軒先換気口51から通気路105に流入した空気は、通気路105を通って流れて上部換気口6にまで達し、上部換気口6から排出される。
【0021】
軒先換気部材5は、アルミニウム亜鉛めっき鋼板などの金属製の部材であって、断面略L字状に形成されている。軒先換気部材5は、軒方向に沿って延びるように形成されている。軒先換気部材5の上部は屋根材9と横桟4との間に配置されて横桟4に固定されている。軒先換気部材5の下部は、野地板1の軒側端部の前側(屋外側)に位置している。軒先換気部材5の下部には軒先換気口51が形成されている。軒先換気口51は軒先換気部材5の下部を厚み方向で貫通する孔であって、複数の軒先換気口51が軒方向に沿って設けられている。軒先換気口51は、例えば、上下方向に延びる長孔に形成することができる。軒先換気口51は、通気路105の軒側端部と対向して配置されている。
【0022】
下水切り部材7は、アルミニウム亜鉛めっき鋼板などの金属製の部材である。下水切り部材7の上部は野地板1と縦桟3との間に配置されて野地板1の軒側端部に固定されている。下水切り部材7の下部は野地板1の軒側端部よりも前側(屋外側)に位置し、かつ軒先換気部材5の下端部よりも下方に位置している。下水切り部材7の下部は、野地板1の軒側端部から見て斜め下方に下り傾斜している。下水切り部材7の下部は、軒先換気口51よりも下方に位置するため、軒先換気口51を下側から見えにくくすることができ、また軒先換気口51に向かって下方から吹き上げる雨水を下水切り部材7で遮ることができ、軒先換気口51から通気路105への雨水の浸入を低減することができる。
【0023】
ここで、下水切り部材7の先端部(下端部)の水平方向における位置は、軒先換気口51の上端部の位置とほぼ同じか、わずかに前方である。すなわち、下水切り部材7の先端部を通る仮想の鉛直上向き線を想定した場合、仮想の鉛直上向き線の上に軒先換気口51の上端部が位置するか、わずかに軒先側に位置するようになっている。これにより、下水切り部材7で軒先換気口51を下方から十分にカバーすることができ、見えにくくしたり雨水の浸入を低減したりする効果が十分に発揮される。
【0024】
前水切り部材8は、アルミニウム亜鉛めっき鋼板などの金属製の部材である。前水切り部材8の上部は屋根材9と横桟4との間に配置されて横桟4に固定されている。前水切り部材8の下部は軒先換気部材5よりも前側(屋外側)に位置し、かつ軒先換気口51に対向して位置している。前水切り部材8の先端部(下端部)は軒先換気部材51の下端部よりも下側に位置している。前水切り部材8の下部は、軒先換気口51よりも前方に位置するため、軒先換気口51を前方から見えにくくすることができ、また軒先換気口51に向かって前方から吹き込んでくる雨水を前水切り部材8で遮ることができ、軒先換気口51から通気路105への雨水の浸入を低減することができる。
【0025】
ここで、下水切り部材7の先端部(下端部)と前水切り部材8の先端部(下端部)との高さはほぼ同じであることが好ましい。この場合、下水切り部材7の先端部と前水切り部材8の先端部とが水平方向で並んで配置されることになり、下水切り部材7の先端部と前水切り部材8の先端部の間からの雨水の浸入を低減することができる。
【0026】
また下水切り部材7と前水切り部材8との間隔は、基部から先端部に向かう方向で徐々に狭くなるように構成されている。この場合、例えば、前水切り部材8は基部(横桟4の前方に位置する部分)から先端部に向かってほぼ鉛直下向きに延びており、この前水切り部材8の先端部に下水切り部材7の先端部が向かうように、下水切り部材7が基部(野地板1の軒側端部の前方に位置する部分)から斜め下方に向かって延びている。
【0027】
このように下水切り部材7と前水切り部材8との間隔は、基部から先端部に向かう方向で徐々に狭くなるように構成されていると、下水切り部材7と前水切り部材8との間を通じて軒先換気口51がさらに見えにくくなる。また雨水は、下水切り部材7の先端部と前水切り部材8の先端部との間の狭い空間から、下水切り部材7と前水切り部材8との間の広い空間に浸入することになり、雨水が急激な減圧を受けて失速しやすくなる。
【0028】
下水切り部材7の先端部と前水切り部材8の先端部の下方には、軒樋107が配置されている。軒樋107は軒方向に沿って延びるように配置されている。また軒樋107は鼻隠し106に取り付けた軒樋取付け具108に固定されて支持されている。そして、軒樋107が軒先換気口51の前方(屋外側)で斜め下方に位置しているので、軒樋107で雨水を遮断して軒先換気口51への浸入を低減することができる。
【0029】
上部換気口6は、軒先換気口51よりも高い位置にある換気口であり、
図1Aに示すように、例えば、屋根101の棟部分に設けることができる。上部換気口6には通気路105の上端部(軒側端部と反対側の端部)が連通しており、これにより、軒先換気口51と上部換気口6とが通気路105を介してつながっている。
【0030】
図2Aは、屋根101のケラバ102を示している。ケラバ102には、樋部10が設けられている。樋部10は上面が開口するコ字状に形成されており、屋根材9のケラバ側端部の下方に配置されている。また樋部10はケラバ102に沿って延びるように形成されている。樋部10はケラバ捨て水切り110の一部として形成されている。ケラバ捨て水切り110の一端は屋根材9と横桟4の間に位置して横桟4にビス等で固定されている。またケラバ捨て水切り110の他端は樋部10の上端部で形成されており、樋部10の上端部には引っ掛け部112が形成されている。
【0031】
ケラバ102の端部には、登り木132が設けられており、登り木132の外面及び上面を覆うようにしてケラバ水切りカバー111が設けられている。ケラバ水切りカバー111はケラバ102に沿って延びるように形成されている。ケラバ水切りカバー111の下端部は野地板1よりも下方に位置している。ケラバ水切りカバー111の上端部には引っ掛け部113が設けられている。そして、樋部10の引っ掛け部112とケラバ水切りカバー111の引っ掛け部113とが引っ掛かっている。これにより、ケラバ水切りカバー111の上端部が樋部10に引っ掛かって強固に取り付けられ、ケラバ水切りカバー111が強風等によっても脱落しにくくなる。なお、ケラバ水切りカバー111は登り木132にもビス等で固定されている。
【0032】
図2Bは、屋根101の隅棟部分の構造を示している。隅棟部分では、野地板1の端部に桟木133が設けられており、その上に屋根材9の隅棟側端部が配置されている。桟木133は隅棟に沿って延びるように形成されている。また屋根材9の隅棟側端部の上面には一対の笠木115が設けられており、一対の笠木115を跨ぐようにして棟包114が配置されている。棟包114はビス等の固定具116で笠木115に固定されている。そして、隅棟部分においては、桟木113と縦桟3及び横桟4との間の空間が通気路134として形成されている。通気路134は軒側端部において軒先換気口51と対向して連通しており、通気路134の屋根勾配の方向の上端部では上部換気口6と連通している。
【0033】
図3Aは、屋根101の換気棟部を示している。換気棟部には、通気路105と連通する上部換気口6が形成されている。上部換気口6は、換気棟包117に形成されている。換気棟包117は屋根101の両方の傾斜に跨って配置されている。また換気棟包117には迷路構造が形成されており、迷路構造の前方に上部換気口6が形成されている。捨て水切り118は上部換気口6から浸入する雨水を小屋裏にまで到達しないように遮断している。そして、通気路105から迷路構造を通って上部開口部6から空気が排気される。
【0034】
図3Bは、屋根101の谷部の構造を示している。縦桟3及び横桟4の屋根勾配の方向の下方には桟木135が設けられている。桟木135は谷部に沿って延びるように形成されている。また谷部には、谷板119が設けられている。谷板119は谷部に沿って延びるように形成されている。また谷部119の両端部は桟木135と屋根材9の谷部側端部の間に配置され、桟木135に固定されている。そして、谷部においては、桟木135と縦桟3及び横桟4との間の空間が通気路136として形成されている。通気路136は軒側端部において軒先換気口51と対向して連通しており、通気路136の屋根勾配の方向の上端部では上部換気口6と連通している。
【0035】
図4Aは、桁方向における壁取り合い部分を示している。121は外装材であって、外装材121の下方には、換気雨押え120が屋根材9の上面に配置されている。換気雨押え120には迷路構造が設けられており、この迷路構造を介して通気路105と上部換気口6とが連通している。上部換気口6は換気雨押え120の軒側を向く面に形成されている。換気雨押え120はビス等の固定具123で屋根材9及び横桟4に固定されている。また捨て水切り122により上部換気口6から浸入した雨水が野地板1にまで達しないようにしている。
【0036】
図4Bは、屋根101の屋根勾配の方向(流れ方向)の壁取り合い部分を示している。この場合、外装材121の下方には雨押え127が設けられており、雨押え127は笠木126にビス等の固定具125で固定されている。雨押え127と屋根材9との間にはシール124が設けられている。また雨押え127の下方には、上面が開口する断面コ字状の捨て水切り128が設けられている。捨て水切り128は樋のような作用を有し、排水するために使用されている。
【0037】
以下、本実施形態の屋根下地構造100の施工工程を示す。まず
図5Aのように、野地板1に野地板キャップ130を取り付ける。野地板キャップ130は一片が長いコ字状に形成されており、野地板1の軒側端部とケラバ側端部にそれぞれ嵌め込んで取り付けられる。ここで、野地板1の軒側端部には、野地板キャップ130の短い方の一片が上になるように取り付けられるが、野地板1のケラバ側端部には、野地板キャップ130の短い方の一片が上になるように取り付けられる。これにより、ケラバ側の野地板キャップ130には登り木132が配置しやすくなる。したがって、野地板1の不陸が登り木132に影響を与えにくくすることができ、例えば、登り木132のガタツキを低減したり位置ずれしにくくすることができる。
【0038】
次に、
図5Bに示すように、野地板1の軒側端部に下水切り部材7を取り付ける。下水切り部材7の取付けは、両面テープなどの固定具131で行うことができるが、これに限定されない。次に、
図5Cに示すように、野地板1の上面の全面にわたって防水シート2が配置される。防水シート2は複数配置され、隣接する防水シート2は上下に重ねて配置される。次に、
図6Aに示すように、ケラバ側端部において、防水シート2上に登り木132が配置される。登り木132は上下二段に配置される。また登り木132はケラバの端部に沿って延びるように配置される。次に、
図6Bに示すように、複数の縦桟3を防水シート2上に配置する。各縦桟3は屋根勾配の方向に沿って延びるように配置される。また複数の縦桟3は、屋根勾配方向と直交する方向に所定の間隔(垂木104の間隔)で並べて配置される。また
図7A及び
図7Bに示すように、隅棟部分においては、桟木133が配置され、
図8A及び
図8Bに示すように、谷部においては、桟木135が配置される。桟木133及び135は隣接する縦桟3との間隔が約30mmとすることができるが、これに限定されるものではない。桟木133と縦桟3との間隔が隅棟部分の通気路134として形成され、桟木135と縦桟3との間隔が谷部の通気路136として形成される。この後、
図6Cに示すように、複数の横桟4を縦桟3上に配置して固定する。
【0039】
この後、軒換気部材5、前水切り部材8,屋根材9の施工、棟包117の施工等を順次行うことによって、屋根下地構造100及び屋根101が形成される。
【0040】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る屋根下地構造100は、野地板1と、野地板1上に配置される防水シート2と、防水シート2上に配置される縦桟3と、縦桟3上に配置される横桟4と、軒先換気口51を有する軒先換気部材5と、軒先換気口51と通じる上部換気口6と、軒先換気口51の下方に位置する下水切り部材7と、軒先換気口の前側に位置する前水切り部材8と、を備える。
【0041】
この態様によれば、下水切り部材7と前水切り部材8により軒先換気口51が見えにくくなり、屋根101の外観が損なわれにくい、という利点がある。また下水切り部材7と前水切り部材8の間から軒先換気口51への雨水の浸入が低減され、防水性を向上させることができる、という利点がある。
【0042】
第2の態様は、第1の態様において、下水切り部材7と前水切り部材8との間隔は、基部から先端部に向かう方向で徐々に狭くなるように構成されている。
【0043】
この態様によれば、下水切り部材7と前水切り部材8の間から軒先換気口51への雨水の浸入がさらに低減され、防水性を向上させることができる、という利点がある。
【0044】
第3の態様は、第1又は第2の態様において、縦桟3の長手方向に延びる樋部10をケラバにさらに備える。
【0045】
この態様によれば、樋部10を通じて排水することができ、防水性をさらに向上することができる、という利点がある。
【符号の説明】
【0046】
1 野地板
2 防水シート
3 縦桟
4 横桟
5 軒先換気部材
51 軒先換気口
6 上部換気口
7 下水切り部材
8 前水切り部材
10 樋部