(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063774
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】砂熱処理装置
(51)【国際特許分類】
B22C 5/00 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
B22C5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172187
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520285880
【氏名又は名称】中部電力ミライズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】特許業務法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 吉明
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 千春
(72)【発明者】
【氏名】池田 大亮
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093AA01
4E093AA02
4E093AA03
(57)【要約】
【課題】中子を粉砕して得た粉砕砂を熱処理する砂熱処理装置を省スペースで構成することができる技術を提供する。
【解決手段】砂熱処理装置100は、本体部110と電気ヒーター130を有している。本体部110は、両端が開口している貫通穴120を有している。貫通穴120は、中子を粉砕して得た粉砕砂が自由落下可能に、鉛直方向に沿って延在している。電気ヒーター130は、貫通穴120内を自由落下する粉砕砂を加熱可能に、本体部110に、貫通穴120と離間して配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中子を粉砕して得た粉砕砂を熱処理する砂熱処理装置であって、
本体部と、電気加熱部を備え、
前記本体部は、両端が開口し、粉砕砂が自由落下可能に鉛直方向に沿って延在する貫通穴を有し、
前記電気加熱部は、前記貫通穴内を自由落下する粉砕砂を加熱可能に、前記本体部に、前記貫通穴と離間して配置されている電気ヒーターを有していることを特徴とする砂熱処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の砂熱処理装置であって、
前記貫通穴は、前記貫通穴の延在方向と交差する断面で見て、壁面により囲まれている形状を有し、
前記電気ヒーターは、前記貫通穴の外周側に配置されていることを特徴とする砂熱処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の砂熱処理装置であって、
前記貫通穴は、前記貫通穴の延在方向と交差する断面で見て、内周側壁面と外周側壁面により形成される環状を有し、
前記電気ヒーターは、前記貫通穴の内周側と外周側の少なくとも一方に配置されていることを特徴とする砂熱処理装置。
【請求項4】
請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の砂熱処理装置であって、
前記貫通穴の延在方向に沿って複数の領域が規定され、
前記複数の領域は、少なくとも、第1の領域と、前記第1の領域より砂の自由落下方向に配置されている第2の領域を含み、
前記電気加熱部は、前記第1の領域に配置されている第1の電気ヒーターと、前記第2の領域に配置されている第2の電気ヒーターを有し、
前記第1の領域において砂の温度が上昇し、前記第2の領域において砂の温度が維持されるように構成されていることを特徴とする砂熱処理装置。
【請求項5】
請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の砂熱処理装置であって、
前記貫通穴内を自由落下する砂を攪拌する攪拌機構を備えていることを特徴とする砂熱処理装置。
【請求項6】
請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の砂熱処理装置であって、
前記貫通穴に挿入される粉砕砂の大きさは、0.05mm~1.0mmの範囲内であり、
貫通穴の径あるいは幅は、3mm~15mmの範囲内に設定され、
前記貫通穴の長さは、1.5m~3mの範囲内に設定されていることを特徴とする砂熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中子を形成する鋳物砂を再生する際に用いられる砂熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製品を製造する方法として、溶融状態の金属(アルミニウム、鉄、銅等)を主型に流し込む鋳造方法が用いられている。また、中空の製品を鋳造する際には、主型の中に、中空を形成するための中子を配置した状態で溶融状態の金属を流し込む。中子は、鋳物用の砂(以下、「鋳物砂」という)を、バインダと混合して成形することにより形成される。バインダとしては、有機バインダや無機バインダが用いられている。
鋳物砂は、再生して利用されることが多い。特に、無機バインダを用いた無機中子では、鋳物砂として球状の鋳物砂が用いられる。球状の鋳物砂は、球状でない鋳物砂に較べて高価であるため、再生して利用される。
中子を形成する鋳物砂を再生する砂再生装置として、例えば、特許文献1に開示されている砂再生装置が知られている。特許文献1に開示されている砂再生装置は、中子を粉砕して粉砕砂を得る粉砕装置と、バーナーの熱を利用して粉砕砂を熱処理する熱処理装置を有し、バインダが除去された鋳物砂を再生するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている砂再生処理装置は、バーナーや吸排気ファン等を有する熱処理層装置を用いているため、大きい設置スペースを必要とする。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、省スペースで設置することができる砂熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、鋳造に用いられる中子を粉砕して得た粉砕砂を熱処理する際に用いられる。
本発明は、本体部と、電気加熱部を備えている。
本体部は、一つの部材あるいは複数の部材により構成される。本体部は、両端が開口している(両端に開口部を有する)貫通穴を有している。貫通穴は、少なくとも一つ設けられる。貫通穴は、粉砕砂が自由落下可能に、鉛直方向に沿って延在している。粉砕砂は、鉛直方向上方側の開口部から貫通穴内に挿入され、貫通穴内を自由落下して、鉛直方向下方側の開口部から排出される。
電気加熱部は、電気ヒーターを有している。電気ヒーターは、少なくとも一つ設けられる。電気ヒーターとしては、公知の種々の電気ヒーター(例えば、カートリッジヒーター、シーズヒーター、赤外線ヒーター等)を用いることができる。電気ヒーターは、貫通穴内を自由落下する粉砕砂を加熱可能に、本体部に、貫通穴と離間して配置されている。電気ヒーターの数、配置位置や容量(出力)は、単位時間当たりの粉砕砂の処理量等に応じて設定される。
本発明の砂熱処理装置は、省スペースで設置することができる。
貫通穴の形状や電気ヒーターの配置態様は、種々変更可能である。
本発明の異なる形態では、貫通穴は、貫通穴の延在方向と交差する断面で見て、壁面により囲まれている形状を有している。そして、電気ヒーターは、貫通穴の外周側に配置されている。
本形態は、好適には、単位時間当たりの粉砕砂の処理量が少ない場合に用いられる。
また、本発明の異なる形態では、貫通穴は、貫通穴の延在方向と交差する断面で見て、内周側壁面と外周側壁面により形成される環状を有している。そして、電気ヒーターは、貫通穴の内周側と外周側の少なくとも一方に配置されている。
本形態は、好適には、単位時間当たりの粉砕砂の処理量が多い場合に用いられる。
本発明の異なる形態では、貫通穴の延在方向に沿って複数の領域が規定されている。複数の領域は、少なくとも、第1の領域と、第1の領域より粉砕砂の落下方向(鉛直方向下方)に配置されている第2の領域を含んでいる。
また、電気加熱部は、少なくとも、第1の領域に配置されている第1の電気ヒーターと、第2の領域に配置されている第2の電気ヒーターを有している。第1の電気ヒーターおよび第2の電気ヒーターの数や配置位置は、適宜変更可能である。
そして、第1の領域において粉砕砂の温度が上昇し(昇温領域)、第2の領域において粉砕砂の温度が維持される(均熱領域)ように構成されている。例えば、第1の電気ヒーターと第2の電気ヒーターは、同じ設定温度に設定されるが、第2の電気ヒーターとして、第1の電気ヒーターの容量(出力)より小さい容量(出力)を有する電気ヒーターが用いられる。第1の領域および第2の領域の範囲(貫通孔の延在方向に沿った長さ)は、粉砕砂が貫通穴内を自由落下する際における粉砕砂の温度変化特性が所望の特性となるように設定される。
本形態では、電気ヒーターを適切に配置することができる。
本発明の異なる形態では、貫通穴内を自由落下する粉砕砂を攪拌する攪拌機構を備えている。攪拌機構としては、例えば、貫通穴内に挿入される棒状部材と、棒状部材を貫通穴の延在方向に沿って移動(振動)させ、また、貫通穴の延在方向回りに回転させる駆動装置を有する攪拌機構が用いられる。
本形態では、粉砕砂が貫通穴内で接着するのを防止することができる。
本発明の異なる形態では、貫通穴に挿入される粉砕砂の大きさは、0.05mm~1.0mmの範囲内である。そして、貫通穴の径あるいは幅は、3mm~15mmの範囲内に設定され、貫通穴の長さは、1.5m~3mの範囲内に設定されている。
本形態では、0.05mm~1.0mmの範囲内の粉砕砂を効果的に熱処理することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の砂熱処理装置は、安価に、省スペースで設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の砂熱処理装置の第1実施形態の斜視図である。
【
図4】本発明の砂熱処理装置の第2実施形態の断面図である。
【
図5】本発明の砂熱処理装置の第3実施形態の斜視図である。
【
図8】本発明の砂熱処理装置の第4実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の砂熱処理装置の実施形態を、図面を参照して説明する。
中子は、鋳造砂を、バインダと混合して成形することによりを形成される。鋳造砂としては、公知の種々の耐火性砂(例えば、アルミナ砂、ケイ砂、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、合成ムライト砂等)から選択された1つあるいは複数が用いられる。バインダとしては、公知の種々の有機バインダ(例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂)のうちの1つあるいは複数が用いられ、または、公知の種々の無機バインダ(例えば、ケイ酸ソーダ(水ガラス)、粘土、硫酸塩、硝酸塩)から選択された1つあるいは複数が用いられる。
なお、以下の各実施形態の砂熱処理装置は、鋳造に使用される中子を粉砕して得た0.05mm~1.0mmの範囲内の粉砕砂を熱処理するものとして説明する。
また、以下の各実施形態の砂熱処理装置は、粉砕砂が貫通穴内を自由落下(以下、単に「落下」という)するように構成されているとともに、粉砕砂が貫通穴内を落下する間に、電気ヒーターにより加熱されるように構成されている。
【0009】
先ず、第1実施形態の砂熱処理装置100を、
図1~
図3を参照して説明する。なお、
図1は、本実施形態の砂熱処理装置100の斜視図である。また、
図2は、
図1を矢印II方向から見た図であり、
図3は、
図1のIII-III線断面図である。
【0010】
本実施形態の砂熱処理装置100は、本体部110と、電気加熱部を有している。
本体部110は、SUS(ステンレス)等の金属により形成される。本実施形態では、本体部110は、断面が正方形である柱状(角柱状)を有している。
本体部110は、両端が開口している貫通穴120を少なくとも一つ有している。
貫通穴120は、粉砕砂が貫通穴120内を落下可能に構成されている。本実施形態では、貫通穴120は、断面が円形を有し、鉛直方向に沿って直線状に延在している。
すなわち、貫通穴120の中心線Pは、鉛直方向に沿って延在している。また、貫通穴120は、中心線Pの延在方向と直交する断面(
図2参照)で見て、中心線Pを中心とする直径Rの円に沿った壁面120aにより形成され、円形(「略円形」を含む)を有している。また、貫通穴120は、両端に開口部120A、120Bを有している。粉砕砂は、鉛直方向上方側の開口部(投入口)120Aから貫通穴120内に投入され、貫通穴120内を落下した後、鉛直方向下方側の開口部(排出口)120Bから排出される。
なお、本実施形態では、貫通穴120の中心線Pは、本体部110の中心線と一致している。
【0011】
電気加熱部は、電気ヒーター130を有している。電気ヒーター130としては、公知の種々の電気ヒーターを用いることができる。例えば、カートリッジヒーター、シーズヒーター、赤外線ヒーター等が用いられる。
カートリッジヒーター、シーズヒーターは、ニクロム線等の発熱線が螺旋状に巻き付けられたセラミック等の絶縁体を、ステンレス等の金属製のパイプ(シース)内に挿入し、パイプと発熱線の間に、熱伝導性と絶縁性を有する絶縁パウダーを封入した棒状のヒーターである。カートリッジヒーター、シーズヒーターは、被加熱体(本実施形態では、本体部110)に接触させることができるため、被加熱体を効率よく加熱することができる。
赤外線ヒーターは、赤外線の輻射エネルギーを被加熱物に照射するヒーターである。赤外線ヒーターは、熱効率がよい。
電気ヒーター130は、少なくとも一つ設けられる。
本実施形態では、貫通穴120の外周側に、4つの電気ヒーター130が、周方向に沿って等間隔に設けられている。電気ヒーター130は、断面が円形(「略円形」を含む)を有し、貫通穴120の延在方向に沿って(鉛直方向に沿って)延在している。
電気ヒーター130は、貫通穴120と離間する位置に配置されている。
なお、電気ヒーター130の数や、貫通穴120に対する電気ヒーターの配置位置は、貫通穴120内を落下する粉砕砂が加熱されるように適切に設定される。
【0012】
本実施形態では、0.05mm~1.0mmの大きさの粉砕砂に対して、以下の条件を満足するように構成することにより、粉砕砂が貫通穴120内を落下する間に、粉砕砂の温度を、目標表度まで加熱することができる。
貫通穴120の直径Rは、3mm~15mmの範囲内に設定される。貫通穴120の直径Rが3mmより小さいと、粉砕砂が貫通穴120内に詰まるおそれがある。また、貫通穴120の直径Rが、15mmより大きいと、貫通穴120の中心線P付近を落下する粉砕砂を十分に加熱することができないおそれがある。
貫通穴120の長さ(鉛直方向に沿った長さ)Mは、1.5m~3mの範囲内に設定される。貫通穴120の長さMが1.5mより短いと、貫通穴120内を落下する粉砕砂を十分に加熱することができないおそれがある。また、貫通穴120の長さMが3mより長くなると、砂熱処理装置を一般的な工場に収納することができないおそれがある。本実施形態の砂熱処理装置は、一般的な工場に収納可能に構成される。
電気ヒーター130の設定温度は、400℃~1100℃の範囲内に設定される。なお、電気ヒーター130の設定温度の範囲(400℃~1100℃)は、空気温度が20℃、熱処理前の粉砕砂の温度が20℃である場合を想定して算出したものである。このため、電気ヒーター130の設定温度の範囲(400℃~1100℃)は、空気温度や熱処理前の粉砕砂の温度に応じて変更することもできる。
電気ヒーター130の熱量(出力)(kW)は、粉砕砂の処理量(例えば、単位時間当たりの処理量[kg/h])に基づいて設定される。
【0013】
本実施形態の砂熱処理装置100を用いて、粉砕砂を熱処理する場合には、前記条件を満足するように構成することで砂表面の残留バインダの機能を無効化できる。
有機バインダを用いた粉砕砂の場合は、電気ヒーター130の設定温度を400℃~1100℃の範囲内に設定すると、粉砕砂の温度が350℃以上に加熱され、残留バインダが熱分解および燃焼して除去される。
また、ケイ酸ソーダ系無機バインダを用いた粉砕砂の場合は、電気ヒーター130の設定温度を800℃~1100℃の範囲内に設定すると、粉砕砂の温度が650℃以上に加熱され、バインダとして機能しない状態となる。
【0014】
本実施形態では、電気ヒーター130を設定温度に設定した状態で、粉砕砂を貫通穴120内で落下させることにより、粉砕砂の温度を、熱処理に適した目標温度まで加熱することができる。
これにより、特許文献1に開示されているような、バーナーを用いて熱処理する砂熱処理装置に比べて、簡単に構成することができ、また、小さい設置スペースに設置することができる。すなわち、省スペース化を達成しながら、鋳造砂を再生するための、粉砕砂の熱処理を効率よく行うことができる。さらに、バーナーの使用による二酸化炭素の排出力を低減することができる。
なお、本実施形態の砂熱処理装置100を用いて、球状の鋳物砂と無機バインダを用いた無機中子の粉砕砂を熱処理する場合には、粉砕砂が貫通穴120内を落下することによる表面張力によって粉砕砂が球状化されるため、粉砕砂の形状の変形を防止することができる。
[0]
【0015】
次に、第2実施形態の砂熱処理装置100を、
図1、
図2、
図4を参照して説明する。第2実施形態の砂熱処理装置100は、貫通穴120の延在方向に沿って複数の領域を規定している点が、第1実施形態の砂熱処理装置100と相違している。
このため、以下では、第1実施形態の
図3に対応する
図4について説明する。
【0016】
粉砕砂が、貫通穴120内を落下する間加熱される場合、粉砕砂の温度は、開口部(投入口)120Aから開口部(吐出口)120Bに向かって落下するにしたがって上昇する。この時、粉砕砂の温度が所定温度に達すると、温度上昇率が低下する。すなわち、粉砕砂の温度が所定温度に達した後は、粉砕砂に加える熱量を少なくすることができる。
そこで、貫通穴120の延在方向(鉛直方向)に沿って複数の領域を規定する。複数の領域の数や範囲は、貫通穴120内を落下する際における粉砕砂の温度の解析結果等に基づいて決定される。
【0017】
本実施形態では、
図4に示されているように、開口部120A側(鉛直方向上方側)に配置されている第1の領域G1と、第1の領域G1より開口部120B側(鉛直方向下方側)に配置されている第2の領域G2の2つの領域を規定している。
また、電気加熱部は、第1の領域G1に配置される第1の電気ヒーター130Aと、第2の領域G2に配置される第2の電気ヒーター130Bを有している。
第1の領域G1に配置される第1の電気ヒーター130Aとしては、容量(出力)(kW)が大きい電気ヒーターが用いられる。
第2の領域G2に配置される第2の電気ヒーター130Bとしては、第1の電気ヒーター130Aより容量(出力)(kW)が小さい電気ヒーターが用いられる。
第1の領域G1は、粉砕砂の温度を上昇させる昇温領域であり、第2の領域G2は、粉砕砂の温度を維持する均熱領域である。
【0018】
本実施形態では、貫通穴の延在方向に沿って複数の領域を規定し、各領域に適切な電気ヒーターを配置している。
これにより、砂熱処理装置をより安価に構成することができる。
【0019】
第1実施形態および第2実施形態では、直線状に延在する貫通穴の断面積を大きくするには限界がある。また、貫通穴の断面積を大きくすることができないことにより、熱交換面積(貫通穴の外周面の面積)を大きくすることができない。このため、粉砕砂の単位時間当たりの処理量を増大するには限界がある。
次に、粉砕砂の単位時間当たりの処理量を増大させることができる第3実施形態の砂熱処理装置200を、
図5~
図7を参照して説明する。なお、
図5は、本実施形態の砂熱処理装置200の斜視図である。また、
図6は、
図5を矢印VI方向から見た図であり、
図7は、
図5のVII-VII線断面図である。
【0020】
本実施形態の砂熱処理装置200は、本体部210と、電気加熱部を有している。
本体部210は、SUS(ステンレス)等の金属により形成される。本実施形態では、本体部210は、断面が円形である柱状(円柱状)を有している。また、本体部210は、円柱状の第1の本体部210Aと、第1の本体部210Aより外周側に配置されている、円環状の第2の本体部210Bにより構成されている。
本体部210は、貫通穴220を有している。
貫通穴220は、粉砕砂が貫通穴220内を落下可能に構成されている。本実施形態では、貫通穴220は、断面が環状を有し、鉛直方向に沿って直線状に延在している。
すなわち、貫通穴220は、鉛直方向に直角な断面(
図6参照)で見て、中心線Pを中心とする直径r1の円に沿って延在する内周側壁面220aと、中心線Pを中心とする直径r2の円に沿って延在する外周側壁面220bにより形成される環状を有している。なお、内周側壁面220aは、第1の本体部210Aの外周面により形成され、外周側壁面220bは、第2の本体部210Bの内周面により形成されている。すなわち、貫通穴220は、第1の本体部210Aと第2の本体部210Bの間に形成されている。中心線Pは、本体部210の中心線と一致している。また、貫通穴220は、両端に開口部220A、220Bを有している。粉砕砂は、鉛直方向上方側の開口部(投入口)220Aから貫通穴220内に投入され、貫通穴220内を落下した後、鉛直方向下方側の開口部(排出口)220Bから排出される。
【0021】
電気加熱部は、電気ヒーター230、240を有している。電気ヒーター230、240としては、公知の種々の電気ヒーターを用いることができる。電気ヒーター230、240は、少なくとも一つ設けられる。
本実施形態では、貫通穴220の内周側(内周側壁面220aより内周側)に、複数の電気ヒーター230が、周方向に沿って等間隔に設けられている。また、貫通穴220の外周側(外周側壁面220bより外周側)に、複数の電気ヒーター240が、周方向に沿って等間隔に設けられている。電気ヒーター230、240は、断面が円形(「略円形」を含む)を有し、貫通穴220の延在方向に沿って(鉛直方向に沿って)延在している。
電気ヒーター230、240は、本体部210に、貫通穴220と離間する位置に配置されている。
なお、電気ヒーター230、240の数や、貫通穴220に対する電気ヒーター230、240の配置位置は、貫通穴220内を落下する粉砕砂が目標温度まで加熱されるように適切に設定される。
【0022】
本実施形態では、0.05mm~1.0mmの大きさの粉砕砂に対して、以下の条件を満足するように構成することにより、粉砕砂が貫通穴220内を落下する間に、粉砕砂の温度を、目標温度まで加熱することができる。
貫通穴220の幅(径方向に沿った幅)W[=(r2-r1)/2]は、3mm~15mmの範囲内に設定される。貫通穴120の幅Wが3mmより小さいと、粉砕砂が貫通穴220内に詰まるおそれがある。また、貫通穴220の幅Wが、15mmより大きいと、貫通穴220の中央付近を落下する粉砕砂を十分に加熱することができないおそれがある。
貫通穴220の長さ(鉛直方向に沿った長さ)Nは、1.5m~3mの範囲内に設定される。貫通穴220の長さNが1.5mより短いと、貫通穴220内を落下する粉砕砂を十分に加熱することができないおそれがある。また、貫通穴220の長さNが3mより長くなると、砂熱処理装置を一般的な工場に収納することができないおそれがある。本実施形態の砂熱処理装置は、一般的な工場に収納可能に構成される。
電気ヒーター230、240の設定温度は、400℃~1100℃の範囲内に設定される。なお、電気ヒーター230、240の設定温度の範囲(400℃~1100℃)は、空気温度が20℃、粉砕砂の温度が20℃である場合を想定した算出したものである。このため、電気ヒーター230、240の設定温度の範囲(400℃~1100℃)は、空気温度や粉砕砂の温度に応じて変更することもできる。
電気ヒーター230、240の熱量(出力)(kW)は、粉砕砂の処理量(例えば、単位時間当たりの処理量[kg/h])に基づいて設定される。
【0023】
本実施形態の砂熱処理装置200を用いて、粉砕砂を熱処理する場合には、前記条件を満足するように構成することで砂表面の残留バインダの機能を無効化できる。
有機バインダを用いた粉砕砂の場合は、電気ヒーター230、240の設定温度を400℃~1100℃の範囲内に設定すると、粉砕砂の温度が350℃以上に加熱され、残留バインダが熱分解および燃焼して除去される。
また、ケイ酸ソーダ系無機バインダを用いた粉砕砂の場合は、電気ヒーター230、240の設定温度を800℃~1100℃の範囲内に設定すると、粉砕砂の温度が650℃以上に加熱され、バインダとして機能しない状態となる。
【0024】
本実施形態では、電気ヒーター230、240を設定温度に設定した状態で、粉砕砂を貫通穴220内で落下させることにより、粉砕砂の温度を、熱処理に適した目標温度まで加熱することができる。
これにより、実施形態1の砂熱処理装置100と同様に、特許文献1に開示されているような、バーナーを用いて熱処理する砂熱処理装置に比べて、簡単に構成することができ、また、小さい設置スペースに設置することができる。すなわち、省スペース化を達成しながら、鋳造砂を再生するための、粉砕砂の熱処理を効率よく行うことができる。さらに、バーナーの使用による二酸化炭素の排出力を低減することができる。
なお、本実施形態の砂熱処理装置100を用いて、球状の鋳物砂と無機バインダを用いた無機中子の粉砕砂を熱処理する場合には、粉砕砂が貫通穴120内を落下することによる表面張力によって粉砕砂が球状化されるため、粉砕砂の形状の変形を防止することができる。
【0025】
次に、第4実施形態の砂熱処理装置200を、
図5、
図6、
図8を参照して説明する。第4実施形態の砂熱処理装置200は、貫通穴220の延在方向に沿って複数の領域を規定している点が、第3実施形態の砂熱処理装置200と相違している。
このため、以下では、第3実施形態の
図7に対応する
図8について説明する。
【0026】
粉砕砂が、貫通穴220内を落下する間加熱される場合、粉砕砂の温度は、開口部(投入口)220Aから開口部(排出口)220Bに向かって落下するにしたがって上昇する。そして、粉砕砂の温度が所定温度に達すると、温度上昇率が低下する。すなわち、粉砕砂の温度が所定温度に達した後は、粉砕砂に加える熱量を少なくすることができる。
そこで、貫通穴220の延在方向(鉛直方向)に沿って複数の領域を規定する。複数の領域の数や範囲は、貫通穴220内を落下する際における粉砕砂の温度の解析結果に基づいて決定される。
【0027】
本実施形態では、
図8に示されているように、開口部220A側(鉛直方向上方側)に配置されている第1の領域G1と、第1の領域G1より開口部220B側(鉛直方向下方側)に配置されている第2の領域G2の2つの領域を規定している。
また、電気加熱部は、第1の領域G1に配置される第1の電気ヒーター230A、240Aと、第2の領域G2に配置される第2の電気ヒーター230B、240Bを有している。
第1の領域G1に配置される第1の電気ヒーター230A、240Bとしては、容量(出力)(kW)が大きい電気ヒーターが用いられる。
第2の領域G2に配置される第2の電気ヒーター230B、240Bとしては、第1の電気ヒーター230A、240Bより容量(出力)(kW)が小さい電気ヒーターが用いられる。
第1の領域G1は、粉砕砂の温度を上昇させる昇温領域であり、第2の領域G2は、粉砕砂の温度を維持する均熱領域である。
【0028】
本実施形態では、第2実施形態と同様に、貫通穴の延在方向に沿って複数の領域を規定し、各領域に適切な電気ヒーターを配置している。
これにより、砂熱処理装置をより安価に構成することができる。
【0029】
ここで、無機バインダを用いた無機中子の粉砕砂を熱処理する場合、無機バインダの温度が高くなると(例えば、水ガラス系の無機バインダの場合、700℃近くの温度)、無機バインダが粘着性を有するようになる。このため、無機バインダが被覆されている粉砕砂が貫通穴内を落下中に、無機バインダの温度が高くなって粘着性を有するようになると、粉砕砂が、貫通穴を形成する壁面に接着することがある。粉砕砂が、貫通穴を形成する壁面に接着すると、貫通穴が目詰まりするおそれがある。
そこで、貫通穴の目詰まりを防止するために、第1~第4実施形態の砂熱処理装置に、貫通穴内を落下する粉砕砂を攪拌する攪拌装置が設けられる。
例えば、貫通穴内に挿入される棒状部材と、棒状部材を、貫通穴の延在方向に沿って移動(振動)させあるいは貫通穴の中心線回りに回転させる駆動装置により構成される攪拌装置が用いられる。
あるいは、本体部を、本体部の中心線に沿って移動させあるいは本体部の中心線回りに回転させる駆動装置により構成される攪拌装置が用いられる。
【0030】
本発明は、実施形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
本体部の形状は、断面が正方形の柱状(角柱状)や断面が円形の柱状(円柱状)に限定されず、種々の形状に変更可能である。
本体部は、一つの部材により構成することもできるし、複数の部材により構成することもできる。
断面が円形を有する貫通穴や断面が環状を有する貫通穴について説明したが、貫通穴の断面形状は、適宜変更可能である。
鉛直方向に沿って直線状に延在する貫通穴について説明したが、貫通穴は、粉砕砂が貫通穴内を自由落下が可能となるように鉛直方向に沿って延在していればよい。
本体部に1つの貫通穴を設けたが、複数設けることもできる。すなわち、本体部は、少なくとも一つの貫通穴を有している。
貫通穴内を自由落下する砂を加熱する電気ヒーターの形状、数や配置位置等は、適宜変更可能である。
電気ヒーターの数や容量(出力)は、粉砕砂の単位時間当たりの処理量に基づいて設定される。
貫通穴内を自由落下する粉砕砂を攪拌する攪拌機構としては、実施形態で説明した攪拌機構に限定されない。
さらに、貫通穴内を自由落下する粉砕砂を攪拌する必要がない場合には、攪拌機構を省略することもできる。
実施形態で説明した構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択した複数を組み合わせて用いることもできる。
【符号の説明】
【0031】
100、200 砂熱処理装置
110、210 本体部
120、220 貫通穴
120a 壁面
120A、220A 開口部(投入口)
120B、220B 開口部(排出口)
130、230、240 電気ヒーター
130A、230A、240A 第1の電気ヒーター
130B、230B、240B 第2の電気ヒーター
210A 第1の本体部
210B 第2の本体部
220a 内周側壁面
220b 外周側壁面