(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063787
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】押出成形機及び成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 3/20 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
B28B3/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172208
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慧竜
(72)【発明者】
【氏名】田島 裕一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 好正
【テーマコード(参考)】
4G054
【Fターム(参考)】
4G054AA05
4G054AB09
4G054BD04
4G054BD11
(57)【要約】
【課題】寸法精度が高く、表面性状が良好な成形体を製造することが可能な押出成形機を提供する。
【解決手段】一端に口金21を有し、他端が押出部10の押出口13に接続されるとともに、内部にスクリーン22が配置される成形部20を備える押出成形機1である。成形部20は、スクリーン22と口金21との間に2つ以上の温度調節部材23a,23bを有し、2つ以上の温度調節部材23a,23bの間に断熱部材24が配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に口金を有し、他端が押出部の押出口に接続されるとともに、内部にスクリーンが配置される成形部を備える押出成形機であって、
前記成形部は、前記スクリーンと前記口金との間に2つ以上の温度調節部材を有し、2つ以上の前記温度調節部材の間に断熱部材が配置される押出成形機。
【請求項2】
前記成形部は、前記口金を保持し且つ温度調節が可能な口金保持部材を更に有する、請求項1に記載の押出成形機。
【請求項3】
前記成形部は、前記他端と前記スクリーンとの間に拡径部を有し、前記拡径部に温度調節部材が配置される、請求項1又は2に記載の押出成形機。
【請求項4】
前記温度調節部材が、内部を流体が流通可能な温度調節ドラムである、請求項1~3のいずれか一項に記載の押出成形機。
【請求項5】
セラミックス成形体の製造に用いられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の押出成形機。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の押出成形機を用いて成形材料を押出成形する成形体の製造方法であって、
前記スクリーンと前記口金との間の2つ以上の前記温度調節部材を異なる温度に制御する工程を含む、成形体の製造方法。
【請求項7】
前記スクリーンと前記口金との間の2つ以上の前記温度調節部材のうちの最下流の前記温度調節部材の温度と同一の温度に前記口金保持部材を制御する、請求項6に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形機及び成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種成形体を製造するために押出成形機が用いられている。例えば、自動車排ガス浄化用触媒担体、ディーゼル微粒子除去フィルタ(DPF)、ガソリン微粒子除去フィルタ(GPF)、燃焼装置用蓄熱体などに用いられるハニカム形状のセラミックス構造体の製造では、生産性の観点から、押出成形機を用いてハニカム形状のセラミックス成形体を製造することが主流となっている。
【0003】
ところでDPFやGPFなどの用途に用いられるセラミックス構造体は、寸法精度が低いと、熱応力などによって亀裂が入るなどの不具合が生じ易い。そのため、焼成前のセラミックス成形体に対しても高い寸法精度が要求されている。
【0004】
押出成形機によって得られる成形体の寸法精度を向上させる技術として、例えば、特許文献1には、押出金型に隣接した前方セクションに加熱素子を配置してセラミックバッチ材料(成形材料)の温度を制御することにより、押出物の押出速度を制御して押出物の寸法精度を向上させる技術が提案されている。
また、特許文献2には、押出成形機の整流板とダイ(口金)との間の抵抗管に、抵抗管の管壁を貫通するように設けられ、抵抗管の内側に突出する長さが変更自在の複数のピンを配置し、当該ピンの温度を制御することにより、ダイに導入される原料組成物(成形材料)の押出速度の均一化を図り、成形体の寸法精度を向上させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6258962号公報
【特許文献2】特開2013-193278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、成形材料の温度制御に多くの機器が必要であるため、装置が大型化及び複雑化する。また、成形材料を加熱する際には電気量が多くなるため、製造コストも増大する。
特許文献2に記載の技術は、ピンが成形材料の流れを阻害するため、特定の押出速度を確保するためには押出圧力を高めなければならない。また、ピンと成形材料との接触面積が小さいため、ピンによる温度制御には時間がかかる。
このように成形体の寸法精度を向上させる従来の技術では、上記のような様々な問題があることから、寸法精度が高い成形体を製造するための別の技術の開発が望まれていた。
また、特許文献1及び2に記載の技術はいずれも、成形体の表面性状の制御が難しく、成形体の表面にシワやクラックが生じ易いという問題もある。
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、寸法精度が高く、表面性状が良好な成形体を製造することが可能な押出成形機を提供することを目的とする。
また、本発明は、寸法精度が高く、表面性状が良好な成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、一端に口金を有し、他端が押出部の押出口に接続されるとともに、内部にスクリーンが配置される成形部を備える押出成形機について鋭意研究を行った結果、特に、スクリーンと口金との間の領域における温度制御が成形体の寸法精度及び表面性状と密接に関係しているという知見を得た。そして、本発明者らは、スクリーンと口金との間に2つ以上の温度調節部材を設け、2つ以上の温度調節部材の間に断熱部材を配置することで、上記の問題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、一端に口金を有し、他端が押出部の押出口に接続されるとともに、内部にスクリーンが配置される成形部を備える押出成形機であって、
前記成形部は、前記スクリーンと前記口金との間に2つ以上の温度調節部材を有し、2つ以上の前記温度調節部材の間に断熱部材が配置される押出成形機である。
【0010】
また、本発明は、前記押出成形機を用いて成形材料を押出成形する成形体の製造方法であって、
前記スクリーンと前記口金との間の2つ以上の前記温度調節部材を異なる温度に制御する工程を含む、成形体の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、寸法精度が高く、表面性状が良好な成形体を製造することが可能な押出成形機を提供することができる。
また、本発明によれば、寸法精度が高く、表面性状が良好な成形体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態1に係る押出成形機の概略構成を示す模式図である。
【
図2】押出部側からみた温度調節ドラムの正面図である。
【
図3】本発明の実施形態2に係る押出成形機の概略構成を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施形態3に係る押出成形機の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0014】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る押出成形機の概略構成を示す模式図である。
図1に示されるように、本発明の実施形態1に係る押出成形機1は、押出部10と、押出部10に接続された成形部20とを備えている。
押出部10は、成形部20に成形材料を押出すことが可能な構造であれば特に限定されない。
成形部20は、一端に口金21を有し、他端が押出部10の押出口13に接続されるとともに、内部にスクリーン22が配置される。また、成形部20は、スクリーン22と口金21との間に2つ以上の温度調節部材23a,23bを有し、2つ以上の温度調節部材23a,23bの間に断熱部材24が配置される。なお、
図1では、一例として、スクリーン22と口金21との間に2つの温度調節部材23a,23bを有する形態を示している。2つの温度調節部材23a,23bは、個別に温度調整が可能なように構成されており、異なる温度に制御することができる。
【0015】
上記のような構成を有する押出成形機1では、スクリーン22と口金21との間に配置された上流側の温度調節部材23aにより、成形材料の押出方向に直交する断面の温度分布(特に、中心側の成形材料の温度と外周側の成形材料の温度)の均一性を向上させることができる。これにより、中心側の成形材料の流速と外周側の成形材料の流速が同程度になるため、成形体の端面に凹凸部が形成され難くなり、成形体の寸法精度を向上させることができる。
ここで、本明細書において「中心側の成形材料」とは、成形材料の押出方向に直交する断面において、中心部と、中心部から最外周までの距離の1/2の部分との間の領域の成形材料のことを意味する。また、外周側の成形材料とは、成形材料の押出方向に直交する断面において、中心部から最外周までの距離の1/2の部分を超え最外周までの領域の成形材料のことを意味する。
【0016】
一方、外周側の成形材料のうち最外周から数mmの部分は、上流側の温度調節部材23aの温度の影響を受け易いため、当該部分において他の部分との温度差が生じ易い。その結果、当該部分の成形材料の流速が他の部分の流速と同程度にならず、成形体の表面性状の低下(例えば、シワやクラックの発生)が生じることがある。そこで、スクリーン22と口金21との間に配置された下流側の温度調節部材23bにより、最外周から数mmの部分の温度制御を行うことで、成形体の表面性状を向上させることができる。
【0017】
上流側及び下流側の温度調節部材23a,23bの設定温度としては、作製する成形体のサイズ(特に、押出方向に直交する断面の径)や使用する成形材料の特性などによって異なるが、例えば、上流側の温度調節部材23aの設定温度を中心側の成形材料の温度よりも高くすることで、成形材料の押出方向に直交する断面の温度分布の均一性が向上する傾向にある。ただし、外周側の成形材料の温度と中心側の成形材料の温度との差が小さい方が、当該効果が得られることもあるため、作製する成形体のサイズや使用する成形材料の特性に応じて、上流側の温度調節部材23aの設定温度を制御すべきである。
また、下流側の温度調節部材23bの設定温度についても上流側の温度調節部材23aの設定温度と同様であるが、上流側の温度調節部材23aの設定温度よりも高くすることで、成形体の表面性状の低下を抑制し易い傾向にある。
【0018】
以下、本発明の実施形態1に係る押出成形機1を構成する部材について詳細に説明する。
【0019】
(押出部10)
押出部10は、スクリュー11と、スクリュー11を収容可能なバレル12とを有していれば特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。
スクリュー11は、スクリュー軸14と、スクリュー軸14に沿って螺旋状に形成された羽根部15とを有することが好ましい。
また、スクリュー11は、成形材料、特にセラミックス成形材料の混練性の観点から、同方向に回転する2軸スクリューであることが好ましく、かみ合い型の2軸スクリューであることがより好ましい。この場合、一対のスクリュー11は、バレル12の内部に平行に併設される。
【0020】
スクリュー11の根元部は、駆動装置16に接続されている。駆動装置16は、モータ及びギアボックス(図示しない)を含み、予め規定された押出圧力となるように回転数を制御してスクリュー11を回転させる。
押出部10の上流側には、押出部10内に成形材料を供給するための材料投入部17が設けられる。材料投入部17から供給された成形材料は、スクリュー11によって混練され、成形部20に供給される。
【0021】
(成形部20)
成形部20は、内部に空間を有するドラム25を含み、一端に口金21を有し、他端が押出部10の押出口13に接続されている。
ドラム25の形状は、特に限定されず、縮径部や拡径部を一部に有していてもよい。例えば、
図1に示されるように、ドラム25は、押出口13側に拡径部26を有する。このような構造を有するドラム25は、1つの部材から構成されていてもよいが、複数の部材から構成されていてもよい。複数の部材からドラム25を構成する場合、拡径ドラムとストレートドラムとを組み合わせることによってドラム25を得ることができる。
【0022】
口金21の形状は、特に限定されず、製造する成形体の形状に応じて適宜設定することができる。例えば、ハニカム形状を有する成形体を製造する場合、ハニカム成形体の隔壁の厚さに対応するスリットを有する口金21が用いられる。
【0023】
口金21は、口金保持部材27aによって保持される。口金保持部材27aは、成形部20の一端に口金21が位置するように配置される。
口金保持部材27aとしては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。
【0024】
ドラム25(成形部20)の内部に配置されるスクリーン22(濾過網)は、メッシュ状の素材で形成され、成形材料に混入した粗粒やその他夾雑物を除去し、口金21に供給される成形材料を安定させることができる。
【0025】
温度調節部材23a,23bとしては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。その中でも、内部を流体が流通可能な温度調節ドラムを温度調節部材23a,23bとして用いることが好ましい。温度調節ドラムは、流体の温度を調整することで、温度制御が可能であるため、加熱素子などの加熱手段や冷却素子などの冷却手段を用いた場合に比べて、電気量の消費を少なくすることができる。例えば、ボイラーなどを用いて加温した温水を温度調節ドラムに流通させることにより、成形材料を容易且つ効率的に加温することができる。また、チラーなどを用いて冷却した冷水を温度調節ドラムに流通させることにより、成形材料を容易且つ効率的に冷却することができる。
【0026】
ここで、押出部10側からみた温度調節ドラムの正面図を
図2に示す。
図2に示されるように、温度調節ドラム28は、流体の供給口29a及び排出口29bを有し、周方向にわたって流体の流路が形成されている。図示していないが、供給口29a及び排出口29bは、流体の供給装置にチューブなどを介して接続される。この供給装置で流体の温度を管理しつつ、流体を循環させることにより、温度制御を容易に行うことができる。
【0027】
スクリーン22と口金21との間に配置される温度調節部材23a,23bの合計数は、2つ以上であれば特に限定されないが、好ましくは2~5つ、より好ましくは2~4つ、更に好ましくは2~3つである。温度調節部材23a,23bの合計数を2つ以上とすることにより、成形体の寸法精度及び表面性状の両方を向上させることができる。なお、温度調節部材23a,23bの合計数は多いほど、成形体の寸法精度及び表面性状を向上させる効果が高いが、製造コストなどを考慮すると、温度調節部材23a,23bの合計数は5つ以下とするのが現実的である。
【0028】
断熱部材24としては、特に限定されないが、熱伝導率が0.5W/m・K以下であることが好ましい。このような熱伝導率を有する断熱部材24であれば、温度調節部材23a,23bの間の断熱効果を十分に確保することができる。なお、断熱部材24の熱伝導率は、小さいほど断熱効果が高いため好ましいが、その下限は、入手可能な材料を考慮すると、0.02W/m・Kである。また、本明細書において「熱伝導率」とは、25℃で測定された熱伝導率を意味する。
【0029】
断熱部材24の材質は、断熱性を有していれば特に限定されないが、断熱性樹脂から形成されていることが好ましい。
断熱性樹脂としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。断熱性樹脂の例としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの合成樹脂が挙げられる。
【0030】
(整流板30)
押出部10と成形部20との間には、必要に応じて整流板30が配置される。整流板30は、貫通孔を有し、成形材料の挙動を整える機能を有する。
貫通孔の数、位置及び形状については、特に限定されず、適宜設定することができる。
整流板30の材質は、特に限定されないが、鉄系、ステンレス系の材料などを用いることができる。
【0031】
なお、ドラム25(成形部20)の外周は、断熱シート(図示していない)で被覆されていてもよい。このような構成とすることにより、ドラム25内の温度を一定に保つことができるため、成形材料の押出方向に直交する断面における成形材料の温度分布の均一性を高めるとともに、成形体の寸法精度を向上させる効果が高くなる。
【0032】
上記のような構造を有する押出成形機1は、成形体の製造に用いることができる。その中でも、押出成形機1は、セラミックス成形材料を用いるセラミックス成形体、特にセラミックスハニカム成形体の製造に用いるのに適している。
【0033】
典型的な成形体の製造方法は、押出成形機1を用いて成形材料を押出成形するものであって、スクリーン22と口金21との間の2つ以上の温度調節部材23a,23bを異なる温度に制御する工程を含む。
2つ以上の温度調節部材23a,23bのうち上流側の温度調節部材23aを特定の温度に制御することにより、成形材料の押出方向に直交する断面における成形材料の温度分布の均一性を高めることができるため、成形体の寸法精度を向上させることができる。また、2つ以上の温度調節部材23a,23bのうち下流側の温度調節部材23bを上流側の温度調節部材23aとは異なる温度に制御することにより、最外周から数mmの部分の温度を制御し、成形体の表面性状を向上させることができる。
【0034】
具体的な成形体の製造方法では、まず、材料投入部17からバレル12の内部に成形材料が供給される。成形材料は、スクリュー11の回転によって剪断力を付与されながら混錬され、バレル12の先端の押出口13側に搬送される。バレル12の押出口13から押出された成形材料は、整流板30の貫通孔を通過し、スクリーン22を通過して2つ以上の温度調節部材23a,23bで温度制御されながら口金21に供給される。そして、成形材料は口金21を通じて押出され、所望の形状の成形体が得られる。
【0035】
この成形体の製造方法に用いられる成形材料としては、特に限定されないが、例えば、セラミックス成形材料を用いることができる。セラミックス成形材料は、セラミックス原料を含む。セラミックス原料の例としては、コージェライト化原料、コージェライト、炭化珪素、珪素-炭化珪素系複合材料、ムライト、チタン酸アルミニウムなどが挙げられる。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42~56質量%、アルミナが30~45質量%、マグネシアが12~16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミックス原料である。そして、コージェライト化原料は、焼成されてコージェライトになるものである。
セラミックス成形材料は、セラミックス原料に加えて、必要に応じて分散媒、有機バインダ、無機バインダ、造孔材、界面活性剤などを含む。これらの成分は、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。
【0036】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係る押出成形機は、口金保持部材が温度調節機能を有していることを除けば本発明の実施形態1に係る押出成形機1と同一である。よって、ここでは、この押出成形機1と共通する構成については説明を省略し、異なる構成のみについて説明する。
【0037】
図3は、本発明の実施形態2に係る押出成形機の概略構成を示す模式図である。
図3に示されるように、本発明の実施形態2に係る押出成形機2は、口金21を保持し且つ温度調節が可能な口金保持部材27bを有する。
本発明の実施形態1に係る押出成形機1では、下流側の温度調節部材23bにより、最外周から数mmの部分の温度制御を行うことで、成形体の表面性状を向上させている。しかしながら、下流側の温度調節部材23bによる温度制御のみでは、成形体の表面性状を十分に向上させることができない場合がある。
そこで、本発明の実施形態2に係る押出成形機2では、下流側の温度調節部材23bの下流に位置する口金保持部材27bによって最外周から数mmの部分の温度制御を行うことで、成形体の表面性状を安定して向上させることが可能となる。
【0038】
温度調節が可能な口金保持部材27bの構造としては、特に限定されず、上述した温度調節ドラム28と同様に、内部を流体が流通可能な構造とすることで、温度調節を行うことができる。また、通常の口金保持部材27bの外周に加熱素子などの加熱手段を取り付けることにより、口金保持部材27bの温度制御を行ってもよい。
【0039】
口金保持部材27bと最下流の温度調節部材23bとの間には、必要に応じて断熱部材24を配置してもよい。このような構成とすることにより、口金保持部材27bと最下流の温度調節部材23bとの間の断熱効果を十分に確保することができる。
【0040】
温度調節が可能な口金保持部材27bを用いる場合、口金保持部材27bは、最下流の温度調節部材23bの温度と同一の温度に制御されることが好ましい。このように制御することにより、成形体の表面性状を安定して向上させることができる。
【0041】
(実施形態3)
本発明の実施形態3に係る押出成形機は、成形部20の拡径部26に温度調節部材が配置されることを除けば本発明の実施形態1に係る押出成形機1と同一である。よって、ここでは、この押出成形機1と共通する構成については説明を省略し、異なる構成のみについて説明する。
【0042】
図4は、本発明の実施形態3に係る押出成形機の概略構成を示す模式図である。
図4に示されるように、本発明の実施形態3に係る押出成形機3は、成形部20の他端とスクリーン22との間に拡径部26を有し、拡径部26に温度調節部材23cが配置される。
本発明の実施形態1に係る押出成形機1では、上流側の温度調節部材23aにより、成形材料の押出方向に直交する断面の温度分布の均一性を向上させることで、成形体の寸法精度を向上させることができる。しかしながら、上流側の温度調節部材23aのみでは、成形体の寸法精度を十分に向上させることができない場合がある。
そこで、本発明の実施形態3に係る押出成形機3では、上流側の温度調節部材23aの上流に位置する拡径部26の温度調節部材23cによって温度調整を行うことで、成形体の寸法精度を安定して向上させることが可能となる。
【0043】
拡径部26の温度調節部材23cとしては、特に限定されず、上述した温度調節ドラム28と同様の機能を有する温度調節ドラムを用いることができる。
拡径部26の温度調節部材23cを用いる場合、この温度調節部材23cは、スクリーン22と口金21との間に配置される最上流の温度調節部材23aの温度と同一の温度に制御することが好ましい。このように制御することにより、成形体の寸法精度を安定して向上させることができる。
【0044】
なお、上記では、本発明の実施形態1に係る押出成形機1と異なる構成について説明したが、この異なる構成は、本発明の実施形態2に係る押出成形機2に適用することも可能である。この場合も、上述した効果が得られることはいうまでもない。
【実施例0045】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
図1に示される押出成形機1を作製した。温度調節部材23a,23bには温度調節ドラムを用い、2つの温度調節部材23a,23bの間の断熱部材24には熱伝導率が0.25W/m・Kのポリアセタール樹脂(断熱性樹脂)を用いた。
次に、この押出成形機1において、温度調節部材23a,23bを表1に示す温度に設定した。そして、セラミックス原料としてコージェライトを含むセラミックス成形材料を用い、成形材料の供給量を300kg/h、スクリュー11の回転数を55rpmとして、円柱状のセラミックスハニカム成形体(押出方向に直交する断面の直径が196mm)の押出成形を行い、以下の評価を行った。
【0047】
(実施例2及び参考例1)
図3に示される押出成形機3を作製した。温度調節部材23a,23b,23cには温度調節ドラムを用い、2つの温度調節部材23a,23bの間の断熱部材24には熱伝導率が0.25W/m・Kのポリアセタール樹脂(断熱性樹脂)を用いた。
次に、この押出成形機3において、温度調節部材23a,23b,23cを表1に示す温度に設定した。そして、実施例1と同様の条件で円柱状のセラミックスハニカム成形体の押出成形を行い、以下の評価を行った。
【0048】
(比較例1)
温度調節部材23a,23b,23cを備えていないこと以外は上記と同様の構造を有する押出成形機を作製した。
次に、この押出成形機において、実施例1と同様の条件で円柱状のセラミックスハニカム成形体の押出成形を行い、以下の評価を行った。
【0049】
(成形体の温度分布)
口金21から排出された直後のセラミックスハニカム成形体の押出方向に直交する断面の温度分布を赤外線サーモグラフィカメラ(日本アビオニクス株式会社製Thermo GEAR G120EX)を用いて測定した。その結果を表1に示す。
【0050】
(成形体の寸法精度)
口金21から排出されたセラミックスハニカム成形体を押出方向と直交する方向に切断した後、その切断面を押出方向と垂直な方向から写真撮影し、成形体の端面形状を評価した。その結果について、成形体の端面形状の模式図を表1に示す。なお、模式図において、端面は右側である。また、成形体の端面形状について、2つの外周端面部を繋ぐ直線を引き、当該直線に対して隆起している凸部の距離を求めることにより、凸量の測定を行った。その結果も表1に示す。
【0051】
(成形体の表面性状)
口金21から排出された直後のセラミックスハニカム成形体の表面を目視観察し、シワやクラックなどの表面欠陥の発生の有無を評価した。その結果を表1に示す。
【0052】
【0053】
表1に示されるように、温度調節部材23a,23bを備える押出成形機1,3は、寸法精度が高く、表面性状が良好な成形体を製造することができた(実施例1及び2)。特に、温度調節部材23cを更に備える押出成形機3は、凸量が少なく、寸法精度がより高い成形体を製造することができた(実施例2)。
これに対して、温度調節部材23a,23bを備えていない押出成形機は、成形体の寸法精度が十分でなかった(比較例1)。
また、成形部20の温度を一定とした場合には、表面性状が低下することがわかった(参考例1)。
【0054】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、寸法精度が高く、表面性状が良好な成形体を製造することが可能な押出成形機を提供することができる。また、本発明によれば、寸法精度が高く、表面性状が良好な成形体の製造方法を提供することができる。