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特開2022-63794物品保持用頭部装着具、及びこれを用いたフェイスシールド
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  • 特開-物品保持用頭部装着具、及びこれを用いたフェイスシールド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063794
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】物品保持用頭部装着具、及びこれを用いたフェイスシールド
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220415BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20220415BHJP
   A62B 18/08 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
A41D13/11 H
A41D13/11 L
A62B18/02 A
A62B18/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172216
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】504251942
【氏名又は名称】株式会社最上世紀
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【弁理士】
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】森木 三穂
(72)【発明者】
【氏名】板垣 良一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 寛一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健太
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 孝明
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 秀衛
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA06
2E185BA08
2E185CC36
(57)【要約】
【課題】 利用者の顔の正面側に、重量物であっても確実に保持する事のできる物品保持用頭部装着具と、これを用いたフェイスシールドを提供する。
【解決手段】 利用者の頭部正面側において物品を保持するための物品保持用頭部装着具であって、利用者の頭部正面側に延出して先端側で物品を保持する保持部と、当該保持部と一体化されて利用者の頭部に接する支点部と、当該支点部よりも利用者の後頭部側に延伸すると共に、当該後頭部で支持される装着部とからなる事を特徴とする物品保持用頭部装着具と、この物品保持用頭部装着具を用いて形成したフェイスシールドとする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の頭部正面側において物品を保持するための物品保持用頭部装着具であって、
利用者の頭部正面側に延出して先端側で物品を保持する保持部と、当該保持部と一体化されて利用者の頭部に接する支点部と、当該支点部よりも利用者の後頭部側に延伸すると共に、当該後頭部で支持される装着部とからなる事を特徴とする、物品保持用頭部装着具。
【請求項2】
前記支点部は、利用者の側頭部を挟持する左右一対の支点フレームに形成されており、
前記装着部は、当該支点フレームにおける利用者の後頭部側に設けられており、
前記保持部は、前記支点フレームに対して進退自在に設けられた保持フレームの先端側に設けられており、
前記支点部と装着部との距離は、前記支点部と保持部との距離と同じかそれよりも長い請求項1に記載の物品保持用頭部装着具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の物品保持用頭部装着具と、少なくとも利用者の目部を覆うシールド部材とからなるフェイスシールドであって、
当該シールド部材は、前記物品保持用頭部装着具における保持部の先端に設けられ、
前記物品保持用頭部装着具は、前記保持部と装着部との距離を調整自在に連結する連結部を備えているフェイスシールド。
【請求項4】
前記シールド部材は、利用者の目部を覆う第1シールド部材と、利用者の口部を覆う第2シールド部材からなり、当該第2シールド部材は柔軟性を有するか、又は口部を開放可能な開口部若しくはスリット部が形成されている請求項3に記載のフェイスシールド。
【請求項5】
前記シールド部材は、利用者の目部を覆う第1シールド部材を有すると共に、当該第1シールド部材の正面側は、横方向に平坦に展開する平面部として形成されている、請求項3又は4に記載のフェイスシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は利用者における頭部正面側に設けられるシールド部材や布帛などの物品を保持する為の物品保持用頭部装着具、及びこれを用いたフェイスシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の感染症拡大により、飛沫感染を阻止する為にフェイスシールド(フェイスガードとも称される)が利用されている。かかるフェイスシールドは、頭部正面側において顔面を覆うように形成されたシールド部材と、当該シールド部材を頭部に装着する為のヘッドバンド部とで構成されている。
【0003】
かかるフェイスシールドについて、特許文献1(実用新案登録第3227824号公報)では、頭部の締付等の不快を感じることなく長時間の使用を可能とする為に、頭部の回りに装着され、フェイスシールド本体に取り付けられて前記フェイスシールド本体を顔面の前方に保持する弾性変形可能な透明樹脂シート製の略U字形状に形成された帯状のヘッドバンド部を使用する事が提案されている。
【0004】
また特許文献2(特許第2939627号公報)では、着用者の眼に液体が接触しないようにするバイザを設けた使い捨ての顔面マスクが提案されている。即ち、着用者の眼を保護する液体遮蔽において、前記着用者の眼をバイザ外部から差向けられた液体から保護するように、この着用者の眼におおいかかつて取付けられた流体不浸透性の透明なバイザと、このバイザにしわを生じさせないで、このバイザを前記着用者の顔面に合わせるために、このバイザを湾曲させることのできるように、このバイザの下部部分に設けられた切欠きを備える液体遮蔽が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3227824号公報
【特許文献2】特許第2939627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、利用者の額に当接する額当接部の弾性力によって頭部の痛みを解消して長時間の使用を可能とするものであるが、その構造上、保持できるのはPETを用いて薄い板厚で形成されたフェイスシールド本体(シールド部材)程度であり、それ以上に重い物を保持できるものとはなっていない。そこで本発明は、薄い樹脂板で形成されているシールド部材以上の重量物を保持できると共に、保持するのがシールド部材であっても確実に保持する事のできる物品保持用頭部装着具と、これを用いたフェイスシールドを提供することを課題の1つとする。
【0007】
また上記特許文献2では、流体不浸透性の透明なバイザと使い捨ての顔面マスクを組み合わせた液体遮蔽が提案されている。即ち、この液体遮蔽は2つの素材を組み合わせて構成しているが、口元をカバーするのはマスクである事から、容易に口元を露出するのが困難である。一方、従来提供されているフェイスシールドを着用した場合には、口元もカバーされることから、飲食時や管楽器などの楽器を演奏する際には、都度、フェイスシールドの着脱や上げ下げが必要になっていた。そこで本発明は飲食時や管楽器などの楽器の演奏時などに際して口元を露出する際に、当該フェイスシールドの着脱や上げ下げを必要としない物品保持用頭部装着具と、これを用いたフェイスシールドを提供することを、別の課題の1つとする。
【0008】
また従来提供されているフェイスシールドは、シールド部材が顔面に近い位置に存在することから、着用時には圧迫感を生じさせるものであった。そこで本発明では、着用時においても顔面から離れた位置にシールドを存在させる事のできる物品保持用頭部装着具と、これを用いたフェイスシールドを提供することを、更に別の課題の1つとする。
【0009】
そして従来提供されているフェイスシールドは、シールド部材が顔面に沿って湾曲していることから、着用時には着用者の顔面が歪んだ形で映り込んでしまい、不快感を生じるものとなっていた。そこで本発明では、顔面の正面に存在するシールド部材を、凡そ平面状態とすることができる物品保持用頭部装着具と、これを用いたフェイスシールドを提供することを更に別の課題の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題の少なくとも何れかを解決する為に、本発明では利用者(即ち「装着者」。以下同じ)の頭部正面側(即ち顔の正面側)に、シールド部材や布帛などの物品を保持する為の物品保持用頭部装着具であって、利用者の後頭部で支持されるように構成した物品保持用頭部装着具を提供する。
【0011】
即ち本発明では、利用者の頭部正面側において物品を保持するための物品保持用頭部装着具であって、利用者の頭部正面側に延出して先端側で物品を保持する保持部と、当該保持部と一体化されて利用者の頭部に接する支点部と、当該支点部よりも利用者の後頭部側に延伸すると共に、当該後頭部で支持される装着部とからなる物品保持用頭部装着具を提供する。
【0012】
また本発明では、前記物品保持用頭部装着具と、少なくとも利用者の目部を覆うシールド部材とからなるフェイスシールドを提供する。当該フェイスシールドにおいて、シールド部材は、前記物品保持用頭部装着具における保持部の先端に設けることができ、前記物品保持用頭部装着具は、前記保持部と装着部との距離を調整自在に連結する連結部を備えることができる。
【0013】
上記本発明に係るフェイスシールドにおいて、前記シールド部材は、利用者の目部を覆う第1シールド部材と、利用者の口部を覆う第2シールド部材からなり、当該第2シールド部材は、着用時において利用者が手で変形できる程度の柔軟性を有するように形成するか、又は口部を開放可能な開口部若しくは縦方向や横方向などに延伸するか交差するスリット部を設けて形成することができる。
【0014】
そして本発明は、前記課題の少なくとも何れかを解決する為に、利用者の頭部に装着可能なフェイスシールドであって、利用者の顔正面を覆うシールド部材と、当該シールド部材を利用者の頭部に保持する頭部装着具とからなり、当該シールド部材は、少なくとも利用者の口部を覆う領域が柔軟性を有するか、又は口部を開放可能な開口部若しくはスリット部が設けられているフェイスシールドを提供する。
【0015】
更に本発明では、前記課題の少なくとも何れかを解決する為に、利用者の頭部に装着可能なフェイスシールドであって、利用者の顔正面を覆うシールド部材と、当該シールド部材を利用者の頭部に保持する頭部装着具とからなり、当該シールド部材は、少なくとも利用者の目部を覆う正面側の領域が、横方向に平坦に展開する平面部として形成されているフェイスシールドを提供する。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明に係る物品保持用頭部装着具は、利用者の頭部正面側に延出して先端側で物品を保持する保持部と、当該保持部と一体化されて利用者の頭部に接する支点部と、当該支点部よりも利用者の後頭部側に延伸すると共に、当該後頭部で支持される装着部とで形成していることから、装着部が梃子の原理における力点として作用することができ、これによって保持部で保持するシールド部材や布帛などを確実に保持することができる。即ち、支点部が支点として機能し、後頭部で支持される装着部が力点として機能することから、作用点となる保持部は十分な重さに耐えてシールド部材や布帛などを保持することができる。この点、頭部装着具の挟持力又は締付力によってシールド部材を保持していた従前のフェイスシールドよりも、重い対象物を保持することが可能となっている。従って本発明によって、薄い樹脂板で形成されているシールド部材以上の重量物を保持できると共に、保持するのがシールド部材であっても確実に保持する事のできる物品保持用頭部装着具と、これを用いたフェイスシールドを提供することができる。
【0017】
また本発明に係る物品保持用頭部装着具において、前記支点部は、利用者の側頭部を挟持する左右一対の支点フレームに形成されており、前記装着部は、当該支点フレームにおける利用者の後頭部側に設けられており、前記保持部は、前記支点フレームに対して進退自在に設けられた保持フレームの先端側に設けられており、前記支点部と装着部との距離は、前記支点部と保持部との距離と同じか、それよりも長く形成することができる。その結果、利用者の後頭部で支持される装着部に対する負荷を軽減しながらも、十分に重い物品(顔の正面に保持する物品)であっても、確実に保持する事のできる物品保持用頭部装着具と、これを用いたフェイスシールドを提供することができる。
【0018】
また上記本発明に係る物品保持用頭部装着具と、少なくとも利用者の目部を覆うシールド部材とからなる本発明のフェイスシールドは、当該シールド部材が前記物品保持用頭部装着具における保持部の先端に設けられており、前記物品保持用頭部装着具は、前記保持部と装着部との距離を調整自在に連結する連結部を備えていることから、装着時において利用者が負担を感じない位置にシールド部材を保持することができる。即ち、着用時においても顔面から離れた位置にシールドを存在させる事のできる物品保持用頭部装着具と、これを用いたフェイスシールドを提供することができる。
【0019】
また本発明に係るフェイスシールドにおいて、前記シールド部材が、利用者の目部を覆う第1シールド部材と、利用者の口部を覆う第2シールド部材で形成することができる。この時、当該第1シールド部材と第2シールド部材とは、異なる材質で形成することができる。その結果、各部位に要求される機能に応じて最適な材料を選択することができる。また、当該第2シールド部材は柔軟性を有するか、又は口部を開放可能な開口部若しくはスリット部を設けて形成することもできる。その結果、フェイスシールドを装着した状態において口部だけを露出させることができる。よって、飲食時や管楽器等の楽器(特に奏者が口で吹いて演奏する楽器)の演奏時などで口元を露出する際に、当該フェイスシールドの着脱や上げ下げを必要としない物品保持用頭部装着具と、これを用いたフェイスシールドを提供することができる。
【0020】
そして本発明に係るフェイスシールドにおいて、前記シールド部材は、利用者の目部を覆う第1シールド部材を有すると共に、当該第1シールド部材の正面側は、横方向に平坦に展開する平面部として形成することにより、シールド部材への映り込みによる違和感を軽減することができる。よって、顔面の正面に存在するシールド部材を、凡そ平面状態とすることができる物品保持用頭部装着具と、これを用いたフェイスシールドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施の形態に係るフェイスシールドの装着状態を示す(A)正面図、(B)側面図。
図2】第1の実施の形態に係るフェイスシールドの使用状態を示す(A)正面図、(B)側面図。
図3】第1の実施の形態に係る物品保持用頭部装着具を示す(A)平面図、(B)斜視図。
図4】第2の実施の形態に係るフェイスシールドの使用状態を示す(A)正面図、(B)側面図。
図5】第3の実施の形態に係るフェイスシールドの装着状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態にかかる物品保持用頭部装着具20と、これを用いたフェイスシールド10を具体的に説明する。特に本実施の形態にかかる物品保持用頭部装着具20は、フェイスシールド10を構成する為に、利用者の顔の前にシールド部材30を保持した実施形態を示している。但し当該物品保持用頭部装着具20は、シールド部材30に限ることなくその他の物品を保持する為に使用する事が可能である。
【0023】
図1は第1の実施の形態に係るフェイスシールド10の装着状態を示す(A)正面図、(B)側面図であり、図2は当該フェイスシールド10の使用状態を示す(A)正面図、(B)側面図であり、図3は当該フェイスシールド10に使用した物品保持用頭部装着具20を示す(A)平面図、(B)斜視図である。
【0024】
この第1の実施の形態に係るフェイスシールド10は、物品保持用頭部装着具20とシールド部材30とで構成されている。物品保持用頭部装着具20は、当該フェイスシールド10を装着する利用者の頭部正面である顔面と対向するようにして、シールド部材30からなる物品を保持するように構成されている。この物品保持用頭部装着具20は、利用者の頭部正面側に延出すると共に、その先端側でシールド部材30を保持する保持部22aと、当該保持部22aと一体化されて利用者の頭部に接する支点部21aと、当該支点部21aよりも利用者の後頭部側に延伸して、当該後頭部で支持される装着部23aとを備えて構成されている。
【0025】
前記支点部21aは、保持部22aを所定の位置に存在させるための支点として機能することができ、これは利用者の側頭部を挟持する左右一対の支点フレーム21に形成されている。即ち、この実施の形態に係るフェイスシールド10において、物品保持用頭部装着具20は利用者の頭部、特に側頭部を挟持するように構成している。但し、当該支点フレーム21は利用者の耳介に係止することもでき、この場合には当該耳介に係止している位置を支点部21aとすることができる。当該支点フレーム21を、利用者の側頭部を挟持するように形成した場合には、眼鏡やマスクを使用する場合であっても困難なく装着することができる。一方で、当該支点フレーム21を耳介に係止させるように構成した場合には、側頭部を挟持する必要が無くなり、よって長時間装着した場合であっても、挟持力による痛みなどが生じない物品保持用頭部装着具20と、これを用いたフェイスシールド10とすることができる。
【0026】
またこの支点部21aには、後述する保持フレーム22を進退自在に保持する連結部24を設けている。図3(A)に示す様に、当該連結部24は保持フレーム22を進退自在に挿入可能な孔部24aを備えており、当該孔部24aに保持フレーム22を刺し通して、その差し込み位置を調整することにより、前記保持部22aと装着部23aとの距離を調整自在としている。また図3(A)に示す様に、本実施の形態に係る物品保持用頭部装着具20では、前記支点フレーム21の側面に鋸刃状の凹凸を形成しており、一方で当該孔部内には鋸刃状の凹凸を係止可能な凸部を形成している。その結果、当該連結部24に対する保持フレーム22のスライド移動を制限することができ、両者を任意の位置で固定することができる。従って、図2(B)に示す様に、シールド部材30と使用者の顔面との距離(L)を自在に調整することができ、装着時におけるシールド部材30による圧迫感を解消することができる。
【0027】
保持部22aはシールド部材30を保持する為に機能する。本実施の形態では、当該フェイスシールド10を装着した使用者における頭部の前面側に左右方向に延伸する長尺な正面枠部分221として当該保持部22aを形成している。そして当該正面枠部分221の両端部には、前記支点フレーム21に対して進退自在に設けられる側面枠部分222を設けており、当該正面枠部分221と側面枠部分222とによって保持フレーム22を構成している。当該保持フレーム22は、前記シールド部材30を進退自在に保持する。特に、当該正面枠部分221は、横方向に真っ直ぐ延伸する直線状に形成している。従って図1(A)に示す様に、当該正面枠部分221に係止されるシールド部材30は、横方向に湾曲することのない平面状となり、少なくとも利用者の目部を覆う領域(後述の「第1シールド部材31」)は、横方向に湾曲することなく平坦に展開する平面部とすることができる。その結果、装着時におけるシールド部材30による圧迫感を解消することができ、長時間装着する事のできるフェイスシールド10となっている。特に、当該平面部は、利用者の両眼間隔よりも広く形成することにより、装着時における視野を広く確保し、また装着時の違和感を解消することができる。但し、当該正面枠部分221は、横方向に湾曲する形状、例えば横方向の中央近傍が膨出するように湾曲させた形状に形成しても良く、又は任意の位置を曲折させても良い。その結果、前記シールド部材30は当該正面枠部分221の形状に相応させて曲折させることができる。
【0028】
また当該保持部22aには、シールド部材30を固定する為の固定部を設けることが望ましい。かかる固定部はシールド部材30に設けた開口を嵌め込んで固定する突起である他、両面テープや接着剤などの粘着部材でも良く、更にシールド部材30を挟持することのできる係合構造や、ネジやビスなどによって固定する固定部であっても良い。即ち、当該保持部22aにはシールド部材30を固定する為の構造乃至は部材を設けることが望ましい。
【0029】
そして装着部23aは、前記支点フレーム21における利用者の後頭部側に設けられている。図1(B)に示す様に、本実施の形態では、前記支点フレーム21の後端側から下方に延伸するものとして形成されており、当該フェイスシールド10を装着した状態において、装着者の後頭部、特に頸部の上近くに当接するように形成している。かかる装着部23aは、それが装着される位置に沿う形状に形成されていることが望ましく、その結果、前記保持部22aに保持されたシールド部材30などの物品の重さを、より確実に支持することが可能になる。但し、当該装着部23aは、必ずしも図1(B)の様に後頭部の頸部近傍に沿う形状に形成する必要はなく、保持部22aに保持した物品を支持できるのであれば、各種形状や構造で形成しても良い。更に、当該装着部23aは、利用者の頸部に係止されるように形成しても良い。
【0030】
そして上記の様に支点部21a、保持部22a及び装着部23aを備えて形成される物品保持用頭部装着具20には、透明な樹脂板で形成されたシールド部材30が装着される。かかるシールド部材30は使用者の顔を覆う大きさに形成した1枚の樹脂板で形成しても良いが、望ましくは図1(A)等に示す様に、利用者の目部を覆う第1シールド部材31と、利用者の口部を覆う第2シールド部材32とで形成する。特に利用者の目部を覆う第1シールド部材31は、アクリル板や塩化ビニル板などの樹脂板を用いて、一定の形状を保つことができるように形成している。一方で、利用者の口部を覆う第2シールド部材32は、ビニルシートなどの樹脂シートや、レースや織物などの布帛を用いて形成しており、その中心部には上下方向に延伸するスリット部33を形成している。かかるスリット部33が存在する事により、図2(A)に示す様に、利用者は当該フェイスシールド10を取り外すことなく口部を露出させることができる。従ってフェイスシールド10を装着したままで飲食が可能であり、また管楽器などの楽器を演奏すことが可能となる。但し、当該第2シールド部材32は、スリットを設けない1枚のシートで形成することもできる。この場合には、任意の位置で任意の形状に切開することにより、使用の場面に応じたスリットを形成することが可能となる。
【0031】
上記スリット部33は図1(A)に示す様に、前後に重なる積層部33aを設けて形成しており、その結果、当該スリット部33を開かない状態においては、口部を確実に遮蔽することができる。また当該スリット部33は、必ずしも縦方向に延伸するスリットである必要はなく、横方向又は斜め方向に延伸して切開させたスリットでも良く、更には当該口部へのアクセスを可能とする開口として形成しても良い。
【0032】
かかる第2シールド部材32は、利用者の口部を透過させて、装着感を解消したい場合には透明な樹脂材料を用いて形成することが望ましいが、口部を透過させる必要がない場合には、不透明な樹脂シートや布帛を用いて形成しても良い。特に当該第2シールド部材32に着色や模様を付することにより、意匠性の向上を図ることができる。
【0033】
特に本実施の形態に係る物品保持用頭部装着具20は、前記保持部22aを構成する正面枠部分221は、装着時における利用者の鼻部又は鼻下部に存在させている。当該位置に正面枠部分221を存在させることにより、利用者の視界において、この正面枠部分221が邪魔になることはなく、装着時における視認性を確保することができる。特に当該フェイスシールド10を管楽器などの楽器の演奏時に使用する場合には、指揮者と楽譜を視認する上で、当該正面枠部分221が邪魔になる事は無くなる。また、正面枠部分221を利用者の鼻部又は鼻下部に存在さることにより、当該正面枠部分221を境目として、その上方に前記第1シールド部材31を存在させ、下方に前記第2シールド部材32を存在させることができる。即ち、当該正面枠部分221が使用者の鼻部又は鼻下部に存在する事により、前記の様に材質の異なる2つのシールド部材30を設けることが可能となっている。但し、前記第1シールド部材31の上部を係止するように正面枠部分221を設け、当該第1シールド部材31の下方に前記第2シールド部材32を一体化することも可能である。
【0034】
以上の様に支点部21a、保持部22a及び装着部23aで構成された物品保持用頭部装着具20は、図1(A)(B)に示す様に、利用者の後頭部に装着部23aが固定され、そこから前方に延伸している支点フレーム21は利用者の側頭部を挟持するか、又は耳介に係止されることで支点部21aとして機能することができる。そして当該支点フレーム21の連結部24に進退自在に装着され、当該支点フレーム21の連結部24から斜め下方に向かって、利用者の顔を超えて前方に延伸する保持フレーム22を設けている。かかる保持フレーム22は、各連結部24に係止された側面枠部分222の前方に存在する正面枠部分221が直線的な棒状に形成されている事から、前記シールド部材30の正面側を平板状に保持することができる。その際、当該支点フレーム21は前記連結部24に進退自在に設けられていることから、図2(B)に示す様に、シールド部材30と利用者の顔との距離を自在に調整することができる。
【0035】
また当該正面枠部分221は、利用者の鼻部又は鼻下部に存在しており、当該正面枠部分221よりも上方側に、透明な樹脂板からなる第1シールド部材31を設け、当該正面枠部分221の下側には、柔軟性を有する樹脂シートや布帛からなる第2シールド部材32を設けている。当該正面枠部分221は、利用者の鼻部又は鼻下部に存在することから、装着時における利用者の視野を確保し、圧迫感などの違和感を無くすことができる。そしてこの第2シールド部材32には、利用者の正面側で僅かに重なり合うスリット部33を設けていることから、図2(A)に示す様に、当該フェイスシールド10を取り外すことなく、スリット部33を介して口部を露出させることができる。
【0036】
次に図4を参照しながら、第2の実施の形態に係る物品保持用頭部装着具20と、これを用いたフェイスシールド10を具体的に説明する。特にこの実施の形態では、物品保持用頭部装着具20を構成する保持フレーム22を、前記支点フレーム21よりも上方に向かって前方に延伸するように設置している。その結果、当該保持フレーム22における正面枠部分221は、利用者の顔の上方に存在する事になり、シールド部材30を散り下げるように指示することができる。当該保持フレーム22は、前記連結部24に対して進退自在であることから、吊り下げられているシールド部材30と利用者の顔との距離を自在に調整することができる。
【0037】
そしてこの実施の形態に係るフェイスシールド10においても、当該シールド部材30における利用者の口部付近には前記スリット部33を設けていることから、当該スリット部33を介して、簡易に口部を露出させることができる。
【0038】
なお、本実施の形態に係るフェイスシールド10において、シールド部材30は柔軟性を有する樹脂シートや布帛を用いて形成する事が望ましいが、アクリル板などの樹脂板を用いて形成することもできる。また、本実施の形態において使用しているシールド部材30は、必ずしも感染症における飛沫感染の阻止を目的とするだけでなく、例えば屋外などにおける日焼け防止や、各種作業時における顔面の保護のために使用することもできる。さらに当該物品保持用頭部装着具20は、各種物品を顔から離れた位置に吊り下げて保持することができる為、シールド部材30に限ることなく、帯状物や装飾物等を散り下げて保持する為、即ち装飾品としても使用することができる。
【0039】
図5は第3の実施の形態にかかる物品保持用頭部装着具20と、これを用いたフェイスシールド10を示す側面図である。特にこの実施の形態に係る物品保持用頭部装着具20は、支点部21aを、利用者の頭部を左右方向に跨る様に形成したヘッドバンド部25に形成している。即ち、後頭部に支持される装着部23aから利用者の正面側に延伸するアーム部の先端側に、頭部の上方を跨って延伸するヘッドバンド部25を設けており、当該ヘッドバンド部25の下端側に、前記連結部24を設けて保持フレーム22を係合している。かかる構成において、前記ヘッドバンド部25が利用者の頭部に支持されて、これが支点部21aとして機能している。このように形成した物品保持用頭部装着具20においては、保持部22aに設けた物品の重さを当該支点部21a、即ち利用者の頭頂部で支持することが可能である事から、より重い物品であっても、利用者の顔の正面側に保持することができる。
【0040】
そして、当該ヘッドバンド部25によって支点部21aを形成した場合には、側頭部を挟持したり、耳介に係止する必要もないことから、一層長時間装着可能な物品保持用頭部装着具20、及びこれを用いたフェイスシールド10とすることができる。
【0041】
なお、本実施の形態に係る物品保持用頭部装着具20と、これを用いたフェイスシールド10においても、前記保持フレーム22の先端側(即ち、正面枠部分221)を利用者の顔の上方に存在させることもでき、その際には当該ヘッドバンド部25の長さや、連結部24に形成した開口部の向きを調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の物品保持用頭部装着具は、利用者の顔の前方にシールド部材や帯状部材、更には装飾品を保持する為に使用することができ、医療用途や感染防止用途のみならず、各種の作業において、及び装飾用途において使用することができる。また、これを用いたフェイスシールドは、感染症の飛沫感染を阻止する為のみならず、各種作業用途においても使用することができる。
【0043】
特にシールド部材における利用者の口部近傍にスリットを設けたフェイスシールドにあっては、吹奏楽などの楽器の演奏に際しても有利なフェイスシールドとして利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 フェイスシールド
20 物品保持用頭部装着具
21 支点フレーム
21a 支点部
22 保持フレーム
22a 保持部
221 正面枠部分
222 側面枠部分
23a 装着部
24 連結部
24a 孔部
25 ヘッドバンド部
30 シールド部材
31 第1シールド部材
32 第2シールド部材
33 スリット部
33a 積層部
図1
図2
図3
図4
図5