(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063804
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】スタティックミキサー
(51)【国際特許分類】
B01F 25/42 20220101AFI20220415BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
B01F5/00 F
B01J19/00 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172233
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 和晃
【テーマコード(参考)】
4G035
4G075
【Fターム(参考)】
4G035AC09
4G035AE13
4G075AA02
4G075AA39
4G075BA10
4G075BB05
4G075DA02
4G075EC11
4G075ED03
4G075FB02
4G075FB04
4G075FB12
(57)【要約】
【課題】混合室内に混合エレメントを損傷することなく簡便に配設できるようにする。
【解決手段】第1プレート12および第2プレート14に設けられた第1溝34および第2溝36の何れか一方に混合エレメント22を嵌め入れた後に、第1プレート12と第2プレート14とを突き合わせて締結ボルト54によって締結することにより、第1溝34、第2溝36によって形成される混合室20内に混合エレメント22を損傷することなく簡便に組み付けることができる。また、第1プレート12に設けられた第1凸条40の先端の第1合せ面30に第1溝34が設けられているとともに、第2プレート14に設けられた第2凸条42の先端の第2合せ面32に第2溝36が設けられているため、第1溝34および第2溝36の周囲の比較的狭い範囲の第1合せ面30、第2合せ面32に締結力が集中的に作用して押圧されるようになり、高いシール性能が得られる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の外径寸法の混合エレメントと、
一定の内径寸法の円筒内周面を有する混合室が設けられており、該混合室内に前記混合エレメントが配設されるハウジングと、
を有するスタティックミキサーにおいて、
前記ハウジングは、
互いに密着するように突き合わされる第1合せ面および第2合せ面にそれぞれ断面が半円形の第1溝および第2溝が設けられた一対の第1プレートおよび第2プレートと、
前記第1溝および前記第2溝によって前記混合室が形成されるように、前記第1プレートおよび前記第2プレートを突き合わせて締結する締結部材と、
を備えており、且つ、
前記第1プレートには前記第2プレートに向かって突き出す第1凸部が設けられ、該第1凸部の先端面が前記第1合せ面とされて前記第1溝が設けられており、
前記締結部材は、前記第1凸部の外側に設けられて前記第1プレートと前記第2プレートとを締結している
ことを特徴とするスタティックミキサー。
【請求項2】
前記第2プレートには前記第1プレートに向かって突き出す第2凸部が設けられ、該第2凸部の先端面が前記第2合せ面とされて前記第2溝が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のスタティックミキサー。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記第1凸部および前記第2凸部が内側に嵌合される嵌合穴が設けられているとともに、該第1凸部および該第2凸部の高さの合計寸法よりも小さい板厚を有し、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に配設されるスペーサを備えており、
前記締結部材は、前記スペーサを板厚方向に貫通して前記第1プレートと前記第2プレートとを締結するように、前記第1凸部および前記第2凸部の周囲に複数設けられたねじ部材である
ことを特徴とする請求項2に記載のスタティックミキサー。
【請求項4】
前記第1凸部および前記第2凸部は、前記第1合せ面および前記第2合せ面と平行な断面形状が互いに同じであり、
前記スペーサの前記嵌合穴は、前記第1凸部および前記第2凸部が該嵌合穴内に嵌め入れられることにより、前記第1溝と前記第2溝とが一致するように前記第1プレートと前記第2プレートとが位置合わせされるように、前記断面形状に対応する大きさで設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載のスタティックミキサー。
【請求項5】
前記第1溝および前記第2溝は、それぞれ前記第1合せ面および前記第2合せ面の領域内に両端部が位置するように設けられており、該第1溝および該第2溝によって形成される前記混合室は両端部が閉塞されている一方、
前記第1プレートおよび前記第2プレートの少なくとも一方には、前記混合室の一端部および他端部にそれぞれ所定の交差角度で連結されるように一対の連結通路が設けられている
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のスタティックミキサー。
【請求項6】
前記混合エレメントは、矩形板を螺旋状に捩じった形状の螺旋状エレメントで、右まわりに捩じれた右捩れ部と左まわりに捩じれた左捩れ部とが交互に同じ数だけ設けられたものであり、
前記混合エレメントは、軸心まわりに回転可能な状態で前記混合室内に配置されている
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載のスタティックミキサー。
【請求項7】
前記混合エレメントの外径寸法は3mm以下で、
前記混合エレメントと前記混合室の前記円筒内周面との間のクリアランスは0.1mm以下である
ことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載のスタティックミキサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスタティックミキサーに係り、特に、円筒内周面を有する混合室内に混合エレメントが配設されているハウジングの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(a) 一定の外径寸法の混合エレメントと、(b) 一定の内径寸法の円筒内周面を有する混合室が設けられており、その混合室内に前記混合エレメントが配設されるハウジングと、を有するスタティックミキサーが知られている(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-353431号公報
【特許文献2】特開2014-14790号公報
【特許文献3】特開2006-231255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような従来のスタティックミキサーは、混合室の軸方向の少なくとも一方に開口部が設けられ、混合エレメントをその開口部から混合室内に挿入する必要があるが、混合エレメントと混合室の円筒内周面との間のクリアランス(遊び)が小さいと、混合室の開口部に混合エレメントが干渉して損傷する可能性があった。例えば試験や研究等のために少量の混合流体を得るため、外径寸法が3mm以下の小径の混合エレメントを使用することが考えられるが、小径化に伴って肉厚も薄くなることから破損し易くなり、上記課題が顕著になる。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、ハウジングの混合室内に混合エレメントを損傷することなく簡便に配設できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 一定の外径寸法の混合エレメントと、(b) 一定の内径寸法の円筒内周面を有する混合室が設けられており、その混合室内に前記混合エレメントが配設されるハウジングと、を有するスタティックミキサーにおいて、(c) 前記ハウジングは、(c-1) 互いに密着するように突き合わされる第1合せ面および第2合せ面にそれぞれ断面が半円形の第1溝および第2溝が設けられた一対の第1プレートおよび第2プレートと、(c-2) 前記第1溝および前記第2溝によって前記混合室が形成されるように、前記第1プレートおよび前記第2プレートを突き合わせて締結する締結部材と、を備えており、且つ、(d) 前記第1プレートには前記第2プレートに向かって突き出す第1凸部が設けられ、その第1凸部の先端面が前記第1合せ面とされて前記第1溝が設けられており、(e) 前記締結部材は、前記第1凸部の外側に設けられて前記第1プレートと前記第2プレートとを締結していることを特徴とする。
【0007】
なお、上記第1プレートおよび第2プレートに技術的な差異は無く、一対のプレートを備えてハウジングが構成されているとともに、その一対のプレートの少なくとも一方に凸部が設けられて、混合室を構成する溝が形成されていれば良い。言い換えれば、一対のプレートの何れか一方だけに凸部が設けられて溝が形成されている場合、その凸部が設けられたプレートが第1プレートである。
【0008】
第2発明は、第1発明のスタティックミキサーにおいて、前記第2プレートには前記第1プレートに向かって突き出す第2凸部が設けられ、その第2凸部の先端面が前記第2合せ面とされて前記第2溝が設けられていることを特徴とする。
【0009】
第3発明は、第2発明のスタティックミキサーにおいて、(a) 前記ハウジングは、前記第1凸部および前記第2凸部が内側に嵌合される嵌合穴が設けられているとともに、その第1凸部およびその第2凸部の高さの合計寸法よりも小さい板厚を有し、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に配設されるスペーサを備えており、(b) 前記締結部材は、前記スペーサを板厚方向に貫通して前記第1プレートと前記第2プレートとを締結するように、前記第1凸部および前記第2凸部の周囲に複数設けられたねじ部材であることを特徴とする。
【0010】
第4発明は、第3発明のスタティックミキサーにおいて、(a) 前記第1凸部および前記第2凸部は、前記第1合せ面および前記第2合せ面と平行な断面形状が互いに同じであり、(b) 前記スペーサの前記嵌合穴は、前記第1凸部および前記第2凸部がその嵌合穴内に嵌め入れられることにより、前記第1溝と前記第2溝とが一致するように前記第1プレートと前記第2プレートとが位置合わせされるように、前記断面形状に対応する大きさで設けられていることを特徴とする。
【0011】
第5発明は、第1発明~第4発明の何れかのスタティックミキサーにおいて、(a) 前記第1溝および前記第2溝は、それぞれ前記第1合せ面および前記第2合せ面の領域内に両端部が位置するように設けられており、その第1溝およびその第2溝によって形成される前記混合室は両端部が閉塞されている一方、(b) 前記第1プレートおよび前記第2プレートの少なくとも一方には、前記混合室の一端部および他端部にそれぞれ所定の交差角度で連結されるように一対の連結通路が設けられていることを特徴とする。
【0012】
第6発明は、第1発明~第5発明の何れかのスタティックミキサーにおいて、(a) 前記混合エレメントは、矩形板を螺旋状に捩じった形状の螺旋状エレメントで、右まわりに捩じれた右捩れ部と左まわりに捩じれた左捩れ部とが交互に同じ数だけ設けられたものであり、(b) 前記混合エレメントは、軸心まわりに回転可能な状態で前記混合室内に配置されていることを特徴とする。
【0013】
第7発明は、第1発明~第6発明の何れかのスタティックミキサーにおいて、(a) 前記混合エレメントの外径寸法は3mm以下で、(b) 前記混合エレメントと前記混合室の前記円筒内周面との間のクリアランスは0.1mm以下であることを特徴とする。なお、クリアランスは、円筒内周面の内径寸法と混合エレメントの外径寸法との差である。
【発明の効果】
【0014】
このようなスタティックミキサーにおいては、第1プレートおよび第2プレートに設けられた第1溝および第2溝の何れか一方に混合エレメントを嵌め入れた後に、それ等の第1プレートと第2プレートとを突き合わせて締結部材によって締結することにより、第1溝および第2溝によって形成される混合室内に混合エレメントを簡便に組み付けることが可能で、混合エレメントの損傷が抑制される。また、第1プレートには第1凸部が設けられ、その第1凸部の先端面が第1合せ面とされて第1溝が設けられているとともに、その第1凸部の外側に設けられた締結部材によって第1プレートと第2プレートとが締結されているため、第1溝の周囲の比較的狭い範囲の第1合せ面に締結力が集中的に作用して第2プレートに押圧されるようになり、高いシール性能が得られて混合室からの流体の漏出が抑制される。
【0015】
第2発明は、第2プレートに第2凸部が設けられ、その第2凸部の先端面が第2合せ面とされて第2溝が設けられている場合で、第1凸部と第2凸部とが突き合わされて混合室が形成されるため、シール性能を確保するために高い面精度が要求される加工範囲が第1凸部および第2凸部の先端面だけで良く、加工が容易で安価に構成できる。
【0016】
第3発明は、第1凸部および第2凸部が内側に嵌合される嵌合穴を有するスペーサが第1プレートと第2プレートとの間に配設されるとともに、そのスペーサを板厚方向に貫通して第1プレートと第2プレートとを締結するねじ部材が第1凸部および第2凸部の周囲に複数設けられている場合で、第1凸部と第2凸部とが所定の面圧で略均一に突き合わされるように複数のねじ部材を締結することにより、高いシール性能を容易に確保することができる。
【0017】
第4発明は、第1凸部および第2凸部の断面形状が互いに同じで、それ等がスペーサの嵌合穴内に嵌め入れられることにより、第1溝と第2溝とが一致するように第1プレートおよび第2プレートが位置合わせされる場合で、第1溝および第2溝の何れか一方に混合エレメントを嵌め入れた後に、第1凸部および第2凸部がスペーサの嵌合穴内に嵌め入れられるように第1プレートと第2プレートとを突き合わせれば、第1溝および第2溝によって形成される混合室内に混合エレメントを損傷することなく配置することが可能で、混合エレメントの組み付け作業を一層容易に行なうことができる。
【0018】
第5発明は、第1溝および第2溝がそれぞれ第1合せ面および第2合せ面の領域内に設けられて混合室の両端部が閉塞されており、その混合室の一端部および他端部にそれぞれ所定の交差角度で連結されるように一対の連結通路が第1プレートおよび第2プレートの少なくとも一方に設けられている場合で、混合エレメントが混合室内に保持されるため、必ずしも混合エレメントを位置決めしたり固定したりする必要がなく装置が安価に構成されるとともに、混合エレメントの組み付け作業を容易に行なうことができる。
【0019】
第6発明は、混合エレメントとして右捩れ部と左捩れ部とが交互に同じ数だけ設けられている螺旋状エレメントが用いられる場合で、混合室内を流動する流体によって混合エレメントに加えられる右トルクおよび左トルクが略同じになる。すなわち、特に回転ストッパ等を設けることなく混合エレメントの回転が抑制され、軸心まわりに回転可能に混合室内に配置するだけで適切な流体混合性能が得られるため、装置が安価に構成されるとともに、混合エレメントの組み付け作業を容易に行なうことができる。
【0020】
第7発明は、混合エレメントの外径寸法が3mm以下で、混合エレメントと混合室の円筒内周面との間のクリアランスが0.1mm以下の場合で、従来のように混合室内に軸方向から混合エレメントを挿入しようとすると、混合室の開口部に混合エレメントが干渉して損傷する可能性があるため、第1プレートと第2プレートとを突き合わせて締結することにより、第1溝および第2溝によって形成される混合室内に混合エレメントを損傷することなく簡便に配置することができる、という本発明の効果が顕著に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施例であるスタティックミキサーの斜視図である。
【
図2】
図1のスタティックミキサーの平面図である。
【
図3】
図1のスタティックミキサーの正面図である。
【
図4】
図2におけるIV-IV矢視部分の断面図である。
【
図5】
図4におけるV-V矢視部分における混合室および混合エレメントの断面図である。
【
図6】
図1のスタティックミキサーの構成要素である混合エレメントの一例を説明する正面図である。
【
図7】
図1のスタティックミキサーのハウジングの構成要素である第1プレートを第1合せ面が見えるように斜め下方から見た斜視図である。
【
図8】
図1のスタティックミキサーのハウジングの構成要素である第2プレートを第2合せ面が見えるように斜め上方から見た斜視図である。
【
図9】
図1のスタティックミキサーのハウジングの構成要素であるスペーサを斜め上方から見た斜視図である。
【
図10】
図1のスタティックミキサーのハウジングの組付手順の一例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、例えば試験や研究等のために少量の混合流体を得るため、或いは少量の流体を混ぜ合わせて反応させるため、外径寸法が3mm以下、更には2mm以下の、小径の混合エレメントを使用するとともに、混合室の円筒内周面との間のクリアランスが0.1mm以下、更には0.05mm以下とされる、小型のスタティックミキサーに好適に適用される。外径寸法が3mmよりも大きい混合エレメントを使用するスタティックミキサーや、混合エレメントと混合室の円筒内周面との間のクリアランスが0.1mmよりも大きいスタティックミキサーにも適用され得る。混合エレメントは、例えば右まわりに捩じれた右捩れ部と左まわりに捩じれた左捩れ部とが交互に設けられた螺旋状エレメントが好適に用いられるが、右まわりおよび左まわりの何れか一方向へ捩じっただけの螺旋状エレメントや、放射状に複数の混合羽根が設けられた混合エレメントなど、混合室内を流動する流体を混合することができる種々の態様が可能である。混合エレメントは、例えば軸心まわりに回転可能で且つ軸方向へ移動可能に混合室内に配設されるが、ストッパ等により軸心まわりに回転不能に混合室内に配設したり、軸方向への移動不能に混合室内に配設したりしても良い。混合対象の流体としては、各種の液体が適当であるが、液体以外の流体を対象とすることもできる。
【0023】
第1プレートと第2プレートとを突き合わせて締結する締結部材としては、複数のねじ部材が好適に用いられるが、クランプ等を用いて締結することもできる。少なくとも第1プレートには第1凸部が設けられるが、第2プレートの第2凸部は必要に応じて設けられ、その第2凸部を省略することもできる。第1プレートと第2プレートとの間には、必要に応じてスペーサが設けられるが、そのスペーサを省略することもできる。スペーサの代わりにガイドピン等を設けて、第1溝と第2溝とが一致するように第1プレートと第2プレートとを位置合わせすることも可能である。
【0024】
第1プレートに第1凸部が設けられるとともに第2プレートに第2凸部が設けられる場合、第1凸部および第2凸部が内側に嵌合される嵌合穴を有するスペーサを第1プレートと第2プレートとの間に配設することが望ましい。嵌合穴は、第1凸部および第2凸部が嵌合穴内に嵌め入れられることにより、第1溝と第2溝とが一致するように第1プレートと第2プレートとが位置合わせされるように、第1凸部および第2凸部の断面形状に対応する大きさで設けることが望ましい。例えば、第1合せ面および第2合せ面が同一形状で、それ等の合せ面と同じ大きさの断面で第1凸部および第2凸部が設けられる場合、嵌合穴も略同じ大きさで設ければ良い。第1凸部および第2凸部を、第1合せ面、第2合せ面である先端面側ほど断面積が小さくなるように、側面を傾斜させても良く、その場合は第1凸部および第2凸部の基端部分、すなわち断面積が最も大きい部分の断面形状に合わせて嵌合穴の大きさを決めれば良い。
【0025】
混合室の両端部が閉塞されている場合、その混合室に流体を供給したり混合室から混合流体を取り出したりするために、混合室の一端部および他端部に連結されるように一対の連結通路が設けられる。この一対の連結通路は、第1プレートに設けられても良いし、第2プレートに設けられても良い。一対の連結通路の一方を第1プレートに設け、他方を第2プレートに設けても良い。これ等の連結通路は、例えば混合室に対して直角に連結されるように、第1合せ面や第2合せ面に対して垂直に設けられ、第1プレートや第2プレートを板厚方向に貫通するように設けられるが、例えば混合室に対して所定の鈍角で連結されるように連結通路を斜めに傾斜させて設けることもできるなど、種々の態様が可能である。複数種類の流体を供給するために、供給側の連結通路を複数設けることも可能である。
【実施例0026】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は説明のために適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0027】
図1は、本発明の一実施例であるスタティックミキサー10の斜視図で、
図2はスタティックミキサー10の平面図、
図3はスタティックミキサー10の正面図であり、
図4は
図2におけるIV-IV矢視部分の断面図である。このスタティックミキサー10は、長方形の板状の一対の第1プレート12および第2プレート14と、それ等の第1プレート12と第2プレート14との間に介在させられたスペーサ16と、から成るハウジング18を備えており、そのハウジング18の内部に混合室20が設けられている。混合室20は、一定の内径寸法の円筒内周面を有する円柱形状の空間で、その混合室20内には一定の外径寸法の長手状の混合エレメント22が配設されている。なお、下側のプレートを第1プレート12、上側のプレートを第2プレート14としても良い。
【0028】
図5は、
図4におけるV-V矢視部分における混合室20および混合エレメント22の断面図で、
図6は、混合エレメント22の一例を示した正面図である。本実施例の混合エレメント22は、矩形板を軸心Sまわりに螺旋状に捩じった形状の螺旋状エレメントで、具体的には右まわりに180°捩じれた右捩れ部24と左まわりに180°捩じれた左捩れ部26とが、90°ずつ位相をずらして交互に同じ数(実施例では6つずつ)だけ設けられている。そして、混合室20の一端部(
図4における右端部)に供給された流体が混合エレメント22の捩れに沿って混合室20の他端部(
図4における左端部)側へ向かって流動させられる際に、90°位相がずれた右捩れ部24および左捩れ部26によって分割や合流、右旋回、左旋回を繰り返して混合される。本実施例のスタティックミキサー10は、例えば試験や研究等のために少量の流体、例えば液体を混合するためのもので、混合エレメント22の外径寸法Φは1mm~2mmの範囲内で実施例では約1.5mmであり、その混合エレメント22と混合室20の円筒内周面との間のクリアランスCは0.1mm以下で実施例では約0.05mmである。このような混合エレメント22は、例えばアルミナ等のセラミックスを用いて3Dプリンタにより一体成形することができるが、金属や合成樹脂材料等の粗材に切削加工等を行なって製作することもできるなど、種々の製作技術を採用できる。
【0029】
前記第1プレート12および第2プレート14は、互いに密着するように突き合わされる平坦な第1合せ面30、第2合せ面32を備えているとともに、その合せ面30、32にはそれぞれ断面が半円形の第1溝34、第2溝36が設けられており、第1合せ面30および第2合せ面32が密着するように突き合わされることにより第1溝34および第2溝36によって混合室20が形成される。
図7は、第1合せ面30が見えるように第1プレート12を斜め下方から見た斜視図で、第8は、第2合せ面32が見えるように第2プレート14を斜め上方から見た斜視図である。これ等の図から明らかなように、第1プレート12の下面には第2プレート14に向かって突き出す長手状の第1凸条40が設けられているとともに、第2プレート14の上面には第1プレート12に向かって突き出す長手状の第2凸条42が設けられている。そして、それ等の凸条40、42の先端面が上記合せ面30、32として用いられて、それぞれ第1溝34、第2溝36が設けられている。第1凸条40および第2凸条42は前記混合室20よりも長く、第1溝34および第2溝36は何れも長方形の第1合せ面30、第2合せ面32の領域内に両端部が位置するように設けられており、第1溝34および第2溝36によって形成される混合室20は両端部が閉塞されている。したがって、この混合室20内に配設される混合エレメント22が混合室20から抜け出す恐れはなく、混合室20内に保持される。上記第1凸条40は第1凸部に相当し、第2凸条42は第2凸部に相当する。
【0030】
第1凸条40の第1合せ面30および第2凸条42の第2合せ面32は同一形状であり、第1凸条40および第2凸条42は、その第1合せ面30、第2合せ面32と平行な断面形状が第1合せ面30、第2合せ面32と同じ長方形で、垂直に突き出すように設けられている。すなわち、第1凸条40および第2凸条42は、同一の直方体形状を成しており、前記スペーサ16には、第1凸条40および第2凸条42が内側に嵌合される長方形の長穴50が設けられている。
図9は、スペーサ16を斜め上方から見た斜視図で、長穴50は、同一の断面形状の第1凸条40および第2凸条42がその長穴50内に嵌め入れられることにより、第1溝34と第2溝36とが一致するように第1プレート12と第2プレート14とが位置合わせされるように、第1凸条40および第2凸条42の断面形状に対応する大きさ、すなわちその断面形状よりも僅かに大きい寸法で設けられている。したがって、第1溝34および第2溝36の何れか一方に混合エレメント22を嵌め入れた後に、第1凸条40および第2凸条42がスペーサ16の長穴50内に嵌め入れられるように第1プレート12と第2プレート14とを組み付ければ、第1溝34および第2溝36によって形成される混合室20内に混合エレメント22を損傷することなく配置することができる。第1凸条40および第2凸条42を長穴50内に嵌め入れ易くするため、その第1凸条40および第2凸条42の先端外周縁に面取を設けたり、長穴50の両端開口の周縁部に面取を設けたりしても良い。上記長穴50は嵌合穴に相当する。
【0031】
図10は、ハウジング18の組付手順の一例を説明する図で、例えば第2プレート14の第2溝36内に混合エレメント22をピンセット等を用いて嵌め入れた後に、第2凸条42が長穴50内に嵌め入れられるようにスペーサ16を第2プレート14の上に配置する。第2プレート14の第2凸条42にスペーサ16を嵌合した後に、長穴50内の第2凸条42の第2溝36内に混合エレメント22を嵌め入れるようにしても良い。混合エレメント22は、第2溝36上に軸心Sまわりの回転自在で且つ軸方向の移動可能に載置するだけで良い。その後、第1凸条40が長穴50内に嵌め入れられるように、第2プレート14およびスペーサ16の上に第1プレート12を重ね合わせることにより、第1溝34および第2溝36によって形成される混合室20内に混合エレメント22が配設される。また、使用された混合エレメント22を洗浄したり交換したりする際には、
図10のように第1プレート12と第2プレート14とを離間させることにより、ピンセット等を用いて簡便に取り出すことができる。
【0032】
スペーサ16の板厚ts(
図3参照)は、第1凸条40および第2凸条42の高さの合計寸法よりも僅かに小さい寸法であり、スペーサ16の存在に拘らず第1合せ面30と第2合せ面32とが所定の面圧で密着するように、第1プレート12と第2プレート14とを突き合わせて締結することができる。すなわち、スペーサ16の長穴50の周囲には、板厚方向に貫通するように複数(実施例では4つ)のボルト挿通穴52が設けられており、そのボルト挿通穴52を貫通するように設けられた複数の締結ボルト54により、第1プレート12および第2プレート14が締結される。具体的には、第1プレート12には、ボルト挿通穴52と一致する4箇所に締結ボルト54のねじ部を挿通させることができるとともに頭部を収容できるボルト装着穴56が設けられている一方、第2プレート14には、ボルト挿通穴52と一致する4箇所にねじ穴58が設けられており、その4箇所で締結ボルト54によって締結される。このように第1凸条40および第2凸条42が収容される長穴50の周囲の複数箇所で締結されることにより、第1凸条40と第2凸条42とが所定の面圧で略均一に突き合わされ、第1溝34および第2溝36によって形成される混合室20が高いシール性能でシールされ、混合室20内を流通させられる流体の漏れが抑制される。その場合に、例えば第1プレート12および第2プレート14が弾性変形によってスペーサ16に接するまで締結ボルト54を締結した時に所定のシール性能が得られるように板厚tsを設定すれば、締結ボルト54の締結作業を容易に行なうことができる。必要に応じてパッキン等のシール部材が第1溝34や第2溝36の周囲に設けられても良い。第1プレート12、第2プレート14、スペーサ16は、本実施例ではステンレス鋼等の金属材料にて構成されているが、合成樹脂材料等の他の材料で構成することもできる。上記締結ボルト54はねじ部材で、締結部材に相当する。
【0033】
図4、
図10に示されているように、第1プレート12には、第1溝34の両端部に開口するように、言い換えればハウジング18の状態で混合室20の両端部に連結されるように、一対の連結通路60、62が設けられている。これ等の連結通路60、62は、第1プレート12を板厚方向に貫通するように第1合せ面30に対して垂直に設けられており、各連結通路60、62の上端開口部にはそれぞれ連結ポート(ねじ穴)64、66が設けられている。一方の連結ポート64には配管等の供給路68が接続され、混合器70から複数種類の液体等を含む流体が供給される一方、他方の連結ポート66には配管等の取出路72が接続されている。混合器70は、複数種類の流体を所定の割合で合流させるものである。そして、供給路68から連結通路60を経て混合室20の一端部に供給された流体は、その混合室20内を他端部側へ向かって流動させられる過程で混合エレメント22により分割や合流、右旋回、左旋回を繰り返して均一に混合され、その混合流体が連結通路62を経て取出路72へ流出させられる。混合エレメント22は、右捩れ部24および左捩れ部26を交互に同じ数だけ備えているため、混合室20内を流動する流体によって混合エレメント22に加えられる右トルクおよび左トルクが略同じになり、回転ストッパ等を設けることなく混合エレメント22の回転が抑制されるとともに、その回転停止状態の混合エレメント22によって適切な流体混合性能が得られる。この時、混合エレメント22は流体の圧力により混合室20の下流側、すなわち
図4における左端部に当接させられて保持される。
【0034】
このように本実施例のスタティックミキサー10においては、第1プレート12および第2プレート14に設けられた第1溝34および第2溝36の何れか一方に混合エレメント22を嵌め入れた後に、それ等の第1プレート12と第2プレート14とを突き合わせて締結ボルト54によって締結することにより、第1溝34および第2溝36によって形成される混合室20内に混合エレメント22を簡便に組み付けることが可能で、混合エレメント22の損傷が抑制される。
【0035】
また、第1プレート12には第1凸条40が設けられ、その第1凸条40の先端面が第1合せ面30とされて第1溝34が設けられているとともに、第2プレート14には第2凸条42が設けられ、その第2凸条42の先端面が第2合せ面32とされて第2溝36が設けられており、それ等の第1凸条40、第2凸条42の外周側に設けられた締結ボルト54によって第1プレート12と第2プレート14とが締結されている。このため、第1溝34および第2溝36の周囲の比較的狭い範囲の第1合せ面30、第2合せ面32に締結力が集中的に作用して押圧されるようになり、高いシール性能が得られて混合室20からの流体の漏出が適切に抑制される。
【0036】
また、シール性能を確保するために高い面精度が要求される加工範囲が、第1凸条40および第2凸条42の先端面、すなわち第1合せ面30および第2合せ面32だけで良いため、加工が容易で安価に構成できる。
【0037】
また、第1凸条40および第2凸条42が内側に嵌合される長穴50を有するスペーサ16が第1プレート12と第2プレート14との間に配設されるとともに、そのスペーサ16を板厚方向に貫通して第1プレート12と第2プレート14とを締結する締結ボルト54が、第1凸条40および第2凸条42の周囲すなわち長穴50の周囲に複数設けられているため、第1凸条40と第2凸条42とが所定の面圧で略均一に突き合わされるように複数の締結ボルト54を締結することにより、高いシール性能を容易に確保することができる。
【0038】
また、第1凸条40および第2凸条42の断面形状が互いに同じで、それ等がスペーサ16の長穴50内に嵌め入れられることにより、第1溝34と第2溝36とが一致するように第1プレート12および第2プレート14が位置合わせされる。このため、第1溝34および第2溝36の何れか一方に混合エレメント22を嵌め入れた後に、第1凸条40および第2凸条42がスペーサ16の長穴50内に嵌め入れられるように第1プレート12と第2プレート14とを突き合わせれば、第1溝34および第2溝36によって形成される混合室20内に混合エレメント22を損傷することなく配置することが可能で、混合エレメント22の組み付け作業を一層容易に行なうことができる。
【0039】
また、第1溝34および第2溝36がそれぞれ第1合せ面30および第2合せ面32の領域内に設けられて混合室20の両端部が閉塞されており、その混合室20の一端部および他端部にそれぞれ直角に連結されるように一対の連結通路60、62が第1プレート12に設けられているため、混合エレメント22が混合室20内に適切に保持される。このため、混合エレメント22を位置決めしたり固定したりする必要がなく、装置が安価に構成されるとともに、混合エレメント22の組み付け作業を容易に行なうことができる。
【0040】
また、混合エレメント22として右捩れ部24と左捩れ部26とが交互に同じ数だけ設けられている螺旋状エレメントが用いられているため、混合室20内を流動する流体によって混合エレメント22に加えられる右トルクおよび左トルクが略同じになり、回転ストッパ等を設けることなく混合エレメント22の回転が抑制される。このため、混合エレメント22を軸心まわりに回転可能な状態で混合室20内に配置するだけで適切な流体混合性能が得られ、装置が安価に構成されるとともに、混合エレメント22の組み付け作業を容易に行なうことができる。
【0041】
また、混合エレメント22の外径寸法Φが2mm以下で、混合エレメント22と混合室20の円筒内周面との間のクリアランスCが0.1mm以下であるため、従来のように混合室20内に軸方向から混合エレメント22を挿入しようとすると、混合室20の開口部に混合エレメント22が干渉して損傷する可能性がある。このため、第1プレート12と第2プレート14とを突き合わせて締結することにより、第1溝34および第2溝36によって形成される混合室20内に混合エレメント22を損傷することなく簡便に配置することができる、という効果が顕著に得られる。
【0042】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:スタティックミキサー 12:第1プレート 14:第2プレート 16:スペーサ 18:ハウジング 20:混合室 22:混合エレメント 24:右捩れ部 26:左捩れ部 30:第1合せ面 32:第2合せ面 34:第1溝 36:第2溝 40:第1凸条(第1凸部) 42:第2凸条(第2凸部) 50:長穴(嵌合穴) 54:締結ボルト(締結部材、ねじ部材) 60、62:連結通路 Φ:外径寸法 C:クリアランス ts:スペーサの板厚