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  • 特開-局所冷却装置 図1
  • 特開-局所冷却装置 図2
  • 特開-局所冷却装置 図3
  • 特開-局所冷却装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063819
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】局所冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/38 20060101AFI20220415BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20220415BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
H01L23/38
H01L23/46 Z
H05K7/20 P
H05K7/20 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020180926
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】519128200
【氏名又は名称】高橋 一哲
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一哲
(72)【発明者】
【氏名】橋本 知也
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA05
5E322AA10
5E322AB06
5E322BB03
5E322DA01
5E322DC01
5E322FA01
5E322FA06
5F136CB08
5F136DA34
5F136HA01
5F136JA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】局所高負荷発熱体に対し、高効率に冷却することができる局所冷却装置を提供する。
【解決手段】局所冷却装置は、電子冷却素子とラジエターとのハイブリッド冷却と、電子冷却素子内の相対する表裏温度差を最小になるように冷却流路を制御することにより、電子冷却素子が高効率に駆動できる入熱面と放熱面の温度差dT≦10℃に抑える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の電子冷却デバイスの放熱側に設けられた空間に、複数の整流板を配置して、長距離の放熱側冷却水路を設ける。一方、前記電子冷却デバイスの吸熱側には高熱伝導性材を貼り付ける。前記放熱側冷却水路と前記の高熱伝導性材の各位置に於いて、前記電子冷却デバイスに対し表裏対称位置における温度差dTのバラツキが最小になる様に配置されたことを特徴とした局所冷却装置
【請求項2】
板状の電子冷却デバイスの放熱側に設けられた空間に、複数の整流板を配置して、長距離の放熱側冷却水路を設ける。一方、前記電子冷却デバイスの吸熱側には多孔水路を有する高熱伝導性材と、水冷式の局所高発熱体を固定して水の注入と排出を行う水路を有する高熱伝導性材が貼り付けられている。
前記多孔水路を有する高熱伝導性多孔体を通過して冷却された水は、前記高熱伝導性固定台を通過後、前記放熱側に設けられた空間の端に送られている。
前記放熱側冷却水路は、前記電子冷却デバイスの吸熱側に貼付けられた前記高熱伝導性多孔体と前記高熱伝導性固定台の前記貼付け面に対し、表裏対称位置おける温度差dTのバラツキが最小になる様に配置されたことを特徴とした局所冷却装置
【請求項3】
前記電子冷却デバイスに対し、表裏対称位置における温度差のバラツキはdT≦20℃、好適にはdT≦10℃なる様に、前記整流板の配列と電子冷却デバイス制御と流量と熱負荷を制御したことを特徴とした請求項1、2記載の局所冷却装置
【請求項4】
前記電子冷却デバイスの包括体からの高温排水をラジエターで冷却後、前記包括体の入水孔に戻したことにより、電子冷却デバイス式冷却とラジエター式冷却を複合したハイブリッド冷却を行うことを特徴とした請求項1~3記載の局所冷却装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は局所高負荷発熱体、特に半導体レーザ対し、高効率に冷却することができる冷却装置に関する。
【解決手段】
電子冷却素子とラジエターとのハイブリッド冷却と、電子冷却素子内の相対する表裏温度差を最小になるように冷却流路を制御することにより、電子冷却素子が高効率に駆動できる入熱面と放熱面の温度差dT≦10℃に抑える。
【背景技術】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2019-37757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図3に従来の実施例を示す。
サーバラックシステム(伝導システムと対流システムを組み込んだハイブリッドシステム10)は、内部にサーバー12を収納するサーバーラック11と熱伝達装置との組み合わせ体であって、サーバーラックと、ハウジングの形態のヒートシンクと、サーバーラックとヒートシンクとを熱接触させる熱接触構造体13、14と、サーバーラックを冷却する冷却液の供給源を提供する冷却器19と、を備え伝導熱伝達と対流熱伝達の両熱伝達によって、サーバーラックから熱を除去し、サーバーラックを所定の温度範囲内に維持している。
【0004】
しかしながら、半導体レーザ(以下LDと略す)等の局所的に高発熱体を室温以下に冷却しようとするとペルチェ等の冷却手段が必要になる。しかしペルチェ冷却は熱を高効率で放熱しないと、ペルチェ自体が高熱伝導体なので表裏で高温熱が冷却部に伝導するので冷却能力が低下する。よって、できるだけペルチェ両面の温度差dT≦10℃しなくてはならないが、ペルチェ単体で高能力かつ高効率に温度差dT≦10℃を得るのは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【解決手段】
【0005】
本発明はこの課題を解決すべく、電子冷却素子とラジエターとのハイブリッド冷却と、電子冷却素子内の相対する表裏温度差を最小になるように冷却流路を制御し、更にペルチェ等の電子冷却素子が高効率に駆動できる入熱面と放熱面の温度差dT≦10℃に抑えることにより、高出力LD等の高熱密度かつ高負荷発熱体に対しても、高効率に冷却することができる。
【発明の効果】
【0006】
以上のように、本発明の請求項1~請求項4に記載された発明は、高出力LDや電流制御デバイスの様に局所的に大きな発熱が発生する高負荷デバイスに対し、高効率で冷却できる。
【0007】
そして、従来の強制空冷放熱板とペルチェによる放熱と比較して、高出力LD等の冷却能力を倍以上に増加させるので、同じ高出力LDを搭載したレーザ出力に於いて、倍以上にレーザ出力をあげることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は本発明の実施の形態1に係るレーザ装置の全体構成図であり、(a)上面図、(b)は側面図、(c)はA-A断面、(d)は側面外観図である。
【0009】
図2図2は本発明の実施の形態2に係るレーザ装置の全体構成図であり、(a)は上面図、(b)X-X断面図、(c)はY-Y断面図、(d)は上面図、(e)はA-A断面図である。
図3図3は従来の実施例である。
図4図4はペルチェの冷却能力特性である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1図2の番号を用いて説明する。
【実施の形態1】
【0011】
図1は本発明の実施の形態1に係るレーザ装置の全体構成図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)はA-A断面、(d)は側面外観図である。
【0012】
電子冷却素子であるペルチェ101(太線)が内蔵された熱交換部102からの排水口103、104から排水された排水105はポンプ106を介してファン107により空冷されたラジエター108で冷却後、熱交換部102への入水配管109を介して熱交換部102の入水口110に入水されていることにより、熱交換部102での冷却とラジエター108での冷却とのハイブリッド冷却構成となっている。
【0013】
係る構成に於いて熱交換部102の冷却機能について説明する。
ペルチェ101の吸熱側111にはペルチェ101の全面に対して、高熱伝導体である銅板112が、高熱伝導ペースト113により接着されている。
この銅板112には、更にペルチェ101より小さな面積の有するペルチェ114(太線)の放熱側115が高熱伝導ペースト113により接着されている。
ペルチェ114の吸熱側116には、再び銅板117に高熱伝導ペースト113にて接着されていて、更に、LD等の局所高発熱体118を冷却している。
【0014】
次に熱交換部102の排熱機能について説明する。ラジエター108にて冷却され、入水口110から侵入した循環水119はペルチェ101の放熱側120の中央部に流れ込んでいる。その後、千鳥状に配置された仕切り板121を通過中にペルチェ101からの熱を吸収し高温水となって排水口103、104から排出されている。
【0015】
なお、水は最も熱容量が大きく、温めにくいので、単にペルチェ101の放熱側120全体を水没させても、熱伝導は僅かであった。この理由としては、層流を形成している為、ペルチェ101表面での流速が0に近くなり、この層流の低流速部が熱伝導壁となり温度上昇は少なく、ペルチェ101表面近傍に熱がこもり、冷却効率は低かったと推測した。そこで、千鳥状に配置された仕切り板121を多くして水路長を5倍UPさせると、温度上昇は6~10倍と遥かに増加し、ペルチェ101に20Wの電力を投入すると10℃以上温度上昇させることができた。これは千鳥状に配置された仕切り板121を多く追加することにより、流速が増加して乱流となりペルチェ101表面の流速増加による放熱が増加したからだと考える。
【0016】
一方ラジエター108は内部の水温と室温との温度差が増えると、急激に冷却効率が増加する。本実施例では、ペルチェ101に20W、ペルチェ101に10W供給し、10Wの熱負荷を局所高発熱体118に与え20℃に調整した場合、ラジエター108での温度差は10℃以上となり、効率よく冷却することができた。なお、ラジエター108での温度差は、時間経過や各構成要素の姿勢やサイズや形状、各界面状態や室温分布等、多くのパラメータがあり、それらで大きく変化するので、詳細な測定条件は割愛する。
【0017】
また、ペルチェ101はペルチェ電源122により駆動されているが、ペルチェ電源122からの熱がラジエター108に入らない様に、ラジエター108は吸気するようにファン107を回転させているが、ラジエター108とファン107の順番を逆にしてもラジエター108での温度差10℃は殆ど差がなかった。これはラジエター108にファン107から吹き付ける場合は、流速が上がるが、ファン107の発熱が加算される、逆の場合は、ラジエター108に吸引される流速は吹き付ける時より低速であるが、ファン107の発熱の影響を受けないから、結局はラジエター108での温度差10℃には、差が殆ど観察されなかったからだと考える。
【0018】
更に、ペルチェ101を長くしたり、千鳥状に配置された仕切り板121を多く追加すると、ペルチェ101からの排熱が大きくなり、ラジエター108での温度差が更に大きくできるので、冷却能力が更に増加する。
【0019】
また、本実施例1では中央部に配置された局所高発熱体118の冷却能力をあげる為に、ラジエター108からの循環水119は中央部から取り込んでいるが、局所高発熱体118であるLDの設置位置に最も近づく様に入水口110を移動しても良い。
【0020】
更に、LDドライバ等の発熱体を水冷発熱体123としてラジエター108への水路124に挿入することにより、LD駆動能力を更に大きくできるのは自明である。更に、銅板112に第2のペルチェ114を接着せずに、代わりに局所高発熱体118を接着しても良い。
【0021】
また、銅板117から局所高発熱体118を外し無負荷状態に最適化すると、ペルチェ101とペルチェ114共に温度差は30℃以上得られた。よって循環水温度を10℃にすると、10℃-30℃×2=-50℃といった極低温が期待できる。
【0022】
図2は本発明の実施の形態2に係るレーザ装置の全体構成図であり、(a)は高温側の上面図、(b)X-X断面図、(c)はY-Y断面図、(d)は低温側の上面図、(e)はA-A断面図である。
第1の実施例との相違点は、局所高発熱体であるLDが水冷型LD50であり水冷が必要な場合に対し、高効率に冷却させる構成を提供する点である。
【0023】
ペルチェ101が内蔵された熱交換部51からの排水口52で排水された排水105はポンプ106を介してファン107により空冷されたラジエター108で冷却後、熱交換部51への入水配管109を介して熱交換部51の入水口53に入水されていることにより、熱交換部51での冷却とラジエター108での冷却とのハイブリッド冷却構成となっている。
【0024】
係る構成に於いて熱交換部51の冷却機能について説明する。
図2の低温側の上面図(d)に示すように、入水配管109から戻り、入水口53から侵入した循環水54は、ペルチェ101の吸熱側111に接着された、多孔水路55を有する方形銅材56により冷却される。
【0025】
多孔水路55通過後の循環水57は、斜線部の水路58を通り、再度方形銅材56の第2の多孔水路59を通過し、点状部の水路60を通過後、局所高発熱体である水冷LD50に密着固定された水冷ベース61内の入水水路62を通過して水冷LD50に入水する。なお、入水口53と点状部の水路60は隔離板63により隔離されている。
【0026】
水冷LD50から排出された循環水64は、水冷ベース61内の排出水路65を通過後、ペルチェ101の低温の吸熱側111から高温の放熱側120に通じている2重斜線水路66通じて、ペルチェ101の高温の放熱側120に入水している。その後、千鳥状に配置された仕切り板67を通過中にペルチェ101の放熱側120からの熱を多く吸収し、高温水となって排水口52から排出されている。
【0027】
次に本実施例における水冷能力の高効率化について、図4のグラフ1を用いて説明する。一般的にペルチェの冷却効率を高くする為には、ペルチェ101の放熱側と吸熱側の温度差dTを限りなく0に近づけることが必要なことが知られている。図4のグラフ1は本実施例に持ちいたペルチェ101の冷却能力特性である。縦軸のCOPは冷却量/投入電力の比であり、横軸は電流である。
【0028】
例えば電流5A、dT=10℃(赤線)とするとCOP=3.3となり、投入した電力の3.3倍の冷却能力となる。5A時dT=0℃ではCOP>4となり更に効率が良くなる。
即ち、dT≦10℃にすることで高い効率が得られるが、本発明の実施例1、2はいずれも、ラジエター冷却とペルチェ冷却のハイブリッド構成により、高負荷時にペルチェ単独では実現不可能なdT≦10℃を本発明で実現することができた。
【0029】
次に本発明にて高負荷時でもペルチェ101全面でdT≦10℃実現した原理について、図2を持ちいて説明する。
入水口53から侵入した循環水54の温度T1=30℃になる様に設定する。循環水54は、多孔水路55、59を有する方形銅材56により冷却され、水冷ベース61内の入水水路62を通過時点の水温を温度T2=20℃になる様に、ペルチェ101の電流をペルチェ電源122で調整する。
次に、水冷LD50から排出された循環水64の水温T3=30℃になる様に水冷LD50の電流を調整する。
【0030】
水温T3=30℃に調整された循環水64は2重斜線水路66通じて、ペルチェ101の放熱側120に入水している。よってペルチェ101の領域1におけるdTはほぼ0となる。
【0031】
その後、千鳥状に配置された仕切り板67を通過中にペルチェ101からの熱を多く吸収し、領域4ではT4=40℃となる。領域4におけるペルチェ101の反対面の温度T3は30℃なので、dT=40-30=10℃となる。すなわちペルチェ全面に対しdT≦10℃に制御できるので、高負荷・高効率放熱を実現することができる。
【0032】
(参考)実施例1に用いた主な試験環境を示す。
ペルチェ101 ・・・フェローテック製9506 □55x55x4.8mm
最大定格40A 4.3V Qc92W
局所高発熱体118・・・ピーク2.4kW at270A Duty2%
0.3ms時66Hz
最大発熱 ・・・(270A×15.2V-2.4kW)×0.02=
(4.1kW-2.4kW)×0.02=34W
ファンサイズ ・・・□120x120x40mm 15W
ラジエターサイズ ・・・□120x120x20mm
ポンプ ・・・最大吐出圧10Kpa、最大流量400ml毎分
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上説明したように、本発明の請求項1~請求項4に記載された発明は、高出力半導体レーザや電流制御デバイスの様に局所的に大きな発熱が発生する高負荷デバイスに対し、高効率で冷却できる。
従来の強制空冷放熱板とペルチェによる放熱と比較では、同レーザ出力に於いて、倍以上にレーザ出力をあげることができた。例えば、従来50mJ20Hzであったレーザを50Hz以上で駆動させることが確認できた。
更に、ペルチェの高速応答性により、負荷変動に対し高速に冷却制御できるのでレーザ出力等の安定性も大幅向上する
また、ペルチェをカスケード構成にすることもできるので<-50℃といった極低温が期待できる。こうした極低温は電子部品のヒートサイクル温度試験条件―40℃を超えた能力を有しているので、レーザ加熱等と併用することで、高速・コンパクトな小型温度試験機も実現できる。
【符号の説明】
【0034】
50・・・水冷型LD
51・・・ペルチェ1が内蔵された熱交換部
52・・・排水口
53・・・入水口
54・・・循環水
55・・・多孔水路
56・・・方形銅材
57・・・循環水
58・・・水路
59・・・第2の多孔水路
60・・・点状部の水路
61・・・水冷ベース
62・・・入水水路
63・・・隔離板
64・・・循環水
65・・・水冷ベース61内の排出水路
66・・・2重斜線水路
67・・・千鳥状に配置された仕切り板
101・・・ペルチェ
102・・・熱交換部
103、104・・・排水口
105・・・排水
106・・・ポンプ
107・・・ファン
108・・・ラジエター
109・・・入水配管
110・・・入水口
111・・・ペルチェ1の吸熱側
112・・・銅板
113・・・高熱伝導ペースト
114・・・ペルチェ1より小さな面積の有するペルチェ
115・・・ペルチェ14の放熱側
116・・・ペルチェ14の吸熱側
117・・・銅板
118・・・局所高発熱体
119・・・入水口10から侵入した循環水
120・・・ペルチェ1の放熱側
121・・・千鳥状に配置された仕切り板
122・・・ペルチェ電源
123・・・水冷発熱体
124・・・水路
図1
図2
図3
図4