IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ポーラ化成工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-乳化組成物の製造方法 図1
  • 特開-乳化組成物の製造方法 図2
  • 特開-乳化組成物の製造方法 図3
  • 特開-乳化組成物の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063858
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】乳化組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20220415BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20220415BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/06
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165129
(22)【出願日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2020171964
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】加治 恵
(72)【発明者】
【氏名】荒井 俊博
(72)【発明者】
【氏名】山下 晶
(72)【発明者】
【氏名】小林 一貴
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC122
4C083AC252
4C083AC262
4C083AC422
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD172
4C083BB12
4C083CC02
4C083DD31
4C083EE07
4C083FF05
(57)【要約】
【課題】
本発明の解決しようとする課題は、高分子乳化剤を用いて油相や吹相の分離がない乳化組成物を製造する技術を提供することにある。
【解決手段】
特定の疎水性モノマーから誘導される1種又は2種以上の構成単位(a)と、親水性モノマーから誘導される1種又は2種以上の構成単位(b)を必須構成単位として有する水溶性コポリマーと、油相成分と、水相成分と、加熱下で乳化する工程を含む、乳化組成物の製造方法。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)、(II)又は(III)で表される疎水性モノマーから誘導される1種又は2種以上の構成単位(a)と、
親水性モノマーから誘導される1種又は2種以上の構成単位(b)と、を必須構成単位として有する水溶性コポリマーと、
油相成分と、
水相成分と、
を加熱下で乳化する乳化工程を含む、乳化組成物の製造方法。
一般式(I)
【化1】
(I)
(一般式(I)中Rは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、Rは炭素数13~30の環構造を含まない分岐状炭化水素基、または、環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6~12の炭化水素基を表す。)
一般式(II)
【化2】
(II)
(一般式(II)中Rは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R,Rは同一でも異なっていてもよく、環構造を含まない、分岐を有する、炭素数6~22のアシル基を表す。Xは三価のアルコールからOH基が脱離した基を表す。)
一般式(III)
【化3】
(III)
(一般式(III)中Rは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R,R,Rは同一でも異なっていてもよく、環構造を含まない、分岐を有する、炭素数6~22のアシル基を表す。Yは四価のアルコールからOH基が脱離した基を表す。)
【請求項2】
前記乳化工程が、前記水溶性コポリマーと、前記油相成分と、前記水相成分とを、加熱下で撹拌して乳化する工程である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記乳化工程における温度が、40℃超である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記乳化工程において、前記水溶性コポリマー以外の乳化剤を実質的に含まない、請求項1~3の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記水相成分として、融点が40℃超の成分、及び/又は40℃以下で水相に溶解若しくは分散しない成分を含む、請求項1~4の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記油相成分として、融点が40℃超の成分、及び/又は40℃以下で油相に溶解若しくは分散しない成分、を含む、請求項1~5の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記親水性モノマーが、重合性カルボン酸、下記一般式(IV)で表される親水性モノマー、下記一般式(V)で表される親水性モノマー、下記一般式(VI)で表される親水性モノマー及び下記一般式(VII)で表される親水性モノマーからなる群から選ばれる1種又は2種以上の親水性モノマーである、請求項1~6の何れか一項に記載の製造方法。
一般式(IV)
【化4】
(IV)
(一般式(IV)中R10は水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R11は水酸基を有していてもよい炭素数2~4のアルキレン基を表し、R12は水素原子、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、炭素数1~14の脂肪族炭化水素基又は炭素数1~12のアシル基を表す。nは6~40の整数を表す。)
一般式(V)
【化5】
(V)
(一般式(V)中R15は水素原子またはメチル基をあらわす。)
一般式(VI)
【化6】
(VI)
(一般式(VI)中R16は水素原子またはメチル基を、G-O-は還元糖の1位の水酸基より水素を除いた基を表す。mは2又は3を、lは1~5の整数を表す。)
一般式(VII)
【化7】
(VII)
(一般式(VII)中R17は水素原子またはメチル基を、R18はアミノ酸残基、ポリアミン残基又はアミノアルコール残基を表す。Qは酸素原子又はNHで表される基を表す。)
【請求項8】
前記疎水性モノマーが前記一般式(II)で表される疎水性モノマーであり、前記水溶性モノマーが前記一般式(IV)で表される親水性モノマーであることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記乳化組成物が、皮膚外用剤である、請求項1~8の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の製造方法により調製された乳化組成物。
【請求項11】
水相成分として、融点が40℃超の成分、及び/又は水相に40℃超で溶解若しくは分散しない成分を含む、請求項10に記載の乳化組成物。
【請求項12】
油相成分として、融点が40℃超の成分、及び/又は油相に40℃超で溶解若しくは分散しない成分を含む、請求項10又は11に記載の乳化組成物。
【請求項13】
加熱下で乳化される乳化組成物の設計方法であって、
水相成分として、融点が40℃超である成分、及び/又は水相に40℃超で溶解若しくは分散しない成分を選択する工程と、
油相成分として、融点が40℃超である成分、及び/又は油相に40℃超で溶解若しくは分散しない成分を選択する工程と、
乳化剤として、下記一般式(I)、(II)又は(III)で表される疎水性モノマーから誘導される1種又は2種以上の構成単位(a)と、
親水性モノマーから誘導される1種又は2種以上の構成単位(b)と、を必須構成単位として有する水溶性コポリマーを選択する工程と、を含む、
乳化組成物の設計方法。
一般式(I)
【化1】
(I)
(一般式(I)中Rは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、Rは炭素数13~30の環構造を含まない分岐状炭化水素基、または、環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6~12の炭化水素基を表す。)
一般式(II)
【化2】
(II)
(一般式(II)中Rは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R,Rは同一でも異なっていてもよく、環構造を含まない、分岐を有する、炭素数6~22のアシル基を表す。Xは三価のアルコールからOH基が脱離した基を表す。)
一般式(III)
【化3】
(III)
(一般式(III)中Rは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R,R,Rは同一でも異なっていてもよく、環構造を含まない、分岐を有する、炭素数6~22のアシル基を表す。Yは四価のアルコールからOH基が脱離した基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱下で乳化組成物を製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳液等の乳化組成物を主体とする化粧品は、油相成分及び水相成分の由来の両方の効果を併せ持つことができるため、幅広く利用されている。
従来、乳化剤として、ポリオキシエチレン硬化ひまし油等の低分子乳化剤(低分子界面活性剤)が用いられてきたが、近年では、PEMULEN(登録商標)(ルーブリゾール社)に代表される高分子乳化剤が使われることも増えてきており、従来の低分子乳化剤の使用量を減らすことができるとして、注目を集めている。
【0003】
PEMULENは、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーであり、油の種類を問わず乳化できるという特徴がある。
特許文献1には、低重合度の分岐ポリシロキサン側鎖を有する高分子乳化剤が開示されており、油相成分としてポリシロキサンを含むとき、ポリシロキサンの平均粒径が微細である水中油型乳化組成物を製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-174486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、安定性の高い乳化組成物を製造するためのプロセスとして、一般的には、水相成分の混合物(水相)と、油相成分の混合物(油相)をそれぞれ加熱し、水相を加熱撹拌しながら油相を添加する方法が採用されている。
加熱を行いながら乳化をすることで、各相の成分が均一に溶解、分散し、安定性の高い乳化組成物を調製することができる。
【0006】
しかし、従来の高分子乳化剤は、加熱下において単独で十分な乳化能が発揮されないものが多く、ポリオキシエチレン硬化ひまし油等の従来の低分子界面活性剤を併用するのが一般的であった。
【0007】
上述の問題に鑑み、本発明の解決しようとする課題は、高分子乳化剤を用いて油相や吹相の分離がない乳化組成物を製造する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、下記一般式(I)、(II)又は(III)で表される疎水性モノマーから誘導される1種又は2種以上の構成単位(a)と、親水性モノマーから誘導される1種又は2種以上の構成単位(b)と、を必須構成単位として有する水溶性コポリマーと、油相成分と、水相成分と、を加熱下で乳化する乳化工程を含む、乳化組成物の製造方法である。
一般式(I)
【化1】
(I)
【0009】
(一般式(I)中Rは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、Rは炭素数13~30の環構造を含まない分岐状炭化水素基、または、環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6~12の炭化水素基を表す。)
【0010】
一般式(II)
【化2】
(II)
【0011】
(一般式(II)中Rは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R,Rは同一でも異なっていてもよく、環構造を含まない、分岐を有する、炭素数6~22のアシル基を表す。Xは三価のアルコールからOH基が脱離した基を表す。)
【0012】
一般式(III)
【化3】
(III)
【0013】
(一般式(III)中Rは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R,R,Rは同一でも異なっていてもよく、環構造を含まない、分岐を有する、炭素数6~22のアシル基を表す。Yは四価のアルコールからOH基が脱離した基を表す。)
【0014】
本発明は、前記水溶性コポリマーを乳化剤として使用することで、加熱下で油相と水相の分離の無い乳化組成物を調製することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記乳化工程が、前記水溶性コポリマーと、前記油相成分と、前記水相成分と、を加熱下で撹拌して乳化する工程である。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記乳化工程における温度が、40℃超である。
本発明は、加熱を伴って乳化することで、安定な乳化組成物を調製することができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記乳化工程において、前記水溶性コポリマー以外の乳化剤を実質的に含まない。
本発明は、前記水溶性コポリマー単独であっても、加熱下で乳化することで安定な乳化組成物を調製することができる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記水相成分として、融点が40℃超の成分、及び/又は40℃以下で水相に溶解若しくは分散しない成分を含む。
また、本発明の好ましい形態では、前記油相成分として、融点が40℃超の成分、及び/又は40℃以下で油相に溶解若しくは分散しない成分を含む。
本発明は、加熱下で乳化を行うことで、溶解、分散しにくい成分や、融点が高い成分を含んでも、安定した乳化組成物を調製することができる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記親水性モノマーが、重合性カルボン酸、下記一般式(IV)で表される親水性モノマー、下記一般式(V)で表される親水性モノマー、下記一般式(VI)で表される親水性モノマー及び下記一般式(VII)で表される親水性モノマーからなる群から選ばれる1種又は2種以上の親水性モノマーである。
一般式(IV)
【化4】
(IV)
【0020】
(一般式(IV)中R10は水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R11は水酸基を有していてもよい炭素数2~4のアルキレン基を表し、R12は水素原子、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、炭素数1~14の脂肪族炭化水素基又は炭素数1~12のアシル基を表す。nは6~40の整数を表す。)
【0021】
一般式(VI)
【化5】
(VI)
【0022】
(一般式(VI)中R15は水素原子またはメチル基をあらわす。)
【0023】
一般式(VII)
【化6】
(VII)
【0024】
(一般式(VII)中R16は水素原子またはメチル基を、G-O-は還元糖の1位の水酸基より水素を除いた基を表す。mは2又は3を、lは1~5の整数を表す。)
【0025】
一般式(VIII)
【化7】
(VIII)
【0026】
(一般式(VIII)中R17は水素原子またはメチル基を、R18はアミノ酸残基、ポリアミン残基又はアミノアルコール残基を表す。Qは酸素原子又はNHで表される基を表す。)
【0027】
本発明の好ましい形態では、前記疎水性モノマーが前記一般式(II)で表される疎水性モノマーであり、前記水溶性モノマーが前記一般式(IV)で表される親水性モノマーである。
【0028】
本発明の好ましい形態では、前記乳化組成物が、皮膚外用剤である。
【0029】
本発明は、上述した製造方法により製造された乳化組成物にも関する。本発明の乳化組成物は、油相と水相の分離が無い良好なものである。
【0030】
本発明の好ましい形態では、前記乳化組成物は、水相成分として、融点が40℃超の成分、及び/又は水相に40℃以下で溶解若しくは分散しない成分を含み、油相成分として、融点が40℃超の成分、及び/又は油相に40℃以下で溶解若しくは分散しない成分を含む。
【0031】
本発明は、加熱下で乳化される乳化組成物の設計方法であって、
水相成分として、融点が40℃超である成分、及び/又は水相に40℃超で溶解若しくは分散しない成分を選択する工程と、油相成分として、融点が40℃超である成分、及び/又は油相に40℃超で溶解若しくは分散しない成分を選択する工程と、乳化剤として前記一般式(I)、(II)又は(III)で表される疎水性モノマーから誘導される1種又は2種以上の構成単位(a)と、親水性モノマーから誘導される1種又は2種以上の構成単位(b)と、を必須構成単位として有する水溶性コポリマーを選択する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、前記水溶性コポリマーを乳化剤として用いることで、加熱下での乳化によって安定な乳化組成物を調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】油剤としてスクワランを用い、かつ、乳化剤として(a)POE界面活性剤、(b)AAMAポリマー及び(c)水溶性コポリマーを使用して撹拌を行った後の組成物を側面から撮影した写真を示す。
図2】油剤としてスクワランを用い、かつ、乳化剤として(a)POE界面活性剤、(b)AAMAポリマー及び(c)水溶性コポリマーを使用して撹拌を行った後の組成物の液面を撮影した写真を示す。写真中、黒塗り矢印は、分離した油剤を表す。
図3】水溶性コポリマーとスクワランと水の乳化組成物における乳化滴を撮影した顕微鏡像を示す。
図4】水溶性コポリマー、又はAAMAポリマーを乳化剤として用いて、加熱下、又は非加熱下で調製した乳化組成物の調製直後、1週間保存後、1か月保存後(20℃)の表面状態の評価、及び顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の特徴は、疎水性モノマーから誘導される構成単位(a)と、親水性モノマーから誘導される構成単位(b)を有する水溶性コポリマーを使用することにある。以下、<1>の項目において、疎水性モノマー、親水性モノマー及びこれらのコポリマーである水溶性コポリマーについて説明する。
【0035】
<1>水溶性コポリマー
(1)疎水性モノマー
本発明においては、前記一般式(I)、(II)、又は(III)で表される疎水性モノマーから誘導される構成単位(以下、単に、「構成単位I」などと呼ぶこともある)の一種又は二種以上を必須構成単位として含有する水溶性コポリマーを用いる。
なお、本発明において、「モノマーから誘導される構成単位」とは、対応するモノマーが有する炭素-炭素不飽和結合が重合反応によって開裂して形成される構成単位を言う。
以下、一般式(I)、(II)又は(III)で表される疎水性モノマーについて説明する。
【0036】
(1-1)一般式(I)で表される疎水性モノマー
前記一般式(I)において、Rは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、Rは炭素数13~30の環構造を含まない分岐状炭化水素基または、環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6~12の炭化水素基を表す。
ここで、Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基等が例示できる。本発明において、Rは水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0037】
また、Rで表される炭素数13~30の環構造を含まない分岐状炭化水素基としては、1-メチルドデカニル基、11-メチルドデカニル基、3-エチルウンデカニル基、3-エチル-4,5,6-トリメチルオクチル基、1-メチルトリデカニル基、1-ヘキシルオクチル基、2-ブチルデカニル基、2-ヘキシルオクチル基、4-エチル-1-イソブチルオクチル基、1-メチルペンタデカニル基、2-ヘキシルデカニル基、2-オクチルデカニル基、2-ヘキシルドデカニル基、16-メチルヘプタデカニル基、9-メチルヘプタデカニル基、7-メチル-2-(3-メチルヘキシル)デカニル基、3,7,11,15-テトラ-メチルヘキサデカニル基、2-オクチルドデカニル基、2-デシルテトラデカニル基、2-ドデシルヘキサデカニル基等を例示することができる。
【0038】
また、Rで表される、環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6~12の炭化水素基としては2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジメチルペンタニル基、1-イソプロピルブチル基、1-イソプロピル-2-メチルプロピル基、1,1-ジエチルプロピル基、1-エチル-1-イソプロピルプロピル基、2-エチル-4-メチルペンチル基、1-プロピル-2,2-ジメチルプロピル基、1,1、2-トリメチル-ペンチル基、1-イソプロピル-3-メチルブチル基、1,2-ジメチル-1-エチルブチル基、1,3-ジメチル-1-エチルブチル基、1-エチル-1-イソプロピル-プロピル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1-メチル-1-エチルペンチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,4―ジメチルヘキシル基、1-エチル-3―メチルペンチル基、1,5―ジメチルヘキシル基、1-エチル-6-メチルヘプチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、1,2-ジメチル-1-イソプロピルプロピル基、3-メチル-1-(2,2-ジメチルエチル)ブチル基、1-イソプロピルヘキシル基、3.5.5-トリメチルヘキシル基、2-イソプロピル-5-メチルヘキシル基、1,5-ジメチル-1-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2,4,5-トリメチルヘプチル基、2,4,6-トリメチルヘプチル基、3,5-ジメチル-1-(2,2-ジメチルエチル)ヘキシル基等を例示することができる。
【0039】
(1-2)一般式(II)又は(III)で表される疎水性モノマー
前記一般式(II)及び(III)において、R、Rは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R,R、R、R、Rは同一でも異なっていてもよく、環構造を含まない、分岐を有する、炭素数6~22のアシル基を表す。Xは三価のアルコールからOH基が脱離した基を表す。
【0040】
ここで、R3、R6で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基等が例示できる。本発明において、R3は水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0041】
また、R4、R5、R7、R8、R9で表される環構造を含まない、分岐を有する炭素数6~22のアシル基としては、2-メチルペンタノイル基、3-メチルペンタノイル基、4-メチルペンタノイル基、2-エチルブタノイル基、2-エチルブタノイル基、2,2-ジメチルブタノイル基、3,3-ジメチルブタノイル基、2-メチルヘキサノイル基、4-メチルヘキサノイル基、5-メチルヘキサノイル基、2,2-ジメチルペンタノイル基、4,4-ジメチルペンタノイル基、2-メチルヘプタノイル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンタノイル基、2,2-ジメチルヘキサノイル基、2,2,3-トリメチルペンタノイル基、2-メチルオクタノイル基、3,3,5-トリメチルヘキサノイル基、2-メチルノナノイル基、4-メチルノナノイル基、8-メチルノナノイル基、4-エチルオクタノイル基、2-エチルオクタノイル基、2-ブチルヘキサノイル基、2-tert-ブチルヘキサノイル基、2,2-ジエチルヘキサノイル基、2,2-ジメチルオクタノイル基、3,7-ジメチルオクタノイル基、ネオデカノイル基、7-メチルデカノイル基、2-メチル-2-エチルオクタノイル基、2-メチルウンデカノイル基、10-メチルウンデカノイル基、2,2ジメチルデカノイル基、2-エチルデカノイル基、2-ブチルオクタノイル基、ジエチルオクタノイル基、2-tert-ブチル-2,2,4-トリメチルペンタノイル基、10-メチルドデカノイル基、3-メチルドデカノイル基、4-メチルドデカノイル基、11-メチルドデカノイル基,10-エチルウンデカノイル基、12-メチルトリデカノイル基、2-ブチルデカノイル基、2-ヘキシルオクタノイル基、2-ブチル-2-エチルオクタノイル基、12-メチルテトラデカノイル基、14-メチルペンタデカノイル基、2-ブチルドデカノイル基、2-ヘキシルデカノイル基、16-メチルヘプタデカノイル基、2,2-ジメチルヘキサノイル基、2-ブチルヘキサデカノイル基、2-ヘキシルドデカノイル基、2,4,10,14-テトラメチルペンタノイル基、18-メチルノナデカノイル基、3,7,11,15-テトラ-メチルヘキサデカノイル基、19-メチルエイコサノイル基等を例示することができる。
【0042】
また、本発明の好ましい実施の形態では、一般式(II)及び(III)において、R4,R5、R7、R8、R9は同一でも異なっていてもよく、環構造を含まない、分岐を有する、炭素数10~22のアシル基、または、環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6~9のアシル基である。
【0043】
このような、好ましい実施の形態におけるR4,R5、R7、R8、R9で表される、環構造を含まない、分岐を有する炭素数10~22のアシル基としては、2-メチルノナノイル基、4-メチルノナノイル基、8-メチルノナノイル基、4-エチルオクタノイル基、2-エチルオクタノイル基、2-ブチルヘキサノイル基、2-tert-ブチルヘキサノイル基、2,2-ジエチルヘキサノイル基)、2,2-ジメチルオクタノイル基、3,7-ジメチルオクタノイル基、ネオデカノイル基)、7-メチルデカノイル基、2-メチル-2-エチルオクタノイル基、2-メチルウンデカノイル基、10-メチルウンデカノイル基、2,2ジメチルデカノイル基、2-エチルデカノイル基、2-ブチルオクタノイル基、ジエチルオクタノイル基、2-tert-ブチル-2,2,4-トリメチルペンタノイル基、10-メチルドデカノイル基、3-メチルドデカノイル基、4-メチルドデカノイル基、11-メチルドデカノイル基,10-エチルウンデカノイル基、12-メチルトリデカノイル基、2-ブチルデカノイル基、2-ヘキシルオクタノイル基、2-ブチル-2-エチルオクタノイル基、12-メチルテトラデカノイル基、14-メチルペンタデカノイル基、2-ブチルドデカノイル基、2-ヘキシルデカノイル基、16-メチルヘプタデカノイル基、2,2-ジメチルヘキサノイル基、2-ブチルヘキサデカノイル基、2-ヘキシルドデカノイル基、2,4,10,14-テトラメチルペンタノイル基、18-メチルノナデカノイル基、3,7,11,15-テトラ-メチルヘキサデカノイル基、19-メチルエイコサノイル基等を例示することができる。
【0044】
また、好ましい実施の形態におけるR4、R5、R7、R8、R9で表される、環構造を含まない、2つ以上の分岐を有する炭素数6~9のアシル基としては、2,2-ジメチルブタノイル基、3,3-ジメチルブタノイル基、2,2-ジメチルペンタノイル基、4,4-ジメチルペンタノイル基、2,2-ジメチルヘキサノイル基、2,2,3-トリメチルペンタノイル基、3,5,5-トリメチルヘキサノイル基等を例示することができる。
【0045】
一般式(II)においてXで表される、三価アルコールから誘導される基は、三価アルコールから、OH基が離脱した基であれば特に限定されないが、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンからなる群から選択される三価アルコールから、OH基が離脱した基が好適に例示できる。
【0046】
また、一般式(III)においてYで表される、四価アルコールから誘導される基は、四価アルコールから、OH基が離脱した基であれば特に限定されないが、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、D-トレイトール、L-トレイトールからなる群から選択される四価アルコールから、OH基が離脱した基が好適に例示できる。
【0047】
本発明においては、構成単位IIを含む水溶性コポリマーを用いることが特に好ましい。
また、本発明のより好ましい実施の形態では、一般式(II)で表される疎水性モノマーは、下記一般式(V)で表される疎水性モノマーである。
【0048】
一般式(V)
【化8】
(V)
(一般式(V)中R13、R14は、同一でも異なっていてもよく、環構造を含まない、分岐を有する、炭素数16~22のアシル基を表す。Zは三価のアルコールからOH基が脱離した基を表す。)
【0049】
一般式(V)のR13、R14のアシル基の炭素数は12~22、より好ましくは14~20、さらに好ましくは16~20である。
また、一般式(V)のR13、R14のアシル基の主鎖の炭素数は、好ましくは9~21、より好ましくは12~20、さらに好ましくは16~18である。
また、一般式(V)のR13、R14のアシル基における分岐の数は好ましくは1~3、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。
さらに、一般式(V)のR13、R14のアシル基において、分岐鎖が結合する主鎖の炭素の位置番号は大きいほど好ましい。具体的には、分岐鎖は主鎖端部の炭素から、好ましくは1~3個目の炭素、より好ましくは1又は2個目の炭素、さらに好ましくは1個目の炭素に結合していることが好ましい。
【0050】
13、R14として具体的には、10-メチルウンデカノイル基、10-メチルドデカノイル基、11-メチルドデカノイル基,10-エチルウンデカノイル基、12-メチルトリデカノイル基、12-メチルテトラデカノイル基、14-メチルペンタデカノイル基、16-メチルヘプタデカノイル基、2,4,10,14-テトラメチルペンタノイル基、18-メチルノナデカノイル基、3,7,11,15-テトラ-メチルヘキサデカノイル基、19-メチルエイコサノイル基等を好適に例示することができる。
【0051】
一般式(V)においてZで表される、三価アルコールから誘導される基は、三価アルコールから、OH基が離脱した基であれば特に限定されないが、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンからなる群から選択される三価アルコールから、OH基が離脱した基が好適に例示できる。
【0052】
(2)親水性モノマー
本発明における親水性モノマーとしては、重合性カルボン酸、並びに前記一般式(IV)、下記一般式(VI)、下記一般式(VII)及び下記一般式(VIII)で表される化合物を用いることができる。
【0053】
(2-1)重合性カルボン酸
本発明において、重合性カルボン酸又はその塩としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸及びそのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等が例示できる。これらの中では、重合性が高いことから、アクリル酸、メタクリル酸及びその塩が特に好ましい。本発明の水溶性コポリマーに重合性のカルボン酸の塩から誘導される構成単位を導入する場合は重合性カルボン酸を予め塩となし、重合反応を行っても良いし、重合反応により、重合性カルボン酸から誘導される構成単位を水溶性コポリマーに誘導した後、塩基により中和して塩となしてもよい。
【0054】
(2-2)一般式(IV)で表される親水性モノマー
前記一般式(IV)中、R10は水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、R11は水酸基を有していてもよい炭素数2~4のアルキレン基を表し、R12は水素原子、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、炭素数1~14の脂肪族炭化水素基又は炭素数1~12のアシル基を表す。nは6~40の整数を表す。
【0055】
前記一般式(IV)においてR10で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基が例示できる。本発明において、R10は水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0056】
また、R11で表されるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、2-ヒドロキシプロピレン基、1-ヒドロキシ-2-メチルエチレン基、2-ヒドロキシ-1-メチルエチレン基などが例示できるが、これらのうち、好ましくはエチレン基又はプロピレン基であり、より好ましくはエチレン基である。
【0057】
また、R12で表される基のうち、炭素数6~10の芳香族基としては、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基等が例示でき;炭素数1~14の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ターシャリーブチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、オクチル基、2-エチルへキシル基、ラウリル基などが好適に例示でき;炭素数1~12のアシル基としては、フォルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ラウロイル基などが好適に例示できる。これらのうち、R5で表される基として好ましくは炭素数1~14の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1~12のアルキル基である。
【0058】
さらに、一般式(IV)におけるnは6~40の数値範囲である。
【0059】
前記一般式(IV)で表されるモノマーのうち、R11がプロピレン基であるモノマーとして具体的には、ポリプロピレングリコール(9)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(13)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(9)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(13)モノメタクリレート等が挙げられる。なお、括弧内の数字はnを表す。これらのポリマーの多くは市販品として入手可能である。これら市販品としては、具体的には、商品名「ブレンマー」AP-400、AP-550、AP-800、PP-500、PP-800(いずれも日本油脂(株)製)等が例示できる。
【0060】
前記一般式(IV)で表されるモノマーのうち、R11がエチレン基であるモノマーとして具体的には、ポリエチレングリコール(10)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(8)モノメタクリレート、ポリエチレングリコール(23)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(23)モノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(9)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(9)メタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(23)メタクリレート、オレイロキシポリエチレングリコール(18)メタクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(18)アクリレート、ラウロイロキシポリエチレングリコール(10)メタクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(30)モノメタクリレート等が挙げられる。
【0061】
上述の親水性モノマーは、対応するポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリエチレングリコールモノエステルとアクリル酸又はメタクリル酸のクロライド又は無水物とのエステル化反応により高収率で得ることができる。また、既に市販品も多数存在するので、かかる市販品を利用することも可能である。このような市販品としては、具体的に、商品名ブレンマー、AE-400、PE-350、AME-400、PME-400、PME-1000、ALE-800、PSE-1300等(いずれも日本油脂(株)製)等が例示できる。
【0062】
(2-3)一般式(VI)で表される親水性モノマー
本発明における親水性モノマーとして、下記一般式(VI)で表される親水性モノマーを用いても良い。
【0063】
(一般式VI)
【化5】
(VI)
(一般式(VI)中R15は水素原子またはメチル基をあらわす。)
【0064】
前記一般式(VI)で表される親水性モノマーとして具体的には、2-アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(APC)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)が挙げられる。これらのモノマーは、例えば、Polymer Journal, Vol22, No.5 記載の以下の方法により、合成が可能である。
【0065】
<合成法>
2-ブロモエチルホスホリルジクロリドと2-ヒドロキシエチルメタクリレート又は2-ヒドロキシエチルアクリレートとを反応させ、2-メタクリロイルオキシエチル-2‘-ブロモエチルリン酸又は2-アクリロイルオキシエチル-2‘-ブロモエチルリン酸を得た後、これら化合物とトリエチルアミンをメタノール中で反応させる。
【0066】
(2-4)一般式(VII)で表される親水性モノマー
本発明における親水性モノマーとして、下記一般式(VII)で表される親水性モノマーを用いても良い。
【0067】
一般式(VII)
【化6】
(VII)

(一般式(VII)中R16は水素原子またはメチル基を、G-O-は還元糖の1位の水酸基より水素を除いた基を表す。mは2又は3を、lは1~5の整数を表す。)
【0068】
一般式(VII)で表される親水性モノマーにおいて、G-O-で表される還元糖の1位の水酸基より水素を除いた基の還元糖としては、具体的には、グルコース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、リボースなどの単糖、マルトース、ラクトース、セロビオース等の2糖、マルトトリオース等の3糖、マルトオリゴ糖等のオリゴ糖からなる群から選択される一種または二種以上が例示されるが、中でも、グルコース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、マルトース、ラクトースセロビオースからなる群から選択される一種または二種以上が好ましく、グルコースが特に好ましい。また、一般式(VII)で表されるモノマーとしては、グルコシルオキシエチルメタクリレート(以下GEMAと省略する。)またはグルコシルオキシエチルアクリレート(以下GEAと省略する。)が好ましい。
【0069】
(2-5)一般式(VIII)で表される親水性モノマー
本発明における親水性モノマーとして、下記一般式(VIII)で表される親水性モノマーを用いても良い。
【0070】
一般式(VIII)
【化7】
(VIII)
(一般式(VIII)中R17は水素原子またはメチル基を、R18はアミノ酸残基、ポリアミン残基又はアミノアルコール残基を表す。Qは酸素原子又はNHで表される基を表す。)
【0071】
一般式(VIII)のモノマーにおいて、R18で表されるアミノ酸残基のアミノ酸としては、通常知られているアミノ酸であれば、特に限定されず、具体的には、グリシン、アラニン、グルタミン、リジン、アルギニン等が例示される。これらのうちでは、得られる水溶性コポリマーが、皮膚バリアーの回復効果に優れるので、リジン残基が特に好ましい。
【0072】
また、R18で表されるポリアミン残基におけるポリアミンとは、同一分子内にアルキル基で置換されていても良いアミノ基を2個以上有するアミンを意味し、具体的には、ジアミン、トリアミン、テトラアミン又はこれらのアミノ基の水素原子がアルキル基で置換されているアミンが例示される。これらのうちでは、得られる水溶性コポリマーを含有する皮膚外用剤の使用感が特に優れることから、ジアミンが好ましく、特に好ましい具体例として、合成する際の原料の入手の容易さから、エチレンジアミン、1,4-ジアミノ-n-ブタン、1,6-ジアミノ-n-ヘキサン等が挙げられる。
【0073】
さらに、R18で表されるアミノアルコール残基におけるアミノアルコールとは、同一分子内にアルキル基で置換されていても良いアミノ基及びアルコール性の水酸基を有する化合物を意味する。アミノアルコールとしては、通常知られているものであれば、特に限定はされないが、具体例としては、エタノールアミン、トリエチルアミノエタノール等が例示される。
【0074】
一般式(VIII)で表されるモノマーの塩としては、特に限定はされないが、具体的には、酸部分を塩基で中和した、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等、また、アミノ基部分を酸で中和した、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、蓚酸塩、炭酸塩等が例示できる。本発明の水溶性コポリマーに一般式(VIII)で表されるモノマーの塩から誘導される構成単位を導入する場合は一般式(VIII)で表されるモノマーを予め塩となし、重合反応を行っても良いし、重合反応により、一般式(VIII)で表されるモノマーから誘導される構成単位を水溶性コポリマーに誘導した後、中和して塩となしてもよい。
【0075】
一般式(VIII)で表されるモノマー、その塩の具体例としては、以下の構造を有する化合物、その塩が好適に例示できる。
【0076】
【化9】
【0077】
【化10】
【0078】
【化11】
【0079】
【化12】
【0080】
【化13】
【0081】
【化14】
【0082】
【化15】
【0083】
【化16】
【0084】
【化17】
【0085】
【化18】
【0086】
【化19】
【0087】
一般式(VIII)で表される親水性モノマーは、例えば、下記に示すように(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロライドを用いたエステル化反応、アミド化反応により合成可能である
【0088】
【化20】
【化21】
(反応式中R17は水素原子またはメチル基を、R18はアミノ酸残基、ポリアミン残基又はアミノアルコール残基を表す。Qは酸素原子又はNHで表される基を表す。)
【0089】
上述の通り、本発明において親水性ポリマーとしては、前記一般式(IV)、前記一般式(VI)、前記一般式(VII)、及び前記一般式(VIII)を用いることができる。
本発明の好ましい実施の形態では、水溶性コポリマーは前記一般式(IV)から誘導される構成単位IVを含む。
【0090】
(3)水溶性コポリマー
本発明においては、構成単位IIと構成単位IVを有する水溶性コポリマーを好ましく用いることができる。また、より好ましくは構成単位Vと構成単位IVを有する水溶性コポリマーを用いる。
このような水溶性コポリマーのうち、特に好ましくは(メタクリル酸メトキシPEG-23/ジイソステアリン酸メタクリル酸グリセリル)コポリマーを用いる。
このような水溶性コポリマーを含有することにより、低刺激でべたつきが少なく、乳化安定性に優れた乳化組成物となる。
【0091】
(メタクリル酸メトキシPEG-23/ジイソステアリン酸メタクリル酸グリセリル)コポリマーは、構成単位(a)として、前記一般式(V)で表される疎水性モノマーのうち、R13、R14が16-メチルヘプタデカノイル基である疎水性モノマーから誘導される構成単位(a)を主として含む。
また、構成単位(b)として、前記一般式(IV)で表される親水性モノマーのうち、R10がメチル基、R11がエチレン基、R12がメチル基、nが23である親水性モノマーから誘導される構成単位(b)を主として含む。
【0092】
一般的に疎水性の高い界面活性剤は油中水型の乳化組成物の形成に適しており、反対に親水性の高い界面活性剤は水中油型の乳化組成物の形成に適している。本発明における水溶性コポリマーについても同様に、疎水性である構成単位(a)の占める割合が高い場合には油中水型の乳化組成物を形成することに適しており、また、親水性である構成単位(b)の占める割合が高い場合には水中油型の乳化組成物を形成することに適している。
このように、構成単位(a)及び構成単位(b)の占める割合と比率を適宜調整することによって、形成する乳化組成物の乳化形態を調整することができる。
【0093】
本発明においては水溶性コポリマーにおける、構成単位(a)の全構成単位に占める割合は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは20~50質量%、30~40質量%である。
水溶性コポリマーにおける、構成単位(a)が占める割合を前記範囲とすることによって、べたつき感がより低減された水中油型の乳化組成物を提供することができる。
【0094】
本発明においては、水溶性コポリマーにおける、構成単位(b)の全構成単位に占める割合は、好ましくは50~99質量%、より好ましくは50~80質量%、60~70質量%である。
水溶性コポリマーにおける、構成単位(b)が占める割合を前記範囲とすることによって、べたつき感がより低減された水中油型の乳化組成物を提供することができる。
【0095】
本発明においては、水溶性コポリマーを構成する、構成単位(a)と構成単位(b)の質量比は、好ましくは10:90~50:50、より好ましくは20:80~50:50、さらに好ましくは30:70~40:60である。
【0096】
また、水溶性コポリマーを構成する、構成単位(a)と構成単位(b)のモル比は、好ましくは15:85~62:38、より好ましくは29:71~62:38、さらに好ましくは41:59~52:48である。
水溶性コポリマーにおける構成単位(a)及び構成単位(b)の質量比及びモル比を前記範囲とすることによって、水中油型の乳化組成物を形成するのに適した、乳化力に優れた水溶性コポリマーとすることができる。
【0097】
本発明においては、水溶性コポリマーの平均分子量は、好ましくは20000~110000、より好ましくは20000~80000、より好ましくは30000~80000、より好ましくは40000~70000、さらに好ましくは50000~70000、さらに好ましくは57000~66000である。
なお、ここで平均分子量とは、GPCにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量のことをいう。
【0098】
<2>乳化組成物の製造方法
本発明は、上述した水溶性コポリマーと、油相成分と、水相成分を、加熱下で乳化する乳化工程を含む。
乳化工程における温度は、好ましくは40℃超であり、より好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは60℃以上であり、特に好ましくは65℃以上である。
また、乳化工程における温度は好ましくは90℃以下であり、より好ましくは85℃以下であり、さらに好ましくは80℃以下である。
本発明は、前述した水溶性コポリマーを乳化剤として使用して、加熱下で乳化を行うことで、安定した乳化組成物を調製することができる。
【0099】
乳化工程においては、上述の水溶性コポリマーを含む水相成分と油相成分をそれぞれ調製し、これらを撹拌混合する形態が好ましく挙げられる。
より具体的には、上述の水溶性コポリマーが分散された水溶液を調製し、これを他の水相成分と混合し、該水相成分の混合物と、あらかじめ調製した油相成分の混合物を撹拌混合する形態が好ましく挙げられる。
上述した水溶性コポリマーが分散された水溶液を調製する工程とは、加熱下で行われることが好ましい。
水溶性コポリマーが分散された水溶液を他の水相成分と混合する工程は、加熱下で行われることが好ましい。
油相成分の混合物を調製する工程は、加熱下で行われることが好ましい。
【0100】
乳化工程における水溶性コポリマーの添加量は、製造しようとする乳化組成物の全量に対して、好ましくは0.1~50質量%、より好ましくは0.5~30質量%である。
上述の水溶性コポリマーの添加量を前記範囲とすることによって、乳化組成物の乳化安定性をより向上させることができる。
【0101】
乳化工程において、乳化する水相成分及び油相成分の配合比率は、水溶性コポリマーにおける構成単位(a)及び構成単位(b)の比率を変更することによって適宜調整することが可能である。以下、上述した水中油型の乳化組成物を形成することに適した比率で構成単位(a)と構成単位(b)を含む水溶性コポリマーを使用した場合における油相及び水相の含有量等について説明する。
なお、本明細書においては油相及び油相成分、並びに水相及び水相成分には、本発明における水溶性コポリマーは含まれないものとして説明する。
【0102】
乳化工程における油相成分の添加量は、製造しようとする乳化組成物の全量に対して、好ましくは0.01~80質量%、より好ましくは0.1~70質量%である。
油相成分の添加量を前記範囲とすることによって、乳化組成物の乳化安定性を向上させることができる。
なお、油相成分とは、油剤及び親油性の成分であり、乳化組成物において油相に含まれる成分のことを言う。
【0103】
乳化工程における、上述の水溶性コポリマーと油相成分の混合質量比は、好ましくは1:100~1:0.2、より好ましくは1:70~1:0.3である。
水溶性コポリマーと油相成分の質量比を前記範囲とすることによって、乳化組成物の乳化安定性を向上させることができる。
【0104】
乳化工程における油相と水相の混合質量比は、好ましくは0.1:99.9~80:20、より好ましくは1:99~65:35である。
油相と水相の質量比を前記範囲とすることによって、安定な水中油型の乳化組成物を形成することができる。
【0105】
油相と水相に含まれる成分は特に限定されない。
油相を構成する油剤としては、例えば、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、シリコーン油等を挙げることができる。
【0106】
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、メドウフォーム油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等が挙げられる。
【0107】
固体油脂としては、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0108】
ロウ類としては、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0109】
炭化水素油としては、流動パラフィン、オゾケライト、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0110】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸等が挙げられる。
【0111】
高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等が挙げられる。
【0112】
合成エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ステアリン酸スクロース、オレイン酸スクロース、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリ-2-エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、パルミチン酸セチル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0113】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサンや、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサンなどの環状ポリシロキサン等が挙げられる。
【0114】
油剤は1種または2種以上を用いることができる。
【0115】
水相成分としては、融点が40℃超の成分、若しくは水相に40℃以下で溶解若しくは分散しない成分を含むことが好ましい。
また油相成分としては、融点が40℃超の成分、若しくは、油相に40℃以下で溶解若しくは分散しない成分を含むことが好ましい。
なお、ここでいう「溶解」とは、相溶を含む。
水相又は油相に40℃以下で溶解若しくは分散しない成分としては、水相又は油相に40℃超で溶解若しくは分散する成分が好ましい。
融点が40℃超の成分は、融点が50℃以上の成分であってもよく、融点が60℃以上の成分であってもよい。
融点が40℃超の成分の融点は、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。
水相、又は油相に40℃以下で溶解若しくは分散しない成分は、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下で水相、又は油相に溶解若しくは分散する成分である。
このような油相成分として、ワックス類、高級アルコール、脂肪酸、ワセリン、菜種硬化油、エステル油、架橋型メチルポリシロキサン、及び高重合シリコーン等が挙げられる。
【0116】
乳化工程は、上述の水溶性コポリマー以外の乳化剤を実質的に添加しない形態であってもよい。
ここで、「上述の水溶性コポリマー以外の乳化剤を実質的に添加しない」とは、上述の水溶性コポリマー以外の乳化剤の添加量が、製造しようとする乳化組成物の全量に対して、0.3質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.001質量%以下であることを言う。また、上述の水溶性コポリマー以外の乳化剤を添加しないことが特に好ましい。
本発明で使用する前記水溶性コポリマーは、加熱下において単独で十分な乳化能を有する。
【0117】
乳化工程においては、通常化粧料に配合される任意添加成分を配合してもよい。このような添加成分としては、例えば、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール等の保湿剤;エタノール等の低級アルコール;ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、フィチン等の酸化防止剤;安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、ヘキサクロロフェン等の抗菌剤;パラアミノ安息香酸(以下「PABA」と略記)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAメチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABA2-エチルヘキシルエステル等の安息香酸系紫外線吸収剤;ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等のアントラニル酸系紫外線吸収剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤;オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;〔3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル-1-メチルプロピル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル-3-メチルプロピル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルブチル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-トリス(トリメチルシロキシ)シリルブチル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-トリス(トリメチルシロキシ)シリルブチル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-トリス(トリメチルシロキシ)シリル-1-メチルプロピル〕-3,4-ジメトキシシンナメート等のシリコーン系ケイ皮酸紫外線吸収剤;2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、ウロカニン酸エチルエステル、2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン、5-(3,3’ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン等の紫外線吸収剤;アシルサルコシン酸(例えばラウロイルサルコシンナトリウム)、グルタチオン、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等の有機酸;ビタミンAおよびその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2およびその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15およびその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等のビタミン類;γ-オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸およびその誘導体、トラネキサム酸およびその誘導体〔トラネキサム酸誘導体としては、トラネキサム酸の二量体(例えば、塩酸トランス-4-(トランス-アミノメチルシクロヘキサンカルボニル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸、等)、トラネキサム酸とハイドロキノンのエステル体(例えば、トランス-4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸4’-ヒドロキシフェニルエステル、等)、トラネキサム酸とゲンチシン酸のエステル体(例えば、2-(トランス-4-アミノメチルシクロヘキシルカルボニルオキシ)-5-ヒドロキシ安息香酸およびその塩、等)、トラネキサム酸のアミド体(例えば、トランス-4-アミノメチルシコロヘキサンカルボン酸メチルアミドおよびその塩、トランス-4-(P-メトキシビンゾイル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸およびその塩、トランス-4-グアニジノメチルシクロヘキサンカルボン酸およびその塩、等)〕、ヒノキチオール、ビサボロール、ユーカルプトーン、チモール、イノシトール、サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニン等のサポニン類、パントテニルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、トラネキサム酸、アルブチン、セファランチン、プラセンタエキス等の各種薬剤;ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サワラ等の植物の抽出物;色素;多孔質および/または吸水性の粉末(例えば、トウモロコシやバレイショ等から得られるスターチ類、無水ケイ酸、タルク、カオリン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、アルギン酸カルシウム等の粉末);中和剤;防腐剤;香料;顔料等が挙げられる。
【0118】
本発明は、乳液、クリーム、美容液、日焼け止め、リキッドファンデーション等の化粧料、皮膚外用剤、医薬部外品や医薬品の製造方法に応用することができる。
特に自家製の化粧料を調製するニーズが高まってきていることに鑑み、本発明は、特に化粧料の製造に応用することが好ましい。
【0119】
乳化工程は、撹拌して乳化する工程であることが好ましい。
乳化工程における撹拌方法は、特に限定されず、ホモジナイザー等の一般的な機械を用いることができる。
一方、本発明の乳化工程は、家庭用撹拌機によって行うことができる。ここで、「家庭用撹拌機」とは、乳化組成物の工業的な生産に用いられる強力な撹拌力を有する撹拌機ではなく、家庭用家電として販売されている撹拌機のことをいう。
【0120】
家庭用撹拌機の撹拌方式としては特に限定されないが、回転羽を回転させることによって生じるせん断力に基づき乳化を行う形態のものが好ましく例示できる。
【0121】
家庭用撹拌機としては、家庭用の調理器具として使用される機器が好ましく挙げられる、好ましくは10kg以下、より好ましくは8kg以下、さらに好ましくは6kg以下、さらに好ましくは4kg以下、さらに好ましくは2kg以下の軽量の撹拌機が好ましく挙げられる。
具体的には、ハンドブレンダー、ハンディーミルクフォーマー、卓上ミキサー、卓上フードプロセッサー、電動泡立て器などが挙げられる。
これら家庭用撹拌機は工業用に使用される乳化装置に比べて撹拌力に乏しい。しかし、本発明の乳化組成物の製造方法では、乳化剤として上述の水溶性コポリマーを使用することで、このような撹拌力に乏しい家庭用撹拌機を使用しても油相と水相の分離の無い乳化組成物を調製することができる。すなわち、より低エネルギーで乳化組成物を調製することができる。
【0122】
また、乳化工程において水溶性コポリマー、油相成分及び水相成分を撹拌して乳化する際の撹拌力は、以下の定義Aで定義される条件を満たすものであることが好ましい。
【0123】
[定義A]
乳化剤としてポリオキシエチレンエステルエーテル型非イオン界面活性剤2質量部又はアクリル酸・メタクリル酸共重合体0.3質量部と、1,3-ブチレングリコールとグリセリンを1:1の割合で含む溶液を12質量部と、水残余部と、を室温で混合し水溶液を調製し、該水溶液と、下記A群から選ばれる油剤65質量部と、を室温で攪拌して乳化組成物100質量部を調製したとき、前記油剤の全てを乳化滴として分散することができない攪拌力。
(A)スクワラン、ミネラルオイル、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン、オリーブ果実油、ポリジメチルシロキサン、シクロペンタシロキサン
(但し、乳化剤としてポリオキシエチレンエステルエーテル型非イオン界面活性剤を選択する場合、A群からミネラルオイル、トリエチルヘキサノイン及びオリーブ果実油は選択されない)
【0124】
本発明では定義Aで定義されるような弱い攪拌力をもって攪拌し、乳化を行う形態であっても、相分離の無い乳化組成物を製造することができる。
【0125】
定義Aにおける「ポリオキシエチレンエステルエーテル型非イオン界面活性剤」としては、具体的に、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が挙げられる。
【0126】
また、定義Aにおける「アクリル酸・メタクリル酸共重合体」としては、具体的に、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーが挙げられる。
【0127】
また、定義Aにおいて攪拌する、乳化剤、1,3-ブチレングリコールとグリセリン、水及び油剤の混合物の容量は、目安として、好ましくは10~400ml、より好ましくは30~300mlである。
【0128】
なお、定義Aにおける「油剤の全てを乳化滴として分散すること」ができているか否かは、油剤が相分離して上方に浮いているか否かを確認することによって判断できる。この判断は目視にて可能である。油剤が相分離して浮いている場合に、「油剤の全てを乳化滴として分散すること」ができていないと判断できる。
【0129】
定義AにおけるA群に列挙された油剤は、1種のみを選択してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。好ましくは1種のみを選択して使用する。
【0130】
乳化工程における攪拌力は、以下の定義Bで定義する条件を満たすものであることが好ましい。
[定義B]
ポリオキシエチレンエステルエーテル型非イオン界面活性剤2質量部と、1,3-ブチレングリコールとグリセリンを1:1の割合で含む溶液を12質量部と、水21質量部と、を室温で混合し水溶液を調製し、該水溶液と、ミネラルオイル、トリエチルヘキサノイン及びオリーブ果実油から選ばれる油剤65質量部と、を室温で攪拌して乳化組成物100質量部を調製したとき、前記油剤の全てを乳化滴として分散することができる攪拌力。
【0131】
定義Bで定義される攪拌力をもって攪拌することで、相分離が無く、より安定な乳化組成物を製造することができる。
【0132】
定義Bにおける「ポリオキシエチレンエステルエーテル型非イオン界面活性剤」の具体的な態様は、定義Aにおける説明をそのまま適用できる。
また、定義Bにおいて攪拌する、乳化剤、1,3-ブチレングリコールとグリセリン、水及び油剤の混合物の容量は、定義Aにおける説明をそのまま適用できる。
【0133】
定義Bにおいて列挙された油剤は、1種のみを選択してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。好ましくは1種のみを選択して使用する。
【0134】
なお、定義Bにおける「油剤の全てを乳化滴として分散すること」ができているか否かは、上述の通り、油剤が相分離して上方に浮いているか否かを確認することによって判断できる。この判断は目視にて可能である。相分離して浮いている油剤が見られない場合に、「油剤の全てを乳化滴として分散すること」ができていると判断できる。
【0135】
乳化工程においては、以下の定義Cで定義される条件を満たす撹拌機を使用して乳化することが好ましい。
[定義C]
前記水溶性コポリマー2質量%と、水88質量%と、スクワラン10質量%と、を室温で攪拌したとき、乳化滴として分散することができない前記スクワランの割合が1質量%未満とすることができる。
【0136】
定義Cにおける乳化滴として分散することができない前記スクワランの割合は1質量%未満であり、好ましくは0.5質量%未満であり、さらに好ましくは0.1質量%未満である。
【0137】
定義Cで定義される条件を満たす攪拌機を使用することによって、簡便に分離の無い乳化組成物を製造することができる。
定義Cで定義される条件を満たす攪拌機としては、ハンドブレンダーが好ましく例示できる。
【0138】
乳化工程においては、以下の定義Dで定義される条件を満たす撹拌機を使用して乳化することが好ましい。
[定義D]
前記水溶性コポリマー2質量%と、水88質量%と、スクワラン10質量%と、を室温で攪拌したとき、乳化滴のメジアン径を30μm以下とすることができる。
【0139】
定義Dにおけるメジアン径は、30μm以下であり、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。
【0140】
定義Dで定義される条件を満たす攪拌機を使用することによって、より安定性に優れた乳化組成物を製造することができる。
定義Dで定義される条件を満たす攪拌機としては、ハンドブレンダーが好ましく例示できる。
【0141】
乳化工程においては、乳化滴のメジアン径が30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下となるように乳化することが好ましい。
本発明においては前記水溶性コポリマーを使用するため、このような乳化滴の小さい安定な乳化組成物の製造が可能になる。
【0142】
メジアン径は光学顕微鏡観察像によって測定できる。
【0143】
乳化工程においては、以下の定義Eで定義される条件を満たす撹拌機を使用して乳化することが好ましい。
[定義E]
以下の条件で測定した粘度が26450mPa・s以上であるカルボキシビニルポリマー水溶液100gに0.5wt%赤色504号水溶液を1mL滴下した混合液を200mLビーカーに入れ、撹拌機の位置をクランプで固定して20℃で5分間連続撹拌したときに、混合液全体を均一に染色することができない。
[条件]
使用機器:B型粘度計(芝浦システム株式会社社製)
温度:20℃
回転数:12rpm
ロータ:4号
時間:60sec
【0144】
定義Eで定義される条件を満たす撹拌機としては、ミルクフォーマーが好ましく例示できる。
【0145】
定義Eにおけるカルボキシビニルポリマー水溶液の粘度は、好ましくは22000mPa・s以上であり、より好ましくは20000mPa・s以上であり、さらに好ましくは1800mPa・s以上であり、さらに好ましくは16000mPa・s以上であり、さらに好ましくは15500mPa・s以上であり、特に好ましくは15150mPa・s以上である。
【0146】
<4>乳化組成物の作製キット
本発明は乳化組成物の作製キットにも関する。
本発明の乳化組成物の作製キットは、その構成要素として、上述の水溶性コポリマーが充填された第1の包装用容器を含む。第1の包装用容器に充填される水溶性コポリマーは、固形や粉末状のような非液状形態であってもよいが、好ましくは液状形態として充填されていることが好ましい。具体的には、水溶性コポリマーは、水に分散された状態で第1の包装用容器に充填されていることが好ましい。
【0147】
第1の包装用容器に上述した水溶性コポリマーの水分散液を充填する場合には、水分散液における水溶性コポリマーの含有量は、特に制限されないが目安として、好ましくは0.01~99質量%、より好ましくは1~90質量%とすることができる。
【0148】
第1の包装用容器に充填する水溶性コポリマーの水分散液の容量は、特に制限されないが目安として、好ましくは1~1000ml、より好ましくは10~500mlである。
【0149】
本発明の乳化組成物の作製キットは、その構成要素として、油相成分が充填された第2の包装用容器を含む。第2の包装用容器に充填される油相成分は、常温で固形であっても液体であってもよいが、好ましくは常温で液体であることが好ましい。第2の包装用容器に充填される油相成分が常温で固体である場合、第2の包装用容器を湯せんなどにより温め、油相成分を液状にしてから使用する。
【0150】
第2の包装用容器に充填する油相成分の容量は、特に制限されないが目安として、好ましくは1~1000ml、より好ましくは10~500mlである。
【0151】
第2の包装用容器に充填する油相成分としては、上記「<2>乳化組成物の製造方法」の項目で説明した油剤、例えば、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、シリコーン油等を挙げることができる。
【0152】
第2の包装用容器に充填する油相成分は、上記「<2>乳化組成物の製造方法」の項目で説明した油剤をベースオイルとするものであることが好ましい。特に制限はされないが、具体的には目安として、油相成分の好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上を上記油剤で構成する。第2の包装用容器に充填する油相成分の全量を上記「<2>乳化組成物の製造方法」の項目で説明した油剤で構成しても構わない。
【0153】
第2の包装用容器に充填する油相成分として、上述したベースオイル以外の油溶性の任意成分をあらかじめ含む形態としてもよい。具体的には、上記「<2>乳化組成物の製造方法」の項目に列挙した任意添加成分のうち、油溶性のものを適宜配合する形態としてもよい。
【0154】
本発明の乳化組成物の作製キットは、その構成要素として、水相成分が充填された第3の包装用容器を含む。第3の包装用容器に充填される水相成分は、全量が水、好ましくは精製水であってもよい。また、任意の成分が溶解または分散した水溶液または水分散液であってもよい。
【0155】
第3の包装用容器に充填する水相成分の容量は、特に制限されないが目安として、好ましくは1~1000ml、より好ましくは10~500mlである。
【0156】
第3の包装用容器に水溶液または水分散液を充填する場合、溶質又は分散質の含有量は、特に制限されないが目安として、好ましくは0.01~90質量%、より0.1~80質量%である。
【0157】
第3の包装用容器に任意成分をあらかじめ含む水溶液又は水分散液を充填する場合、その溶質又は分散質としては、上記「<2>乳化組成物の製造方法」の項目に列挙した任意添加成分のうち、水溶性又は親水性のものを適宜配合することができる。
【0158】
なお、第3の包装用容器に上述の水溶性コポリマーが分散した水分散液を充填する形態としてもよい。つまり、第2の包装用容器に充填された油相成分と、第3の包装用容器に充填された水溶性コポリマーを含む水相成分を混合することで乳化組成物を調製するよう設計された実施形態としてもよい。
この場合には、水溶性コポリマー又はその水分散液が充填された第1の包装用容器を備えず、第2の包装用容器と第3の包装用容器のみを含む形態としてもよい。
【0159】
本発明の作製キットによれば、消費者が家庭内において自家製の乳化組成物を調製することが可能になる。すなわち、第1~第3の包装用容器のそれぞれに充填された、水溶性コポリマー、油相成分及び水相成分を任意の容器に注ぎ入れて混合物を調製し、これを攪拌することによって乳化組成物を調製することができる。
水溶性コポリマー、油相成分及び水相成分の配合割合については、消費者の好みに合わせて調整することができる。また、消費者の好みに合わせて適宜任意の有効成分を配合することもできる。つまり、本発明の作製キットによれば、オリジナルの乳化組成物を調製することができる。
【0160】
本発明の作製キットを使用して乳化組成物を調製する際には、工業用の強力な攪拌力を有する攪拌装置を使用せずともよい。攪拌力に乏しい家庭用撹拌機を使用した場合であっても、油相と水相の分離の無い乳化組成物を簡便に調製することができる。
【0161】
本発明の作製キットの構成要素として、撹拌機を付属する実施の形態としてもよい。撹拌機を作製キットの構成要素として付属させる場合、その撹拌機の種類や攪拌力などの具体的実施態様については、上記「<2>乳化組成物の製造方法」に記載した事項をそのまま適用することができる。
【0162】
また、本発明の作製キットの構成要素として、乳化組成物の調製の用に供される容器を付属してもよい。この容器としては目盛り付きのものが好ましく例示でき、より好ましくは目盛り付きのビーカーなどが挙げられる。目盛り付きの容器を付属する形態とすれば、消費者側において水溶性コポリマー、油相成分及び水相成分の配合割合の調整・確認が容易になる。
【0163】
また、作製キットの構成要素として、水溶性コポリマー、油相成分、水相成分の配合割合の目安が記載された説明書を付属させてもよい。
【0164】
作製キットの構成要素として、肌に良好な影響を与える植物抽出液や、香りづけのためのアロマオイルなどが充填された第4の包装用容器を付属させてもよい。消費者の好みに合わせて第4の包装用容器に充填された成分を乳化組成物に配合することができる。
【0165】
本発明の作製キットは、当該キットに含まれる全ての構成要素が、一つの梱包用容器に梱包されている実施の形態とすることができる。このような実施形態とすれば輸送や販売が容易になる。
また、本発明の作製キットは、組成の自由度が高いため、消費者が自身の好みの感触や使い心地となるように配合成分や配合率を変更することができる。
【0166】
<5>乳化組成物の設計方法
本発明は、加熱下で乳化される乳化組成物の設計方法にも関する。
本発明は、水相成分として、融点が40℃超の成分、及び/又は水相に40℃以下で溶解、若しくは分散しない成分を選択する工程を含む。
また、油相成分として、融点が40℃超の成分、及び/又は油相に40℃以下で溶解、若しくは分散しない成分を選択する工程を含む。
【0167】
水相成分、及び油相成分としては、「<2>乳化組成物の製造方法」で説明した事項、及び「<3>乳化組成物」で説明した事項を適用できる。
融点が40℃超の油相成分としては、ワックス類、高級アルコール、脂肪酸、ワセリン、菜種硬化油、エステル油、架橋型メチルポリシロキサン、及び高重合シリコーン等が挙げられる。
【0168】
油相成分としては、スクワラン、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ポリジメチルシロキサン、及びシクロペンタシロキサンからなる群から選択される1種又は2種以上から選択することが好ましい。
【実施例0169】
<試験例1>
水溶性コポリマーとして、疎水性モノマーであるグリセリルジイソステアレートメタクリレートと、親水性モノマーであるメタクリル酸メトキシPEG-23を、およそ3:7の質量比で共重合させた、平均分子量61000の(グリセリルジイソステアレートメタクリレート/メタクリル酸メトキシPEG-23)コポリマーを使用して、乳化組成物を調製した。
【0170】
具体的には、まず、上述の水溶性コポリマー1質量部と、1,3-ブチレングリコールとグリセリンを1:1の割合で混合した保湿剤12質量部と、水22質量部を室温で混合して水溶液を調製した。
この水溶液に、表1に列挙する11種類の構造の異なる油剤65質量部を添加して、合計150mlの混合液とし、家庭用調理混合機(HB-1230、HadinEEon)を用いて高速で30秒間攪拌し、乳化組成物100質量部を調製した。
【0171】
また、比較のため、上述の水溶性コポリマーに代えて、ポリオキシエチレンエステルエーテル型非イオン界面活性剤(POE界面活性剤)2質量部、またはアクリル酸メタクリル酸共重合体(AAMAポリマー)0.3質量部を使用し、同条件で乳化組成物を調製した。水の添加量を調整することで、全体が100質量部となるように調整した。
【0172】
なお、使用したPOE界面活性剤及びAAMAポリマーは、具体的に以下のものである。
POE界面活性剤:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
AAMAポリマー:(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
【0173】
調製直後の乳化組成物について油相と水相の分離を目視で評価し、乳化に成功しているか否か、つまり、油剤の全てが乳化滴として分散されているか否かについて評価した。評価結果を表1に示す。また、代表例として、油剤としてスクワランを用い、かつ、乳化剤としてPOE界面活性剤、AAMAポリマー及び水溶性コポリマーを使用して攪拌を行った後の組成物の写真を図1及び図2に示す。
【0174】
【表1】
【0175】
その結果、POE界面活性剤は11油種中8油種を完全に乳化することができなかった(表1)。また、AAMAポリマーは、全ての油剤を用いた場合において水相と油相の分離が観察された(表1)。
一方、水溶性コポリマーを使用した場合、11種類の油剤を用いた全ての場合において、油相が分離することなく完全な乳化ができていることが確認された(表1)。
【0176】
以上の結果は、乳化剤として上述の水溶性コポリマーを使用する場合には、攪拌力に乏しい家庭用撹拌機を用いた場合であっても、油相と水相の分離の無い乳化組成物を製造できることを示している。
つまり、上述の水溶性コポリマーを乳化剤として使用すれば、工業的に使用される攪拌力の強い攪拌装置を使用せず、家庭用撹拌機を使用して消費者が家庭内で自家製の乳化組成物、より具体的には乳化化粧料を調製できることを示している。
【0177】
<試験例2>
試験例1で使用した水溶性コポリマー1質量部と、水88質量部を混合し、これにスクワラン10質量部を添加し、以下の各種攪拌手段によって室温で攪拌した。
・ハンドブレンダー(HB-1230、HadinEEon)
・ミルクフォーマー(RECHARGEBLE MILK FROTHER,Kitdine)
・研究用撹拌機(ハンディホモジナイザー (NS360D, Microtec).)
・手攪拌
【0178】
各種撹拌手段を用いて調製した乳化組成物を顕微鏡で観察し、乳化滴の大きさを確認した(図3に顕微鏡像を示す)。また、光学顕微鏡によってメジアン径を計測した。
各種攪拌手段で調製された乳化組成物の乳化滴のメジアン径を以下に示す。
・ハンドブレンダー・・・3.9μm
・ミルクフォーマー・・・5.6μm
・研究用撹拌機・・・3.6μm
・手攪拌・・・計測不可
【0179】
以上の結果は、何れの攪拌手段を採用した場合であっても、上述の水溶性コポリマーを使用すれば、研究用ないし工業用の強力な撹拌機を使用せずとも、家庭で乳化組成物を調製できることを示している。
また、ハンドブレンダーを使用することで、乳化滴が小さく、より安定な乳化組成物を調製できることを示している。
【0180】
<試験例3>
試験例1で使用した水溶性コポリマーを用いて、下記表2に記載の組成に従い、加熱下(80℃)で実施例1及び2の乳化組成物を調製した。なお、表中の数字は質量%である。
また、乳化剤として、前述のAAMAポリマーを用いて、加熱下で比較例1及び2の乳化組成物を調製した。さらに、AAMAポリマー及び他の低分子乳化剤を用いて、比較例3~5の乳化組成物を調製した。
なお、参考例1~4として、各乳化剤を用いて非加熱下で乳化組成物を調製した。
調製した各乳化組成物について、調製直後、-10℃で1週間保存後、20℃で1か月保存後、5℃で1か月保存後のそれぞれのタイミングで、肉眼で表面状態を観察し、以下の評価基準に従い表面状態を評価した。また、光学顕微鏡を用いて、乳化粒子を確認した。
結果を図4及び図5に示す。
【0181】
(評価基準)
〇 :全量乳化されている
△ :少量の油が浮いている
× :エマルションが不均一また油が浮いている
××:多量の油が浮いている
【0182】
【表2】
【0183】
図4及び図5の結果から、実施例1及び2の乳化組成物は、調製直後において油浮きが確認されず、油相と水相の分離のない乳化組成物であった。
一方で、比較例1及び2の乳化組成物は、調製直後において多くの油浮きが確認された。
この結果は、乳化剤として前述の水溶性コポリマーを使用することで、従来の高分子乳化剤と比して、加熱下で乳化安定性の高い乳化組成物を調製することができることを示している。
さらに、この結果は、乳化剤として前述の水溶性コポリマーのみを用いた場合であっても、安定した乳化組成物を調製することができることを示している。
【0184】
AAMAポリマーとステアリン酸ソルビタンを併用した比較例3は、調製直後わずかな油浮きが確認され、AAMAポリマー、ステアリン酸PEG、及びステアリン酸ソルビタンを併用した比較例4は、油浮きが確認されず、全量乳化されていた。
この結果から、従来の高分子乳化剤を用いた乳化組成物の調製は、加熱下で、かつ他の乳化剤と併用することで良好な乳化組成物を調製できるものであったが、本発明によれば、乳化剤として前述の水溶性コポリマーを単独で使用することで、良好な乳化組成物を調製できることを示している。
【0185】
また、図4及び図5の結果から、実施例1及び2の乳化組成物は、調整後、様々な温度環境下で保存したところ、わずかな油浮きが確認されたものがあったが、エマルションの安定性を著しく損なうものではなかった。。
一方、比較例1及び2の乳化組成物を同条件で保存したところ、多くの油浮きが確認された。
この結果は、乳化剤として前述した水溶性コポリマーを単独で使用して、加熱下で乳化することで、乳化安定性に問題がなく、従来の高分子乳化剤と比して、優れた乳化安定性を有する乳化組成物を調製できることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明は、高分子乳化剤を用いた乳化組成物の製造プロセスに応用することができる。

図1
図2
図3
図4