(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063928
(43)【公開日】2022-04-25
(54)【発明の名称】接合構造体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 1/19 20060101AFI20220418BHJP
B23K 1/00 20060101ALN20220418BHJP
【FI】
B23K1/19 L
B23K1/19 A
B23K1/00 330L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172338
(22)【出願日】2020-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】片岡 淳一
(57)【要約】
【課題】 チタンからなる部材とチタン以外の金属からなる部材とを容易且つ確実に接合する接合構造体を提供する。
【解決手段】 チタンからなる第1部材2とチタン以外の金属からなる第2部材3とを接合した接合構造体1であって、第1部材2の表面にチタン以外の金属からなるろう材を用いて形成された第1接合部6,7に、はんだ材料からなる第2接合部8,9を介して第2部材3が接合されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタンからなる第1部材とチタン以外の金属からなる第2部材とを接合した接合構造体であって、
前記第1部材の表面にチタン以外の金属からなるろう材を用いて形成された第1接合部に、はんだ材料からなる第2接合部を介して前記第2部材が接合された接合構造体。
【請求項2】
前記第1接合部は銀ろうを含む請求項1に記載の接合構造体。
【請求項3】
前記第2部材は、アルミニウムにより形成された帯状のフィン素材であり、伝熱管からなる前記第1部材の表面に螺旋状に巻き付けられている請求項1または2に記載の接合構造体。
【請求項4】
前記第1接合部は、前記第1部材の軸方向に沿って前記第2部材の両側に隣接するように配置されている請求項3に記載の接合構造体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の接合構造体を製造する方法であって、
前記第1部材の表面でチタン以外の金属からなるろう材を溶融させて前記第1接合部を形成する第1ステップと、
前記第1接合部に前記第2部材をはんだ付けすることにより前記第2接合部を形成する第2ステップとを備える接合構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造体およびその製造方法に関し、より詳しくは、チタンからなる部材とチタン以外の金属からなる部材とを接合した接合構造体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタンからなる部材とチタン以外の金属からなる部材とをろう付けにより接合することが、従来から行われている。例えば、特許文献1には、チタン製の伝熱管の外周面に対して、アルミニウム製のフープ状のフィン素材をスパイラル状に巻き付ける際に、フィン素材の始端部を伝熱管にろう付けするフィンチューブの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のろう付けをTIG溶接機により瞬間的に熱を加えて行う場合には、アークの位置ずれ等によって伝熱管やフィン素材が溶けて穴あきが生じるおそれがあり、作業に熟練を要するという問題があった。一方、ろう付けの熱源としてガスバーナーを使用する場合には、厚みが薄いフィン素材が長時間加熱されることで、やはり溶融による穴あきが生じるおそれがあった。
【0005】
金属部材同士の接合方法としては、ろう付け以外に、ろう材よりも低温で溶融するはんだ材料を用いたはんだ付けも周知であり、これによってフィン素材の溶融を抑制することができるが、チタンからなる伝熱管へのはんだ付けが極めて困難という問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、チタンからなる部材とチタン以外の金属からなる部材とを容易且つ確実に接合することができる接合構造体およびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、チタンからなる第1部材とチタン以外の金属からなる第2部材とを接合した接合構造体であって、前記第1部材の表面にチタン以外の金属からなるろう材を用いて形成された第1接合部に、はんだ材料からなる第2接合部を介して前記第2部材が接合された接合構造体により達成される。前記第1接合部は銀ろうを含むことが好ましい。
【0008】
この接合構造体は、前記第2部材が、アルミニウムにより形成された帯状のフィン素材であり、伝熱管からなる前記第1部材の表面に螺旋状に巻き付けられた構成にすることができる。この構成において、前記第1接合部は、前記第1部材の軸方向に沿って前記第2部材の両側に隣接するように配置されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明の前記目的は、上記の接合構造体を製造する方法であって、前記第1部材の表面でチタン以外の金属からなるろう材を溶融させて前記第1接合部を形成する第1ステップと、前記第1接合部に前記第2部材をはんだ付けすることにより前記第2接合部を形成する第2ステップとを備える接合構造体の製造方法により達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の接合構造体およびその製造方法によれば、チタンからなる部材とチタン以外の金属からなる部材とを容易且つ確実に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る接合構造体の正面図である。
【
図2】
図1に示す接合構造体の製造方法を説明するための要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る接合構造体の正面図である。
図1に示すように、本実施形態の接合構造体1は、空冷式熱交換器などに使用されるフィンチューブであり、チタン製の伝熱管からなる第1部材2と、アルミニウム製のフィン素材からなる第2部材3とを接合して構成されている。本明細書におけるチタンおよびアルミニウムには、それぞれの純金属以外に合金も含まれる。
【0013】
第2部材3は、全体が帯状であり、断面がL字状に形成されて、基部3aと、基部3aから起立するフィン3bとを備えている。第2部材3は、基部3aが第1部材2に当接してフィン3bが第1部材2の外方に突出するように、第1部材2の表面に螺旋状に巻き付けられている。
【0014】
第1部材2の表面において、第1部材2の軸方向に沿った第2部材3の両側には、銀ろうからなる第1接合部6,7が隆起状に形成されている。銀ろうは、接合強度の向上、融点の低下、ぬれ性の改善等を目的として、Cu,Sn,Ni,Li等の他の元素が添加されていてもよい。本実施形態においては、BAg-4の銀ろうを使用している。
【0015】
第1接合部6,7と第2部材3の両側との間には、はんだ材料からなる第2接合部8,9が介在されている。より詳細には、一方の第2接合部8は、一方の第1接合部6と基部3aおよびフィン3bに密着するように形成されており、他方の第2接合部9は、他方の第1接合部7とフィン3bに密着するように形成されている。
【0016】
第2接合部8,9を構成するはんだ材料は、特に限定されないが、Sn-Pb系やSn-Zn系等のアルミニウム用の低温はんだを例示することができ、Cd,Bi,Cu,Al,Sb等の他の元素が添加されていてもよい。はんだ材料の融点は450℃未満であり、銀ろうの融点(約800℃)よりも十分低いため、第2部材3のフィン3bの厚みが薄い(例えば0.4mm)場合でも、第2部材3に対して溶融による穴あきの問題が生じるおそれがなく、第2部材3との接合を容易に行うことができる。また、はんだ材料からなる第2接合部8,9は、銀ろうからなる第1接合部6,7を介してチタンからなる第1部材2に接合されるため、それぞれの間の接合強度を良好に維持することができる。
【0017】
次に、上記の構成を備える接合構造体1の製造方法を説明する。まず、第2部材3を第1部材2の表面に螺旋状に巻き付けて、第2部材3の両端部を、第1部材2に沿って隣接する第2部材3の他の部分にステープル等の固定部材4,5(
図1参照)でそれぞれ固定する。これにより、第2部材3を第1部材2に巻き付けた状態が維持される。
【0018】
ついで、第1部材2の表面における第2部材3の両側に、第1接合部6,7を隆起状に形成する(第1ステップ)。この第1ステップは、例えば、第1部材2の管内にアルゴンガス等の不活性ガスを注入し、第1部材2の表面にチタン用フラックスを塗布した後、第1部材2を加熱しながら第1部材2の表面に銀ろうを押し付けるか、あるいは、第1部材2の表面に銀ろうを押し付けて銀ろう及びフラックスを加熱することにより、第1部材2の表面で銀ろうを溶融させて行うことができる。
【0019】
図2(a)は、第1部材2の表面に形成された一方の第1接合部6の近傍を示す要部平面図である。第1接合部6の形状は特に限定されないが、本実施形態においては、接合に必要な大きさでスポット状に形成されている。
図1に示す他方の第1接合部7についても、一方の第1接合部6と同様に形成される。
【0020】
次に、第1部材2の表面を水洗等により洗浄し、フラックスの焦げ等を除去した後、第2部材3および第1接合部6,7にフラックスを塗布する。ここで使用するフラックスは、はんだ用フラックスであることが好ましいが、第2部材3に対しては鉄用フラックス、第1接合部6,7に対してはアルミニウム用フラックスをそれぞれ使用してもよい。
【0021】
この後、第1接合部6,7に第2部材3をはんだ付けすることにより第2接合部8,9を形成する(第2ステップ)。この第2ステップは、例えば、第1接合部6,7を加熱して第1接合部6,7にはんだ材料を付着させ、このはんだ材料を第2部材3の加熱箇所まで引き延ばして第1接合部6,7と第2部材3とを接合することにより行うことができる。
【0022】
図2(b)は、第1部材2の表面に形成された一方の第2接合部8の近傍を示す要部平面図である。第2接合部8は、第1部材2の軸方向に沿って第2部材3のフィン3bおよび第1接合部6に密着し、第2部材3の基部3aを覆うように形成されている。
図1に示す他方の第2接合部9についても、第1部材2の軸方向に沿って第2部材3のフィン3bおよび第2接合部7に密着するように形成される。
【0023】
接合構造体1の製造方法は、必ずしも本実施形態に限定されるものではなく、他の方法で接合構造体1を製造してもよい。例えば、第2部材3の帯状の一端側を第1接合部6および第2接合部8を介して第1部材2の表面に固定し、第2部材3を第1部材2の表面に螺旋状に巻き付けた後に、第2部材3の帯状の他端側を第1接合部7および第2接合部9を介して第1部材2の表面に固定することにより、接合構造体1を製造することもできる。第2部材3は、本実施形態では基部3aおよびフィン3bを備える断面L字状に形成されているが、基部3aを備えずにフィン3bのみの構成であってもよく、フィン3bの帯状の両端部を第1接合部6,7および第2接合部8,9を介して第1部材2に固定することにより、フィン3bを起立状態に支持することができる。
【0024】
接合構造体1の具体的な構成や用途は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明を種々の接合構造体に適用することができる。第1部材2は、チタンからなる部材であればその形状は特に限定されず、管状以外に、例えば板状や柱状などであってもよい。第2部材3は、本実施形態のフィン素材のように厚みが薄い場合(例えば0.5mm以下)に好適であるが、第2部材3の形状についても特に限定されない。
【0025】
また、第2部材3は、アルミニウムのように融点が低い材料からなる場合に、本発明を好ましく適用することができるが、アルミニウム以外に、鉄や銅またはこれらの合金や、ステンレスなど、チタン以外のはんだ付けが可能な他の金属からなる場合にも、本発明を適用することができる。
【0026】
第1接合部6,7は、本実施形態では、チタンとの相性や作業性等を考慮して銀ろうを使用しているが、アルミニウムろう、銅ろう、金ろう、ニッケルろう等のように、チタン以外の金属を1種または2種以上含むろう材を用いて第1接合部6,7を形成してもよく、第2部材3の材料等も考慮して適宜選択することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 接合構造体
2 第1部材
3 第2部材
6,7 第1接合部
8,9 第2接合部