IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 松永 正文の特許一覧

特開2022-63935塗布方法、燃料電池の製造方法または燃料電池、2次電池の製造方法または2次電池、全固体電池の製造方法または全固体電池
<>
  • 特開-塗布方法、燃料電池の製造方法または燃料電池、2次電池の製造方法または2次電池、全固体電池の製造方法または全固体電池 図1
  • 特開-塗布方法、燃料電池の製造方法または燃料電池、2次電池の製造方法または2次電池、全固体電池の製造方法または全固体電池 図2
  • 特開-塗布方法、燃料電池の製造方法または燃料電池、2次電池の製造方法または2次電池、全固体電池の製造方法または全固体電池 図3
  • 特開-塗布方法、燃料電池の製造方法または燃料電池、2次電池の製造方法または2次電池、全固体電池の製造方法または全固体電池 図4
  • 特開-塗布方法、燃料電池の製造方法または燃料電池、2次電池の製造方法または2次電池、全固体電池の製造方法または全固体電池 図5
  • 特開-塗布方法、燃料電池の製造方法または燃料電池、2次電池の製造方法または2次電池、全固体電池の製造方法または全固体電池 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063935
(43)【公開日】2022-04-25
(54)【発明の名称】塗布方法、燃料電池の製造方法または燃料電池、2次電池の製造方法または2次電池、全固体電池の製造方法または全固体電池
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/24 20060101AFI20220418BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20220418BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20220418BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20220418BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220418BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20220418BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20220418BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
B05D7/24 301G
B05D3/00 B
B05D1/26 Z
H01M4/04 A
H01M4/139
H01M10/0562
H01M4/92
H01M4/88 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172350
(22)【出願日】2020-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】511097692
【氏名又は名称】松永 正文
(72)【発明者】
【氏名】松永 正文
【テーマコード(参考)】
4D075
5H018
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4D075AA04
4D075AC02
4D075AC06
4D075AC84
4D075AC96
4D075DC19
4D075EA06
4D075EA08
4D075EA33
4D075EB01
4D075EB52
4D075EB56
4D075EC10
4D075EC60
5H018BB08
5H018DD05
5H018EE03
5H018HH00
5H018HH05
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AM12
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029HJ01
5H029HJ10
5H029HJ12
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA10
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】 固形粒子をスラリーにしてかつスラリーを薄膜で塗布する場合、固形分の低い、粘度の低い、凝集力の低いスラリーが必要であった。しかし粘度が低く粒子の比重が高い場合、沈殿するリスクが高かった。また粒子を多く含むスラリーは急激に流路を絞る開閉バルブ付近で特に凝集しやすいため開口部を狭く例えば100マイクロメートル以下にすることが難しかった。
【解決手段】 オリジナルスラリーを比較的高粘度にすることにより粒子等の沈殿を少なくし、オリジナルスラリーの流路を循環又は往復移動して沈殿を防止できる。その流路の途中にある自動開閉バルブを装着した塗布ヘッドの下流でまたは流路を分岐した下流で溶媒を合流させ混合して低粘度スラリーにしてすぐ塗布する。よって低粘度のスラリーのキャビティーを最小化することによってスラリーの沈殿の影響を及ぼさない塗布ができる。また長時間塗布を休止する場合は前記僅少キャビティー分の低粘度スラリーは溶媒で排出することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリーを対象物に塗布装置で塗布する方法であって、不揮発分である少なくとも固形粒子からなる固形分と、揮発分である溶媒とを混合し高粘度のオリジナルスラリーにする工程と、該オリジナルスラリーを流路で下流へ圧送する工程と、独立した別流路で溶媒を圧送する工程と、前記オリジナルスラリーと前記溶媒を塗布装置の少なくとも塗布部である塗布ヘッド下流までの間に合流させ混合して低粘度スラリーにして前記対象物に塗布する工程とからなることを特徴とする塗布方法。
【請求項2】
前記オリジナルスラリーを循環流路で循環または少なくとも2つのタンク間の流路を往復移動し沈殿を防止する工程と、前記流路と接続された自動開閉機構を備えた前記塗布ヘッドの下流までの間または前記オリジナルスラリー流路を分岐した下流で、前記オリジナルスラリーと溶媒を合流させ低粘度にする工程と、前記低粘度スラリーを対象物に塗布ヘッドで塗布することを特徴とする請求項1の塗布方法。
【請求項3】
前記オリジナルスラリーの不揮発分の比率は65重量パーセント以下であって、そのうち固形の粒子または粒子と短繊維の重量比率は55パーセント以下であって、バインダーは10重量パーセント以下であって、揮発分は35パーセント以上であって、前記オリジナルスラリーの粘度は3000mPa・s以下であることを特徴とする請求項1または2の塗布方法。
【請求項4】
前記低粘度スラリーの粘度は200mPa・s以下であって、前記対象物は加熱してなることを特徴とする請求項1乃至3の塗布方法。
【請求項5】
前記塗布装置はエアレススプレイノズル液膜塗布装置、圧縮気体アシストエアレススプレイノズル塗布装置、スリットノズル塗布装置、スロットノズル塗布装置、圧縮気体アシストスロットノズル塗布装置、2流体スプレイ塗布装置の少なくとも一つを選択し前記対象物に単層または積層塗布することを特徴とする請求項1乃至4の塗布方法。
【請求項6】
前記オリジナルスラリーはバインダーを含み、溶媒は少なくとも2種類以上の溶媒からなり、少なくとも一つの溶媒を合流させ混合して低粘度スラリーにして塗布することを特徴とする請求項1乃至5の塗布方法。
【請求項7】
前記塗布装置は圧縮気体アシストスロットノズル塗布装置または2流体スプレイ塗布装置であって圧縮気体の噴出流を前記オリジナルスラリーまたは低粘度スラリーに吹き付けるまでの間の圧縮気体に前記溶媒が含まれることを特徴とする請求項1乃至6の塗布方法。
【請求項8】
前記対象物が燃料電池用電解質膜、ガス拡散層、転写フィルムの中から選択し、オリジナルスラリーは白金触媒を含む固形分5乃至25重量パーセントの電極用インクであって前記対象物に前記低粘度スラリーを塗布して膜電極複合体を形成することを特徴とする請求項1乃至6の燃料電池の製造方法または燃料電池。
【請求項9】
前記燃料電池のオリジナルスラリーは50重量パーセント以上の水を含み、前記低粘度用スラリーの溶媒は75%以上のアルコール系溶媒であることを特徴とする請求項8の燃料電池の製造方法または燃料電池。
【請求項10】
前記塗布ヘッドの少なくとも一つがスプレイノズルまたは微粒子発生装置であって、かつ積層し、電解質膜からガス拡散層に向かって電極の密度が段階的または連続的に傾斜していることを特徴とする請求項1乃至8の燃料電池の製造方法または燃料電池。
【請求項11】
前記電極には電解質固形分が含まれ、前記電極インクには電解質溶液が含まれ、電解質溶液固形分の比率が異なる電極インクと独立した塗布装置を用意し、または独立した電解質溶液塗布装置を設け、電解質膜に近い電極の電解質比率がガス拡散層に近い電極の電解質比率より多くすることを特徴とする請求項請求項8乃至10の燃料電池の製造方法または燃料電池。
【請求項12】
前記対象物が2次電池用集電体であってスラリーが2次電池電極用スラリーであって、2次電池の電極を形成することを特徴とする請求項1乃至7の2次電池の製造方法または2次電池。
【請求項13】
前記対象物が集電体であって2次電池用電極を形成するにあたり、集電体界面から遠くなるに従い電極密度を段階的または連続的に変化させ電極密度が傾斜していることを特徴とする請求項12の2次電池の製造方法または2次電池。
【請求項14】
前記対象物を集電体、電極層、固体電解質層から選択し、スラリーが電極用スラリーまたは固体電解質スラリーであることを特徴とする請求項1乃至7の全固体電池の製造方法または全固体電池。
【請求項15】
前記対象物が集電体、電極層、電解質層から少なくとも一つを選択し全固体電池の電極を形成するにあたり、少なくとも一つの活物質粒子からなるスラリーと、少なくとも一つの電解質粒子からなるスラリーを用意する工程と、それぞれ少なくとも一つの塗布ヘッドを選択し混合積層塗布する工程と、集電体から遠ざかるに従い、段階的または連続的に活物質粒子と電解質粒子の単位面積当たりまたは単位体積当たりの比率を変化させ段階的または連続的に比率が傾斜することを特徴とする請求項14の全固体電池の製造方法または全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布方法、燃料電池の製造方法または燃料電池、2次電池の製造方法または2次電池、全固体電池の製造方法または全固体電池に係る。
特に本発明の塗布する材料は液体であって、該液体には粒子や短繊維等を含有し一般的にはスラリーやディスパージョンとして表現される。本発明では粒子や短繊維などを含む流体をスラリーと定義する。スラリー等にバインダーや増粘剤は含まれても含まれなくても良い。また塗膜性能に悪影響を与える界面活性剤や分散剤は極力含まない方が良い。
メジアン径のD50が10マイクロメートルを超える粒子を含有する液体は粒子の比重が高いほど或いは凝集するほど沈降しやすい。ナノメートルオーダーの直径で、特に細い短繊維例えば単層カーボンナノチューブや繊維長が一般的にそれより長いカーボンナノファイバー等はそれらが膜厚方向、つまり縦方向に有効に対して、横方向に展開しその導電性に寄与するグラフェンやそれらの複合材料も溶媒や必要により若干のバインダー等を加えてスラリーにして均一に分散できる。しかし更に他の液体例えば活物質スラリー等に混合すると分散が均一でなかったり凝集しやすいなどのそれぞれ別の課題が発生するので解決する必要があった。
前者は樹脂分などのバインダーや増粘剤の含有量が少なくかつ粘度が例えば1000mPa・s以下、更には200mPa・s以下の場合は塗布装置などで固形粒子の沈降が著しく塗布した場合、経時的な品質不良の問題があった。
本発明は、少なくとも吐出時スラリーを低粘度にして塗布する方法に効果的であり、特に電池の電極形成に特徴を発揮でき更に燃料電池または燃料電池の製造方法、2次電池または2次電池の製造或いは全固体電池またはその製造に特徴を発揮できる。
燃料電池の電極では所望するマクロポアやメソポア必要によりマイクロポアを形成し、マイクロポア、メソポア、マクロポアなどを残存させることが重要である。また電極の表面積を広くして抵抗を下げることも重要である。
逆に全固体電池の電極や電解質層形成ではボイドは無い方が好ましかった。リチウムイオン2次電池の電極の活物質の充放電での性能向上のため集電体から離れるに従い電解質液に接する密度分布が傾斜の電極形成が求められているがポア(気泡空間)が微細な高密度から順に連続的に、あるいは段階的に所望する密度で形成する必要があった。
本発明では電極形成プロセスや全固体電池などの電解質形成プロセス、或いはスラリーなどの液体の塗布方法を限定するものでない。
本発明による塗布とは2流体スプレイ、スロットノズルスプレイ、圧縮気体アシストスロットノズル、スリットノズルスプレイなど特に限定しないが、液膜による塗布では主にエアレススプレイノズルやスリットノズルから比較的低圧例えば0.05乃至 0.7MPa程度の液圧でスプレイすることにより理想的な三角形や釣り鐘状の液膜パターンを形成できる。マイクロカーテンコートとは本発明者により発明された方法であって、広角スプレイパターンのエアレススプレイノズル(例えば米国ノードソン社製のクロスカットノズル)で液体などを0.05~0.7MPa程度の比較的低圧でスプレイし、霧になる前のマイクロ的液膜(マイクロカーテン)の部分を使用して被塗物とスプレイノズルを相対移動して塗布する方法であってオーバースプレイ粒子が発生がないので100パーセントの液体の塗着効率が期待できる。ノズルチップ先端から末広がりに液体が液膜で引き延ばされ最終的には三角形または釣り鐘状の液膜底辺両端から不安定な比較的長い液流や中央部でも大きな液滴になる。液膜部に圧縮気体を吹き付けて低液圧の圧縮気体アシストエアレススプレイとして応用できる。尚圧力が例えば3.5MPa・s以上の比較的高い液圧では上記液膜の三角形の液膜は小さい面積になり、液膜より下流は霧化しやすい。
【背景技術】
【0002】
機能性材料の対象物の塗布は薄膜が主流になってきている。
有機系太陽電池ではペロブスカイト太陽電池が有力でペロブスカイト系薬液をインクジェット法により300mm x 300mmの広い面積に薄膜で塗布するなどの試作がなされている。また燃料電池では高価な触媒量の低減の開発が進み、例えば白金等触媒量はカソード電極で平方センチメートル当たり0.3ミリグラム以下同じくアノードは0.05ミリグラム程度と極めて少ない量が求められている。触媒は白金あるいは白金/コバルト合金等の微粒子が通常カーボン粒子に担持される。或いはパラジウムをコアとし、白金をシェルとした白金の使用効率を向上させたコアシェル型の触媒も使用されている。白金触媒微粒子は数ナノメートルと小さいが比重は20以上もあるので、白金を担持するカーボン粒子もナノメートルのサイズの1次粒子で、電解質溶液も一般的に固形分は5乃至10%でかつトータル含有量も微量であるので上記の微量な固形分にするには塗布膜を極薄膜にする必要があった。あるいは固形分を5乃至10パーセント、更には0.5乃至3パーセントにさえする必要さえあった。その場合溶媒量が多いので、固形分の粒子径が小さくても前記のように比重が重くカーボンと電解質溶液で生じる凝集体の影響もあり沈殿させずに薄膜でコーティングするには難があった。
固形分が少なくタック性の少ない燃料電池電極は薄膜にするため2流体スプレイのエアスプレイ方式や超音波スプレイ方式が好んで採用されているがスプレイ粒子のほとんどがアルコール系溶剤や水のため付着力が悪く触媒粒子は高価なのに塗着効率は極めて悪かった。また、性能向上と低沸点有機溶剤蒸気での触媒発火のリスクを避けるため溶媒中の水の比率を50パーセント以上、更には80パーセント以上にする傾向さえあった。
また2次電池の活物質粒子や全固体電池の活物質粒子や電解質粒子更には導電助剤のカーボンなどの微粒子やカーボンナノチューブ特に単層カーボンナノチューブ(SWCNT)やカーボンナノファイバー(CNT)はフッ化ビニリデン(PVDF)などのバインダーやその溶媒例えばノルマルメチルピロリドン(NMP)などからなるスラリーと混合すると沸点が高すぎて乾燥時間が極めて長時間になり電極形成装置が巨大化していた。
【0003】
特許文献1は実装プリント基板の電子部品集積回路の結露によるショートを防止する目的で露出した金属ワイヤなどに絶縁樹脂溶液をエアレスノズルで低圧で液膜でスプレイし所望する箇所のみを被覆する方法を提案している。
一般的に実装基板の裏面の半田付け部は全面的に、基板表面のコネクターピンや放熱が必要な電子部品を除いて液膜で被覆して乾燥して乾燥皮膜を得ていた。
【0004】
しかしこの液膜を使用する方法は溶媒リッチの透明(クリヤー)樹脂溶液の塗布時のエアレスノズルによる低圧の液膜流量分布のばらつきを塗布直後の液体と対象物の表面張力や界面張力を利用してフローさせ、ウェットの塗布膜厚をほぼ均一にするアプリケーションである。
しかし液膜塗布に限らず2流体スプレイにおいてもオリジナルスラリーを溶媒リッチのスラリーにすると沈殿の大きな課題があるので循環回路や往復移動では所望する粘度にして沈殿のリスクを少なくし、少なくとも塗布ヘッド下流では塗布適正を向上させるため低粘度スラリーにする必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62-154795
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は少なくともノズルから吐出時、低粘度のスラリーを所望する膜厚で必要に応じて薄膜で幾重にも積層塗布することである。また低粘度であってもスラリーの沈殿を防止しながら塗着効率を100パーセントまたは限りなく100パーセントに近づけることである。またマスクなしで所望する四角形形状にパターンコートすることも目標とする。
そのため本発明では樹脂と溶媒からなる溶液や着色した塗料或いは接着剤でなく固形粒子と溶媒と必要により樹脂または樹脂溶液を加えた沈降しにくいスラリーにし、塗布時は低粘度のスラリーにしそれを良好にハンドリングし、例えばエアレススプレイノズルから比較的低圧でスプレイ時安定した良好なスラリー液膜を形成し対象物に塗布することも目標の一つである。
しかし1000mPa・s以上例えば3000乃至5000mPa・s程度あるいはそれ以上の高粘度のスラリーを薄膜で塗布することは難しかった。しかし200mPa・s以下例えば50mPa・s程度の低粘度のスラリーは沈降しやすいが、2流体スプレイやエアレススプレイノズル等での塗布適正は良かった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は高付加価値の塗布方法、燃料電池の製造方法または燃料電池、2次電池の製造方法または2次電池、次世代2次電池、特に全固体電池や全固体空気電池等の製造方法または次世代2次電池を提供することである。
本発明では比較的粘度の高いオリジナルスラリーに特に塗布直前で溶媒を混合し低粘度にしてスプレイする方法を2流体スプレイや液膜スプレイ、スロットノズル方式等に応用できる。またオリジナルスラリーにガスを加えてフォーム(泡)化すると溶媒を加え低粘度にする過程で比較的凝集力の高いバインダーも瞬時に溶解しやすくできるので効果的である。
本発明で例えば全固体電池の場合、少なくとも一つのオリジナルスラリーを比較的粘度を高くし、例えば正極または負極用活物質粒子と電解質用粒子または短繊維と必要によりバインダーを加えそれぞれを独立してスラリーにしそれぞれの装置で、下流で溶媒を加えて少なくとも一つを低粘度にし、所望する順番に積層塗布することができる。薄膜にしてできるだけ多層にすると理想的な混合塗布ができるので効果的である。あるいは必要により全部の粒子等をまたは必要によりそれ等を選択して混合してスラリーにして、薄膜で積層しても良い。本発明による流路内の高速とは0.3m/s.以上で例えば1.5m/s.でも良い。また溶媒とスラリーの合流後小型のスタティックミキサーやダイナミックミキサー等での混合や分散あるいは本発明者が過去より提案している衝突混合手段などを単独または組み合わせて設置しスラリーと溶媒の混合具合を促進させると短時間で所望する混合体ができるので尚良い。本発明では比較的高粘度あるいは高固形分のスラリー等を移動させて粒子等が沈殿しにくい状態にし、塗布装置の直前或いは塗布装置内、更には塗布ヘッド下流で溶媒と混合し、低粘度にして素早く対象物に塗布することができる。そのため低固形分スラリーの弱点である沈殿の課題を解決できるので特に薄膜塗布には好適である。
本発明の方法では二流体スプレイ以外に回転霧化や気体に二酸化炭素を選択し超臨界性流体にすることで容易に微粒子化できる。前記に二流体スプレイの一種の圧縮気体を利用するメルトブローン方式やエアアシストスロットノズルを含む二流体スプレイ全般、細く細長い溝から広幅で噴霧できるスリットスプレイノズルなど少なくとも一つを選択することで粒子化して或いはスロットノズル等で塗布できるので塗布装置の下流での品質向上につながる。特にパルス的スプレイでは液圧の波形管理がしやすく液圧落ち込みを大きくできて流量変化をチェックし易いので効果的である。更に市販の流路の流量チェックや塗布重量測定装置でのデーター確認を所望するタイミングで確認することができる。そのた例えば電極の細かい部位までそれぞれの材料の塗布重量を瞬時に管理できることになるので、高性能、高品質の電極等を形成することができる。また本発明では低粘度スラリーのニードルとシート間隙間の狭いギャップへの粒子詰まりをミリ秒単位のニードルの開閉で無くするためにまた対象物との密着性を良くするために2流体スプレイ等によるパルス的スプレイが好ましい。また本発明の方法でスプレイ粒子のスピードをより速くしインパクトを付加したパルス的スプレイで最初に塗布を行い密着性を上げ、次に本発明のエアレススプレイノズルの液膜により可能な限り多層積層またはスロットノズルによる組み合わせの塗布で行うことができる。また対象物は加熱して行った方が薄膜多層で行うので溶媒の揮発が促進され対象物上の中間層の塗膜の粒子の沈降も少ないので良い。
【0008】
本発明はスラリーを対象物に塗布装置で塗布する方法であって、不揮発分である少なくとも固形粒子からなる固形分と、揮発分である溶媒とを混合し高粘度のオリジナルスラリーにする工程と、該オリジナルスラリーを流路で下流へ圧送する工程と、独立した別流路で溶媒を圧送する工程と、前記オリジナルスラリーと前記溶媒を塗布装置の少なくとも塗布部である塗布ヘッド下流までの間に合流させ混合して低粘度スラリーにして前記対象物に塗布する工程とからなることを特徴とする塗布方法を提供する。
【0009】
本発明は前記オリジナルスラリーを循環流路で循環または少なくとも2つのタンク間の流路を往復移動し沈殿を防止する工程と、前記流路と接続された自動開閉機構を備えた前記塗布ヘッドの下流までの間または前記オリジナルスラリー流路を分岐した下流で、前記オリジナルスラリーと溶媒を合流させ低粘度にする工程と、前記低粘度スラリーを対象物に塗布ヘッドで塗布することを特徴とする塗布方法を提供する。
【0010】
本発明の前記オリジナルスラリーの不揮発分の比率は65重量パーセント以下であって、そのうち固形の粒子または粒子と短繊維の重量比率は55パーセント以下であって、バインダーは10重量パーセント以下であって、揮発分は35パーセント以上であって、前記オリジナルスラリーの粘度は3000mPa・s以下であることを特徴とする塗布方法を提供する。
【0011】
本発明の前記低粘度スラリーの粘度は200mPa・s以下であって、前記対象物は加熱してなることを特徴とする塗布方法を提供する。
【0012】
本発明の前記塗布装置はエアレススプレイノズル液膜塗布装置、圧縮気体アシストエアレススプレイノズル塗布装置、スリットノズル塗布装置、スロットノズル塗布装置、圧縮気体アシストスロットノズル塗布装置、2流体スプレイ塗布装置の少なくとも一つを選択し前記対象物に単層または積層塗布することを特徴とする塗布方法を提供する。
【0013】
前記オリジナルスラリーはバインダーを含み、溶媒は少なくとも2種類以上の溶媒からなり、少なくとも一つの溶媒を合流させ混合して低粘度スラリーにして塗布することを特徴とする塗布方法を提供する。
【0014】
本発明の前記塗布装置は圧縮気体アシストスロットノズル塗布装置または2流体スプレイ塗布装置であって圧縮気体の噴出流を前記オリジナルスラリーまたは低粘度スラリーに吹き付けるまでの間の圧縮気体に前記溶媒が含まれることを特徴とする塗布方法を提供する。
【0015】
本発明は前記対象物が燃料電池用電解質膜、ガス拡散層、転写フィルムの中から選択し、オリジナルスラリーは白金触媒を含む固形分5乃至25重量パーセントの電極用インクであって前記対象物に前記低粘度スラリーを塗布して膜電極複合体を形成することを特徴とする燃料電池の製造方法または燃料電池を提供する。
【0016】
本発明の前記燃料電池のオリジナルスラリーは50重量パーセント以上の水を含み、前記低粘度用スラリーの溶媒は75%以上のアルコール系溶媒であることを特徴とする燃料電池の製造方法または燃料電池を提供する。
【0017】
本発明の前記塗布ヘッドの少なくとも一つがスプレイノズルまたは微粒子発生装置であって、かつ積層し、電解質膜からガス拡散層に向かって電極の密度が段階的または連続的に傾斜していることを特徴とする燃料電池の製造方法または燃料電池を提供する。
【0018】
本発明の前記電極には電解質固形分が含まれ、前記電極インクには電解質溶液が含まれ、電解質溶液固形分の比率が異なる電極インクと独立した塗布装置を用意し、または独立した電解質溶液塗布装置を設け、電解質膜に近い電極の電解質比率がガス拡散層に近い電極の電解質比率より多くすることを特徴とする燃料電池の製造方法または燃料電池を提供する。
【0019】
本発明の前記対象物が2次電池用集電体であってスラリーが2次電池電極用スラリーであって、2次電池の電極を形成することを特徴とする2次電池の製造方法または2次電池を提供する。
【0020】
前記前記対象物が集電体であって2次電池用電極を形成するにあたり、集電体界面から遠くなるに従い電極密度を段階的または連続的に変化させ電極密度が傾斜していることを特徴とする2次電池の製造方法または2次電池を提供する。
【0021】
本発明は前記対象物を集電体、電極層、固体電解質層から選択し、スラリーが電極用スラリーまたは固体電解質スラリーであることを特徴とする全固体電池の製造方法または全固体電池を提供する。
【0022】
本発明は前記対象物が集電体、電極層、電解質層から少なくとも一つを選択し全固体電池の電極を形成するにあたり、少なくとも一つの活物質粒子からなるスラリーと、少なくとも一つの電解質粒子からなるスラリーを用意する工程と、それぞれ少なくとも一つの塗布ヘッドを選択し混合積層塗布する工程と、集電体から遠ざかるに従い、段階的または連続的に活物質粒子と電解質粒子の単位面積当たりまたは単位体積当たりの比率を変化させ段階的または連続的に比率が傾斜することを特徴とする全固体電池の製造方法または全固体電池を提供する。
【0023】
本発明では粒子や短繊維の数量、形状、種類、比重を問わない。またスラリーは一つでも複数でも良く、また塗布装置もスラリーが一つの場合は一つで良く複数でも良い。またスラリーやバインダー溶液あるいは電解質溶液など複数を独立して積層塗布する場合、塗布装置は複数になる。更にスプレイや本発明で表示していない例えば超音波スプレイや衝突微粒化等の粒子発生装置等による傾斜の密度変化は末広がりのスプレイ流の対象物との距離やパルス的スプレイサイクル、更には圧縮気体圧力を例えば0.05 乃至0.7MPa程度の範囲に調整することで容易に調整できる。また活物質粒子と電解質粒子の比率の変更も液圧や圧送する容積、更にはパルス的スプレイのパルスサイクル等を変えることで容易に調整でき傾斜塗布できる。また対象物の最初の層やそれに近い層をメソポアやマイクロポアを発生させやすい場合パルス的スプレイと距離の手動または自動調整することで調整が容易である。
【0024】
また本発明ではバインダーや溶媒の種類を問わない。燃料電池のアイオノマーなどの電解質溶液や2次電池の正極のフッ化ビニリデン(PVDF)や負極のスチレンブタジエンラバー(SBR)等のバインダー以外に例えば高沸点の増粘剤として用いられるグリセリン等を用いることができる。グリセリンは2プロパノールなどのアルコール系の低沸点溶媒で共沸効果が期待できる。また燃料電池溶媒のオリジナルインクの溶媒の50パーセント以上を水にすることができる。各国の消防法に対応して例えば80パーセント以上を水にすることができる。そして本発明では電極インクを塗布する排気環境が整ったブース内の塗布ヘッド等の下流までの間にアルコール系の有機溶剤を付加し電極インクを低粘度にして塗布することができる。もちろん水を付加したアルコール系溶媒でも良い。対象物である電解質膜を加熱例えば本発明者が過去から提唱する塗布面の反対側を加熱吸着すれば数秒以内の瞬時に前記有機溶剤やオリジナルスラリーに含まれる水分までも共沸現象で95パーセント以上を短時間で揮発させることができる。更に圧縮気体アシストや2流体スプレイなどは更に乾燥を促進できる。本発明では対象物やスラリーの加熱や真空下で施与または真空下に移動することによりそれらを促進させることができる。
【0025】
更に本発明では2次電池の種類を問わない。リチウムイオン2次電池で良い。ナトリウムイオン2次電池でも良い。
【0026】
また本発明の2次電池は次世代2次電池の全固体電池で良く、更には全固体空気電池で良い。
【0027】
また本発明では固体電解質粒子である硫化物系、酸化物系の種類を問わず、正極用または負極用活物質粒子の種類、形状を問わない。
【0028】
本発明では燃料電池の数ナノメートルの白金粒子等の触媒やコアシェル触媒粒子を担持するカーボンや多孔質カーボンはその表面のメソポアやマクロポアの中にも白金を担持し、理想的なオリジナル電極インクを塗布寸前まで維持できる。そのため電極インクの製造では経時的にアイオノマーの接触による被毒を少なくする構造にすることができる。本発明者により発明されたパルス的スプレイや、更にパルス的スプレイ流にスピードを付加してインパクトパルス法で薄膜で積層した電極にマイクロポア、メソポア、マクロポアを好適に形成でき界面の表面積を広くして抵抗を少なくし、特にカソードでは水の排出をスムーズにできる。更にインパクトパルス法では塗着効率を95パーセント以上まで高められるため高性能と高価な白金触媒の低減につながっていた。
しかしこの方法では生産性の課題と例えば長四角等のシャープなパターン形成に難があったが本発明では、マスクを不要とするエアレス液膜塗布装置、スロットノズル塗布装置等などと2流体によるインパクトパルスのそれぞれの長所だけを組み合わせて所望するパターン形成の薄膜積層もできるので課題を解決できることになる。
本発明によればこれらの課題をすべて解決できることになる。
【0029】
本発明では自動開閉バルブを備えた塗布ヘッドの下流の低粘度スラリーの流路である例えばノズル内等のキャビティーを極限まで少なくすることができる。そのため低粘度スラリーの沈殿防止を例えば水リッチの溶媒の場合は例えば超音波等の振動等で防止できる。また作業停止時は溶媒で低粘度スラリーを排出できる。
【0030】
本発明では複数種の固形粒子や短繊維等を混合して使用する例えば2次電池電極形成の場合、それらを一つのスラリーにして混合して集電体に塗布できる。また選択した粒子等を混合して複数のスラリーにして複数の塗布装置で交互に或いは所望する順番で積層できる。更には全ての固形粒子や単繊維ごとのスラリーにして所望する順番であるいは順不同で必要により薄膜で多層に混合しながら積層塗布できる。
この方法は2次電池に限らずLEDの蛍光体塗布や医薬品、食品、肥料などの分野多岐に応用できる。
また当然のことながら本発明は前記対象物を集電体、電極層、固体電解質層から選択し、電極用活物質や導電助剤、固体電解質粒子からなる混合した、またはそれぞれの電極用スラリーを塗布した全固体電池分野にも応用できる。
例えば2次電池の正極の製造方法によれば例えば三元系(NCM)の活物質と導電助材とバインダーのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とPVDFの親溶媒であるノルマルメチルピロリドン(NMP)とを混合してスラリーにして集電体のアルミニューム箔に塗布できるが、特に固形粒子の活物質が大きい場合、固形粒子の沈殿を少なくするため固形分を多くしと粘度を高くする必要があった。そのため特に正極では固形分を高くし粘度も高くしてスロットノズルなどで厚膜にすることが試みられていたが高固形分でも厚膜にすると乾燥時クラックが発生していた。本発明では溶媒の揮発を促進するため低粘度にする溶媒を沸点の低いPVDF等の貧溶媒のノルマルヘプタン等を加えて低粘度にすることができる。そうすることで可能な限り薄膜にして、また可能な限り対象物を加熱して溶媒をすばやく揮発させ薄膜積層にすることができる。
この方法は2流体スプレイにより貧溶媒と新溶媒を圧縮気体で潰しあいながら混合できるので好適である。
しかし粘度を例えば200mPa・s以下と低くすると例えば平均粒子径が大きい正極のスラリーの固形粒子は沈殿していた。本発明ではそのため塗布ヘッド付近までは高粘度にして循環流路等を移動して沈殿を防止しノズル内または下流でさえまたはその上流で溶媒を付加して粘度を下げることができる。更に本発明者が発明した特開昭63-104679を流路内で応用することで流路をシンプルに小型化できるので装置をコンパクトにできる。
低粘度にした箇所以降では可能な限り流路の体積を小さくして粘度を下げて例えばスプレイすると良い。
【0031】
また本発明では前記2次電池の電極形成の代わりに、全固体電池の電解質粒子を付加した電極形成や、電解質層形成でも同じように前記対象物を集電体、電極層、固体電解質層から選択し、固体電解質用活物質や導電助剤、固体電解質粒子からなる電極用スラリーを塗布した全固体電池分野にも応用できる。勿論のこと活物質、導電助剤、固体電解質粒子は独立したスラリーにして必要により薄膜で所望する順番で積層塗布できるし、必要によりそれらを一つの塗布ヘッド内で衝突混合などして塗布することもできる。
尚本発明全体に言えることであるが溶媒との混合以降の低粘度領域のノズルを含む部位は、ライン停止時に溶媒で低粘度のスラリーを押し出し稼働直前に低粘度スラリーに置換することができる。
【0032】
更に本発明では例えば活物質粒子などの単種あるいは複数種の粒子や導電助剤の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)やカーボンナノファイバー(CNF)、グラフェンなどの短繊維や微粒子カーボンを混合した単一スラリーで積層塗布することもできるが、それに限定するものでなく種類の異なる複数のスラリーや複数の導電助剤のディスパージョンなどを作成しそれに対応した複数の塗布装置を使用して所望する分布の電極形成ができる。本発明では活物質からなるスラリーは例えば液膜塗布やスロットノズル塗布本発明の方法で主に行い、微量な導電助剤などのディスパージョンやスラリー等は元来低粘度で単体での沈殿のリスクも少ないのでその状態で2流体スプレイ特にインパクトを持ったパルス的スプレイが行える。更に超音波スプレイや超微粒発生装置による塗布更にはそれらの微粒子を静電気的に帯電して塗布しても良い。
【0033】
また特に導電助剤のSWCNTやCNF等の短繊維は電極の膜の厚み方向に短繊維が植毛のように立たせる(垂直方向に立たせて垂直方向の電子などの移動をサポートする)ことが効果的なので、導電助剤に関しては、2流体スプレイ特にパルス的スプレイ方法などを応用して、単独のスラリーまたはディスパージョンにして例えば植毛のように静電気を利用して、或いはエレクトロスピニングなどの装置を使用して目的を達成できる。電極膜の横方向の展開にはグラフェン単独或いはSWCNT等の組み合わせが効果的である。特に本発明者が提唱する独立した種類の異なるスラリーやディスパージョン等を独立した装置で薄膜あるいは微量に交互に幾重にも積層することが肝要である。
【0034】
さらに、本発明では複数のスラリーの場合、低粘度にした場合沈殿しやすいスラリーのみを本発明を適用したらよく、沈殿しにくい前記単独のSWCNTなどのディスパージョンは本発明による流路内での溶媒で希釈しても良く希釈しなくても良い。
【0035】
また本発明では対象物を加熱することができる。加熱温度はバインダーの粘度を急激に低下させ、溶媒を蒸発させることができるので30乃至200℃、更に好まくは薄膜塗布で溶媒を突沸させずに蒸発するには50乃至150℃が好ましい。更に対象物を吸着できる例えば加熱吸着ドラム等は気体の断熱層が無く加熱できるので、溶媒の気化熱による温度低下も防止でき溶媒の蒸発を促進できる。溶媒を95%以上蒸発させるまでの時間は5秒以内が良く、より理想的には2秒以内である。
【0036】
本発明では対象物に塗布する際、液膜で行う場合20ミリメートル以内、更には12ミリメートル程度以内に近づけることにより、液膜が保証される。ノズルと対象物の距離を近づけると液膜の幅も狭くなりストライプの幅も狭くなることになる。
【発明の効果】
【0037】
上記のように本発明によれば性能の高い塗布方法、燃料電池の製造方法または燃料電池、2次電池の製造方法または2次電池、全固体電池の製造方法または全固体電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施の形態に係る循環しているオリジナルスラリー流路が分岐されその下流の塗布ヘッドの片方につながり逆の方から溶媒流路が塗布ヘッドにつながる略断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係るオリジナル循環回路から分岐した流路の下流の自動開閉バルブと溶媒の循環回路を分岐した流路の下流の自動開閉バルブからのオリジナルスラリーと溶媒が合流しさらに下流に進む略断面図である。
図3】二つの容器間の流路を分岐し容器間を往復移動する分岐されたオリジナルスラリーとプレッシャータンクの溶媒を合流させた略断面図である。
図4図4aは、スロットノズルの略断面図である。 図4bは、 図4aのスロットノズルの下部の略図である。分布が経時的にフローした膜の略断面図である。 図4cは、 スロットノズル用シムの略図である。
図5】圧縮気体アシストスロットノズルの略断面図である。
図6】マイクロカーテン(エアレスノズルによる液膜)部の略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は発明の理解を容易にするための一例にすぎない。
【0040】
図面は本発明の好適な実施の形態を概略的に示している。
【0041】
図1においてタンク2に貯蔵されたオリジナルスラリー1は配管4を経由してポンプ5に吸引され、ヒーター6、フィルター7、スラリー液圧調圧レギュレーター8、配管(ホース)9、10を経由して循環バルブ110を更に経由してポンプに再度吸引される。更に配管9と10間は分岐され配管100を経由して塗布ヘッド101に移動する。配管100は塗布ヘッド101内流路でも良い。一方加圧タンク106内の溶媒は配管103を経由して塗布ヘッド101に移動しオリジナルスラリーと合流し混合されてノズル102からと吐出またはスプレイされる。タンク2内のオリジナルスラリーは撹拌装置3で撹拌できるし、循環ポンプで吸引したオリジナルスラリーは循環回路を経由し塗布ヘッド101で消費されない分は再びポンプに吸引され、塗布ヘッドで消費された分のみのオリジナルスラリーのみがタンク2より供給される。特にポンプ5がエアピストンポンプなどのバランスフィールド式ポンプの場合その動作が瞬間的に行われる。
尚上記配管はフレキシブルなパイプやホースでよくブロック内等に加工された流路でも良い。
【0042】
図2においてオリジナルスラリーの循環回路で液体温度を加温しない場合はヒーターを付属する必要がない。タンク22のオリジナルスラリー21は配管24を経由してポンプ25に吸引され圧送され、液圧レギュレーター28を経由し更に配管20、29循環バルブ(循環流路)210を経由し再びポンプ25に吸引され循環回路を形成する。循環回路の配管29と20の間で分岐された流路200、スラリー自動開閉バルブ201の下流の流路でオリジナルスラリーは溶媒流路から移動する溶媒と合流し、例えば衝突混合して隘路215を経由してノズルから吐出される。ノズルが2流体スプレイノズル、エアレススプレイノズル等の場合スプレイや液膜で対象物に塗布できるし、スロットノズルの場合は電極幅に合わせたストライプコートや全面コートあるいは所望するパターンコート等が選択できる。溶媒の供給はプレッシャータンクでも良いが大量に必要な場合はタンク206の溶媒205は配管221を経由してポンプ220で吸引され液圧レギュレーター223で調圧され配管224を通ってタンク206に戻し循環させる。
循環の目的は循環回路内等に図示しないフィルターを設け異物を除去できる。オリジナルスラリー回路にも同じく図示しないフィルターを設置することができる。溶媒は循環回路を分岐した配管225、自動開閉バルブ212、流路214を経由してオリジナルスラリーと例えば衝突混合などさせ合流させて更に下流に移動する。オリジナルスラリーも溶媒も合流衝突時同じ圧力にするように液圧レギュレーターは調整した方が望ましいし、オリジナルスラリーと溶媒は例えば電動容積ポンプで所望する比率で強制的に押し出し合流させることができる。
【0043】
図3は二つの容器32、33のオリジナルスラリー31,31‘は配管350、351を経由して容器間を往復移動する。配管350と351間は分岐され流路352はスラリー自動開閉バルブ311を経由して流路313につながり溶剤供給の自動開閉バルブ312経由の流路314と合流する。合流は流路を隘路にして隘路同士での正面衝突混合が望ましい。またノズル302の出口口径や流路315の内径や断面積より流路(隘路)313,314の内径や断面積が小であると衝突エネルギーが高くなり、小型でありながら思想的な混合ができる。もちろんのこと流路315の代わりに小型のスタティックミキサー等の混合装置を設置して混合できる。
溶剤の加圧やオリジナルスラリーの加圧はタンクを加圧タンクにして加圧は圧縮気体による加圧で良い。安価なコンプレッサーエアをレギュレーター364,365,307で調圧することで安価なシステムとして使用することができる。
上記2つのタンクの往復移動は、2つの容器の内1つは加圧容タンクにし、片方の容器は解放容器にしてオリジナルスラリーを解放容器へ移動し解放容器のスラリーをポンプで圧力容器に移送して循環回路を形成することができる。
ポンプはギヤ―ポンプ、トロコイドポンプ、プランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ、スネークポンプなど特に限定するものでなく安価で小型のものが良い。
加圧タンクの圧力より高い圧力でポンプから出力するだけで良いのでタンクの上部に駆動部を設置し下部はタンク内に設置しても良い。そのため液漏れしたらタンクに流すだけの構造で良いので脈動しても問題ないので例えばエア駆動の安価なプランジャーポンプ更にはシングルピストンポンプで良い。
【0044】
図4はスロットノズルの略断面図である。オリジナルスラリーは循環回路や2つのタンク間を移動する配管43、44に接続されたスラリー自動開閉バルブ42を経由して流路45、46でスロットノズル内部に侵入する。スロットノズルは通常上側ブロック48と下側ブロック49とそれらの間にパターン幅と流路を形成するシム410が設置されオリジナルスラリーの流路となる。スロットノズル塗布幅は通常10乃至2500mm程度に選択でき、スロットノズルは塗布幅方向の長さの所望する長さのシム開口部に両端未塗布部のシムを上下のブロックで挟み込んで製作される。もちろんのこと一般のTダイのごとくブロック接液部を末広がりに加工して塗布幅の開口部を形成して製作することもできる。例えば1200mm幅のRoll to Rollで高速例えば60m/分のスピードで搬送されるフィルム基材などの対象物でも問題なく連続塗布は勿論のこと前記自動開閉バルブをサックバック式にすることで高速で間欠パターンコートを行うこともできる。
流路46の延長上にある液体溜溝47は塗布幅方向全部をカバーする長さに加工される。通常液体溜溝47に通じる流路46は前記液体溜溝47の中央部付近に加工されスロットノズルの幅方向の圧力分布をシム410厚みで均一にする。そのため例えば長さが1000mmの幅の液体溜溝で1000mm幅の塗布を行う場合は問題ないが、例えば500mmの長さに兼用塗布するときは両サイドの250mm程度分づつ溜溝部に比較的柔らかい耐薬品性の例えばフッ素系棒等の詰め物を行いエア溜りを無くすることで高速の間欠パターン塗布ができる。またスラリーの沈殿が上記溜溝部に発生すると致命的な分布不良が懸念されるためそのようなスラリーを使用する場合は溜溝部の両端に前記流路46等を設け吐出が行われるときは溝部のオリジナルスラリーが確実に移動できるようにすることでオリジナルスラリーの移動しにくい部分での沈殿を防止できる。
更にスロットノズルのシムによるオリジナルスラリー流路の下流で溶媒を合流する溜溝407を設けオリジナルスラリーと溶媒とを合流させ混合し低粘度にして塗布できる。
塗布が停止時には前記溶媒溜溝下流は低粘度スラリーを排出
することにより沈殿のリスクを無視できる。溶媒は通常溶媒が加圧された配管401、溶媒自動開閉バルブ402、流路403を経由してスロットノズルの幅方向に展開する溶媒溜溝に到達する。溶媒溜溝はスロットノズル上側ブロックに加工した方がオリジナルスラリーと混合された低粘度スラリーの粒子等の溜溝部での沈殿が防止できるので良い。
図4b のスロットノズル下側ブロック49のオリジナルスラリー流路 46からオリジナルスラリー用溜溝部47が左右に展開されている。下側ブロック49の上面にシム410が設置され図示しない上側ブロックでシム410を挟み込むことにより流路と塗布開口部が形成される。
オリジナルスラリーの流路46は上流でオリジナルスラリーの自動開閉バルブ42につながり、前記バルブはオリジナルスラリーの配管43、44で接続されオリジナルスラリーは循環又は往復移動しスロットノズル内部に移動する。
またオリジナルスラリーの溜部47の両端部に流路を設け両側から押し出す構造にすることで溜溝部47でのオリジナルスラリーの滞留と沈殿を防止できる。
図4c のシム410は所望する開口部をまたは短冊状に細かい開口部が形成されたシム410‘形成ができるように加工できる。そのため下流で開口部通りのストライプコートができるし、ストライプノズルの最下流部付近の開口部は短冊を切り取り開口部の全面にわたり塗布することもできる。
オリジナルスラリー、低粘度スラリーにかかわらずスロットノズルの幅方向の流量分布をより均一にするには短冊状のシムにすることは効果的である。また短冊状のシムによるストライプ流を合流する場合、ストライプ流の両端部と中央部の流れは層流と乱流とに分かれ目視でもスラリーの色の違いがわかるほどの分散状態なのでストライプ幅とピッチは限りなく小さくすることでオリジナルスラリーも溶媒と混合した低粘度スラリーも分散を均一にできる。
また溶媒との混合をよりよくするため前記シムや上下ブロックは小刻みな振動例えば超音波振動させることで溶媒との混合を特に出口開口部で促進できる。
【0045】
図5図4のスロットノズルの塗布開口部から吐出されるオリジナルスラリーの液膜に圧縮気体アシスト流を片側または両側から吹き付ける方法であって、圧縮気体はレギュレーター514、515、圧縮気体用開閉バルブ512、513を経由し圧縮気体流路510、512からスロットノズル開口部を経て吐出される低粘度スラリーに向け噴出し圧縮気体の圧力により液膜や液滴或いは微粒子として図示していない対象物に塗布される。オリジナルスラリーも低粘度スラリーもシムを細かく短冊状にすることにより短冊状の細い多くの開口部に分配され下流へ流出する幅方事項の流量分布を均一にできる。通常の使い方のスロットノズル塗布では短冊状のシムを使用すると開口部の下流は対象物上に開口だけの数の多くのストライプ状にコートすることができる。この構造を利用し更に開口幅の狭い多くの開口を設けた短冊状にすることで例えば開口幅が1mm ピッチが 5mm シム厚みを0.15mmにすることでスロットノズル開口部の吐出流は細く分断されているので圧縮気体で低粘度スラリーを粒子化するには好適である。シムの厚みは0.05乃至 1mm程度が一般的であるが限定するものでなく、上側ブロックと短冊状シムと下側ブロックで形成される各部位の流路(開口)形状、開口部のピッチは限定するものでなくそれぞれの目的に対応して製作すればよい。さらにスラリーの粘度に関係なくスロットノズル内部構造全般に短冊状シムはスラリー分散全般に効果的である。またアシスト圧縮気体流に溶媒を混入させるまたはノズル開口部付近で溶媒を合流させる、またはその併用でスラリーに限らずあらゆる固形分を含む液体に効果的である。特に2次電池電極スラリーに貧溶媒であるノルマルヘプタンをノズル開口部付近で必要により圧縮気体に混入させることで酢プレイ適性を向上させNMP等の高沸点溶媒の共沸を期待できる。
【0046】
図6においてオリジナルスラリーは配管63から塗布ヘッド62を経由して配管64を経由して循環または移動する。自動開閉機構を備える塗布ヘッドの下流610に、溶媒配管601、溶媒自動開閉バルブ配管又は流路603を経由して溶媒がオリジナルスラリーに合流し混合してオリジナルスラリーは低粘度になりエアレススプレイノズル611からスプレイされる。オリジナルスラリーも溶媒も低圧例えば0.05乃至 0.7MPa程度にすることで液膜を形成し液膜で図示していない対象物にノズルと対象物は相対移動し塗布される。溶媒の合流混合はノズル内でも良い。またエアレスノズルは2流体スプレイノズルで良く、溶媒の合流はスプレイノズル内またはノズル開口部またはその延長線上までの間でも良い。例えば2重パイプの内側流路からオリジナルスラリーを、外側流路から溶媒を吐出しまたはその逆の構造にして、圧縮気体で圧し潰しながらスプレイすることで粘度の高いオリジナルスラリーでもスプレイ粒子にする瞬間、粘度を低くできるので良好にスプレイできる。更に溶媒開口部の溶媒でオリジナルスラリー開口部を潤すことでオリジナルスラリー開口部の乾燥を防止でき塗布量を安定的にできるメリットもある。
2重パイプは3重パイプでもそれ以上例えば5重パイプや流路との組み合わせでも良い。溶媒は真ん中と3重目で、オリジナルスラリーは2重目にするとスプレイ適性は向上し微粒化できる。更に真ん中の流路または3重目の流路の溶媒をオリジナルスラリー流路まで潤すことでノズル開口の乾燥を防ぐことができる。また単層パイプや流路をまとめて所望する数のパイプや流路にオリジナルスラリーをそれ以外のパイプや流路を溶媒用として使用できる。複数の液体を合流できる本構造は更にはオリジナルスラリーと溶媒との組み合わせだけでなく他の2種類以上の液体の合流混合の2流体スプレイとして応用できる。本合流混合方式は例えば2液反応性液体に応用できるし、電池の活物質スラリーと導電助剤スラリー、更には全固体電池の活物質スラリーと固体電解質スラリー、燃料電池の白金等の触媒インクとアイオノマーであるナフィオン溶液の組み合わせが可能になる。特に電池や燃料電池は独立した複数のスラリーや溶液等での組み合わせによる比率調整やそれぞれの単独や組み合わせによる薄膜積層塗布として応用できる。また更に本発明の単独で溶媒を合流させる方法は低粘度にしてスプレイ適性を向上させるだけでなく合流より下流の流路の2液反応性液体や沈殿しやすい低粘度スラリーを排出できるので更に効果的である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば沈降しにくいオリジナルスラリーを循環や移動させ必要により配管内や流路等の循環スピード等を速くして(例えば秒速0.3m以上)更に沈殿しにくくし、かつできるだけ短時間でせん断応力による粘度の均一化を図り、下流でより好ましくは塗布ヘッド内、更にはその下流で溶媒と合流混合して、低粘度スラリーにして塗布適正を向上させることである。かつ必要によりノズルからの塗布停止時は溶媒合流より更に下流の流路の低粘度スラリーは溶媒で排出して低粘度スラリーの沈殿を防止して塗布の作業性を向上させることである。
本発明では以上のことからスラリーの液膜塗布、2流体スプレイ塗布、スロットノズル塗布、圧縮気体アシストスロットノズル等による薄膜塗布も薄膜積層塗布も容易にできる。
【符号の説明】
【0048】
1,21,301,301‘ オリジナルスラリー
2,22,32,33 スラリータンク
3 撹拌装置
4,9,10,20,29, スラリー配管
43,44,53,54, スラリー配管
63,64,350,351 スラリー配管
45,46,55,56,213,313 スラリー流路
5,25 スラリーポンプ
6 ヒータ―
7 フィルター
8,28 スラリーレギュレーター
40 スロットノズル
42,52,211,311 スラリー自動開閉バルブ
47,57 スラリー溜溝
48 ノズル上側ブロック
49 ノズル下側ブロック
62,101 塗布ヘッド(塗布装置)
102,202,302,611 ノズル
103,221,222,224 溶媒配管
303,401,601 溶媒配管
105,205,305 溶媒
106,206,306 溶媒タンク
107,307,365,364 気体レギュレーター
514,515 気体レギュレーター
108,308,361 圧縮気体配管
212,312,402,502 溶媒自動開閉バルブ
214,314,403,503,603 溶媒流路
215,315 合流流路
220 溶媒ポンプ
223 溶媒レギュレーター
410,410’,510 シム
511,511’ 圧縮気体流路
520 噴出流
612 液膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6