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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063974
(43)【公開日】2022-04-25
(54)【発明の名称】屋上防水構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 5/14 20060101AFI20220418BHJP
【FI】
E04D5/14 J
E04D5/14 V
E04D5/14 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172423
(22)【出願日】2020-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000178619
【氏名又は名称】アーキヤマデ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大西 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小畑 治生
(72)【発明者】
【氏名】中島 宏
(57)【要約】
【課題】施工コストの抑制と長期に亘る防水性の保持との両立。
【解決手段】施工対象となる防水下地1に敷設された防水シート3,4が、点状に配置された多数のシート固定具6,8によって防水下地1に点状に固定された屋上防水構造。防水下地1における外周領域Aに設けられた第一防水部と、外周領域Aよりも内側の内周領域Bに設けられた第二防水部と、が備えられている。第一防水部においては、シート固定具8によって防水シート3,4を上側から押さえつけた状態でシート固定具8が防水下地1に固定され、かつ、シート固定具8と防水シート3,4のうちのシート固定具8の外周に位置する周囲部分とを上側から覆う状態で、増貼り用シート9が周囲部分に固定されている。第二防水部においては、シート固定具6が防水下地1に固定された状態で防水シート4がシート固定具6の上側に敷設されてシート固定具6に固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工対象となる防水下地に敷設された防水シートが、点状に配置された多数のシート固定具によって前記防水下地に点状に固定された屋上防水構造であって、
前記防水下地における外周領域に設けられた第一防水部と、
前記防水下地における前記外周領域よりも内側の内周領域に設けられた第二防水部と、が備えられ、
前記第一防水部においては、前記シート固定具によって前記防水シートを上側から押さえつけた状態で前記シート固定具が前記防水下地に固定され、かつ、前記シート固定具と前記防水シートのうちの前記シート固定具の外周に位置する周囲部分とを上側から覆う状態で、増貼り用シートが前記周囲部分に固定され、
前記第二防水部においては、前記シート固定具が前記防水下地に固定された状態で前記防水シートが前記シート固定具の上側に敷設されて前記シート固定具に固定されている屋上防水構造。
【請求項2】
全ての前記シート固定具は、同一形状を有する固定金具である請求項1に記載の屋上防水構造。
【請求項3】
前記シート固定具は、前記第一防水部における前記シート固定具の配置間隔が前記第二防水部における前記シート固定具の配置間隔以上となるように配置されている請求項1または2に記載の屋上防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示された屋上防水構造では、防水シートが風によって出来るだけバタつかないように、防水下地(文献では「屋根下地」)に防水シートが点状に固定されている。防水下地に風圧が作用する際に、一般的に風圧は、防水下地の内周領域(文献では「他部」)よりも、防水下地の外周領域(文献では「隅部」)に強く作用する。このため、外周領域で防水シートが風圧に耐えられるように、防水下地の外周領域(文献では「隅部」)における点状の固定箇所は、防水下地の内周領域(文献では「他部」)における点状の固定箇所よりも蜜に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-077505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の気候変動等の要因によって、特に外周領域では、従来よりも強固に防水シートを固定可能な構造が要求されている。外周領域では内周領域よりも風が強く作用しがちであるため、外周領域に敷設された防水シートは内周領域に敷設された防水シートよりも風でバタつき易い。防水シートが風でバタつくと、防水シートが波打ちながら上方へ膨れ上がるため、防水シートのうち点状の固定箇所の周囲の領域が頻繁に折れ曲がり、この領域に応力が集中する虞がある。このため、外周領域に敷設された防水シートが頻繁に強風を受けると、防水シートのうち当該折れ曲がり領域で亀裂が発生し、防水シートが当該折れ曲がり領域で破断する虞がある。
【0005】
このような不都合を回避する手法として、外周領域に敷設される防水シートを防水下地に全面接着させる構造が考えられる。他にも、外周領域における防水シートの点状の固定箇所を従来よりも増やして更に蜜に配置する構造が考えられる。しかし、これらの構造は、建材コストの増大、施工の煩雑化、施工不良のリスクの増大、という問題が生じる。
【0006】
本発明は、施工コストの抑制と長期に亘る防水性の保持とが両立する屋上防水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、施工対象となる防水下地に敷設された防水シートが、点状に配置された多数のシート固定具によって前記防水下地に点状に固定された屋上防水構造であって、前記防水下地における外周領域に設けられた第一防水部と、前記防水下地における前記外周領域よりも内側の内周領域に設けられた第二防水部と、が備えられ、前記第一防水部においては、前記シート固定具によって前記防水シートを上側から押さえつけた状態で前記シート固定具が前記防水下地に固定され、かつ、前記シート固定具と前記防水シートのうちの前記シート固定具の外周に位置する周囲部分とを上側から覆う状態で、増貼り用シートが前記周囲部分に固定され、前記第二防水部においては、前記シート固定具が前記防水下地に固定された状態で前記防水シートが前記シート固定具の上側に敷設されて前記シート固定具に固定されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によると、特に風圧が強く作用しがちな外周領域と、外周領域よりも風圧が弱くなりがちな内周領域と、で防水シートの固定構造が異なる。
【0009】
本発明の第一防水部では、シート固定具が防水シートに対して上方に位置するため、シート固定具が防水シートを上から押さえ付ける構成が可能となる。また、本発明の第一防水部では、増貼り防水シートがシート固定具とその周辺領域に対して上方から覆い被さるため、防水シートのうちシート固定具の固定される部分に欠損が生じても、この部分の防水性が増貼り防水シートによってしっかりと保持される。加えて、防水シートと増貼り防水シートとがシート固定具の周辺領域で接着され、防水シートと増貼り防水シートとの接着部分が肉厚な一体物として構成される。このため、外周領域に敷設された防水シートが強風を受けてバタつく場合であっても、シート固定具の周辺領域で防水シートと増貼り防水シートとの接着部分が弾性変形しながらも、大きく折れ曲がることはない。換言すると、シート固定具の周辺領域で防水シートと増貼り防水シートとが接着して肉厚な一体物として構成されることによって、防水シートと増貼り防水シートとが接着しない構成と比較して、折れ曲がりの度合いが小さくなって、防水シートのうちシート固定具の周辺領域に掛かる応力が分散される。これにより、外周領域に敷設された防水シートが風でバタつく場合であっても、防水シートが破断する虞は大きく軽減される。
【0010】
一方、内周領域に作用する風圧は、外周領域に作用する風圧よりも弱くなりがちであって、内周領域に敷設された防水シートは外周領域に敷設された防水シートと比較して風でバタつき難い。本発明の第二防水部では、防水シートが複数のシート固定具の上方に位置する状態で複数のシート固定具によって固定されるため、上述の第一防水部と比較して、施工性が良く、安価な固定構造とすることが可能である。
【0011】
このように、本発明であれば、施工コストの抑制と長期に亘る防水性の保持とが両立する屋上防水構造が実現される。
【0012】
本発明において、全ての前記シート固定具は、同一形状を有する固定金具であると好適である。
【0013】
本構成であれば、複数のシート固定具が各別の形状を有する構成と比較して、建材コスト等が抑制される。
【0014】
本発明において、前記シート固定具は、前記第一防水部における前記シート固定具の配置間隔が前記第二防水部における前記シート固定具の配置間隔以上となるように配置されていると好適である。
【0015】
本構成によって、外周領域におけるシート固定具の数を出来るだけ少なくでき、施工コストが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】防水シートが敷設された陸屋根を示す平面図である。
図2】外周領域のうち、パラペット部と隣接する入隅部分における防水シートの固定構造を示す図である。
図3】第一防水部を示す図である。
図4】第二防水部を示す図である。
図5】外周領域において防水シートが第二防水部の構成によって防水下地に固定されている場合を仮定して、防水シートのバタつきを示す図である。
図6】外周領域において防水シートが第一防水部の構成によって防水下地に固定されている状態における防水シートのバタつきを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔防水シートの固定構造について〕
図1に、例えば、施工対象となるコンクリート製の陸屋根が示されている。本実施形態では、陸屋根に、水勾配を有する床部1と、床部1よりも外周側のパラペット部2と、が備えられている。パラペット部2は、陸屋根の四辺に沿って備えられ、平面視において陸屋根の外周部分の全周に亘る。パラペット部2によって囲まれた部分が床部1である。パラペット部2の上下位置は床部1の上下位置よりも高く位置する。床部1は、本発明の『防水下地』である。
【0018】
床部1のうち、四辺の縁部分の位置する側の領域が外周領域Aであって、外周領域Aよりも内側の領域が内周領域Bである。図1では、外周領域Aと内周領域Bとの境界線Cが二点鎖線で示され、境界線Cよりも外側の領域が外周領域Aであって、境界線Cよりも内側の領域が内周領域Bである。床部1の上に防水シート3,4が敷設されている。防水シート3,4は、長尺状のシートである。外周領域Aに防水シート3及び防水シート4が敷設され、内周領域Bに防水シート4が敷設される。防水シート3及び防水シート4の夫々は同質の材料であって、例えば塩化ビニル製である。
【0019】
本実施形態では、防水シート3は床部1の四辺ごとに一枚ずつ敷設されている。作業者は、防水シート3の長手方向が床部1の外周形状に沿う状態で防水シート3を敷設する。作業者は、防水シート4の長手方向が床部1の水勾配の方向に沿う状態で、防水シート3が敷設された領域よりも内側の領域に防水シート4を複数列、並列敷設する。隣接する防水シート4の夫々の短手方向の縁部は、例えば熱風機や溶接機によって相互に融着しても良いし、溶着剤(例えば有機溶剤等)によって相互に溶着しても良いし、接着剤(例えばプライマー等)によって相互に接着しても良い。
【0020】
図1に示されるように、防水シート3と防水シート4との夫々が重複する部分は、防水シート3と防水シート4との接合部5である。作業者は、防水シート4の端部が防水シート3に重複するように、防水シート4と防水シート3とを重ね合わせる。接合部5では、防水シート3と防水シート4との夫々が相互に接着する。防水シート3と防水シート4との夫々の重ね合わせ部分は、例えば熱風機や溶接機によって相互に融着しても良いし、溶着剤によって相互に溶着しても良いし、接着剤によって相互に接着しても良い。
【0021】
図1に示されるように、外周領域Aに敷設された防水シート3及び防水シート4は複数の金属製の固定金具8によって点状に固定され、内周領域Bに敷設された防水シート4は複数の金属製の固定金具6によって点状に固定されている。固定金具6,8は、本発明の『シート固定具』であって、床部1に点状に配置されている。また、複数の固定金具6及び複数の固定金具8は、本発明の『複数のシート固定具』である。即ち、施工対象となる床部1に敷設された防水シート3,4が、点状に配置された多数の固定金具6,8によって床部1に点状に固定されている。本実施形態では、外周領域Aにおいて固定金具8が2周分に亘って床部1に固定されている。
【0022】
固定金具6,8の夫々の上面部は略円盤状に形成されている。また、全ての固定金具6,8は同一形状を有する。床部1に、ビス6a,8aを挿入するための孔部1hが等間隔で穿孔されている。このことから、外周領域Aにおける複数の固定金具8の配置間隔が、内周領域Bにおける複数の固定金具6の配置間隔と同じとなるように、複数の固定金具6,8が配置されている。そして、固定金具6はビス6aによって床部1に固定され、固定金具8はビス8aによって床部1に固定されている。
【0023】
床部1における外周領域Aのうち、パラペット部2と隣接する入隅部分は、特に風の影響を受け易い部分である。また、当該入隅部分は、壁面部2aが立ち上がる領域の近傍に位置するため、施工性が悪くなり易い箇所でもある。このため、当該入隅部分では、時間の経過とともに防水シート3が浮き上がり易くなり、防水シート3の床部1に対する防水性が低下する虞がある。
【0024】
このような不都合を回避するため、図2に示されるように、床部1における外周領域Aのうち、パラペット部2と隣接する入隅部分に、長尺状の固定金具10が備えられる。固定金具10は本発明の『シート固定具』である。図2に示される例では、パラペット部2に防水シート7が敷設され、防水シート7は、床部1と、パラペット部2の壁面部2aと、の間で折り返し、防水シート7の下端部は防水シート3の上に重なり合う。なお、防水シート7は壁面部2aに対してプライマー等の接着剤によって接着するように施工されている。
【0025】
平面視において固定金具10の長手方向はパラペット部2に沿って(床部1の一辺に沿って)延びる。固定金具10は、外周領域Aのうちのパラペット部2と隣接する外周縁の入隅部分に、ビス10aによって固定されている。これにより、固定金具10は床部1に強固に固定され、床部1と固定金具10とが一体的な防水下地を構成する。作業者は、固定金具10の上に防水シート3が位置する状態で、床部1の外周形状に沿ってロール状の防水シート3を展開する。そして作業者は、誘導加熱装置(不図示)を用いて、防水シート3のうち、パラペット部2の位置する側の縁部分を、防水シート3の長手方向両端に亘って固定金具10に融着させる。また、作業者は、防水シート3のうち、固定金具10と融着する部分よりも内周側の部分を、上述の第一防水部で床部1に固定する。
【0026】
このように、作業者は、防水シート3を固定金具10に熱で融着させ、かつ、上述の第一防水部で防水シート3を床部1に固定しても良い。固定金具10は床部1にビス10aで固定されている。その結果、当該入隅部分に風が強く作用する場合であっても、防水シート3は固定金具10から剥がれ難く、防水シート3と防水下地との接着状態が長期に亘って保持される。
【0027】
また、防水シート7は、固定金具10よりも内周領域Bの側まで延ばされ、防水シート7の下縁部7aが防水シート3に接着される。防水シート3と下縁部7aとの夫々は、例えば熱風機や溶接機によって相互に融着しても良いし、溶着剤によって相互に溶着しても良いし、接着剤によって相互に接着しても良い。加えて、固定金具10の上方で、防水シート7と防水シート3とが接着され、防水シート3と防水シート7との夫々は、例えば熱風機や溶接機によって相互に融着しても良いし、溶着剤によって相互に溶着しても良いし、接着剤によって相互に接着しても良い。
【0028】
〔第一防水部について〕
本発明における第一防水部について説明する。第一防水部は床部1における外周領域Aに2周分に亘って設けられている。まず、図3に示されるように、作業者は、外周領域Aに防水シート3,4を敷設する。次に作業者は、防水シート3,4のうち、床部1の孔部1hと対向する部分に固定金具8を載置する。固定金具8の上面部の中心にビス8aが貫通する貫通孔が形成されている。そして、作業者は、ビス8aを固定金具8の貫通孔に挿通し、ビス8aで防水シート3,4を穿孔する。この状態で、ビス8aは防水シート3,4を貫通し、ビス8aの下端部が孔部1hに入り込む。そして作業者は、床部1の孔部1hにビス8aを締結させる。これにより、防水シート3,4が、複数の固定金具8の下方に位置する状態で複数の固定金具8によって固定される。
【0029】
ビス8aは防水シート3,4を貫通するため、防水シート3,4に欠損部分が生じている。このため、固定金具8の上に増貼り防水シート9が覆い被さる。増貼り防水シート9は、本発明の『増貼り用シート』である。増貼り防水シート9は略円盤状に形成され、固定金具8の直径よりも大きな直径を有する。このため、増貼り防水シート9は、固定金具8と、防水シート3,4のうち固定金具8に対する周辺領域と、に亘って上方から覆い被さる。増貼り防水シート9は防水シート3,4と同質の材料(例えば塩化ビニル製)である。
【0030】
固定金具8は、例えば上面部分に塩化ビニルの被腹膜が設けられた塩ビ被覆鋼板である。作業者は、固定金具8の上面に例えば有機溶剤を塗布し、更に、増貼り防水シート9を上方から押し当てる。これにより、固定金具8と増貼り防水シート9とが接着する。このように、第一防水部においては、固定金具8によって防水シート3,4を上側から押さえつけた状態で、固定金具8が床部1に固定される。これにより、固定金具8に対して防水シート3,4が上側から接着する構成と比較して、防水シート3,4の支持構造が強固になる。なお、上述の有機溶剤で固定金具8と増貼り防水シート9とを接着する手法以外に、作業者は、誘導加熱装置(不図示)を増貼り防水シート9の上方から押し当てて、固定金具8を加熱させて固定金具8と増貼り防水シート9とを融着しても良い。
【0031】
増貼り防水シート9のうち、固定金具8よりも外周側の領域は、防水シート3,4と接着する。増貼り防水シート9と防水シート3,4との夫々の重ね合わせ部分において、防水シート3,4と増貼り防水シート9とが接着される。防水シート3,4と増貼り防水シート9との夫々は、例えば熱風機や溶接機によって相互に融着しても良いし、溶着剤によって相互に溶着しても良いし、接着剤によって相互に接着しても良い。これにより、ビス8aが防水シート3,4を貫通する部分における防水性が、増貼り防水シート9によってしっかりと確保される。このように、第一防水部においては、固定金具8と防水シート3,4のうちの固定金具8の外周に位置する周囲部分とを上側から覆う状態で、増貼り防水シート9が当該周囲部分に固定される。
【0032】
〔第二防水部について〕
第二防水部は、床部1における外周領域Aよりも内側の内周領域Bに設けられている。図4に示されるように、作業者は、内周領域Bにおける床部1に、複数の固定金具6を固定する。作業者は、ビス6aを床部1の孔部1hに締結することによって固定金具6を床部1に固定する。床部1に全ての固定金具6が固定された後、作業者は、外周領域Aよりも内側の内周領域Bの床部1に防水シート4を敷設する。敷設前の防水シート4はロール状に巻かれており、作業者は、床部1の水勾配の方向に沿ってロール状の防水シート4を展開する。なお、作業者は、防水シート4を床部1の外周縁よりも内側の位置で敷設し終える。全ての防水シート4の展開が完了したら、複数の防水シート4が並列に並び、防水シート4の夫々の長手方向が床部1の水勾配の方向に沿う。作業者は、固定金具6の位置する箇所の夫々に、誘導加熱装置(不図示)を防水シート4の上方から押し当てて、固定金具6を加熱させる。固定金具6が所定の温度に加熱すると、防水シート4のうち固定金具6と接触する部分の温度が融点に到達し、防水シート4における固定金具6との接触部分が固定金具6に融着する。このように、第二防水部においては、固定金具6が床部1に固定された状態で防水シート4が固定金具6の上側に敷設されて固定金具6に固定されている。
【0033】
〔風による防水シートのバタつきについて〕
外周領域Aでは、内周領域Bよりも風圧が強く作用しがちであるため、外周領域Aで防水シート3,4が床部1に点状に固定されると、防水シート3,4は風でバタつき易くなる。防水シート3,4が風でバタつくと、そのバタつきの波立ちが風上から風下に向かって防水シート3,4上を伝搬する。図5は、外周領域Aにおいて防水シート3が上述の第二防水部の構成によって床部1に固定されている場合を仮定している。図5では、防水シート3の固定金具8に対する接着領域Saと、接着領域Saに外周側で隣接する外周領域Sbと、が示される。防水シート3の波立ちに伴って、外周領域Sbが折れ曲がる。この外周領域Sbの折れ曲がりは、風が強いほど顕著に現れ、外周領域Sbに局所的な応力が集中する。そして、この外周領域Sbにおける折れ曲がりが繰り返されると、外周領域Sbに亀裂が発生し、防水シート3が外周領域Sbで破断する虞がある。
【0034】
図6では、外周領域Aにおいて防水シート3が上述の第一防水部の構成によって床部1に固定されている状態が示されている。図6に、防水シート3の固定金具8に対する接着領域Saと、接着領域Saに外周側で隣接する外周領域Sbと、が示される。増貼り防水シート9は、接着領域Saと外周領域Sbとに亘って接着する。増貼り防水シート9は、防水シート3と同質の材料(例えば塩化ビニル製)で構成されているため、防水シート3に対して良好に接着する。つまり、防水シート3における外周領域Sbに増貼り防水シート9が良好に接着するため、防水シート3と増貼り防水シート9との重ね合わせ部分が肉厚な一体物となる。このため、風による揚圧力が防水シート3に作用する場合であっても、外周領域Sbに弾性的な抗力が作用し、折れ曲がりが大きく抑制されて外周領域Sbにおける応力が周囲に分散される。つまり、防水シート3と増貼り防水シート9とが外周領域Sbにおいて重ね合わせられた状態で互いに接着する構成によって、防水シート3が風で波立つ場合であっても、当該波立ちが外周領域Sbにおいて大きく抑制される。これにより、防水シート3に亀裂が発生し難くなり、防水シート3が破断し難くなる。なお、図5及び図6に示された防水シート3は、外周領域Aにおける防水シート4であっても良い。
【0035】
内周領域Bに作用する風圧は、外周領域Aに作用する風圧よりも弱くなりがちであって、内周領域Bにおける防水シート4は、外周領域Aにおいて床部1に点状に固定された場合の防水シート3,4と比較して風でバタつき難い。つまり、内周領域Bでは外周領域Aと比較して風が強くなり難く、防水シート4の波立ちが発生し難い。このため、内周領域Bにおける防水シート4が風でバタついても、防水シート4のバタつきは弱いまま収束し、防水シート4の破断は発生し難い。
【0036】
このように、外周領域Aにおいて防水シート3,4が第一防水部の構成で固定され、内周領域Bにおいて防水シート4が第二防水部の構成で固定されることによって、施工コストの増大を抑制しながらも、長期に亘って防水性が保持される。
【0037】
また、図2に示される防水シート7は、防水シート3と同質の材料(例えば塩化ビニル製)で構成されているため、防水シート3に対して良好に接着する。つまり、防水シート7の下縁部7aが防水シート3に対して良好に接着するため、防水シート3と下縁部7aとの重ね合わせ部分が肉厚な一体物となる。このため、風による揚圧力が防水シート3に作用する場合であっても、防水シート3と下縁部7aとの重ね合わせ部分に弾性的な抗力が作用し、折れ曲がりが大きく抑制される。これにより、下縁部7aの領域における防水シート3,7の破断が発生し難くなって、防水シート3,7の防水下地に対する防水性が長期に亘って保持される。
【0038】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0039】
(1)図1に、例えばコンクリート製の陸屋根が示されているが、陸屋根に断熱材が敷設され、防水シート3,4は断熱材の上に敷設されても良い。また、陸屋根はコンクリート製でなくても良く、例えば金属製の屋根(折板、デッキプレート等)であっても良い。また、屋根は、垂木、野地板、等からなる木製下地を有する木造屋根であっても良い。
【0040】
(2)上述の実施形態では、防水シート3は床部1の四辺ごとに一枚ずつ敷設され、内周領域Bに複数の防水シート4が並列敷設されているが、この実施形態に限定されない。例えば、床部1の全領域に亘って複数の防水シート4(または複数の防水シート3)が並列敷設される構成であっても良い。この場合、防水シート4(または防水シート3)のうち外周領域Aに位置する部分が第一防水部の構成によって床部1に固定され、防水シート4(または防水シート3)のうち内周領域Bに位置する部分が第二防水部の構成によって床部1に固定される構成であっても良い。
【0041】
(3)上述の実施形態では、防水シート4の長手方向が床部1の水勾配の方向に沿う状態で、内周領域Bに複数の防水シート4が並列敷設されているが、防水シート4の長手方向が床部1の水勾配の方向に沿っていなくても良い。要するに作業者は、防水シート4を、防水シート4の長手方向が内周領域Bの何れか一辺に沿う状態で、複数列、並列敷設すれば良い。
【0042】
(4)上述の実施形態では、全ての固定金具6,8は、同一形状を有するが、固定金具6と固定金具8とで各別の形状であっても良い。また、固定金具8は金属製でなくても良く、例えばCPRF等の耐候性のプラスチックで構成されても良い。
【0043】
(5)上述の実施形態では、床部1に、ビス6a,8aを挿入するための孔部1hが等間隔で穿孔されているが、外周領域Aにおける複数の孔部1hの間隔は、内周領域Bにおける複数の孔部1hの間隔よりも離間しても良い。つまり、外周領域Aにおける複数の固定金具8の配置間隔が、内周領域Bにおける複数の固定金具6の配置間隔以上に離間するように、複数の固定金具6,8が配置されても良い。
【0044】
(6)上述の固定金具6,8の夫々の上面部は略円盤状に形成されているが、固定金具6,8の夫々の上面部は、多角形状(例えば四角形)に形成されても良い。また、増貼り防水シート9は略円盤状に形成されているが、増貼り防水シート9は多角形状(例えば四角形)に形成されても良い。
【0045】
(7)上述の実施形態では、固定金具8と増貼り防水シート9とが接着する構成であるが、増貼り防水シート9のうち固定金具8よりも外周側の領域が防水シート3と接着し、固定金具8と増貼り防水シート9とが接着しない構成であっても良い。
【0046】
(8)上述の実施形態では、第一防水部は床部1における外周領域A(境界線Cよりも外側の領域)に2周分に亘って設けられているが、この実施形態に限定されない。例えば、第一防水部は床部1における外周領域Aに1周分だけ設けられても良い。また、第一防水部は床部1における外周領域Aに3周以上に亘って設けられても良い。
【0047】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の屋上防水構造は、新設される防水シートに限らず、施工済みの防水シートで改修されるものにも利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 :床部(防水下地)
3 :防水シート
4 :防水シート
6 :固定金具(シート固定具)
8 :固定金具(シート固定具)
9 :増貼り防水シート
10 :固定金具(シート固定具)
A :外周領域
B :内周領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6