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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063989
(43)【公開日】2022-04-25
(54)【発明の名称】油性固形化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20220418BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220418BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20220418BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20220418BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220418BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20220418BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220418BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20220418BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20220418BHJP
   A61Q 1/06 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/81
A61K8/92
A61K8/60
A61K8/37
A61K8/36
A61K8/34
A61K8/25
A61K8/31
A61Q1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172446
(22)【出願日】2020-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】老川 ひろみ
(72)【発明者】
【氏名】高橋 希佳
(72)【発明者】
【氏名】倉都 頌子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA081
4C083AA121
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB432
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC242
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC842
4C083AD022
4C083AD152
4C083CC13
4C083DD21
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】固形化粧料でありながらとろけるような使用感を有し、ぼかしやすく、発汗安定性にも優れる油性固形化粧料を提供する。
【解決手段】油性固形化粧料を、(A)融点が75℃以上の高融点ワックスと、(B)融点が40~70℃以下の低融点ワックスと、(C)粒径が1~50μmの粉末と、を含む油性固形化粧料であって、(A)高融点ワックスと(B)低融点ワックスの合計量に対する(B)低融点ワックスの割合が20~80質量%であり、(B)低融点ワックスに対する(C)粉末の質量比を0.7以上とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)融点が75℃以上の高融点ワックスと、
(B)融点が40~70℃以下の低融点ワックスと、
(C)粒径が1~50μmの粉末と、
を含む油性固形化粧料であって、
前記(A)高融点ワックスと前記(B)低融点ワックスの合計量に対する前記(B)低融点ワックスの割合が20~80質量%であり、
前記(B)低融点ワックスに対する前記(C)粉末の質量比が0.7以上である油性固形化粧料。
【請求項2】
前記(A)高融点ワックスの融点と前記(B)低融点ワックスの融点の差が10℃以上である請求項1記載の油性固形化粧料。
【請求項3】
前記(B)低融点ワックスが、酢酸ステアリン酸スクロース、ミリスチン酸ミリスチル、モクロウ、ミリスチン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、セタノール、ステアリルアルコールおよびミツロウの中から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載の油性固形化粧料。
【請求項4】
前記(A)高融点ワックスが、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、コメヌカロウ、キャンデリラロウ、カルナバロウ、パラフィンワックス、セレシンワックスおよび水素添加ホホバ油の中から選ばれる少なくとも1種である請求項1、2または3記載の油性固形化粧料。
【請求項5】
前記(C)粉末が、シリカ、マイカまたは球状樹脂粉末である請求項1~4いずれか1項記載の油性固形化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性固形化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
唇を彩る口紅やグロス等の口唇化粧料、チーク(頬紅)あるいはアイシャドウといったメーキャップ化粧料等の油性固形化粧料の基剤には、一般にロウやワックスといった固形材料が処方されている。いわゆる固形材料は固形化粧料の固形たる形態を維持するために必要不可欠なものであるが、固形材料に起因して、柔らかな使用感や、つや、みずみずしさ等が得られにくいといった問題がある。
【0003】
このような問題に鑑み、例えば特許文献1には、油性固形化粧料に合成炭化水素ワックスのエチレンプロピレンコポリマーを配合することにより、使用性が良好で、つやに優れるとともに、形状保持性がより向上することが記載されている。また、特許文献2には固形化粧料に親油性ショ糖脂肪酸エステルを配合することで、汗や皮脂等を吸収する力が高まることにより、化粧料の肌への密着性が阻害されず、耐水性および持続性に優れた固形化粧料が得られることが記載されている。
【0004】
さらに、特許文献3には、特定の12-ヒドロキシステアリン酸ショ糖エステルと特定の炭化水素ワックス等を配合した油性固形化粧料が、うるおい感に優れ、平滑な塗布膜が得られるため高いつや感を有する等の効果に優れる旨、記載されている。また、特許文献4には、平均粒子径1~12μmのタルクとショ糖脂肪酸エステルとワックスと特定の液状油を組み合わせた油性固形化粧料が、使用時のなめらかさ、うるおい感等の効果に優れる旨、記載されている。
【0005】
特許文献5には、融点30℃以上65℃℃以下の直鎖状または分岐状のC10~C22脂肪鎖を有するワックスと、疎水化処理煙霧状無水ケイ酸と、融点が75℃以上のワックスを含有する油性固形化粧料について、滑らかなつけ心地と化粧膜の追従性や化粧もちを両立できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-69933号公報
【特許文献2】特開平8-81331号公報
【特許文献3】特開2011-184416号公報
【特許文献4】特開2017-88602号公報
【特許文献5】特開2019-48788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、1つのメーキャップ化粧料を、例えば口紅としてもチークとしても使用することが可能な、複数の目的に利用可能なメーキャップ化粧料のニーズが高まっている。また、メーキャップ化粧料の使用シーンでは、紅筆でしっかりと唇の輪郭をとったり、あるいはブラシを用いてチークを入れたりというメーキャップ道具を用いた従来のメイク方法に加えて、例えば、唇の表面に化粧料を指でなじませたり、伸ばしたりすることで、化粧料をよりフィットさせて色持ちをよくするといった使い方がなされている。さらに、メイクにニュアンスを出すためや、難しいテクニックがいらないこと等から、ラフにぼかすように指を用いて色を入れるといった使い方をする使用シーンが増えている。このような状況に鑑みると、メーキャップ化粧料には、これまでの要求にはなかった、指での使用性のよさや、ぼかしやすさ等が新たに訴求され、商品選択上の重要な要素となりうる。さらに、例えば唇にも頬にも使用する場合には、これまでの固形化粧料では得られない、とろけるような使用感が好まれることもわかってきた。さらに、固形化粧料であるからには、発汗等のない安定性も当然に要求される。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、固形化粧料でありながらとろけるような使用感を有し、ぼかしやすく、発汗安定性にも優れる油性固形化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の油性固形化粧料は、
(A)融点が75℃以上の高融点ワックスと、
(B)融点が40~70℃以下の低融点ワックスと、
(C)粒径が1~50μmの粉末と、
を含む油性固形化粧料であって、
(A)高融点ワックスと(B)低融点ワックスの合計量に対する(B)低融点ワックスの割合が20~80質量%であり、
(B)低融点ワックスに対する(C)粉末の質量比が0.7以上である。
【0010】
(A)高融点ワックスの融点と(B)低融点ワックスの融点の差は10℃以上であることが好ましい。
【0011】
(B)低融点ワックスは、酢酸ステアリン酸スクロース、ミリスチン酸ミリスチル、モクロウ、ミリスチン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、セタノール、ステアリルアルコールおよびミツロウの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
(A)高融点ワックスは、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、コメヌカロウ、キャンデリラロウ、カルナバロウ、パラフィンワックス、セレシンワックスおよび水素添加ホホバ油の中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
(C)粉末は、シリカ、マイカまたは球状樹脂粉末であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の油性固形化粧料は、
(A)融点が75℃以上の高融点ワックスと、
(B)融点が40~70℃以下の低融点ワックスと、
(C)粒径が1~50μmの粉末と、
を含む油性固形化粧料であって、
(A)高融点ワックスと(B)低融点ワックスの合計量に対する(B)低融点ワックスの割合が20~80質量%であり、
(B)低融点ワックスに対する(C)粉末の質量比が0.7以上であるので、固形化粧料でありながらとろけるような使用感を有し、ぼかしやすく、換言すれば塗り広げやすく、発汗安定性にも優れるものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の油性固形化粧料は、
(A)融点が75℃以上の高融点ワックスと、
(B)融点が40~70℃以下の低融点ワックスと、
(C)粒径が1~50μmの粉末と、
を含む油性固形化粧料であって、
(A)高融点ワックスと(B)低融点ワックスの合計量に対する(B)低融点ワックスの割合が20~80質量%であり、
(B)低融点ワックスに対する(C)粉末の質量比が0.7以上である。
【0016】
なお、本発明における固形化粧料とは、常温(15℃~25℃)、常圧において流動性のない組成物を意味する。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0017】
(A)融点が75℃以上の高融点ワックス
(A)高融点ワックスは融点が75℃以上であり、より好ましくは80~90℃以下のワックスが好ましい。(A)高融点ワックスとしては、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスといった炭化水素ワックス、カルナバロウ、コメヌカロウ、キャンデリラロウ、セレシンワックス、水素添加ホホバ油等の植物系ワックス等を用いることができる。これらの(A)高融点ワックスは1種類でも2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
なお、複数種類の高融点ワックスを用いる場合には、そのすべてのワックスの融点が75℃以上である。また、1つのワックスの融点に幅がある場合には、一番低い融点が75℃以上である場合が(A)高融点ワックスである。
【0018】
(B)融点が40~70℃以下の低融点ワックス
(B)低融点ワックスは融点が40~70℃以下であり、より好ましくは40~65℃以下のワックス、さらには40~50℃以下のワックスがより好ましい。(B)低融点ワックスとしては、酢酸ステアリン酸スクロース、ミリスチン酸ミリスチル、モクロウ、ミリスチン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、セタノール、ステアリルアルコール、ミツロウ等を用いることができる。これらの(B)低融点ワックスは1種類でも2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0019】
なお、複数種類の低融点ワックスを用いる場合には、そのすべてのワックスの融点が40~70℃の範囲である。また、1つのワックスの融点に幅がある場合には、一番高い融点が40℃以上である場合には一番低い融点が40℃未満であっても(例えば融点の幅が35~42℃の場合)、本発明の(B)低融点ワックスである。一方、一番低い融点が70℃以下であっても、一番高い融点が70℃を超える場合(例えば融点の幅が69~72℃の場合)には本発明の(B)低融点ワックスではない。
【0020】
(A)高融点ワックスと(B)低融点ワックスの合計量に対する(B)低融点ワックスの割合((B)低融点ワックス/[(A)高融点ワックス+(B)低融点ワックス])は20~80質量%であり、好ましくは25~75質量%であり、さらには35~65質量%であることがより好ましい。(A)高融点ワックスと(B)低融点ワックスの合計量に対する(B)低融点ワックスの割合が20質量%以上であることにより、油性固形化粧料をとろけるような使用感とすることができる。(A)高融点ワックスと(B)低融点ワックスの合計量に対する(B)低融点ワックスの割合が80質量%以下であることにより、発汗安定性を良好なものとすることができる。
【0021】
(A)高融点ワックスと(B)低融点ワックスの合計量は、化粧料全量に対し5~20質量%未満であり、7~15質量%であることがより好ましく、さらには9~13質量%であることが望ましい。ワックスの含有量が5質量%以上であることで、良好な成形性を確保することができ、20質量%未満であることで油性固形化粧料をとろけるような使用感とすることができる。(A)高融点ワックスの含有量、(B)低融点ワックスの含有量は、それぞれ化粧料全量に対し2.6~10.6質量%であることが好ましい。
【0022】
(A)高融点ワックスの融点と(B)低融点ワックスの融点の差は10℃以上あることが好ましく、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは25℃以上、特には30℃以上であることが望ましい。(A)高融点ワックスの融点と(B)低融点ワックスの融点の差が10℃以上あることにより、よりとろけるような使用感が得られ、よりぼかしやすく、発汗安定性にもより優れるものとすることができる。なお、(A)高融点ワックスや(B)低融点ワックスの融点に幅がある場合には、ともに、一番高い融点温度の差を意味する。
【0023】
(C)粒径が1~50μmの粉末
(C)粉末は粒径が1~50μmであり、好ましくは1~40μmであり、さらには1~30μmであることが好ましい。粒径が1μm以上の粉末であることで、塗布する肌や唇に補正効果を高めることができるとともに肌等に塗布した場合にぼかしやすくなり、粒径が50μm以下の粉末であることで、使用性を良好なものとすることができる。なお、粒径は、走査型電子顕微鏡により測定される値である。
【0024】
1~50μmの範囲の粒径を有する粉末であれば一般に化粧料に配合し得るものであれば特に限定されるものでないが、例えば、タルク、マイカ、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、バーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等)、窒化ホウ素等の無機粉末;ポリアミド球状樹脂粉末(ナイロン球状粉末)、球状ポリエチレン、架橋型ポリ(メタ)クリル酸メチル球状樹脂粉末、球状ポリエステル、架橋ポリスチレン球状樹脂粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体球状樹脂粉末、ベンゾグアナミン球状樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン球状粉末、球状セルロース粉末等の球状の有機粉末;二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色顔料;酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等の無機赤色系顔料;γ-酸化鉄等の無機褐色系顔料;黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料;黒酸化鉄、カーボンブラック、低次酸化チタン等の無機黒色系顔料;マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色系顔料;酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料;群青、紺青等の無機青色系顔料;酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、ホウケイ酸(Ca/Al)、魚鱗箔等のパール顔料;アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料;赤色、黄色、橙色、黄色、緑色、青色等の色材、あるいはこれらをジルコニウム、バリウムまたはアルミニウム等でレーキ化した色材(有機顔料);クロロフィル、β-カロリン等の天然色素、アミノ酸パウダーC1123CONH(CH24CH(+NH3)HCOO-であるアミホープ(N-アシル化アミノ酸粉末)等が例示される。
【0025】
(C)粉末は吸油量が250ml/100g以下であることが好ましく、より好ましくは200ml/100g以下、さらには180ml/100g以下であり、特には150ml/100g以下であることが好ましい。ここで、吸油量は、JIS K5101-13-2(煮あまに油法)に従って測定される吸油量である。(C)粉末の吸油量が250ml/100g以下であることで、肌等に塗布した場合によりぼかしやすくなり、また、とろけるような使用感を高めることができる。
【0026】
中でも、補正効果や使用感等の観点から、シリカ、マイカ、球状樹脂粉末、オキシ塩化ビスマス、球状セルロース粉末、アミホープを好適に用いることができる。これらの粉末は市販品を用いることができ、シリカとしては、シフォンシルP3R(粒径9μm、吸油量20.9~21.7ml/100g、日揮触媒化成社製)、サティニアM5(粒径5μm、吸油量71ml/100g、日揮触媒化成社製)、マイカとしては、マイカYH900(粒径5.2μm、吸油量74ml/100g、山口雲母工業社製)、球状樹脂粉末としては、シリコーンパウダーKSP102(粒径30μm、信越化学工業社製)、シリコーンパウダーKSP100(粒径5μm、信越化学工業社製)、ガンツパールGMX-0810(粒径8μm、アイカ工業社製)等を好適に挙げることができる。
【0027】
(C)粉末は、(B)低融点ワックスに対する(C)粉末((B)低融点ワックス/(C)粉末)の質量比が0.7以上である。(B)低融点ワックスに対する(C)粉末の質量比が0.7以上であることで、発汗安定性を向上させることができる。(B)低融点ワックスに対する(C)粉末の質量比はより好ましくは、0.75~5.であることが好ましい。
【0028】
(C)粉末の含有量は化粧料全量に対し3~15質量%であることが好ましい。(C)粉末の含有量は化粧料全量に対し3質量%以上であることで、とろけるような使用感をより得られやすく、15質量%以下であることで、発汗安定性により優れたものとすることができる。
【0029】
本発明においては、上記必須成分以外に、半固形油分および流動油分を配合することができる。
本発明において用いられる半固形油分としては、例えば、ワセリン、トリラノリン脂肪酸グリセリル、軟質ラノリン脂肪酸、分岐またはヒドロキシル化した脂肪酸コレステリル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル(ヘキサオキシステアリン酸ジペンタエリトリット等)、イソステアリン酸硬化ヒマシ油、モノヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油、トリ(カプリル・カプリン・ミリスチン・ステアリン酸)グリセリド、乳酸ミリスチル、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)
、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、オレイン酸フィトステリル、テトラ(べヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル等が挙げられる。
【0030】
流動油分としては、2-エチルヘキサン酸セチル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、トリメチロールプロパントリイソオクタノエート、イソオクタン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトライソオクタノエート、パルミチン酸オクチル、クエン酸アセチルトリブチル、ジメチルポリシロキサン(6~5000cs)およびメチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。また、揮発性を有する流動油分としては、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルポリシロキサン、メチルトリメチコン、トリシロキサン等のシリコーン系油分、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリイソブテン等の炭化水素系油分等が挙げられる。
【0031】
本発明の油性固形化粧料における流動油分(揮発性油分も含む)の配合量は、20~80質量%が好ましく、さらには30~75質量%が好ましい。流動油分がこの範囲であることで、よりなめらかな使用感でありながら、軟らかすぎない使用感とすることができる。なお、流動油分全量に対する揮発性油分は10~50質量%であることが好ましく、さらには10~40質量%であることがより好ましい。流動油分全量に対する揮発性油分の割合が上記範囲であることで、化粧持ちを良好にすることができる。
【0032】
本発明においては、上記必須成分以外に色材が配合される。色材は油性固形化粧料に通常用いられる色材であれば良く、粉末状でもレーキ状(油を練り込んだ状態)でもよい。また、無機顔料であっても、有機顔料であっても、パール剤であってもよい。
【0033】
本発明の油性固形化粧料には、上記成分に加えて必要に応じ、顔料、界面活性剤、保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、香料、薬剤、溶剤等を本発明の効果を損なわない質的、量的条件下で使用することが可能である。
【0034】
本発明の油性固形化粧料の具体的な形態としては、例えば、口紅、口紅、リップクリーム、リップグロス、頬紅、コンシーラー、ハイライト、アイブロウ、アイシャドウ、ファンデーション等を挙げることができるが、特に口紅としても頬紅としても利用できる化粧料の利用に好ましく適用できる。なお、形状形態は、特に限定されるものではなく、例えば皿状、ペンシル状あるいはスティック状の棒状、芯を繰り出して使用するシャープペンシル状等が挙げられる。
【実施例0035】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。
下記表1に掲げた処方で油性固形化粧料を常法により調製し、以下の基準により評価を行った。
【0036】
(塗布時のとろける感)
調製した油性固形化粧料を専門パネラー10名により使用してもらい、塗布時のとろける感について、評価した。評価基準は以下の通りである。
<評価点>
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:不良
1点:非常に不良
<評価基準>
A+:平均点が4.5点以上
A :平均点が3.5点以上4.5点未満
B :平均点が2.5点以上3.5点未満
C :平均点が2.5点未満
【0037】
(塗り広げやすさ)
調製した油性固形化粧料を専門パネラー10名によりチークとして使用してもらい、塗り広げやすさ(ぼかしやすさ)について、評価した。評価基準は以下の通りである。
<評価点>
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:不良
1点:非常に不良
<評価基準>
A+:平均点が4.5点以上
A :平均点が3.5点以上4.5点未満
B :平均点が2.5点以上3.5点未満
C :平均点が2.5点未満
【0038】
(発汗安定性)
調製した油性固形化粧料を50℃にて1週間保管し、25℃条件にて取り出し、充分に放冷したサンプル表面に油滴が目視できるかを確認し、以下の基準で発汗安定性を評価した。
A :発汗しない
B :発汗がうっすらとみられる
C :発汗がみられる
D :過度の発汗がみられる
【0039】
処方および評価結果を表1に示す。なお、表に示す成分のうち、主だったものの市販品名を以下に示す。
ポリエチレンワックス-マイクロクリスタリンワックス:PAワックス(ポリエチレンワックスとマイクロクリスタリンワックスのブレンドワックス(日興リカ社製)
シュガーワックス:シュガーワックスA-10E(ステアリン酸、パルミチン酸および酢酸のショ糖混合脂肪酸エステル)(第一工業製薬社製)
表面処理マイカ:シリコーン処理マイカ、粒径2.4~2.9μm
シリカ:多孔質シリカ、粒径5μm、吸油量67.4ml/100g
ジメチルシリル化シリカ:AEROSIL R972、粒径0.016μm(日本アエロジル社製)
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示すように、実施例1および2は(B)低融点ワックスの種類違い、実施例3は実施例1の粉末種を変更したものであるが、いずれもとろけるような使用感があり、塗り広げやすく(ぼかしやすく)、発汗安定性にも優れていた。実施例4、5および比較例1はワックス全量に対する(B)低融点ワックスの割合を変更したものであるが、(B)低融点ワックスに対する(C)粉末の質量比が0.7未満である比較例1では発汗安定性が得られなかった。また、実施例6~8および比較例2は、(C)粉末の量を変更して検討したものであるが、ワックス全量に対する(B)低融点ワックスの割合が多い比較例2では、(C)粉末が増えると、発汗安定性が得られなかった。
【0042】
(処方例)
以下に、本発明の化粧料の処方例を挙げる。本発明はこの処方例によって何ら限定されるものではない。なお、配合量は全て製品全量に対する質量%で表している。
【0043】
処方例1:油性固形化粧料
水添ポリデセン 12
トリイソステアリン 7.25
リンゴ酸ジイソステアリル 7.25
トリエチルヘキサノイン 19.02
エチルヘキサン酸セチル 14
水添ポリイソブテン 15
ポリエチレンワックス-マイクロクリスタリンワックス 8.4
シュガーワックス 4.8
マイカ 6.5
ジメチルシリル化シリカ 1
表面処理酸化鉄 3.75
赤223 0.03
酸化チタン被覆雲母 1
処方例1の油性固形化粧料は染料配合の処方であるが、染料を配合することでさらに色持ちを長くすることができた。
【0044】
処方例2:油性固形化粧料
水添ポリデセン 12
トリイソステアリン 7.25
リンゴ酸ジイソステアリル 7.25
トリエチルヘキサノイン 23.8
エチルヘキサン酸セチル 14
水添ポリイソブテン 15
ポリエチレンワックス-マイクロクリスタリンワックス 8.4
ラウリン酸(融点42-45℃) 4.8
表面処理マイカ 6.5
ジメチルシリル化シリカ 1
表面処理酸化鉄 3.75
処方例2は低融点ワックスの種類を変えたものであるが、実施例と同様にとろけるような使用感があり、塗り広げやすく、発汗安定性にも優れていた。
【0045】
処方例3:油性固形化粧料
水添ポリデセン 12
トリイソステアリン 7.25
リンゴ酸ジイソステアリル 7.25
トリエチルヘキサノイン 10.05
エチルヘキサン酸セチル 14
水添ポリイソブテン 15
ジメチコン 10
ポリエチレンワックス-マイクロクリスタリンワックス 8.4
ラウリン酸(融点42-45℃) 4.8
表面処理マイカ 6.5
ジメチルシリル化シリカ 1
表面処理酸化鉄 3.75
処方例3は揮発油分を配合したものであるが、揮発油分を配合することでさらに色持ちを長くすることができた。
【0046】
処方例4:油性固形化粧料
水添ポリデセン 12
トリイソステアリン 7.25
リンゴ酸ジイソステアリル 7.25
トリエチルヘキサノイン 10.05
エチルヘキサン酸セチル 14
水添ポリイソブテン 15
ジメチコン 10
カルナバロウ 8.4
ラウリン酸(融点42-45℃) 4.8
表面処理マイカ 6.5
ジメチルシリル化シリカ 1
表面処理酸化鉄 3.75
処方例4はポリエチレンワックス-マイクロクリスタリンワックスをカルナバロウに変更した処方であるが、この場合も、実施例と同様にとろけるような使用感があり、塗り広げやすく、発汗安定性にも優れ、さらに色持ちを長くすることができた。