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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064110
(43)【公開日】2022-04-25
(54)【発明の名称】栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/06 20060101AFI20220418BHJP
   A01G 31/04 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
A01G31/06
A01G31/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172639
(22)【出願日】2020-10-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、人工知能技術適用によるスマート社会の実現/生産性分野委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】514108263
【氏名又は名称】株式会社ファームシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 由久
(72)【発明者】
【氏名】岡 理一郎
(72)【発明者】
【氏名】北島 正裕
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA38
2B314MA52
2B314NA03
2B314NA13
2B314NA33
2B314NA35
2B314NA36
2B314NB09
2B314NB11
2B314NB26
2B314NC32
2B314ND04
2B314ND06
2B314ND15
2B314ND29
2B314ND32
2B314PA20
2B314PB13
2B314PC04
2B314PC10
2B314PD06
2B314PD07
2B314PD10
2B314PD37
2B314PD57
2B314PD59
(57)【要約】
【課題】 栽培状況に応じて植物の栽培位置を容易に調整することができ、且つ、電力供給構造がより簡素化された栽培装置を提供する。
【解決手段】 本発明の栽培装置は、棚の上で植物を栽培し、棚は、植物を載せる台と、台に隣接して配置されるスペーサと、台に備えられて植物の栽培中に作動する電気機器と、を含み、棚では、台及びスペーサが棚の延在方向に沿って移動可能な状態で配置されており、且つ、台とスペーサとが接することで電気機器とスペーサとが電気的に接続される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棚を備え、前記棚の上で植物を栽培する栽培装置であって、
前記棚は、前記植物を載せる台と、前記台に隣接して配置されるスペーサと、前記台に備えられて前記植物の栽培中に作動する電気機器と、を含み、
前記棚では、前記台及び前記スペーサが前記棚の延在方向に沿って移動可能な状態で配置されており、且つ、前記台と前記スペーサとが接することで前記電気機器と前記スペーサとが電気的に接続される、栽培装置。
【請求項2】
前記棚には複数の前記台が配置され、前記台の間に前記スペーサが配置され、前記台同士の間隔が、前記スペーサのサイズを変えることで変更可能である、請求項1に記載の栽培装置。
【請求項3】
前記台には、養液を収容した容器と、一部分が前記容器内の養液に浸った状態の前記植物とが載せられ、
前記電気機器は、前記植物に光を照射する光源、前記植物に向かって送風する送風機、及び、前記容器内の養液を攪拌するために回転する回転機器のうちの少なくとも一つを含む、請求項2に記載の栽培装置。
【請求項4】
前記台が備える筐体内に、前記光源、前記送風機、及び前記回転機器のすべてが収容されている、請求項3に記載の栽培装置。
【請求項5】
上下方向に並ぶ複数の前記棚を備え、
前記電気機器は、前記光源の下方に光を照射する前記光源、及び、前記送風機の下方に送風する前記送風機のうちの少なくとも一つを備え、
上下方向において隣り合う2つの前記棚のうち、上側の前記棚にある前記台と、下側の前記棚にある前記台と、が上下方向において重なる位置に配置されている、請求項3又は4に記載の栽培装置。
【請求項6】
前記台には、台側嵌合部が設けられ、
前記スペーサには、スペーサ側嵌合部が設けられており、
前記台側嵌合部と前記スペーサ側嵌合部とが嵌合した状態で前記台と前記スペーサとが接する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の栽培装置。
【請求項7】
前記台側嵌合部と前記スペーサ側嵌合部とが、前記棚の延在方向と交差する方向に嵌合する、請求項6に記載の栽培装置。
【請求項8】
前記電気機器は、電源からの電力が供給されて作動し、
前記台と前記スペーサとが接することで前記電気機器と前記スペーサと前記電源とが電気的に接続される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の栽培装置。
【請求項9】
前記台には、台側電極が設けられており、
前記スペーサには、スペーサ側電極が設けられており、
前記台及び前記スペーサのうちの少なくとも一方を付勢して、前記台側電極と前記スペーサ側電極との接触状態を維持する付勢部材をさらに備える、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の栽培装置。
【請求項10】
前記台には、台側電極が設けられており、
前記スペーサには、スペーサ側電極が設けられており、
前記台及び前記スペーサのうちの少なくとも一方に備えられた磁石の磁力によって、前記台側電極と前記スペーサ側電極との接触状態を維持する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の栽培装置。
【請求項11】
前記棚には、前記棚の延在方向に延びており前記台が移動可能な状態で前記台を支持するレール部材が設けられている、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培装置に係り、特に、照明用の光源及び送風機等のような電気機器を用いて棚の上で植物を栽培する栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明用の光源及び送風機等のような電気機器を用いて植物を栽培する栽培装置では、電気機器の配置位置を栽培状況に応じて調整する必要がある。例えば、特許文献1では電気機器の一例である照明を植物の栽培数に応じて複数配置し、各植物の成長度合いに合わせて植物間の間隔を調整した場合に、調整後の間隔に応じて複数の照明の各々を移動させる(つまり、照明間の間隔を調整する)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-18214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように植物の栽培状況に応じて植物の位置を変更し、それに合わせて電気機器の配置位置を変える場合、それぞれの位置を容易に変更することができるのが好ましい。また、電気機器には、その配置位置の変更前後で電力を供給する必要があるが、特許文献1に記載された構成において複数の照明の各々から給電用ケーブルが延びていると、装置(栽培装置)が煩雑な構造となり取り扱い難くなる。そのため、栽培装置における電力供給構造は、より簡素化されることが求められている。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、上記従来技術の問題点を解決すること、具体的には、栽培状況に応じて植物の栽培位置を容易に調整することができ、且つ、電力供給構造がより簡素化された栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の栽培装置は、棚を備え、棚の上で植物を栽培する栽培装置であって、棚は、植物を載せる台と、台に隣接して配置されるスペーサと、台に備えられて植物の栽培中に作動する電気機器と、を含み、棚では、台及びスペーサが棚の延在方向に沿って移動可能な状態で配置されており、且つ、台とスペーサとが接することで電気機器とスペーサとが電気的に接続されることを特徴とする。
本発明の栽培装置によれば、栽培状況に応じて植物の栽培位置を容易に調整することができ、また、電気機器への電力供給構造がより簡素化される。
【0007】
また、本発明の栽培装置において、棚には複数の台が配置され、台の間にスペーサが配置され、台同士の間隔が、スペーサのサイズを変えることで変更可能であるとよい。
上記の構成によれば、棚における台同士の間隔をスペーサによって容易に調整し、且つ、複数の台が連結した状態を良好に維持することができる。
【0008】
また、本発明の栽培装置において、台には、養液を収容した容器と、一部分が容器内の養液に浸った状態の植物とが載せられ、電気機器は、植物に光を照射する光源、植物に向かって送風する送風機、及び、容器内の養液を攪拌するために回転する回転機器のうちの少なくとも一つを含むとよい。
上記の構成によれば、台に備えられた電気機器への電力供給構造を簡素化するという本発明の効果が、より有意義なものとなる。
【0009】
また、上記の構成において、上下方向に並ぶ複数の棚を備え、電気機器は、光源の下方に光を照射する光源、及び、送風機の下方に送風する送風機のうちの少なくとも一つを備え、上下方向において隣り合う2つの棚のうち、上側の棚にある台と、下側の棚にある台と、が上下方向において重なる位置に配置されていると、より好適である。
上記の構成によれば、上下方向において隣り合う2つの棚のうち、上側の棚にある台に備えられた光源又は送風機により、下側の棚にある台に載せられた植物の成長を効果的に促進させることができる。
【0010】
また、本発明の栽培装置において、台には、台側嵌合部が設けられ、スペーサには、スペーサ側嵌合部が設けられており、台側嵌合部とスペーサ側嵌合部とが嵌合した状態で台とスペーサとが接するとよい。そして、上記の構成において、台側嵌合部とスペーサ側嵌合部とが、棚の延在方向と交差する方向に嵌合すると、より好適である。
上記の構成によれば、スペーサによって連結された複数の台を一体的に移動させた場合であっても、台同士の連結状態が解除されずに良好に維持される。
【0011】
また、本発明の栽培装置において、電気機器は、電源からの電力が供給されて作動し、台とスペーサとが接することで電気機器とスペーサと電源とが電気的に接続されるとよい。
上記の構成によれば、電源からの電力が、スペーサを介して、台に備えられた電気機器へ適切に供給される。
【0012】
また、本発明の栽培装置において、台には、台側電極が設けられており、スペーサには、スペーサ側電極が設けられており、台及びスペーサのうちの少なくとも一方を付勢して、台側電極とスペーサ側電極との接触状態を維持する付勢部材をさらに備えてもよい。
あるいは、台には、台側電極が設けられており、スペーサには、スペーサ側電極が設けられており、台及びスペーサのうちの少なくとも一方に備えられた磁石の磁力によって、台側電極とスペーサ側電極との接触状態を維持してもよい。
上記の構成によれば、台側電極とスペーサ側電極との接触状態が良好に維持されるので、台に備えられた電気機器へ適切に電力が供給される。
【0013】
また、本発明の栽培装置において、棚には、棚の延在方向に延びており台が移動可能な状態で台を支持するレール部材が設けられているとよい。
上記の構成によれば、棚において、台を棚の延在方向に沿って移動させることで台間の間隔をより容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、栽培状況に応じて植物の栽培位置を容易に調整することができ、且つ、電力供給構造がより簡素化された栽培装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る栽培装置を含む栽培設備の機器配置を示す模式平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る栽培装置の斜視図である。
図3】最上段の棚が取り外された状態の栽培装置を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る栽培装置の側面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る栽培装置の前面図である。
図6】一つの棚群を側方から見た図である。
図7】植物栽培用の容器及び台の断面図である。
図8】台の正面図である。
図9】コネクタ及びスペーサの斜視図である。
図10】コネクタ及びスペーサの正面図である。
図11】コネクタ及びスペーサの底面図である。
図12】第一の変形例に係る棚群の側面図である。
図13】コネクタとスペーサとの接触状態を維持する別の例を示す図である。
図14】本発明の一実施形態に係る栽培装置を用いた栽培方法の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態(以下、本実施形態)について、添付の図面に示す好適な実施形態を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、以下に説明する実施形態から変更又は改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれる。
【0017】
また、本明細書にて参照する図面では、図示の便宜上、機器又は装置の一部を省略又は簡略化して図示する場合がある。例えば、図1~6では、後述するスペーサ18の図示が省略されており、図7では、送風機34が、内部構造が省略されて単純な四角形で図示されている。
【0018】
また、本明細書において、機器の位置、方向及び向き等を説明する際には、特に断る場合を除き、当該機器が利用されている状態での位置、方向及び向き等を説明することとする。
【0019】
[栽培設備の概要]
先ず、本実施形態に係る栽培装置を含む栽培設備100について、図1~6を参照しながら概説する。なお、図6は、栽培装置が有する棚群の一つを示す図(側面図)であるが、図示の便宜上、棚12を構成する一対のレール部材50のうち、手前側のレール部材50が取り外された図となっている。
【0020】
また、以下では、互いに直交する3つの方向をX,Y,Z方向と呼ぶ。X及びY方向は、水平方向に相当し、Z方向は、鉛直方向、すなわち上下方向に相当する。また、X方向は、後述する棚12の延在方向に該当し、以下では、X方向において互いに反対を向く2つの向きのうちの一方を+Xと呼び、もう一方を-Xと呼ぶこととする。
【0021】
栽培設備100は、屋内又は屋外で植物を栽培するために利用され、植物工場のように所定の植物Pを大規模に栽培することが可能である。栽培設備100は、図1に示すように、栽培装置10と、搬送装置110と、評価装置120とを含む。栽培装置10と搬送装置110と評価装置120の位置関係(装置レイアウト)については、特に限定されないが、例えば図1に示すように栽培装置10の脇位置(具体的には、X方向において栽培装置10と隣り合う位置)に搬送装置110及び評価装置120が配置されてもよい。
【0022】
栽培装置10は、例えば、図2~6に示す多段の棚を複数備える装置であり、それぞれの棚12の上で植物を栽培する。
搬送装置110は、例えば、XYZ方向に移動可能なロボットアーム等によって構成され、栽培中の植物Pを栽培装置10から取り上げて評価装置120へ搬送し、その後に植物Pを評価装置120から栽培装置10に返送する。
評価装置120は、例えば、撮影装置と画像解析機能を備えたコンピュータとによって構成され、搬送装置110によって搬送された植物Pを撮影し、その撮影画像から当該植物Pの成長度合いを評価する。
【0023】
[栽培用の容器について]
次に、本実施形態における植物Pの栽培方式について、図7に示す模式断面図を参照しながら説明する。栽培装置10では、植物(以下、植物Pともいう)が図7に示す容器1を用いて栽培される。容器1は、液体の一例として、水又は植物Pの栽培を促進するための養液を内部に貯めている。以下では、容器1内に養液が溜められていることとする。
【0024】
植物Pは、植物Pの一部分(具体的には根部及び茎の下部)が容器1内の養液に浸かった状態で水耕栽培される。より詳しく説明すると、図7に示すように、植物Pの根部分がウレタン及びロックウール等の多孔質材からなる培地Vによって保持され、培地Vは、小鉢型のカップW内に収容されている。カップWの底には比較的大きな孔が形成されており、培地Vの下面が露出している。容器1の上部には、カップWの外縁と対応するように形成された開口が形成されており、図7に示すように、培地Vを収容したカップWが上記の開口に嵌り込む。これにより、培地Vの下端が容器1内の養液に浸かる。
【0025】
露出した培地Vの下面からは培地V内に養液が浸み込んでいくことにより、培地Vに保持された植物Pの根が養液に浸かる。一方で、培地Vよりも上方にある葉茎部分は、図7に示すように容器1の外側に出る。このような状態で植物Pが栽培装置10内で栽培される。
【0026】
なお、本実施形態に用いられる容器1は、大容量の水槽ではなく、比較的容積が小さい容器であり、一個の容器1では、一株、若しくは2~4株程度の植物Pを栽培する。また、容器1の形状は、特に限定されないが、図7のような略箱型形状でもよく、あるいは瓶形状又は鉢形状でもよい。
【0027】
本実施形態において、容器1内には、攪拌体としてのマグネチックスターラ(以下、スターラ2という)が収容されている。栽培中、容器1内の養液がスターラ2によって攪拌されることで、養液中の各種成分(例えば、養分、又は有機酸等の植物Pからの排出物)の濃度が容器1内で均一化される。これにより、植物Pの成長を良好に促進させることができる。
【0028】
また、本実施形態では、栽培中、容器1に入った状態の植物Pに対して、図7に示す光源32から照射される人工光が照射され、植物Pは、照射される光を利用して光合成を行う。また、本実施形態では、栽培中、図7に示す送風機34が植物P、詳しくは、植物Pにおいて容器1の外に出た葉部及び茎部に向けて送風する。これにより、植物P周辺の空気が換気され、植物P周辺での二酸化炭素濃度が光合成に適切な濃度に維持され、植物P周辺から高湿度の空気が除去されて植物Pからの蒸散が促進される。
【0029】
[栽培装置の構成]
次に、栽培装置10の構成について説明する。栽培装置10は、Z方向(上下方向)に並ぶ複数の棚12を備え、最上段を除く各棚12の上で植物Pを栽培する。本実施形態では、複数の棚12がユニット化されて棚群14をなしており、栽培装置10には、図1に示すように、Y方向に複数(図1では4基)の棚群14が並べて設けられている。
なお、棚群14の数は、特に限定されず、1基のみであってもよい。
【0030】
棚12は、図1~4に示すように、X方向に沿って延在しており、台16及び一対のレール部材50等によって構成されている。台16は、平面視で略方形形状であり、数cm程度の厚みを有する。そして、図2~6に示すように、栽培中の植物P、厳密には植物Pが入った容器1が台16の上面に載せられる。本実施形態では、一個の台16に載せる植物Pの数(換言すると、容器1の個数)が一つであるが、一個の台16に2つ以上の植物Pを載せてもよい。
【0031】
一対のレール部材50は、それぞれ金属製の長尺体からなり、例えばリップ溝形鋼(C形鋼)のような外形形状を有し、それぞれのリップ部分が向かい合うように配置されている。また、各レール部材50は、X方向(すなわち、棚12の延在方向)に長く延びており、Z方向に沿って立設された支柱52によって支持されている。Z方向におけるレール部材50の支持位置は、固定されてもよく、あるいは可変(調整可能)であってもよい。
【0032】
レール部材50の支持位置が可変である場合には、棚群14を構成する複数の棚12のそれぞれの高さ(Z方向における位置)を変更することができる。このような構成であれば、図3及び5に示すように、各棚12上で栽培する植物Pの成長度合いに応じて各棚12の高さを変えることができる。
【0033】
また、図3に示すように、棚群14の間で、Z方向における棚12の間隔(棚間隔)が異なってもよい。この場合には、植物Pの栽培過程において、当該植物Pを載せる棚群14を変更することができ、例えば、所定サイズ以上に成長した植物Pを棚間隔がより大きい棚群14へと移動させることができる。ただし、これには限定されず、棚群14の間で棚間隔が揃っていてもよい。
【0034】
一対のレール部材50の間には1個又は2個以上の台16がX方向に移動可能な状態で配置されている。具体的に説明すると、図3及び5に示すように、一対のレール部材50は、Y方向に間隔を開けて配置されており、レール部材50間の間隔は、台16の横幅(Y方向の寸法)よりも若干広くなっている。そして、台16は、一対のレール部材50に挟まれた状態、詳しくは、各レール部材50のリップ部分に台16のY方向端部が挿し込まれた状態でレール部材50の間に配置される。これにより、台16は、レール部材50に沿ってスライド移動可能な状態で一対のレール部材50に組み付けられる。
【0035】
台16の構成について説明すると、台16は、図7に示すように植物栽培用の電気機器として光源32、送風機34及び回転機器36を備えており、具体的には、これらの機器を、台16が備える筐体20内に収容している。上記の電気機器は、それぞれ、植物Pの栽培中に電力が供給されて作動する。
【0036】
光源32は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等からなり、栽培中、作動して光を発する。光源32からの光は、筐体20の下面に設けられた拡散レンズ33を通じて筐体20の下方に出射される。これにより、棚群14では、図7に示すように、上下(Z方向)において隣り合う2つの棚12のうち、上側の棚12にある台16の光源32が光を発することで、下側の棚12にある台16に載せられた植物Pに光が照射される。
【0037】
なお、本実施形態では、図2及び4に示すように、棚群14における最上段の棚12にある台16には、植物P(厳密には、植物Pが入った容器1)を載せない。つまり、最上段の棚12にある台16は、その台16が備える光源32から下方の植物P(詳しくは、上から2段目の棚12に載せられた植物P)に向けて光を照射するために利用される。ただし、これに限定されず、最上段の棚12にある台16に植物Pを載せてもよい。その場合には、最上段の棚12の上方位置に別の光源を設ければよい。
【0038】
送風機34は、例えば、筐体20内に収容されたファン(DCファン等)からなり、栽培中、作動して送風する。送風機34は、筐体20に設けられた通風孔(不図示)を通じて筐体20の外側から空気を取り込み、筐体20の下面に形成された送風口19を通じて筐体20の下側に送風する。これにより、棚群14では、図7に示すように、上下(Z方向)において隣り合う2つの棚12のうち、上側の棚12にある台16の送風機34から、下側の棚12にある台16に載せられた植物Pに向かって風(気流)が送られる。
【0039】
なお、本実施形態では、前述したように、棚群14中の最上段の棚12にある台16は、植物Pを載せる台ではなく、その台16が備える送風機34から下方の植物Pに向けて送風するために利用される。ただし、最上段の棚12にある台16に植物Pを載せてもよく、その場合には最上段の棚12の上方位置に別の送風機を設ければよい。
【0040】
回転機器36は、スターラを回転させる公知の機器と同様の機器であり、栽培中、作動して回転する。回転機器36は、例えば、筐体20内に収容された回転アーム37とモータ38によって構成され、回転アーム37は、その両端に永久磁石(不図示)を備え、モータ38が駆動すると、Z方向に沿った回転軸と一体的に回転する。これにより、筐体20の上面(すなわち、台16の上)に載せられた容器1内のスターラ2が回転し、この結果、容器1内の養液が攪拌される。
【0041】
以上のように本実施形態では、光源32、送風機34及び回転機器36が台16の内部、すなわち筐体20内に収容されている。筐体20内に上記の電気機器がすべて収容されることにより、栽培装置10の構造をよりコンパクト化することができる。
【0042】
各台16に備えられた光源32、送風機34及び回転機器36は、電源Bからの電力が供給されることで作動する。本実施形態において、電源Bは、図1及び2に示すように棚群14毎に設けられたバッテリ等からなり、電源Bからの電力は、棚群14中の各棚12を構成する複数の台16に送電され、それぞれの台16の内部において基板39を介して光源32、送風機34及び回転機器36に供給される。
【0043】
なお、電源Bは、棚群14毎に設けられる場合に限定されず、棚12毎に設けられてもよい。あるいは、商用電源を電源Bとして用いてもよく、その場合には、台16毎に設けられた光源32、送風機34及び回転機器36に対して商用電源の電力を分配(配電)して供給することになる。
【0044】
本実施形態において、各台16は、図7~9に示す一対のコネクタ22,23を備える。一対のコネクタ22,23は、台16内に設けられた基板39から延出した給電用端子であり、例えばマグネット端子等によって構成される。一方のコネクタ22は、台16が備える筐体20の+X側の端面を貫いて+X側に延出しており、他方のコネクタ23は、筐体20の-X側の端面を貫いて-X側に延出している。
【0045】
X方向において互いに隣り合う2つの台16のコネクタ22,23同士は、嵌合可能である。つまり、+X側に位置する台16に設けられた-X側のコネクタ23に、-X側に位置する台16に設けられた+X側のコネクタ22を嵌合させることができる。これにより、隣り合う2つの台16同士が連結する。また、コネクタ22,23同士が嵌合することで、隣り合う2つの台16のそれぞれに備えられた電気機器が、台16内の基板39を介して電気的に接続される。
【0046】
電気機器同士が電気的に接続された状態では、例えば、4本の通電ラインが形成される(開通する)。そのうち、2つのラインは、給電用のラインであり、一方は、電源Bの+極と電気的に繋がっており、もう一方は、電源Bの-極と電気的に繋がっている。残り2つのラインは、制御信用号のラインであり、一方は、シリアル信号線に相当するラインであり、もう一方は、シリアル信号線のグランド用(接地用)のラインである。シリアル信号線では、光源32の明るさ、及び、送風機34の回転数等を制御するための制御信号が伝送される。制御信号のインターフェース規格(シリアルポートの規格)は、特に限定されないが、例えば、RS485、RS422、RS232、DMX、UART、I2C、SPI、Microwire、CAN、及びLIN等が挙げられる。なお、電源Bの-極と繋がったラインと、シリアル信号線のグランド用のラインとを共通化してもよく、その場合には、電気機器同士の間に形成される通電ラインの本数は、3本となる。
【0047】
各棚12を構成する複数の台16のうち、X方向において電源Bに最も近い台16が有するコネクタ22,23のうちの一方は、不図示の電源ケーブルを通じて電源Bに繋がれ、他方は、隣接する台16のコネクタと嵌合する。この結果、複数の台16がコネクタ22,23によって連結して一つの棚12をなし、且つ、各台16に備えられた電気機器がコネクタ22,23を介して電源Bと電気的に接続される。連結された状態の複数の台16は、一体となって一対のレール部材50に沿って(詳しくは、レール部材50の間の隙間内を)X方向に移動することが可能である。
【0048】
本実施形態では、+X側のコネクタ22と-X側のコネクタ23とがZ方向(すなわち、棚12が延在するX方向と交差する方向)に嵌合する構造となっている。各コネクタ22,23の構造について図9を参照しながら説明すると、+X側のコネクタ22は、+X側に延出した平面視で矩形状のベース22Aと、ベース22Aの先端部からZ方向に延出した台側嵌合部22Bとを有する。台側嵌合部22Bは、円柱状のピンであり、本実施形態では、図9に示すように、ベース22Aの先端側にある2つの角部のそれぞれに設けられている。
【0049】
-X側のコネクタ23は、-X側に延出した平面視で矩形状のベース23Aと、ベース23Aの先端部に形成された貫通孔からなる台側嵌合部23Bとを有する。台側嵌合部23Bは、台側嵌合部22Bをなす円柱状のピンの外径よりも僅かに大きい径を有する円孔であり、台側嵌合部22Bと対応する位置に設けられている。すなわち、本実施形態において、台側嵌合部23Bは、ベース23Aの先端側にある2つの角部のそれぞれに設けられている。
【0050】
そして、コネクタ22,23は、円柱状のピンからなる台側嵌合部22Bが円孔からなる台側嵌合部23Bに挿し込まれることでZ方向に嵌合する。これにより、連結された状態の複数の台16をX方向に移動させるために押したり引いたりしても、台16同士の連結状態が解除されず良好に維持される。
【0051】
なお、コネクタ22,23が嵌合する方向は、Z方向に限定されず、X方向又はY方向でもよいが、台16同士の連結状態を良好に維持する観点では、X方向と交差する方向、すなわちY方向又はZ方向が好ましい。また、コネクタ22,23同士を嵌合させる構造は、上記の構造に限定されず、例えば、凹凸嵌合構造、スナップフィット等のような弾性を利用した嵌め込み構造、又は互いに係り合って連結するフック構造等でもよい。
【0052】
コネクタ22,23の各々が有するベース22A,23Aは、図9及び11に示すように、それぞれ、先端部に台側電極24を備えており、コネクタ22,23同士が嵌合することで台側電極24同士が互いに接触する。
【0053】
具体的には、コネクタ22が有するベース22Aの先端部には、凸形状の台側電極24が備えられており、コネクタ23が有するベース23Aの先端部には、凹形状の台側電極24が備えられている。双方の台側電極24は、互いに嵌り合った状態で接触する。それぞれの台側電極24は、ベース22A,23A及び基板39に設けられた不図示の導電パターンに繋がれており、導電パターンを介して台16内の電気機器(すなわち、光源32、送風機34及び回転機器36)に接続されている。
【0054】
そして、隣接する2つの台16がコネクタ22,23によって連結すると、それぞれのコネクタ22,23に備えられた台側電極24が互いに嵌り合って接触する。この結果、隣接する2つの台16の各々に備えられた電気機器が、互いに電気的に接続される。
【0055】
本実施形態では、コネクタ22,23間の嵌合状態、換言すると、台側電極24の接触状態をより良好に維持する構造が用いられている。具体的に説明すると、各コネクタ22,23が有するベース22A,23Aの先端部には、図9及び11に示すように、平板状の磁石25が取り付けられている。それぞれのベース22A,23Aの磁石25は、互いに対応する位置に配置されており、コネクタ22,23同士が嵌合すると、磁石25同士が接触する。この結果、磁石25の磁力により、台側電極24同士の接触状態が維持される。
【0056】
それぞれの棚12では、コネクタ22,23間の嵌合状態を解除して台16同士の間隔(以下、台の間隔という)を調整することが可能である。これにより、栽培中の植物Pの成長度合いに応じて台の間隔を変更することができ、例えば、植物Pのサイズが大きくなるほど台の間隔を広げることができる。
【0057】
本実施形態において、図3に示すように、同一の棚群14にある棚12同士の間では台の間隔が揃っている。また、各棚群14では、Z方向において隣り合う2つの棚12のうち、上側の棚12にある台16と、下側の棚12にある台16とがZ方向において重なる位置に配置されており、本実施形態では、X方向において同じ位置に配置されている。つまり、各棚群14では、図2及び6に示すように、各棚12の台16に載せられた植物Pの直上位置には台16が存在する。これにより、栽培中の植物Pには、その直上位置にある台16に備えられた光源32から光が照射され、且つ、その台16に備えられた送風機34から風(気流)が送られる。
【0058】
なお、図12に示すように、各棚群14におけるそれぞれの棚12において、台の間隔が揃っていなくてもよい。また、各棚群14において、Z方向において隣り合う2つの棚12のうち、上側の棚12にある台16と、下側の棚12にある台16とがZ方向において重なっていなくてもよく、X方向にずれた位置に配置されてもよい。
【0059】
台の間隔を調整(変更)した場合には、調整後の台の間隔を保持するために、台16同士の間に図9~11に示すスペーサ18が用いられる。スペーサ18は、図1及び2に示すように、X方向において隣り合う2つの台16の間に配置されて台16同士を連結させる。具体的には、スペーサ18は、それと隣り合う2つの台16のそれぞれのコネクタ22,23に接続可能であり、2つの台16は、スペーサ18を介して連結する。これにより、棚12を構成する複数の台16は、台の間隔を調整した後にも一体化された状態にあり、一対のレール部材50の間を一体となってX方向に移動することができる。
【0060】
スペーサ18は複数種類用意されており、種類毎に、X方向におけるスペーサ18のサイズ(全長)が異なる。台の間隔を調整する際には、調整後の間隔と対応する全長を有するスペーサ18を台16同士の間に配置する。換言すると、台同士の間隔は、スペーサ18のサイズを変えることで変更可能である。
【0061】
スペーサ18は、図9~11に示すように、略ブロック形状のスペーサ本体26と、スペーサ本体26の+X側の端から+X側に突出した突出部27と、スペーサ本体26の-X側の端から-X側に突出した突出部28とを有する。
【0062】
+X側の突出部27は、図10に示すように、スペーサ18の下側半分の位置に配置され、その先端部には、図9に示すように、Z方向に延びた円柱状のピンからなるスペーサ側嵌合部27Aを有する。スペーサ側嵌合部27Aは、台側嵌合部23Bをなす円孔の径よりも僅かに小さい外径を有し、台側嵌合部23Bと対応する位置、具体的には、突出部27の先端側にある2つの角部のそれぞれに設けられている。
【0063】
+X側の突出部27は、図10に示すように、コネクタ23のベース23Aの下側でベース23Aと隣接する。このとき、円孔からなる台側嵌合部23Bに、円柱状のピンからなるスペーサ側嵌合部27Aが挿し込まれる。これにより、スペーサ18(詳しくは、+X側の突出部27)がコネクタ23に嵌合し、本実施形態ではZ方向に嵌合する。
【0064】
-X側の突出部28は、図10に示すように、スペーサ18の上側半分の位置に配置され、その先端部には、図9に示すように、円形状の窪みからなるスペーサ側嵌合部28Aを有する。スペーサ側嵌合部28Aは、台側嵌合部22Bをなす円柱状のピンの外径よりも僅かに大きい径を有し、台側嵌合部22Bと対応する位置、具体的には、突出部28の先端側にある2つの角部のそれぞれに設けられている。
【0065】
-X側の突出部28は、図10に示すように、コネクタ22のベース22Aの上に載せられる。このとき、円柱状のピンからなる台側嵌合部22Bが、円形状の窪みからなるスペーサ側嵌合部28Aに挿し込まれる。これにより、スペーサ18(詳しくは、-X側の突出部28)がコネクタ22に嵌合し、本実施形態ではZ方向に嵌合する。
【0066】
台側嵌合部22B,23Bとスペーサ側嵌合部27A,28Aとの嵌合により、コネクタ22,23とスペーサ18とが接続され、この結果、隣り合う2つの台16がスペーサ18を介して連結される。また、本実施形態では、台側嵌合部22B,23Bとスペーサ側嵌合部27A,28AとがZ方向(すなわち、棚12の延出方向と交差する方向)に嵌合するため、連結された状態の複数の台16をX方向に移動させるためにX方向に押したり引いたりしても、台16同士の連結状態が解除されず良好に維持される。
【0067】
なお、台側嵌合部22B,23Bとスペーサ側嵌合部27A,28Aとを嵌合する方向は、Z方向に限定されず、X方向又はY方向でもよい。ただし、台16同士の連結状態(換言すると、台16とスペーサ18との連結状態)を良好に維持する観点では、X方向と交差する方向、すなわちY方向又はZ方向がより好ましい。また、台側嵌合部22B,23Bとスペーサ側嵌合部27A,28Aとを嵌合させる構造は、上記の構造に限定されず、例えば、凹凸嵌合構造、スナップフィット等のような弾性を利用した嵌め込み構造、又は互いに係り合うことで連結するフック構造等でもよい。
【0068】
本実施形態では、スペーサ18が台16のコネクタ22,23に接続されて台16に接することで、スペーサ18と、台16に備えられた電気機器(すなわち、光源32、送風機34及び回転機器36)とが、台16内の基板39を介して電気的に接続される。
【0069】
具体的に説明すると、スペーサ18が有する2つの突出部27,28は、図9及び11に示すように、それぞれ、先端部にスペーサ側電極29を備える。より詳しく説明すると、+X側の突出部27には凸形状のスペーサ側電極29が備えられている。凸形状のスペーサ側電極29は、+X側の突出部27が有するスペーサ側嵌合部27Aがコネクタ23の台側嵌合部23Bと嵌合した際に、コネクタ23に設けられた凹形状の台側電極24と嵌り合って接触する。
【0070】
他方、-X側の突出部28には凹形状のスペーサ側電極29が備えられている。凹形状のスペーサ側電極29は、-X側の突出部28が有するスペーサ側嵌合部28Aがコネクタ22の台側嵌合部23Bと嵌合した際に、コネクタ22に設けられた凸形状の台側電極24と嵌り合って接触する。
【0071】
スペーサ18において、上記2つのスペーサ側電極29は、スペーサ18内に設けられた不図示の導通部によって電気的に繋がっている。したがって、各々のスペーサ側電極29が、対応する台側電極24と嵌り合って接触すると、スペーサ18を挟んで隣接する2つの台16の各々の電気機器とスペーサ18(詳しくはスペーサ側電極29)とが互いに電気的に接続される。この結果、スペーサ18を介して連結した複数の台16の各々に備えられた電気機器と、スペーサ18と、電源Bとが電気的に接続される。
【0072】
上記の構成によれば、各台16に備えられた電気機器への電力供給構造がより簡素化され、台の間隔を調整した後にも、上記の電気機器へ良好に電力を供給することができる。より詳しく説明すると、各台16に備えられた電気機器へ電力を供給するために配線ケーブル等を台16毎に敷設するような構成では、栽培装置周辺に配線ケーブルの束が配置されるため、煩雑な電力供給構造となり、台の間隔を調整した場合には、それに伴って配線ケーブルの配置を変更し、その作業に手間を要する。
【0073】
これに対して、本実施形態では、スペーサ18を台16と接触させることで台16に備えられた電気機器とスペーサ18と電源Bとが電気的に接続されるため、配線コードを要さず、また、台の間隔を調整した後にもコード位置の変更作業が不要であるので、間隔調整後の電力供給がより簡単になる。
【0074】
なお、本実施形態では、スペーサ18と台16との接触状態、より詳しくは、台側電極24とスペーサ側電極29との接触状態をより良好に維持する構造が用いられている。具体的に説明すると、スペーサ18が有する2つの突出部27,28のそれぞれの先端部には、図9及び11に示すように、平板型の磁石30が取り付けられている。
【0075】
+X側の突出部27に設けられた磁石30は、コネクタ23のベース23Aに設けられた磁石25と対応する位置に配置されており、-X側の突出部28に設けられた磁石30は、コネクタ22のベース22Aに設けられた磁石25と対応する位置に配置されている。そして、コネクタ22,23とスペーサ18とを接続させると、スペーサ18側の磁石30が、コネクタ22,23に設けられた磁石25のうち、対応する磁石25と接触する。この結果、磁石25,30の磁力によって台16とスペーサ18との接触状態が維持される。
【0076】
なお、台16及びスペーサ18の双方に磁石25,30が備えられるケースには限定されず、台16とスペーサ18との間に磁力が発生すればよく、台16及びスペーサ18の一方にのみ磁石が備えられるケースでもよい。例えば、コネクタ22,23のベース22A,23Aが金属等の強磁性体によって構成される場合には、スペーサ18にのみ磁石30が設けられればよい。
【0077】
また、台側電極24とスペーサ側電極29との接触状態を維持する手段は、上記の磁石25,30以外にも考えられる。例えば、図13に示すように、台16が有する筐体20の+X側の端面においてコネクタ22のベース22Aの上方でベース22Aと対向する位置に板バネ等からなる付勢部材40を配置してもよい。同様に、筐体20の-X側の端面においてコネクタ23のベース23Aの上方でベース23Aと対向する位置に付勢部材40を配置してもよい。
【0078】
図13に示す構成において、スペーサ18をコネクタ22,23に接続する際には、スペーサ18が有する2つの突出部27,28の各々を、対応するコネクタ22,23のベース22A,23Aと付勢部材40との隙間に挿し込む。このとき、付勢部材40が弾性変形し、その弾性力によって突出部27,28がベース22A,23Aに押し付けられる。つまり、付勢部材40は、台16及びスペーサ18のうちの少なくとも一方を付勢する。このような構成によれば、台側電極24とスペーサ側電極29との接触状態を良好に維持することができる。
【0079】
[本実施形態に係る栽培装置を用いた栽培方法について]
次に、本実施形態に係る栽培装置10を用いた栽培方法(以下、本実施形態の栽培方法という)の流れについて説明する。
本実施形態の栽培方法では、栽培対象の植物Pが、複数の棚群14において最上段を除く棚12の上で栽培される。詳しくは、棚12を構成する台16の上に容器1が載置され、植物Pは、容器1内の養液に根部分が浸った状態で水耕栽培される。
【0080】
栽培期間中、各棚群14では、台16内に備えられた回転機器36が回転することにより、その台16に載せられた容器1内の養液が、容器1内のスターラ2によって攪拌される。また、上下(Z方向)において隣り合う2つの棚12のうち、上側の棚12にある台16の光源32が光を発することで、下側の棚12にある台16に載せられた植物Pに光が照射される。さらに、上側の棚12にある台16の送風機34から、下側の棚12にある台16に載せられた植物Pに向かって風(気流)が送られる。
【0081】
本実施形態の栽培方法では、定期的に、例えば毎日決められた時刻に、図14に示す作業フローが実施される。作業フローは、複数の棚群14のそれぞれにおいて栽培される植物Pの全株を対象として実施される。
【0082】
作業フローでは、先ず、棚群14の中の一つの棚12を対象とし、対象の棚12にて栽培される植物Pを、搬送装置110によってピックアップして評価装置120まで搬送する(S001)。このとき、植物Pが入った容器1と、その容器1を載せた台16も併せて搬送される。つまり、対象の棚12において台16をX方向に沿って移動させて一対のレール部材50から取り外し、台16を評価装置120まで移動させて、その台16に載せられた容器1及び植物Pを評価装置120に搬送する。
【0083】
次に、評価装置120にて、植物Pの成長度合いを評価し、具体的には植物Pを撮影し、その撮影画像から植物Pのサイズ等を測定する(S002)。なお、植物Pの成長度合いを評価する間に、その植物Pが入った容器1中の養液を補給又は交換してもよい。
【0084】
その後、評価した成長度合いに基づき、植物Pの栽培場所を変更する必要があるか否かを判断する(S003)。具体的には、植物Pを、搬送前に置かれていた棚群14中の棚12(つまり、元の棚12)に戻すか、台の間隔がより広くなった棚群14中の棚12に移し替えるかを判断する。
【0085】
上記のステップS003において栽培場所を変える必要がないと判断された場合、植物Pは、台16に載せられた容器1の中に入った状態で、搬送装置110によって元の棚12に戻される(S004)。
【0086】
他方、上記のステップS003において栽培場所を変える必要があると判断された場合、植物Pは、搬送装置110によって、台の間隔がより広い棚群14中の棚12へ移送される(S005)。この場合、植物Pが載せられた台16は、移送先の棚群14において、一対のレール部材50に配置されてX方向に沿って移動する。移動後の台16は、棚12において、当該台16と隣り合う台16との間に所定の間隔を空けて配置される。このとき、台16の間には、上記の間隔に相当するサイズのスペーサ18が配置され、スペーサ18によって、隣り合う2つの台16同士が連結される。
【0087】
以上のように、本実施形態では、各植物Pの栽培場所を各植物Pの成長度合いに応じて移動させることができ、具体的には、植物Pのサイズに応じて台の間隔及び棚間隔を変えることができる。また、植物Pを移動させる際には容器1、台16及び台16に備えられた電気機器(光源32、送風機34及び回転機器36)を併せて移動させ、これらを一ユニットとして植物Pの株毎に取り扱うことができる。
【0088】
上記一連の作業S001~S005は、対象とする棚12の上で栽培される植物Pのすべて、換言すると、対象とする棚12を構成する台16のすべてに対して実施され(S006)、また、棚群14に含まれる棚12のすべてを対象として繰り返される(S007)。
【0089】
そして、以上までに説明した流れにて作業フローが棚群14単位で実施され、複数の棚群14の各々について作業フローが完了した時点で、その日の作業が終了する。
【0090】
なお、本実施形態では、棚群14中の各棚12において、複数の台16がコネクタ22,23同士の嵌合、又はコネクタ22,23とスペーサ18との嵌合によって連結している。そのため、本実施形態の栽培方法において植物Pを搬送させるために台16をX方向に移動させる際には、複数の台16が連結した状態で一体的に移動し、複数の台16をまとめて効率よく動かすことができる。
【0091】
[その他の実施形態]
以上までに本発明の栽培装置について具体例を挙げて説明したが、上述の実施形態は、あくまでも一例に過ぎず、他の実施形態も考えられ得る。
【0092】
上述の実施形態では、栽培装置10が上下(Z方向)に並ぶ複数の棚12からなる棚群14を有することとしたが、これに限定されるものではない。例えば、棚12を一つのみ有する栽培装置でもよく、あるいは、単段の棚12がX方向又はY方向において複数箇所に並べて配置されて構成される栽培装置でもよい。
【0093】
また、上述の実施形態では、棚12が複数の台16によって構成され、台16の間にスペーサ18が配置された棚12では、台16の個数に応じた数(詳しくは、台16の個数より1つ少ない数)のスペーサ18が配置されていることとした。ただし、これに限定されず、棚12において台16及びスペーサ18が一個ずつ配置される構成でもよい。
【0094】
また、上述の実施形態では、台16の内部に光源32、送風機34及び回転機器36が設けられていることとしたが、これに限定されず、上述した3つの電気機器のうち、台16に備えられておらず別の場所に設けられた機器が含まれてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 容器
2 スターラ
10 栽培装置
12 棚
14 棚群
16 台
18 スペーサ
20 筐体
21 送風口
22,23 コネクタ
22A,23A ベース部
22B,23B 台側嵌合部
24 台側電極
25 磁石
26 スペーサ本体
27,28 突出部
27A,28A スペーサ側嵌合部
29 スペーサ側電極
30 磁石
32 光源
33 拡散レンズ
34 送風機
36 回転機器
37 回転アーム
38 モータ
39 基板
40 付勢部材
50 レール部材
52 支柱
100 植物設備
110 搬送装置
120 評価装置
B 電源
P 植物
V 培地
W カップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14