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特開2022-64206繊維製品用洗浄剤キット、繊維製品用洗浄剤組成物、及び繊維製品の洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064206
(43)【公開日】2022-04-25
(54)【発明の名称】繊維製品用洗浄剤キット、繊維製品用洗浄剤組成物、及び繊維製品の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/722 20060101AFI20220418BHJP
   C11D 3/33 20060101ALI20220418BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20220418BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
C11D1/722
C11D3/33
C11D1/72
C11D1/75
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172803
(22)【出願日】2020-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】397056042
【氏名又は名称】セッツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】小泉 あや
(72)【発明者】
【氏名】村上 拡
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB15
4H003AC08
4H003AC14
4H003AC15
4H003AC23
4H003BA12
4H003DA01
4H003DB02
4H003DC02
4H003EB16
4H003FA04
4H003FA06
4H003FA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高温下での洗浄において、繊維製品に付着した油汚れに対して優れた洗浄効果を有する繊維製品用洗浄剤キットを提供する。
【解決手段】エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及び/又はその塩であるキレート剤(A)を含む第1剤と、ノニオン界面活性剤(B)を含む第2剤と、を含み、用時に、前記第1剤及び前記第2剤を混合して繊維製品用洗浄剤を調製するための繊維製品用洗浄剤キットであって、前記繊維製品用洗浄剤は、30℃以上の温度の水中で繊維製品を洗浄するために用いられ、前記ノニオン界面活性剤(B)は、下記一般式(1)で表される化合物である、繊維製品用洗浄剤キット。

[Rは第1級又は第2級アルコールに由来するC数6~22の炭化水素基、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基、pは3~20の数、qは1~20の数、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれでもよい。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及び/又はその塩であるキレート剤(A)を含む第1剤と、
ノニオン界面活性剤(B)を含む第2剤と、
を含み、
用時に、前記第1剤及び前記第2剤を混合して繊維製品用洗浄剤を調製するための繊維製品用洗浄剤キットであって、
前記繊維製品用洗浄剤は、30℃以上の温度の水中で繊維製品を洗浄するために用いられ、
前記ノニオン界面活性剤(B)は、下記一般式(1)で表される化合物である、繊維製品用洗浄剤キット。
【化1】
[一般式(1)中、R1は第1級または第2級アルコールに由来する炭素数6~22の炭化水素基であり、EOはオキシエチレン基であり、POはオキシプロピレン基であり、pはEOの平均繰返し数であって3~20の数であり、qはPOの平均繰返し数であって1~20の数であり、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれでもよい。]
【請求項2】
前記一般式(1)において、前記POの付加モル数に対する前記EOの付加モル数の比(EO/PO)が、0.5~10.0である、請求項1に記載の繊維製品用洗浄剤キット。
【請求項3】
前記ノニオン界面活性剤(B)が、ノニオン界面活性剤(Ba)及びノニオン界面活性剤(Bb)の混合物であり、
前記ノニオン界面活性剤(Ba)は、前記一般式(1)において、前記POの付加モル数に対する前記EOの付加モル数の比(EO/PO)が、前記ノニオン界面活性剤(Bb)よりも大きく、
前記ノニオン界面活性剤(Ba)と前記ノニオン界面活性剤(Bb)との質量比(Ba:Bb)が、9:1~1:3である、請求項1又は2に記載の繊維製品用洗浄剤キット。
【請求項4】
前記第1剤と前記第2剤が、アニオン界面活性剤を実質的に含まない、請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤キット。
【請求項5】
前記繊維製品用洗浄剤において、前記キレート剤(A)と前記ノニオン界面活性剤(B)の合計割合を100質量%とした場合に、前記キレート剤(A)の割合が9~85質量%、前記ノニオン界面活性剤(B)の割合が15~91質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤キット。
【請求項6】
下記一般式(2)で表される両性界面活性剤(E)を、前記ノニオン界面活性剤(B)100質量部に対して、10~125質量部含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤キット。
【化2】
[一般式(2)中、R2は6~14の炭化水素基である。]
【請求項7】
前記繊維製品が、合成繊維を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤キット。
【請求項8】
前記合成繊維が、ポリエステル繊維を含む、請求項7に記載の繊維製品用洗浄剤キット。
【請求項9】
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及び/又はその塩であるキレート剤(A)とノニオン界面活性剤(B)を含む繊維製品用洗浄剤であって、
前記繊維製品用洗浄剤は、30℃以上の温度の水中で繊維製品を洗浄するために用いられ、
前記ノニオン界面活性剤(B)は、下記一般式(1)で表される化合物である、繊維製品用洗浄剤。
【化3】
[一般式(1)中、R1は第1級または第2級アルコールに由来する炭素数6~22の炭化水素基であり、EOはオキシエチレン基であり、POはオキシプロピレン基であり、pはEOの平均繰返し数であって3~20の数であり、qはPOの平均繰返し数であって1~20の数であり、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれでもよい。]
【請求項10】
前記一般式(1)において、前記POの付加モル数に対する前記EOの付加モル数の比(EO/PO)が、0.5~10.0である、請求項9に記載の繊維製品用洗浄剤。
【請求項11】
前記ノニオン界面活性剤(B)が、ノニオン界面活性剤(Ba)及びノニオン界面活性剤(Bb)の混合物であり、
前記ノニオン界面活性剤(Ba)は、前記一般式(1)において、前記POの付加モル数に対する前記EOの付加モル数の比(EO/PO)が、前記ノニオン界面活性剤(Bb)よりも大きく、
前記ノニオン界面活性剤(Ba)と前記ノニオン界面活性剤(Bb)との質量比(Ba:Bb)が、9:1~1:3である、請求項9又は10に記載の繊維製品用洗浄剤。
【請求項12】
アニオン界面活性剤を実質的に含まない、請求項9~11のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤。
【請求項13】
前記繊維製品用洗浄剤において、前記キレート剤(A)と前記ノニオン界面活性剤(B)の合計割合を100質量%とした場合に、前記キレート剤(A)の割合が9~85質量%、前記ノニオン界面活性剤(B)の割合が15~91質量%である、請求項9~12のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤。
【請求項14】
下記一般式(2)で表される両性界面活性剤(E)を、前記ノニオン界面活性剤(B)100質量部に対して、10~125質量部含む、請求項9~13のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤。
【化4】
[一般式(2)中、R2は炭素数6~14の炭化水素基である。]
【請求項15】
前記繊維製品が、合成繊維を含む、請求項9~14のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤。
【請求項16】
前記合成繊維が、ポリエステル繊維を含む、請求項15に記載の繊維製品用洗浄剤。
【請求項17】
水と、請求項1~8のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤キットの前記第1剤及び前記第2剤とを混合して繊維製品用洗浄剤を調製する工程と、
前記繊維製品用洗浄剤を用いて、30℃以上の温度の水中で繊維製品を洗浄する洗浄工程と、
洗浄後の前記繊維製品を濯ぎ水ですすぐ工程と、
を備える、繊維製品の洗浄方法。
【請求項18】
請求項9~16のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤を用いて、30℃以上の温度の水中で繊維製品を洗浄する洗浄工程と、
洗浄後の前記繊維製品を濯ぎ水ですすぐ工程と、
を備える、繊維製品の洗浄方法。
【請求項19】
繊維製品100質量部に対して、前記キレート剤(A)が0.001質量部以上になるようにして、前記洗浄工程を行う、請求項17又は18に記載の繊維製品の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品用洗浄剤キット、繊維製品用洗浄剤組成物、及び繊維製品の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯には大きく分けて、家庭用洗濯機を使用したり手洗いするなどの一般家庭での洗濯と、工場や専用設備で洗浄される業務用の洗濯(クリーニングなど)とがある。両者の違いとして、浴比や機械力、洗浄温度などが挙げられる。例えば、一般家庭では、常温で洗浄されるのに対して、業務用では高温(30℃以上、さらには40℃以上)での洗浄が一般的である。
【0003】
近年では、合成繊維が普及し、衣類、工場の作業着、病院のユニフォーム、ホテルや飲食店のテーブルクロス、シーツなど様々なものに使用されるようになった。ポリエステルなどの合成繊維は、疎水性であるため、疎水性の汚れと親和性が高く、油などの汚れが落ちにくいことが知られている。
【0004】
また、洗浄で落ちた汚れが布に再付着してしまう問題もあり、折角洗浄しても、再び汚れてしまうことがある。一度の洗浄では再付着が大きく目立たなくても、洗浄を繰り返すことで、くろずみや黄ばみ等として確認されるようになっていく。そのため、汚れの再汚染防止性は重要であると考えられる。そして再付着は、洗浄剤の洗浄性能が高まるほど、布から洗浄液中に分散される汚れ量が多くなるため、再汚染防止性を発揮することが難しくなる。
【0005】
従来、繊維製品の洗浄剤として、様々なものが利用されている。例えば、特許文献1には家庭用の洗濯条件において、布地からの汚れ落ちを促進する洗浄剤が記載されている。
【0006】
業務用の洗濯で洗浄されるものは、ホテルや飲食店で使用されるテーブルクロスや工場の作業着など油汚れが、家庭での繊維製品(被洗物)に比べて多い傾向にある。そして、そのような汚れを落とすためには、より洗浄効果を発揮させる洗浄剤、及び、洗浄方法が用いる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2014-518923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記の通り、合成繊維等の繊維製品に付着した油汚れは非常に落ちにくく、飲食店やホテルのテーブルクロス、工場の作業着など油汚れの付着が多い合成繊維に使用される洗浄剤には、家庭用洗浄剤に比して、優れた洗浄能力が求められる。
【0009】
このような状況下、本発明は、高温下での洗浄において、繊維製品に付着した油汚れに対して優れた洗浄効果を有する繊維製品用洗浄剤を提供することを主な目的とする。本発明は、当該繊維製品用洗浄剤を調製するためのキット、当該繊維製品用洗浄剤を用いた繊維製品の洗浄方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、特定のキレート剤(A)と特定のノニオン界面活性剤(B)を含む繊維製品用洗浄剤を用いて、30℃以上の温度の水中で繊維製品を洗浄することにより、繊維製品に付着した油汚れが効果的に洗浄されることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0011】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及び/又はその塩であるキレート剤(A)を含む第1剤と、
ノニオン界面活性剤(B)を含む第2剤と、
を含み、
用時に、前記第1剤及び前記第2剤を混合して繊維製品用洗浄剤を調製するための繊維製品用洗浄剤キットであって、
前記繊維製品用洗浄剤は、30℃以上の温度の水中で繊維製品を洗浄するために用いられ、
前記ノニオン界面活性剤(B)は、下記一般式(1)で表される化合物である、繊維製品用洗浄剤キット。
【化1】
[一般式(1)中、R1は第1級または第2級アルコールに由来する炭素数6~22の炭化水素基であり、EOはオキシエチレン基であり、POはオキシプロピレン基であり、pはEOの平均繰返し数であって3~20の数であり、qはPOの平均繰返し数であって1~20の数であり、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれでもよい。]
項2. 前記一般式(1)において、前記POの付加モル数に対する前記EOの付加モル数の比(EO/PO)が、0.5~10.0である、項1に記載の繊維製品用洗浄剤キット。
項3. 前記ノニオン界面活性剤(B)が、ノニオン界面活性剤(Ba)及びノニオン界面活性剤(Bb)の混合物であり、
前記ノニオン界面活性剤(Ba)は、前記一般式(1)において、前記POの付加モル数に対する前記EOの付加モル数の比(EO/PO)が、前記ノニオン界面活性剤(Bb)よりも大きく、
前記ノニオン界面活性剤(Ba)と前記ノニオン界面活性剤(Bb)との質量比(Ba:Bb)が、9:1~1:3である、項1又は2に記載の繊維製品用洗浄剤キット。
項4. 前記第1剤と前記第2剤が、アニオン界面活性剤を実質的に含まない、項1~3のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤キット。
項5. 前記繊維製品用洗浄剤において、前記キレート剤(A)と前記ノニオン界面活性剤(B)の合計割合を100質量%とした場合に、前記キレート剤(A)の割合が9~85質量%、前記ノニオン界面活性剤(B)の割合が15~91質量%である、項1~4のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤キット。
項6. 下記一般式(2)で表される両性界面活性剤(E)を、前記ノニオン界面活性剤(B)100質量部に対して、10~125質量部含む、項1~5のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤キット。
【化2】
[一般式(2)中、R2は6~14の炭化水素基である。]
項7. 前記繊維製品が、合成繊維を含む、項1~6のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤キット。
項8. 前記合成繊維が、ポリエステル繊維を含む、項7に記載の繊維製品用洗浄剤キット。
項9. エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及び/又はその塩であるキレート剤(A)とノニオン界面活性剤(B)を含む繊維製品用洗浄剤であって、
前記繊維製品用洗浄剤は、30℃以上の温度の水中で繊維製品を洗浄するために用いられ、
前記ノニオン界面活性剤(B)は、下記一般式(1)で表される化合物である、繊維製品用洗浄剤。
【化3】
[一般式(1)中、R1は第1級または第2級アルコールに由来する炭素数6~22の炭化水素基であり、EOはオキシエチレン基であり、POはオキシプロピレン基であり、pはEOの平均繰返し数であって3~20の数であり、qはPOの平均繰返し数であって1~20の数であり、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれでもよい。]
項10. 前記一般式(1)において、前記POの付加モル数に対する前記EOの付加モル数の比(EO/PO)が、0.5~10.0である、項9に記載の繊維製品用洗浄剤。
項11. 前記ノニオン界面活性剤(B)が、ノニオン界面活性剤(Ba)及びノニオン界面活性剤(Bb)の混合物であり、
前記ノニオン界面活性剤(Ba)は、前記一般式(1)において、前記POの付加モル数に対する前記EOの付加モル数の比(EO/PO)が、前記ノニオン界面活性剤(Bb)よりも大きく、
前記ノニオン界面活性剤(Ba)と前記ノニオン界面活性剤(Bb)との質量比(Ba:Bb)が、9:1~1:3である、項9又は10に記載の繊維製品用洗浄剤。
項12. アニオン界面活性剤を実質的に含まない、項9~11のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤。
項13. 前記繊維製品用洗浄剤において、前記キレート剤(A)と前記ノニオン界面活性剤(B)の合計割合を100質量%とした場合に、前記キレート剤(A)の割合が9~85質量%、前記ノニオン界面活性剤(B)の割合が15~91質量%である、項9~12のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤。
項14. 下記一般式(2)で表される両性界面活性剤(E)を、前記ノニオン界面活性剤(B)100質量部に対して、10~125質量部含む、項9~13のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤。
【化4】
[一般式(2)中、R2は炭素数6~14の炭化水素基である。]
項15. 前記繊維製品が、合成繊維を含む、項9~14のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤。
項16. 前記合成繊維が、ポリエステル繊維を含む、項15に記載の繊維製品用洗浄剤。
項17. 水と、項1~8のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤キットの前記第1剤及び前記第2剤とを混合して繊維製品用洗浄剤を調製する工程と、
前記繊維製品用洗浄剤を用いて、30℃以上の温度の水中で繊維製品を洗浄する洗浄工程と、
洗浄後の前記繊維製品を濯ぎ水ですすぐ工程と、
を備える、繊維製品の洗浄方法。
項18. 項9~16のいずれか1項に記載の繊維製品用洗浄剤を用いて、30℃以上の温度の水中で繊維製品を洗浄する洗浄工程と、
洗浄後の前記繊維製品を濯ぎ水ですすぐ工程と、
を備える、繊維製品の洗浄方法。
項19. 繊維製品100質量部に対して、前記キレート剤(A)が0.001質量部以上になるようにして、前記洗浄工程を行う、項17又は18に記載の繊維製品の洗浄方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高温下での洗浄において、繊維製品に付着した油汚れに対して優れた洗浄効果を有する繊維製品用洗浄剤を提供することができる。さらに、本発明によれば、当該繊維製品用洗浄剤を調製するためのキット、当該繊維製品用洗浄剤を用いた繊維製品の洗浄方法を提供することもできる。
【0013】
また、本発明の繊維製品用洗浄剤は、高温下での繊維製品の洗浄における、再汚染防止性を発揮し得る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.洗浄剤及びこれを調製するためのキット
本発明の洗浄剤は、キレート剤(A)とノニオン界面活性剤(B)を含む繊維製品用洗浄剤であって、繊維製品用洗浄剤は、30℃以上の温度の水中で繊維製品を洗浄するために用いられ、キレート剤(A)は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及び/又はその塩であり、ノニオン界面活性剤(B)は、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴としている。本発明の繊維製品用洗浄剤は、このような構成を備えることにより、高温下での洗浄において、繊維製品に付着した油汚れに対して優れた洗浄効果を発揮する。
【0015】
【化5】
【0016】
一般式(1)中、R1は第1級または第2級アルコールに由来する炭素数6~22の炭化水素基であり、EOはオキシエチレン基であり、POはオキシプロピレン基であり、pはEOの平均繰返し数であって3~20の数であり、qはPOの平均繰返し数であって1~20の数であり、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれでもよい。
【0017】
また、本発明の繊維製品用洗浄剤キットは、本発明の繊維製品用洗浄剤を調製するためのキットである。具体的には、本発明の繊維製品用洗浄剤キットは、キレート剤(A)を含む第1剤と、ノニオン界面活性剤(B)を含む第2剤とを含み、用時に、第1剤及び第2剤を混合して繊維製品用洗浄剤を調製するための繊維製品用洗浄剤キットである。本発明の繊維製品用洗浄剤キットによって調製される繊維製品用洗浄剤は、30℃以上の温度の水中で繊維製品を洗浄するために用いられ、キレート剤(A)は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及び/又はその塩であり、ノニオン界面活性剤(B)は、前記の一般式(1)で表される化合物であることを特徴としている。本発明の繊維製品用洗浄剤キットは、第1剤と第2剤を含む2剤タイプのキットであり、第1剤と第2剤を用時に混合して、本発明の繊維製品用洗浄剤を好適に調製することができる。調製された本発明の繊維製品用洗浄剤は、高温下での洗浄において、繊維製品に付着した油汚れに対して優れた洗浄効果を発揮することができる。また、本発明の繊維製品用洗浄剤キットは、第1剤及び第2剤に分離して保存することができるため、保存安定性などの点で有利である。
【0018】
なお、本発明の繊維製品用洗浄剤キットにおいて、第1剤と第2剤とを混合するタイミングについては、繊維製品を洗浄する際に混合されていれば、特に制限されない。例えば、第1剤と第2剤とを予め混合して繊維製品用洗浄剤とし、これを繊維製品と混合して繊維製品を洗浄してもよいし、第1剤と第2剤のいずれか一方と繊維製品を混合した後、残りの第1剤又は第2剤をさらに混合して繊維製品用洗浄剤を調製して、繊維製品を洗浄してもよい。
【0019】
また、繊維製品用洗浄剤は、繊維製品を水中で洗浄するために用いられる洗浄剤であり、繊維製品用洗浄剤と水を混合するタイミングについても、繊維製品が水中で洗浄されれば、どのようなタイミングでもよい。
【0020】
また、後述のとおり、本発明の繊維製品用洗浄剤は、繊維製品の中でも特に合成繊維を洗浄するために好適に用いられるものであり、例えば合成繊維と共に天然繊維を洗浄するためにも好適に用いることもできる。また、合成繊維を含まない天然繊維の洗浄に用いても差し支えない。
【0021】
以下、本発明の繊維製品用洗浄剤及びこれを調製するための繊維製品用洗浄剤キットについて詳述する。なお、以下の説明においては、本発明の繊維製品用洗浄剤の構成を中心に説明するが、本発明の繊維製品用洗浄剤キットにおいても、キレート剤(A)を含む第1剤と、ノニオン界面活性剤(B)を含む第2剤とに分かれていることを除き、各成分の種類や含有量については、本発明の繊維製品用洗浄剤と共通しているため、適宜説明を省略する。
【0022】
キレート剤(A)は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及び/又はその塩である。エチレンジアミン四酢酸の塩としては、例えばエチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩が挙げられる。
【0023】
キレート剤(A)は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及び/又はその塩に加えて、さらに他のキレート剤を含んでいてもよい。他のキレート剤としては、例えばニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、β-アラニンジ酢酸塩、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、L-グルタミン酸ジ酢酸(GLDA)、3-ヒドロキシ-2,2’-イミノジコハク酸(HIDS)、S,S-エチレンジアミン二コハク酸(EDDS)、イミノジコハク酸(IDS)、L-アスパラギン酸-N,N-二酢酸四ナトリウム塩(ASDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、2ホスホノブタン-1,2,4トリカルボン酸(PBTC)、セリンジ酢酸塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸塩、ジヒドロキシエチルグリシン塩、ヒドロキシ酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、ピロメリット酸塩、ベンゾポリカルボン酸塩、シクロペンタンテトラカルボン酸塩、カルボキシメチルタルトロネート、カルボキシメチルオキシサクシネート、オキシジサクシネート、酒石酸モノ又はジサクシネート等のエーテルカルボン酸塩等が挙げられる。キレート剤(A)に他のキレート剤が含まれる場合、他のキレート剤は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0024】
ノニオン界面活性剤(B)は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0025】
【化6】
【0026】
一般式(1)中、R1は第1級または第2級アルコールに由来する炭素数6~22の炭化水素基であり、EOはオキシエチレン基であり、POはオキシプロピレン基であり、pはEOの平均繰返し数であって3~20の数であり、qはPOの平均繰返し数であって1~20の数であり、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれでもよい。一般式(1)中、R1は第1級または第2級アルコールに由来する炭素数6~20の炭化水素基であり、pは4~13の数であり、qは1~16の数であることが好ましく、R1は第1級または第2級アルコールに由来する炭素数8~18の炭化水素基であり、pは6~13の数であり、qは1~6の数であることがより好ましい。
【0027】
ノニオン界面活性剤(B)の具体例としては、第1級または第2級アルコールに由来するポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0028】
ノニオン界面活性剤(B)の前記一般式(1)において、POの付加モル数に対するEOの付加モル数の比(EO/PO)、つまり、一般式(1)中のp/qの値が0.5以上、10.0以下であると、繊維製品に付着した油汚れに対して、さらに優れた洗浄性を発揮することができる。当該比は、より好ましくは1.0以上、7.0以下、さらに好ましくは1.5以上、5.0以下、さらに好ましくは1.6以上、4.0以下である。
【0029】
また、ノニオン界面活性剤(B)が、ノニオン界面活性剤(Ba)及びノニオン界面活性剤(Bb)の混合物であり、ノニオン界面活性剤(Ba)は、前記一般式(1)において、前記POの付加モル数に対する前記EOの付加モル数の比(EO/PO)が、ノニオン界面活性剤(Bb)よりも大きいとした場合に、ノニオン界面活性剤(Ba)とノニオン界面活性剤(Bb)との質量比(Ba:Bb)が、9:1~1:3であると、繊維製品に付着した油汚れに対して、さらに優れた洗浄性を発揮することができる。当該質量比は、より好ましくは9:1~3:7、さらに好ましくは9:1~1:2である。
【0030】
本発明の繊維製品用洗浄剤に含まれるノニオン界面活性剤(B)は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0031】
また、本発明の繊維製品用洗浄剤は、前記一般式(1)で表されるノニオン界面活性剤(B)に加えて、他のノニオン界面活性剤を含んでもよい。
【0032】
他のノニオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル(たとえば、ステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル等)、ショ糖脂肪酸エステル(たとえば、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル等)、ソルビタン脂肪酸エステル(たとえば、ラウリン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン)等のエステル型界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル(たとえば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル等)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(たとえば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)等のエーテル型界面活性剤;脂肪酸ポリエチレングリコール(たとえば、ステアリン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール等)、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン(たとえば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)等のエステルエーテル型界面活性剤;脂肪酸アルカノールアミド(たとえば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド等)等のアルカノールアミド型界面活性剤;たとえば、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、ミリスチルグルコシド等のアルキルグルコシド型界面活性剤;たとえば、オクタノイル-N-メチルグルカミド、ヤシ油脂肪酸アシルメチルグルカミド等のアシルグルカミド型界面活性剤等が挙げられる。本発明の繊維製品用洗浄剤に他のノニオン界面活性剤が含まれる場合、他のノニオン界面活性剤は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0033】
本発明の繊維製品用洗浄剤には、アニオン界面活性剤(アニオン界面活性剤(C)と表記することがある)が、実質的に含まれないことが好ましい。ここで、「実質的に含まれない」とは、本発明の前記繊維製品用洗浄剤において、前記キレート剤(A)と前記ノニオン界面活性剤(B)の合計割合を100質量部として、アニオン界面活性剤(C)の含有率が、例えば5質量部未満、好ましくは3質量部未満、より好ましくは1質量部未満であることをいう。本発明の繊維製品用洗浄剤において、アニオン界面活性剤(C)を実質的に含まない利点は、アニオン界面活性剤(C)を含む場合よりも洗浄性が優れるからである。繊維製品用洗浄剤においてアニオン界面活性剤(C)は洗浄性や泡立ち・すすぎ性など様々な性能を付与する目的で広く世の中で使用されている。アニオン界面活性剤(C)を含まないことにより、繊維製品、特に合成繊維を含む繊維製品に付着した油汚れに対して優れた洗浄性を示すことは広く知られていることではなく、このような効果が発見されたことは驚くべきことである。
【0034】
本発明においてアニオン界面活性剤(C)は実質的に含まれないことが好ましいが、含む場合には、次のものが挙げられる。例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、直鎖または分岐鎖のアルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩またはアルケニルエーテル硫酸エステル塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩等のスルホン酸塩型や硫酸エステル塩型のアニオン界面活性剤、脂肪酸、アルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシアルキレンエーテルカルボン酸、アルキル(又はアルケニル)アミドエーテルカルボン酸、アシルアミノカルボン酸又はこれらの塩等のカルボン酸型のアニオン界面活性剤、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルリン酸エステル塩、グリセリン脂肪酸エステルモノリン酸エステル塩等のリン酸エステル型のアニオン界面活性剤等が挙げられる。これらの塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩などのアルカノールアミン塩等が挙げられる。本発明の繊維製品用洗浄剤にアニオン界面活性剤が含まれる場合、アニオン界面活性剤(C)は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0035】
本発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、本発明の繊維製品用洗浄剤において、キレート剤(A)とノニオン界面活性剤(B)の合計割合を100質量%とした場合に、キレート剤(A)の割合が9~85質量%、ノニオン界面活性剤(B)の割合が15~91質量%であることが好ましい。同様の観点から、キレート剤(A)とノニオン界面活性剤(B)との質量比((A)/(B))としては、好ましくは3/97~80/20、より好ましくは5/45~75/25、さらに好ましくは10/90~70/30、さらにより好ましくは10/40~60/10が挙げられる。
【0036】
本発明の繊維製品用洗浄剤は、必要に応じて、下記一般式(2)で表される両性界面活性剤(E)を含んでいてもよい。
【0037】
【化7】
【0038】
一般式(2)中、R2は炭素数6~14の炭化水素基であり、好ましくは6~12の炭化水素基である。
【0039】
本発明の繊維製品用洗浄剤が両性界面活性剤(E)を含む場合、その含有量は、ノニオン界面活性剤(B)100質量部に対して、好ましくは10~125質量部、より好ましくは30~100質量部である。
【0040】
本発明の繊維製品用洗浄剤は、殺菌効果を付与する等の目的で、必要に応じて、さらにカチオン界面活性剤を含むことができる。しかしながら、本発明においては、洗浄性を高める観点から、カチオン界面活性剤は含まない方がよい。カチオン活性剤を含む場合には、繊維製品用洗浄剤組成物に含まれるカチオン界面活性剤がノニオン性界面活性剤(B)100質量部に対して、3質量部未満、好ましくは1質量部未満、より好ましくは0.1質量部未満、さらに好ましくは0.01重量部未満、さらに好ましくは0.005質量部以下である。
【0041】
本発明の繊維製品用洗浄剤は、洗浄力を向上させるためにアルキルジメチルアミンオキサイドを含むことができる。本発明の繊維製品用洗浄剤がアルキルジメチルアミンオキサイドを含む場合、ノニオン界面活性剤(B)100質量部に対して、好ましくは10~125質量部、より好ましくは30~100質量部、さらに好ましくは35~80質量部である。ノニオン界面活性剤(B)の効果を損なうことなく、さらには向上させるため、アルキルジメチルアミンオキサイドのアルキル基の炭素数は、好ましくは6~14、より好ましくは6~12、さらに好ましくは6~10である。
【0042】
本発明の繊維製品用洗浄剤には、前記のキレート剤(A)、ノニオン界面活性剤(B)、必要に応じて含まれる両性界面活性剤(E)、カチオン界面活性剤に加えて、公知の洗浄成分、洗浄助剤、その他の添加剤などを用いることができる。
【0043】
洗浄成分としては、特に制限されないが、例えば、アルカリ剤(アルカリ成分)、などが挙げられる。洗浄成分は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0044】
アルカリ剤としては、公知の繊維用洗浄剤に用いられるものが使用でき、特に制限されないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、結晶性層状珪酸ナトリウム、非結晶性層状珪酸ナトリウム等のアルカリ性塩が挙げられる。より好ましくは炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウムであり、アルカリ剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0045】
また、洗浄助剤としては、公知の繊維用洗浄剤に使用されている有機高分子ビルダー、溶解促進剤、酵素、蛍光増白剤、香料、色素、増粘剤、帯電防止剤などが挙げられる。洗浄助剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0046】
有機高分子ビルダーとしては、アクリル酸系高分子化合物、ポリアセタールカルボン酸塩、イタコン酸、フマル酸、テトラメチレン-1,2-ジカルボン酸、コハク酸、アスパラギン酸等の重合体又は共重合体が挙げられる。
【0047】
また、溶解促進剤としては、例えば、炭酸カリウムや、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム等の無機アンモニウム塩、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、キュメンスルホン酸ナトリウム等の炭素数1~5の短鎖アルキルを有するベンゼンスルホン酸塩、安息香酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸、D-グルコース、尿素、蔗糖等の水溶性物質が挙げられる。このうち、炭酸カリウム、塩化ナトリウムが好ましい。溶解促進剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0048】
本発明の繊維製品用洗浄剤の形態は、特に制限されないが、利便性の観点から、液体状であることが好ましい。
【0049】
前記の通り、本発明においては、キレート剤(A)を含む第1剤と、ノニオン界面活性剤(B)を含む第2剤とを含む2剤タイプのキットとし、用時に第1剤と第2剤を混合して繊維製品用洗浄剤を調製してもよい。繊維製品用洗浄剤に必要に応じて含まれる両性界面活性剤(E)、カチオン界面活性剤などの各種成分は、第1剤及び第2剤のいずれに配合してもよいし、本発明の繊維製品用洗浄剤キットには配合せずに、繊維製品用洗浄剤を調製する際に、第1剤及び第2剤と混合してもよい。
【0050】
前記のとおり、本発明の繊維製品用洗浄剤は、繊維製品の中でも特に合成繊維を洗浄するために好適に用いられる。本発明の繊維製品用洗浄剤は、合成繊維と共に天然繊維を洗浄するために用いることもできる。また、合成繊維を含まない天然繊維の洗浄に用いても差し支えない。
【0051】
本発明の繊維製品用洗浄剤が洗浄対象とする合成繊維としては、合成繊維であれば特に制限されないが、特にポリエステル繊維及びアクリル繊維、ナイロン繊維の少なくともひとつを含む合成繊維を洗浄対象とした場合に、合成繊維に付着した油汚れに優れた洗浄性を発揮することができる。本発明の繊維製品用洗浄剤が洗浄対象とする合成繊維としては、ポリエステル繊維を含む合成繊維であることが特に好ましい。
【0052】
繊維製品の具体的な形態としては、特に制限されず、例えば、作業着、白衣、エプロン、コック服、テーブルクロス、マット、モップなどが挙げられる。また、本発明の洗浄剤が洗浄する汚れの種類についても、特に制限されず、油汚れ、食品由来の汚れ、皮脂汚れ、泥汚れなどが挙げられる。
【0053】
本発明の洗浄剤は、繊維製品と水と共に混合することで、繊維製品を洗浄することができる。本発明の繊維製品用洗浄剤の使用量としては、合成繊維100質量部に対して、キレート剤(A)の下限については0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上が挙げられ、上限については15質量部以下、好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下が挙げられる。
【0054】
また、本発明の繊維製品用洗浄剤を用いて繊維製品を洗浄する際の水の使用量としては、特に制限されないが、繊維製品100質量部に対して、下限については好ましくは100質量部以上、上限については好ましくは50000質量部以下が挙げられる。
【0055】
本発明の繊維製品用洗浄剤は、業務用の洗濯条件において繊維製品に付着した油汚れに優れた洗浄性を発揮する観点から、30℃より高い洗浄温度、さらには40℃以上の洗浄温度で使用されることが好ましい。例えば家庭用の繊維用洗浄剤は、一般に、室温(25℃)付近での洗浄が想定されているが、本発明の繊維製品用洗浄剤は、30℃より高い洗浄温度で使用され、さらには、40℃以上の洗浄温度で使用されることが望ましい。本発明の繊維製品用洗浄剤による洗浄温度としては、下限については、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは55℃以上が挙げられ、上限については、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下、さらに好ましくは80℃以下が挙げられる。なお、洗浄温度を30℃以上、更には40℃以上、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは55℃以上であれば、家庭用洗濯機を使用することも可能である。
【0056】
本発明の繊維製品用洗浄剤は、本発明の繊維製品用洗浄剤とは異なる洗浄剤と併用して使用してもよい。
【0057】
本発明の繊維製品用洗浄剤は、業務用洗浄剤又は業務用洗剤とも呼ばれ、家庭用とは異なり、特に制限されないが、工場、商店、飲食店や事務所等で用いられ、洗浄時には高温で用いられることが多い。
【0058】
2.繊維製品の洗浄方法
本発明の繊維製品の洗浄方法は、本発明の繊維製品用洗浄剤を用いて、30℃以上の温度の水中で繊維製品を洗浄する洗浄工程と、洗浄後の前記繊維製品を濯ぎ水ですすぐ工程とを備えることを特徴としている。
【0059】
また、本発明の繊維製品用洗浄剤キットを用いる場合であれば、水と、本発明の繊維製品用洗浄剤キットの第1剤及び第2剤とを混合して繊維製品用洗浄剤を調製する工程と、繊維製品用洗浄剤を用いて、30℃以上の温度の水中で繊維製品を洗浄する洗浄工程と、洗浄後の繊維製品を濯ぎ水ですすぐ工程とを備えることを特徴としている。
【0060】
本発明の繊維製品用洗浄剤及び繊維製品用洗浄剤キットの詳細については、「1.洗浄剤及びこれを調製するためのキット」の欄で説明した通りである。本発明の洗浄方法が洗浄対象とする繊維製品についても、前記の通り合成繊維が好適であり、さらに、ポリエステル繊維及びアクリル繊維の少なくとも一方を含む合成繊維が好ましい。また、合成繊維と共に天然繊維を洗浄してもよいし、天然繊維の洗浄に用いても差し支えない。
【0061】
また、本発明の洗浄方法における繊維製品用洗浄剤の使用量、水の使用量、洗浄温度についても、前記の通りである。すなわち、洗浄工程における本発明の繊維製品用洗浄剤の使用量としては、繊維製品100質量部に対して、キレート剤(A)の下限については0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上が挙げられ、上限については15質量部以下、好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下が挙げられる。また、水の使用量としては、特に制限されないが、繊維製品100質量部に対して、下限については好ましくは100質量部以上、上限については好ましくは50000質量部以下が挙げられる。また、洗浄工程における洗浄温度としては下限については、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは55℃以上が挙げられ、上限については、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下、さらに好ましくは80℃以下が挙げられる。
【0062】
洗浄工程における洗浄時間としては、特に制限されないが、下限については好ましくは3分間以上、上限については好ましくは30分間以下が挙げられる。
【0063】
本発明の洗浄方法においては、洗浄工程の後、繊維製品を濯ぎ水ですすぐ工程を行う。繊維製品を濯ぎ水ですすぐ方法は、特に制限されず、公知の繊維製品の洗浄方法におけるすすぎ工程と同様に行うことができる。なお、すすぎ工程の後には、一般の繊維製品の洗浄と同じく、繊維製品の乾燥工程を行うことができる。
【0064】
本発明の繊維製品の洗浄方法(洗浄工程、すすぎ工程、さらには乾燥工程)は、公知の洗濯装置を用いて行うことができる。
【実施例0065】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。なお、実施例及び比較例における装置、材料、実施手順等の詳細は、以下の通りである。
【0066】
<材料及び装置>
・ドラム式電気洗濯乾燥機(パナソニック製)
・試験布:ポリエステル布:ポリエステルジャージ(谷頭商店)
・調整布:ポリエステル/綿=65%/35%布、約30cm×約30cm
・前処理洗浄剤:一般的な液体洗浄剤を使用した。
・汚れ:菜種油(日清キャノーラ油:日清オイリオ製)にオイルレッドO(0.1%)で着色したもの、エビチリソース(干焼蝦仁:味の素製)、豆板醤(李錦記豆板醤:ヱスビー食品製)を使用した。
・繊維製品用洗浄剤:それぞれ、下表1~5の実施例及び比較例に示す組成を有する。水と混合して洗浄液(水溶液)とする。
【0067】
キレート剤(A):キレスト400(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)ナトリウム塩、キレスト製)
【0068】
ノニオン界面活性剤(B)
(B1)ソフタノールEP12030(一般式(1)中、R1が第2級アルコールに由来する炭素数12~14の炭化水素基、p=12、q=3の化合物、日本触媒製)
(B2)ソフタノールEP9050(一般式(1)中、R1が第2級アルコールに由来する炭素数12~14の炭化水素基、p=9、q=5の化合物、日本触媒製)
(B3)ソフタノールEP7025(一般式(1)中、R1が第2級アルコールに由来する炭素数12~14の炭化水素基、p=7、q=2.5の化合物、日本触媒製)
(B4)ソフタノールEP7045(一般式(1)中、R1が第2級アルコールに由来する炭素数12~14の炭化水素基、p=7、q=4.5の化合物、日本触媒製)
(B5)ソフタノールEP5035(一般式(1)中、R1が第2級アルコールに由来する炭素数12~14の炭化水素基、p=5、q=3.5の化合物、日本触媒製)
(B6)ソフタノールEP7085(一般式(1)中、R1が第2級アルコールに由来する炭素数12~14の炭化水素基、p=7、q=8.5の化合物、日本触媒製)
(B7)ソフタノールEP90150(一般式(1)中、R1が第2級アルコールに由来する炭素数12~14の炭化水素基、p=9、q=15の化合物、日本触媒製)
(B8)ワンダーサーフ100(一般式(1)中、R1が第1級アルコールに由来する炭素数12の炭化水素基、分子量600、p/q=75/25(p+q=100のとき)の化合物、青木油脂工業製)
(B9)DKS NL70(一般式(1)中、R1が第1級アルコールに由来する炭素数12の炭化水素基、p=7の化合物、第一工業製薬製)
【0069】
アニオン界面活性剤(C):リポランPB800CJ(α-オレフィン(C14~18)スルホン酸ナトリウム、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ製)
【0070】
両性界面活性剤(E):Genaminox OC(アルキルジメチルアミンオキシド(C8)(有効分30%)、クラリアントジャパン製)
【0071】
<洗浄性評価の実施手順>
(前処理工程)
ドラム式電気洗濯乾燥機で、試験布であるポリエステルジャージを、洗浄剤1%owf.、水量15L、50~70℃で15~30分間洗浄し、十分にすすぎ、乾燥させ、試験に使用した。また、調整布であるポリエステル/綿=65%/35%布は、洗浄剤1%owf.で洗濯した後、洗浄剤を入れずに再度洗った。なお、owf.とは、被洗物に対する洗剤または成分量を意味することとする。
【0072】
(洗浄の準備)
前処理工程の後、試験布であるポリエステルジャージに汚れを約1g塗布し乾燥させたものを評価布として使用した。
【0073】
(洗浄工程)
洗浄工程の手順は、次のとおりである。表1~表5に記載の洗浄液(水量15L)で(表1~5に記載の各洗浄温度に調整)に、調整布(約30cm×約30cm)2kgと評価布を入れ、ドラム式電気洗濯乾燥機で洗浄した(洗浄15分、濯ぎ2回(水:常温)、脱水1分)。その後、評価布を乾燥させた。
【0074】
[洗浄性の評価]
洗浄性の評価は、洗浄後の評価布のうち、汚れを塗布した部分を目視にて確認し、下記の基準で評価した。結果を表1~5に示す。
4: 汚れが見られない
3: 汚れがほとんど見られない
2: 汚れが薄くなっている
1: 汚れが残っている
【0075】
[再汚染防止性の評価]
再汚染防止性の評価は、洗浄後の評価布のうち、汚れを塗布した部分以外の部分を目視にて確認し、下記のように評価した。結果を表1~5に示す。
○: 汚れの再付着はほとんど見られない
△: 汚れの再付着が少しだけ見られる
×: 汚れの再付着が見られる
【0076】
【表1】
【0077】
キレート剤(A)とノニオン界面活性剤(B1)~(B8)を含む実施例1~10の洗浄剤は、繊維製品に付着した油汚れに対して優れた洗浄効果を発揮することがわかった。特に、ノニオン界面活性剤(B1)~(B8)を2種以上併用した場合に洗浄効果に優れていた。また、前記一般式(1)を満たさないノニオン界面活性剤(B9)を含む比較例1の洗浄剤では洗浄効果が劣っていた。
また、ノニオン界面活性剤(B1)~(B8)は、前記一般式(1)において、前記POの付加モル数に対する前記EOの付加モル数の比(EO/PO)が、0.5~10.0を満たしており、この場合に洗浄効果が優れていた。特に、前記POの付加モル数に対する前記EOの付加モル数の比(EO/PO)が、1.6以上である場合は、洗浄効果に加えてさらに再汚染防止性にも優れていた。
【0078】
【表2】
【0079】
表2により、ノニオン界面活性剤(B1)が前記ノニオン界面活性剤(Ba)であり、ノニオン界面活性剤(B2)が前記ノニオン界面活性剤(Bb)であり、ノニオン界面活性剤(B)が、ノニオン界面活性剤(B1)とノニオン界面活性剤(B2)の混合物(すなわちノニオン界面活性剤(Ba)とノニオン界面活性剤(Bb)の混合物)である場合に、洗浄効果が優れていることがわかった。
また、実施例12~16の結果から、洗浄性に関して(Ba):(Bb)の質量比が9:1~3:7の範囲であることが好ましく、3:1~2:3の範囲であることがより好ましいことがわかった。
【0080】
【表3】
【0081】
表3の実施例18及び19と比較例3をみると、キレート剤(A)がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)ナトリウム塩である場合、アニオン界面活性剤(C)を含むと洗浄効果が悪くなることが明らかとなった。したがって、アニオン界面活性剤(C)を実質的に含まない態様が望ましいと思われる。
また、表3中のキレート剤(A)とノニオン界面活性剤(B)の割合は、キレート剤(A)とノニオン界面活性剤(B)の合計割合を100質量%とした場合に、キレート剤(A)の割合が9~85質量%、ノニオン界面活性剤(B)の割合が15~91質量%を満たしており、この場合に洗浄効果が優れていた。
なお、キレート剤(A)のみでは優れた洗浄効果を示さないことが確認された。
【0082】
【表4】
【0083】
表4より、前記繊維製品用洗浄剤は、例えば30℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上の高温の水中で繊維製品を洗浄すると、洗浄効果が特に優れていることがわかった。
【0084】
【表5】
【0085】
表5より、前記繊維製品用洗浄剤は、両性界面活性剤(E)を、前記ノニオン界面活性剤(B)100質量部に対して、10~125質量部を含む場合に、洗浄性が優れることがわかった。