(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064219
(43)【公開日】2022-04-25
(54)【発明の名称】動作制御システム
(51)【国際特許分類】
E02D 23/06 20060101AFI20220418BHJP
【FI】
E02D23/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172828
(22)【出願日】2020-10-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】亀井 聡
(72)【発明者】
【氏名】進藤 匡浩
(57)【要約】
【課題】自動運転中の複数のショベル同士の衝突を回避して掘削作業全体の遅延を防止することができる動作制御システムを提供する。
【解決手段】ニューマチックケーソン工法において用いられる作業室2内の複数のショベル100の動作を制御する動作制御システムにおいて、上記複数のショベル100のうちの一のショベル100-2の故障を検知する故障検知手段と、上記故障検知手段により上記一のショベル100-2の故障が検知された場合に、他のショベル100を当該ショベル100-2への接触を回避するように制御する動作制御手段とを備えることを特徴とする。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューマチックケーソン工法において用いられる作業室内の複数のショベルの動作を制御する動作制御システムにおいて、
上記複数のショベルのうちの一のショベルの故障を検知する故障検知手段と、
上記故障検知手段により上記一のショベルの故障が検知された場合に、他のショベルを当該ショベルへの接触を回避するように制御する動作制御手段とを備えること
を特徴とする動作制御システム。
【請求項2】
上記作業室の平面画像データを撮像する撮像手段と、
上記撮像手段により撮像された上記平面画像データを複数の領域に分割する画像分割手段を備え、
上記動作制御手段は、上記画像分割手段により分割された何れかの領域に、上記故障検知手段により故障が検知された上記一のショベルが含まれる場合に、上記他のショベルを当該領域に対応する上記作業室内の実空間への侵入を回避するように制御すること
を特徴とする請求項1記載の動作制御システム。
【請求項3】
上記故障検知手段は、上記一のショベルからの通信が途絶えた場合に、当該ショベルの故障を検知すること
を特徴とする請求項1又は2記載の動作制御システム。
【請求項4】
上記故障検知手段は、上記一のショベルの制御が不能である場合に、当該ショベルの故障を検知すること
を特徴とする請求項1又は2記載の動作制御システム。
【請求項5】
上記動作制御手段は、上記他のショベルの上記複数の領域に分割された上記作業室の実空間に対応する領域のうち上記一のショベルの最大可動範囲が含まれる領域への侵入を回避するように制御すること
を特徴とする請求項2記載の動作制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューマチックケーソン工法において用いられる作業室内の複数のショベルの動作を制御する動作制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市内の地下インフラ設備の増加に対するニーズに応えるためニューマチックケーソン工法が使用されている。ニューマチックケーソン工法では、ケーソン躯体に作業室を設け、作業室内で掘削・排土を行いながら徐々にケーソンを沈下させる。作業室内が地中深くなるにつれ、作業室内の気圧を高くする必要があり作業環境が悪くなる。そのため、作業員の気圧障害を防ぐために作業時間が制限されるという問題がある。この問題を解決するため、地上からの遠隔操作による自動掘削を含めた作業室内の無人化が一般的となっている。
【0003】
また、ニューマチックケーソン以外の分野において、作業現場での無人車両の使用に関する文献としては、例えば特許文献1が知られている。特許文献1には、複数の無人車両がコースエリア内を走行する例が開示されている。コースエリア内には、無人車両のみならず複数の有人車両が走行しており、走行中に無人・有人車両から積み荷が落下し、この落下した積み荷が無人車両にとっての障害物となることがある。あるいは、走行コース上に岩石が出現したりや穴やぬかるみが発生することにより、これらの路面状態の悪化も障害物となり得る。そこで、無人車両が障害物と干渉しないように障害物のデータを更新することで、走行コースの修正が行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば地上に設けられた遠隔操作室から作業室内の複数のショベルを遠隔操作するニューマチックケーソン工法では、ショベルに設けられるカメラの台数には制限がある、また、カメラの視野も狭いという都合上、遠隔操作室からのショベルの操作に際しては、ショベル同士が衝突して一部のショベルが故障する可能性が高い。そのため、故障したショベルに、他のショベルが接触してしまい、掘削作業に遅延が発生するという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、自動運転中の複数のショベル同士の衝突を回避して掘削作業全体の遅延を防止することができる動作制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明を適用した動作制御システムは、ニューマチックケーソン工法において用いられる作業室内の複数のショベルの動作を制御する動作制御システムにおいて、上記複数のショベルのうちの一のショベルの故障を検知する故障検知手段と、上記故障検知手段により上記一のショベルの故障が検知された場合に、他のショベルを当該ショベルへの接触を回避するように制御する動作制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上述した構成からなる本発明によれば、作業室内で一のショベルが故障した場合、他のショベルは故障したショベルを回避しながら作業を継続する。これにより、例えば、工場のようなオートメーションシステムにおいても、システム全体を停止することなく作業の遅延を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係るニューマチックケーソン工法の主要設備を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る作業機の一例である掘削機の側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る掘削機における制御系統を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、複数の領域に分割した作業室の模式図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態に係る動作制御システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態に係る侵入禁止領域を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した動作制御システムについて、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0011】
図1は、本発明に係る作業機の一例である掘削機が用いられるニューマチックケーソン工法の主要設備の一例を示す図である。ニューマチックケーソン工法は、掘削設備E1、艤装設備E2、排土設備E3、送気設備E4及び予備・安全設備E5を用いて、鉄筋コンクリート製のケーソン1を地中に沈下させていくことにより、地下構造物を構築する。
【0012】
掘削設備E1は、例えば、掘削機100(以下、ケーソンショベル100という)と、土砂自動積込装置11と、地上遠隔操作室13とを備える。ケーソンショベル100は、ケーソン1の底部に設けられた作業室2内に設置される。土砂自動積込装置11は、ケーソンショベル100により掘削された土砂を円筒状のアースバケット31に積み込む。地上遠隔操作室13は、ケーソンショベル100の作動を地上から遠隔操作する遠隔操作装置12を備える。
【0013】
艤装設備E2は、例えば、マンシャフト21と、マンロック22(エアロック)と、マテリアルシャフト23と、マテリアルロック24(エアロック)とを備える。マンシャフト21は、作業者が作業室2へ出入りするために地上と作業室2とを繋ぐ円筒状の通路であり、例えば、螺旋階段25が設けられている。マンロック22は、マンシャフト21に設けられ地上の大気圧と作業室2内の圧力差を調節する二重扉構造の気密扉である。マテリアルシャフト23は、土砂自動積込装置11により土砂が積み込まれたアースバケット31を地上に運び出すために地上と作業室2とを繋ぐ円筒状の通路である。マテリアルロック24は、材料等を搬出入するためのマテリアルシャフト23に設けられた地上の大気圧と作業室2内の圧力差を調節する二重扉構造の気密扉である。マンロック22及びマテリアルロック24は、作業室2内の気圧が変化することを抑えて作業者やアースバケット31を作業室2へ出入りさせることが可能になるように構成されている。
【0014】
排土設備E3は、例えば、アースバケット31と、キャリア装置32と、土砂ホッパー33とを備える。アースバケット31は、ケーソンショベル100により掘削された土砂が積み込まれる有底円筒状の容器である。キャリア装置32は、アースバケット31を、マテリアルシャフト23を介して地上まで引き上げて運び出す装置である。土砂ホッパー33は、アースバケット31及びキャリア装置32により地上に運び出された土砂を一時的に貯めておく設備である。
【0015】
送気設備E4は、例えば、空気圧縮機42と、空気清浄装置43と、送気圧力調整装置44と、自動減圧装置45とを備える。空気圧縮機42は、送気管41及びケーソン1に形成された送気路3を介して作業室2内に圧縮空気を送る装置である。空気清浄装置43は、空気圧縮機42により送り込む圧縮空気を浄化する装置である。送気圧力調整装置44は、作業室2内の気圧が地下水圧と略等しくなるように空気圧縮機42から作業室2内へ送る圧縮空気の量(圧力)を調整する装置である。自動減圧装置45は、マンロック22内の気圧を減圧する装置である。
【0016】
予備・安全設備E5は、例えば、非常用空気圧縮機51と、ホスピタルロック53とを備える。非常用空気圧縮機51は、空気圧縮機42の故障又は点検などの時に空気圧縮機42に代わって作業室2内に圧縮空気を送ることが可能な装置である。ホスピタルロック53は、作業室2内で作業を行った作業者が入り、当該作業者の身体を徐々に大気圧に慣らしていくための減圧室である。
【0017】
次に、本発明に係るケーソンショベル100について
図2~
図3を用いて説明する。ケーソンショベル100は、
図2に示すように、例えば、走行体110と、ブーム130と、バケットアタッチメント150とを備える。走行体110は、作業室2の天井部に設けられた左右一対の走行レール4に取り付けられ、左右の走行レール4に懸下された状態で走行レール4に沿って走行移動する。ブーム130は、走行体110の旋回フレーム121に上下方向に揺動可能に枢結される。バケットアタッチメント150は、ブーム130の先端部に取り付けられる。
【0018】
走行体110は、走行フレーム111と、旋回フレーム121と、走行ローラ113とを備える。旋回フレーム121は、走行フレーム111の下面側に旋回自在に設けられる。走行ローラ113は、走行フレーム111の上面側前後に、設けられている前後左右の4個のローラである。走行体110は、前後左右の走行ローラ113を回転駆動させて左右の走行レール4に沿って走行移動するように構成されている。
【0019】
ブーム130は、例えば、基端ブーム131と、先端ブーム132と、伸縮シリンダ133と、起伏シリンダ134とを備える。基端ブーム131は、旋回フレーム121に起伏自在(上下方向に揺動自在)に取り付けられる。先端ブーム132は、基端ブーム131に入れ子式に組み合わされ、構成される。伸縮シリンダ133は、基端ブーム131内に設けられている。起伏シリンダ134は、基端ブーム131の左右に2個設けられている。ブーム130は、伸縮シリンダ133を伸縮させると、基端ブーム131に対して先端ブーム132が長手方向に移動し、これによりブーム130が伸縮するように構成されている。2個の起伏シリンダ134の基端部は基端ブーム131の左右側部にそれぞれ回動自在に取り付けられている。
【0020】
バケットアタッチメント150は、ベース部材151と、バケット152と、バケットシリンダ153とを備える。ベース部材151は、先端ブーム132に取り付けられる。バケット152は、ベース部材151の先端部に上下揺動自在に取り付けられる。バケットシリンダ153は、ベース部材151に対してバケット152を上下揺動させるように構成される。
【0021】
コントロールユニット165は、
図3に示すように、メインコントローラ165aと、走行体用コントローラ165bと、ブーム・バケット用コントローラ165cとを備える。メインコントローラ165aは、遠隔操作装置12からの操作信号を受けて、その操作信号に応じた駆動制御信号を出力する。走行体用コントローラ165bは、メインコントローラ165aから出力された駆動制御信号に応じて、走行体110を駆動させるように構成されている。メインコントローラ165a及び走行体用コントローラ165bは、走行体110の旋回フレーム121に配設されている。ブーム・バケット用コントローラ165cは、メインコントローラ165aから出力された駆動制御信号に応じて、ブーム130及びバケットアタッチメント150を駆動させるように構成されている。ブーム・バケット用コントローラ165cは、ブーム130の基端ブーム131の側部に配設されている。
【0022】
ケーソンショベル100は、
図3に示すように、例えば、走行体位置センサ201と、旋回角度センサ202と、ブーム起伏角度センサ203と、ブーム伸長量センサ204と、バケット揺動角度センサ205と、外界センサ206とを備える。走行体位置センサ201は、走行体110が走行レール4の何処の位置に位置しているかを検出する。旋回角度センサ202、走行フレーム111に対する旋回フレーム121の旋回角度を検出する。ブーム起伏角度センサ203は、旋回フレーム121に対するブーム130の起伏角度を検出する。ブーム伸長量センサ204は、ブーム130の伸長量を検出する。バケット揺動角度センサ205は、ブーム130(バケットアタッチメント150のベース部材151)に対するバケット152の揺動角度を検出する。外界センサ206は、走行体110に設けられて作業室2内の掘削地面Gまでの距離、掘削地面Gの形状などの情報を取得する。
【0023】
走行体位置センサ201は、例えば、走行体110の走行フレーム111に配設されたレーザセンサによって構成される。走行体位置センサ201は、レーザ光を走行レール4の端部(もしくは作業室2の壁部)に向けて照射して走行レール4の端部(もしくは作業室2の壁部)において反射して戻ってくるまでの時間を測定する。走行体位置センサ201は、この時間に基づいて走行レール4の端部(もしくは作業室2の壁部)から走行体110までの距離を検出する。旋回角度センサ202は、例えば、走行体110の旋回フレーム121に配設された光学式のロータリーエンコーダによって構成される。旋回角度センサ202は、走行フレーム111に対する旋回フレーム121の旋回量を電気信号に変換する。旋回角度センサ202は、その信号を演算処理して旋回フレーム121の旋回角度(旋回方向及び位置)を検出する。なお、走行体位置センサ201及び旋回角度センサ202は一例を説明したもので、走行体の二次元的な位置を検出する他のセンサ、旋回フレーム121の旋回角度を検出する他のセンサをそれぞれ用いてもよい。
【0024】
ブーム起伏角度センサ203は、例えば、起伏シリンダ134のシリンダボトムの側部に配設されたレーザセンサによって構成される。ブーム起伏角度センサ203は、レーザ光を旋回フレーム121に向けて照射して旋回フレーム121において反射して戻ってくるまでの時間を測定する。ブーム起伏角度センサ203は、この時間に基づいて起伏シリンダ134の伸長量を検出し、その起伏シリンダ134の伸長量に基づいて旋回フレーム121に対するブーム130の起伏角度(起伏位置)を検出する。ブーム起伏角度センサ203も一例を説明したものであり、光学式ロータリーエンコーダ、ポテンショメータなどによりブーム130の起伏角を直接検出する他のセンサを用いてもよい。
【0025】
ブーム伸長量センサ204は、例えば、ブーム130の基端ブーム131に配設されたレーザセンサによって構成される。ブーム伸長量センサ204は、レーザ光を先端ブーム132の先端部に取り付けられたバケットアタッチメント150のベース部材151に向けて照射してベース部材151において反射して戻ってくるまでの時間を測定する。ブーム伸長量センサ204は、この時間に基づいてブーム130の伸長量(基端ブーム131に対する先端ブーム132の伸長量)を検出する。ブーム伸長量センサ204も一例を説明したものであり、ブーム伸縮とともに伸縮するケーブルの伸長量を直接測定する他のセンサを用いてもよい。
【0026】
バケット揺動角度センサ205は、例えば、バケットシリンダ153の油路に配設された流量センサによって構成される。バケット揺動角度センサ205は、バケットシリンダ153に供給される作動油の流量を検出し、その流量の積分値を算出する。バケット揺動角度センサ205は、この流量積分値に基づいてバケットシリンダ153のピストンロッドの伸長量を求め、そのバケットシリンダ153の伸長量に基づいて、バケットアタッチメント150のベース部材151(ブーム130)に対するバケット152の揺動角度(揺動位置)を検出する。バケット揺動角度センサ205も一例を説明したものであり、光学式ロータリーエンコーダ、ポテンショメータなどによりバケット152の揺動角度を直接検出する他のセンサや、レーザセンサによりバケットシリンダ153の伸長量を求める他のセンサを用いてもよい。
【0027】
外界センサ206は、例えば、走行体110の旋回フレーム121に配設されたRGB‐Dセンサによって構成される。外界センサ206は、掘削地面Gやケーソンショベル100のRGB画像(カラー画像)及び距離画像を取得し、それらの画像に基づいて掘削地面Gまでの距離情報及び掘削地面Gの形状情報を取得する。外界センサ206は、RGB‐Dセンサの他の例として、ステレオカメラや超音波距離計、レーザセンサなどを用いてもよい。
【0028】
走行体位置センサ201、旋回角度センサ202、ブーム起伏角度センサ203、ブーム伸長量センサ204、バケット揺動角度センサ205及び外界センサ206により検出されたそれぞれの情報は、コントロールユニット165のメインコントローラ165aに送信される。メインコントローラ165aは、走行体位置測定部211と、バケット位置測定部212と、地盤形状測定部213と、画像分割部214と、故障検知部215とを備える。また、本実施の形態に係る動作制御システム200は、外界センサ206、画像分割部214と、故障検知部215とを含んで構成されている。
【0029】
走行体位置測定部211は、走行体位置センサ201により検出された走行レール4の端部(もしくは作業室2の壁部)から走行体110までの距離情報と、当該走行レール4が作業室2内の何処の位置に設けられた走行レールであるかという情報(この情報は、走行体110が取り付けられた走行レール4の情報であり、走行体110が取り付けられたときに走行体位置測定部211に設定される)とを用いて、走行体110が作業室2内の何処に位置しているかを算出する。また、走行体位置センサ201による距離情報の検出を周囲複数箇所に対して検出することにより走行体110の天井内における二次元的な位置(走行体110の向きを含む位置)を検出してもよい。
【0030】
バケット位置測定部212は、旋回角度センサ202により検出された走行フレーム111に対する旋回フレーム121の旋回角度(旋回方向及び位置)と、ブーム起伏角度センサ203により検出された旋回フレーム121に対するブーム130の起伏角度(起伏位置)と、ブーム伸長量センサ204により検出されたブーム130の伸長量と、バケット揺動角度センサ205により検出されたブーム130に対するバケット152の揺動角度(揺動位置)とを用いて、走行体110の走行フレーム111に対するバケット152の位置を算出する。
【0031】
地盤形状測定部213は、走行体位置測定部211により求められた作業室2内における走行体110の位置と、及び旋回角度センサ202により検出された走行フレーム111に対する旋回フレーム121の旋回角度(旋回方向及び位置)とを用いて、旋回フレーム121に設けられた外界センサ206の位置と、外界センサ206により距離情報を取得する方向とを特定することにより、距離情報から地盤形状の情報に変換する。
【0032】
画像分割部214は、外界センサ206により取得された掘削地面G及びケーソンショベル100等のRGB画像等を分割する。例えば、作業室2内における掘削地面G及びケーソンショベル100等の画像をxy平面上で複数の格子状の画像領域に分割する。なお、分割の対象となる作業室2の範囲及び画像領域の個数は特に限定されるものではない。
【0033】
故障検知部215は、複数のケーソンショベル100のうち、特定のケーソンショベル100の故障を検知する。なお、故障検知部215は、複数のケーソンショベル100のうちの、特定のケーソンショベル100からの通信が途絶えた場合に、ケーソンショベル100の故障を検知してもよく、あるいは特定のケーソンショベル100の制御が不能である場合に、このケーソンショベル100の故障を検知してもよい。なお、ケーソンショベル100の故障の情報は、各ケーソンショベル100同士が通信することにより共有されてもよく、動作制御システム200が集中的に一元管理してもよい。
【0034】
コントロールユニット165は、故障検知部215により特定のケーソンショベル100の故障が検知された場合、作業室2内に侵入禁止領域を設定し、この侵入禁止領域に故障していないケーソンショベル100が侵入して故障したケーソンショベル100に接触することを回避するよう制御する。また、コントロールユニット165は、画像分割部214により分割された何れかの領域に、故障検知部215により故障が検知されたケーソンショベル100が含まれる場合に、他のケーソンショベル100の故障が検知されたケーソンショベル100が含まれる領域に対応する作業室2内の実空間への侵入を回避するように制御する。分割された何れかの領域に故障が検知されたケーソンショベル100が含まれるか否かは、例えば外界センサ206により撮像された作業室2の平面画像データに故障したケーソンショベル100が含まれているか否かに基づいて判定すればよい。さらに、コントロールユニット165は、他のケーソンショベル100の複数の領域に分割された作業室2の実空間に対応する領域のうち故障が検知されたケーソンショベル100の最大可動範囲が含まれる領域への侵入を回避するように制御する。
【0035】
図4は、作業室2の側面図であり、
図5は、作業室2の平面図である。以下の例では、2本の走行レール4にケーソンショベル100が2台ずつ懸下された場合を例に説明する。一方の走行レール4-1にはケーソンショベル100-1及びケーソンショベル100-2が懸下され、他方の走行レール4-2にはケーソンショベル100-3及びケーソンショベル100-4が懸下される。なお、作業室2に設けられる走行レール4の本数、走行レール4に懸下されるケーソンショベル100の台数は、特に限定されるものではない。
【0036】
走行レール4に沿った走行及びブーム130の旋回に伴い、各ケーソンショベル100は、作業室2内の所定の範囲を占有する。例えば、領域X1はケーソンショベル100-1の最大可動範囲であり、領域X2はケーソンショベル100-2の最大可動範囲であり、領域X3はケーソンショベル100-3の最大可動範囲であり、領域X4はケーソンショベル100-4の最大可動範囲であるとする。ケーソンショベル100の最大可動範囲は、予めケーソンショベル100毎に設定されているものとする。なお、ケーソンショベル100の最大可動範囲は、全てのケーソンショベル100について同じ範囲であってもよいし、ケーソンショベル100毎に異なっていてもよい。
【0037】
図6は、作業室2の画像データを複数の領域に分割した図である。
図6に示すように、例えば作業室2を水平面に沿ってx方向に5分割、y方向に12分割した場合、予めケーソンショベル100毎に設定されている領域X1、領域X2、領域X3、領域X4が占める範囲を示す。領域X1はR(1、2)、R(2、2)、R(3、2)からR(1、7)、R(2、7)、R(3、7)までの領域を占め、領域X2はR(1、6)、R(2、6)、R(3、6)からR(1、11)、R(2、11)、R(3、11)までの領域を占め、領域X3はR(3、2)、R(4、2)、R(5、2)からR(3、7)、R(4、7)、R(5、7)までの領域を占め、領域X4はR(4、6)、R(5、6)、R(6、6)からR(3、11)、R(4、11)、R(5、11)までの領域を占める。
【0038】
領域X1と領域X2は、R(1、6)、R(2、6)、R(3、6)、R(1、7)、R(2、7)、R(3、7)において重複している。これは、ケーソンショベル100-1とケーソンショベル100-2との作業領域が一部重なることを示している。また、領域X1と領域X3は、R(3、2)、R(3、3)、R(3、4)、R(3、5)、R(3、6)、R(3、7)において重複している。これは、ケーソンショベル100-1とケーソンショベル100-3との作業領域が一部重なることを示している。さらに、領域X1、領域X2、領域X3、領域X4は、R(3、6)、R(3、7)において重複している。これは、ケーソンショベル100-1、ケーソンショベル100-2、ケーソンショベル100-3、ケーソンショベル100-4との作業領域が一部重なることを示している。なお、作業室2の水平面に沿った分割は、これに限定されるものではない。
【0039】
次に、本実施形態に係る動作制御システム200の動作の一例について説明する。
図7は、本実施形態に係る動作制御システム200の動作の一例を示すフローチャートである。
【0040】
ステップS110において、外界センサ206は、作業室2の平面画像データを撮像する。具体的には、外界センサ206は、
図5に示すような作業室2内における掘削地面G及びケーソンショベル100の平面画像データ(xy平面の画像データ)を撮像する。
【0041】
ステップS120において、画像分割部214は、外界センサ206により取得された掘削地面GのRGB画像等を分割する。画像分割部214は、例えば、作業室2内における掘削地面G及びケーソンショベル100の平面画像データを
図6に示すようなxy平面上における複数の格子状の画像領域に分割する。
【0042】
ステップS130において、故障検知部215は、作業室2内において何れかのケーソンショベル100に故障が発生した場合、このケーソンショベル100の故障を検知する。例えば、ケーソンショベル100-2からの通信が途絶えた場合、あるいはケーソンショベル100-2の制御が不能である場合、故障検知部215はケーソンショベル100-2の故障を検知する。
【0043】
ステップS140において、コントロールユニット165は、ケーソンショベル100が故障したケーソンショベル100に接触しないように制御する。具体的には、コントロールユニット165は、故障したケーソンショベル100-2の侵入禁止領域に他のケーソンショベル100が侵入しないよう制御する。
【0044】
コントロールユニット165は、外界センサ206により撮像された掘削地面G及びケーソンショベル100の平面画像データを分析するとともに、画像分割部214により分割された複数の格子状の画像領域を照合して、ケーソンショベル100がどの位置を占めるか判定する。あるいは、走行体位置センサ201からの情報によりケーソンショベル100の位置情報を取得することにより、ケーソンショベル100がどの位置を占めるか判定してもよい。
【0045】
いずれかのケーソンショベル100の走行体位置センサ201や旋回角度センサ202等により検出された情報がコントロールユニット165に送信されなくなった場合、コントロールユニット165は、そのケーソンショベル100の故障を検知する。コントロールユニット165は、ケーソンショベル100の故障を検知すると、外界センサ206から取得した画像データに基づいて画像分割部214により分割された複数の格子状の画像領域を照合して、故障したケーソンショベル100が占める領域を特定する。コントロールユニット165は、外界センサ206から逐次取得する他のケーソンショベル100の画像データと、故障したケーソンショベル100の画像データとを外界センサ206から画像データを取得する度に比較する。比較の結果、コントロールユニット165は、他のケーソンショベル100と故障したケーソンショベル100との距離が所定値以下になったと判定した場合、故障したケーソンショベル100に近づきつつあるケーソンショベル100に対し、侵入禁止領域への接近を通知する。なお、ケーソンショベル100同士の距離が所定値以下となった場合、あるいはケーソンショベル100の画像領域と侵入禁止領域との距離が所定値以下となった場合に、他のケーソンショベル100が故障したケーソンショベル100に接触する程度まで近づいたと判定すればよいが、これに限定されるものではない。コントロールユニット165は、侵入禁止領域への接近が通知されたケーソンショベル100があると判定した場合、このケーソンショベル100が故障したケーソンショベル100に衝突しないよう、走行体用コントローラ165bとブーム・バケット用コントローラ165cを制御する。
【0046】
図8に、ケーソンショベル100-2が故障した場合の例を示す。例えば、ケーソンショベル100-2の走行体位置センサ201や旋回角度センサ202等により検出された情報がコントロールユニット165に送信されなくなった場合、コントロールユニット165は、ケーソンショベル100-2の故障を検知する。コントロールユニット165は、ケーソンショベル100-2の故障を検知すると、外界センサ206から取得した画像データに基づいて画像分割部214により分割された複数の格子状の画像領域を照合して、ケーソンショベル100-2が占める領域を特定する。即ち、コントロールユニット165は、複数の領域に分割された作業室2の画像データのうち、ケーソンショベル100-2が占める領域を特定する。例えば、コントロールユニット165は、領域R(2、9)、R(3、9)、R(2、10)、R(3、10)、R(2、11)をケーソンショベル100-2が占める領域であると特定し、これらの領域を侵入禁止領域P(図中ハッチング部分)に設定する。コントロールユニット165は、外界センサ206から逐次取得するケーソンショベル100の画像データと、ケーソンショベル100-2の画像データとを外界センサ206から画像データを取得する度に比較する。比較の結果、コントロールユニット165は、ケーソンショベル100と侵入禁止領域Pとの距離が所定値以下になったと判定した場合、侵入禁止領域Pに近づきつつあるケーソンショベル100に対し、侵入禁止領域Pへのそれ以上の接近を通知する。コントロールユニット165は、侵入禁止領域Pへの接近が通知されたケーソンショベル100が故障したケーソンショベル100-2に衝突しないよう、走行体用コントローラ165bとブーム・バケット用コントローラ165cを制御する。なお、コントロールユニット165は、ケーソンショベル100-2の最大可動範囲である領域X2を、侵入禁止領域Pとしてもよい。
【0047】
なお、コントロールユニット165は、ケーソンショベル100-2が通常の動作を開始した場合には、侵入禁止領域Pの解除を行うよう作業データを更新する。また、他のケーソンショベル100が故障した場合には、そのケーソンショベル100に対応する領域が侵入禁止領域Pとなるようにデータを更新する。
【0048】
上述した構成からなる本発明によれば、作業室内で一のケーソンショベル100が故障した場合、他のケーソンショベル100は故障したケーソンショベル100を回避しながら作業を継続することができる。これにより、例えば、複数のケーソンショベル100が自動運転により掘削作業を行っていた場合において、一のケーソンショベル100が故障した場合でも、システム全体を停止することなく掘削作業の遅延を防止することができる。また、複数のケーソンショベル100が設置される作業室2内の画像データを水平面上で複数の領域に分割し、コントロールユニット165は、他のケーソンショベル100の故障したケーソンショベル100が含まれる侵入禁止領域Pに対応する作業室2内の実空間への侵入を回避するように制御する。これにより、作業室2内におけるケーソンショベル100の動作の安全性を確保することができる。なお、一のケーソンショベル100からの通信が途絶えた場合に、このケーソンショベル100の故障を検知してもよい。これにより、故障したケーソンショベル100を容易に特定することができる。また、一のケーソンショベル100の制御が不能である場合に、このケーソンショベル100の故障を検知してもよい。これにより、故障したケーソンショベル100以外のケーソンショベル100の動作の安全性をより高めることができる。また、故障したケーソンショベル100の最大可動範囲を侵入禁止領域Pとしてもよい。これにより、一のケーソンショベル100の他のケーソンショベル100の接触をより確実に回避することができる。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1 ケーソン
2 作業室
3 送気路
4 走行レール
11 土砂自動積込装置
12 遠隔操作装置
13 地上遠隔操作室
100 掘削機(ケーソンショベル)
110 走行体
130 ブーム
150 バケットアタッチメント
165 コントロールユニット
200 動作制御システム
206 外界センサ
214 画像分割部
215 故障検知部
G 掘削地面
P 侵入禁止領域
【手続補正書】
【提出日】2021-02-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューマチックケーソン工法において用いられる作業室内の複数のショベルの動作を制御する動作制御システムにおいて、
上記複数のショベルのうちの一のショベルの故障を検知する故障検知手段と、
上記故障検知手段により上記一のショベルの故障が検知された場合に、他のショベルを当該ショベルへの接触を回避するように制御する動作制御手段と、
上記作業室の平面画像データを撮像する撮像手段と、
上記撮像手段により撮像された上記平面画像データを複数の領域に分割する画像分割手段とを備え、
上記動作制御手段は、上記画像分割手段により分割された何れかの領域に、上記故障検知手段により故障が検知された上記一のショベルが含まれる場合に、上記他のショベルを当該領域に対応する上記作業室内の実空間への侵入を回避するように制御すること
を特徴とする動作制御システム。
【請求項2】
上記故障検知手段は、上記一のショベルからの通信が途絶えた場合に、当該ショベルの故障を検知すること
を特徴とする請求項1記載の動作制御システム。
【請求項3】
上記故障検知手段は、上記一のショベルの制御が不能である場合に、当該ショベルの故障を検知すること
を特徴とする請求項1記載の動作制御システム。
【請求項4】
上記動作制御手段は、上記他のショベルの上記複数の領域に分割された上記作業室の実空間に対応する領域のうち上記一のショベルの最大可動範囲が含まれる領域への侵入を回避するように制御すること
を特徴とする請求項1記載の動作制御システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明を適用した動作制御システムは、ニューマチックケーソン工法において用いられる作業室内の複数のショベルの動作を制御する動作制御システムにおいて、上記複数のショベルのうちの一のショベルの故障を検知する故障検知手段と、上記故障検知手段により上記一のショベルの故障が検知された場合に、他のショベルを当該ショベルへの接触を回避するように制御する動作制御手段と、上記作業室の平面画像データを撮像する撮像手段と、上記撮像手段により撮像された上記平面画像データを複数の領域に分割する画像分割手段とを備え、上記動作制御手段は、上記画像分割手段により分割された何れかの領域に、上記故障検知手段により故障が検知された上記一のショベルが含まれる場合に、上記他のショベルを当該領域に対応する上記作業室内の実空間への侵入を回避するように制御することを特徴とする。