(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064226
(43)【公開日】2022-04-25
(54)【発明の名称】1液型水性接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 131/04 20060101AFI20220418BHJP
C09J 123/08 20060101ALI20220418BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20220418BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220418BHJP
C09J 201/02 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
C09J131/04
C09J123/08
C09J175/04
C09J11/06
C09J201/02
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172836
(22)【出願日】2020-10-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000105648
【氏名又は名称】コニシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101085
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 健至
(74)【代理人】
【識別番号】100134131
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 知理
(74)【代理人】
【識別番号】100185258
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 宏理
(72)【発明者】
【氏名】小杉 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 卓也
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040DA051
4J040DE031
4J040EF092
4J040GA13
4J040GA23
4J040HB15
4J040JA03
4J040JA12
4J040KA16
4J040KA42
4J040MA08
(57)【要約】
【課題】 良好な耐熱性、耐水性及び低温密着性を有し、かつ貯蔵安定性に優れる1液型の接着剤組成物を得ること。
【解決手段】 酸基を有しないエチレン酢酸ビニル系共重合体エマルジョン、スルホ基含有のポリウレタンエマルジョン、グリコールエーテル化合物及び硬化剤を含むものからなり、硬化剤がオキサゾリン基含有ポリマー、又はカルボジイミド基含有ポリマーの少なくとも1種であることを特徴とする接着剤組成物とすることで、良好な耐熱性、耐水性及び低温密着性を有し、かつ貯蔵安定性に優れるものとすることが可能になる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸基を有しないエチレン酢酸ビニル系共重合体エマルジョン(A)、スルホ基含有のポリウレタンエマルジョン(B)、グリコールエーテル化合物(C)及び硬化剤(D)を含むものからなり、硬化剤(D)がオキサゾリン基含有ポリマー又はカルボジイミド基含有ポリマーの少なくとも1種であることを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
前記(A)~(D)成分の含有量が、(A)固形分100重量部に対して(B)固形分1~10重量部、(C)固形分5~40重量部、及び(D)固形分0.1~10重量部であることを特徴とする、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記(D)成分のオキサゾリン基又はカルボジイミド基のモル数/(B)固形分の含有量の値が0.05~10mmol/gであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な耐熱性、耐水性及び低温密着性を有し、かつ貯蔵安定性に優れる1液型の接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、MDF(中密度繊維板)等の基材表面に、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックシートからなる部材を貼り合わせて複合材とする際には、水性接着剤が用いられている。その際、複合材に耐熱性や耐水性を付与することが必要とされることから、貼り合わせに用いる水性接着剤は、イソシアネート系の硬化剤を配合することが広く行われている。しかしながら、水性接着剤にイソシアネート系の硬化剤を配合したものは貯蔵安定性に劣るため、水性接着剤への硬化剤の配合は使用直前に行われる必要がある。そのため、このような2液型の接着剤は、混合に手間がかかる、混合不良による品質の不均一化が生じる、可使時間が短いなどといった問題を様々に抱えており、改善が求められていた。
【0003】
上記問題を改善するため、カルボキシル基含有の重合体、ポリウレタン、カルボキシル基に対して反応可能な官能基を有する化合物としてのポリオキサゾリン化合物からなる1液型の水性接着剤が提案されている(特許文献1を参照。)。
【0004】
上記特許文献には、カルボキシル基含有の重合体、ポリウレタン、カルボキシル基に対して反応可能な官能基を有する化合物としてのポリオキサゾリン化合物からなる1液型の水性接着剤は、1液型水性接着剤でありながら、2液型水性接着剤とほぼ同等の耐熱耐水性を有していると記載されている。しかしながら、組成物製造後の貯蔵安定性については、1日後の評価が示されるに留まり、実用途における貯蔵安定性が担保されているのか不明なものであった。
【0005】
また、上記特許文献で提案されたものの他にも、高揮発性有機溶媒及びグリコール系可塑剤などの高沸点溶剤を用いることのない水性接着剤(特許文献2及び特許文献3を参照。)やグリコールエーテル化合物を用いることのない水性接着剤(特許文献4を参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-8993号公報
【特許文献2】特開2004-197048号公報
【特許文献3】特開2004-197049号公報
【特許文献4】特開2006-36878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、良好な耐熱性、耐水性及び低温密着性を有し、かつ貯蔵安定性に優れる1液型の接着剤組成物を得ることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために様々な試行錯誤を行い、1液型の接着剤組成物とするにあたり、酸基を有しないエチレン酢酸ビニル系共重合体エマルジョン、スルホ基含有のポリウレタンエマルジョン、グリコールエーテル化合物、及びオキサゾリン基含有ポリマー又はカルボジイミド基含有ポリマーの少なくとも1種である硬化剤を用いるものとすることで、良好な耐熱性、耐水性及び低温密着性を有しつつ、更に貯蔵安定性にも優れる新たな1液型の接着剤組成物とすることが出来ることを新たに見出し、本願発明を完成させた。本願発明は以下の構成の手段を採用したものである。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の第1の手段は、酸基を有しないエチレン酢酸ビニル系共重合体エマルジョン(A)、スルホ基含有のポリウレタンエマルジョン(B)、グリコールエーテル化合物(C)及び硬化剤(D)を含むものからなり、硬化剤(D)がオキサゾリン基含有ポリマー又はカルボジイミド基含有ポリマーの少なくとも1種であることを特徴とする接着剤組成物である。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の第2の手段は、前記(A)~(D)成分の含有量が、(A)固形分100重量部に対して、(B)固形分1~10重量部、(C)固形分5~40重量部、及び(D)固形分0.1~10重量部であることを特徴とする、本発明の第1の手段の接着剤組成物である。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の第3の手段は、前記(D)成分のオキサゾリン基又はカルボジイミド基のモル数/(B)固形分の含有量の値が0.05~10mmol/gであることを特徴とする本発明の第1の手段又は第2の手段の接着剤組成物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の手段によって、耐熱性を良好な状態に保持しつつも、優れた耐水性及び低温密着性を有し、更には貯蔵安定性にも優れるという顕著な効果を奏する新たな1液型の接着剤組成物を提供することができることとなった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0014】
[酸基を有しないエチレン酢酸ビニル系共重合体エマルジョン(A)について]
本発明に係る(A)成分としての「酸基を有しないエチレン酢酸ビニル系共重合体エマルジョン」は、プラスチックシートに対する接着剤組成物の密着性を高めるために用いる。
【0015】
前記の酸基を有しないエチレン酢酸ビニル系共重合体エマルジョン(A)は、従来公知のエチレン及び酢酸ビニルの共重合体、又はエチレン、酢酸ビニル及びその他の共重合可能な単量体との共重合体からなるエチレン酢酸ビニル系共重合体(EVA)エマルジョンであって、酸基を有しないものを用いることができる。そして、酸基を有しないエチレン酢酸ビニル系共重合体エマルジョンとしては、例えば、住化ケムテックス株式会社製のスミカフレックス(登録商標)400HQ、スミカフレックス401HQ、スミカフレックス410HQ、スミカフレックス455HQ、昭和電工株式会社製のポリゾール(登録商標)AD-5、ポリゾールAD-10、ポリゾールAD-11、ポリゾールAD-13、ポリゾールAD-56等を用いることができる。
【0016】
[スルホ基含有のポリウレタンエマルジョン(B)について]
本発明に係る(B)成分としての「スルホ基含有のポリウレタンエマルジョン」は、接着剤組成物に耐熱性及び低温密着性を付与するために用いる。
【0017】
前記のスルホ基含有のポリウレタンエマルジョンとしては、従来公知のスルホ基含有のポリウレタンエマルジョンを用いることができる。そして、スルホ基含有のポリウレタンエマルジョンとしては、例えば、第一工業製薬株式会社のスーパーフレックス740、住化コベストロウレタン株式会社製のDispercoll(登録商標) U53、Dispercoll U54、Dispercoll U2612、三洋化成株式会社製のユープレン(登録商標)UXA307、DIC株式会社製のハイドラン(登録商標)HW-311等を用いることができる。
【0018】
ここで、本発明に係る(B)成分の量が0.1重量部未満の場合には、接着剤組成物の耐熱性、低温密着性が低下する。また、(B)成分の量が30重量部を上回ると、接着剤組成物の耐熱性、耐水性が低下する。そこで、(B)成分のスルホ基含有のポリウレタンエマルジョンの配合量は、(A)成分の酸基を有しないエチレン酢酸ビニル系共重合体エマルジョン100重量部(固形分)に対して0.1~30重量部、好ましくは1~10重量部とする。
【0019】
[グリコールエーテル化合物(C)について]
本発明に係る(C)成分としての「グリコールエーテル化合物」は、接着剤組成物に低温密着性を付与するために用いる。
【0020】
前記のグリコールエーテル化合物としては、従来公知のグリコールエーテル化合物を用いることができる。そして、グリコールエーテル化合物としては、グリコールモノエーテル化合物、グリコールジエーテル化合物等を用いることができ、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ-sec-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジ-sec-ブチルエーテル、エチレングリコールジ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ブロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ベンタエチレングリコールジエチルエーテル、ヘキサエチレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、ヘキサプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、等を用いることができる。
【0021】
ここで、(C)成分の量が0.1重量部未満の場合には、接着剤組成物の低温密着性、耐水性が低下する。また、(C)成分の量が50重量部を上回ると、接着剤組成物の耐熱性が低下する。そこで、(C)成分のグリコールエーテル化合物の配合量は、(A)成分の酸基を有しないエチレン酢酸ビニル系共重合体エマルジョン100重量部(固形分)に対して0.1~50重量部、好ましくは5~40重量部とする。
【0022】
[硬化剤(D)について]
本発明に係る(D)成分としての「硬化剤」は、接着剤組成物に耐水性及び耐熱性を付与するために用いる。
【0023】
前記硬化剤としては、従来公知のオキサゾリン基含有ポリマー、又はカルボジイミド基含有ポリマーの少なくとも1種を用いることができる。
【0024】
前記従来公知のオキサゾリン基含有ポリマーは、オキサゾリン基を分子内に1個以上有すればよく、好ましくは複数のオキサゾリン基を有する。オキサゾリン基含有ポリマーとしては、例えば、株式会社日本触媒製のエポクロス(登録商標)K-2010E、エポクロスK-2020E、エポクロスWS-300、エポクロスWS-500、エポクロスWS-700(オキサゾリン当量:220(オキサゾリン1mol当たりの化学式量))等を用いることができる。
【0025】
前記従来公知のカルボジイミド基含有ポリマーは、カルボジイミド基を分子内に1個以上有すればよく、好ましくは複数のカルボジイミド基を有する。カルボジイミド基含有ポリマーとしては、例えば、日清紡ケミカル株式会社製のカルボジライト(登録商標)V-02、カルボジライトV-02-L2(カルボジイミド当量:385(カルボジイミド1mol当たりの化学式量))、カルボジライトSV-02、カルボジライトE-02、カルボジライトE-05(カルボジイミド当量:310(カルボジイミド1mol当たりの化学式量))等を用いることができる。
【0026】
ここで、(D)成分の量が0.05重量部を下回る場合には、接着剤組成物の耐水性が低下する。また、(D)成分の量が20重量部を上回ると、接着剤組成物の耐熱性が低下する。そこで、(D)成分の硬化剤の配合量は、(A)成分の酸基を有しないエチレン酢酸ビニル系共重合体エマルジョン100重量部(固形分)に対して0.05~20重量部、好ましくは0.1~10重量部とする。
【0027】
[硬化剤(D)の架橋基量とスルホ基含有のポリウレタンエマルジョン(B)の配合量との関係について]
本発明に係る接着剤組成物は、硬化剤(D)の架橋基(オキサゾリン基又はカルボジイミド基)の量とスルホ基含有のポリウレタンエマルジョン(B)の配合量との割合を、耐熱性、低温密着性、耐水性が低下しないものとなるように調整する。
【0028】
ここで、接着剤組成物における硬化剤(D)の架橋基量とポリウレタンエマルジョン(B)の配合量との割合において、(D)成分のオキサゾリン基又はカルボジイミド基のモル数/(B)固形分の含有量の値が0.05mmol/gを下回るか10mmol/gを上回る場合には、接着剤組成物の耐熱性、低温密着性、耐水性の何れかが低下する傾向が見られる。そこで、硬化剤(D)の架橋基量とポリウレタンエマルジョン(B)の配合量との割合については、(D)成分のオキサゾリン基又はカルボジイミド基のモル数/(B)固形分の含有量の値が0.05~10mmol/g、好ましくは0.1~5mmol/gとなるようにする。
【0029】
[その他の成分について]
本発明の接着剤組成物には、上述した各成分以外に、必要に応じて、本発明の効果を損なわない程度の範囲において各種の添加剤を含有することができる。従来公知の他の任意成分が含有されていてもよい。このような成分としては、例えば、重質炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、マイカ、珪砂、シリカ、コーンスターチ等の充填剤、酸化チタン、カーボンブラック、その他の染料或いは顔料等の着色剤、粘接着付与剤、ウレタン系会合型、アルカリ増粘型、セルロース系などの増粘剤、シランカップリング剤、顔料分散剤、消泡剤、中和剤、安定剤、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、防カビ剤等が挙げられる。
【実施例0030】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0031】
1.試薬及び被着体について
【0032】
以下に示す各種試験のために、試薬としては、酸基を有しないエチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン(製品名:スミカフレックス455HQ 固形分55%(住化ケムテックス株式会社、日本)、BURGESS No.60(Burgess Pigment Company製)、Dispercoll U2612 固形分50%(住化コベストロウレタン株式会社製)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(製品名:メチルジグリコール(MDG)、グリコールエーテル EOタイプ、日本乳化剤株式会社、日本)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(製品名:ブチルジグリコール(BDG)、グリコールエーテル EOタイプ、日本乳化剤株式会社、日本)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(製品名:メチルプロピレンジグリコール(MFDG)、グリコールエーテル POタイプ、日本乳化剤株式会社、日本)、ジプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル(製品名:ブチルプロピレンジグリコール(BFDG)、グリコールエーテル POタイプ、日本乳化剤株式会社、日本)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(製品名:ハイソルブEDE、グリコールエーテル 両末端アルキル変性EOタイプ、東邦化学工業株式会社、日本)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(製品名:ブチセノール20アセテート KHネオケム株式会社)、オキサゾリン基含有ポリマー(製品名:エポクロスWS700、固形分25%、株式会社日本触媒、日本)、カルボジイミド基含有ポリマー(製品名:カルボジライトE-05、固形分40%、日清紡ケミカル株式会社、日本)、カルボジイミド基含有ポリマー(製品名:カルボジライトV-02-L2、固形分40%、日清紡ケミカル株式会社、日本)を用いた。
被着体としては、オレフィンシート(濡れ指数73mN/m以上、大日本印刷株式会社)、塩化ビニールシート(濡れ指数32mN/m)、MDF/中密度繊維板(製品名:テクウッドMタイプ、大建工業株式会社、日本)を用いた。
【0033】
2.接着剤組成物の調製について
【0034】
以下に記載される手順にて、本発明の手段の、酸基を有しないエチレン酢酸ビニル系共重合体エマルジョン(A)、スルホ基含有のポリウレタンエマルジョン(B)、グリコールエーテル化合物(C)及び硬化剤(D)を含むものからなり、硬化剤(D)がオキサゾリン基含有ポリマー又はカルボジイミド基含有ポリマーの少なくとも1種であることを特徴とする接着剤組成物をそれぞれ調製した。
【0035】
各実施例及び各比較例の接着剤組成物における各原料の配合割合、及び、これら接着剤組成物の(D)成分のオキサゾリン基又はカルボジイミド基のモル数/(B)固形分の含有量の値を、表1-1及び表1-2にまとめた。
【0036】
【0037】
[接着剤組成物の調製(実施例1)]
セパラブルフラスコ内にスミカフレックス455HQ((A)成分)を230g、BURGESS No.60(クレー)18gを量り取り、Dispercoll U2612((B)成分)を23g配合し、180rpmの速度で10分撹拌した。その後、メチルジグリコール(MDG)(C成分)を35g配合し、180rpmの速度で10分撹拌した。その後、エポクロス WS700(D成分)を2.3g配合し、180rpmの速度で10分撹拌して、実施例1の接着剤組成物を得た。
【0038】
[接着剤組成物の調製(実施例2)]
セパラブルフラスコ内にスミカフレックス455HQ((A)成分)を230g、BURGESS No.60(クレー)を18g、Dispercoll U2612((B)成分)を23g、ブチルジグリコール(BDG)((C)成分)を25g、エポクロス WS700((D)成分)を2.3gとなるようにそれぞれ量り取り、実施例1と同様の方法でそれらを混合して、実施例2の接着剤組成物とした。
【0039】
[接着剤組成物の調製(実施例3)]
セパラブルフラスコ内にスミカフレックス455HQ((A)成分)を230g、BURGESS No.60(クレー)を18g、Dispercoll U2612((B)成分)を23g、メチルプロピレンジグリコール(MFDG)((C)成分)を25g、エポクロス WS700((D)成分)を2.3gとなるようにそれぞれ量り取り、実施例1と同様の方法でそれらを混合して、実施例3の接着剤組成物を得た。
【0040】
[接着剤組成物の調製(実施例4)]
セパラブルフラスコ内にスミカフレックス455HQ((A)成分)を230g、BURGESS No.60(クレー)を18g、Dispercoll U2612((B)成分)を23g、ブチルプロピレンジグリコール(BFDG)((C)成分)を25g、エポクロス WS700(D成分)を2.3gとなるようにそれぞれ量り取り、実施例1と同様の方法でそれらを混合して、実施例4の接着剤組成物を得た。
【0041】
[接着剤組成物の調製(実施例5)]
セパラブルフラスコ内にスミカフレックス455HQ((A)成分)を230g、BURGESS No.60(クレー)を18g、Dispercoll U2612((B)成分)を23g、ハイソルブEDE((C)成分)を25g、エポクロスWS700((D)成分)を2.3gとなるようにそれぞれ量り取り、実施例1と同様の方法でそれらを混合して、実施例5の接着剤組成物を得た。
【0042】
[接着剤組成物の調製(比較例6)]
セパラブルフラスコ内にスミカフレックス455HQ((A)成分)を230g、BURGESS No.60(クレー)を18g、Dispercoll U2612((B)成分)を23g、(C)成分に換えてエステル系可塑剤のブチセノール20アセテートを25g、エポクロスWS700((D)成分)を2.3gとなるようにそれぞれ量り取り、実施例1と同様の方法でそれらを混合して、比較例6の接着剤組成物を得た。
【0043】
[接着剤組成物の調製(実施例7)]
セパラブルフラスコ内にスミカフレックス455HQ((A)成分)を230g、Dispercoll U2612((B)成分)を23g、ブチルジグリコール(BDG)((C)成分)を25g、エポクロス WS700((D)成分)を2.3gとなるようにそれぞれ量り取り、実施例1と同様の方法でそれらを混合して、実施例7の接着剤組成物とした。
【0044】
[接着剤組成物の調製(実施例8)]
セパラブルフラスコ内にスミカフレックス455HQ((A)成分)を230g、BURGESS No.60(クレー)を18g、Dispercoll U2612((B)成分)を16g、ブチルジグリコール(BDG)((C)成分)を25g、エポクロス WS700((D)成分)を2.3gとなるようにそれぞれ量り取り、実施例1と同様の方法でそれらを混合して、実施例8の接着剤組成物とした。
【0045】
[接着剤組成物の調製(比較例9)]
セパラブルフラスコ内にスミカフレックス455HQ((A)成分)を230g、BURGESS No.60(クレー)を18g、Dispercoll U2612((B)成分)を23g、ブチルジグリコール(BDG)((C)成分)を25gとなるようにそれぞれ量り取り、実施例1と同様の方法でそれらを混合して、比較例9の接着剤組成物とした。
【0046】
[接着剤組成物の調製(実施例10)]
セパラブルフラスコ内にスミカフレックス455HQ((A)成分)を230g、BURGESS No.60(クレー)を18g、Dispercoll U2612((B)成分)を23g、ブチルジグリコール(BDG)((C)成分)を25g、エポクロス WS700((D)成分)を1gとなるようにそれぞれ量り取り、実施例1と同様の方法でそれらを混合して、実施例10の接着剤組成物とした。
【0047】
[接着剤組成物の調製(実施例11)]
セパラブルフラスコ内にスミカフレックス455HQ((A)成分)を230g、BURGESS No.60(クレー)を18g、Dispercoll U2612((B)成分)を23g、ブチルジグリコール(BDG)((C)成分)を25g、エポクロス WS700((D)成分)を5.1gとなるようにそれぞれ量り取り、実施例1と同様の方法でそれらを混合して、実施例11の接着剤組成物とした。
【0048】
[接着剤組成物の調製(実施例12)]
セパラブルフラスコ内にスミカフレックス455HQ((A)成分)を230g、BURGESS No.60(クレー)を18g、Dispercoll U2612((B)成分)を23g、ブチルジグリコール(BDG)((C)成分)を25g、エポクロス WS700((D)成分)を25.3gとなるようにそれぞれ量り取り、実施例1と同様の方法でそれらを混合して、実施例12の接着剤組成物とした。
【0049】
[接着剤組成物の調製(実施例13)]
セパラブルフラスコ内にスミカフレックス455HQ((A)成分)を230g、BURGESS No.60(クレー)を18g、Dispercoll U2612((B)成分)を23g、ブチルジグリコール(BDG)((C)成分)を25g、エポクロス WS700((D)成分)を50.6gとなるようにそれぞれ量り取り、実施例1と同様の方法でそれらを混合して、実施例13の接着剤組成物とした。
【0050】
[接着剤組成物の調製(実施例14)]
セパラブルフラスコ内にスミカフレックス455HQ((A)成分)を230g、BURGESS No.60(クレー)を18g、Dispercoll U2612((B)成分)を23g、ブチルジグリコール(BDG)((C)成分)を25g、カルボジライトE-05((D)成分)を2.3gとなるようにそれぞれ量り取り、実施例1と同様の方法でそれらを混合して、実施例14の接着剤組成物とした。
【0051】
[接着剤組成物の調製(比較例15)]
セパラブルフラスコ内にスミカフレックス455HQ((A)成分)を230g、BURGESS No.60(クレー)を18g、ブチルジグリコール(BDG)((C)成分)を25g、エポクロス WS700((D)成分)を2.3gとなるようにそれぞれ量り取り、実施例1と同様の方法でそれらを混合して、比較例15の接着剤組成物とした。
【0052】
[接着剤組成物の調製(比較例16)]
セパラブルフラスコ内にスミカフレックス455HQ((A)成分)を230g、BURGESS No.60(クレー)を18g、Dispercoll U2612((B)成分)を23g、エポクロス WS700((D)成分)を2.3gとなるようにそれぞれ量り取り、実施例1と同様の方法でそれらを混合して、比較例16の接着剤組成物とした。
【0053】
3.接着剤組成物の評価試験について
【0054】
[接着剤組成物の粘度変化試験による評価]
【0055】
各実施例及び各比較例の接着剤組成物を用いて、各接着剤組成物の調製後の粘度変化を確認する試験を行う。各接着剤組成物の粘度(mPa・s)の計測は、B型粘度計により行い、測定環境温度を23℃及び回転速度を10r/minに設定して行った。
【0056】
初期粘度の評価を実施する。
上記2.に記載した手順により各実施例及び各比較例の接着剤組成物をそれぞれ調製した後、ガラス容器の中に入れて包装し密封した。各容器を23℃に調温した後、接着剤組成物の外観を目視にて確認し、更に接着剤組成物の粘度を測定して、その値を初期粘度として記録した。
【0057】
50℃2週間経過後粘度の評価を実施する。
上記2.に記載した手順により各実施例及び各比較例の接着剤組成物をそれぞれ調製した後、ガラス容器の中に入れて包装し密封した。各容器を50℃に設定したオーブン中に2週間静置した。その後各容器を23℃に調温した後、接着剤組成物の外観を目視にて確認し、更に接着剤組成物の粘度を測定して、その値を50℃2週間経過後粘度として記録した。
【0058】
そして、上記手順により記録した初期粘度及び50℃2週間経過後粘度の値から、接着剤組成物における粘度変化率(50℃2週間経過後の粘度/初期粘度×100)を算出し、その値を記録した。
【0059】
[オレフィンシート又は塩化ビニールシートとMDF(中密度繊維板)との複合材における接着剤組成物の耐熱クリープ試験による評価]
【0060】
各実施例及び各比較例の水性接着剤について、それぞれ耐熱クリープを評価する試験を行った。
【0061】
試験に用いる複合材を作製する。
MDF(製品名:テクウッドMタイプ、縦300mm×横150mm)、オレフィンシート(濡れ指数73mN/m以上、縦310mm×横160mm)及び塩化ビニールシート(濡れ指数32mN/m、縦310mm×横160mm)を用意した。また、製造初期の接着剤組成物として、上述した接着剤組成物の粘度変化評価試験と同様の手順にて初期粘度測定用の各実施例及び各比較例の水性接着剤を準備した。また、50℃2週間経過後の接着剤組成物として、上述した接着剤組成物の粘度変化評価試験と同様の手順にて50℃2週間経過後粘度測定用の各実施例及び各比較例の水性接着剤を用意した。
製造初期の接着剤組成物又は50℃2週間経過後の接着剤組成物としての各実施例及び各比較例の接着剤組成物をそれぞれ23℃に調温し、23℃の温度条件下にてバーコーターを用いて6g/尺角にてMDFの一方の面に塗布した。次いで、オレフィンシート又は塩化ビニールシートを該接着剤組成物塗布面上に載せ、ロールプレスを用いて1パスして貼付したのち、冷圧2kgf/cm2で5分保持して圧締した。その後、23℃に調温した恒温槽中に1週間静置して、複合材を得た。
【0062】
耐熱クリープ試験を実施する。
上記の各複合材を25mm幅に切断した。切断した各複合材を60℃のオーブン中に入れ、MDFが上面、オレフィンシート又は塩化ビニールシートが下面になるように配置する。そして、各複合材の端部のオレフィンシート又は塩化ビニールシートに対して90度方向に500gの静荷重をかけ、2時間静置した。その後、オーブンから各複合材を取り出し、オレフィンシート又は塩化ビニールシートがMDFとの接着面から剥離した長さをそれぞれ測定し、それをシートのはく離長さ(mm)として記録した。
【0063】
[オレフィンシート又は塩化ビニールシートとMDFとの複合材における接着剤組成物の温水浸せきはく離試験による評価]
【0064】
温水浸せきはく離試験を実施する。
上述した耐熱クリープ試験と同様の手順にて得た複合材を75mm角になるように切断した。切断した各複合材を70℃の温水に2時間浸せきした。2時間経過後、複合材を温水から取り出し、60℃オーブン中で3時間乾燥させる。その後、複合材のオレフィンシート又は塩化ビニールシートを端部から手で180度方向に強制はく離する。そして、各複合材におけるオレフィンシート又は塩化ビニールシートとMDFとの接着面の破壊状態を目視にて観察し、記録した。
【0065】
[塩化ビニールシートとMDFとの複合材における接着剤組成物の低温密着性試験]
上記2.に記載した手順により各実施例及び各比較例の接着剤組成物をそれぞれ調製した後、速やかに湿気を遮断する容器の中に入れて包装し密封した。各容器を2℃に調温し、2℃の低温条件の接着剤組成物を得た。また、上記耐熱クリープ試験に記載した手順と同様にして、塩化ビニールシート及びMDFを用意し、2℃に調温した。
2℃の低温条件になった各材料を、2℃の温度条件下にてバーコーターを用いて6g/尺角にてMDFの一方の面に塗布した。次いで、塩化ビニールシートを該接着剤組成物塗布面上に載せ、ロールプレスを用いて1パスして貼付したのち、冷圧2kgf/cm2で5分保持して圧締した。MDFの端部からはみ出した接着剤組成物を取り除いた後、2℃に調温した恒温室中に1日静置して、複合材を得た。
【0066】
低温密着性試験を実施する。
2℃に調温した恒温室中で、上記各試験例の塩化ビニールシートを端部から手で180度方向に秒速1.5mの速度で強制はく離する。そして、各複合材における塩化ビニールシートとMDFとの接着面の破壊状態を目視にて観察し、記録した。
【0067】
4.結果について
【0068】
[接着剤組成物の粘度変化試験による評価結果]
上述の各実施例及び各比較例の接着剤組成物を用いた粘度変化試験の結果を表2-1及び表2-2に記載した。
【0069】
【0070】
接着剤組成物の粘度変化試験により、各実施例及び各比較例の接着剤組成物を用いた初期粘度及び50℃2週間経過後粘度を確認する試験を行い、得られた値から各接着剤組成物における50℃2週間経過後の初期粘度からの粘度変化率(50℃2週間経過後の粘度/初期粘度×100)をそれぞれ算出した。
【0071】
その結果、各実施例の接着剤組成物における50℃2週間経過後の初期粘度からの粘度変化率は、それぞれ109%、88%、103%、87%、109%、66%、77%、79%、77%、71%、70%、65%であり、いずれも粘度変化の程度は低かった(表2-1及び表2-2)。これら実施例の接着剤組成物の(D)成分のオキサゾリン基又はカルボジイミド基のモル数/(B)固形分の含有量の値は、0.100~5.000mmol/gであった(表1-1及び表1-2)。
【0072】
本発明の手段の接着剤組成物は、従来同様に50℃2週間経過後であっても初期粘度からの粘度変化が生じにくいものであることが明らかとなった。また、様々なグリコールエーテル化合物が利用可能であることが理解される。
【0073】
他方、比較例6の接着剤組成物の50℃2週間経過後の粘度は初期粘度に比して大幅に高く、50℃2週間経過後の初期粘度からの粘度変化率は251%と、極めて大きいものであった(表2-1)。接着剤組成物に、(C)成分に換えてエステル系可塑剤を用いてはならないことが確認された。
【0074】
[耐熱クリープ試験結果]
オレフィンシート又は塩化ビニールシートとMDFとの複合材における接着剤組成物の耐熱クリープ試験結果を表3-1及び表3-2に示す。
【0075】
【0076】
オレフィンシート又は塩化ビニールシートとMDFとの複合材における接着剤組成物の耐熱クリープ試験の結果、各複合材の端部のオレフィンシート又は塩化ビニールシートに対して90度方向に500gの静荷重をかけて60℃2時間静置した後の接着面からのオレフィンシート又は塩化ビニールシートのはく離長さは、製造初期の各実施例の接着剤組成物を用いた場合には0~2mm、50℃2週間経過後の各実施例の接着剤組成物を用いた場合には、1~4mm、製造初期の各比較例の接着剤組成物を用いた場合には0~5mm、50℃2週間経過後の各比較例の接着剤組成物を用いた場合には、1~7mmと、いずれも僅かであった(表3-1及び表3-2)。また、これらの接着剤組成物の(D)成分のオキサゾリン基又はカルボジイミド基のモル数/(B)固形分の含有量の値は、0.100~5.000mmol/gであった(表1-1及び表1-2)。
【0077】
他方、(B)成分を含有しない比較例15の接着剤組成物では、オレフィンシートの場合、製造初期の接着剤組成物を用いた場合には9mm、50℃2週間経過後の接着剤組成物を用いた場合には、10mmと、はく離長さは大きくなり、塩化ビニールシートの場合は、製造初期及び50℃2週間経過後の接着剤組成物を用いた場合には、いずれも100mm以上と、はく離長さが極めて大きくなることが明らかとなった。
【0078】
[温水浸せきはく離試験結果]
オレフィンシート又は塩化ビニールシートとMDFとの複合材における接着剤組成物の温水浸せきはく離試試験の結果を表4-1~表4-3に示す。
【0079】
【0080】
オレフィンシート又は塩化ビニールシートとMDFとの複合材における接着剤組成物の温水浸せきはく離試験の結果、製造初期及び50℃2週間経過後の各実施例の接着剤組成物を用いた場合には、複合材のオレフィンシート又は塩化ビニールシートを端部から手で強制はく離した結果、MDFの材料破壊となり良好に接着していることが確認された。(表4-1及び表4-2)。これら接着剤組成物の(D)成分のオキサゾリン基又はカルボジイミド基のモル数/(B)固形分の含有量の値は、0.100~5.000mmol/gであった(表1-1及び表1-2)。
【0081】
他方、製造初期又は50℃2週間経過後の比較例9の接着剤組成物を用いた場合には、一部接着剤とシートの界面破壊が確認された(表4-2)。また、(B)成分を含有しない比較例15の接着剤組成物を用いた場合には、一部接着剤とシートの界面破壊が確認された(表4-3)。(C)成分を含有しない比較例16の接着剤組成物を用いた場合には、一部接着剤とオレフィンシートの界面破壊が確認された(表4-3)。
【0082】
オレフィンシート又は塩化ビニールシートとMDFとの複合材を製造する際に用いる接着剤組成物の、オレフィンシート又は塩化ビニールシートとMDFとの十分な耐水性と接着強度を保持するためには、(A)成分としての酸基を有しないエチレン酢酸ビニル系共重合体エマルジョン、(B)成分としてのスルホ基含有のポリウレタンエマルジョン、(C)成分としてのグリコールエーテル化合物に加えて、更に(D)成分のオキサゾリン基含有ポリマー又はカルボジイミド基含有ポリマーの少なくとも1種である硬化剤を含有させることが必要であることが明らかとなった。
【0083】
[低温密着性試験結果]
塩化ビニールシートとMDFとの複合材における接着剤組成物の低温密着性試験の結果を表5に示す。
【0084】
【0085】
塩化ビニールシートとMDFとの複合材における接着剤組成物の低温密着性試験の結果、製造初期及び50℃2週間経過後の各実施例及び各比較例の接着剤組成物を用いた場合に、複合材の塩化ビニールシートを端部から手で強制はく離させるとMDFの材料破壊となり良好に接着していることが確認された(表5)。これら実施例の接着剤組成物の(D)成分のオキサゾリン基又はカルボジイミド基のモル数/(B)固形分の含有量の値は、0.100~5.000mmol/gであった(表1-1及び表1-2)。
【0086】
他方、(B)成分を含有しない比較例15の接着剤組成物を用いた場合、及び(C)成分を含有しない比較例16の接着剤組成物を用いた場合には、一部接着剤とシートの界面破壊が確認された(表5)。
【0087】
オレフィンシート又は塩化ビニールシートとMDFとの複合材を製造する際に用いる接着剤組成物の、オレフィンシート又は塩化ビニールシートとMDFとの十分な低温密着性を保持するためには、(A)成分としての酸基を有しないエチレン酢酸ビニル系共重合体エマルジョン、(B)成分としてのスルホ基含有のポリウレタンエマルジョン、(C)成分としてのグリコールエーテル化合物に加えて、更に(D)成分のオキサゾリン基含有ポリマー又はカルボジイミド基含有ポリマーの少なくとも1種である硬化剤を含有させることが必要であることが明らかとなった。
本発明の手段のように、酸基を有しないエチレン酢酸ビニル系共重合体エマルジョン(A)、スルホ基含有のポリウレタンエマルジョン(B)、グリコールエーテル化合物(C)及び硬化剤(D)を含むものからなり、硬化剤(D)がオキサゾリン基含有ポリマー又はカルボジイミド基含有ポリマーの少なくとも1種であることを特徴とするものを用いることにより、良好な耐熱性、耐水性及び低温密着性を有し、かつ貯蔵安定性に優れるという顕著な効果を奏し、オレフィンシート又は塩化ビニールシートなどのシート素材とMDFとを接着した複合材を製造するための接着剤組成物に用いることにおいて好適な、新たな1液型の接着剤組成物を提供することが可能となる。