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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064240
(43)【公開日】2022-04-25
(54)【発明の名称】硬貨処理装置および硬貨処理システム
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/14 20190101AFI20220418BHJP
   G07D 11/00 20190101ALI20220418BHJP
   G07D 11/20 20190101ALI20220418BHJP
   G07D 11/26 20190101ALI20220418BHJP
【FI】
G07D11/14 151Z
G07D11/00 151
G07D11/20 103
G07D11/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172869
(22)【出願日】2020-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】鹿籠六 真明
(72)【発明者】
【氏名】東 令和
【テーマコード(参考)】
3E001
3E040
3E141
【Fターム(参考)】
3E001AA04
3E001AA06
3E001AB01
3E001BA01
3E001CA06
3E001CA09
3E001EA05
3E001FA19
3E040AA08
3E040BA10
3E040DA05
3E040FF05
3E040FJ06
3E040FJ07
3E040FJ08
3E141AA08
3E141BA10
3E141DA05
3E141FF05
3E141FJ07
3E141FJ08
3E141FJ09
3E141GA04
3E141GA06
3E141GB01
3E141HA06
3E141HA09
3E141KA05
3E141LA19
(57)【要約】
【課題】顧客が硬貨処理装置から硬貨の取出しを行う運用が行われた場合に、硬貨の出金が円滑に行われ得る硬貨処理装置および硬貨処理システムを提供する。
【解決手段】貨幣入出金機1は、外装体10と、外装体10内に配置され、硬貨が収納される硬貨収納部と、外装体10の正面から前方に張り出し、張り出した状態において、硬貨収納部から出金された硬貨が投出される硬貨出金トレイ18と、を備える。さらに、貨幣入出金機1は、外装体10内に配置され、外装体10の正面方向からアクセス可能な内部ユニット(紙幣リジェクトボックス19、紙幣入出金ユニット11)をさらに備える。硬貨出金トレイ18は、外装体10の正面位置から退避可能に構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金融機関の店舗内に設置される硬貨処理装置において、
外装体と、
前記外装体内に配置され、硬貨が収納される硬貨収納部と、
前記外装体の正面から前方に張り出し、張り出した状態において、前記硬貨収納部から出金された硬貨が投出される硬貨出金部と、
を備えることを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
前記外装体内に配置され、前記外装体の正面方向からアクセス可能な内部ユニットをさらに備え、
前記硬貨出金部は、前記外装体の正面位置から退避可能に構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記硬貨出金部を前記正面位置と前記外装体の正面から外れる位置との間で移動させる移動機構を、さらに備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記硬貨出金部が前記正面位置に存在するか否かを検出するための検出部と、
制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記検出部の検出結果に応じた制御処理を行う、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記硬貨出金部が前記正面位置に存在することに基づいて、前記硬貨収納部の硬貨が前記硬貨出金部に出金される出金処理を実行する、
ことを特徴とする請求項4に記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記内部ユニットへのアクセスが必要な場合に、前記硬貨出金部が前記正面位置に存在しないことに基づいて、前記内部ユニットヘアクセスするための処理を実行する、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記内部ユニットへのアクセスが必要な場合に、前記硬貨出金部の退避を促す報知を報知部に行わせる、
ことを特徴とする請求項2ないし6の何れか一項に記載の硬貨処理装置。
【請求項8】
外装体と、
前記外装体内に配置され、硬貨が収納される硬貨収納部と、
前記外装体に設けられ、第1硬貨出金ユニットと第2硬貨出金ユニットとを選択的に装着可能な装着部とを備え、
前記第1硬貨出金ユニットは、前記硬貨収納部から出金された硬貨が投出される第1硬貨出金部を含み、当該第1硬貨出金部が前記外装体から張り出した状態となるように、前記装着部に装着され、
前記第2硬貨出金ユニットは、前記硬貨収納部から出金された硬貨が投出される箱状の第2硬貨出金部を含み、当該第2硬貨出金部が前記外装体内から引き出し可能となるように、前記装着部に装着される、
ことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項9】
前記外装体内には、前記第1硬貨出金ユニットが前記装着部に装着されていることを示す第1情報を保持する第1保持部と、前記第2硬貨出金ユニットが前記装着部に装着されていることを示す第2情報を保持する第2保持部とが、選択的に設置でき、
前記第1保持部から前記第1情報を取得したことに基づいて、前記第1硬貨出金部を備えた前記硬貨処理装置のための第1制御プログラムを、実行される制御プログラムに決定し、前記第2保持部から前記第2情報を取得したことに基づいて、前記第2硬貨出金部を備えた前記硬貨処理装置のための第2制御プログラムを、実行される制御プログラムに決定する制御部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項8に記載の硬貨処理装置。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか一項に記載の硬貨処理装置と、
前記硬貨処理装置に接続された端末装置と、
を備えることを特徴とする硬貨処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨の入出金等の処理を行う硬貨処理装置および硬貨処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
外装体内に、紙幣の入金処理、出金処理等を行う紙幣入出金ユニットと、硬貨の入金処理、出金処理等を行う硬貨入出金ユニットとを備え、銀行等の金融機関の店舗内に設置される貨幣入出金機が、特許文献1に記載されている。店舗内において、貨幣入出金機は、たとえば、窓口カウンタの内側で窓口業務を行う2人のテラー(窓口係)の間に設置され、左右何れのテラーからも使用可能とされる。
【0003】
貨幣入出金機は、シャッターにより開閉される紙幣入金口、紙幣出金口および硬貨入金口を有する。また、貨幣入出金機は、硬貨出金ボックスを有する。硬貨出金ボックスは、機体内から前方へ引き出して取り外すことができる。
【0004】
入金の際には、テラーが、顧客から紙幣や硬貨を受け取り、これら貨幣を紙幣入金口や硬貨入金口に投入し、入金の操作を行う。また、出金の際には、テラーが、出金の操作を行い、紙幣出金口や硬貨出金ボックスへ紙幣や硬貨が出金されると、これら貨幣を取り出して、顧客へ渡す。
【0005】
ところで、金融機関において、上記の運用と異なる運用として、入出金の操作はテラーが行うが、貨幣の投入や取出しを顧客自身が行う運用が検討されている。この場合、貨幣入出金機は、店舗内において、受付カウンタの外側に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-057269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
貨幣の投入や取出しを顧客自身が行う運用において、硬貨が出金された場合、顧客が、硬貨出金ボックスを機体内から引き抜いて硬貨を取り出した後に、硬貨出金ボックスを機体内に戻す作業を行うことになる。しかしながら、貨幣入出金機の扱に慣れていない顧客にとって、機体内に収納された状態にある硬貨出金ボックスがわかりにくい虞がある。また、顧客が、硬貨を取り出した後、硬貨出金ボックスを戻し忘れる虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、金融機関の店舗内に設置される硬貨処理装置において、顧客が装置から硬貨の取出しを行う運用が行われた場合に、硬貨の出金が円滑に行われ得る硬貨処理装置、および、かかる硬貨処理装置を備える硬貨処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、金融機関の店舗内に設置される硬貨処理装置に関する。本態様に係る硬貨処理装置は、外装体と、前記外装体内に配置され、硬貨が収納される硬貨収納部と、前記外装体の正面から前方に張り出し、張り出した状態において、前記硬貨収納部から出金された硬貨が投出される硬貨出金部と、を備える。
【0010】
上記の構成によれば、硬貨出金部は、外装体内に隠れていないため、その場所がわかりやすく、また、硬貨の取出しの際に外装体から出し入れする作業が不要なため、外装体内への戻し忘れを危惧しなくてよい。よって、顧客が硬貨処理装置から硬貨の取出しを行う運用が行われた場合に、硬貨の出金を円滑に行うことができる。
【0011】
本態様に係る硬貨処理装置において、前記外装体内に配置され、前記外装体の正面方向からアクセス可能な内部ユニットがさらに備えられ得る。この場合、前記硬貨出金部は、前記外装体の正面位置から退避可能に構成され得る。
【0012】
たとえば、硬貨処理装置は、前記硬貨出金部を前記正面位置と前記外装体の正面から外れる位置との間で移動させる移動機構を備える。
【0013】
ここで、内部ユニットにアクセス可能であるとは、たとえば、内部ユニットに触れたり、内部ユニットの内部に触れたりできることを意味する。
【0014】
上記の構成によれば、内部ユニットにアクセスする際、硬貨出金部を外装体の正面位置から退避させることができるので、硬貨出金部が邪魔になることを防止できる。
【0015】
上記のように硬貨出金部が退避可能な構成とされた場合、前記硬貨出金部が前記正面位置に存在するか否かを検出するための検出部と、制御部とが、さらに備えられ得る。この場合、前記制御部は、前記検出部の検出結果に応じた制御処理を行う。
【0016】
このような構成とされれば、硬貨出金部が外装体の正面位置に存在するか否かに応じた適正な制御処理を行うことができる。
【0017】
上記の構成とされた場合、検出部の検出結果に応じた制御処理として、前記制御部は、前記硬貨出金部が前記正面位置に存在することに基づいて、前記硬貨収納部の硬貨が前記硬貨出金部に出金される出金処理を実行し得る。
【0018】
このような構成とされれば、硬貨出金部に硬貨を投出できない状態で硬貨の出金が行われてしまうことが防止される。
【0019】
上記の構成とされた場合、検出部の検出結果に応じた制御処理として、前記制御部は、前記内部ユニットへのアクセスが必要な場合に、前記硬貨出金部が前記正面位置に存在しないことに基づいて、前記内部ユニットヘアクセスするための処理を実行し得る。
【0020】
このような構成とされれば、硬貨出金部が外装体の正面位置から退避されない状態で内部ユニットへアクセスが行われることを防止できる。
【0021】
上記のように硬貨出金部が退避可能な構成とされた場合、制御部がさらに備えられ得る。この場合、前記制御部は、前記内部ユニットへのアクセスが必要な場合に、前記硬貨出金部の退避を促す報知を報知部に行わせる。
【0022】
このような構成とされれば、硬貨出金部を忘れずに退避させることができる。
【0023】
本発明の第2の態様は、硬貨処理装置に関する。本態様に係る硬貨処理装置は、外装体と、前記外装体内に配置され、硬貨が収納される硬貨収納部と、前記外装体に設けられ、第1硬貨出金ユニットと第2硬貨出金ユニットとを選択的に装着可能な装着部とを備える。ここで、前記第1硬貨出金ユニットは、前記硬貨収納部から出金された硬貨が投出される第1硬貨出金部を含み、当該第1硬貨出金部が前記外装体から張り出した状態となるように、前記装着部に装着される。さらに、前記第2硬貨出金ユニットは、前記硬貨収納部から出金された硬貨が投出される箱状の第2硬貨出金部を含み、当該第2硬貨出金部が前記外装体内から引き出し可能となるように、前記装着部に装着される。
【0024】
上記の構成によれば、金融機関で実施される運用等に応じて、硬貨処理装置を、第1硬貨出金部を備える形態と第2硬貨出金部を備える形態との間で切り替えることができるので、金融機関にかかるコスト等の負担を軽減できる。
【0025】
本態様に係る硬貨処理装置において、前記外装体内に、前記第1硬貨出金ユニットが前記装着部に装着されていることを示す第1情報を保持する第1保持部と、前記第2硬貨出金ユニットが前記装着部に装着されていることを示す第2情報を保持する第2保持部とが、選択的に設置できるような構成が採られ得る。この場合、前記第1保持部から前記第1情報を取得したことに基づいて、前記第1硬貨出金部を備えた前記硬貨処理装置のための第1制御プログラムを、実行される制御プログラムに決定し、前記第2保持部から前記第2情報を取得したことに基づいて、前記第2硬貨出金部を備えた前記硬貨処理装置のための第2制御プログラムを、実行される制御プログラムに決定する制御部が、さらに備えられ得る。
【0026】
上記の構成によれば、硬貨処理装置を、第1硬貨出金部を備える形態または第2硬貨出金部を備える形態に切り替える際に、切り替えに応じた制御プログラムをダウンロード等により硬貨処理装置に組み入れる作業を行わなくてよく、切り替えに要する時間を短くでき、また、切り替えにかかる手間を軽減できる。
【0027】
本発明の第3の態様は、硬貨処理システムに関する。本態様に係る硬貨処理システムは、上記第1の態様または上記第2の態様に係る硬貨処理装置と、前記硬貨処理装置に接続された端末装置と、を備える。
【0028】
上記の構成によれば、上記第1の態様または上記第2の態様と同様の効果が奏され得る。
【発明の効果】
【0029】
以上のとおり、本発明によれば、金融機関の店舗内に設置される硬貨処理装置において、顧客が装置から硬貨の取出しを行う運用が行われた場合に、硬貨の出金が円滑に行われ得る硬貨処理装置、および、かかる硬貨処理装置を備える硬貨処理システムを提供できる。
【0030】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、実施形態に係る、貨幣入出金機の構成を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る、貨幣入出金機に搭載された硬貨入出金ユニットを上方から見た構成を模式的に示す図である。
図3図3は、実施形態に係る、硬貨出金トレイが外装体の正面位置に存在する状態の出金トレイユニットの斜視図である。
図4図4は、実施形態に係る、硬貨出金トレイが退避位置に存在する状態の出金トレイユニットの斜視図である。
図5図5(a)および(b)は、それぞれ、実施形態に係る、硬貨出金トレイが外装体の正面位置および退避位置に存在する状態の出金トレイユニットの主要部を模式的に示す平面断面図である。
図6図6は、実施形態に係る、硬貨出金トレイが示された出金トレイユニットの前部の平面図である。
図7図7は、実施形態に係る、貨幣入出金機の構成を示すブロック図である。
図8図8(a)は、実施形態に係る、硬貨出金トレイが外装体の正面位置にセットされた状態で出金処理が行われるための制御処理を示すフローチャートであり、図8(b)は、実施形態に係る、セットガイダンス画面の一例を示す図である。
図9図9(a)は、実施形態に係る、ガイダンス表示のための制御処理を示すフローチャートであり、図9(b)および(c)は、それぞれ、実施形態に係る、退避ガイダンス画面および抜取ガイダンス画面の一例を示す図である。
図10図10は、実施形態に係る、セミセルフ仕様に切り替えられた貨幣入出金機の要部を示す分解斜視図である。
図11図11は、実施形態に係る、フル仕様に切り替えられた貨幣入出金機の要部を示す分解斜視図である。
図12図12は、実施形態に係る、制御プログラムを自動的に決定するための制御処理を示すフローチャートである。
図13図13(a)ないし(c)は、実施形態に係る、フル仕様の貨幣入出金機における操作表示部での画面表示の一例を示す図である。
図14図14(a)ないし(c)は、実施形態に係る、セミセルフ仕様の貨幣入出金機における操作表示部での画面表示の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、貨幣を入金および出金する機能を備えた貨幣入出金機が、硬貨処理装置の一例として示されている。また、貨幣処理システムが、硬貨処理システムの一例として示されている。なお、各図には、適宜、貨幣入出金機の上下、左右および前後を示す矢印が付されている。
【0033】
図1は、貨幣入出金機1の構成を示す斜視図である。
【0034】
貨幣入出金機1は、銀行等の金融機関の店舗内において、窓口カウンタの外側に設置される。貨幣入出金機1は、テラー(窓口係)によって操作される上位端末2に通信ケーブル3を介して接続されている。なお、貨幣入出金機1と上位端末2とは、このように有線ではなく、無線により接続されてもよい。貨幣入出金機1と上位端末2とにより、貨幣処理システム4が構成される。
【0035】
貨幣入出金機1に対する入金および出金の操作は、テラーにより上位端末2を用いて行われ、入金する貨幣(紙幣、硬貨)の貨幣入出金機1への投入および出金された貨幣の貨幣入出金機1からの取出しは、顧客自身により行われる。この運用は、いわゆるセミセルフ運用と称される。
【0036】
貨幣入出金機1は、外郭を構成する外装体10内に、紙幣入出金ユニット11と硬貨入出金ユニット12とを備える。紙幣入出金ユニット11は、外装体10内の下側に設けられ、紙幣の入金処理、出金処理等を行う。硬貨入出金ユニット12は、外装体10内の上側に設けられ、硬貨の入金処理、出金処理等を行う。
【0037】
図1に示すように、外装体10は、左右方向の横幅よりも前後方向の奥行が長く、上下方向の高さが左右方向の横幅よりも高いほぼ直方体形状を有する。外装体10は、本体10aと、本体10aの前上部に設けられた外装カバー10bと、本体10aの前面に設けられた扉10cとを備える。たとえば、外装カバー10bは樹脂材料で形成され、本体10aおよび扉10cは金属材料で形成される。
【0038】
紙幣入出金ユニット11は、外装体10の正面方向からアクセス可能である。即ち、扉10cを開いて外装体10の内部から紙幣入出金ユニット11を引き出すことができる。紙幣入出金ユニット11を引き出すことにより、紙幣入出金ユニット11に含まれる紙幣収納部(図示せず)に対して紙幣の補充や回収を行うことができる。また、紙幣入出金ユニット11内の搬送部(図示せず)で紙幣のジャム(詰まり)が生じた場合に、詰まった紙幣を取り除くことができる。
【0039】
外装カバー10bには、上面に硬貨入金口13が形成され、前面に紙幣出金口14が形成され、上面から前面にかけて湾曲する湾曲面に紙幣入金口15が形成される。これら硬貨入金口13、紙幣出金口14および紙幣入金口15は、それぞれ、シャッター13a、14a、15aにより開閉される。硬貨入金口13および紙幣入金口15には、入金処理の際に、それぞれ、硬貨および紙幣か投入される。紙幣出金口14には、出金処理の際に、紙幣が投出される。
【0040】
外装カバー10bの後部には、操作表示部16が設けられる。操作表示部16は、前方斜め上方を向くように外装カバー10bに固定されている。操作表示部16は、ディスプレイとタッチセンサとからなるタッチパネルで構成される。操作表示部16は、ディスプレイに各種の画像(画面)を表示するとともに、ディスプレイに対するユーザのタッチ操作をタッチセンサにより検出する。
【0041】
外装カバー10bの上面における硬貨入金口13の両側の領域には、4つの操作キー17が設けられる。4つの操作キー17は、左右の前側の操作キー17a、17bが、硬貨入金口13や紙幣入金口15に紙幣や硬貨を投入した後に入金を開始させるためのスタートキーとして機能し、左右の後側の操作キー17c、17dが、紙幣出金口14に紙幣が投出された後にシャッター14aを開放させるためのオープンキーとして機能する。
【0042】
本体10aの前部の左端部には、硬貨出金トレイ18が、外装体10の正面から前方に張り出すように設けられる。硬貨出金トレイ18には、出金処理の際に、硬貨が投出される。顧客は、硬貨出金トレイ18から硬貨を取り出す。硬貨出金トレイ18は、後述する出金トレイユニット200に含まれる。
【0043】
本体10aの前部には、内部に、ほぼ直方体状の紙幣リジェクトボックス19が配置される。紙幣リジェクトボックス19には、紙幣の出金処理の際に、金種識別不能な紙幣や搬送異常紙幣(重送、斜行等)等のリジェクト紙幣が収納される。紙幣リジェクトボックス19は、外装体10の正面方向からアクセス可能である。即ち、紙幣リジェクトボックス19は、本体10a内から前方へ引き出して抜き取ることができる。本体10a内に収容された紙幣リジェクトボックス19には鍵が掛けられており、鍵を外すことにより紙幣リジェクトボックス19が抜き取り可能になる。テラーは、抜き取った紙幣リジェクトボックス19の扉(図示せず)を開けて、リジェクト紙幣を取り出す。
【0044】
硬貨出金トレイ18が、外装体10の正面位置にあるとき、紙幣リジェクトボックス19の左端部が、硬貨出金トレイ18の後ろに重なる。このため、紙幣リジェクトボックス19が外装体10内から引き出される際に、硬貨出金トレイ18が邪魔になる。また、紙幣入出金ユニット11は、硬貨出金トレイ18に重なりはしないが、硬貨出金トレイ18の近くにある。このため、紙幣入出金ユニット11が外装体10内から引き出される際にも、硬貨出金トレイ18が邪魔になり得る。
【0045】
そこで、硬貨出金トレイ18は、外装体10の正面位置から正面から外れる所定の位置(以下、「退避位置」という)まで左方に回動できる構成、即ち、正面位置から退避できる構成とされている。硬貨出金トレイ18を含む出金トレイユニット200の詳細な構成については、追って説明される。
【0046】
図2は、貨幣入出金機1に搭載された硬貨入出金ユニット12を上方から見た構成を模式的に示す図である。
【0047】
図2に示すように、硬貨入出金ユニット12は、硬貨受け入れ部101と、6つの硬貨収納部102と、一括保留部103と、を備える。
【0048】
硬貨受け入れ部101は、硬貨入金口13の下方に配置され、硬貨入金口13に投入された硬貨を受け入れる。硬貨入金口13に投入された硬貨は、硬貨受け入れ部101に落下する。6つの硬貨収納部102は、それぞれ、金種ごとに硬貨を収納する。たとえば、6つの硬貨収納部102は、硬貨入出金ユニット12の前側から順番に、1円硬貨、5円硬貨、10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨、500円硬貨を収納する。一括保留部103は、入出金処理や、硬貨収納部102に収納された硬貨を回収する処理等において、硬貨を一時的に収納するためのものである。
【0049】
さらに、硬貨入出金ユニット12は、硬貨受け入れ部101に対応づけられた硬貨繰出機構104と、6つの硬貨収納部102にそれぞれ対応づけられた硬貨繰出機構105と、一括保留部103に対応づけられた硬貨繰出機構106と、搬送部107と、識別部108と、を備える。
【0050】
硬貨繰出機構104は、硬貨受け入れ部101に受け入れられた硬貨を、1枚ずつ搬送部107に繰り出す。6つの硬貨繰出機構105は、それぞれ、対応する硬貨収納部102に収納されている硬貨を、1枚ずつ搬送部107に繰り出す。硬貨繰出機構106は、一括保留部103に収納されている硬貨を、1枚ずつ搬送部107に繰り出す。
【0051】
搬送部107は、時計回りの方向に循環移動を行う循環ベルト107aを備える。この循環ベルト107aには、複数の突起部分(図示せず)が等間隔で設けられている。循環ベルト107aに設けられた各突起部分に硬貨が引っかかることにより、循環ベルト107aの循環移動に伴って、硬貨が1枚ずつ搬送される。こうして、上記各繰出機構により繰り出された硬貨が、循環ベルト107aの循環経路に沿って搬送される。
【0052】
識別部108は、硬貨の搬送経路上に設けられ、搬送部107によって1枚ずつ搬送される硬貨の金種および真偽等を識別する。識別部108における硬貨の識別情報は、後述する制御部301に送信される。
【0053】
さらに、硬貨入出金ユニット12は、一括保留部103に対応づけられた分岐機構109と、6つの硬貨収納部102にそれぞれ対応づけられた分岐機構110と、硬貨入金口13に対応づけられた分岐機構111と、分岐機構112と、を備える。
【0054】
分岐機構109は、搬送部107によって搬送される硬貨を選択的に搬送部107から分岐させて一括保留部103に送る。6つの分岐機構110は、それぞれ、搬送部107によって搬送される硬貨を選択的に搬送部107から分岐させて、対応する硬貨収納部102に送る。分岐機構111は、搬送部107により搬送される硬貨を選択的に搬送部107から分岐させて、硬貨を硬貨入金口13(硬貨受け入れ部101)に移送する移送部(図示せず)に送る。
【0055】
分岐機構112は、搬送部107によって搬送される硬貨を選択的に搬送部107から分岐させて回収カセット(図示せず)に送る。分岐機構112で分岐されなかった硬貨は、全て、搬送部107によって硬貨出金トレイ18に送られる。この際、硬貨は、排出口113から落下して硬貨出金トレイ18へと向かう。
【0056】
なお、回収カセットへ向かう経路には更なる分岐機構が存在する。後述するように、硬貨出金トレイ18に替えて、左右2つの硬貨出金ボックスが本体10aの前部に設けられた場合、硬貨は、更なる分岐機構によって分岐され、右側の硬貨出金ボックスまたは回収カセットに送られる。
【0057】
なお、硬貨出金トレイ18に替えて、左右の硬貨出金ボックスが設けられた場合は、分岐機構112で分岐されなかった硬貨が、全て、搬送部107によって左側の硬貨出金ボックスに送られる。
【0058】
図3は、硬貨出金トレイ18が外装体10の正面位置に存在する状態の出金トレイユニット200の斜視図である。図4は、硬貨出金トレイ18が退避位置に存在する状態の出金トレイユニット200の斜視図である。図5(a)および(b)は、それぞれ、硬貨出金トレイ18が外装体10の正面位置および退避位置に存在する状態の出金トレイユニット200の主要部を模式的に示す平面断面図である。図6は、硬貨出金トレイ18が示された出金トレイユニット200の前部の平面図である。
【0059】
なお、図4では、硬貨出金トレイ18を構成するカバー212と移動機構230を構成するカバー236の図示が省略されている。また、図5(a)および(b)では、便宜上、検出機構250を構成する検出板251の後側部分の図示が省略されているとともに、ロック機構240を構成するレバー241に着色が施されている。
【0060】
図3ないし図6を参照し、出金トレイユニット200の詳細な構成について説明する。なお、以降、「硬貨出金トレイ18」が、その符号が変更されて、「硬貨出金トレイ210」とされる。
【0061】
出金トレイユニット200は、硬貨出金トレイ210と、ベース部材220と、移動機構230と、ロック機構240と、検出機構250と、シュート260とを備えている。
【0062】
硬貨出金トレイ210は、平面視においてほぼ半円状を有するトレイ本体211と、トレイ本体211の周面に取り付けられるカバー212とを含む。トレイ本体211の上面には、投出された硬貨が溜められる凹部213が形成される。凹部213は、その中央部が最も低くなっている。トレイ本体211の左後端部には、凹部213に繋がる導入溝214が形成される。導入溝214は、500円硬貨の厚みよりの大きな幅と500円硬貨の直径の半分以上の深さを有する。導入溝214の底面は、凹部213に向かって下り傾斜している。硬貨出金トレイ210が外装体10の正面位置に存在するとき(図3図5(a))、導入溝214の入口214aがシュート260の出口262に繋がる。
【0063】
図6に示すように、凹部213の中央部には、凹部213、即ち硬貨出金トレイ210に硬貨が存在するか否かを検出するための硬貨検出部270が設けられる。硬貨検出部270は、発光素子271a、272aと受光素子271b、272bとが左右方向に対向配置された2つのフォトセンサ271、272と、発光素子273aおよび受光素子273bとプリズム273cとが前後方向に対向配置されたプリズム反射型のフォトセンサ273とを含む。凹部213には、これらフォトセンサ271、272、273に対応して、光を通す8つの孔213aが形成される。
【0064】
ベース部材220は、所定の形状を有する複数の部品を組み合わせることにより形成される。ベース部材220に、移動機構230、ロック機構240、検出機構250およびシュート260が備え付けられる。ベース部材220は、前部に、天面部221と底面部222と右側面部223とにより囲われた収容部224を有する。
【0065】
移動機構230は、硬貨出金トレイ210を、水平面内で回動させることにより、外装体10の正面位置(図3図5(a))と、外装体10の外であって外装体10の正面から外れる退避位置(図4図5(b))との間で移動させる。移動機構230は、フレーム231と、回動軸232と、規制部材233とを含む。
【0066】
フレーム231は、硬貨出金トレイ210を下方から保持する保持部234と、保持部234から延びるアーム部235とを含む。回動軸232は、ベース部材220の収容部224の左後部に配置され、鉛直方向に延びる。アーム部235の左後端部が、回動軸232により回動可能に支持される。アーム部235の左端部に、方形状のカバー236が取り付けられる。
【0067】
規制部材233は、細長い板状を有する第1部材237と第2部材238とを含む。第1部材237には、スリット状の孔237aが形成され、第2部材238には、前部に、2つの軸238aが形成される。2つの軸238aが孔237aに通されるようにして第1部材237と第2部材238とが連結されており、第1部材237は第2部材238に対してスライドできる。第1部材237がスライドすることにより、規制部材233が伸縮する。
【0068】
第1部材237の前端部が、アーム部235の前部に設けられた軸235aに回動可能に固定され、第2部材238の後端部が、ロック機構240を構成するロック板244に設けられた軸244cに回動可能に固定される。
【0069】
ロック機構240は、硬貨出金トレイ210が外装体10の正面位置から動かないように、移動機構230をロックする。ロック機構240は、レバー241と、ロックピン242と、コイルバネ243と、ロック板244とを含む。
【0070】
レバー241は、フレーム231のアーム部235に、当該アーム部235の前後方向にスライド可能に固定される。レバー241の前端部には、操作片241aが形成される。レバー241を移動させる際に、操作片241aに指がかけられる。
【0071】
ロックピン242は、レバー241に固定され、レバー241から下方に突出する。コイルバネ243は、レバー241とアーム部235の後部との間にかけ渡され、レバー241をアーム部235の後方向に付勢する。
【0072】
ロック板244は、ベース部材220の収容部224内に配置され、右側面部223に固定される。ロック板244には、前端部に、ほぼU字に切り欠かれた溝部244aが形成される。また、ロック板244の前端部は、溝部244aの左側が斜めにカットされ、この部分がロックピン242を溝部244aに案内するための案内部244bとなる。図5(a)に示すように、硬貨出金トレイ210が正面位置に存在するとき、ロックピン242が溝部244aに嵌り込む。これにより、フレーム231が回動できない状態となる。
【0073】
検出機構250は、検出板251と、フォトセンサ252とを含む。検出板251は、フレーム231のアーム部235に固定される。検出板251には、その前端部からに立ち上がる検出片251aが設けられる。フォトセンサ252は、互いに対抗する発光素子252aと受光素子252bとを含む。フォトセンサ252は、ベース部材220の天面部221の前部に取り付けられ、発光素子252aと受光素子252bが収容部224内に臨む。
【0074】
図5(a)に示すように、硬貨出金トレイ210が外装体10の正面位置に存在するとき、検出片251aが発光素子252aと受光素子252bとの間に入り込み、発光素子252aから受光素子252bへ向う光を遮る。フォトセンサ252は、検出片251aにより遮光されたか否かを検出することにより、硬貨出金トレイ210が、正面位置に存在するか否かを検出する。
【0075】
シュート260は、ベース部材220の天面部221の前部に取り付けられる。シュート260は、左右方向に扁平な方形の筒状を有し、入口261側の勾配が出口262側の勾配よりも大きくなるよう、途中部分が折れ曲がっている。シュート260の入口261は、硬貨入出金ユニット12の排出口113に繋がる。シュート260の出口262は、硬貨出金トレイ210の導入溝214の入口214aに繋がる。
【0076】
図3および図5(a)に示すように、硬貨出金トレイ210が外装体10の正面位置に存在するとき、フレーム231が回動できないよう、移動機構230がロック機構240によりロックされる。また、硬貨出金トレイ210が正面位置に存在することがフォトセンサ252により検出される。規制部材233は、最も収縮した状態にある。ベース部材220は、収容部224の左側面側がカバー236で覆われ、収容部224内が隠される。
【0077】
硬貨出金トレイ210を正面位置から退避させる際には、操作片241aが前方に引かれ、レバー241がコイルバネ243の付勢力に抗して前方へ移動する。これにより、ロックピン242がロック板244の溝部244aから外れ、ロック機構240による移動機構230のロックが解除されて、フレーム231が回動できる状態となる。硬貨出金トレイ210がフレーム231とともに左方に回動される。フレーム231の回動に伴って、規制部材233が伸長しながら回動する。
【0078】
図4および図5(b)に示すように、硬貨出金トレイ210が正面位置から所定の角度(たとえば、80度)だけ回動されて退避位置に到達すると、規制部材233が最も伸長した状態となり、規制部材233とフレーム231がこれ以上回動できなくなる。これにより、硬貨出金トレイ210の回動が退避位置で止められる。硬貨出金トレイ210が正面位置に存在しないことがフォトセンサ252により検出される。
【0079】
硬貨出金トレイ210は、退避位置から右方に回動されることにより正面位置に戻される。この際、回動途中でロックピン242がロック板244の案内部244bに当接し、案内部244bに案内されて前方へ移動する。そして、硬貨出金トレイ210が正面位置に到達すると、ロックピン242が溝部244aに嵌り込んで、ロック状態となる。よって、硬貨出金トレイ210を戻す際、指でレバー241を前方に移動させる必要がない。
【0080】
硬貨出金トレイ210が外装体10の正面位置に存在する状態で出金処理が行われると、硬貨入出金ユニット12から排出口113を通じてシュート260に硬貨が排出される。シュート260に排出された硬貨は、立った状態でシュート260の内部を転がり落ちて出口262から放出される。図6に示すように、放出された硬貨は、立った状態のまま導入溝214を転がって凹部213内に排出される。このため、硬貨は、一点鎖線のように凹部213の入口付近に滞留しにくく、実線のように凹部213の中央部に溜まりやすくなる。これにより、硬貨検出部270による残留硬貨の検出精度が向上することが期待される。
【0081】
図7は、貨幣入出金機1の構成を示すブロック図である。図7には、硬貨入出金ユニット12に関する主要な構成が示されており、紙幣入出金ユニット11に関する各部の構成は省略されている。
【0082】
図7に示すように、貨幣入出金機1は、上述の紙幣入出金ユニット11、操作表示部16、操作キー17、シャッター13a、14a、15a、硬貨繰出機構104、105、106、搬送部107、識別部108および分岐機構109、110、111、112、フォトセンサ252、硬貨検出部270の他、制御部301、記憶部302、通信部303および音声出力部304を備える。
【0083】
制御部301は、CPU(Central Processing Unit)等の演算回路(処理回路)を備え、記憶部302に記憶された制御プログラムに従って各部を制御する。記憶部302は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)やハードディスク等の記憶媒体を備え、制御部301の制御プログラムを記憶し、また、制御部301の制御処理の際にワーク領域として利用される。通信部303は、上位端末2との間で通信を行う。音声出力部304は、スピーカを備え、制御部301からの制御に従って、所定の音声を出力する。
【0084】
次に、硬貨入出金ユニット12における硬貨の入出処理および出金処理の動作について、図2を参照して説明する。
【0085】
硬貨の入金処理において、テラーは、上位端末2を用いて入金のための操作を行う。その後、顧客は、硬貨入金口13から入金対象の硬貨を投入し、スタートキーである操作キー17aまたは操作キー17bを押す。投入された硬貨が、硬貨受け入れ部101に受け入れられ、硬貨繰出機構104によって1枚ずつ搬送部107に繰り出される。繰り出された硬貨は、搬送部107によって識別部108に搬送される。識別部108により正常な硬貨と識別された硬貨は、分岐機構109によって一括保留部103に送られる。識別部108により正常な硬貨と識別され得なかった硬貨は、リジェクト硬貨として、硬貨出金トレイ210に送られる。
【0086】
顧客は、硬貨出金トレイ210からリジェクト硬貨を取り出す。その後、テラーが、上位端末2を用いて入金を確定する操作を行うと、一括保留部103から硬貨が1枚ずつ繰り出されて、再び、識別部108に搬送される。識別部108において、各硬貨の金種が識別される。その後、硬貨は、分岐機構110によって、識別結果に応じた金種の硬貨収納部102に送られる。こうして、金種ごとに、硬貨が硬貨収納部102に収納される。こうして、硬貨の入金処理が終了する。
【0087】
硬貨の出金処理において、テラーは、上位端末2を用いて、出金額の入力を含む出金のための操作を行う。これに応じて、出金対象の金種に対応する硬貨収納部102から搬送部107に硬貨が1枚ずつ繰り出される。繰り出された硬貨は、搬送部107によって識別部108に搬送される。このとき、識別部108により正常な硬貨と識別され得なかった硬貨は、リジェクト硬貨として、分岐機構109によって一括保留部103に送られる。識別部108により正常な硬貨と識別された硬貨は、硬貨出金トレイ210に送られる。顧客は、硬貨出金トレイ210から、出金された硬貨を取り出す。こうして、硬貨の出金処理が終了する。
【0088】
なお、硬貨出金トレイ210内に硬貨が投出されると、それら硬貨が硬貨検出部270により検出され、音声出力部304による音声報知等により硬貨の存在が知らされる。また、硬貨出金トレイ210の近傍位置に配置されるLED(図示せず)の点滅や操作表示部16による画面表示によって、硬貨の存在が視覚的にも報知される。硬貨出金トレイ210から硬貨が全て取り出され、硬貨が存在しないことが硬貨検出部270により検出されると、報知が停止する。
【0089】
出金処理により硬貨が出金される際、硬貨出金トレイ210が外装体10の正面位置に存在しない状態でシュート260から硬貨が排出されてしまうと、硬貨が貨幣入出金機1の周囲に散らばってしまう。そこで、本実施形態の貨幣入出金機1では、硬貨出金トレイ210が正面位置にセットされた状態で出金処理が行われるようになされている。
【0090】
図8(a)は、硬貨出金トレイ210が外装体10の正面位置にセットされた状態で出金処理が行われるための制御処理を示すフローチャートであり、図8(b)は、セットガイダンス画面D11の一例を示す図である。
【0091】
出金の操作がなされたことに基づいて、図8(a)の制御処理が開始される。制御部301は、フォトセンサ252の検出結果に基づいて、硬貨出金トレイ210が外装体10の正面位置に存在するか否かを判定する(S101)。硬貨出金トレイ210が正面位置に存在する場合(S101:YES)、制御部301は、出金処理を開始する(S104)。出金処理のための最初の画面、たとえば、硬貨の投入を促す画面が操作表示部16に表示される。
【0092】
一方で、硬貨出金トレイ210が誤って退避位置に移動され、その状態のまま出金の操作が行われてしまった場合、制御部301は、S101において、硬貨出金トレイ210が正面位置に存在しないと判定する(S101:NO)。この場合、制御部301は、正面位置への硬貨出金トレイ210へのセットを促す報知として、図8(b)に示すようなセットガイダンス画面D11を操作表示部16に表示させる(S102)。このとき、セットガイダンス画面D11の表示に加えてあるいは替えて、音声出力部304からの音声による報知が行われてもよい。制御部301が、報知の指示を、通信部303を介して上位端末2に送信し、上位端末2で、セットガイダンス画面D11による報知や音声による報知が行われるようにされるとなお良い。
【0093】
セットガイダンス画面D11を見た操作者は、硬貨出金トレイ210を退避位置から回動させて正面位置にセットする。
【0094】
制御部301は、フォトセンサ252の検出結果に基づいて、硬貨出金トレイ210が正面位置にセットされたか否かを判定する(S103)。硬貨出金トレイ210が正面位置にセットされると(S103:YES)、制御部301は、出金処理を開始する(S104)。
【0095】
このように、制御部301は、硬貨出金トレイ210が正面位置に存在することに基づいて出金処理を実行し、硬貨出金トレイ210が正面位置に存在していなければ、出金の操作が行われても出金処理を実行しない。なお、入金処理においても、同様な制御処理が行われる。入金の際に発生したリジェクト硬貨が硬貨出金トレイ210に搬送されるためである。
【0096】
本実施形態の貨幣入出金機1において、紙幣入出金ユニット11での紙幣の出金時に紙幣リジェクトボックス19の奥に位置する入口付近で紙幣のジャム(詰まり)が発生した場合、入口付近の紙幣を取り除くために、紙幣リジェクトボックス19を抜き取る必要がある。また、紙幣リジェクトボックス19内からリジェクト紙幣を回収する場合にも、紙幣リジェクトボックス19を抜き取る必要がある。上述の通り、紙幣リジェクトボックス19を抜き取る際には、外装体10の正面位置に存在する硬貨出金トレイ210が邪魔になる。そこで、本実施形態の貨幣入出金機1では、硬貨出金トレイ210を正面位置から退避させた後に紙幣リジェクトボックス19を抜き取るためのガイダンス表示が操作表示部16により行われる。
【0097】
図9(a)は、ガイダンス表示のための制御処理を示すフローチャートであり、図9(b)および(c)は、それぞれ、退避ガイダンス画面D12および抜取ガイダンス画面D13の一例を示す図である。
【0098】
制御部301は、紙幣リジェクトボックス19の抜き取りが必要な状態となったか、即ち、抜き取りを要するイベント(ジャム、回収)が発生したか否かを判定する(S201)。紙幣リジェクトボックス19の抜き取りが必要な状態となった場合(S201:YES)、制御部301は、図9(b)に示すような、硬貨出金トレイ210の退避手順を案内する退避ガイダンス画面D12を操作表示部16に表示させる(S202)。
【0099】
操作者は、扉10cを開いた後に、退避ガイダンス画面D12に従って、硬貨出金トレイ210を退避位置まで移動させる。なお、硬貨出金トレイ210が退避された後、扉10cが開かれてもよい。
【0100】
次に、制御部301は、フォトセンサ252の検出結果に基づいて、硬貨出金トレイ210が正面位置から退避されたか否かを判定する(S203)。そして、制御部301は、硬貨出金トレイ210が正面位置に存在しなくなると、正面位置から退避されたと判定し(S203:YES)、図9(c)に示すような、紙幣リジェクトボックス19の抜取手順を案内する抜取ガイダンス画面D13を操作表示部16に表示させる(S204)。操作者は、抜取ガイダンス画面D13に従って、紙幣リジェクトボックス19を外装体10内から抜き取る。
【0101】
なお、図9(b)および(c)には、紙幣のジャムが発生したときの退避ガイダンス画面D12と抜取ガイダンス画面D13が示されているが、出金リジェクトボックス19内の紙幣が回収されるときの退避ガイダンス画面D12と抜取ガイダンス画面D13も同様なものとなる。
【0102】
このように、制御部301は、紙幣リジェクトボックス19へのアクセスが必要な場合に、硬貨出金トレイ210の退避を促す報知として、退避ガイダンス画面D12の表示を行う。さらに、制御部301は、硬貨出金トレイ210が外装体10の正面位置に存在しないことに基づいて、紙幣リジェクトボックス19ヘアクセスするための処理として、抜取ガイダンス画面D13を表示する処理を実行する。
【0103】
なお、退避ガイダンス画面D12が表示されてから制限時間が経過しても硬貨出金トレイ210が外装体10の正面位置に存在する場合に、音声出力部304から警報となる音声やアラート音が出力されてもよい。
【0104】
さらに、紙幣リジェクトボックス19が外装体10内に戻されたときに、硬貨出金トレイ210を元の位置に戻すための戻しガイダンス画面が操作表示部16に表示されてもよい。この場合、フォトセンサ252により、硬貨出金トレイ210が外装体10の正面位置に戻されたことが検出されると、戻しガイダンス画面が閉じられる。
【0105】
本実施形態の貨幣入出金機1では、紙幣入出金ユニット11を外装体10内から引き出す際にも、外装体10の正面位置に存在する硬貨出金トレイ210が邪魔になり得る。このため、図9(a)と同様な制御処理により、硬貨出金トレイ210を正面位置から退避させた後に紙幣入出金ユニット11を引き出すためのガイダンス表示が操作表示部16により行われる。操作表示部16には、図9(b)と同様な退避ガイダンス画面と、紙幣入出金ユニット11の引出手順を案内する引出ガイダンス画面とが、順次、表示される。
【0106】
さて、金融機関では、入出金の操作がテラーにより行われ、硬貨の投入および取出しが顧客により行われるセミセルフ運用が実施され得る他、入出金の操作と硬貨の投入および取出しとがテラーにより行われるフル運用が実施され得る。フル運用が実施される場合、貨幣入出金機1は、窓口カウンタの内側であって2人のテラーの間に設置される。この場合、貨幣入出金機1は、2人のテラーにより使用される。
【0107】
出金された硬貨の投出される硬貨出金部として、外装体10から常に露出した状態にある硬貨出金トレイ210の他に、硬貨出金ボックス410が用いられる。硬貨出金ボックス410は上面が開口する箱状を有し、硬貨が投出される際には外装体10内に収納されており、硬貨が取り出される際に外装体10内から引き出される。
【0108】
硬貨出金トレイ210は、硬貨出金ボックス410と違って、外装体10内に隠れていないため、その場所が分かりやすく、また、硬貨の取出しの際に外装体10から出し入れする作業が不要なため、外装体10内への戻し忘れを危惧しなくてよい。よって、テラーに加えて顧客が貨幣入出金機1を扱うセミセルフ運用が実施される場合は、硬貨出金トレイ18が用いられることが望ましい。一方、硬貨出金ボックス410は、外部から閉鎖された中で硬貨が投出されるので、硬貨を厳格に管理できる。よって、テラーのみが貨幣入出金機1を扱うフル運用が実施される場合は、硬貨出金ボックス410が用いられることが望ましい。
【0109】
セミセルフ運用とフル運用との間で運用変更が行われたときに、それに合わせて、硬貨出金トレイ18を備えるセミセルフ運用専用の貨幣入出金機と硬貨出金ボックス410を備えるフル運用専用の貨幣入出金機が設置される場合、金融機関にかかるコスト等の負担が大きくなり得る。
【0110】
そこで、本実施形態の貨幣入出金機1は、運用変更に柔軟に対応できるよう、硬貨出金トレイ210と硬貨出金ボックス410との間で交換可能な構成を備えている。
【0111】
図10は、セミセルフ仕様に切り替えられた貨幣入出金機1の要部を示す分解斜視図である。図11は、フル仕様に切り替えられた貨幣入出金機1の要部を示す分解斜視図である。
【0112】
図11に示すように、硬貨出金ボックス410は、出金ボックスユニット400に含まれる。出金ボックスユニット400は、硬貨出金ボックス410の他、ベース部材420と、シュート430と、ロック装置440とを含む。
【0113】
硬貨出金ボックス410は、上面が開口するほぼ直方体の箱状に形成され、前面に取っ手411を有する。ベース部材420は、出金トレイユニット200のベース部材220と類似する形状および大きさを有する。ベース部材420には、硬貨出金ボックス410が出し入れ可能に収容される収容部421が設けられている。シュート430は、左右方向に扁平な方形の筒状を有し、その出口が収容部421に収容された硬貨出金ボックス410の内部に臨む。ロック装置440は、硬貨出金ボックス410を、収容部421に収容された状態にロックする。
【0114】
図10および図11に示すように、外装体10には、外装カバー10bの下方の左端の位置に、出金トレイユニット200と出金ボックスユニット400とを選択的に装着可能な装着部20が設けられる。また、外装体10には、外装カバー10bの下方の右端の位置に、硬貨出金ボックス410を装着可能な装着部21が設けられる。装着部20、21は、外装体10の内側に凹む収容凹部20a、21aと収容凹部20a、21aから外装体10内に続く装着面20b、21bとを含む。
【0115】
外装体10内には、出金トレイユニット200に対応する第1制御基板301aと、出金ボックスユニット400に対応する第2制御基板301bとが選択的に設置される。
【0116】
図10に示すように、貨幣入出金機1がセミセルフ仕様の貨幣入出金機1aに切り替えられる場合、出金トレイユニット200が左側の装着部20に装着される。ベース部材220が装着面20bにネジ等を用いて取り付けられる。収容部224を有するベース部材220の前部が収容凹部20a内に収容され、ベース部材220の後部とシュート260が外装体10の内部に配置される。硬貨出金トレイ210が、外装体10の前方に張り出す。右側の装着部21には、収容凹部21aを覆うカバー22が装着される。
【0117】
さらに、出金トレイユニット200に対応する扉10cが、本体10aの前面に取り付けられる。扉10cの上部は、硬貨出金トレイ210に対応する部分が開放された形状を有する。紙幣リジェクトボックス19と装着部21が、扉10cの上部に覆われる。
【0118】
さらに、第1制御基板301aが、外装体10内に設置される。第1制御基板301aは、CPU等からなる回路が基板に実装されてなり、制御部301の一部を構成する。たとえば、第1制御基板301aには、出金トレイユニット200のフォトセンサ252と硬貨検出部270が接続され、これらからの検出信号が入力される。第1制御基板301aは識別情報を保持しており、この識別情報が、出金トレイユニット200が装着部20に装着されていることを示す第1情報となる。
【0119】
図11に示すように、貨幣入出金機1がフル仕様の貨幣入出金機1bに切り替えられる場合、2つの出金ボックスユニット400が左右の装着部20、21に装着される。ベース部材420が装着面20b、21bにネジ等を用いて取り付けられる。収容部421に硬貨出金ボックス410が収容されたベース部材420の前部が収容凹部20a、21a内に収容され、ベース部材420の後部とシュート430が外装体10の内部に配置される。硬貨出金ボックス410が、収容凹部20a、21a内、即ち外装体10内から引き出し可能となる。
【0120】
さらに、出金ボックスユニット400に対応する扉10dが、本体10aの前面に取り付けられる。扉10dの上部は、左右の硬貨出金ボックス410に対応する部分が開放された形状を有する。紙幣リジェクトボックス19が、扉10dの上部に覆われる。
【0121】
さらに、第2制御基板301bが、外装体10内に配置される。第2制御基板301bは、CPU等からなる回路が基板に実装されてなり、制御部301の一部を構成する。たとえば、第2制御基板301bは、出金ボックスユニット400のロック装置440を駆動制御する。第2制御基板301bは識別情報を保持しており、この識別情報が、出金ボックスユニット400が装着部20に装着されていることを示す第2情報となる。
【0122】
貨幣入出金機1がフル仕様の貨幣入出金機1bに切り替えられた場合は、貨幣入出金機1bに2台の上位端末2が接続される。セミセルフ仕様の貨幣入出金機1aときに、貨幣入出金機1aに2台の上位端末2が接続されてもよい。
【0123】
なお、セミセルフ仕様の貨幣入出金機1aにおいて、右側の装着部21に、カバー22に替えて出金ボックスユニット400が装着されてもよい。この場合、硬貨出金ボックス410は、扉10cで覆われ、使用されない。
【0124】
記憶部302には、セミセルフ仕様の貨幣入出金機1aに適用される第1制御プログラムと、フル仕様の貨幣入出金機1bに適用される第2制御プログラムとが、予め記憶されている。第1制御プログラムおよび第2制御プログラムには、少なくとも入金処理、出金処理等の取引処理を行うためのプログラムが含まれる。
【0125】
貨幣入出金機1が硬貨出金トレイ210を備えるセミセルフ仕様の貨幣入出金機1aに切り替えられると、自動的に第1制御プログラムが実行され、貨幣入出金機1が硬貨出金ボックス410を備えるフル仕様の貨幣入出金機1bに切り替えられると、自動的に第2制御プログラムが実行される。
【0126】
図12は、制御プログラムを自動的に決定するための制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、たとえば、貨幣入出金機1に最初に電源が投入された際に実行される。あるいは、この制御処理は、所定の操作に基づいて実行される。
【0127】
図12を参照して、制御部301は、第1制御基板301aおよび第2制御基板301bのうち、外装体10内に設置されている制御基板から識別情報を取得する(S301)。次に、制御部301は、取得した識別情報に基づいて、貨幣入出金機1がセミセルフ仕様の貨幣入出金機1aであるかフル仕様の貨幣入出金機1bであるかを判定する(S302)。
【0128】
取得した識別情報が第1制御基板301aのものである場合、制御部301は、貨幣入出金機1がセミセルフ仕様の貨幣入出金機1aであると判定し(S302:YES)、第1制御プログラムを、実行される制御プログラムに決定する(S303)。
【0129】
一方、取得した識別情報が第2制御基板301bのものである場合、制御部301は、貨幣入出金機1がフル仕様の貨幣入出金機1bであると判定し(S302:NO)、第2制御プログラムを、実行される制御プログラムに決定する(S304)。
【0130】
セミセルフ仕様の貨幣入出金機1aとフル仕様の貨幣入出金機1aでは、4つの操作キー17の機能が相違する。貨幣入出金機1aでは、上述の通り、操作キー17a、17bがスタートキーとして機能し、操作キー17c、17dがオープンキーとして機能する。
【0131】
一方、貨幣入出金機1bでは、操作キー17a、17bが、それぞれ、左側および右側のテラー(操作者)が貨幣入出金機1bの紙幣に係る取引処理の占有を指示するために操作される占有キーとして機能し、操作キー17c、17dが、それぞれ、左側および右側のテラーが貨幣入出金機1bの硬貨に係る取引処理の占有を指示するために操作される占有キーとして機能する。各テラーは、貨幣入出金機1bに対して、貨幣入出金機1bの処理を占有する操作を行った後に、操作表示部16上や上位端末2上で所定の操作を行って自身の取引処理を実行する。硬貨の出金処理において、左側のテラーが左側の操作キー(占有キー)17cを操作すると、出金された硬貨が左側の硬貨出金ボックス410に投出され、右側のテラーが右側の操作キー(占有キー)17dを操作すると、出金された硬貨が右側の硬貨出金ボックス410に投出される。テラーは、硬貨出金ボックス410を外装体10内から引き出して取り外し、硬貨出金ボックス410内から硬貨を取り出す。
【0132】
また、セミセルフ仕様の貨幣入出金機1aとフル仕様の貨幣入出金機1aでは、操作表示部16に表示される画面が相違する。
【0133】
図13(a)ないし(c)は、フル仕様の貨幣入出金機1bにおける操作表示部16での画面表示の一例を示す図である。図14(a)ないし(c)は、セミセルフ仕様の貨幣入出金機1aにおける操作表示部16での画面表示の一例を示す図である。
【0134】
貨幣入出金機1bでは、待機中、図13(a)に示すように、操作表示部16に待機画面D14が表示される。待機画面D14には、金種ごとの現在の在高を表示するための表示欄C11と、入金処理を指定するボタンB11と、出金処理を指定するボタンB12とが含まれる。一方、貨幣入出金機1aでは、待機中、図14(a)に示すように、操作表示部16が消灯される。これにより、貨幣入出金機1aの在高が顧客に知られない。なお、貨幣入出金機1aにおいて、在高の表示欄C11がない待機画面が操作表示部16に表示されてもよい。
【0135】
また、貨幣入出金機1bでは、図13(b)に示すように、出金処理において処理中であることを示す画面D15に、表示欄C12の表示を金種ごとの出金額の表示から金種ごとの出金枚数の表示に変更するボタンB13が含まれる。一方、貨幣入出金機1aでは、図14(b)に示すように、画面D15にボタンB13が含まれない。同様に、貨幣入出金機1bでは、図13(c)に示すように、出金処理において出金された硬貨の取出しを催促する画面D16にボタンB13が含まれ、貨幣入出金機1aでは、図14(c)に示すように、画面D16にボタンB13が含まれない。さらに、貨幣入出金機1bでは、図13(c)に示すように、硬貨出金ボックス410からの硬貨の取出しを案内する画像が表示された表示欄C13が画面D16に含まれ、貨幣入出金機1aでは、図14(c)に示すように、硬貨出金トレイ210からの硬貨の取出しを案内する画像が表示された表示欄C14が画面D16に含まれる。
【0136】
なお、入金処理等、出金処理以外の取引処理における画面も、貨幣入出金機1aと貨幣入出金機1bとの間で変更され得る。
【0137】
さらに、フル仕様の貨幣入出金機1bでは、図8(a)に示す制御処理が行われない。また、フル仕様の貨幣入出金機1bでは、図9(a)に示す制御処理が行われず、紙幣リジェクトボックス19の抜き取りが必要となったときに操作表示部16に退避ガイダンス画面D12が表示されずに抜取ガイダンス画面D13が表示される制御処理が行われる。
【0138】
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、以下の効果が奏され得る。
【0139】
貨幣入出金機1は、外装体10の正面から前方に張り出し、張り出した状態において、硬貨収納部102から出金された硬貨が投出される硬貨出金トレイ210を備えている。硬貨出金トレイ210は、外装体10内に隠れていないため、その場所がわかりやすく、また、硬貨の取出しの際に外装体10から出し入れする作業が不要なため、外装体10内への戻し忘れを危惧しなくてよい。よって、顧客が貨幣入出金機1から貨幣の取出しを行う運用が行われた場合に、硬貨の出金を円滑に行うことができる。
【0140】
また、貨幣入出金機1は、外装体10の正面方向からアクセス可能な紙幣リジェクトボックス19と紙幣入出金ユニット11を備えている。そして、硬貨出金トレイ210は、当該硬貨出金トレイ210を外装体10の正面位置と外装体10の正面から外れる位置との間で移動させる移動機構230により、外装体10の正面位置から退避可能に構成されている。これにより、紙幣リジェクトボックス19または紙幣入出金ユニット11にアクセスする際、硬貨出金トレイ210を外装体10の正面位置から退避させることができるので、硬貨出金トレイ210が邪魔になることを防止できる。
【0141】
特に、硬貨出金トレイ210が外装体10の正面位置に存在するとき、紙幣リジェクトボックス19は、その一部が、引き出される方向において硬貨出金トレイ210に重なるため、引き出すことができない。しかしながら、硬貨出金トレイ210を、紙幣リジェクトボックス19に重ならない位置に退避できるため、紙幣リジェクトボックス19を引き出すことが可能となる。また、紙幣リジェクトボックス19に重ねることで硬貨出金トレイ210のサイズを大きくでき、硬貨出金トレイ210に硬貨を溜めやすくなる。
【0142】
さらに、貨幣入出金機1は、硬貨出金トレイ210が外装体10の正面位置に存在するか否かを検出するためのフォトセンサ252を備え、制御部301がフォトセンサ252の検出結果に応じた制御処理を行う構成とされている。これにより、硬貨出金トレイ210が外装体10の正面位置に存在するか否かに応じた適正な制御処理を行うことができる。
【0143】
具体的には、制御部301は、硬貨出金トレイ210が外装体10の正面位置に存在することに基づいて出金処理を実行する。これにより、硬貨出金トレイ210に硬貨を投出できない状態で硬貨の出金が行われてしまうことが防止される。
【0144】
また、制御部301は、紙幣リジェクトボックス19または紙幣入出金ユニット11へのアクセスが必要な場合に、硬貨出金トレイ210が外装体10の正面位置に存在しないことに基づいて、紙幣リジェクトボックス19または紙幣入出金ユニット11へアクセスするための処理として、抜取ガイダンス画面D13または引出ガイダンス画面を操作表示部16に表示させる処理を実行する。これにより、硬貨出金トレイ210が外装体10の正面位置から退避されない状態で紙幣リジェクトボックス19または紙幣入出金ユニット11へアクセスが行われることを防止できる。
【0145】
さらに、貨幣入出金機1は、制御部301が、紙幣リジェクトボックス19または紙幣入出金ユニット11へのアクセスが必要な場合に、硬貨出金トレイ210の退避を促す報知として、退避ガイダンス画面D12を操作表示部16に表示させる構成とされている。これにより、硬貨出金トレイ210を忘れずに退避させることができる。
【0146】
さらに、貨幣入出金機1は、外装体10に設けられ、出金トレイユニット200と出金ボックスユニット400とを選択的に装着可能な装着部20を備えている。これにより、金融機関で実施される運用に応じて、貨幣入出金機1を、硬貨出金トレイ210を備える貨幣入出金機1aと、硬貨出金ボックス410を備える貨幣入出金機1bとの間で切り替えられるので、金融機関にかかるコスト等の負担を軽減できる。
【0147】
さらに、貨幣入出金機1は、制御部301が、第1制御基板301aから識別情報を取得したことに基づいて、第1制御プログラムを、実行される制御プログラムに決定し、第2制御基板301bから識別情報を取得したことに基づいて、第2制御プログラムを、実行される制御プログラムに決定する構成とされている。これにより、貨幣入出金機1を、硬貨出金トレイ210を備える貨幣入出金機1aまたは硬貨出金ボックス410を備える貨幣入出金機1bに切り替える際に、切り替えに応じた制御プログラムをダウンロード等により貨幣入出金機1に組み入れる作業を行わなくてよく、切り替えに要する時間を短くでき、また、切り替えにかかる手間を軽減できる。
【0148】
<変更例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施形態も、以下に示す通り、上記以外に種々の変更が可能である。
【0149】
たとえば、上記実施形態では、硬貨出金トレイ210が、外装体10の正面位置から退避できるように、移動機構230により回動できる構成とされた。しかしながら、硬貨出金トレイ210が、他の構造を有する移動機構によりスライドできる構成とされてもよい。さらに、退避可能な構成として、硬貨出金トレイ210が、ベース部材220、即ち外装体10に対して、工具を用いることなく取り外しできる構成とされてもよい。ただし、硬貨出金トレイ210の紛失を考慮すると、硬貨出金トレイ210が回動あるいはスライドされる構成が望ましい。
【0150】
また、上記実施形態では、内部ユニットである紙幣リジェクトボックス19と紙幣入出金ユニット11が外装体10の正面方向からアクセス可能な構成とされた。しかしながら、硬貨入出金ユニット12など、他の内部ユニットが外装体10の正面方向からアクセス可能な構成とされてもよい。
【0151】
さらに、上記実施形態では、内部ユニットである紙幣リジェクトボックス19と紙幣入出金ユニット11が外装体10内から引き出し可能な構成とされた。しかしながら、内部ユニットは、外装体10内から引き出すことができず、外装体10の正面方向から内部ユニットが有する扉を開くことで、その内部に触れられるような構成とされてもよい。
【0152】
さらに、上記実施形態において、硬貨出金トレイ210が外装体10の正面位置にセットされた状態で出金処理が行われるために、図8(a)の制御処理に替えて、硬貨出金トレイ210が外装体10の正面位置に存在しない場合に出金の操作が受け付けられない(無効とされる)ような制御処理が行われてもよい。
【0153】
さらに、上記実施形態では、図9(a)のガイダンス表示のための制御処理において、硬貨出金トレイ210の退避を促す報知として、操作表示部16により退避ガイダンス画面D12の表示が行われた。しかしながら、音声出力部304から、退避の手順を示すガイダンスの音声が出力されてもよい。また、表示および音声による報知は、退避の手順を示すものでなく、単に退避を指示するものであってもよい。
【0154】
さらに、上記実施形態では、図9(a)のガイダンス表示のための制御処理において、紙幣リジェクトボックス19ヘアクセスするための処理として、抜取ガイダンス画面D13を表示する処理が実行された。しかしながら、抜取ガイダンス画面D13の表示以外の処理が行われてもよい。たとえば、紙幣リジェクトボックス19が自動で施錠および開錠できる機構を備える場合に、紙幣リジェクトボックス19ヘアクセスするための処理として、開錠する処理が実行されてもよい。
【0155】
さらに、上記実施形態では、硬貨出金トレイ210が外装体10の正面位置に存在するか否かを検出する検出部として、フォトセンサ252が用いられた。しかしながら、検出部として、フォトセンサ252以外のセンサ等、たとえば、磁気センサやマイクロスイッチが用いられてもよい。
【0156】
さらに、上記実施形態において、扉10cが硬貨出金トレイ210の一部に前方から重なることにより、扉10cが開かれないと硬貨出金トレイ210が回動できないようにされてもよい。このようにされれば、硬貨出金トレイ210が誤って退避されにくくなる。
【0157】
さらに、上記実施形態では、識別情報が、制御部301の一部を構成する第1制御基板301aおよび第2制御基板301bに保持された。しかしながら、外装体10に選択的に設置される、情報が保持可能な、第1制御基板301aおよび第2制御基板301b以外の保持部に、識別情報が保持されてもよい。
【0158】
さらに、上記実施形態において、出金トレイユニット200が装着部20に装着されたときに外装体10内に第2制御基板301bが設置された場合および出金ボックスユニット400が装着部20に装着されたときに外装体10内に第1制御基板301aが設置された場合、エラー報知が行われるようにしてもよい。この場合、装着部20に出金トレイユニット200と出金ボックスユニット400の何れが装着されたかを判別する判別部が設けられる。
【0159】
さらに、上記実施形態では、外装体10に、出金トレイユニット200と出金ボックスユニット400を選択的に装着できる装着部20だけでなく、出金ボックスユニット400が装着される装着部21が設けられた。しかしながら、外装体10に装着部21が設けられなくてもよい。
【0160】
また、上記実施形態では、紙幣入出金ユニット11および硬貨入出金ユニット12を備える貨幣入出金機1が、本発明の硬貨処理装置の一例として挙げられたが、本発明は、硬貨入出金ユニット12のみを備える硬貨入出金機に適用されてもよい。
【0161】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0162】
1 貨幣入出金機(硬貨処理装置)
2 上位端末(端末装置)
4 貨幣処理システム(硬貨処理システム)
10 外装体
11 紙幣入出金ユニット(内部ユニット)
16 操作表示部(報知部)
18、210 硬貨出金トレイ(硬貨出金部、第1硬貨出金部)
19 紙幣リジェクトボックス(内部ユニット)
102 硬貨収納部
200 出金トレイユニット(第1硬貨出金ユニット)
230 移動機構
252 フォトセンサ(検出部)
301 制御部
301a 第1制御基板(第1保持部)
301b 第2制御基板(第2保持部)
400 出金ボックスユニット(第2硬貨出金ユニット)
410 硬貨出金ボックス(第2硬貨出金部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14