(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064246
(43)【公開日】2022-04-25
(54)【発明の名称】生産システム
(51)【国際特許分類】
C21D 1/62 20060101AFI20220418BHJP
B23P 23/04 20060101ALI20220418BHJP
B24C 1/00 20060101ALI20220418BHJP
B24C 9/00 20060101ALI20220418BHJP
C21D 1/18 20060101ALI20220418BHJP
C21D 9/00 20060101ALI20220418BHJP
C21D 9/28 20060101ALI20220418BHJP
C21D 9/32 20060101ALI20220418BHJP
C21D 7/06 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
C21D1/62
B23P23/04
B24C1/00 Z
B24C9/00 L
C21D1/18 P
C21D9/00 B
C21D9/28 B
C21D9/32 B
C21D1/18 K
C21D7/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172879
(22)【出願日】2020-10-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】501162627
【氏名又は名称】株式会社アイオー精密
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】吉田 太朗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雅人
(72)【発明者】
【氏名】菊池 敏弥
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 満
【テーマコード(参考)】
4K042
【Fターム(参考)】
4K042AA14
4K042AA18
4K042AA25
4K042BA01
4K042BA03
4K042BA13
4K042DA01
4K042DA02
4K042DB01
4K042DB04
4K042DB05
4K042DB07
4K042DB08
4K042DC01
4K042DC02
4K042DC03
4K042DD02
4K042DD04
4K042DE02
4K042DF01
4K042EA01
4K042EA03
(57)【要約】
【課題】少なくとも金属製のワークを加工する加工装置と、熱処理装置と、ブラスト装置とを備えたうえで、多品種少量のワークを製品化するサイクルタイムを短縮し、生産性を向上することができる生産システムを提供する。
【解決手段】生産システムは、加工装置と、熱処理装置30と、ブラスト装置とを備えている。熱処理装置30は、ワークを直接昇温可能な電気式の急速昇温機構32によりワークを個別で連続的に焼入れする焼入れ炉31と、電気式の加熱機構42によりワークを連続的に焼戻しする焼戻し炉41と、を備えている。ブラスト装置は、熱処理装置30に隣接して配置されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも金属製のワークを加工する加工装置と、前記加工装置で加工された前記ワークに熱処理を施す熱処理装置と、前記熱処理装置で熱処理された前記ワークにブラスト加工を施すブラスト装置と、を備えた生産システムであって、
前記熱処理装置は、前記ワークを直接昇温可能な電気式の急速昇温機構により前記ワークを個別で連続的に焼入れする焼入れ炉と、電気式の加熱機構により前記ワークを連続的に焼戻しする焼戻し炉と、を備え、
前記ブラスト装置は、前記熱処理装置に隣接して配置されていることを特徴とする生産システム。
【請求項2】
請求項1記載の生産システムであって、
前記ブラスト装置でブラスト加工された前記ワークを研削する研削盤と、前記研削盤で研削された前記ワークを梱包する梱包装置と、を備え、
前記加工装置、前記熱処理装置、前記ブラスト装置、前記研削盤、及び前記梱包装置が、この順に平面視でU字状に配置されている生産システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の生産システムであって、
前記急速昇温機構は、前記ワークを高周波加熱で焼入れするコイルを備えている生産システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1記載の生産システムであって、
前記熱処理装置は、単一の前記焼入れ炉と、異なる所定の時間で前記ワークを加熱する複数の焼戻し炉と、前記焼入れ炉からの前記ワークの流れを前記複数の焼戻し炉のいずれかに切り換える切り換え機構と、を備えている生産システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1記載の寸法測定器であって、
前記ブラスト装置は、ブラスト本体部と、前記ブラスト本体部の内部に曲面を含んで滑らかに接続された内壁で形成され前記ワークが投入されるドラム室と、前記ドラム室に接続され前記ドラム室の内壁に沿ってエアーを吹き込むブラストエアー通路と、を備えている生産システム。
【請求項6】
請求項5記載の生産システムであって、
前記ドラム室は、正面視で横長の長円または真円形状に形成されており、
前記ドラム室の上部に形成され前記ワークが投入される上部投入口と、前記ドラム室の下部に形成され前記ワークが取り出される下部取出し口と、を備えている生産システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1記載の生産システムであって、
前記ワークは、外形の最大肉厚部分の寸法が7mm以下である生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも金属製のワークを加工する加工装置と、ワークに熱処理を施す熱処理装置と、ワークにブラスト加工を施すブラスト装置と、を備えた生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、軸、ピン、ボルト、ギヤ等の小さな金属製ワークを製品化するには、ワークの切削加工、熱処理、ブラスト加工、研削加工を施し、梱包することで製品化される。ワークには様々な形状、サイズ、材質等があり、1ラインの生産システムで様々なワークに対応するには、各工程に要する時間がワークの種類によって異なることから、短時間で処理が済むワークを待機させる等のタイムロスが生じる。
【0003】
特に前述した軸等のワークは、製品化される過程で、所定の硬度及び剛性を得るため、熱処理として焼入れ及び焼戻しが行われる。焼入れは鋼のワークを加熱してオーステナイト組織にした後に急冷することでマルテンサイト組織に変化させ、焼戻しは焼入れで硬化した鋼のワークに靭性を付与する。焼入れの温度は、マルテンサイト組織に変化させる温度、例えば830℃であれば良いのに対し、焼戻し温度は、所望の金属の性質によって様々な温度に設定される。
【0004】
また、一般的に焼戻しに要する時間は焼入れに要する時間よりも長く必要である。このため、一般的には焼入れと焼戻しとを別個に行っており、装置構成上においては、焼入れが終了したワークをストックし、その後に焼戻しが行われる。このようなことから、多品種少量のワークを製品化するには熱処理がネック工程となり易い。この対策として、例えば、特許文献1に記載された熱処理システムが知られている。
【0005】
特許文献1の熱処理システムは、焼入れを行うN台の焼入れ炉と、相互に相違する温度で焼戻しを行う作動モードを有する複数台の焼戻し炉を含むM台の焼戻し炉と、N台の焼入れ炉からM台の焼戻し炉に金属ワークを移送する移送部と、を備えている。移送部は、N台の焼入れ炉の各々から相互に焼戻し温度が相違する複数台の焼戻し炉に選択的に金属ワークを移送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の熱処理システムでは、焼入れ炉は、ワークを加熱する焼入れ加熱炉と、急冷のための焼入れ油が入れられた冷却油槽とを備え、単一の焼入れ炉から相互に焼戻し温度が相違する2台の焼戻し炉に選択的にワークを移送する。焼入れ炉の運転を中断することなく焼戻し温度が相違する焼戻しに熱処理の内容を切り換える。しかし、焼入れ炉の運転中断中に排出される二酸化炭素の発生を抑制し、焼戻し炉の炉内温度の変更を不要として焼入れ炉を運用する点、焼入れ加熱炉内に長いコンベアが配置されている点等から、焼入れ加熱炉はワークを昇温するのに比較的長い時間が掛かり、生産性が低い。
【0008】
また、特許文献1の熱処理システムで異なる種類のワークを焼入れする際、単一の焼入れ炉による熱処理システムの場合は、ワークの種類によって焼入れ炉の温度が変更されるのを待つ必要があるため時間が掛かり、生産性が低い。異なるワークを焼入れする際、複数の焼入れ炉を備えた熱処理システムの場合は、装置が大型になり広いスペースが必要となるため、作業者の移動等が発生して生産性が低くなることがある。
【0009】
また、一般的にワークを製品化するには、ワークの切削加工、熱処理、ブラスト加工等が必要となるところ、ブラスト加工等も含めてワークを製品化する生産システム全体として、サイクルタイムを短くして生産性を向上させる必要がある。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑み、少なくとも金属製のワークを加工する加工装置と、熱処理を施す熱処理装置と、ブラスト加工を施すブラスト装置とを備えたうえで、多品種少量のワークを製品化するサイクルタイムを短縮し、生産性を向上することができる生産システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の生産システムは、
少なくとも金属製のワークを加工する加工装置と、前記加工装置で加工された前記ワークに熱処理を施す熱処理装置と、前記熱処理装置で熱処理された前記ワークにブラスト加工を施すブラスト装置と、を備えた生産システムであって、
前記熱処理装置は、前記ワークを直接昇温可能な電気式の急速昇温機構により前記ワークを個別で連続的に焼入れする焼入れ炉と、電気式の加熱機構により前記ワークを連続的に焼戻しする焼戻し炉と、を備え、
前記ブラスト装置は、前記熱処理装置に隣接して配置されていることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記ブラスト装置でブラスト加工された前記ワークを研削する研削盤と、前記研削盤で研削された前記ワークを梱包する梱包装置と、を備え、
前記加工装置、前記熱処理装置、前記ブラスト装置、前記研削盤、及び前記梱包装置が、この順に平面視でU字状に配置されている。
【0013】
好ましくは、前記急速昇温機構は、前記ワークを高周波加熱で焼入れするコイルを備えている。
【0014】
好ましくは、前記熱処理装置は、単一の前記焼入れ炉と、異なる所定の時間で前記ワークを加熱する複数の焼戻し炉と、前記焼入れ炉からの前記ワークの流れを前記複数の焼戻し炉のいずれかに切り換える切り換え機構と、を備えている。
【0015】
好ましくは、前記ブラスト装置は、ブラスト本体部と、前記ブラスト本体部の内部に曲面を含んで滑らかに接続された内壁で形成され前記ワークが投入されるドラム室と、前記ドラム室に接続され前記ドラム室の内壁に沿ってエアーを吹き込むブラストエアー通路と、を備えている。
【0016】
好ましくは、前記ドラム室は、正面視で横長の長円または真円形状に形成されており、
前記ドラム室の上部に形成され前記ワークが投入される上部投入口と、前記ドラム室の下部に形成され前記ワークが取り出される下部取出し口と、を備えている。
【0017】
好ましくは、ワークは、外形の最大肉厚部分の寸法が7mm以下である。
【発明の効果】
【0018】
かかる構成によれば、熱処理装置は、ワークを直接昇温可能な電気式の急速昇温機構によりワークを個別に連続的に焼入れする焼入れ炉を備えている。電気式の急速昇温機構として、例えばコイルや熱電対に高周波磁界を発生させてワークに生じる誘導電流により加熱する高周波誘導加熱、電子ビームをワークに照射する電子加熱、高出力レーザーをワークに当てて発熱させるレーザー加熱、反射鏡を使用して光源からの光を一点に集めて加熱する集光加熱等がある。このようなワークを直接加熱する電気式の急速昇温機構であれば、従来技術のようなガスや重油等を熱源とする燃焼式の炉や電気抵抗により炉内全体を加熱する抵抗加熱式の炉とは異なり、本発明ではワーク自体を急速に昇温することができ、加熱開始の立ち上がりから数秒でワークを目標の温度に昇温することができる。このため焼入れ時間は、従来技術の燃焼式の炉で80分以上かかっていたものが、本発明では1分もかからず、大幅に短縮することができる。さらに、焼戻しの時間も、従来技術の燃焼式の炉で90分以上かかっていたものが、本発明の電気式の加熱機構では20分程度に短縮できる。さらに、ブラスト装置を熱処理装置に隣接して配置することで、作業者によるワーク搬送の工数を削減できる。この結果、少なくとも金属製のワークを加工する加工装置と、熱処理を施す熱処理装置と、ブラスト加工を施すブラスト装置とを備えた生産システム全体として、多品種少量のワークを製品化するサイクルタイムを短縮し、生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例に係る生産システムの斜視図である。
【
図3】高周波誘導加熱の基本原理を示す説明図である。
【
図4】比較例に係る焼入れ、焼戻しの時間と温度の関係を示す図と、実施例に係る焼入れ、焼戻しの時間と温度の関係を示す図である。
【
図8】熱処理装置の焼戻し炉の切り換えを示す作用図である。
【
図11】ブラスト装置のブラスト粒排出工程までの作用図である。
【
図12】ブラスト装置の原点復帰工程までの作用図である。
【
図16】梱包装置のチューブ後退工程までの作用図である。
【
図17】梱包装置の原点復帰工程までの作用図である。
【
図18】比較例に係る作業時間積み上げグラフと、実施例に係る作業時間積み上げグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は概念的(模式的)に示すものとする。
【実施例0021】
本発明の実施例に係る生産システム10全体について説明する。
図1、
図2に示されるように、生産システム10は、金属製のワークW(
図3参照)を切削加工する加工装置20と、ワークWを焼入れ及び焼戻しする熱処理装置30と、ワークWをブラスト加工するブラスト装置60と、ワークWを研削加工する研削盤80と、ワークWを梱包する梱包装置90とを備えている。
【0022】
生産システム10は、加工装置20、熱処理装置30、ブラスト装置60、研削盤80、及び梱包装置90が、この順に平面視でU字状に配置されている。また、ブラスト装置60は、熱処理装置30に隣接して配置されている。このように配置されたU字状の中に作業員Pが入り、各装置の操作及びワークWのセットを行う。また、各装置は制御部により動作制御されている。
【0023】
次に生産システム10全体の作用を説明する。
生産システム10の処理工程のフローは、ワークWを加工装置20で切削加工し(加工工程)、加工装置20で加工されたワークWを熱処理装置30で熱処理し(熱処理工程)、熱処理装置30を熱処理されたワークWをブラスト装置60でブラスト加工し(ブラスト工程)、ブラスト装置60でブラスト加工されたワークWを研削盤80で研削し(研削工程)、研削盤80で研削されたワークWを梱包装置90で梱包する(梱包工程)となる。
【0024】
次に本発明の効果を説明する。
かかる構成によれば、生産システム10では、各装置が工程順に平面視でU字状に配置されているので、生産システム10全体として省スペース化され、作業員PがU字状の中に入ることでほぼ移動せずに向きを変えるだけ全ての装置を操作することができ、作業性がよく生産性を向上させることができる。さらに、ブラスト装置60を熱処理装置30に隣接して配置することで、作業者によるワーク搬送の工数を削減できる。
【0025】
次に熱処理装置30で採用されている高周波誘導加熱の基本原理について説明する。
図3に示されるように、熱処理装置30(
図6参照)は、ワークWを急速に昇温する急速昇温機構32を備えており、この急速昇温機構32に例えばコイル33が設けられている。コイル33は高周波変換器34に接続され、高周波変換器34は高周波電源35に接続されている。
【0026】
交流の高周波電源35に接続されたコイル33の中に金属製の棒状ワークWを挿入すると、コイル33とワークWは非接触の状態であるにもかかわらずワークWが自己発熱する。これは誘導加熱によるものであり、交流電流によってワークWの表面付近に高密度のうず電流が発生し、それによるジュール熱でワークWの表面が発熱するものである。
【0027】
次に比較例に係る焼入れ、焼戻しの時間と温度の関係、及び実施例に係る焼入れ、焼戻しの時間と温度の関係について説明する。なお、関係図はいずれも同じにワークについて要する時間を横軸に示している。
【0028】
図4に示されるように、(a)は比較例に係る燃焼式の炉による焼入れの時間と温度の関係を示す図であり、830℃への昇温に20分、830℃の温度保持に60分、冷却に数分の合計約90分の時間がかかる。(b)は比較例に係る燃焼式の炉による焼戻しの時間と温度の関係を示す図であり、200℃への昇温に20分、200℃の温度保持に60分、冷却に15分の合計約95分の時間がかかる。(c)は実施例に係る電気式の急速昇温機構を備えた焼入れ炉による焼入れの時間と温度の関係を示す図であり、830℃への昇温に1.2秒、830℃の温度保持に20秒、冷却に数十秒の合計約1分の時間がかかる。(d)は実施例に係る電気式の加熱機構を備えた焼戻し炉による焼戻しの時間と温度の関係を示す図であり、200℃への昇温に数分、200℃の温度保持に十数分、冷却に数分の合計約21分の時間がかかる。
【0029】
このように同じ品質のワークを得るために、比較例の従来技術による焼入れ、焼戻しの合計時間は約185分であるのに対し、実施例による焼入れ、焼戻しの合計時間は約22分程度と、大幅に時間短縮されている。
【0030】
次に熱処理装置30について説明する。
図5、
図6に示されるように、熱処理装置30は、ワークW(
図7参照)を直接昇温可能な電気式の急速昇温機構32によりワークWを個別で連続的に焼入れする焼入れ炉31と、電気式の加熱機構42によりワークWを連続的に焼戻しする焼戻し炉41と、を備えている。具体的には、熱処理装置30は、単一の焼入れ炉31と、異なる所定の時間でワークWを加熱する第1の焼戻し炉41a及び第2の焼戻し炉41bと、焼入れ炉31からのワークWの流れを第1の焼戻し炉41a又は第2の焼戻し炉41bのいずれかに切り換える切り換え機構51と、を備えている。
【0031】
焼入れ炉31は、短いトンネル状の炉であり、炉内温度を保つ保温壁36と、この保温壁36に設けられワークWを急速に昇温する電気式の急速昇温機構32と、トンネル状の保温壁36内に設けられワークWを案内する案内通路37と、案内通路37の基端側に設けられ案内通路37内のワークWを送り出す送り棒38aを有した送り出し機構38と、案内通路37の先端側に設けられワークWを冷却する冷却剤を噴射する冷却ジャケット39と、を備えている。
【0032】
また、急速昇温機構32は、ワークWを高周波加熱で焼入れするコイル33を備えている。冷却ジャケット39は、水路39aを介して冷却剤を送り出すポンプ39bに接続されている。なお、実施例では冷却剤を水としたが、オイルであってもよく、ワークWを冷却できれば材質は問わない。
【0033】
焼戻し炉41(41a、41b)は、焼入れ炉31よりも長いトンネル状の炉であり、炉内温度を保つ保温壁44と、この保温壁44に設けられワークWを加熱する電気式の加熱機構42と、長いトンネル状の保温壁44内を通過して設けられワークWを搬送するコンベア45と、コンベア45の出口側に設けられコンベア45のワークWを次工程に案内するシューター46と、を備えている。なお、実施例では、2つ配置した焼戻し炉41のうち、高温側を第1の焼戻し炉41a、低温側を第2の焼戻し炉41bとしている。
【0034】
また、加熱機構42は、ワークWをバンドヒーター等で加熱し、的確な温度で焼戻しする為の複数の熱電対43を所定の間隔を開けて備えている。このため、コンベア45上でゆっくりと搬送されるワークWを所定の温度で加熱し続けることができる。
【0035】
切り換え機構51は、台52と、焼戻し炉41の長手方向と垂直に交わる方向に延びるようにして台52に設けられたレール53と、レール53に移動可能に設けられ第1の焼戻し炉41a及び第2の焼戻し炉41bを支持する移動支持部54と、台52に設けられ移動支持部54を進退させるシリンダ55と、を備えている。
【0036】
なお、実施例では、切り換え機構51は第1の焼戻し炉41a及び第2の焼戻し炉41bを横方向に移動させてワークWの流れを切り換えるものとしたが、これに限定されず、単一の焼入れ炉31をシリンダ等で横方向に進退させてワークWの流れを切り換えるものや、案内通路37の先端側に、案内方向を切り換え可能な案内シューター56でワークWの流れを切り換えるものとしてもよい。また、実施例では、焼戻し炉41を2つ設けたが、これに限定されず、焼戻し炉41は、1つ、3つ、4つでもよく、ワークWの種類に応じて焼戻しができれば数は問わない。
【0037】
次に熱処理装置30の作用について説明する。
図7の(a)に示されるように、熱処理装置30において、ワークW2が焼入れ炉31の案内通路37の基端側に投入される(焼入れ投入工程)。(b)に示されるように、ワークW2は送り出し機構38の送り棒38aにより急速昇温機構32の位置に移動され、高周波誘導加熱により焼入れされる(焼入れ加熱工程)。(c)に示されるように、ワークW2は送り出し機構38の送り棒38aにより案内通路37の先端側から案内シューター56に送り出される。ワークW2は冷却ジャケット39からの冷却剤によりは急冷される(焼入れ工程)。
【0038】
図7の(d)に示されるように、焼入れが完了したワークW2は第2の焼戻し炉41bに移動される。また、送り出し機構38の送り棒38aが原点復帰し、次のワークW2が焼入れ炉31に投入される(焼戻し投入工程)。(e)に示されるように、第2の焼戻し炉41b内のワークW2はコンペア45によって第2の焼戻し炉41b内を移動し、複数の加熱機構42により焼戻しされる。その間、焼入れ炉31では次のワークW2が焼入れされる。
【0039】
図7の(f)に示されるように、第2の焼戻し炉41b内のワークW2はコンベア45によりさらに第2の焼戻し炉41b内を移動し、所定の温度に保たれる。その間、次のワークW2の焼入れが完了し、急冷後に第2の焼戻し炉41b内に移動し、複数のワークW2が第2の焼戻し炉41bで連続的に焼戻しされる(焼戻し加熱工程)。
【0040】
図8の(a)に示されるように、4つのワークW2が第2の焼戻し炉41b内で焼戻しされている。異なる種類のワークW1が焼入れ炉31に投入されると、(b)に示されるように、切り換え機構51(
図5参照)により第1の焼戻し炉41aに切り換えられ、ワークW1の流れが第1の焼戻し炉41aに切り換えられる(切り換え工程)。そして、焼入れが完了したワークW1は第1の焼戻し炉41aに送り出される。複数のワークW1が第1の焼戻し炉41aで連続的に焼戻しされる。その間も第2の焼戻し炉41bでは複数のワークW2の焼戻しが続けられ、焼戻しが完了した後(焼戻し工程)、シューター46に送り出される(送り出し工程)。
【0041】
次に本発明の効果を説明する。
かかる構成によれば、熱処理装置30は、ワークWを直接昇温可能な電気式の急速昇温機構32によりワークWを個別に連続的に焼入れする焼入れ炉31を備えている。電気式の急速昇温機構32として、例えばコイル33に高周波磁界を発生させてワークWに生じる誘導電流により加熱する高周波誘導加熱、電子ビームをワークWに照射する電子加熱、高出力レーザーをワークWに当てて発熱させるレーザー加熱、反射鏡を使用して光源からの光を一点に集めて加熱する集光加熱等がある。
【0042】
このようなワークWを直接加熱する電気式の急速昇温機構32であれば、従来技術のようなガスや重油等を熱源とする燃焼式の炉や電気抵抗により炉内全体を加熱する抵抗加熱式の炉とは異なり、本発明ではワークW自体を急速に昇温することができ、加熱開始の立ち上がりから数秒でワークWを目標の温度に昇温することができる。このため焼入れ時間は、従来技術の燃焼式の炉で80分以上かかっていたものが、本発明では1分もかからず、大幅に短縮することができる。さらに、焼戻しの時間も、従来技術の燃焼式の炉で90分以上かかっていたものが、本発明の電気式の加熱機構では20分程度に短縮できる。この結果、少なくとも金属製のワークWを加工する加工装置20と、熱処理を施す熱処理装置30と、ブラスト加工を施すブラスト装置60とを備えた生産システム10全体として、多品種少量のワークWを製品化するサイクルタイムを短縮し、生産性を向上することができる。
【0043】
さらに、コイル33でワークWを囲うことで、高周波加熱によりワークWを急速に加熱することができる。このため、焼入れの時間を短縮してより生産性を向上させることができる。
【0044】
さらに、ワークWを直接昇温可能な電気式の急速昇温機構32により個別に連続的に焼入れするので、単一の焼入れ炉31で異なるサイズのワークWに対応することができる。また、ワークWのサイズや種類により焼戻しの温度が異なるところ、温度の異なる複数の焼戻し炉41を備え、切り換え機構51でワークWの流れを適切な温度の焼戻し炉41に切り換えるので、ワークWのサイズや種類が異なってもタイムロスすることなく連続的に焼戻しすることができる。このため、生産性を向上させることができる。
【0045】
さらに、ワークW(W1、W2)は、外形の最大肉厚部分の寸法が7mm以下である。一般的に、焼戻しには外形の肉厚部が1インチで1時間必要とされる。本発明の実施例では、ワークW(W1、W2)の外形の最大肉厚部分の寸法が7mm以下としたので、焼戻しの時間を20分以下と短時間にでき、生産性を向上させることができる。さらに、軸状、ピン状、ボルト状のワークWであれば、表面に熱処理が施されていれば製品としての性能を十分満足するものもあるため、部分的に加熱する電気式の急速昇温機構32及び加熱機構42によって効率的に熱処理を行い、生産性をより向上させることができる。
【0046】
次にブラスト装置60について説明する。
図9、
図10に示されるように、ブラスト装置60は、支持フレーム61と、支持フレーム61の上部に設けられたブラスト本体部62と、ブラスト本体部62の内部に曲面63を含んで滑らかに接続された内壁64で形成されワークWが投入されるドラム室65と、支持フレーム61の下部に設けられたブラスト粒Bを貯留するブラストタンク66とを備えている。
【0047】
また、ブラスト装置60は、ドラム室65に接続されドラム室65の内壁64に沿ってエアーを吹き込むブラストエアー通路67と、ブラストエアー通路67に接続されブラスト粒Bを供給するブラスト粒供給路68と、ブラスト本体部62に形成されドラム室65と外部を連通すると共にブラストタンク66に接続されたブラスト粒回収路69と、ドラム室65に接続されブラスト粒Bを排出するためのエアーを吹き込む排出エアー通路71と、を備えている。
【0048】
また、ブラスト装置60は、ドラム室65が正面視で横長の長円形状に形成されている。ドラム室65の奥側は平面状の壁65aで塞がれている。ドラム室65の手前側は平板65bで塞がれている。ブラスト本体部62には、ドラム室65の上部にワークWが投入される上部投入口72が形成されており、上部投入口72を塞ぐ投入口蓋73が、支持フレーム61に設けられた投入口シリンダ74によって開閉される。ブラスト本体部62には、ドラム室65の下部にワークWが取り出される下部取出し口75が形成されており、下部取出し口75を塞ぐ取出し口蓋76が、支持フレーム61に設けられた取出し口シリンダ77によって開閉される。
【0049】
ブラスト本体部62には、ドラム室65の左右の側部から内壁64に沿って下方に開口し、且つ取出し口蓋76上にワークWを寄せ集めるためのエアーを吹き込む寄せ集めエアー通路78が形成されている。
【0050】
また、ブラストエアー通路67は、通路側への逆流を防止する逆止弁67aが設けられていると共にエアーポンプ67bに接続されている。ブラスト粒供給通路68は、通路側への逆流を防止する逆止弁68aが設けられている。排出エアー通路71は、通路側への逆流を防止する逆止弁71aが設けられていると共にエアーポンプ71bに接続されている。寄せ集めエアー通路78は、通路側への逆流を防止する逆止弁78aが設けられていると共にエアーポンプ78bに接続されている。
【0051】
次にブラスト装置60の作用について説明する。
図11の(a)に示されるように、ブラスト装置60の投入口蓋73が開いた状態で上部投入口72から複数のワークWをドラム室65に投入し、投入口蓋73を閉じる(投入工程)。(b)に示されるように、ブラストエアー通路67からブラスト粒Bと共にエアーをドラム室65内に吹き込む。ブラストエアー通路67にブラスト粒供給路68が合流した付近の負圧によりブラスト粒Bがブラストタンク66から供給される。エアーが長円形の曲面63を含む内壁64に沿って吹き込まれるため、ワークWとブラスト粒Bとが入り乱れながら矢印のようにドラム室65内を回り、ワークWにブラスト加工が施される(ブラスト加工工程)。
【0052】
図11の(c)に示されるように、ブラストエアー通路67からのエアーの供給を停止する。排出エアー通路71からドラム室65内にエアーを吹き込む。ワークW及びブラスト粒Bドラム室65内を矢印のように回る。このときワークWの外形の大きさよりも小さい径に形成されたブラスト粒回収路69からブラスト粒Bが排出される(ブラスト粒排出工程)。
【0053】
図12の(a)に示されるように、左右の寄せ集めエアー通路78からワークWが内壁64に沿って転がる程度の強さでドラム室65内にエアーを吹き込み、ワークWを矢印のように取出し口蓋76上に寄せ集める(エアー寄せ集め工程)。(b)に示されるように、取出し口蓋76を降下させて開き、下部取出し口75からワークWを取り出す(ワーク取出し工程)。(c)に示されるように、取出し口蓋76を閉じて原点復帰させ、投入口蓋73を開ける(原点復帰工程)。
【0054】
次に本発明の効果を説明する。
かかる構成によれば、ワークWをドラム室65に投入して内壁64に沿ってエアーを吹き込むことで、ワークWが曲面63を含んで滑らかに接続された内壁64に沿って移動し、ドラム室65内を入り乱れながら回るので、短時間でブラスト加工が可能となる。一般的な従来技術では複数のワークをバッチ処理するため仕分けが必要となり例えば15分の時間が掛かるところ、本発明の実施例では仕分け作業が不要となり1分30秒程度の短時間でブラスト加工が完了するので、生産性を向上させることができる
【0055】
さらに、ドラム室65は長円形状であるので、ワークWがドラム室65内を円滑に回ることができ、短時間で均一にブラスト加工することができる。さらに、ドラム室65は横長の長円状であるので、ドラム室65の上部及び下部に広い平面を確保し、それぞれの位置に上部投入口72と下部取出し口75を大きく形成することで、ワークWの投入及び取出しを容易にでき作業性を向上させることができる。このため、生産性を向上させることができる。
【0056】
次に梱包装置90について説明する。
図13、
図14、
図15に示されるように、梱包装置90は、フレーム91と、ワークW(
図16参照)のデータを読み込んでラベルを発行するラベルプリンター92と、ワークWを収納する合成樹脂製の袋93(
図16参照)をストックする袋ストック部94と、袋ストック部94から袋95を搬送する搬送機構95と、を備えている。
【0057】
また、梱包装置90は、搬送された袋93を下から受ける袋受け機構100と、ワークWを仮置きして袋93内に入れる袋詰め機構110と、袋93内にオイルを塗布すると共に脱気するオイル塗布脱気機構115と、袋93をシールするシール機構120と、を備えている。
【0058】
搬送機構95は、梱包装置90の前後方向(長手方向)に対してフレーム91に移動可能に且つ昇降可能に設けられている。搬送機構95の下端部には、梱包装置90の幅方向に長く形成された昇降本体部96と、昇降本体部96の下面に設けられた昇降吸着パッド97と、昇降吸着パッド97に接続された吸引ポンプ98と、昇降本体部96の下面に設けられたシリコン製のプレス部99と、を備えている。
【0059】
袋受け機構100は、フレーム91に設けられ昇降吸着パッド97に対向する固定吸着パッド101と、固定吸着パッド101の後側に隣接し且つ固定吸着パッド101よりも低い位置で幅方向に横長に形成されたヒーター102と、ヒーター102の後側に隣接し且つヒーター102よりも高い位置で幅方向に横長に形成されたゴム製のゴム受け部103と、フレーム91に上下方向へ揺動可能に設けられた揺動プレート104と、を備えている。固定吸着パッド101は、吸引ポンプ101aに接続されている。
【0060】
揺動プレート104は、固定吸着パッド101、ヒーター102及びゴム受け部103の周囲を囲うと共にこれらの外周に沿って開口する開口部105が形成された枠板部106と、枠板部106の後端部から後下りに傾斜する下り傾斜部107と、枠板部106の後側の下面に設けられたヒンジ108と、を備えている。揺動プレート104は、フレーム91に設けられた揺動シリンダ109によって揺動される。なお、揺動プレート104が揺動していない状態のとき、枠板部106よりもゴム受け部103の頂点の方が高い位置にある。
【0061】
袋詰め機構110は、ワークWが投入される共に所定位置の開口した袋93の中まで進退可能にフレーム91に設けられているスコップ111と、フレーム91に設けられスコップ111を進退させるスコップ進退機構112と、スコップ111に設けられワークWを押し出すプッシャー113と、プッシャー113を進退させるプッシャー用シリンダ114と、を備えている。
【0062】
オイル塗布脱気機構115は、フレーム91に設けられたノズル用シリンダ116と、ノズル用シリンダ116に進退可能に設けられ袋93内まで進入する上下に薄いノズル117と、ノズル117に接続されオイルを送り出すオイルポンプ118と、ノズル117に接続され空気を吸引する吸引ポンプ119と、を備えている。オイルポンプ118と吸引ポンプ119とは、切り換え弁117aで切り換え可能とされている。なお、切換え弁117aを使用せず、オイルポンプ118と吸引ポンプ119とがそれぞれ独立したノズル117に接続されてもよい。
【0063】
シール機構120は、前述した構成要素のうち、搬送機構95と、袋受け機構100と、から構成される。また、フレーム91の下部には、シールされたワークW入りの袋93を、揺動させた揺動プレート104上を滑らせて回収する回収ボックス121が設けられている。
【0064】
次に梱包装置90の作用について説明する。
図16の(a)に示されるように、袋ストック部94(
図13参照)から想像線で示す搬送機構95の昇降吸着パッド97で袋93を吸着させて搬送する。実線で示す搬送機構95を一旦降下させて、固定吸着パッド101に袋93の下側を吸着させ、搬送機構95を上昇させることで袋93が開口する(袋セット工程)。ワークWが入ったスコップ111を袋93内に前進させ、さらにプッシャー113を前進させてワークWを袋93内に押し込み、プッシャー113を後退させる(ワーク押し込み工程)。
【0065】
図16の(b)に示されるように、スコップ111を後退させ、ノズル117を袋93内に前進させる(ノズル前進工程)。このとき、揺動プレート104の下り傾斜部107により、ワークWが転がり袋93の奥へ移動するので、ワークWが邪魔になることなく、ノズル117を袋93の入り口に容易に前進させることができる。搬送機構95を降下させ、ゴム受け部103とプレス部99との間でノズル117を挟み軽く抑える。これで袋93の入り口が閉じられる(袋閉じ工程)。さらにオイルポンプ119によりノズル117を介してオイルを袋93内に噴射する(オイル噴射工程)。
【0066】
このとき袋93の入り口が閉じられているので、オイルが外に漏れることがない。さらにゴム受け部103の頂点が枠板部106よりも高い位置にあるので、袋93内に入ったオイルがゴム受け部103で堰き止められて外に漏れ出ることを防止できる。このためオイルの飛散を防止して、無駄になるオイルを低減させることができるうえ、梱包状態を良好にすることができる。
【0067】
さらに、吸引ポンプ119で袋93内の空気を脱気する(脱気工程)。これにより、袋93内で複数のワークWが衝突して傷が付き易くなることを防止でき、製品化されたワークWの搬送を容易に行うことができる。さらに、脱気することで、オイルを袋93内全体に行きわたらせてムラをなくし、製品化されたワークWの防錆効果等を向上させることができる。
図16の(c)に示されるように、ノズル117を袋93から工程させる(ノズル後退工程)。
【0068】
図17の(a)に示されるように、搬送機構95をさらに降下させてプレス部99をヒーター102に押し付けて、袋93の入り口をシールする(シール工程)。(b)に示されるように、搬送機構95を上昇させ、揺動シリンダ109を稼働して揺動プレート104を揺動させ、袋詰めにより製品化されたワークWを滑らせて回収ボックス121(
図13参照)に回収させる(袋回収工程)。(c)に示されるように、揺動シリンダ109を稼働させ揺動プレート104を原点復帰させる(原点復帰工程)。
【0069】
次に本発明の効果を説明する。
かかる構成によれば、シール工程の際、揺動プレート104の下り傾斜部107が傾斜しているので、袋93も傾斜し、袋93とヒーター102との接触面を最小限にできる。このため、ヒーター102がシール部以外に接触して袋93に穴が開くことを防止できる。さらに、袋回収工程の際、ヒーター102の周りを囲うように枠板部106があるので、袋93のヒーター102周辺部分を持ち上げて、ヒーター102から袋93を容易に引き離すことができる。
【0070】
次に比較例に係る作業時間積み上げグラフと、実施例に係る作業時間積み上げグラフについて説明する。
図18に示されるように、従来の生産システムである(a)の比較例では、ワーク1本当り段取りに103.8秒、付随作業に44.4秒、付帯作業、イレギュラー対応に2.2秒要していた。この点、実施例の生産システムである(b)では、1本当り段取りに38.3秒、付随作業に32.9秒、付帯作業、イレギュラー対応に2.2秒と、大幅に工数を削減し、目標サイクルタイムの92.3秒もクリアされている。
【0071】
尚、実施例では、生産システム10は、加工装置20として複合加工装置を備えているが、これに限定されず、加工装置20は一種類の加工を行う加工装置、NCマシニングセンタ、プレス装置、鍛造装置など機械加工が施されていれば加工の種類は問わない。また、実施例では、生産システム10は、研削盤80を備えているが、研削盤80は無くても差し支えない。
【0072】
実施例では、熱処理装置30は、1つの焼入れ炉31に対して2つの焼戻し炉41としたが、これに限定されず、1つの焼入れ炉31に対して1つ、3つ、4つの焼入れ炉31としてもよい。
【0073】
実施例では、熱処理装置30の焼入れ炉31の加熱方法として、コイル33による高周波誘導加熱を採用したが、これに限定されず、電気式であれば集光加熱、電子加熱、レーザー加熱であっても差し支えない。
【0074】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
本発明の技術は、少なくとも金属製のワークを加工する加工装置と、熱処理を施す熱処理装置と、ブラスト加工を施すブラスト装置と、を備えた生産システムに好適である。
少なくとも金属製のワークを加工する加工装置と、前記加工装置で加工された前記ワークに熱処理を施す熱処理装置と、前記熱処理装置で熱処理された前記ワークにブラスト加工を施すブラスト装置と、を備えた生産システムであって、
前記熱処理装置は、前記ワークを直接昇温可能な電気式の急速昇温機構により前記ワークを個別で連続的に焼入れする焼入れ炉と、電気式の加熱機構により前記ワークを連続的に焼戻しする焼戻し炉と、を備え、
前記ブラスト装置は、前記熱処理装置に隣接して配置されており、
前記ブラスト装置は、ブラスト本体部と、前記ブラスト本体部の内部に曲面を含んで滑らかに接続された内壁で形成され前記ワークが投入されるドラム室と、前記ドラム室に接続され前記ドラム室の内壁に沿ってエアーを吹き込むブラストエアー通路と、を備え、
前記ドラム室は、正面視で横長の長円または真円形状に形成されており、
前記ドラム室の上部に形成され前記ワークが投入される上部投入口と、前記ドラム室の下部に形成され前記ワークが取り出される下部取出し口と、を備えていることを特徴とする生産システム。