(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064249
(43)【公開日】2022-04-25
(54)【発明の名称】梱包装置
(51)【国際特許分類】
B65B 1/04 20060101AFI20220418BHJP
【FI】
B65B1/04
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172882
(22)【出願日】2020-10-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】501162627
【氏名又は名称】株式会社アイオー精密
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雅人
【テーマコード(参考)】
3E118
【Fターム(参考)】
3E118AA07
3E118AB08
3E118AB14
3E118AB20
3E118BA01
3E118BA04
3E118BA07
3E118BA10
3E118BB21
3E118CA06
3E118CA10
3E118CA13
3E118EA01
(57)【要約】
【課題】オイルの飛散を防止して無駄になるオイルを削減するとともに梱包状態を汚れのない綺麗な状態にし、短時間でワークを梱包することができる梱包装置を提供する。
【解決手段】梱包装置90は、フレーム91と、ワークを収納する袋を搬送する搬送機構と95、搬送された袋95を下から受ける袋受け機構100と、ワークWを袋93に入れる袋詰め機構110と、袋93内にオイルを塗布すると共に脱気するオイル塗布脱気機構115と、袋93をシールするシール機構120と、を備えている。オイル塗布脱気機構115は、袋93内まで進入してオイルの塗布と脱気を行うノズル117を備えている。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを袋に梱包する梱包装置であって、
フレームと、前記フレームに設けられ前記ワークを収納する袋を搬送する搬送機構と、前記フレームに設けられ搬送された前記袋を下から受ける袋受け機構と、前記フレームに設けられ前記ワークを前記袋に入れる袋詰め機構と、前記フレームに設けられ前記袋内にオイルを塗布すると共に脱気するオイル塗布脱気機構と、前記フレームに設けられ前記袋をシールするシール機構と、を備え、
前記オイル塗布脱気機構は、前記袋内まで進入してオイルの塗布と脱気を行うノズルを備えていることを特徴とする梱包装置。
【請求項2】
請求項1記載の梱包装置であって、
前記搬送機構は、前記フレームに前後方向移動可能に且つ昇降可能に設けられ幅方向に長く形成された昇降本体部と、前記昇降本体部の下面に設けられ前記袋を吸着する昇降吸着パッドと、を備え、
前記袋受け機構は、前記フレームに設けられ前記昇降吸着パッドに対向する固定吸着パッドと、前記固定吸着パッドの後側に隣接し且つ前記固定吸着パッドよりも低い位置で幅方向に横長に形成されたヒーターと、を備えている梱包装置。
【請求項3】
請求項2記載の梱包装置であって、
前記搬送機構は、前記昇降本体部の下面に設けられたシリコン製のプレス部を備え、
前記袋受け機構は、前記ヒーターの後側に隣接し且つ前記ヒーターよりも高い位置で幅方向に横長に形成されたゴム製のゴム受け部を備えている梱包装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1記載の梱包装置であって、
前記ノズルは、上下に薄く形成されている梱包装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の梱包装置であって、
前記袋受け機構は、前記フレームに幅方向を軸にして上下方向へ揺動可能に設けられた揺動プレートを備え、
前記揺動プレートは、前記固定吸着パッド、前記ヒーター及び前記ゴム受け部の周囲を囲うと共にこれらの外周に沿って開口する開口部が形成された枠板部と、前記枠板部の後端部から後下りに傾斜する下り傾斜部と、を備えている梱包装置。
【請求項6】
請求項5記載の梱包装置であって、
前記揺動プレートが揺動していない状態のとき、前記枠板部よりも前記ゴム受け部の頂点の方が高い位置にある梱包装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを袋に梱包する梱包装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、軸、ピン、ボルト、ギヤ等の小さな金属製ワークを製品化するには、ワークの切削加工、熱処理、ブラスト加工、研磨加工などを施し、最終的にポリエチレン樹脂ななどの合成樹脂製の袋に梱包して出荷される。ワークを袋に入れただけでは、ワークに錆などが発生するため、品質を維持するために防錆剤としてオイルなどを袋に入れることがある。このような袋にワークとオイルを入れる梱包装置として、例えば、特許文献1に記載された梱包装置が知られている。
【0003】
特許文献1の梱包装置は、袋にワークと潤滑油型防錆油(以下、オイルという)を入れて、この袋ごと減圧チャンバ内の傾斜台に入口が上側になるようにセットする。袋の入口付近には残存する空気を排出させて減少させる空気排出用治具が設けられており、この空気排出用治具に袋をセットすることで袋の入口付近がつぶれてその分の空気が抜ける。そして、減圧チャンバ内全体を減圧させ、シール装置で入口をシールすることで梱包がなされる。
【0004】
ところで、ワークをオイルで防錆するには、ワークの表面にオイルが塗布されていれば十分である。しかし、特許文献1の梱包装置では、袋に大量のオイルを入れて入口をシールするため、無駄になるオイルが大量に発生する。また、ワークが大量にある場合、ワーク一つ一つを減圧チャンバ内の空気排出用治具にセットしていたのでは、時間が掛かるうえにセット時にオイルが飛散して汚れる虞もある。時間が掛からないように袋詰めを自動化した装置として食品用の特許文献2の袋詰め包装装置が知られている。
【0005】
特許文献2の袋詰め包装装置は、円形の移動基板の周縁に設けた2個を1組とするクランプが移動基板と一体に45度角ずつ間欠移動する。給袋セクションでは、給袋装置から供給される袋の両側縁をクランプは挟持して吊り下げる。就床セクションでは1組のクランプは吊り下げた袋を水平にするように回転する。このときクランクピンの動きをするしごき棒は袋の入口から底側に向けてスライドして包袋を水平化し、同時に下からベット基板が回転状に持ち上がり包袋を水平に支える。開口セクションでは両側のクランプ間隔が狭まり袋の口を開口する。上下一対の真空カップは袋の入口を上下に広げて開口助勢する。充填セクションでは上下一対の挟持板で挟持した油あげを袋内に挿入し充填する。液充セクションで空気ノズルは空気圧で袋の開口を保持する一方、メインノズルが味付け液を補充する。緊張セクションで両側のクランプを離反して入口を緊張する。この場合入口を加熱シールバーで密封する。搬出セクションにおいて仲介クランプは包装体を真空チャンバに運び出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-40670号公報
【特許文献2】特開2002-46701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2の袋詰め包装装置では、包袋を水平に支え、袋の入口を上下に広げて開口した状態で、油あげ(ワーク)を包袋内に挿入し充填し、液充セクションで空気ノズルが空気圧で袋の開口を保持する一方、メインノズルが味付け液(オイル)を補充するので、水平状の袋の入口から味付け液(オイル)が飛散して汚れる。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、オイルの飛散を防止して無駄になるオイルを削減するとともに梱包状態を汚れのない綺麗な状態にし、短時間でワークを梱包することができる梱包装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の梱包装置は、
ワークを袋に梱包する梱包装置であって、
フレームと、前記フレームに設けられ前記ワークを収納する袋を搬送する搬送機構と、前記フレームに設けられ搬送された前記袋を下から受ける袋受け機構と、前記フレームに設けられ前記ワークを前記袋に入れる袋詰め機構と、前記フレームに設けられ前記袋内にオイルを塗布すると共に脱気するオイル塗布脱気機構と、前記フレームに設けられ前記袋をシールするシール機構と、を備え、
前記オイル塗布脱気機構は、前記袋内まで進入してオイルの塗布と脱気を行うノズルを備えていることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記搬送機構は、前記フレームに前後方向移動可能に且つ昇降可能に設けられ幅方向に長く形成された昇降本体部と、前記昇降本体部の下面に設けられ前記袋を吸着する昇降吸着パッドと、を備え、
前記袋受け機構は、前記フレームに設けられ前記昇降吸着パッドに対向する固定吸着パッドと、前記固定吸着パッドの後側に隣接し且つ前記固定吸着パッドよりも低い位置で幅方向に横長に形成されたヒーターと、を備えている。
【0011】
好ましくは、前記搬送機構は、前記昇降本体部の下面に設けられたシリコン製のプレス部を備え、
前記袋受け機構は、前記ヒーターの後側に隣接し且つ前記ヒーターよりも高い位置で幅方向に横長に形成されたゴム製のゴム受け部を備えている。
【0012】
好ましくは、前記ノズルは、上下に薄く形成されている。
【0013】
好ましくは、前記袋受け機構は、前記フレームに幅方向を軸にして上下方向へ揺動可能に設けられた揺動プレートを備え、
前記揺動プレートは、前記固定吸着パッド、前記ヒーター及び前記ゴム受け部の周囲を囲うと共にこれらの外周に沿って開口する開口部が形成された枠板部と、前記枠板部の後端部から後下りに傾斜する下り傾斜部と、を備えている。
【0014】
好ましくは、前記揺動プレートが揺動していない状態のとき、前記枠板部よりも前記ゴム受け部の頂点の方が高い位置にある。
【発明の効果】
【0015】
かかる構成によれば、ワークを収納する袋を搬送する搬送機構と、搬送された袋を下から受ける袋受け機構と、ワークを袋に入れる袋詰め機構と、袋内にオイルを塗布すると共に脱気するオイル塗布脱気機構と、袋をシールするシール機構と、を備えている。オイル塗布脱気機構は、袋内まで進入してオイルの塗布と脱気を行うノズルを備えているので、ノズルを袋内に進入させ、搬送機構と袋受け機構とでノズルと共に袋の入口を挟んで塞いだ状態で、オイルを袋内に塗布し、オイルの飛散を防止して無駄になるオイルを削減することができる。さらに、脱気することで袋の上側と下側を密着させて袋内でのワークの移動を防止し、梱包状態を汚れのない良好な状態にでき、短時間でワークを梱包することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例に係る生産システムの斜視図である。
【
図3】高周波誘導加熱の基本原理を示す説明図である。
【
図4】比較例に係る焼入れ、焼戻しの時間と温度の関係を示す図と、実施例に係る焼入れ、焼戻しの時間と温度の関係を示す図である。
【
図8】熱処理装置の焼戻し炉の切り換えを示す作用図である。
【
図11】ブラスト装置のブラスト粒排出工程までの作用図である。
【
図12】ブラスト装置の原点復帰工程までの作用図である。
【
図16】梱包装置のチューブ後退工程までの作用図である。
【
図17】梱包装置の原点復帰工程までの作用図である。
【
図18】比較例に係る作業時間積み上げグラフと、実施例に係る作業時間積み上げグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は概念的(模式的)に示すものとする。また、本発明の梱包装置90が配置される生産システム(生産ライン)の一例を示し、その中で梱包装置90を詳細に説明するものとする。
【実施例0018】
本発明の実施例に係る生産システム10全体について説明する。
図1、
図2に示されるように、生産システム10は、金属製のワークW(
図3参照)を切削加工する加工装置20と、ワークWを焼入れ及び焼戻しする熱処理装置30と、ワークWをブラスト加工するブラスト装置60と、ワークWを研削加工する研削盤80と、ワークWを梱包する梱包装置90とを備えている。
【0019】
生産システム10は、加工装置20、熱処理装置30、ブラスト装置60、研削盤80、及び梱包装置90が、この順に平面視でU字状に配置されている。また、ブラスト装置60は、熱処理装置30に隣接して配置されている。このように配置されたU字状の中に作業員Pが入り、各装置の操作及びワークWのセットを行う。また、各装置は制御部により動作制御されている。
【0020】
次に生産システム10全体の作用を説明する。
生産システム10の処理工程のフローは、ワークWを加工装置20で切削加工し(加工工程)、加工装置20で加工されたワークWを熱処理装置30で熱処理し(熱処理工程)、熱処理装置30を熱処理されたワークWをブラスト装置60でブラスト加工し(ブラスト工程)、ブラスト装置60でブラスト加工されたワークWを研削盤80で研削し(研削工程)、研削盤80で研削されたワークWを梱包装置90で梱包する(梱包工程)となる。
【0021】
次に本発明の効果を説明する。
かかる構成によれば、生産システム10では、各装置が工程順に平面視でU字状に配置されているので、生産システム10全体として省スペース化され、作業員PがU字状の中に入ることでほぼ移動せずに向きを変えるだけ全ての装置を操作することができ、作業性がよく生産性を向上させることができる。さらに、ブラスト装置60を熱処理装置30に隣接して配置することで、作業者によるワーク搬送の工数を削減できる。
【0022】
次に熱処理装置30で採用されている高周波誘導加熱の基本原理について説明する。
図3に示されるように、熱処理装置30(
図6参照)は、ワークWを急速に昇温する急速昇温機構32を備えており、この急速昇温機構32に例えばコイル33が設けられている。コイル33は高周波変換器34に接続され、高周波変換器34は高周波電源35に接続されている。
【0023】
交流の高周波電源35に接続されたコイル33の中に金属製の棒状ワークWを挿入すると、コイル33とワークWは非接触の状態であるにもかかわらずワークWが自己発熱する。これは誘導加熱によるものであり、交流電流によってワークWの表面付近に高密度のうず電流が発生し、それによるジュール熱でワークWの表面が発熱するものである。
【0024】
次に比較例に係る焼入れ、焼戻しの時間と温度の関係、及び実施例に係る焼入れ、焼戻しの時間と温度の関係について説明する。なお、関係図はいずれも同じにワークについて要する時間を横軸に示している。
【0025】
図4に示されるように、(a)は比較例に係る燃焼式の炉による焼入れの時間と温度の関係を示す図であり、830℃への昇温に20分、830℃の温度保持に60分、冷却に数分の合計約90分の時間がかかる。(b)は比較例に係る燃焼式の炉による焼戻しの時間と温度の関係を示す図であり、200℃への昇温に20分、200℃の温度保持に60分、冷却に15分の合計約95分の時間がかかる。(c)は実施例に係る電気式の急速昇温機構を備えた焼入れ炉による焼入れの時間と温度の関係を示す図であり、830℃への昇温に1.2秒、830℃の温度保持に20秒、冷却に数十秒の合計約1分の時間がかかる。(d)は実施例に係る電気式の加熱機構を備えた焼戻し炉による焼戻しの時間と温度の関係を示す図であり、200℃への昇温に数分、200℃の温度保持に十数分、冷却に数分の合計約21分の時間がかかる。
【0026】
このように同じ品質のワークを得るために、比較例の従来技術による焼入れ、焼戻しの合計時間は約185分であるのに対し、実施例による焼入れ、焼戻しの合計時間は約22分程度と、大幅に時間短縮されている。
【0027】
次に熱処理装置30について説明する。
図5、
図6に示されるように、熱処理装置30は、ワークW(
図7参照)を直接昇温可能な電気式の急速昇温機構32によりワークWを個別で連続的に焼入れする焼入れ炉31と、電気式の加熱機構42によりワークWを連続的に焼戻しする焼戻し炉41と、を備えている。具体的には、熱処理装置30は、単一の焼入れ炉31と、異なる所定の時間でワークWを加熱する第1の焼戻し炉41a及び第2の焼戻し炉41bと、焼入れ炉31からのワークWの流れを第1の焼戻し炉41a又は第2の焼戻し炉41bのいずれかに切り換える切り換え機構51と、を備えている。
【0028】
焼入れ炉31は、短いトンネル状の炉であり、炉内温度を保つ保温壁36と、この保温壁36に設けられワークWを急速に昇温する電気式の急速昇温機構32と、トンネル状の保温壁36内に設けられワークWを案内する案内通路37と、案内通路37の基端側に設けられ案内通路37内のワークWを送り出す送り棒38aを有した送り出し機構38と、案内通路37の先端側に設けられワークWを冷却する冷却剤を噴射する冷却ジャケット39と、を備えている。
【0029】
また、急速昇温機構32は、ワークWを高周波加熱で焼入れするコイル33を備えている。冷却ジャケット39は、水路39aを介して冷却剤を送り出すポンプ39bに接続されている。なお、実施例では冷却剤を水としたが、オイルであってもよく、ワークWを冷却できれば材質は問わない。
【0030】
焼戻し炉41(41a、41b)は、焼入れ炉31よりも長いトンネル状の炉であり、炉内温度を保つ保温壁44と、この保温壁44に設けられワークWを加熱する電気式の加熱機構42と、長いトンネル状の保温壁44内を通過して設けられワークWを搬送するコンベア45と、コンベア45の出口側に設けられコンベア45のワークWを次工程に案内するシューター46と、を備えている。なお、実施例では、2つ配置した焼戻し炉41のうち、高温側を第1の焼戻し炉41a、低温側を第2の焼戻し炉41bとしている。
【0031】
また、加熱機構42は、ワークWをバンドヒーター等で加熱し、的確な温度で焼戻しする為の複数の熱電対43を所定の間隔を開けて備えている。このため、コンベア45上でゆっくりと搬送されるワークWを所定の温度で加熱し続けることができる。
【0032】
切り換え機構51は、台52と、焼戻し炉41の長手方向と垂直に交わる方向に延びるようにして台52に設けられたレール53と、レール53に移動可能に設けられ第1の焼戻し炉41a及び第2の焼戻し炉41bを支持する移動支持部54と、台52に設けられ移動支持部54を進退させるシリンダ55と、を備えている。
【0033】
なお、実施例では、切り換え機構51は第1の焼戻し炉41a及び第2の焼戻し炉41bを横方向に移動させてワークWの流れを切り換えるものとしたが、これに限定されず、単一の焼入れ炉31をシリンダ等で横方向に進退させてワークWの流れを切り換えるものや、案内通路37の先端側に、案内方向を切り換え可能な案内シューター56でワークWの流れを切り換えるものとしてもよい。また、実施例では、焼戻し炉41を2つ設けたが、これに限定されず、焼戻し炉41は、1つ、3つ、4つでもよく、ワークWの種類に応じて焼戻しができれば数は問わない。
【0034】
次に熱処理装置30の作用について説明する。
図7の(a)に示されるように、熱処理装置30において、ワークW2が焼入れ炉31の案内通路37の基端側に投入される(焼入れ投入工程)。(b)に示されるように、ワークW2は送り出し機構38の送り棒38aにより急速昇温機構32の位置に移動され、高周波誘導加熱により焼入れされる(焼入れ加熱工程)。(c)に示されるように、ワークW2は送り出し機構38の送り棒38aにより案内通路37の先端側から案内シューター56に送り出される。ワークW2は冷却ジャケット39からの冷却剤により急冷される(焼入れ工程)。
【0035】
図7の(d)に示されるように、焼入れが完了したワークW2は第2の焼戻し炉41bに移動される。また、送り出し機構38の送り棒38aが原点復帰し、次のワークW2が焼入れ炉31に投入される(焼戻し投入工程)。(e)に示されるように、第2の焼戻し炉41b内のワークW2はコンペア45によって第2の焼戻し炉41b内を移動し、複数の加熱機構42により焼戻しされる。その間、焼入れ炉31では次のワークW2が焼入れされる。
【0036】
図7の(f)に示されるように、第2の焼戻し炉41b内のワークW2はコンベア45によりさらに第2の焼戻し炉41b内を移動し、所定の温度に保たれる。その間、次のワークW2の焼入れが完了し、急冷後に第2の焼戻し炉41b内に移動し、複数のワークW2が第2の焼戻し炉41bで連続的に焼戻しされる(焼戻し加熱工程)。
【0037】
図8の(a)に示されるように、4つのワークW2が第2の焼戻し炉41b内で焼戻しされている。異なる種類のワークW1が焼入れ炉31に投入されると、(b)に示されるように、切り換え機構51(
図5参照)により第1の焼戻し炉41aに切り換えられ、ワークW1の流れが第1の焼戻し炉41aに切り換えられる(切り換え工程)。そして、焼入れが完了したワークW1は第1の焼戻し炉41aに送り出される。複数のワークW1が第1の焼戻し炉41aで連続的に焼戻しされる。その間も第2の焼戻し炉41bでは複数のワークW2の焼戻しが続けられ、焼戻しが完了した後(焼戻し工程)、シューター46に送り出される(送り出し工程)。
【0038】
次に本発明の効果を説明する。
かかる構成によれば、熱処理装置30は、ワークWを直接昇温可能な電気式の急速昇温機構32によりワークWを個別に連続的に焼入れする焼入れ炉31を備えている。電気式の急速昇温機構32として、例えばコイル33に高周波磁界を発生させてワークWに生じる誘導電流により加熱する高周波誘導加熱、電子ビームをワークWに照射する電子加熱、高出力レーザーをワークWに当てて発熱させるレーザー加熱、反射鏡を使用して光源からの光を一点に集めて加熱する集光加熱等がある。
【0039】
このようなワークWを直接加熱する電気式の急速昇温機構32であれば、従来技術のようなガスや重油等を熱源とする燃焼式の炉や電気抵抗により炉内全体を加熱する抵抗加熱式の炉とは異なり、本発明ではワークW自体を急速に昇温することができ、加熱開始の立ち上がりから数秒でワークWを目標の温度に昇温することができる。このため焼入れ時間は、従来技術の燃焼式の炉で80分以上かかっていたものが、本発明では1分もかからず、大幅に短縮することができる。さらに、焼戻しの時間も、従来技術の燃焼式の炉で90分以上かかっていたものが、本発明の電気式の加熱機構では20分程度に短縮できる。この結果、少なくとも金属製のワークWを加工する加工装置20と、熱処理を施す熱処理装置30と、ブラスト加工を施すブラスト装置60とを備えた生産システム10全体として、多品種少量のワークWを製品化するサイクルタイムを短縮し、生産性を向上することができる。
【0040】
さらに、コイル33でワークWを囲うことで、高周波加熱によりワークWを急速に加熱することができる。このため、焼入れの時間を短縮してより生産性を向上させることができる。
【0041】
さらに、ワークWを直接昇温可能な電気式の急速昇温機構32により個別に連続的に焼入れするので、単一の焼入れ炉31で異なるサイズのワークWに対応することができる。また、ワークWのサイズや種類により焼戻しの温度が異なるところ、温度の異なる複数の焼戻し炉41を備え、切り換え機構51でワークWの流れを適切な温度の焼戻し炉41に切り換えるので、ワークWのサイズや種類が異なってもタイムロスすることなく連続的に焼戻しすることができる。このため、生産性を向上させることができる。
【0042】
さらに、ワークW(W1、W2)は、外形の最大肉厚部分の寸法が7mm以下である。一般的に、焼戻しには外形寸法が1インチで1時間必要とされる。本発明の実施例では、ワークW(W1、W2)の外形の最大肉厚部分の寸法が7mm以下としたので、焼戻しの時間を20分以下と短時間にでき、生産性を向上させることができる。さらに、軸状、ピン状、ボルト状のワークWであれば、表面に熱処理が施されていれば製品としての性能を十分満足するものもあるため、部分的に加熱する電気式の急速昇温機構32及び加熱機構42によって効率的に熱処理を行い、生産性をより向上させることができる。
【0043】
次にブラスト装置60について説明する。
図9、
図10に示されるように、ブラスト装置60は、支持フレーム61と、支持フレーム61の上部に設けられたブラスト本体部62と、ブラスト本体部62の内部に曲面63を含んで滑らかに接続された内壁64で形成されワークWが投入されるドラム室65と、支持フレーム61の下部に設けられたブラスト粒Bを貯留するブラストタンク66とを備えている。
【0044】
また、ブラスト装置60は、ドラム室65に接続されドラム室65の内壁64に沿ってエアーを吹き込むブラストエアー通路67と、ブラストエアー通路67に接続されブラスト粒Bを供給するブラスト粒供給路68と、ブラスト本体部62に形成されドラム室65と外部を連通すると共にブラストタンク66に接続されたブラスト粒回収路69と、ドラム室65に接続されブラスト粒Bを排出するためのエアーを吹き込む排出エアー通路71と、を備えている。
【0045】
また、ブラスト装置60は、ドラム室65が正面視で横長の長円または真円形状に形成されている。ドラム室65の奥側は平面状の壁65aで塞がれている。ドラム室65の手前側は透明な平板65bで塞がれている。ブラスト本体部62には、ドラム室65の上部にワークWが投入される上部投入口72が形成されており、上部投入口72を塞ぐ投入口蓋73が、支持フレーム61に設けられた投入口シリンダ74によって開閉される。ブラスト本体部62には、ドラム室65の下部にワークWが取り出される下部取出し口75が形成されており、下部取出し口75を塞ぐ取出し口蓋76が、支持フレーム61に設けられた取出し口シリンダ77によって開閉される。
【0046】
ブラスト本体部62には、ドラム室65の左右の側部から内壁64に沿って下方に開口し、且つ取出し口蓋76上にワークWを寄せ集めるためのエアーを吹き込む寄せ集めエアー通路78が形成されている。
【0047】
また、ブラストエアー通路67は、通路側への逆流を防止する逆止弁67aが設けられていると共にエアーポンプ67bに接続されている。ブラスト粒供給通路68は、通路側への逆流を防止する逆止弁68aが設けられている。排出エアー通路71は、通路側への逆流を防止する逆止弁71aが設けられていると共にエアーポンプ71bに接続されている。寄せ集めエアー通路78は、通路側への逆流を防止する逆止弁78aが設けられていると共にエアーポンプ78bに接続されている。
【0048】
次にブラスト装置60の作用について説明する。
図11の(a)に示されるように、ブラスト装置60の投入口蓋73が開いた状態で上部投入口72から複数のワークWをドラム室65に投入し、投入口蓋73を閉じる(投入工程)。(b)に示されるように、ブラストエアー通路67からブラスト粒Bと共にエアーをドラム室65内に吹き込む。ブラストエアー通路67にブラスト粒供給路68が合流した付近の負圧によりブラスト粒Bがブラストタンク66から供給される。エアーが長円形の曲面63を含む内壁64に沿って吹き込まれるため、ワークWとブラスト粒Bとが入り乱れながら矢印のようにドラム室65内を回り、ワークWにブラスト加工が施される(ブラスト加工工程)。
【0049】
図11の(c)に示されるように、ブラストエアー通路67からのエアーの供給を停止する。排出エアー通路71からドラム室65内にエアーを吹き込む。ワークW及びブラスト粒Bドラム室65内を矢印のように回る。このときワークWの外形の大きさよりも小さい径に形成されたブラスト粒回収路69からブラスト粒Bが排出される(ブラスト粒排出工程)。
【0050】
図12の(a)に示されるように、左右の寄せ集めエアー通路78からワークWが内壁64に沿って転がる程度の強さでドラム室65内にエアーを吹き込み、ワークWを矢印のように取出し口蓋76上に寄せ集める(エアー寄せ集め工程)。(b)に示されるように、取出し口蓋76を降下させて開き、下部取出し口75からワークWを取り出す(ワーク取出し工程)。(c)に示されるように、取出し口蓋76を閉じて原点復帰させ、投入口蓋73を開ける(原点復帰工程)。
【0051】
次に本発明の効果を説明する。
かかる構成によれば、ワークWをドラム室65に投入して内壁64に沿ってエアーを吹き込むことで、ワークWが曲面63を含んで滑らかに接続された内壁64に沿って移動し、ドラム室65内を入り乱れながら回るので、短時間でブラスト加工が可能となる。一般的な従来技術では複数のワークをバッチ処理するため仕分けが必要となり例えば15分の時間が掛かるところ、本発明の実施例では仕分け作業が不要となり1分30秒程度の短時間でブラスト加工が完了するので、生産性を向上させることができる。
【0052】
さらに、ドラム室65は長円形状であるので、ワークWがドラム室65内を円滑に回ることができ、短時間で均一にブラスト加工することができる。さらに、ドラム室65は横長の長円状であるので、ドラム室65の上部及び下部に広い平面を確保し、それぞれの位置に上部投入口72と下部取出し口75を大きく形成することで、ワークWの投入及び取出しを容易にでき作業性を向上させることができる。このため、生産性を向上させることができる。
【0053】
次に梱包装置90について説明する。
図13、
図14、
図15に示されるように、梱包装置90は、フレーム91と、ワークW(
図16参照)のデータを読み込んでラベルを発行するラベルプリンター92と、ワークWを収納する合成樹脂製の袋93(
図16参照)をストックする袋ストック部94と、袋ストック部94から袋95を搬送する搬送機構95と、を備えている。
【0054】
また、梱包装置90は、搬送された袋93を下から受ける袋受け機構100と、ワークWを仮置きして袋93内に入れる袋詰め機構110と、袋93内にオイルを塗布すると共に脱気するオイル塗布脱気機構115と、袋93をシールするシール機構120と、を備えている。
【0055】
搬送機構95は、梱包装置90の前後方向(長手方向)に対してフレーム91に移動可能に且つ昇降可能に設けられている。搬送機構95の下端部には、梱包装置90の幅方向に長く形成された昇降本体部96と、昇降本体部96の下面に設けられた昇降吸着パッド97と、昇降吸着パッド97に接続された吸引ポンプ98と、昇降本体部96の下面に設けられたシリコン製のプレス部99と、を備えている。
【0056】
袋受け機構100は、フレーム91に設けられ昇降吸着パッド97に対向する固定吸着パッド101と、固定吸着パッド101の後側に隣接し且つ固定吸着パッド101よりも低い位置で幅方向に横長に形成されたヒーター102と、ヒーター102の後側に隣接し且つヒーター102よりも高い位置で幅方向に横長に形成されたゴム製のゴム受け部103と、フレーム91に上下方向へ揺動可能に設けられた揺動プレート104と、を備えている。固定吸着パッド101は、吸引ポンプ101aに接続されている。
【0057】
揺動プレート104は、固定吸着パッド101、ヒーター102及びゴム受け部103の周囲を囲うと共にこれらの外周に沿って開口する開口部105が形成された枠板部106と、枠板部106の後端部から後下りに傾斜する下り傾斜部107と、枠板部106の後側の下面に設けられたヒンジ108と、を備えている。揺動プレート104は、フレーム91に設けられた揺動シリンダ109によって揺動される。なお、揺動プレート104が揺動していない状態のとき、枠板部106よりもゴム受け部103の頂点の方が高い位置にある。
【0058】
袋詰め機構110は、ワークWが投入される共に所定位置の開口した袋93の中まで進退可能にフレーム91に設けられているスコップ111と、フレーム91に設けられスコップ111を進退させるスコップ進退機構112と、スコップ111に設けられワークWを押し出すプッシャー113と、プッシャー113を進退させるプッシャー用シリンダ114と、を備えている。
【0059】
オイル塗布脱気機構115は、フレーム91に設けられたノズル用シリンダ116と、ノズル用シリンダ116に進退可能に設けられ袋93内まで進入する上下に薄いノズル117と、ノズル117に接続されオイルを送り出すオイルポンプ118と、ノズル117に接続され空気を吸引する吸引ポンプ119と、を備えている。オイルポンプ118と吸引ポンプ119とは、切り換え弁117aで切り換え可能とされている。なお、切換え弁117aを使用せず、オイルポンプ118と吸引ポンプ119とがそれぞれ独立したノズル117に接続されてもよい。
【0060】
シール機構120は、前述した構成要素のうち、搬送機構95と、袋受け機構100と、から構成される。また、フレーム91の下部には、シールされたワークW入りの袋93を、揺動させた揺動プレート104上を滑らせて回収する回収ボックス121が設けられている。
【0061】
次に梱包装置90の作用について説明する。
図16の(a)に示されるように、袋ストック部94(
図13参照)から想像線で示す搬送機構95の昇降吸着パッド97で袋93を吸着させて搬送する。実線で示す搬送機構95を一旦降下させて、固定吸着パッド101に袋93の下側を吸着させ、搬送機構95を上昇させることで袋93が開口する(袋セット工程)。ワークWが入ったスコップ111を袋93内に前進させ、さらにプッシャー113を前進させてワークWを袋93内に押し込み、プッシャー113を後退させる(ワーク押し込み工程)。
【0062】
図16の(b)に示されるように、スコップ111を後退させ、ノズル117を袋93内に前進させる(ノズル前進工程)。このとき、揺動プレート104の下り傾斜部107により、ワークWが転がり袋93の奥へ移動するので、ワークWが邪魔になることなく、ノズル117を袋93の入り口に容易に前進させることができる。搬送機構95を降下させ、ゴム受け部103とプレス部99との間でノズル117を挟み軽く抑える。これで袋93の入り口が閉じられる(袋閉じ工程)。さらにオイルポンプ119によりノズル117を介してオイルを袋93内に噴射する(オイル噴射工程)。
【0063】
このとき袋93の入り口が閉じられているので、オイルが外に漏れることがない。さらにゴム受け部103の頂点が枠板部106よりも高い位置にあるので、袋93内に入ったオイルがゴム受け部103で堰き止められて外に漏れ出ることを防止できる。このためオイルの飛散を防止して、無駄になるオイルを低減させることができるうえ、梱包状態を良好にすることができる。
【0064】
さらに、吸引ポンプ119で袋93内の空気を脱気する(脱気工程)。これにより、袋93内で複数のワークWが衝突して傷が付き易くなることを防止でき、製品化されたワークWの搬送を容易に行うことができる。さらに、脱気することで、オイルを袋93内全体に行きわたらせてムラをなくし、製品化されたワークWの防錆効果等を向上させることができる。
図16の(c)に示されるように、ノズル117を袋93から工程させる(ノズル後退工程)。
【0065】
図17の(a)に示されるように、搬送機構95をさらに降下させてプレス部99をヒーター102に押し付けて、袋93の入り口をシールする(シール工程)。(b)に示されるように、搬送機構95を上昇させ、揺動シリンダ109を稼働して揺動プレート104を揺動させ、袋詰めにより製品化されたワークWを滑らせて回収ボックス121(
図13参照)に回収させる(袋回収工程)。(c)に示されるように、揺動シリンダ109を稼働させ揺動プレート104を原点復帰させる(原点復帰工程)。
【0066】
次に本発明の効果を説明する。
かかる構成によれば、ワークWを収納する袋93を搬送する搬送機構95と、搬送された袋93を下から受ける袋受け機構100と、ワークWを袋に入れる袋詰め機構110と、袋93内にオイルを塗布すると共に脱気するオイル塗布脱気機構115と、袋93をシールするシール機構120と、を備えている。オイル塗布脱気機構115は、袋93内まで進入してオイルの塗布と脱気を行うノズル117を備えているので、ノズル117を袋93内に進入させ、搬送機構95と袋受け機構100とでノズル117と共に袋93の入口を挟んで塞いだ状態で、オイルを袋93内に塗布し、オイルの飛散を防止して無駄になるオイルを削減することができる。さらに、脱気することで袋93の上側と下側を密着させて袋93内でのワークWの移動を防止してワークW同士がぶつかることによる傷の発生を抑制しつつ、余分なオイルの回収し、梱包状態を汚れのない良好な状態にでき、短時間でワークWを梱包することができる。
【0067】
さらに、搬送機構95は、フレーム91に前後方向移動可能に且つ昇降可能に設けられ幅方向に長く形成された昇降本体部96と、昇降本体部96の下面に設けられ袋93を吸着する昇降吸着パッド97と、を備えている。袋受け機構100は、フレーム91に設けられ昇降吸着パッド97に対向する固定吸着パッド101と、固定吸着パッド101の後側に隣接し且つ固定吸着パッド101よりも低い位置で幅方向に横長に形成されたヒーター102と、を備えている。このため、昇降吸着パッド97で袋93の上側を吸着し、固定吸着パッドで袋93の下側を吸着して、袋93の入口を正確に閉じることができ、オイルの漏れを低減することができる。このため、オイルの飛散を防止して無駄になるオイルを削減し、梱包状態を汚れのない良好な状態にできる。さらに、ヒーター102は、固定吸着パッド101の後側に隣接し且つ固定吸着パッド101よりも低い位置で幅方向に横長に形成されているので、袋93の入口を弱い力で閉じた状態で袋93の下側がヒーター102に接触することがなく、ノズル117が袋93に進入した状態でのシールを防止して、梱包状態を汚れのない良好な状態にできる。
【0068】
さらに、搬送機構95は、昇降本体部96の下面に設けられたシリコン製のプレス部99を備え、袋受け機構100は、ヒーター102の後側に隣接し且つヒーター102よりも高い位置で幅方向に横長に形成されたゴム製のゴム受け部103を備えているので、搬送機構95を弱い力で下降させると、シリコン製のプレス部99とゴム製のゴム受け部103とを隙間なく密着させ、且つ弾性によりノズル117を袋93内に進入させた状態にできる。このため、オイルを袋93内に塗布したときに、オイルの飛散を防止して無駄になるオイルを削減することができ、梱包状態を汚れのない良好な状態にできる。
【0069】
さらに、ノズル117は、上下に薄く形成されているので、ノズル117を袋93に進入させ挟んだ状態で、シリコン製のプレス部99とゴム製のゴム受け部103とをより隙間なく密着させ、オイルの飛散を防止して無駄になるオイルを削減することができ、梱包状態を汚れのない良好な状態にできる。
【0070】
さらに、袋受け機構100は、フレーム91に幅方向を軸にして上下方向へ揺動可能に設けられた揺動プレート104を備え、この揺動プレート104は、固定吸着パッド101、ヒーター102及びゴム受け部103の周囲を囲うと共にこれらの外周に沿って開口する開口部105が形成された枠板部106と、枠板部106の後端部から後下りに傾斜する下り傾斜部107と、を備えている。シール工程の際、揺動プレート104の下り傾斜部107が傾斜しているので、袋93も傾斜し、袋93とヒーター102との接触面を最小限にできる。このため、ヒーター102がシール部以外に接触して袋93に穴が開くことを防止できる。さらに、袋回収工程の際、ヒーター102の周りを囲うように枠板部106があるので、袋93のヒーター102周辺部分を持ち上げて、ヒーター102から袋93を容易に引き離すことができる。さらに、枠板部103を略水平にして袋詰め機構110のスコップ111を袋93内に入れ易くし、且つプッシャーで押されたワークWが袋93に入ると下り傾斜部107によりワークWが転がり袋93の奥へ移動させることができる。
【0071】
さらに、揺動プレート104が揺動していない状態のとき、枠板部106よりもゴム受け部103の頂点の方が高い位置にある。このため、略水平にした枠板部106により袋詰め機構110のスコップ111を袋93内に進入させてワークを必要なタイミングで入れ易くした状態で、ゴム受け部103により袋93内のオイルが逆流して袋93の外にでることを防止できる。結果、梱包状態を汚れのない綺麗な状態にし、短時間でワークを梱包することができる。
【0072】
次に比較例に係る作業時間積み上げグラフと、実施例に係る作業時間積み上げグラフについて説明する。
図18に示されるように、従来の生産システムである(a)の比較例では、ワーク1本当り段取りに103.8秒、付随作業に44.4秒、付帯作業、イレギュラー対応に2.2秒要していた。この点、実施例の生産システムである(b)では、1本当り段取りに38.3秒、付随作業に32.9秒、付帯作業、イレギュラー対応に2.2秒と、大幅に工数を削減し、目標サイクルタイムの92.3秒もクリアされている。
【0073】
尚、実施例では、生産システム10は、加工装置20として複合加工装置を備えているが、これに限定されず、加工装置20は一種類の加工を行う加工装置、NCマシニングセンタ、プレス装置、鍛造装置など機械加工が施されていれば加工の種類は問わない。また、実施例では、生産システム10は、研削盤80を備えているが、研削盤80は無くても差し支えない。
【0074】
実施例では、熱処理装置30は、1つの焼入れ炉31に対して2つの焼戻し炉41としたが、これに限定されず、1つの焼入れ炉31に対して1つ、3つ、4つの焼入れ炉31としてもよい。
【0075】
実施例では、熱処理装置30の焼入れ炉31の加熱方法として、コイル33による高周波誘導加熱を採用したが、これに限定されず、電気式であれば集光加熱、電子加熱、レーザー加熱であっても差し支えない。
【0076】
実施例では、梱包装置90のプレス部99をシリコン製、ゴム受け部103をゴム製としたが、これに限定されず、弾性を有する合成樹脂製であれば他の材質であってもよい。
【0077】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
好ましくは、前記搬送機構は、前記フレームに前後方向移動可能に且つ昇降可能に設けられ幅方向に長く形成された昇降本体部と、前記昇降本体部の下面に設けられ前記袋を吸着する昇降吸着パッドと、を備え、
前記袋受け機構は、前記フレームに設けられ前記昇降吸着パッドに対向する固定吸着パッドと、前記固定吸着パッドの前記袋詰め機構と反対側に隣接し且つ前記固定吸着パッドよりも低い位置で幅方向に横長に形成されたヒーターと、を備えている。