(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006425
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】ビル情報表示システム及びビル情報表示方法
(51)【国際特許分類】
B66B 7/00 20060101AFI20220105BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B66B7/00 G
B66B3/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020108635
(22)【出願日】2020-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 学
(72)【発明者】
【氏名】吉川 敏文
(72)【発明者】
【氏名】三好 雅則
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】酒井 亮一
(72)【発明者】
【氏名】小池 幸裕
【テーマコード(参考)】
3F303
3F305
【Fターム(参考)】
3F303AA05
3F303CA16
3F303CB52
3F303EA05
3F303EA07
3F305BA01
3F305DA15
(57)【要約】
【課題】
本発明は、エレベーターやビル運用に関する現状の課題と改善策の効果をシミュレーションにより比較表示し、現状と予測結果を可視化するものである。
【解決手段】
本発明は、建物レイアウトモデルを複数生成する建物レイアウトモデル生成部104と、生成された複数の建物レイアウトモデルに基づいて、第1レイアウトモデルと、第2レイアウトモデルを生成する比較用レイアウトモデル生成部105と、生成された第1及び第2レイアウトモデルのそれぞれにシミュレーション実行条件を設定するシミュレーション実行条件生成部106と、シミュレーション実行条件に基づき、第1及び第2レイアウトモデル毎にシミュレーションを実行するシミュレーション実行部を備える。そして、第1レイアウトモデルでのシミュレーション結果と、第2レイアウトモデルでのシミュレーション結果とを表示部108に表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターやビル運用のシミュレーション結果を表示するビル情報表示システムであって、
同一建物の建物レイアウトモデルを複数生成する建物レイアウトモデル生成部と、
前記建物レイアウトモデル生成部が生成した前記複数の建物レイアウトモデルに基づいて、第1シミュレーションを実行するための第1レイアウトモデルと、第2シミュレーションを実行するための第2レイアウトモデルを生成する比較用レイアウトモデル生成部と、
前記比較用レイアウトモデル生成部で生成された前記第1レイアウトモデル及び前記第2レイアウトモデルのそれぞれにシミュレーション実行条件を設定するシミュレーション実行条件生成部と、
前記シミュレーション実行条件生成部で設定されたそれぞれのシミュレーション実行条件に基づき、前記第1レイアウトモデル及び前記第2レイアウトモデル毎にシミュレーションを実行するシミュレーション実行部と、
前記シミュレーション実行部で実行された前記第1レイアウトモデルでのシミュレーション結果に基づく第1可視化結果と、前記第2レイアウトモデルでのシミュレーション結果に基づく第2可視化結果とを表示する表示部を備えたことを特徴とするビル情報表示システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1レイアウトモデルは、エレベーター運用の現状を再現するシミュレーションを実行するための現状表示用レイアウトモデルであることを特徴とするビル情報表示システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記第2レイアウトモデルは、前記エレベーター運用の改善策効果を表示するためのシミュレーションを実行するための改善策効果表示用レイアウトモデルであることを特徴とするビル情報表示システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記表示部は、前記第1可視化結果と前記第2可視化結果とを同一画面上に表示することを特徴とするビル情報表示システム。
【請求項5】
請求項3において、
人数計測データ及び/又はエレベーター運行データからエレベーターの運行状態を診断する運行診断部を備え、
前記シミュレーション実行条件生成部は、前記運行診断部からの出力結果に基づいて、前記現状表示用レイアウトモデル及び前記改善策効果表示用レイアウトモデルのそれぞれにシミュレーション実行条件を設定することを特徴するビル情報表示システム。
【請求項6】
エレベーターやビル運用のシミュレーション結果を表示するビル情報表示システムであって、
同一建物の建物レイアウトモデルを複数生成する建物レイアウトモデル生成部と、
前記建物レイアウトモデル生成部が生成した前記複数の建物レイアウトモデルに基づいて、第1シミュレーションを実行するための第1レイアウトモデルと、第2シミュレーションを実行するための第2レイアウトモデルを生成する比較用レイアウトモデル生成部と、
前記比較用レイアウトモデル生成部で生成された前記第1レイアウトモデル及び前記第2レイアウトモデルのそれぞれにシミュレーション実行条件を設定し、設定されたそれぞれのシミュレーション実行条件に基づき、前記第1レイアウトモデル及び前記第2レイアウトモデル毎にシミュレーションを実行するシミュレーション実行部と、
前記シミュレーション実行部で実行したシミュレーション結果を保存するシミュレーション実行結果保存部と、
前記シミュレーション実行結果保存部に保存されたシミュレーション結果を再生するシミュレーション結果再生部と、
前記シミュレーション結果再生部が再生する前記第1レイアウトモデルでのシミュレーション結果に基づく第1可視化結果と、前記第2レイアウトモデルでのシミュレーション結果に基づく第2可視化結果とを表示する表示部を備えたことを特徴とするビル情報表示システム。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1レイアウトモデルは、エレベーター運用の現状を再現するシミュレーションを実行するための現状表示用レイアウトモデルであることを特徴とするビル情報表示システム。
【請求項8】
請求項7において、
前記第2レイアウトモデルは、前記エレベーター運用の改善策効果を表示するためのシミュレーションを実行するための改善策効果表示用レイアウトモデルであることを特徴とするビル情報表示システム。
【請求項9】
請求項6において、
前記表示部は、前記第1可視化結果と前記第2可視化結果とを同一画面上に表示することを特徴とするビル情報表示システム。
【請求項10】
エレベーターやビル運用のシミュレーション結果を表示するビル情報表示方法であって、
同一建物の建物レイアウトモデルを複数生成し、
生成された前記複数の建物レイアウトモデルに基づいて、第1シミュレーションを実行するための第1レイアウトモデルと、第2シミュレーションを実行するための第2レイアウトモデルを生成し、
前記第1レイアウトモデル及び前記第2レイアウトモデルのそれぞれにシミュレーション実行条件を設定し、
前記第1レイアウトモデル及び前記第2レイアウトモデルに設定されたそれぞれのシミュレーション実行条件に基づき、前記第1レイアウトモデル及び前記第2レイアウトモデル毎にシミュレーションを実行し、
前記第1レイアウトモデルでのシミュレーション結果に基づく第1可視化結果と、前記第2レイアウトモデルでのシミュレーション結果に基づく第2可視化結果とを表示部に表示するようにしたことを特徴とするビル情報表示方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記第1レイアウトモデルは、エレベーター運用の現状を再現するシミュレーションを実行するための現状表示用レイアウトモデルであることを特徴とするビル情報表示方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記第2レイアウトモデルは、前記エレベーター運用の改善策効果を表示するためのシミュレーションを実行するための改善策効果表示用レイアウトモデルであることを特徴とするビル情報表示方法。
【請求項13】
請求項10において、
前記表示部は、前記第1可視化結果と前記第2可視化結果とを同一画面上に表示することを特徴とするビル情報表示方法。
【請求項14】
請求項12において、
人数計測データ及び/又はエレベーター運行データからエレベーターの運行状態を診断し、
診断したエレベーターの運行状態の力結果に基づいて、前記現状表示用レイアウトモデル及び前記改善策効果表示用レイアウトモデルのそれぞれにシミュレーション実行条件を設定することを特徴するビル情報表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターやビル運用のシミュレーション結果を表示するビル情報表示システム及びビル情報表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルにおけるエレベーターの適切な運用や、エレベーター待ち時間の低減や混雑の緩和、使い勝手の改善に向けたリニューアル計画の策定にあたっては、エレベーターの運行状況やビル利用状況の現状把握あるいは予測することが必要である。さらには現状把握や予測を可視化することによって、ビルオーナーや管理者等の関係者と現状の課題や改善策について共有することが重要である。
【0003】
この現状把握や予測のための手段として、各種センサを用いた現状把握技術やシミュレーション技術を用いた予測手法が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、エレベーター乗降者の乗降履歴を分析し、エレベーターの使用状況の傾向を抽出し、可視化する技術が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、車両のシミュレーション技術として、複数回のシミュレーションの実行結果を比較して表示する技術が開示されている。
【0006】
さらに特許文献3には、エレベーターの台数、寸法及びサービス階を含むエレベーター仕様情報から自動的にエレベーターの路の場レイアウトを生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-246115号公報
【特許文献2】特開2010-097405号公報
【特許文献3】特開2019-081625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ビル運用における現状の課題や改善策の効果を把握するためには、改善前と改善後の両者の条件を入力してシミュレーションを行い、その実行結果の対比を行うことが必要である。具体的には、現状のフロア混雑を直接計測できるデータ(カメラ計測等)以外のデータ(エレベーター運行データや在館計画人数、ビル到着人数予測データ等)を使って現状の混雑状況を予測表示する場合や、比較条件(表示する階や表示方法、シミュレーション時間(時刻や表示速度)等)を変えて現状の混雑状況を表示する場合には、現状を可視化するシミュレーションを行い、改善後の予測シミュレーションとの比較が必要である。しかしながら、特許文献1では改善前と改善後を比較することについては、考慮されていなかった。
【0009】
また、特許文献2で開示されている方法では、車両制御ソフトウェアにおけるシミュレーション実行結果の対比表示を開示しているが、ビルにおけるシミュレーション条件前後条件の比較に関する技術は開示されていない。
【0010】
さらに、特許文献3においても、改善前と改善後を比較することについては、考慮されていなかった。
【0011】
本発明の目的は、上記課題を解決し、エレベーターやビル運用に関する現状の課題と改善策の効果をシミュレーションにより比較表示し、現状と予測結果を可視化する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、エレベーターやビル運用のシミュレーション結果を表示するビル情報表示システムであって、同一建物の建物レイアウトモデルを複数生成する建物レイアウトモデル生成部と、前記建物レイアウトモデル生成部が生成した前記複数の建物レイアウトモデルに基づいて、第1シミュレーションを実行するための第1レイアウトモデルと、第2シミュレーションを実行するための第2レイアウトモデルを生成する比較用レイアウトモデル生成部と、前記比較用レイアウトモデル生成部で生成された前記第1レイアウトモデル及び前記第2レイアウトモデルのそれぞれにシミュレーション実行条件を設定するシミュレーション実行条件生成部と、前記シミュレーション実行条件生成部で設定されたそれぞれのシミュレーション実行条件に基づき、前記第1レイアウトモデル及び前記第2レイアウトモデル毎にシミュレーションを実行するシミュレーション実行部と、前記シミュレーション実行部で実行された前記第1レイアウトモデルでのシミュレーション結果に基づく第1可視化結果と、前記第2レイアウトモデルでのシミュレーション結果に基づく第2可視化結果とを表示する表示部を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、エレベーターやビル運用のシミュレーション結果を表示するビル情報表示方法であって、同一建物の建物レイアウトモデルを複数生成し、生成された前記複数の建物レイアウトモデルに基づいて、第1シミュレーションを実行するための第1レイアウトモデルと、第2シミュレーションを実行するための第2レイアウトモデルを生成し、前記第1レイアウトモデル及び前記第2レイアウトモデルのそれぞれにシミュレーション実行条件を設定し、前記第1レイアウトモデル及び前記第2レイアウトモデルに設定されたそれぞれのシミュレーション実行条件に基づき、前記第1レイアウトモデル及び前記第2レイアウトモデル毎にシミュレーションを実行し、前記第1レイアウトモデルでのシミュレーション結果に基づく第1可視化結果と、前記第2レイアウトモデルでのシミュレーション結果に基づく第2可視化結果とを表示部に表示するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エレベーターやビル運用に関する現状の課題と改善策の効果をシミュレーションにより比較表示し、現状と予測結果を可視化する技術を提供することができる。その結果、課題と改善策効果の容易な把握を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施例に係るシステム構成図である。
【
図2】運行診断部103の動作を表すフローチャートである。
【
図3】建物レイアウトモデル生成部104の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図4】建物レイアウトモデル生成部104によって生成された建物レイアウトモデルの一例を示す図である。
【
図5】比較用レイアウトモデル生成部105の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図6】比較用レイアウトモデル生成部105によって生成された建物レイアウトモデルの一例を示す図である。
【
図7】シミュレーション実行条件生成部106の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図8】表示部108における運行診断結果の表示例を示す図である。
【
図9】表示部108に表示したシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図10】本発明の第2実施例に係るシステム構成図である。
【
図11】シミュレーション実行部1001の動作の一例を表すフローチャートである。
【
図12】表示部1005において表示される、現状表示および改善策の効果を可視化するための動画の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について添付の図面を参照しつつ説明する。同様の構成要素には同様の符号を付し、同様の説明は繰り返さない。
【0017】
本発明の各種の構成要素は必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、一の構成要素が複数の部材から成ること、複数の構成要素が一の部材から成ること、或る構成要素が別の構成要素の一部であること、或る構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複すること、などを許容する。
【実施例0018】
図1は本発明の第1実施例に係るシステム構成図である。第1実施例は、エレベーターシステム100に適用した例で説明する。エレベーターシステム100は、制御サーバ部101とデータ管理部102から構成される。
【0019】
制御サーバ部101は、運行診断部103と、建物レイアウトモデル生成部104と、比較用レイアウトモデル生成部105と、シミュレーション実行条件生成部106と、シミュレーション実行部107と、表示部108から構成される。本実施例の制御サーバ部101は、複数のシミュレーション結果を比較して表示するビル情報表示システムとして機能している。
【0020】
またデータ管理部102は、人数計測データ109と、エレベーター運行データ110と、要因および改善策データ111と、ビル情報データ112と、運行診断結果データ113と、シミュレーション用建物レイアウトモデルデータ114と、シミュレーション実行条件設定データ115を備えている。以下、各機能の詳細について説明する。
【0021】
運行診断部103は、人数計測データ109及び/又はエレベーター運行データ110からエレベーターの運行状態を診断する機能である。エレベーター待ち時間が当初の想定より長くなっている等、エレベーターの運行効率が低下していると判断した場合には、その要因と改善策を提案する。
【0022】
図2は運行診断部103の動作を表すフローチャートである。ステップS201において、エレベーター運行診断の実施要求が有か否かを判定する。運行診断の実行要求はビルオーナーやビル管理者等のユーザがWebブラウザ等のクライアントアプリ―ケーションを介して制御サーバ部101に要求する。
【0023】
運行診断の実施要求が有った場合(ステップS201のYes)は、ステップS202に進み、運行診断を実行するための対象となるエレベーター運行データ110を入力する。入力完了後、ステップS203へ進む。運行診断の実施要求が無い場合(ステップS201のNo)は、処理を終了する。
【0024】
ステップS203において、入力された人数計測データやエレベーター運行データを用いて運行効率低下現象の検出処理を実行する。運行効率低下現象とは、エレベーターの運行性能が計画時に要求された性能よりも低下している場合であり、例えば平均待ち時間や平均乗り場呼び継続時間が長い、長い待ち時間の発生比率が多い、平均乗車時間が長い、人の積み残しが多く発生している、行列が発生している、到着したかごに既に多くの人が乗車しており乗り込めない状況が多く発生している等が挙げられる。次にステップS204に進む。
【0025】
ステップS204において、運行効率低下現象の検出処理の結果、診断対象としているエレベーターに運行効率低下現象が検出されたかどうかを判定する。エレベーターに運行効率低下現象が検出された場合(ステップS204のYes)はステップS205に進み、エレベーターに運行効率低下現象が検出されない場合(ステップS204のNo)は、処理を終了する。
【0026】
ステップS205では、運行効率低下現象が検出された場合において、検出された運行効率低下現象に対する要因の判定を実施する。例えば、平均待ち時間が長いという運行効率低下現象に対して、その時間のエレベーター利用人数が非常に多い、ビルの多数の階でエレベーターを利用する人が多いため、乗り場呼び停止回数が多い、出勤時に多数の人がかごに乗車するため、かご呼び(行先階呼び)による停止回数が多いなどが判定要因となる。参照する要因のデータは、
図1の要因および改善策データ111の中に蓄積されたものを参照する。このデータには、複数のビルやエレベーターにおける運行効率低下現象に対する要因分析の結果データが蓄積されている。
【0027】
ステップS206において、ステップS205にて判定された要因に基づく改善策の候補を選定する。ここで選定される改善策は、以下に示す3タイプの改善策のカテゴリーの中より選定する。
【0028】
1)エレベーター運行制御の変更または追加
2)利用者に向けたエレベーターの利用方法/操作方法に対する情報の通知
3)エレベーターの利用状態の変更/制限(例えば、利用時間の変更など)
上記の3タイプに属する各改善策は、
図1に示した要因および改善策データ111の中に要因と関連付けられたデータとして蓄積されている。このデータには、過去に実施した多数の改善策が格納されている。また、エレベーターの利用状態の変更/制限、例えば利用時間の変更を提案する場合には、ビル利用者の出勤時間をシフトするための移動条件を設定する。シフトの方法としては、例えば公知の方法により出勤者の所属するオフィスがある階に応じて出勤時間を変更し、その条件をシミュレーションの入力条件とする方法などが考えられる。
【0029】
そして、ステップS207において、運行診断結果を運行診断結果データ113として保存する。運行診断結果データ113には、例えば診断対象としたビルの情報、および診断対象期間、運行効率低下事象、要因、改善策の候補、低下事象発生時間帯の情報が含まれる。
【0030】
建物レイアウトモデル生成部104は、シミュレーション実行条件となる同一建物の建物レイアウトモデルを複数生成する機能であり、例えば特許文献3で示した方法で実現可能である。
図3は建物レイアウトモデル生成部104の動作の一例を表すフローチャートである。
【0031】
ステップS301において、ビル情報データ112に保存されたビルに関する情報データから、エレベーター台数、寸法、サービス階、階高を取得する。
【0032】
ステップS302において、ステップS301で取得した情報に基づいてエレベーター台数および寸法から設置方法を決定する。
【0033】
ステップS303において、ステップS302で決定されたエレベーター台数および寸法、設置方法からホール長を算出する。
【0034】
ステップS304において、ステップS303で算出されたホール長に基づいてホール幅、通路長、通路幅を決定する。
【0035】
ステップS305において、基準階から各階までの高さを、階高から算出する。階高はひとつ上の階あるいはサービス階との相対距離であるので、基準階からの高さは、基準階から、高さを求めたい階のひとつ下の階までの階高の総和で求められる。
【0036】
ステップS306において、ステップS301からステップS304までで取得済みのパラメータを入力として、各階のエレベーター乗り場レイアウトモデルを生成し、前記生成した各階のエレベーター乗り場レイアウトモデルを、ステップS305で算出した各階の高さに応じて配置することで、複数階のビルレイアウトモデルを生成し、出力する。
【0037】
上記では、建物情報からシミュレーションレイアウトモデル情報を自動生成する方法を例に挙げて機能を説明したが、人手によってCAD図面を入力としてレイアウトモデルを作成してもよい。
【0038】
図4は建物レイアウトモデル生成部104によって生成された建物レイアウトモデルの一例を示す図である。建物レイアウトモデルには、階床401と、複数のエレベーター402と、各エレベーター402に設置されたエレベータードア403と、各階床401間の高さとなる階高404の情報を含んでいる。
【0039】
比較用レイアウトモデル生成部105は、建物レイアウトモデル生成部104によって生成された複数の建物レイアウトモデルに基づいて、現状と改善策の効果を可視化するシミュレーションを実行し、さらにはシミュレーション結果をユーザに提示するための建物レイアウトモデルを生成する。すなわち、現状を表示するシミュレーションを実行するための建物レイアウトモデル(第1レイアウトモデル)と、改善策の効果を表示するシミュレーションを実行するための建物レイアウトモデル(第2レイアウトモデル)を生成する。さらに比較用レイアウトモデル生成部105は、両者のシミュレーション結果を1つのプロセス上で同期して実行することを可能とするための、両者のモデルを一つにしたシミュレーションモデルを生成する。
【0040】
図5は比較用レイアウトモデル生成部105の動作の一例を表すフローチャートである。
【0041】
ステップS501において、建物レイアウトモデル生成部104によって生成された建物レイアウトモデルを入力する。
【0042】
ステップS502において、入力レイアウトモデルを対策前、すなわち現状をシミュレーションするための建物レイアウトモデルとしてコピーする。
【0043】
ステップS503において、各階平面位置を所定の距離だけずらして、対策後シミュレーション用の建物レイアウトモデルを生成する。
【0044】
ステップS504において、対策前の建物レイアウトモデルと統合して、比較用建物レイアウトモデルを生成する。
【0045】
図6は比較用レイアウトモデル生成部105によって生成された建物レイアウトモデルの一例を示す図である。比較用レイアウトモデルには、エレベーター運用の現状を再現するシミュレーション(第1シミュレーション)を実行するための現状表示用レイアウトモデル601(第1レイアウトモデル)と、エレベーター運用の改善策効果を表示するためのシミュレーション(第2シミュレーション)を実行するための改善策効果表示用レイアウトモデル602(第2レイアウトモデル)を含んでいる。比較用建物レイアウトモデルは、シミュレーション用建物レイアウトモデルデータ114に保存される。
【0046】
シミュレーション実行条件生成部106は、運行診断部103からの出力結果に基づいて生成したシミュレーション実行条件を、比較用レイアウトモデル生成部105によって生成された比較用レイアウトモデル(現状表示用レイアウトモデル601,改善策効果表示用レイアウトモデル602)に設定する。
【0047】
図7はシミュレーション実行条件生成部106の動作の一例を表すフローチャートである。
【0048】
ステップS701において、比較用レイアウトモデル生成部105によって生成された比較用レイアウトモデルをコピーする。
【0049】
ステップS702において、比較用レイアウトモデルのうち、現状表示用レイアウトモデル601に、現状を再現するシミュレーションを実行するためのシミュレーション実行条件を設定する。
【0050】
ステップS703において、比較用レイアウトモデルのうち、改善策効果表示用レイアウトモデル602に、改善策の効果を予測するシミュレーションを実行するためのシミュレーション実行条件を設定する。
【0051】
ステップS704において、運行診断部103によって診断されたすべての改善策案について、比較用レイアウトモデルをコピーしてシミュレーション実行条件を設定したか否かを判定する。シミュレーション実行条件が設定済みの場合(ステップS704のYes)は処理を終了し、シミュレーション実行条件が設定済みで無い場合(ステップS704のNo)は、ステップS701に戻り処理を繰り返す。
【0052】
シミュレーション実行条件生成部106における処理により、比較用レイアウトモデルを含む現状と改善策による効果を同時に比較表示するためのシミュレーション実行条件を設定したすべてのデータが生成され、シミュレーション実行条件設定データに保存される。
【0053】
以上説明した機能とデータを有するエレベーターシステム100は、例えばWebクライアントからのリクエストを受け付けて、シミュレーション実行条件が設定された比較用レイアウトモデルを入力としてシミュレーション処理を実行する。そして、表示部108において運行診断結果の表示、およびシミュレーションの実行結果を表示する。
【0054】
運行診断結果の表示画面801および後述するシミュレーション結果が、ビル管理者に表示出力される内容である。
図8は表示部108における運行診断結果の表示例を示す図である。
【0055】
運行診断結果として、診断対象のビルに対して、検出した運行効率低下現象の結果802が表示出力されている。この例では、検出した運行効率低下現象として、例えば「出勤時間帯にて平均待ち時間が長い」という結果が表示される。さらに運行効率低下現象に対する要因の判定結果803が表示される。この例では、「出勤時間帯におけるエレベーター利用人数が多い」ことが要因と判定されている。このように対象のビルで課題となっている現象と要因を提示することで、ビルオーナー、ビル管理者に状況を明確に示すことができる。
【0056】
続いて、運行効率低下現象とその要因に基づいて、そのビルおよび対象のエレベーターで実施すると良い改善策候補のリスト804を表示する。
【0057】
この改善策候補のリスト804の各項目に対応して、シミュレーションの実行を制御するための項目805が存在する。ビルオーナー、ビル管理者によるシミュレーションの実行および結果表示の選択は、実施の判定選択ボタン806を押すことで選択できるようになっている。ここで選択された結果がシミュレーション実行部107に送信されて、選択された現在の状況と改善策の効果を表示すためのシミュレーションの実行処理が実施される。シミュレーション実行部107は、シミュレーション実行条件生成部106で設定されたシミュレーション実行条件に基づき、現状表示用レイアウトモデル601及び改善策効果表示用レイアウトモデル602毎にシミュレーションを実行する。
【0058】
図9は表示部108に表示したシミュレーション結果の一例を示す図である。
図9に示した表示例は、実施の判定選択ボタン806(
図8)を押下することによって、選択した改善策に対応した現状の再現と改善策の効果を予測したシミュレーション結果が表示される。本実施例では、建物レイアウトモデルにおいて、人やエレベーターといった移動する移動体の移動状態を動画化して表示部108に表示する。
【0059】
例えば、比較用レイアウトモデルに基づいて現状の再現と改善策の効果を予測するシミュレーションを行った結果が、人の流れを可視化した結果901として表示される。また、表示画面には、シミュレーション制御ボタン902を設け、シミュレーションの開始あるいはリセット、一時停止の制御を可能としてもよい。また、マウス操作等により、表示する視点変更を可能としてもよい。さらにはエレベーターの運行状況903や現状の再現結果と改善策の効果予測を数値で表したもの、例えばエレベーター待ち時間などの時間変化をグラフ904として表示してもよい。
【0060】
本実施例の表示部には、シミュレーション実行部107で実行された現状表示用レイアウトモデル601でのシミュレーション結果に基づく可視化結果(第1可視化結果)と、改善策効果表示用レイアウトモデル602でのシミュレーション結果に基づく可視化結果(第2可視化結果)とを同一画面上に表示する。可視化結果の表示にあたっては、必ずしも同一画面上に表示する必要はない。例えば、表示部を複数用意し、それぞれの可視化結果が対比できるように並べて配置するようにしても良い。
【0061】
本実施例によれば、エレベーターやビル運用に関する現状の課題と改善策の効果をシミュレーションにより比較表示することで、ユーザに現状と予測結果を視覚的にわかりやすく提示することできる。その結果、課題と改善策効果の容易な把握を実現することが可能になる。
第1実施例との相違は以下の通りである。第1実施例においては、現状の課題と改善策の効果を表示するためのシミュレーションの起動あるいは実行の制御は、ユーザによる実施の判定選択ボタン806あるいは、シミュレーション制御ボタン902の押下により行われる。これに対し第2実施例においては、シミュレーションの起動および実行は、ユーザの要求に先立って予め行われ、その結果をサーバに保存しておく。そして、ユーザにはユーザからの要求時にシミュレーション画面をキャプチャした動画を提示し、ユーザは動画の再生および一時停止、リセットの動作をユーザによる実施の判定選択ボタン806あるいは、シミュレーション制御ボタン902によって行うものである。
以下、第2実施例について、第1実施例との相違点を中心に説明する。シミュレーション実行部1001は、現状と改善策の効果を可視化するためのシミュレーションを実行すると同時にシミュレーション画面をキャプチャし、表示部で再生するための動画を作成する処理を行う。
ステップS1101において、現状再現表示のシミュレーション(第1シミュレーション)を実行するための、建物レイアウトモデル(第1レイアウトモデル)およびシミュレーション実行条件を設定する。
ステップS1102において、改善策効果予測表示のシミュレーション(第2シミュレーション)を実行するための、建物レイアウトモデル(第2レイアウトモデル)およびシミュレーション実行条件を設定する。
ステップS1103において、表示のための視点を設定する。ステップS1103は、現状あるいは改善策案についてシミュレーション実行結果を並べて表示した際に、同一視点になるようにするための処理である。
ステップS1106において、現状を再現するシミュレーション結果画面、および現状と比較して表示する改善策効果を可視化するシミュレーション結果画面の各フレームに同じ時刻情報を付与する。
ステップS1108において、すべての現状再現表示および改善策の効果予測表示の組み合わせについてシミュレーション実行済みか否かを判定して、処理を終了するか、繰り返すかを決定する。シミュレーション実行済みの場合(ステップS1108のYes)は、処理を終了し、シミュレーション実行が済んでいない場合(ステップS1108のNo)は、ステップS1101に戻り処理を繰り返す。
本実施例のシミュレーション実行部1001では、比較用レイアウトモデル生成部105で生成されたエレベーター運用の現状を再現するシミュレーションを実行するための現状表示用レイアウトモデル及びエレベーター運用の改善策効果を表示するためのシミュレーションを実行するための改善策効果表示用レイアウトモデルのそれぞれにシミュレーション実行条件を設定し、設定されたそれぞれのシミュレーション実行条件に基づき、現状表示用レイアウトモデル及び改善策効果表示用レイアウトモデル毎にシミュレーションを実行する。
シミュレーション実行結果保存部1002では、この現状表示および改善策の効果表示を同時におこなうために実行した、同じ時刻情報が付与されたシミュレーション実行結果を保存する。シミュレーション実行結果保存部1002は、シミュレーション実行部1001で実行されたシミュレーション結果をシミュレーション結果データ1003として、データ管理部102に保存する。
本実施例によれば、エレベーターやビル運用に関する現状の課題と改善策の効果をシミュレーションにより比較表示することで、ユーザに現状と予測結果を視覚的にわかりやすく提示することできる。その結果、課題と改善策効果の容易な把握を実現することが可能になる。
また、本実施例によれば、シミュレーションの起動および実行が、ユーザの要求に先立って予め行われ、その結果をサーバに保存しておくようにしているので、シミュレーションによる比較結果を早期にユーザに提供することができる。
なお、本発明は、上述した実施例に限定するものではなく、様々な変形例が含まれる。上述した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定するものではない。