(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064266
(43)【公開日】2022-04-25
(54)【発明の名称】半導体光素子及び半導体光装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/227 20060101AFI20220418BHJP
H01S 5/026 20060101ALI20220418BHJP
H01S 5/343 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
H01S5/227
H01S5/026 616
H01S5/343
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020209512
(22)【出願日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2020172696
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝田 隼人
(72)【発明者】
【氏名】中村 厚
(72)【発明者】
【氏名】山内 俊也
(72)【発明者】
【氏名】浅倉 秀明
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA05
5F173AB03
5F173AB13
5F173AD13
5F173AD14
5F173AH14
5F173AJ23
5F173AK21
5F173AR36
5F173AR65
5F173MA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高周波特性の向上を目的とする。
【解決手段】半導体光素子10は、凸部20を有する半導体基板16と、多重量子井戸層24Bと、中間部の上で第1方向にストライプ状に延びる半導体層26Bと、第2方向の両側でメサストライプ構造22の側面に接触する半絶縁性半導体層45と、半導体基板16の、凸部20とは反対の面に位置する第1電極28と、メサストライプ構造22の上端面に位置するメサ電極40と、メサ電極40から第2方向に延びる引出電極42と、引出電極42に接続するパッド電極44と、を含む第2電極38と、第2方向に凸部20の隣で半導体基板16の上面に電気的に接続して半絶縁性半導体層45から露出する第1部分48と、パッド電極44の隣に非接触で位置して第1部分48の少なくとも一部と連続一体化した第2部分50と、を含む金属膜と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向にストライプ状に延びるメサストライプ構造の下端部を構成する凸部を有する半導体基板と、
前記メサストライプ構造の中間部を構成するように、前記凸部の上で前記第1方向にストライプ状に延びる多重量子井戸層と、
前記メサストライプ構造の上端部を構成するように、前記中間部の上で前記第1方向にストライプ状に延びる半導体層と、
前記第1方向に直交する第2方向の両側で前記メサストライプ構造の側面に接触する半絶縁性半導体層と、
前記半導体基板の、前記凸部とは反対の面に位置する第1電極と、
前記メサストライプ構造の上端面に位置するメサ電極と、前記メサ電極から前記第2方向に延びる引出電極と、前記引出電極に接続するパッド電極と、を含む第2電極と、
前記第2方向に前記凸部の隣で前記半導体基板の上面に電気的に接続して前記半絶縁性半導体層から露出する第1部分と、前記パッド電極の隣に非接触で位置して前記第1部分の少なくとも一部と連続一体化した第2部分と、を含む金属膜と、
を有する半導体光素子。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体光素子であって、
前記金属膜の前記第1部分は、前記第1方向に前記引出電極の隣に位置する半導体光素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体光素子であって、
前記金属膜の前記第2部分は、前記第1方向及び前記第2方向に、前記パッド電極の隣に位置する半導体光素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体光素子であって、
前記半絶縁性半導体層は、前記引出電極及び前記パッド電極の直下にも配置されている半導体光素子。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体光素子であって、
前記引出電極及び前記パッド電極と前記半導体基板の間に介在する樹脂層をさらに有する半導体光素子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体光素子であって、
前記半絶縁性半導体層は、前記金属膜の前記第2部分の少なくとも一部の直下にも配置されている半導体光素子。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体光素子であって、
前記金属膜の前記第1部分は、前記第2方向に前記凸部の両側に位置する一対の第1部分を含み、
前記第2部分は、前記一対の第1部分の一方と連続一体的になっている半導体光素子。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体光素子であって、
前記半絶縁性半導体層は、前記一対の第1部分の他方の一部の直下にも配置されている半導体光素子。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の半導体光素子であって、
前記メサストライプ構造は、変調器を構成する半導体光素子。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体光素子であって、
前記変調器と、半導体レーザと、前記変調器と前記半導体レーザを光学的に接続する接続導波路と、がモノリシックに集積されている半導体光素子。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体光素子であって、
前記金属膜の前記第1部分は、前記接続導波路にも隣接している半導体光素子。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の半導体光素子であって、
前記第1方向に前記半導体レーザとは反対方向に、前記変調器に光学的に接続されて延びる出射導波路をさらに備える半導体光素子。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体光素子であって、
前記金属膜の前記第1部分は、前記出射導波路部にも隣接している半導体光素子。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の半導体光素子と、
前記半導体光素子が搭載されるキャリアと、
を備える半導体光装置。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体光装置であって、
前記キャリアは、シグナル配線、グランドパターン及び終端抵抗器を備え、
前記グランドパターンは、前記半導体光素子の前記第1電極と、前記終端抵抗器の一端に電気的に接続され、
前記シグナル配線は、前記金属膜の前記第2部分の直上を通る第1シグナルワイヤで、前記半導体光素子の前記パッド電極に電気的に接続され、
前記半導体光素子の前記パッド電極は、第2シグナルワイヤで前記終端抵抗器の他端に電気的に接続され、
前記変調器及び前記終端抵抗器は、並列接続されている半導体光装置。
【請求項16】
請求項15に記載の半導体光装置であって、
前記グランドパターンは、前記シグナル配線を挟むように配置された第1グランドパターン及び第2グランドパターンを含み、
前記第1グランドパターン及び前記第2グランドパターンのそれぞれは、グランドワイヤで前記金属膜の前記第2部分に接続されている半導体光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光素子及び半導体光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル端末やインターネットなどの通信機器の普及に伴い、光モジュールに高速化及び大容量化が求められている。半導体レーザなどの発振器から出射される連続光の変調には、電界吸収型変調器(EA(Electro-Absorption)変調器)が使用される。特許文献1には、埋め込みヘテロ構造(Buried Hetero structure)を有するEA変調器が開示されている。特許文献2には、EA変調器に電気信号を伝達するためのワイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-19053号公報
【特許文献2】特開2006-128545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
EA変調器の高周波特性の向上のためには、寄生容量の低減が求められる。そのために、埋め込み層厚を厚くすることは有効だが、その厚さには限界がある。また、ワイヤの寄生インダクタンスが高いと、高周波特性が劣化する。
【0005】
本発明は、高周波特性の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
半導体光素子は、第1方向にストライプ状に延びるメサストライプ構造の下端部を構成する凸部を有する半導体基板と、前記メサストライプ構造の中間部を構成するように、前記凸部の上で前記第1方向にストライプ状に延びる多重量子井戸層と、前記メサストライプ構造の上端部を構成するように、前記中間部の上で前記第1方向にストライプ状に延びる半導体層と、前記第1方向に直交する第2方向の両側で前記メサストライプ構造の側面に接触する半絶縁性半導体層と、前記半導体基板の、前記凸部とは反対の面に位置する第1電極と、前記メサストライプ構造の上端面に位置するメサ電極と、前記メサ電極から前記第2方向に延びる引出電極と、前記引出電極に接続するパッド電極と、を含む第2電極と、前記第2方向に前記凸部の隣で前記半導体基板の上面に電気的に接続して前記半絶縁性半導体層から露出する第1部分と、前記パッド電極の隣に非接触で位置して前記第1部分の少なくとも一部と連続一体化した第2部分と、を含む金属膜と、を有する。
【0007】
凸部の隣にある第1部分には半絶縁性半導体層が無いので、メサ電極の寄生容量を減らすことができる。また、パッド電極への電気的接続にワイヤを使用したときに、パッド電極の隣にある第2部分は、ワイヤの寄生インダクタンスの低減に寄与する。これらにより、高周波特性の向上が可能になる。
【0008】
半導体光装置は、前記半導体光素子と、前記半導体光素子が搭載されるキャリアと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る半導体光素子の平面図である。
【
図2】
図1に示す半導体光素子のII-II線断面図である。
【
図3】
図1に示す半導体光素子のIII-III線断面図である。
【
図4】
図1に示す半導体光素子のIV-IV線断面図である。
【
図5】
図1に示す半導体光素子のV-V線断面図である。
【
図6】
図1に示す半導体光素子のVI-VI線断面図である。
【
図7】第1の実施形態に係る半導体光装置の平面図である。
【
図9】第2の実施形態に係る半導体光素子の平面図である。
【
図10】
図9に示す半導体光素子のX-X線断面図である。
【
図11】
図9に示す半導体光素子のXI-XI線断面図である。
【
図12】第3の実施形態に係る半導体光素子の平面図である。
【
図13】
図12に示す半導体光素子のXIII-XIII線断面図である。
【
図14】
図12に示す半導体光素子のXIV-XIV線断面図である。
【
図15】第3の実施形態に係る半導体光装置の平面図である。
【
図16】第4の実施形態に係る半導体光素子の平面図である。
【
図17】
図16に示す半導体光素子のXVII-XVII線断面図である。
【
図18】第4の実施形態に係る半導体光装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。全図において同一の符号を付した部材は同一又は同等の機能を有するものであり、その繰り返しの説明を省略する。なお、図形の大きさは倍率に必ずしも一致するものではない。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る半導体光素子の平面図である。
図2は、
図1に示す半導体光素子のII-II線断面図である。半導体光素子10は、変調器12単体であってもよいが、半導体レーザ14及び変調器12が一体的に集積されている変調器集積半導体レーザである。ベースとなる半導体基板16に、半導体レーザ14、接続導波路18及び変調器12が集積されている。半導体基板16は、第1導電型(例えばn型)の半導体からなる。
【0012】
図3は、
図1に示す半導体光素子10のIII-III線断面図である。
図4は、
図1に示す半導体光素子10のIV-IV線断面図である。
図5は、
図1に示す半導体光素子10のV-V線断面図である。
図6は、
図1に示す半導体光素子10のVI-VI線断面図である。
【0013】
[半導体基板]
半導体基板16(例えばn-InP基板)は、凸部20を有する。凸部20は、第1方向D1にストライプ状に延びるメサストライプ構造22の下端部を構成する。メサストライプ構造22は、半導体レーザ14から変調器12に至る。
【0014】
[多重量子井戸層]
半導体光素子10は、半導体レーザ14及び変調器12に、多重量子井戸層24(24A,24B)を有する。多重量子井戸層24は、凸部20の上で第1方向D1にストライプ状に延びる。多重量子井戸層24は、メサストライプ構造22の中間部を構成する。
【0015】
[半導体層]
半導体光素子10は、半導体層26(26A,26B,26C)を有する。半導体層26は、第2導電型(例えばp型)の半導体からなる。半導体層26(例えばp-InP層)は、メサストライプ構造22の中間部の上で第1方向D1にストライプ状に延びる。半導体層26は、メサストライプ構造22の上端部を構成する。
【0016】
[第1電極]
半導体光素子10は、第1電極28を有する。第1電極28は、半導体基板16の、凸部20とは反対の面(裏面)に位置する。第1電極28は、半導体基板16の裏面に、ほぼ全面を覆うように設けられている。第1電極28は、半導体基板16と同電位になる。他の層が両者間に介在しても、それが半導体基板16と同じ導電型の半導体であればよい。
【0017】
[半導体レーザ]
メサストライプ構造22の一部は、半導体レーザ14を構成する。半導体レーザ14は、変調器12に向けて連続光を出射するようになっている。半導体レーザ14の後方(変調器12とは反対側)であって、半導体光素子10の後方端面には、図示しない誘電体高反射膜が形成されている。
【0018】
半導体レーザ14は、DFB(Distributed Feedback)レーザ、FP(Fabry-Perot)レーザ、DBR(Distributed Bragg Reflector)レーザ及びDR(Distributed Reflector)レーザのいずれであってもよく、1.3μm帯又は1.55μm帯で発振するようになっている。
【0019】
半導体レーザ14は、多重量子井戸層24Aと、その上に設けられた回折格子層30を備えている。回折格子層30の格子間およびその上には半導体層26A(クラッド層)が設けられている。なお、図示はしていないが多重量子井戸層24Aの上下にはそれぞれ光閉じ込め層が設けられている。半導体層26Aの上には図示しないコンタクト層が設けられる。
【0020】
[変調器]
メサストライプ構造22の一部は、変調器12を構成する。変調器12は、電界吸収型変調器(EA変調器)及びマッハツェンダ変調器(MZ変調器)のいずれであってもよい。多重量子井戸層24Bの上下にはそれぞれ光閉じ込め層(図示せず)が設けられている。多重量子井戸層24Bは、電界が印加されると、半導体レーザ14の発振波長に対応した光(出射光)を吸収するようになっている。
【0021】
多重量子井戸層24Bの上には半導体層26B(クラッド層)が配置されている。半導体層26Bは、半導体層26Aと同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0022】
変調器12に入光した連続光は、変調器12にて強度変調され、2値や4値等の変調光信号に変換される。変調器12から出射された変調光信号は前方端面から出射される。前方端面付近に、他の構造(例えば絶縁性のInPなどを配置した窓構造)が備えられてもよい。前方端面には図示しない誘電体無反射膜が形成される。
【0023】
[接続導波路]
メサストライプ構造22の一部は、接続導波路18を構成する。接続導波路18は、変調器12と半導体レーザ14を光学的に接続する。変調器12と、半導体レーザ14と、変調器12と半導体レーザ14を光学的に接続する接続導波路18と、がモノリシックに集積されている。半導体レーザ14、接続導波路18及び変調器12は、光学的に直列で接続されている。接続導波路18は、半導体レーザ14の出射光を変調器12に伝達するようになっている。
【0024】
接続導波路18は、多重量子井戸層24に連続するコア層32を備えている。コア層32は、半導体からなり、半導体レーザ14の出射光を吸収しない層(例えばバルク層)である。コア層32の上下には光閉じ込め層を配置してもよい。
【0025】
コア層32の上には半導体層26C(クラッド層)が配置されている。半導体層26Cは、半導体レーザ14の半導体層26Aと同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。ただし、
図2に示すように、半導体層26Cは、半導体層26Aよりも薄い。これは変調器12と半導体レーザ14との間の電気アイソレーションを高めるためである。
【0026】
[半導体レーザの電極]
半導体レーザ14では、メサストライプ構造22の上に、レーザ電極34がある。レーザ電極34は、図示しないコンタクト層と電気的かつ物理的に接続している。レーザ電極34と第1電極28との間に電界が印加(電流を注入)されることで、連続光が発振される。ここでは1.3μm帯で発振するように、多重量子井戸層24Aの組成波長および回折格子層30の格子間隔が設定されている。なお、
図6に示すように、接続導波路18では、第1電極28と対向する電極は存在せず、メサストライプ構造22を含み全体的に酸化膜36で覆われている。
【0027】
[第2電極]
変調器12は、第2電極38を有する。第2電極38は、全体的に同じ材料及び同じ構造で構成してもよい。第2電極38は、メサストライプ構造22の上端面に位置するメサ電極40を含む。メサ電極40は、長方形状になっている。メサ電極40は、半導体層26Bの上に配置され、図示しないコンタクト層と電気的かつ物理的に接続されている。メサ電極40と半導体層26B(クラッド層)は、同電位となっている。他の層が両者間に介在しても、それが半導体層26Bと同じ導電型の半導体であればよい。メサ電極40と第1電極28との間に逆バイアスを印加することで、変調器12で光吸収が行われる。
【0028】
第2電極38は、メサ電極40から第2方向D2に延びる引出電極42を含む。引出電極42は、第1方向D1にメサ電極40よりも細い幅を有する。第2電極38は、引出電極42に接続するパッド電極44を含む。パッド電極44は、引出電極42よりも第1方向D1に広い幅を有する。パッド電極44の平面形状は、円、四角形、角丸四角形及び楕円のいずれであってもよい。
【0029】
[半絶縁性半導体層]
半導体光素子10は、半絶縁性半導体層45(例えばFe-InP層)を有する。半絶縁性半導体層45は、メサストライプ構造22の両側に設けられている。半絶縁性半導体層45は、メサストライプ構造22の上面を除いて設けられている。半絶縁性半導体層45は、第1方向D1に直交する第2方向D2の両側で、メサストライプ構造22の側面に接触する。半絶縁性半導体層45は、メサストライプ構造22より高くなっており、例えば半導体層26よりも高くなっている。半導体レーザ14及び接続導波路18では、メサストライプ構造22の両側の領域は、半絶縁性半導体層45で埋め込まれている。
【0030】
半絶縁性半導体層45は、
図4に示すように、引出電極42及びパッド電極44の直下にも配置されている。半絶縁性半導体層45と第2電極38(メサ電極40を除く)との間には、酸化膜36が配置されている。半絶縁性半導体層45は、引出電極42及びパッド電極44の直下では、メサストライプ構造22の隣接位置よりもさらに高くなっている。半絶縁性半導体層45があることで、引出電極42及びパッド電極44を半導体基板16(又は第1電極28)から離すことができる。これにより、引出電極42及びパッド電極44の寄生容量を低減することができる。
【0031】
変調器12では、引出電極42及びパッド電極44の直下を除くと、半絶縁性半導体層45は、メサストライプ構造22に隣接する領域のみに設けられている(
図5)。つまり、半絶縁性半導体層45は、メサストライプ構造22から離れた領域では、半導体基板16との重複を避けている。これにより、メサ電極40と半導体基板16との間に低誘電率の空気層が介在するので、メサ電極40の寄生容量を低減することができる。寄生容量の低減によって、広帯域化を図ることができる。なお、広帯域化を図るには、半絶縁性半導体層45を完全に無くすことが好ましいが、多重量子井戸層24が露出することは信頼性の観点で好ましくない。本実施形態は、信頼性を保ちつつ広帯域化を図ることが可能となる。
【0032】
[金属膜]
半導体光素子10(変調器12)は、金属膜46を有する。金属膜46は、半導体基板16の、半絶縁性半導体層45が設けられていない領域に形成されている。金属膜46があることで、半導体基板16は空気に触れなくなり、信頼性に優れる。
【0033】
金属膜46は、第1部分48を含む。
図5に示すように、第1部分48は、第2方向D2に凸部20の隣で、半導体基板16の上面に電気的に接続(接触)している。第1部分48は、
図1に示すように、第1方向D1に引出電極42の隣に位置する。一対の第1部分48が、第2方向D2に凸部20の両側に位置する。第1部分48は、半絶縁性半導体層45から露出している。つまり、第1部分48の上には半絶縁性半導体層45が存在しない。そのため、メサ電極40の寄生容量を低減することができる。
【0034】
金属膜46は、第2部分50を含む。第2部分50は、一対の第1部分48の一方(
図1の右側)と連続一体的になっている。第2部分50は、第1部分48の少なくとも一部と連続一体化している。第2部分50は、パッド電極44の隣に非接触で位置している。第2部分50は、第1方向D1及び第2方向D2に、パッド電極44の隣に位置する。なお、第2部分50の上にも半絶縁性半導体層45が存在しない(
図5)。
【0035】
[半導体光装置]
図7は、第1の実施形態に係る半導体光装置の平面図である。半導体光装置は、キャリア52(例えばセラミック基板)を有する。キャリア52には半導体光素子10が搭載されている。半導体レーザ14は、外部から入力される直流電流により駆動される。直流電流は、電源ワイヤ54にて注入される。電源ワイヤ54は、コンデンサ56の上電極とレーザ電極34とを接続している。
【0036】
キャリア52は、シグナル配線58を備えている。シグナル配線58は、高周波の電気信号が伝達されるようになっている。シグナル配線58は、金属膜46の第2部分50の直上を通る第1シグナルワイヤ60で、半導体光素子10(変調器12)のパッド電極44に電気的に接続されている。
【0037】
キャリア52は、グランドパターン62を備えている。グランドパターン62は、基準電位(例えばグランド電位)に接続される。コンデンサ56の下電極は、グランドパターン62に対向して電気的に接続されている。グランドパターン62は、凹部64を有し、凹部64の内側にシグナル配線58が配置されている。これにより、シグナル配線58は、コプレーナ線路又はグランデットコプレーナ線路となる。
【0038】
グランドパターン62は、半導体光素子10(変調器12)の第1電極28(
図2)に接続されている。接続には、図示しないはんだを使用する。グランドパターン62は、終端抵抗器66の一端に電気的に接続されている。終端抵抗器66は、キャリア52に搭載されており、その抵抗値は例えば50Ωである。半導体光素子10(変調器12)のパッド電極44は、第2シグナルワイヤ68で終端抵抗器66の他端に電気的に接続されている。変調器12及び終端抵抗器66は、並列接続される。
【0039】
[第1部分の効果]
金属膜46の第1部分48の上には半絶縁性半導体層45が存在しない(
図5)ので、メサ電極40の寄生容量を低減することができる。これは、一対の第1部分48の両方の効果である。また、第2シグナルワイヤ68が上方を通る第1部分48(
図7の左側)は、第2シグナルワイヤ68のインダクタンスを低減するのに寄与する。これは、第2部分50の効果と同様である。
【0040】
[第2部分の効果]
次に、金属膜46の第2部分50による効果について説明する。第1シグナルワイヤ60は、グランドパターン62から離れるため、従来、インダクタンスが増加し、光/電気応答特性(高周波特性)が劣化していた。
【0041】
本実施形態では、第1シグナルワイヤ60の下方に、金属膜46の第2部分50が配置されている。金属膜46は半導体基板16に電気的に接続されている(
図5)。さらに、半導体基板16は第1電極28を介してグランドパターン62と接続される。そのため、金属膜46の第2部分50をグランド電位にすることができる。
【0042】
第1シグナルワイヤ60は、金属膜46の第2部分50を跨ぐ。第1シグナルワイヤ60に一番近いグランド電位となる領域は、金属膜46である。また、金属膜46の第2部分50は、パッド電極44の周囲を囲むように配置されている。したがって、第1シグナルワイヤ60の周囲には、多くのグランド電位の領域が配置されている。
【0043】
金属膜46がない場合は、変調器12の表面には接地電位となる領域はなく、インダクタンスの増加を引き起こす。これに対して、変調器12の表面側に金属膜46があることで、電界は第1シグナルワイヤ60と金属膜46との間に広がり、インダクタンスの増加を抑えることが可能となる。なお、酸化膜36を配置するよりも、金属膜46を配置した方がインダクタンスの増加の抑制効果は大きい。これは、酸化膜36と金属膜46の抵抗の違いが影響していると推測される。金属膜46の材料は、半導体基板16から順に、Ti/Pt/Auである。メサ電極40およびレーザ電極34も同じ構成である。
【0044】
以上のように、メサストライプ構造22の両側の半絶縁性半導体層45を狭くし、半導体基板16と電気的に接続された金属膜46を配置することで、寄生容量の低減およびインダクタンスの低減が得られ、高周波特性に優れた変調器12を実現することができる。
【0045】
なお、金属膜46はグランド電位となっていればよく、直接、半導体基板16の上面と接触していなくても構わない。例えば、金属膜46と半導体基板16の間に、図示しない半導体バッファ層があっても構わないが、半導体バッファ層は、第1導電型の半導体からなる。また、半導体光素子10の第2方向D2の両端に残る半絶縁性半導体層45は、除去しても構わない。あるいは、金属膜46が半導体光素子10の両端まで広がっていても構わない。
【0046】
本実施形態では、半導体基板16の第1導電型をn型とし、半導体層26(クラッド層)の第2導電型をp型としたが、極性が逆であっても構わない。半導体基板16は、絶縁基板に積層された半導体層であってもよい。
【0047】
[変形例]
図8は、変形例に係る半導体光素子の断面図である。半導体光素子110は、引出電極142及びパッド電極144と半導体基板116の間に介在する樹脂層170(例えばポリイミド層)を有する。樹脂層170は、半絶縁性半導体層145と比較して誘電率が小さく、パッド電極144及び引出電極142の寄生容量をさらに低減することが可能となる。その他の詳細には、第1の実施形態で説明した内容を適用可能である。
【0048】
[第2の実施形態]
図9は、第2の実施形態に係る半導体光素子の平面図である。
図10は、
図9に示す半導体光素子のX-X線断面図である。
図11は、
図9に示す半導体光素子のXI-XI線断面図である。
【0049】
半絶縁性半導体層245は、金属膜246の第2部分250の少なくとも一部の直下にも配置されている。こうすることで、第2部分250を第1シグナルワイヤ60(
図7)に近づけることができるので、インダクタンスをさらに減少させることができる。
【0050】
半絶縁性半導体層245は、一対の第1部分248の1つ(第2部分250から遠い方)の一部の直下にも配置されている。こうすることで、第1部分248を、第2シグナルワイヤ68(
図7)に近づけることができるので、インダクタンスを減少させることができる。ただし、メサ電極240の寄生容量を低減するためには、メサストライプ構造222との隣接を避けて、メサストライプ構造222から間隔をあけて、半絶縁性半導体層245を設けることが好ましい。
【0051】
[第3の実施形態]
図12は、第3の実施形態に係る半導体光素子の平面図である。
図13は、
図12に示す半導体光素子のXIII-XIII線断面図である。
図14は、
図12に示す半導体光素子のXIV-XIV線断面図である。
【0052】
半導体光素子310は、第1方向D1に半導体レーザ314とは反対方向に、変調器312に光学的に接続されて延びる出射導波路372をさらに備える。出射導波路372の構造には、接続導波路318の内容を適用可能である。ただし、出射導波路372の半導体層326Dは、厚みにおいて、変調器312の半導体層326Bと同じになっている。
図12に示すように、金属膜346(第1部分348及び第2部分350の両方)は、出射導波路372部にも隣接している。また、金属膜346(第1部分348及び第2部分350の両方)は、接続導波路318にも隣接している。その他の詳細は、第1の実施形態で説明した内容を適用可能である。
【0053】
図15は、第3の実施形態に係る半導体光装置の平面図である。グランドパターン362は、シグナル配線358を挟むように配置された第1グランドパターン362A及び第2グランドパターン362Bを含む。第1グランドパターン362A及び第2グランドパターン362Bのそれぞれは、グランドワイヤ374で金属膜346の第2部分350に接続されている。複数のグランドワイヤ374が第1シグナルワイヤ360を挟む。
【0054】
本実施形態によれば、金属膜346が第1方向D1に広いため、グランドワイヤ374を金属膜346にボンディングすることが可能となっている。一対のグランドワイヤ374の一端が、グランドパターン362の、シグナル配線358を挟む位置にボンディングされている。一対のグランドワイヤ374の他端は、金属膜346の、パッド電極344を挟む位置にボンディングされている。これにより、第1シグナルワイヤ360を起因とするインダクタンスをさらに低減することが可能となる。
【0055】
[第4の実施形態]
図16は、第4の実施形態に係る半導体光素子の平面図である。
図17は、
図16に示す半導体光素子のXVII-XVII線断面図である。
図18は、第4の実施形態に係る半導体光装置の平面図である。
【0056】
本実施形態は、第2の実施形態及び第3の実施形態の両方の特徴を有する。その詳細は上述した通りである。本実施形態では、第2部分450は、その下に半絶縁性半導体層445があるので高くなっており(第2の実施形態と同様)、しかも、広くなっている(第3の実施形態と同様)。そのため、グランドワイヤ474をボンディングしやすくなっている。
【0057】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態を説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0058】
10 半導体光素子、12 変調器、14 半導体レーザ、16 半導体基板、18 接続導波路、20 凸部、22 メサストライプ構造、24 多重量子井戸層、24A 多重量子井戸層、24B 多重量子井戸層、26 半導体層、26A 半導体層、26B 半導体層、26C 半導体層、28 第1電極、30 回折格子層、32 コア層、34 レーザ電極、36 酸化膜、38 第2電極、40 メサ電極、42 引出電極、44 パッド電極、45 半絶縁性半導体層、46 金属膜、48 第1部分、50 第2部分、52 キャリア、54 電源ワイヤ、56 コンデンサ、58 シグナル配線、60 第1シグナルワイヤ、62 グランドパターン、64 凹部、66 終端抵抗器、68 第2シグナルワイヤ、110 半導体光素子、116 半導体基板、142 引出電極、144 パッド電極、145 半絶縁性半導体層、170 樹脂層、222 メサストライプ構造、240 メサ電極、245 半絶縁性半導体層、246 金属膜、248 第1部分、250 第2部分、310 半導体光素子、312 変調器、314 半導体レーザ、318 接続導波路、326B 半導体層、326D 半導体層、344 パッド電極、346 金属膜、348 第1部分、350 第2部分、358 シグナル配線、360 第1シグナルワイヤ、362 グランドパターン、362A 第1グランドパターン、362B 第2グランドパターン、372 出射導波路、374 グランドワイヤ、445 半絶縁性半導体層、450 第2部分、474 グランドワイヤ、D1 第1方向、D2 第2方向。