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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064310
(43)【公開日】2022-04-25
(54)【発明の名称】光伝播時間法を用いた距離測定
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/10 20200101AFI20220418BHJP
【FI】
G01S17/10
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021166312
(22)【出願日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】10 2020 126 799.1
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ ツヴェルファー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン コルブ
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AD01
5J084BA36
5J084CA03
5J084CA32
5J084CA53
5J084CA70
5J084EA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光伝播時間法で検出領域内の物体の距離を測定するための光電センサを提示する。
【解決手段】該センサ(10)は、光信号(16)を検出領域(18)内へ送出するための発光器(12)と、検出領域(18)からの受信光(22)を検出するための第1の多数の受光素子(28)を有する受光器(26)と、光信号(16)の送出と物体(20)上で拡散反射又は直反射された該光信号(22)の受信との間の光伝播時間からその都度の個別光伝播時間を測定するための第2の多数の光伝播時間測定ユニット(30)と、個別光伝播時間を集めるためのメモリ(34)と、集められた個別光伝播時間を評価することにより距離値を測定するように構成された制御及び評価ユニットであって、光伝播時間測定ユニット(30)の少なくとも2つのグループの個別光伝播時間から少なくとも2つの距離値を測定することができる制御及び評価ユニット(38)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝播時間法で検出領域(18)内の物体(20)の距離を測定するための光電センサ(10)であって、光信号(16)を前記検出領域(18)内へ送出するための発光器(12)と、前記検出領域(18)からの受信光(22)を検出するための第1の多数の受光素子(28)を有する受光器(26)と、前記光信号(16)の送出と前記物体(20)上で拡散反射又は直反射された該光信号(22)の受信との間の光伝播時間からその都度の個別光伝播時間を測定するための第2の多数の光伝播時間測定ユニット(30)と、個別光伝播時間を集めるためのメモリ(34)と、集められた個別光伝播時間を評価することにより距離値を測定するように構成された制御及び評価ユニットであって、光伝播時間測定ユニット(30)の少なくとも2つのグループの個別光伝播時間から少なくとも2つの距離値を測定することができる制御及び評価ユニット(38)とを備える光電センサ(10)において、
該センサ(10)が、グループへの光伝播時間測定ユニット(30)の割り当てに応じて個別光伝播時間を同一のまとまったメモリ(34)の特定のアドレス(34a~d)に書き込むように構成されたアドレス指定変更ユニット(36)を備え、その結果、前記制御及び評価ユニット(38)が、記憶された個別光伝播時間をそのアドレスを通じて1つのグループひいては1つの距離値に割り当てることができる
ことを特徴とするセンサ(10)。
【請求項2】
前記制御及び評価ユニット(38)がグループの数を変更するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項3】
光伝播時間ユニットを変更可能に受光素子(28)と接続するように構成された選択ユニット(32)を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ(10)。
【請求項4】
前記メモリ(34)が、その中において、連続するアドレスを有するメモリセル内に離散関数を保存することができ、各個別光伝播時間がこのやり方でメモリ中に保存され且つ読み出されることができ、特に前記メモリセルのアドレスが定義域に相当し、それに対応する関数値が該メモリセル内に保存される、というように構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項5】
前記アドレス指定変更ユニット(36)がアドレスの少なくとも1つのアドレスビットをグループへの割り当てに利用するように構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項6】
前記アドレスビットが一又は複数の最上位ビットであることされていることを特徴とする請求項5に記載のセンサ(10)。
【請求項7】
前記メモリ(34)がヒストグラムメモリとして構成されていること、そして前記個別光伝播時間が少なくとも1つのヒストグラムに集められることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項8】
前記ヒストグラムメモリが、グループが1つだけの場合のヒストグラムのビンと同数のメモリセルを備えていることを特徴とする請求項7に記載のセンサ(10)。
【請求項9】
前記アドレス指定変更ユニット(36)が、前記アドレスの少なくとも1ビット、特に最上位の1ビット又は最上位の複数ビットにおいてグループを符号で表し、前記アドレスの他のビットにおいてヒストグラムのビンを符号で表すように構成されていることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項10】
前記受光素子(28)がそれぞれ、降伏電圧を超えるバイアス電圧が印加されることによりガイガーモードで駆動されるアバランシェフォトダイオードを備えていること、及び/又は、光伝播時間測定ユニット(30)が時間デジタル変換器を備えていることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項11】
光伝播時間法で検出領域(18)内の物体(20)の距離を測定する方法であって、前記検出領域(18)内へ光信号を送出し、該検出領域(18)内で直反射又は拡散反射された前記光信号(22)を第1の多数の受光素子(28)を有する受光器(26)により検出し、前記光信号(16)の送出と前記物体(20)上で拡散反射又は直反射された前記光信号(22)の受信との間の光伝播時間からその都度の個別光伝播時間を第2の多数の光伝播時間測定ユニット(30)で測定してメモリ(34)に集め、光伝播時間測定ユニット(30)の少なくとも2つのグループの個別光伝播時間から少なくとも2つの距離値を測定する方法において、
グループへの光伝播時間測定ユニット(30)の割り当てに応じて個別光伝播時間を同一のまとまったメモリ(34)の特定のアドレス(34a~d)に書き込み、距離値の測定の際には記憶された個別光伝播時間をそのアドレスを通じて1つのグループひいては1つの距離値に割り当てる
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1又は11のプレアンブルに記載の光電センサ及び光伝播時間法を用いて検出領域内の物体の距離を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光伝播時間原理による距離センサは光信号の伝播時間を測定する。その伝播時間は光速を介して距離に対応する。その測定はパルスベースと位相ベースの測定に区別される。パルス伝播時間法では短い光パルスが送出され、該光パルスの拡散反射又は直反射が受光されるまでの時間が測定される。また、位相法の場合は発射光が振幅変調され、発射光と受信光の間の位相のずれが測定され、その位相のずれが同様に光伝播時間の尺度となる。
【0003】
低い受光強度でも検出できるようにするため、多くの光電センサでアバランシェフォトダイオード(APD)が用いられている。APDでは、入射光が、制御されたアバランシェ降伏(アバランシェ効果)を誘発する。入射光子により生成された電荷担体がそのアバランシェにより増倍され、光電流が生じる。この電流は受光強度に比例するが、単純なPINダイオードの場合に比べればはるかに大きい。
【0004】
いわゆるガイガーモードで駆動されるアバランシェフォトダイオード(シングルフォトンアバランシェフォトダイオード:SPAD)を用いればより高い感度が達成される。この場合、アバランシェフォトダイオードに降伏電圧より高いバイアス電圧が印加され、その結果、1個の光子により解放されるわずか1個の電荷担体でも、もはや制御されないアバランシェを誘発し得る。電界強度が高いため、このアバランシェは利用可能な全ての電荷担体を取り込む。その後、アバランシェは止まり(受動クエンチ)、一定の無駄時間の間、もはや検出には利用できない。あるいは、アバランシェを外部から認識して鎮める(能動クエンチ)という方法も知られている。
【0005】
こうしてSPADはガイガーカウンタのように個々の事象を計数する。SPADは高感度であるだけでなく、比較的安価に且つ効率良くシリコン半導体に集積できる。更にそうすればそれをわずかなコストで回路基板に統合できる。1つの特徴は、外部光の光子や暗騒音のような極めて軽微な妨害事象でも有効光の信号と同じ最大の受光信号が生じるということである。
【0006】
SPADを基礎とする距離センサは、周縁部に当たったり拡散反射に跳びがあったりしても頑強な測定を保障するためにパルスベースで作動することが好ましい。これはダイレクト飛行時間測定(dToF, direct Time of Flight)とも呼ばれる。妨害の影響があっても信頼できる測定結果を得るために、事象を複数のSPAD又は複数の発射パルスにわたって集め、ヒストグラムにおける最大値を求めることにより一緒に評価することができる。
【0007】
この解決法を実際に実装するにはヒストグラムメモリを用意する必要がある。そのためにメモリコンパイラが、例えば1024×10ビットといった一定のメモリサイズに対し、面積を最適化した機能ブロックを生成し、好ましくはそれをテスト可能にするためにBIST(Built In Self Test)の分だけ拡張する。従ってこの系は最大1024ビンという一定の解像度を持つヒストグラムに対して固定されている。
【0008】
しかし、センサのなかには複数の点又は測定領域(ROI、region of interest)までの距離を測定することが望ましいものがある。そのような多重セグメント評価は、固定されたヒストグラムメモリを用いる場合は順次実施するしかない。あるいは、考えられる測定領域の最大数に備えて、はるかに大きな面積を使用し、より高いチップコストをかけて、専用のヒストグラムメモリを用意する必要がある。
【0009】
原理的には、複数の測定領域のために解像度の低下を容認して既存のヒストグラムメモリを分割し、例えば1024ビンを持つ1つのヒストグラムの代わりに256ビンを持つ4つのヒストグラムを用いることも考えられよう。しかし、こうして分割された4つのヒストグラムメモリは、そのアドレス指定論理回路等も含めると、まとまった1つのより大きなヒストグラムメモリよりも明らかに大きな面積を消費する。しかも、分割が確定されると、4つの低解像度のヒストグラムしか記録することができず、高解像度のヒストグラムはもはや記録できない。複数のメモリブロックをより大きなメモリブロックに結合するにもアドレス指定論理回路が必要であり、面積を消費する。こうした考察はとりわけ100nmオーダーの構造の場合に重要になり、Opto-ASIC等の光電センサ用デジタル部品の場合、通常の個数でより小さな構造にするとほとんど支払えない価格になる。
【0010】
特許文献1はSPADをベースにした光学的な距離測定器を開示している。該測定器では、SPADがグループ化され、各グループで光伝播時間が測定される。その光伝播時間測定はグループ化によりSPADの特殊な性質に反応するものである。というのも、妨害性の個別事象はグループ全体にわたって捕らえられるからである。ただし、ヒストグラムは作られないから、複数のヒストグラムの記憶という問題は全く生じない。
【0011】
特許文献2から別の光電センサが知られている。該センサはSPADとdToF法を用いて距離を測定する。狙いを定めて複数の特定のSPADを選択して1対1でTDC(時間デジタル変換器)に接続するために、スイッチ行列が設けられている。このように選択されたSPADを用いて単一の共通ヒストグラムが集計される。特許文献3では、そのように選択されたSPADを用いて複数の距離値を測定し、それを用いて位置決めシステムを調整する。該文献は複数の測定領域からのSPADの選択について説明しているが、その場合に必要となる多重評価の具体的な実装についての説明はない。なぜなら、ヒストグラムの概念に全く触れていないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】EP 2 475 957 B1
【特許文献2】EP 3 428 683 B1
【特許文献3】EP 3 454 086 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
故に本発明の課題は、冒頭で述べた種類のダイレクト光伝播時間法に基づくセンサを用いてより良い方法で追加の測定情報を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は請求項1又は11に記載の光電センサ及び光伝播時間法を用いて検出領域内の物体の距離を測定する方法により解決される。少なくとも1つの発光器を用いて光信号が送出され、検出領域から戻ってくる光信号が受光器内で記録される。受光器は例えば行列状に配置された第1の多数の受光素子又は画素を備えている。受光素子の各々又はそのグループがそれぞれ光伝播時間測定ユニットと接続されており、該光伝播時間測定ユニットはそれに接続された一又は複数の受光素子の光信号の個別光伝播時間を測定する。全部で第2の多数の光伝播時間測定ユニットがあるが、これは好ましくは第1の多数の受光素子よりも少ない。これは、受光器の作動状態の測定領域にある受光素子の一部のみ又はそれどころか少数の一部のみが選択されるということを意味する。個別光伝播時間はメモリに集められ、制御及び評価ユニットがその集められた個別光伝播時間から距離値を算出する。本センサは、光伝播時間測定ユニットの少なくとも2つのグループから少なくとも2つの距離値を測定する可能性を少なくとも提供する。つまりグループの数に応じて複数の測定領域(ROI, region of interest)があり、それらについて同時にそれぞれ距離値が測定される。実施形態によっては本センサは切り替え可能であり、複数の距離値の同時測定の他に、単一のグループのみ、従って単一の測定領域のみを用いるモードも提供する。
【0015】
本発明の出発点となる基本思想は、個別光伝播時間を収集するためのメモリと同じメモリを、複数の測定領域とそれらに付属する光伝播時間測定ユニットのグループとを用いる多重評価にも用いることにある。即ち、メモリ全体にわたるまとまったアドレス指定を持つ物理的なメモリは依然として1つしかなく、特にメモリコンパイラにより生成される機能ブロックが1つしかない。アドレス指定変更ユニットの働きにより、各個別光伝播時間が、該個別光伝播時間を測定している光伝播時間ユニットに応じて、グループへの割り当てを再構成できるようなアドレスでメモリにそれぞれ書き込まれる。従って、グループひいては測定領域への所属はアドレス中に符号で表されている。しかもこれによりメモリは機能的に分割されている。なぜなら、メモリセルの内容がそのアドレスを通じて特定のグループに割り当てられているからである。しかし、その物理的な実装という面では依然としてまとまった未分割のメモリである。
【0016】
本発明には、面積の消費が少なく、以て製造コストが低くても、複数の測定領域から複数の距離値を得ることができるという利点がある。単一のメモリで済ませるためにそのような多重測定を連続的に実行することはもはや必要ない。従って、短い測定時間と低コストを両立させることができる。同一のメモリで複数グループを処理することは解像度の低下を意味しており、複数の測定領域と適切な解像度を適切に選択することは応用上の問題である。
【0017】
制御及び評価ユニットはグループの数を変更するように構成されていることが好ましい。アドレス指定変更ユニットの働きにより、各個別光伝播時間は、新たなグループの数に応じて、該新たなグループへの光伝播時間測定ユニットの所属を再構成できるようなメモリアドレスに保存される。これにより測定領域の数を用途の要求に合わせることができる。切り替えは設定又はプログラミングにより実行することができ、それどころか稼働中に動的に行うことさえできる。既に触れたように、1つだけのグループに切り替えることは排除されない。なぜなら、まとまったメモリを複数のグループに機能的に分割すると解像度が低下するから、グループを1つだけ用いて最高の解像度で測定することが絶対に有利である可能性があるからである。
【0018】
本センサは、光伝播時間ユニットを変更可能に受光素子と接続するように構成された選択ユニットを備えていることが好ましい。これにより、光伝播時間ユニットをどのようにグループに分配するか、つまりどの画素をまとめて1つの距離測定値にするかという柔軟性が生じるだけではない。各測定領域(ROI)の位置を設定又は変更するために受光器上のどの画素に光伝播時間ユニットを割り当てるかを選択することも可能になる。通例、近接した画素を同じグループの光伝播時間ユニットと接続することが合理的である。しかし原理的にはその割り当ては自由であり、受光器上に広く分散した画素から成るグループも可能である。例えば、i個に1個だけ画素を光伝播時間測定ユニットに接続して成る格子で測定領域を覆うことで、少数の光伝播時間測定ユニットを用いてより広い面積を検知することが有意義である可能性がある。選択ユニットはスイッチ行列であることが非常に有利である。
【0019】
メモリは、その中において、連続するアドレスを有するメモリセル内に離散関数を保存することができ、各個別光伝播時間がこのやり方でメモリ中に保存され且つ読み出されることができ、特に前記メモリセルのアドレスが定義域に相当し、それに対応する関数値が該メモリセル内に保存される、というように構成されていることが好ましい。言い換えればこのメモリは、アドレスが離散関数のX値、メモリセルの内容がY値に対応するように組織されている。当然ながら定義域は通例、アドレスに対してずれており、スケールが変更されている。例えば、アドレス0、1、…、15はそれに15nsをかけて+15nsだけずらすと時間値15ns、30ns、…、240nsに対応する。メモリセルの内容についても、それが純粋なカウンタとして用いられるのではない限り、同様のことが言える。
【0020】
アドレス指定変更ユニットはアドレスの少なくとも1つのアドレスビットをグループへの割り当てに利用するように構成されていることが好ましい。その少なくとも1つの再指定されたアドレスビットはもはやX値ではなくグループ又は測定領域を符号で表している。このように再指定されたアドレスビットがm個ある場合、メモリは機能的に2個の部分メモリ領域に分割される。同時にX方向の解像度は1/2倍に低下する。好ましい事例は、部分メモリ領域が2つで解像度が半分になるs=1の場合と、部分メモリ領域が4つで解像度が4分の1になるs=2の場合である。s=0の場合も依然として設定可能であり、その場合は測定領域が1つで解像度が最大になる。以上から分かるように測定領域の個数は2の累乗に対応する数にしかならない。ただし、部分メモリ領域を使わずにおいたり、制御及び評価ユニットが複数の部分メモリ領域を1つの距離測定値にまとめたりすることにより、他の数に変えることもできる。
【0021】
再指定されたアドレスビットは一又は複数の最上位ビット(MSB、Most Significant Bit)であることが好ましい。このようにすると、1つの同じグループの全ての個別光伝播時間が連続したアドレスに記憶されるという利点がある。他のビットを用いることも原理的には考えられるが、そうするとメモリ全体にわたって互いに離れたアドレスに情報が分散することになる。そうするとその後の評価と距離値の計算がより面倒になる。
【0022】
メモリはヒストグラムメモリとして構成されていること、そして個別光伝播時間が少なくとも1つのヒストグラムに集められることが好ましい。ヒストグラムは頻度分布を離散化するものであり、メモリに保存された関数の特殊な事例であって、個別光伝播時間の測定情報を適切にまとめるのに非常に適している。メモリ内の1つのアドレスがヒストグラムの1つのビンに対応し、ビンが時間を離散化し、各メモリセルの内容が頻度値(カウント)となる。複数のグループがある場合、複数のヒストグラムが、メモリ中で各グループに割り当てられたアドレスに集められる。
【0023】
ヒストグラムメモリは、グループが1つだけの場合のヒストグラムのビンと同数のメモリセルを備えていることが好ましい。つまりこのメモリは、最大の解像度を持つ単一のヒストグラムがちょうど収まるような大きさに設計されている。少数のメモリセルが未使用になることがまだ考えられる。例えば、1000個のビンが望ましいが、1024個のビンの方が容易に実装できるという場合である。複数の測定領域を用いる測定の場合は代わりに複数のヒストグラムがそれに応じた低解像度で保存される。特に、それぞれビンの個数と時間解像度が1/2倍になった2個のヒストグラムが保存される。なお、当然ながら、ここではそれを意味していないが、第2の解像度がまだ別の軸上にある。即ちメモリセルのビット深度である。これは頻度値又はカウントの最大値を与える。
【0024】
アドレス指定変更ユニットは、アドレスの少なくとも1ビット、特に最上位の1ビット又は最上位の複数ビットにおいてグループを符号で表し、アドレスの他のビットにおいてヒストグラムのビンを符号で表すように構成されていることが好ましい。つまりそうすればアドレスが2つの部分ブロックとして解釈され、第1の部分ブロックがグループへの所属を表し、第2の部分ブロックがビンを表す。光伝播時間測定ユニットが個別光伝播時間を測定すると、それがビン幅に丸められて1つのビンに割り当てられる。これは、測定された光伝播時間のビットがそのまま第2の部分ブロックのアドレスビットとして解釈される場合、非常に簡単に実装できる。グループの個数によってはアドレス指定変更ユニットの働きにより個別光伝播時間の最下位ビットが無視される。これは、複数の測定領域を同時に評価するために容認せざるを得ない解像度の低下である。あるいは測定の射程が短縮される。そうするとビン数が少なくなるため、それによりカバーされる測定の一義性領域が狭くなる。更にアドレス指定変更ユニットは、第1の部分ブロックに、測定中の光伝播時間測定ユニットのグループへの割り当てに相当するアドレスビットが設定されていることを保障する。得られるアドレスにおいてはメモリの内容に1が加算される。
【0025】
受光素子はそれぞれ、降伏電圧を超えるバイアス電圧が印加されることによりガイガーモードで駆動されるアバランシェフォトダイオードを備えていることが好ましい。距離測定では、ガイガーモードで駆動されるアバランシェフォトダイオード素子又はSPADが持つ高い感度とダイナミックレンジ圧縮が非常に有利である。個別光伝播時間の収集(特にヒストグラムでの収集)による統計的な評価はSPADとその特異性に非常に適している。
【0026】
光伝播時間測定ユニットはTDC(時間デジタル変換器)を備えていることが好ましい。TDCは公知の比較的簡単な部品であり、高い時間解像度で個別光伝播時間を測定することができる。TDCは受光器の結晶内に直接モノリシックに統合することができる。TDCは好ましくは発射時点に開始され、受光された個別光パルスによって受光時点に停止される。また、例えばアバランシェの誘発とともにTDCを開始し、既知の時点(例えば測定時間の終わり)に停止する等、他の駆動方法も考えられる。
【0027】
本発明に係る方法は、前記と同様のやり方で仕上げていくことが可能であり、それにより同様の効果を奏する。そのような効果をもたらす特徴は、例えば本願の独立請求項に続く従属請求項に模範的に記載されているが、それらに限られるものではない。
【0028】
以下、本発明について、更なる特徴及び利点をも考慮しつつ、模範的な実施形態に基づき、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】光電センサの概略ブロック図。
図2】全体的な測定プロセスの図。
図3】光伝播時間測定ユニットへの測定領域(ROI)の模範的な割り当ての図。
図4】複数の測定領域(ROI)のために用いられるヒストグラムメモリの模範的なアドレス指定の図。
図5】光伝播時間測定ユニット、アドレス指定変更ユニット及びヒストグラムメモリの模範的な配線の図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は距離測定用の光電センサ10の簡単な概略ブロック図である。発光器12(例えばLED又はレーザ光源)が発光光学系14を通じて光信号16を検出領域18内へ送出する。図では発光器12が外部の部品として描かれているが、センサ10に統合された構成要素とすることもできる。送出された光信号16は光パルスを含むことが好ましく、その場合、センサ10はパルス法又はダイレクト光伝播時間法(dToF、direct Time of Flight)により距離を測定する。好ましくは数100psの短い光パルスが生成される。
【0031】
光信号16が検出領域18内で物体20に当たると、拡散反射又は直反射された光信号22が受光光学系24を通じて受光器26まで戻る。この受光器26は多数の受光素子を備えている。それらは特にガイガーモードのアバランシェフォトダイオード素子28又はSPADとして構成されており、画素と解釈することができる。SPADは実質的にデジタル信号を出力し、それにより極めて高速に入射光に反応する。
【0032】
選択されたアバランシェフォトダイオード素子28の受光信号が光伝播時間測定ユニット30により読み出されて評価される。図には光伝播時間測定ユニットが4つしか描かれていないが、実際には大抵もっと多くの、例えば10のオーダーのユニットがある。しかしそれは、100個、1000個又は明らかにもっと多く存在することが典型的であるアバランシェフォトダイオード素子28の数よりは明らかに少ない。光伝播時間測定ユニット30は、例えば100psの時間解像度のTDC(時間デジタル変換器)を特にそれぞれ備えており、光信号16の送出から、戻ってくる光信号22の受光までの光伝播時間をそれぞれ測定する。光伝播時間測定を1回だけで済ませるのではなく複数の受光事象に対して光伝播時間を測定すること、特にそれを、光伝播時間をバッファに記憶した後、更にTDCを続けて作動させることによって行うことも考えられる。これにより、例えば半透明な物体又はガラス板を通じた測定や塵埃による汚染下での測定等にとって有益となり得る多重エコー対応能力が得られる。
【0033】
例えばスイッチ行列の形をした選択ユニット32が受光器26と光伝播時間測定ユニット30との間に配置されている。変更可能に決められたアバランシェフォトダイオード素子28又は画素が選択ユニット32を用いてその都度1つの光伝播時間測定ユニット30と接続される。アバランシェフォトダイオード素子28と光伝播時間測定ユニット30との接続は1対1又はn対1とすることができる。この選択により、測定に寄与する作動状態の画素が決まる。選択されない画素は、そうでなくてもその信号は読み出されないが、例えばバイアス電圧を降伏電圧より下げることによりオフにすることができる。
【0034】
光伝播時間測定ユニット30により測定された個別光伝播時間は、好ましくはヒストグラムの形で、メモリ34に集められる。光伝播時間測定ユニット30は一又は複数のグループに割り当てられており、各グループが独自にヒストグラムを生成する。こうしたグループへの割り当てを通じて、光伝播時間測定ユニット30に接続された画素が複数の測定領域(ROI, region of interest)を形成し、それらを用いて同時に複数の距離値を測定することができる。
【0035】
1つのヒストグラムはn個のサンプリング点又はビンを備えており、それらが時間測定領域を分割し、以てセンサ10の射程又はその中で選ばれた一部領域を分割する。この場合、その領域が測定の一義性領域となる。ビン数は、ビン幅が光伝播時間測定ユニット30の時間解像度と一致するような数値範囲に対応していることが好ましい。各ビンでは、そのビンに対応する個別光伝播時間が何回測定されたかが計数される。この統計には、同じグループに割り当てられた複数の光伝播時間測定ユニット30が寄与し、また反復測定も寄与する。最大の計数値(カウント)又は最大のヒストグラム高さはメモリ34のメモリセルのビット深度により予め決まっている。例えば、10ビットの深度を持つ1024個のメモリセルを設けることができる。
【0036】
測定領域(ROI)が1つしかない場合、全ての光伝播時間測定ユニット30の個別光伝播時間が1つのヒストグラムに集められるから、最大の時間解像度と最小のビン幅が達成される。測定領域が複数ある場合、利用可能なメモリセルが複数のヒストグラムに分配されるため、ビン幅が増大して時間解像度が低下するか、測定の一義性領域が狭くなる。インテリジェントなアドレス指定による複数のヒストグラムへのメモリ34の分割については後で図2~5を参照してより詳しく説明する。
【0037】
メモリ34内に集められるヒストグラムが1つか複数かに関わらず、それはいずれも、単一のアドレス領域又は例えばメモリコンパイラにより生成される同一の機能ブロックを有する、同じ、単一の、まとまったメモリである。付属のメモリ論理回路を持つ物理的な分割はない。そうではなく、アドレス指定変更ユニット36の働きにより、各光伝播時間測定ユニット30がその個別光伝播時間を、単一のメモリ34上で、各光伝播時間測定ユニット30とその所属グループひいては所属測定領域との関係を再構成できるようなアドレスに保存する。その方法についても後述する。
【0038】
制御及び評価ユニット38がヒストグラムを処理し、その中で例えば拡散反射された光信号22により生じるピークを探索する。ピークに属する光伝播時間を光速を介して通常の単位に変換したものが求める距離値に相当する。制御及び評価ユニット38はまたセンサ10内における他の制御の任務も担うことができ、そのために更にセンサの他の構成要素と接続することができる。
【0039】
光伝播時間測定ユニット30、選択ユニット32、メモリ34、アドレス指定変更ユニット36、及び/又は、制御及び評価ユニット38のうち少なくともいくつか又は一部はアバランシェフォトダイオード素子28とともに共通のチップ上に統合することができる(例:特定用途向け集積回路ASIC)。また、制御及び評価ユニット38を追加の部品上(例えばマイクロプロセッサ)に収めたり、アドレス指定変更ユニット36を制御及び評価ユニット38内に実装したりすることも考えられる。
【0040】
図1のセンサ10の構成は単に模範的なものと理解すべきである。代わりに、例えばビームスプリッタと共通の光学系を用いた自動コリメーションや、発光器12を受光器26の前に置いた配置等、他の公知の光学的な解決策を利用できる。光格子やレーザスキャナのようなより複雑なセンサも考えられる。
【0041】
図2は考えられる全体的な測定プロセスを示している。測定の開始後、実際の測定のなかで光信号16が送出され、再び受光される。そして光伝播時間測定ユニット30が、それに接続されたアバランシェフォトダイオード素子28からの信号に基づいて個別光伝播時間を測定する。測定が終了するとすぐにMEAS_RDYというフラグがセットされ、k個の個別光伝播時間をメモリ34に転送することができる。好ましくはこのプロセスをそれから更にl回(例えば1000回)繰り返すことで、測定の繰り返しによって更に良好な統計的なデータの基礎を作り出す。
【0042】
図3は光伝播時間測定ユニット30への測定領域40a~d(ROI)の模範的な割り当てを示している。ここでは模範例として4つの測定領域があるが、これは受光器26を象限に分割したものと理解することができる。各測定領域40a~dは同時に独自の距離値を出力するものであり、そのために光伝播時間測定ユニット30の別々のグループに接続されている。本例ではTDCの形で計16個の光伝播時間測定ユニット30があり、第1の測定領域40aがTDC1~4と、第2の測定領域40bがTDC5~8と、第3の測定領域40cがTDC9~12と、そして第4の測定領域40dがTDC13~16と接続されている。2種類の割り当てが区別されることに注意されたい。一方で、特定の画素又はアバランシェフォトダイオード素子28が選択ユニット32を用いてここでは1対1(あるいはn:1でもよい)で特定の光伝播時間測定ユニット30と接続されている。他方で、光伝播時間測定ユニット30が測定領域40a~dに対応してグループを形成している。
【0043】
図4はメモリ34を示している。これは4つの測定領域40a~d又は象限に対応して分割されており、4つのヒストグラムを記憶する。メモリ34は物理的には単一の分割されていないメモリであり、特に一般のRAMのように構成され、アドレス指定されるものであることを思い出されたい。従ってアドレス0~2ー1を持つメモリセルがあり、それぞれに1つの値を保存することができる。ヒストグラムの場合、その値がカウンタとして利用される。
【0044】
さて、複数のヒストグラムをメモリに保存するため、複数のアドレス領域が区別される。本例では4つの測定領域40a~dに対応して4つのアドレス領域34a~dがある。アドレス指定変更ユニット36の働きにより、各個別光伝播時間が、それを生じさせる光伝播時間測定ユニット30に応じて正しいアドレス領域34a~dに保存される。
【0045】
対応するアドレス符号化が図4の右側に示されている。いくつかのビット、ここではアドレスの2つの最上位ビット(MSB, Most Significant Bit)が再指定され、もはやビンではなくグループを表す符号となる。そうなるとこれらのアドレスビットとメモリセルは個々のヒストグラムから欠落し、その時間解像度が低下する。
【0046】
具体的に図3の例を再び取り上げると、16個のTDCが使用されており、ROI1~ROI4と呼ばれる4つの測定領域40a~dに接続されている。そのための符号化は例えば図4に示したとおり次の通りである。
ROI1:TDC1~4はMSBの符号00で表される。
ROI2:TDC5~8はMSBの符号01で表される。
ROI3:TDC9~12はMSBの符号10で表される。
ROI4:TDC13~16はMSBの符号11で表される。
【0047】
図3の測定プロセスにおいて、光信号16の送出後、例えば約15mの射程に対して100nsの測定時間が経過してMEAS_RDYフラグがセットされたらすぐ、個別光伝播時間の書き込みが実行される。すると、個別光伝播時間が次々にTDC1~16からメモリ34に書き込まれる。即ち、測定された個別光伝播時間によりそれぞれ決まるビンの値が増やされる。MSBによる正しいアドレス指定とそれによる適切なアドレス領域34a~dの選択は例えばアドレス指定変更ユニット36の有限オートマトンが担当する。
【0048】
このような形のヒストグラム分割により、本センサ10では、複数の測定領域40a~dから複数のヒストグラムを集めて同時に複数の距離値を測定することを選択できる。測定領域40a~dの数は再指定されるアドレスビットの数を増減することにより変更できる。それは最初の設定によってもよいし、稼働中でも動的に変更することができる。測定領域40a~dの数が2倍になる毎に時間解像度が半分になるか、測定の一義性領域又は射程が半分になる。その際、物理的に単一のまとまったメモリ34はそのまま保たれる。
【0049】
ところで、アドレス領域34a~dの縮小を射程の短縮で補償することには欠点ばかりあるわけではない。なぜなら、それにより測定時間が短縮されてセンサ10の応答時間が改善されるからである。例えば、1つの測定領域を持つ15mの射程に沿って、2つの測定領域を持つ7.5mの射程や4つの測定領域を持つ3.8mの射程が測定される。同時に測定時間は100nsから50nsや25nsに短縮される。これにより極めて様々な用途に対して便利な柔軟性が得られる。例えば、短い応答時間は運動の認識と運動ベクトルの生成において4つの象限で記録を行う上で有利である。
【0050】
例えばメモリ34内で計1024個のメモリセルが利用可能であり、更に本例に従って16個のTDCがあるとすると、これを用いて、
1つのROIを1×16個のTDCで1024×10ビットに、
2つのROIを2×8個のTDCで2×512×10ビットに、又は
4つのROIを4×4個のTDCで4×256×10ビットに書き込むことができる。
【0051】
2ビットよりも多くの最上位アドレスビットを再指定すれば、より多くのヒストグラムと測定領域の使用が可能になる。
【0052】
図5は光伝播時間測定ユニット30、アドレス指定変更ユニット36及びメモリ34の模範的な構造を示している。好ましい実装ではTDCの時間領域がちょうどヒストグラムの幅と一致している。つまり、TDCが10ビットで測定を行う場合、ヒストグラムメモリでも10ビットのアドレス領域を利用可能にする。その場合、TDCの測定結果をそのままメモリ34内のアドレスとして利用することができ、そこで適切なビンに値が加算される。なお、これはヒストグラムを1つだけ記録すればよい場合の状況を説明したものである。
【0053】
複数のヒストグラムの場合、もはや全てのビンが個々のヒストグラムに利用可能であるわけではなく、最上位の1ビット又は複数ビットが再指定され、グループ又は測定領域(ROI)への所属を符号で表すものとなる。アドレス指定変更ユニット36が、当該個別光伝播時間を測定したTDCの識別子と、ヒストグラムへのTDCの割り当て及びアドレス領域34a~dへの測定領域40a~dの割り当てを示す例えば内部テーブルから、再指定ビットを設定する。
【0054】
ヒストグラム毎に利用可能なメモリスペースの減少を射程の短縮で補償すると、TDCの最上位ビット(MSB)がいずれにせよ空く。なぜなら、より短い個別光伝播時間しか測定されず、TDCはそれをMSBなしで表すからである。つまり、元々TDCはいずれにせよMSBに0という値しか出力せず、アドレス指定変更ユニット36はその代わりにMSBの符号を適切な測定領域に置き換えることができる。
【0055】
あるいは射程を維持したまま時間解像度を下げることができる。すると今度は、時間測定の最も微細な部分に寄与する最下位ビット(LSB, Least Significant Bit)がTDCによって実質的に削除される。アドレス指定変更ユニット36は、測定された個別光伝播時間を表すためにTDCが用いるビットパターンを、ヒストグラムの個数2に対応するビット数sだけ右へシフトさせる。その結果、LSBが脱落してMSBに空きが生じ、それが適合する測定領域を表すMSB符号に置き換えられる。そうなると制御及び評価ユニットは当然ながら2倍のビン幅で計算を行い、それが今度は時間解像度の損失となる。射程の短縮と時間解像度の低減を組み合わせて両方の量に分配することもできる。
【0056】
LSBを考慮の対象から除外する、あるいは射程を短縮する具体的な実装には様々なやり方が考えられる。例として、TDCが基本精度50psで12ビットの値TDC_DATA[11:0]を測定し、ヒストグラム内では10ビットでアドレスを指定するものとする。この場合、TDC_DATA[9:0]を調べることで最大の時間解像度50psを実際に実現しつつ7.5mの距離範囲しかカバーできないようにするか、TDC_DATA[10:1]又はTDC_DATA[11:2]を調べることで距離範囲を2倍又は4倍にしつつ時間解像度を半分又は4分の1にするかを選択する。距離範囲を選び出すためにデータを適宜調べることもできる。例えば最大の解像度でTDC_DATA[0:9]を調べ、2つの最上位ビットTDC_DATA[11:10]を距離範囲の割り当てに利用する。例えば次のような形である。
TDC_DATA[11:10]=b’00==>0~7.5m
TDC_DATA[11:10]=b’01==>7.7~15m
TDC_DATA[11:10]=b’10==>15~22.5m
TDC_DATA[11:10]=b’11==>22.5~30m
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】