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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064321
(43)【公開日】2022-04-25
(54)【発明の名称】溶接用アルミニウム系電極
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/28 20060101AFI20220418BHJP
【FI】
B23K35/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】37
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021167148
(22)【出願日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】63/090,867
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/464,535
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/446,778
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510202156
【氏名又は名称】リンカーン グローバル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヴェーク セングプタ
(57)【要約】
【課題】 溶接用アルミニウム系電極を提供する。
【解決手段】 本開示の技術は、一般的に溶接に関し、より特定的にはアルミニウム系消耗電極及びそれを使用する溶接方法に関する。一態様では、溶接用消耗電極は、少なくとも70重量%のアルミニウムを含むベース金属組成物と、アルミニウムと2元系共晶を形成することが可能な流動性向上金属とを含み、2元系共晶は、595~660℃の共晶温度で2元系共晶凝固を受ける。流動性向上金属は、溶接用消耗電極を溶解させることによって形成される溶解溶接金属の凝固温度範囲が65℃未満であるような形態及び0.05~0.5重量%の亜共晶濃度で存在する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも70重量%のアルミニウムを含むベース金属組成物と、
アルミニウムと2元系共晶を形成することが可能な流動性向上金属と
を含む溶接用消耗電極であって、前記2元系共晶が、595~660℃の共晶温度で2元系共晶凝固を受け、
前記流動性向上金属が、前記溶接用消耗電極を溶解させることによって形成される溶解溶接金属の凝固温度範囲が65℃未満であるような形態及び0.05~0.5重量%の亜共晶濃度で存在する、溶接用消耗電極。
【請求項2】
前記2元系共晶が、共晶温度>595及び<630℃で2元系共晶凝固を受ける、請求項2に記載の溶接用消耗電極。
【請求項3】
前記流動性向上金属が、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、ルテチウム(Lu)、イッテルビウム(Yb)、リチウム(Li)又はその組合せからなる群から選択される、請求項3に記載の溶接用消耗電極。
【請求項4】
前記2元系共晶が、共晶温度≧630及び<645℃で2元系共晶凝固を受ける、請求項2に記載の溶接用消耗電極。
【請求項5】
前記流動性向上金属が、ニッケル(Ni)、ジスプロシウム(Dy)、ユウロピウム(Eu)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、ランタン(La)、プラセオジミウム(Pr)、サマリウム(Sm)、ネオジム(Nd)又はその組合せからなる群から選択される、請求項4に記載の溶接用消耗電極。
【請求項6】
前記2元系共晶が、共晶温度≧645及び≦660℃で2元系共晶凝固を受ける、請求項2に記載の溶接用消耗電極。
【請求項7】
前記流動性向上金属が、金(Au)、ストロンチウム(Sr)、スカンジウム(Sc)、エルビウム(Er)、ガドリニウム(Gd)、ツリウム(Tm)、鉄(Fe)、カドミウム(Cd)又はその組合せからなる群から選択される、請求項6に記載の溶接用消耗電極。
【請求項8】
前記溶接用消耗電極から形成される溶解溶接金属が、前記流動性向上金属を含まない状態で同一ベース金属組成物を有する溶接用消耗電極を使用して実質的に同一の溶接条件下で形成される溶解溶接金属に対して、以下:
少なくとも5%より低い溶接金属高さ(H)、
少なくとも5%より高い溶接金属幅(W)、
少なくとも5%より低いH/W比率、
少なくとも5%より低い侵入(P)、及び
少なくとも5%より低い溶接止端部角度(q)
の1つ以上を有する、請求項1に記載の溶接用消耗電極。
【請求項9】
前記流動性向上金属が、元素の形態で存在するか、又は前記ベース金属の金属と金属合金を形成する、請求項1に記載の溶接用消耗電極。
【請求項10】
前記流動性向上金属が、オキシド、ハライド、ヒドロキシド、スルフィド、スルフェート、カーボネート、ホスフェート、ニトリド、ニトリト、ニトリド、カーバイド、ボライド、アルミニド、テルリド又はそれらの組合せから選択される化合物で存在する、請求項1に記載の溶接用消耗電極。
【請求項11】
前記流動性向上金属が、オキシド又はヒドロキシドの形態で存在する、請求項10に記載の溶接用消耗電極。
【請求項12】
前記流動性向上金属が、前記溶接用消耗電極から形成される溶解溶接金属が、前記流動性向上金属を含まない状態で同一ベース金属組成物を有する溶接用消耗電極を使用して実質的に同一の溶接条件下で形成される溶解溶接金属に対して少なくとも5%より高い流動性を有するような形態及び過共晶濃度で存在する、請求項1に記載の溶接用消耗電極。
【請求項13】
少なくとも70重量%のアルミニウムを含むベース金属組成物と、
アルミニウムと2元系共晶を形成することが可能な流動性向上金属と
を含む溶接用消耗電極であって、前記2元系共晶が、595~660℃の共晶温度で2元系共晶凝固を受け、
前記流動性向上金属が、オキシド、ハライド、ヒドロキシド、スルフィド、スルフェート、カーボネート、ホスフェート、ニトリド、ニトリト、ニトリド、カーバイド、ボライド、アルミニド、テルリド又はそれらの組合せから選択される化合物の形態で存在する、溶接用消耗電極。
【請求項14】
前記流動性向上金属が、ニッケル(Ni)、金(Au)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ユウロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、イッテルビウム(Yb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ランタン(La)、ジスプロシウム(Dy)、サマリウム(Sm)、ルテチウム(Lu)、ツリウム(Tm)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、リチウム(Li)、鉄(Fe)、カドミウム(Cd)又はその組合せからなる群から選択される、請求項13に記載の溶接用消耗電極。
【請求項15】
前記2元系共晶が、共晶温度>595及び<630℃で2元系共晶凝固を受ける、請求項14に記載の溶接用消耗電極。
【請求項16】
前記流動性向上金属が、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、ルテチウム(Lu)、イッテルビウム(Yb)、リチウム(Li)又はその組合せからなる群から選択される、請求項15に記載の溶接用消耗電極。
【請求項17】
前記2元系共晶が、共晶温度≧630及び<645℃で2元系共晶凝固を受ける、請求項14に記載の溶接用消耗電極。
【請求項18】
前記流動性向上金属が、ニッケル(Ni)、ジスプロシウム(Dy)、ユウロピウム(Eu)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、ランタン(La)、プラセオジミウム(Pr)、サマリウム(Sm)、ネオジム(Nd)又はその組合せからなる群から選択される、請求項17に記載の溶接用消耗電極。
【請求項19】
前記2元系共晶が、共晶温度≧645及び≦660℃で2元系共晶凝固を受ける、請求項14に記載の溶接用消耗電極。
【請求項20】
前記流動性向上金属が、金(Au)、ストロンチウム(Sr)、スカンジウム(Sc)、エルビウム(Er)、ガドリニウム(Gd)、ツリウム(Tm)、鉄(Fe)、カドミウム(Cd)又はその組合せからなる群から選択される、請求項19に記載の溶接用消耗電極。
【請求項21】
前記流動性向上金属が、前記溶接用消耗電極を溶解させることによって形成される溶解溶接金属の凝固温度範囲が65℃未満であるような0.05~0.5重量%の亜共晶濃度で存在する、請求項14に記載の溶接用消耗電極。
【請求項22】
前記ベース金属組成物が、溶接用消耗電極を使用して形成される前記溶接金属中でアルミニウムと合金化するための合金化元素として、シリコン(Si)及びマグネシウム(Mg)の一方又は両方をさらに含む、請求項14に記載の溶接用消耗電極。
【請求項23】
少なくとも70重量%のアルミニウムを含むベース金属組成物と、
アルミニウムと2元系共晶を形成することが可能な流動性向上金属と
を含む溶接用消耗電極であって、前記2元系共晶が、595~660℃の共晶温度で2元系共晶凝固を受け、
前記流動性向上金属が、前記溶接用消耗電極から形成される溶解溶接金属が、前記流動性向上金属を含まない状態で同一ベース金属組成物を有する溶接用消耗電極を使用して実質的に同一の溶接条件下で形成される溶解溶接金属に対して少なくとも5%より高い流動性を有するような形態及び亜共晶濃度で存在する、溶接用消耗電極。
【請求項24】
前記亜共晶濃度が、前記溶接用消耗電極から形成される前記溶解溶接金属がアルミニウム結晶構造を有する単一相へと凝固するようなものである、請求項23に記載の溶接用消耗電極。
【請求項25】
前記流動性向上金属が、0.05~0.50重量%の量で存在する、請求項24に記載の溶接用消耗電極。
【請求項26】
前記流動性向上金属が、オキシド、ハライド、ヒドロキシド、スルフィド、スルフェート、カーボネート、ホスフェート、ニトリド、ニトリト、ニトリド、カーバイド、ボライド、アルミニド、テルリド又はそれらの組合せから選択される化合物で存在する、請求項23に記載の溶接用消耗電極。
【請求項27】
前記流動性向上金属が、ニッケル(Ni)、金(Au)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ユウロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、イッテルビウム(Yb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ランタン(La)、ジスプロシウム(Dy)、サマリウム(Sm)、ルテチウム(Lu)、ツリウム(Tm)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、リチウム(Li)、鉄(Fe)、カドミウム(Cd)又はその組合せからなる群から選択される、請求項23に記載の溶接用消耗電極。
【請求項28】
前記2元系共晶が、共晶温度>595及び<630℃で2元系共晶凝固を受ける、請求項27に記載の溶接用消耗電極。
【請求項29】
前記流動性向上金属が、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、ルテチウム(Lu)、イッテルビウム(Yb)、リチウム(Li)又はその組合せからなる群から選択される、請求項28に記載の溶接用消耗電極。
【請求項30】
前記2元系共晶が、共晶温度≧630及び<645℃で2元系共晶凝固を受ける、請求項27に記載の溶接用消耗電極。
【請求項31】
前記流動性向上金属が、ニッケル(Ni)、ジスプロシウム(Dy)、ユウロピウム(Eu)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、ランタン(La)、プラセオジミウム(Pr)、サマリウム(Sm)、ネオジム(Nd)又はその組合せからなる群から選択される、請求項30に記載の溶接用消耗電極。
【請求項32】
前記2元系共晶が、共晶温度≧645及び≦660℃で2元系共晶凝固を受ける、請求項27に記載の溶接用消耗電極。
【請求項33】
前記流動性向上金属が、金(Au)、ストロンチウム(Sr)、スカンジウム(Sc)、エルビウム(Er)、ガドリニウム(Gd)、ツリウム(Tm)、鉄(Fe)、カドミウム(Cd)又はその組合せからなる群から選択される、請求項32に記載の溶接用消耗電極。
【請求項34】
前記ベース金属組成物が、溶接用消耗電極を使用して形成される前記溶接金属中でアルミニウムと合金化するための合金化元素として、シリコン(Si)及びマグネシウム(Mg)の一方又は両方をさらに含む、請求項23に記載の溶接用消耗電極。
【請求項35】
前記溶接用消耗電極が、前記ベース金属組成物を含むコアワイヤと、前記コアワイヤの周囲に前記流動性向上金属を含む被覆とを含む被覆電極である、請求項23に記載の溶接用消耗電極。
【請求項36】
前記溶接用消耗電極が、コアとシースとを含むコアードワイヤであり、前記コアが前記流動性向上金属を含み、及び前記シースが前記ベース金属組成物を含む、請求項23に記載の溶接用消耗電極。
【請求項37】
前記溶接用消耗電極が、前記ベース金属組成物と前記流動性向上金属との均一混合物を含むソリッドワイヤである、請求項23に記載の溶接用消耗電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、「溶接用アルミニウム系電極」という名称の2021年9月2日出願の米国非仮特許出願第17/446,778号、「溶接用アルミニウム系電極」という名称の2021年9月1日出願の米国非仮特許出願第17/464,535号、及び「溶接用アルミニウム系電極」という名称の2020年10月13日出願の米国仮特許出願第63/090,867号(それらの内容はその全体が本願をもって参照により本明細書に組み込まれる)に基づく優先権の利益を主張する。
【0002】
本開示の技術は、一般的には溶接に関し、より特定的にはアルミニウム系消耗電極及びそれを用いた溶接方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アルミニウム及びその合金の工学的使用は、このユニークな材料の各種有利な性質が理由で、増加し続けている。アルミニウム及びその合金の有利な特徴として、いくつか挙げると、低重量、比較的広範囲のチューナブルな強度特性、優れた耐食性、熱伝導率、反射率、並びに広範に利用可能な形状及び組成が挙げられる。これらの及び他の性質に起因して、アルミニウムは、航空宇宙から熱交換器、トレーラー製造、ごく最近では自動車車体パネル及びフレームまで、多くの用途で優れた選択肢でありうる。しかしながら、アルミニウムの溶接は、溶接欠陥の抑制及び溶接金属の性能向上をはじめとするユニークな課題をもたらしうる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Norwegian University of Science and Technology(2005)に寄稿された博士号論文、M.Di Sabatino,“Fluidity of Aluminium Foundry Alloys,”
【非特許文献2】“On Fluidity of Aluminum Alloys,”La Metallurgia Italiana 100(3):17-22(2008)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、溶接用消耗電極は、少なくとも70重量%のアルミニウムを含むベース金属組成物と、アルミニウムと2元系共晶を形成することが可能な流動性向上金属とを含み、2元系共晶は、595~660℃の共晶温度で2元系共晶凝固を受ける。流動性向上金属は、溶接用消耗電極を溶解させることによって形成される溶解溶接金属の凝固温度範囲が65℃未満であるような形態及び0.05~0.5重量%の亜共晶濃度で存在する。
【0006】
他の一態様では、溶接用消耗電極は、少なくとも70重量%のアルミニウムを含むベース金属組成物と、アルミニウムと2元系共晶を形成することが可能な流動性向上金属とを含み、2元系共晶は、595~660℃の共晶温度で2元系共晶凝固を受ける。流動性向上金属は、オキシド、ハライド、ヒドロキシド、スルフィド、スルフェート、カーボネート、ホスフェート、ニトリド、ニトリト、ニトリド、カーバイド、ボライド、アルミニド、テルリド又はそれらの組合せから選択される化合物の形態で存在する。
【0007】
他の一態様では、溶接用消耗電極は、少なくとも70重量%のアルミニウムを含むベース金属組成物と、アルミニウムと2元系共晶を形成することが可能な流動性向上金属とを含み、2元系共晶は、595~660℃の共晶温度で2元系共晶凝固を受ける。流動性向上金属は、溶接用消耗電極から形成される溶解溶接金属が、流動性向上金属を含まない状態で同一ベース金属組成物を有する溶接用消耗電極を使用して実質的に同一の溶接条件下で形成される溶解溶接金属に対して少なくとも5%より高い流動性を有するような形態及び亜共晶濃度で存在する。
【0008】
他の一態様では、溶接用消耗電極は、少なくとも70重量%のアルミニウムを含むベース金属組成物と、アルミニウムと2元系共晶組成物を形成することが可能な流動性向上金属とを含み、2元系共晶組成物は、純粋なアルミニウムの溶解温度よりも90℃未満より低い共晶温度で2元系共晶凝固を受け、流動性向上金属は、溶接用消耗電極から形成される溶解溶接金属が、流動性向上金属を含まない状態で溶接用消耗電極を使用して実質的に同一の溶接条件下で形成される溶解溶接金属に対して、以下の1つ以上を有するような形態及び量で存在する:
少なくとも5%より低い溶接金属高さ(H)、
少なくとも5%より高い溶接金属幅(W)、
少なくとも5%より低いH/W比率、
少なくとも5%より低い侵入(P)、及び
少なくとも5%より低い溶接止端部角度(q)。
【0009】
他の一態様では、溶接用消耗電極は、少なくとも70重量%のアルミニウムを含むベース金属組成物と、アルミニウムと2元系共晶組成物を形成することが可能な流動性向上金属とを含み、2元系共晶組成物は、純粋なアルミニウムの溶解温度よりも90℃未満より低い共晶温度で2元系共晶凝固を受ける。流動性向上金属は、溶接用消耗電極から形成される溶解溶接金属が、流動性向上金属を含まない状態で溶接用消耗電極を使用して実質的に同一の溶接条件下で形成される溶解溶接金属に対して少なくとも5%より高い流動性を有するような形態及び量で存在する。
【0010】
他の一態様では、溶接用消耗電極は、少なくとも70重量%のアルミニウムを含むベース金属組成物と、ニッケル(Ni)、金(Au)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ユウロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、イッテルビウム(Yb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ランタン(La)、ジスプロシウム(Dy)、サマリウム(Sm)、ルテチウム(Lu)、ツリウム(Tm)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、リチウム(Li)、鉄(Fe)、カドミウム(Cd)又はその組合せからなる群から選択される流動性向上金属とを含む。流動性向上金属は、アルミニウム及び流動性向上金属の合計重量に基づき、2元系共晶組成物に対して0.05重量%より多い及び以下の量で存在する。
【0011】
他の一態様では、溶接用消耗電極は、少なくとも70重量%のアルミニウムを含むベース金属組成物と、ニッケル(Ni)、金(Au)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ユウロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、イッテルビウム(Yb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ランタン(La)、ジスプロシウム(Dy)、サマリウム(Sm)、ルテチウム(Lu)、ツリウム(Tm)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、リチウム(Li)、鉄(Fe)、カドミウム(Cd)又はその組合せからなる群から選択される流動性向上金属とを含む。流動性向上金属は、溶接用消耗電極から形成される溶解溶接金属が、流動性向上金属を含まない状態で溶接用消耗電極を使用して実質的に同一の溶接条件下で形成される溶解溶接金属に対して少なくとも5%より高い流動性を有するような形態及び量で存在する。
【0012】
他の一態様では、溶接用消耗電極は、少なくとも70重量%のアルミニウムを含むベース金属組成物と、ニッケル(Ni)、金(Au)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ユウロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、イッテルビウム(Yb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ランタン(La)、ジスプロシウム(Dy)、サマリウム(Sm)、ルテチウム(Lu)、ツリウム(Tm)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、リチウム(Li)、鉄(Fe)、カドミウム(Cd)又はその組合せからなる群から選択される流動性向上金属とを含み、流動性向上金属は、溶接用消耗電極から形成される溶解溶接金属が、流動性向上金属を含まない状態で溶接用消耗電極を使用して実質的に同一の溶接条件下で形成される溶解溶接金属に対して、以下の1つ以上を有するような形態及び量で存在する:
少なくとも5%より低い溶接金属高さ(H)、
少なくとも5%より高い溶接金属幅(W)、
少なくとも5%より低いH/W比率、
少なくとも5%より低い侵入(P)、及び
少なくとも5%より低い溶接止端部角度(q)。
【0013】
なお他の一態様では、アルミニウムワークピースを溶接する方法は、アルミニウム系ベース金属組成物と、ニッケル(Ni)、金(Au)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ユウロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、イッテルビウム(Yb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ランタン(La)、ジスプロシウム(Dy)、サマリウム(Sm)、ルテチウム(Lu)、ツリウム(Tm)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、リチウム(Li)、鉄(Fe)、カドミウム(Cd)又はその組合せからなる群から選択される流動性向上金属とを含む、いずれかによる溶接用消耗電極を提供すること、及び1分あたり10~50インチの溶接移動速度で溶接用消耗電極を用いて溶接金属を形成するようにアークを発生することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】金属アーク溶接プロセスの概略図である。
図2】溶接ビーズの概略断面図である。
図3A】2元系共晶を有する合金の凝固温度範囲を示すための合金の理想2元系相図である。
図3B】Al-Ce合金系の2元系相図である。
図4A】実施形態に従って、溶解溶接金属流動性を向上させるためにその中で合金化される流体向上金属を有する溶接用ソリッドワイヤの概略図である。
図4B】実施形態に従って溶解溶接金属流動性を向上させるように混合された流体向上金属化合物を中に有する溶接用ソリッドワイヤの模式図である。
図4C】実施形態に従って溶解溶接金属流動性を向上させるように構成された溶接用被覆ソリッドワイヤの模式図である。
図4D】実施形態に従って溶解溶接金属流動性を向上させるように構成された溶接用コアードワイヤの模式図である。
図5】実施形態に従ってアルミニウム溶接時の溶解溶接金属流動性を向上させる方法を例示するフローチャートである。
図6】実施形態に従って溶解溶接金属流動性を向上させるように構成された溶接用ワイヤを用いたアルミニウムの溶接に適合化されたガスメタルアーク溶接(GMAW)システムを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
アルミニウムの重量は、鋼の約1/3である。1立方インチのアルミニウムは、0.283lb/inの重量の鋼と比較して0.098lb/inの重量である。アルミニウムは、純アルミニウムの引張り強度13,000psiから最強の熱処理可能アルミニウム合金の引張り強度90,000psiまで変動する広範囲の強度特性を有する。アルミニウムは、多くの環境で優れた耐食性を提供する。アルミニウムの表面上に生成する薄い耐火性酸化物は、保護バリアを提供する。アルミニウムは、鋼の最大5倍の熱伝導性である。アルミニウムは、放射熱を反射し、且つアルミニウムの表面仕上げは、この特徴の利点を生かすべく頻繁に使用される。アルミニウムのこれらの及び他の有利な性質に起因して、アルミニウムの工学的用途は、数及び複雑性の点で成長し続けている。それに対応して、溶接欠陥の抑制及び溶接金属の性質向上をはじめとするアルミニウムの溶接の課題は成長し続けている。一般に、アルミニウムは、いくつかある理由の中でもとくに、大気ガスへのアルミニウムのより高い親和性、より高い熱膨張係数、より高い熱伝導率及び電気伝導率、より低い剛性、及びより高い固化温度範囲をはじめとする各種理由に起因して、鋼よりも比較的低い溶接性を有するとみなされている。アルミニウム合金全般のこれらの特性は、アルミニウムの溶接で溶接金属中に欠陥生成をより起こりやすくする可能性がある。
【0016】
多くのアルミニウム系溶接電極は、不十分な溶解溶接金属流動性を示す。Alの溶接性を低下させる種々の理由の間で、いくつかのアルミニウム系溶接電極から形成される溶解溶接金属の相対的に低い流動性は、溶接金属において特定の種類の欠陥を引き起こす可能性がある。例えば、より低い溶解溶接金属流動性によって、相対的に高い移動速度でのアンダーカット、溶接止端部での不十分な湿潤、より高い多孔性及びより低い侵入が導かれる可能性がある。より低い溶解溶接金属流動性によって、樹枝状組織内多孔性形成による溶接金属中でのより高い多孔性が導かれる可能性もある。加えて、より低い溶解溶接金属流動性は、より高い溶接ビーズをもたらす可能性があり、これは、次に、溶接止端部での応力集中の可能性を増加させ、疲労モードでの破損を導く可能性がある。これらの溶接金属欠陥に対する影響を引き起こすことに加えて、相対的に低い溶解溶接金属流動性が溶接プールの制御性を制限する可能性があるため、それは次に溶接をより遅い移動速度に制限する可能性があり、そしてそれによって生産性が低下する。
【0017】
加えて、いくつかのアルミニウム系溶接電極は、他、例えば4XXX合金と比較して、より高い溶解溶接流動性を提供するが、それらは異なる課題の組合せを有する。例えば、いくつかの素子、例えばシリコンは、相対的に高い溶解溶接流動性を提供することが知られている。しかしながら、Siを含有するAlベースの溶接電極から形成される溶接金属は、溶接剪断強度を悪化させる可能性がある。MgSi相などの脆性の相が溶接の延性を低下させ得るため、4XXX合金をベースとするそのような電極は、いくつかの用途に関して、5XXX合金から形成されるワークピースを溶接するために適切とはなり得ない。
【0018】
制限なされないが、開示された技術は、アルミニウム系溶接電極のこれら及び他の態様に対処するものである。特に、本明細書で開示される種々の実施形態による開示された溶接電極は、いくつかの望ましい特性、例えば剪断強度を実質的に悪化することなく、溶解溶接金属流動性を増加させることができる合金化素子を含む。
【0019】
溶接用アルミニウム系ワイヤを用いたアーク溶接
図1は、実施形態に従って金属アーク溶接プロセスでの溶接用Al系ワイヤ又は電極の構成を示す模式図である。溶接用Al系ワイヤ6は、実施形態に従って溶解溶接金属の流動性を低下させるように構成可能である。例示された金属アーク溶接、たとえば、ガスメタルアーク溶接(GMAW)では、電気アークは、一方の電極4(たとえばアノード(+))に電気接続された溶接用Al系消耗ワイヤ6と他方の電極(たとえばカソード(-))として機能するワークピース2との間で形成される。その後、中性及びイオン化ガス分子さらにはアークにより気化された溶接用Al系ワイヤ6の材料の中性及び荷電クラスター又はドロップレットを含有するプラズマ8が持続される。溶接時、溶接用消耗ワイヤ6は、ワークピース2に向かって前進し、溶接用Al系ワイヤ6から生成される得られた溶融溶接金属ドロップレットは、ワークピース上に堆積して溶接金属又はビーズを生成する。
【0020】
溶接用Al系ワイヤ6は、ソリッド電極ワイヤ(GMAW)又は金属コアードワイヤ(GMAW-C)のどちらかを利用しうるガスメタルアーク溶接プロセスをはじめとする各種アーク溶接プロセスに使用可能である。溶接用Al系ワイヤ6はまた、ガスシールドフラックスコアードアーク溶接(FCAW-G)又はセルフシールドフラックスコアードアーク溶接(FCAW-S)でありうるフラックスコアードアーク溶接プロセス(FCAW)に使用可能である。溶接用Al系ワイヤ6はさらに、いくつかある中でもとくに、シールドメタルアーク溶接(SMAW)プロセス及びサブマージアーク溶接(SAW)プロセスに使用可能である。
【0021】
溶解溶接金属の流動性が向上する溶接用アルミニウム系ワイヤ
アルミニウム溶接の上記及び他の課題に対処するために、実施形態に係る溶接用ワイヤは、溶接金属の溶解溶接金属の流動性を実質的に向上させるように構成される。溶接時のスマットの生成を抑制するために、実施形態に係る溶接用ワイヤ6(図1)は、少なくとも70重量%のアルミニウムを含むAl系ベース金属組成物と、流動性向上金属と、を含む。ベース金属組成物は、ワークピース中に存在するものにオーバーラップしてもよい元素をはじめとする最終溶接金属の所望の特性を提供する働きをしうる、いずれかの他の元素を追加的に含みうる。以下に議論されるように、本発明者は、有効な流動性向上金属が、アルミニウムと2元系共晶を形成することが可能な金属を含み、2元系共晶は、純粋なアルミニウムの溶解温度よりも90℃未満より低い共晶温度で2元系共晶凝固を受けるということを発見した。流動性向上金属は、溶接用消耗電極から形成される溶解溶接金属が、流動性向上金属を含まない状態でベース金属組成物を使用して形成される溶解溶接金属に対して少なくとも5%より高い流動性を有するような形態及び量で存在する。溶解溶接金属の流動性を向上させることによって、溶接プールの制御性が改善され、次により急速な移動速度での溶接が可能となり、それによって生産性が改善される。流動性が向上することによって、例えば、アンダーカット、溶接止端部における不十分な湿潤性、より高い多孔性、より低い侵入及びより高い溶接ビーズを含む、上記された種々の望ましくない溶接特徴の減少によって、得られる溶接金属の性能の改善を導くことも可能である。
【0022】
溶解溶接金属の流動性及び溶接金属形状
本明細書中及び溶接の技術において記載されるように、制限されないが、流動性という用語は、溶解金属に関して、冶金学的な流動性を意味し、これは、溶解金属が凝固する前に一定の断面積のモデル中で流動することのできる距離の基準である。この定義が、液体の基本温度関連特性である粘度の逆として流動性を記載する物理的特性において提示される定義とは異なることは認識されるであろう。
【0023】
本明細書で記載されるように、本明細書で開示される溶解溶接金属の記載が定義のいずれにおいても矛盾しない限り、流動性という用語は冶金学的及び物理学的定義の両方を含む。しかしながら、本明細書で開示される溶解溶接金属の記載が定義のいずれかにおいて矛盾している場合、流動性という用語は、記載が矛盾しない冶金学及び物理学的定義の1つを意味する。
【0024】
溶解金属の流動性を測定するために、多数の方法を利用することができる。多くの測定技術に共通することは、溶解金属を狭いチャネルに流すことである。流動性は、凍結する前に金属流によって充填される型の長さ又は体積の量として報告される。流動性試験は、種々の様式で実行可能である。最も普及している流動性試験は、中でも螺旋形型試験及び真空流動性試験である。前者の試験は、溶解金属が螺旋形の型中で流動する長さを測定する。後者の試験は、真空ポンプを使用することによって、るつぼから吸収した時に、金属が狭いチャネル内で流動する長さを測定する。これら及び他の方法は、(非特許文献1)及び(非特許文献2)に開示されている。これらの文献の内容は、参照によって全体的に組み込まれる。
【0025】
本明細書で記載されるように、上記される試験のいずれかを使用して測定される場合、本明細書で開示される溶解溶接金属の流動性の記載が矛盾しない限り、記載された流動性は上記される試験のいずれか及び全てを使用して測定されるものを指す。しかしながら、本明細書で開示される溶解溶接金属の流動性の記載が上記される試験方法のいずれかで矛盾している場合、記載された流動性は、記載と一致している結果を生じる上記の試験のいずれかを使用して測定されるものを指す。
【0026】
溶接金属の流動性は、少し例を挙げれば、溶解溶接金属の化学組成、凝固範囲及び融解熱などの熱力学的パラメーター、並びに粘度及び表面張力などの物理的パラメーターを含む複数の因子に影響を受ける。特に、溶接凝固力学は、溶接の流動性を決定することにおいて重要な役割を演ずる。溶接凝固は、さらに以下に記載されるように、大部分は溶接組成物及びそれから得られる熱力学によって支配される。
【0027】
溶接流動性は、概略的に図2中に示されるように、得られる溶接金属の形状に直接影響を及ぼす可能性がある。図2は、ワークピース又は基材22上で形成される溶接金属ビーズ26、及びワークピース22中への深さを有する熱影響領域又は侵入領域24の概略断面図である。本明細書で記載されるように、溶接金属26は、ビーズ高さ(H)、ビーズ幅(W)、侵入の深さ(P)及び止端部角度(θ)によって特徴づけることができる。H及びPは、ワークピース22の主要表面の平面から垂直方向に測定される。Wは、ワークピース22の主要表面の平面に沿って水平方向に測定される。qは、ワークピース22の主要表面の平面と、溶接金属26の基部における接線との間で測定される。上記で示されたように、多くの用途に関して、溶解溶接金属のより高い流動性が望ましくなり得、これは次に、より低いH、より高いW、より低いH/L比率、より高いP及びより小さいθの1つ以上をもたらす。
【0028】
いくつかのプロセスパラメーターを変更することによって、所与の組成に関して異なるビーズプロファイルを達成することができることは認識されるであろう。例えば、H、W及び/又はH/Wの増加は、特定のアーク電圧におけるワイヤ供給速度(WFS)、及びコンタクトチップ-ワークピース距離(CTWD)を増加させることで得られ得る。一定のWFSにおいて、Hは増加し得、且つ/又はWはアーク電圧の減少によって減少し得る。プロセスパラメーターに加えて、溶接金属の形状は、組成、形状及びワークピースの表面条件などの多くの外因子に依存するため、当業者は、その中に流動性向上金属が存在する溶接電極から形成される溶解溶接金属の流動性の改善で最も意味がある測定は、そのようにして形成された溶接金属が、流動性向上金属を含まない状態で同一ベース金属組成物を有する溶接用消耗電極を使用して実質的に同一の溶接条件下で形成される溶接金属と比較される場合に実行可能であることを認識するであろう。
【0029】
流動性向上溶接金属の組成及び熱力学的特徴
純粋な金属又は共晶合金に関して、凝固は単一温度で生じる。共晶温度以外の組成物の合金の場合、液体混合物の凝固が温度の範囲以上で生じる可能性がある。この温度の範囲以上で、1つ以上の相の沈殿が生じる可能性がある。本発明者は、沈殿によって、凝固溶接金属と融合線との間で液体と沈殿物とのスラリー様混合物を含む「柔らかい(mushy)」領域の形成が生じる可能性があることを発見した。いずれかの理論に束縛されないが、凝固の間に形成する沈殿物は、新たな粒子の核形成部位として機能する可能性があり、それは溶解溶接金属の流動性を制限する可能性がある。本発明者は、本明細書で記載されるように、「柔らかい(mushy)」領域が合金化素子として形成されることが可能な温度の相対的に小さい範囲を有する特定の流動性向上金属を添加することによって、溶解溶接金属の流動性を実質的に向上することができることを発見した。
【0030】
図3Aは、凝固を受ける仮定的合金の、単なる例証目的のための概略的な理想2元系相図である。溶接金属の凝固は平衡条件から有意に逸脱し得るが、それにもかかわらず、平衡相図は凝固プロセスに対する有益な洞察を提供することは認識されるであろう。x及びy軸は、それぞれ、合金化素子又は溶質の濃度及び温度を表す。示された相図は、固相線及び液相線が直線であると仮定することによって理想化されるが、実際の合金系は、曲線状の固相線及び液相線を有することができることは認識されるであろう。組成Xmaxは、単一相合金としての2元系合金の凝固のための合金化素子又は溶質の最大含有量を意味する。分配係数kはX/Xとして定義されることが可能であり、X及びXは、所与の温度において平衡である固体及び液体中の溶質のモル分率である。凝固プロセスは、複雑な様式で、温度勾配、冷却速度及び成長速度などの種々の因子に依存する。平衡条件下で組成Xを有する合金は温度Tで凝固し始め、組成kXで少量の固体沈殿物が形成する。温度が低下すると、例えばTにおいて、より多くの固体が形成し、そして冷却が広い固体状態拡散を可能にするために十分遅い場合、固体及び液体は固相線及び液相線に沿って組成X、Xを有する。いずれの温度における固体及び液体の相対量も、てこの原理によって与えられる。Tにおいて、液体の最後の液滴は組成X/kを有し、そして凝固された金属は組成Xを有するであろう。
【0031】
再び図2を参照すると、凝固は、侵入領域24の深さを定義する融合線で一般に開始し、そしてベース金属粒子は核形成部位として機能する。ベース金属(BM)のベース合金及び充填剤合金が異なるか又は同一であるかどうかということ次第で、融合線付近の粒子成長は、それぞれ、エピタキシャル又は非エピタキシャル機構によって生じることが可能である。融合線から離れた溶接金属の残りは競争的成長機構によって凝固し、それは最大の熱抽出の方向に依存する可能性がある。純粋な素子に関して、溶接の不純物の欠如のため、溶接は相対的に自由に流動することが可能である。しかしながら、合金において、非ゼロの溶質濃度において図3A中に概略的に示されるように、凝固は温度範囲上で起こる。これによって、凝固溶接金属と、液体及び固体沈殿物の混合物を含有する融合線との間で液体と沈殿物とのスラリー様混合物を含む「柔らかい(mushy)」領域の形成が導かれる。凝固の間に形成される沈殿物は、次に、溶接のフローを妨害する可能性のある新しい粒子の核形成部位として機能する可能性がある。例えば、Al-マグネシウム合金から形成される溶接電極から形成される溶接金属で観察される相対的に不十分な溶接流動性は、部分的に大きい凝固範囲に起因している可能性がある。本発明者は、「柔らかい」領域が形成することができる相対的に小さい温度範囲を有する流動性向上素子を添加することによって、溶解溶接金属のフローを妨害する沈殿物の形成を減少することができ、それによって実質的に溶解溶接金属の流動性を強化することができることを発見した。
【0032】
純粋な素子が別の素子と合金化されたら、流動性は最初にある程度は減少する。次いで、共晶組成に達するまで流動性は増加し始め、次いで再び、共晶組成を越えて減少し始める。Al-Si合金は例外であり、流動性は共晶組成(12.5重量%のSi)を超えて増加する。SiはAlより4.5倍高い融解熱を有し、この余分な熱によって溶接流体を保つことができる。Al-Mg合金の場合、流動性は、2重量%のMgまでMgの導入とともに純粋なAlレベルから急激に低下し、次いで、共晶組成(約33重量%のMg)まで増加する。
【0033】
溶接金属流動性のこれらの特性を認めて、本発明者は、溶接ワイヤの一部としての特定の有効量の特定の流動性向上素子の添加によって流動性を実質的に増加させることができるということを発見した。各種実施形態によれば、溶接用消耗電極は、少なくとも70重量%のアルミニウムを含むベース金属組成物と流動性向上金属とを含む。
【0034】
ベース金属組成物は、溶接されるワークピースに類似した組成を有しうる。ベース金属組成物は、各種展伸用アルミニウム合金タイプを表すためにAluminum Association,Inc.により開発された4桁数字系による当技術分野で公知のいずれかの組成を含みうる。ベース金属組成物は、たとえば、以下の1つ以上を含みうる。
【0035】
1XXXシリーズ:これは、電気及び化学産業で主に使用される99パーセント以上の純度のアルミニウムである。この合金は、その電気伝導率及び/又は耐食性が理由で通常使用される。熱間割れに対するその感受性は非常に低い。
【0036】
2XXXシリーズ:銅は、適正に熱処理されたときにきわめて高い強度を提供するこのグループの主要合金化元素である。この合金は、それほど良好な耐食性をもたらさないこともあり、純アルミニウム又は特殊合金アルミニウムでクラッドされることが多い。この合金は、航空機産業で使用される。
【0037】
3XXXシリーズ:マンガンは、非熱処理可能なこのグループの主要合金化元素である。マンガン含有率は、約2.0パーセント未満でありうる。この合金は、中程度の強度を有し、容易に加工可能である。この中程度の強度のアルミニウム-マンガン合金は、比較的耐クラック性である。
【0038】
4XXXシリーズ:ケイ素は、このグループの主要合金化元素である。それは、融点を実質的に低減するのに十分な量で添加可能であり、鑞付け用合金及び溶接用電極に使用される。このグループの合金のほとんどは、非熱処理可能である。
【0039】
5XXXシリーズ:マグネシウムは、中強度の合金であるこのグループの主要合金化元素である。それは、良好な溶接特性及び良好な耐食性を有するが、冷間加工量は、制限されるべきである。このより高強度のアルミニウム-マグネシウム合金は、最も一般的な構造用アルミニウムシート及びプレート合金である。このシリーズは、非熱処理可能アルミニウム合金の中で最も高い強度を有する。それは、その優れた耐食性が理由で、化学品貯蔵タンク及び圧力ベッセル、さらには構造用途、鉄道車両、ダンプトラック、及び橋に使用される。
【0040】
6XXXシリーズ:このグループの合金は、熱処理可能にするケイ素及びマグネシウムを含有する。この合金は、中強度及び良好な耐食性を有する。この中強度の熱処理可能なシリーズは、自動車、パイプ、レール、及び構造押出し用途で主に使用される。
【0041】
7XXXシリーズ:亜鉛は、このグループの主要合金化元素である。マグネシウムもまた、この合金のほとんどに含まれる。全体として、それは、航空機フレームに使用される非常に高い強度の熱処理可能合金を生成する。それは、航空機産業で主に使用される。7XXXシリーズの溶接性は、より高い銅グレードでは損なわれるおそれがあり、このグレードの多くは、広範な融解範囲及び低固相線融解温度に起因してクラック感受性である。それは、自転車フレーム及び他の押出し用途に広範に使用される。
【0042】
本明細書に開示される各種実施形態に係る溶接用ワイヤのベース金属組成物は、溶接用ワイヤの全重量を基準にして0.01~0.02%、0.02~0.05%、0.05~0.10%、0.1~0.2%、0.2~0.5%、0.5~1.0%、1.0~1.5%、1.5~2.0%、又はこれらの値のいずれかにより定義される範囲内の値の重量パーセントのMnと、溶接用ワイヤの全重量を基準にして0.1~0.2%、0.2~0.5%、0.5~1.0%、1.0~2.0%、2.0~5.0%、5.0~10%、10~15%、15~20%、又はこれらの値のいずれかにより定義される範囲内の値の重量パーセントのSiと、溶接用ワイヤの全重量を基準にして0.02~0.05%、0.05~0.10%、0.1~0.2%、0.2~0.5%、0.5~1.0%、又はこれらの値のいずれかにより定義される範囲内の値の重量パーセントのFeと、溶接用ワイヤの全重量を基準にして0.1~0.2%、0.2~0.5%、0.5~1.0%、1.0~2.0%、2.0~5.0%、5.0~10%、又はこれらの値のいずれかにより定義される範囲内の値の重量パーセントのMgと、溶接用ワイヤの全重量を基準にして0.01~0.02%、0.02~0.05%、0.05~0.10%、0.1~0.2%、0.2~0.5%、0.5~1.0%、又はこれらの値のいずれかにより定義される範囲内の値の重量パーセントのCrと、溶接用ワイヤの全重量を基準にして0.01~0.02%、0.02~0.05%、0.05~0.10%、0.1~0.2%、0.2~0.5%、0.5~1.0%、1.0~2.0%、2.0~5.0%、5.0~10%、又はこれらの値のいずれかにより定義される範囲内の値の重量パーセントのCuと、溶接用ワイヤの全重量を基準にして0.02~0.05%、0.05~0.10%、0.1~0.2%、0.2~0.5%、0.5~1.0%、又はこれらの値のいずれかにより定義される範囲内の値の重量パーセントのTiと、溶接用ワイヤの全重量を基準にして0.05~0.10%、0.1~0.2%、0.2~0.5%、0.5~1.0%、又はこれらの値のいずれかにより定義される範囲内の値の重量パーセントのZnと、溶接用ワイヤの全重量を基準にして70~75%、70~75%、75~80%、80~85%、85~90%、90~95%、95~99.9%、又はこれらの値のいずれかにより定義される範囲内の値の重量パーセントのAlと、を含みうるとともに、これらは、溶接用ワイヤ又はベース金属組成物の残部でありうる。
【0043】
種々の実施形態によって、溶接用消耗電極は、溶接用消耗電極から形成される溶解溶接金属が、流動性向上金属を除いて同一組成を有する溶接用消耗電極を使用して実質的に同一の条件下で形成される溶解溶接金属に対して、少なくとも5%、10%、20%、50%、100%、200%、500%、1000%、又はこれらの値のいずれかによって定義される範囲で値でより高い流動性を有するような形態及び量で存在する流動性向上金属を含む。
【0044】
上記の通り、凝固された溶接金属の堆積後の特徴は、溶解溶接金属の流動性の指標を提供することもできる。再び図2を参照して、溶接金属流動性は、高さ、幅、高さ/幅比率及び/又は溶接止端部角度などの溶接金属形状因子に基づいて推論することができる。種々の実施形態によって、流動性向上金属は、溶接用消耗電極から形成される溶解溶接金属が、流動性向上金属を除いて同一組成を有する溶接用消耗電極を使用して実質的に同一の条件下で形成される溶解溶接金属に対して、以下の特徴の1つ以上を有するような形態及び量で存在する:少なくとも5%、50%、100%、150%、200%、250%、300%又はこれらの値のいずれかによって定義される範囲の値でより低い溶接金属高さ(H);少なくとも5%、20%、40%、60%、80%、100%又はこれらの値のいずれかによって定義される範囲の値でより高い溶接金属幅(W);少なくとも5%、50%、100%、150%、200%、250%、300%又はこれらの値のいずれかによって定義される範囲の値でより低いH/W比率;少なくとも5%、20%、40%、60%、80%、100%又はこれらの値のいずれかによって定義される範囲の値でより低い侵入(P);及び少なくとも5%、20%、40%、60%、80%、100%又はこれらの値のいずれかによって定義される範囲の値でより低い溶接止端部角度(θ)。
【0045】
上記の通り、本発明者は、有効な流動性向上素子の特性は、上記「柔らかい」領域が形成される相対的に低い温度範囲で、アルミニウムとの2元系共晶組成を形成する性能であることを発見した。この温度範囲を示す物理的パラメーターは、凝固温度範囲である。したがって、本発明者は、有効な流動性向上素子の望ましい物理的特性の1つは、関連した組成物範囲内の相対的に狭い凝固温度範囲であることを発見した。凝固温度範囲は、液相線と固相線との間の温度範囲として定義されることが可能である。図3を再び参照して、組成物Xの凝固温度範囲はT~Tである。本発明者は、実施形態による相対的に狭い凝固温度範囲を有する合金系が、純粋なアルミニウムの溶解温度の相対的に近い共晶温度で2元系共晶凝固を受ける2元系共晶組成を形成することをさらに認識した。
【0046】
理想2元系合金系に関する図3Aを再び参照すると、凝固温度範囲の最大値は、純粋な金属及の溶解温度と共晶温度Tとの間の差異を上回らないことが認識されるであろう。そのように、共晶温度は、流動性向上金属の選択基準となることが可能である。種々の実施形態によれば、流動性向上金属は、90℃、80℃、70℃、60℃、50℃、40℃、30℃、20℃、10℃未満、又はこれらの値のいずれかによって定義される範囲の値未満で純粋なアルミニウムの溶解温度より低い温度で2元系共晶組成を形成する。アルミニウムの溶解温度が660℃である条件に関して、2元系共晶組成は、570℃、580℃、590℃、600℃、610℃、620℃、630℃、640℃、650℃、660℃未満又はこれらの値のいずれかによって定義される範囲の値未満の溶解温度で溶解する。例えば、実施形態によってアルミニウムと2元系共晶を形成することができる流動性向上金属は、595~660℃の共晶温度で2元系共晶凝固を受ける。例示的な目的のため、これらの特徴を有する合金系の一例はAl-Ce合金系であり、その2元系相図は図3Bに示される。示されるように、621℃の共晶温度は595~660℃の範囲内にある。
【0047】
以下の表1は、実施形態による流動性向上素子のいくつかの例に関する、およその最大凝固温度範囲を示す。以下の表2は、溶解溶接金属の流動性を向上することができる流動性向上素子のいくつかの例に関する、共晶温度及び共晶組成及び組成範囲を示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
一実施形態によると、溶接用消耗電極は、少なくとも70重量%のアルミニウムを含むベース金属組成物と、アルミニウムと2元系共晶を形成することが可能な流動性向上金属とを含み、2元系共晶は、595~660℃の共晶温度で2元系共晶凝固を受ける。実施形態による流動性向上金属は、ニッケル(Ni)、金(Au)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ユウロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、イッテルビウム(Yb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ランタン(La)、ジスプロシウム(Dy)、サマリウム(Sm)、ルテチウム(Lu)、ツリウム(Tm)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)、リチウム(Li)、鉄(Fe)、カドミウム(Cd)又はその組合せからなる群から選択される。
【0051】
より特定の実施形態によると、2元系共晶は、共晶温度>595及び<630℃で2元系共晶凝固を受ける。この実施形態によると、流動性向上金属は、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、ルテチウム(Lu)、イッテルビウム(Yb)、リチウム(Li)又はその組合せからなる群から選択される。
【0052】
さらに別の特定の実施形態によると、2元系共晶は、共晶温度≧630及び<645℃で2元系共晶凝固を受ける。この実施形態では、流動性向上金属は、ニッケル(Ni)、ジスプロシウム(Dy)、ユウロピウム(Eu)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、ランタン(La)、プラセオジミウム(Pr)、サマリウム(Sm)、ネオジム(Nd)又はその組合せからなる群から選択される。
【0053】
より特定の実施形態によると、2元系共晶は、共晶温度≧645及び≦660℃で2元系共晶凝固を受ける。この実施形態によると、流動性向上金属は、金(Au)、ストロンチウム(Sr)、スカンジウム(Sc)、エルビウム(Er)、ガドリニウム(Gd)、ツリウム(Tm)、鉄(Fe)、カドミウム(Cd)又はその組合せからなる群から選択される。
【0054】
種々の実施形態によると、流動性向上金属は亜共晶濃度で存在する。図3Aを再び参照して、組成物Xmaxは、2元系合金が単一相合金として凝固する流動性向上金属の最大含有量を意味する。
【0055】
いくつかの実施形態によると、亜共晶濃度は、溶接用消耗電極から形成される溶解溶接金属がアルミニウム(面心立方)結晶構造を有する単一相へと凝固するようなものである。しかしながら、実施形態はそのように限定されず、そして他の実施形態において、溶接用消耗電極から形成される溶解溶接金属はアルミニウム結晶構造を含む多相へと凝固し、少なくとも別の層が流動性向上金属を含む。
【0056】
溶接ワイヤは、溶接ワイヤの全重量基準で、0.01~0.02%、0.02~0.05%、0.05~0.10%、0.1~0.2%、0.2~0.5%、0.5~1.0%、1.0~1.5%の、1.5~2.0%、2.0~2.5%、2.5~3.0%、3.0~3.5%、3.5~4.0%、4.0~4.5%、4.5~5.0%又はこれらの値のいずれかによって定義される範囲の値のこれらの素子の1つ以上を含むことができる。特定の実施形態において、流動性向上金属は、溶接用消耗電極を溶解させることによって形成される溶解溶接金属の凝固温度範囲が65℃未満であるような形態及び0.05~0.5重量%の亜共晶濃度で存在する。
【0057】
これらの実施形態のいくつかにおいて、流動性向上金属は、金属元素の形態で存在し得る。これらの実施形態の他のいくつかにおいて、流動性向上金属は、オキシド、ハライド、ヒドロキシド、スルフィド、スルフェート、カーボネート、ホスフェート、ニトリド、ニトリト、ニトリド、カーバイド、ボライド、アルミニド、テルリド又はそれらの組合せの形態で存在し得る。
【0058】
流動性向上溶接電極の構造
図4Aは、実施形態に従って溶接金属流動性を向上させるように構成された溶接用ソリッドワイヤ40Aの模式図である。例示された実施形態では、スマット抑制金属は、存在する流動性向上金属が以上に記載のベース金属組成物のアルミニウム及び他の金属元素との金属結合を生成するように、ベース金属組成物と合金化されてたとえば固溶体を形成しうる。これらの実施形態では、溶接用消耗電極は、ベース金属組成物と流動性向上金属とにより生成される均一な溶体又は混合物たとえば合金を含むソリッドワイヤである。
【0059】
図4Bは、いくつかの他の実施形態に従って溶接金属流動性を向上させるように構成された溶接用ソリッドワイヤ40Bの模式図である。溶接用ソリッドワイヤ40A(図4A)とは異なり、図4Bに例示される実施形態では、流動性向上金属は、オキサイド、ハライド、ハイドロオキサイド、サルファイド、サルフェート、カーボネート、ホスフェート、ナイトレート、ナイトライト、ナイトライド、カーバイド、ボライド、アルミナイド、テルライド、又はそれらの組合せなどの化合物の形態で存在しうる。これらの実施形態では、溶接用消耗電極は、ベース金属組成物と流動性向上金属の化合物とにより生成させる不均一混合物を含むソリッドワイヤである。流動性向上金属の化合物は、たとえばベース金属組成物のマトリックス内に分散された粉末形態で存在しうる。
【0060】
図4Cは、実施形態に従って溶接金属の流動性を向上させるように構成された溶接用被覆ソリッドワイヤ42の模式図である。図4Dは、実施形態に従って溶接流動性を向上させるように構成された溶接用コアードワイヤ46の模式図である。これらの実施形態では、流動性向上金属は、ベース金属組成物から化学的及び/又は物理的に分離されうる。たとえば、溶接用ワイヤ42(図4C)では、流動性向上金属は、ベース金属組成物から生成されるコアワイヤ43の外表面上に生成される被覆44として存在しうる。被覆44は、粉末形態などの好適な形態で元素、合金、又は化合物の流動性向上金属を含みうる。代替的に、図4Dに例示される実施形態では、コア48とシース49とを含む溶接用消耗ワイヤ46は、コアードワイヤでありうるとともに、コア48は、たとえば粉末形態の流動性向上金属47を含み、及びシース49は、ベース金属組成物を含む。
【0061】
アルミニウム系溶接金属において流動性を向上させる方法
図5は、実施形態による、アルミニウム溶接の間に溶接金属の流動性を向上させる方法を示すフローチャートである。本方法は、アルミニウム系ベース金属組成物と、ニッケル(Ni)、金(Au)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ユウロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、イッテルビウム(Yb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ランタン(La)、ジスプロシウム(Dy)、サマリウム(Sm)、ルテチウム(Lu)、ツリウム(Tm)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)又はその組合せからなる群から選択される流動性向上金属とを含む溶接用消耗電極を提供すること54を含む。溶接用消耗電極は、上記の実施形態のいずれか1つによるものであることが可能である。その上、本方法は、1分あたり10~50インチの溶接移動速度で溶接用消耗電極を使用して、溶解溶接ビーズを形成するためのアークを発生させること58を含む。流動性向上金属は、溶解溶接金属が、流動性向上金属を含まない状態で溶接用消耗電極を使用して実質的に同一の溶接条件下で形成される溶接金属よりも高い流動性を有するような形態及び量で存在する。図5に示される方法は、一例として以下に記載されるガス-メタルアーク溶接プロセスを含む、いずれの適切な溶接プロセスによって実施されることができる。
【0062】
ソリッド電極(GMAW)又は金属コアード電極(GMAW-C)を用いたガスメタルアーク溶接では、溶接時に溶接プール及び溶接ビードに大気汚染からの保護を提供するためにシールディングガスが使用される。ソリッド電極が使用されるとき、それは、シールディングガスとの組合せで、得られる溶接金属の所望の物理的及び機械的性質とともに低多孔又は多孔フリー溶接も提供しつつ、以上に記載の溶接金属流動性を向上させるように設計されうる活性成分で、適切に合金化される。金属コアード電極が使用されるとき、流動性向上金属をはじめとする活性成分のいくつかは、コアードワイヤのコアに添加されうるとともに、ソリッド電極の場合と類似の機能を提供するように設計されうる。
【0063】
ソリッド電極及び金属コアード電極は、適切なガスシールディング下で降伏強度、引張り強度、延性、及び衝撃靱性とともに実質的に多孔フリーのソリッド溶接金属を提供して最終用途で満足な性能を示すように設計される。これらの電極はまた、溶接時に発生するスラグの量を最小限に抑えるように設計されうる。いくつかの用途では、金属コアード電極は、生産性を向上させるためにソリッドワイヤの代替物として使用可能である。本明細書に記載されるように、金属コアード電極とは、少なくとも部分的に充填されて金属外側シースにより包囲されたコアを有する複合電極を意味する。コアは、アーク安定性、溶接濡れ性、及び外観、並びに所望の物理的及び機械的性質に役立つ金属粉末及び活性成分を含みうる。金属コアード電極は、コア材料の成分を混合してそれを生成されるストリップの内側に堆積させ、次いでストリップを閉じで最終直径に延伸することにより製造される。いくつかの用途では、コアード電極は、ソリッド電極と比較して増加された堆積速度及びより広範で比較的一貫性のある溶接浸透プロファイルを提供可能である。本明細書に記載されるように、金属コアード電極(GMAW-C)とは、成分が主に金属であるコアを有する電極を意味する。存在するとき、コア中の非金属成分は、各電極の全重量を基準にして5%、3%、又は1%未満の組合せ濃度を有する。比較的少ない非金属成分であることから、以下でより詳細に説明されるアーク溶接用フラックスコアード電極からGMAW-C電極を区別しうる。GMAW-C電極は、スプレーアーク及び高品質溶接金属により特徴付け可能である。
【0064】
金属コアード電極(GMAW-C)を用いるガスメタルアーク溶接に類似して、フラックスコアードアーク溶接(FCAW、FCAW-S、FCAW-G)を用いる電極もまた、シェルに包囲されたコアを含む。すなわち、フラックスコアードアーク溶接を用いるコアード電極は、以上に記載の金属コアード電極に類似して、少なくとも部分的に充填されて金属外側シースにより包囲されたコアを有する。しかしながら、金属コアード電極(GMAW-C)とは異なり、フラックスコアードアーク溶接(FCAW)に用いられるコアード電極は、少なくとも部分的にシールディングガスの代わりに溶接時に溶接プール及び溶接ビードに大気汚染からの保護を提供するように設計されたフラックス剤を追加的に含む。フラックスコアードアークに用いられるコアード電極は、アーク安定性、溶接濡れ性、及び外観、並びに所望の物理的及び機械的性質に役立つ他の活性成分を追加的に含みうる。一態様では、フラックスコアードアーク電極は、組合せ濃度が各電極の全重量を基準にして5%、3%、又は1%未満でありうるコア中に存在する非金属成分の量により金属コアード電極から区別されうる。
【0065】
アーク安定性の制御、溶接金属組成の修飾、及び大気汚染からの保護の提供のために、フラックスコアード電極用の多数のフラックス剤組成物が開発されてきた。フラックスコアード電極では、アーク安定性は、フラックスの組成を修飾することにより制御されうる。結果として、フラックス混合物中でプラズマチャージキャリアとして良好な働きをする物質を有することが望ましいこともある。いくつかの用途では、フラックスはまた、金属中の不純物をより容易に融合可能にしてこうした不純物と組み合わせうる物質を提供することにより、溶接金属組成を修飾可能である。スラグ融点の低下、スラグ流動性の改善、及びフラックス粒子用バインダーとしての働きのために、他の材料が添加されることもある。FCAWに使用される各種ワイヤは、たとえば、溶接上に保護スラグを生成すること、前進角技術を用いること、より高い堆積速度でアウトオブポジション又はフラット及び水平に溶接する能力を有すること、プレート上の比較的多量の汚染物質を取り扱う能力を有することなど、いくつかの類似の特性を共有しうる。一方、異なるタイプのフラックスコアードアーク溶接プロセス、すなわち、セルフシールドフラックスコアードアーク溶接(FCAW-S)及びガスシールドフラックスコアードアーク溶接(FCAW-G)が存在する。
【0066】
図6は、実施形態に従って溶接用アルミニウム系ワイヤ用として構成されたガスメタルアーク溶接(GMAW)システム例110を模式的に例示する。GMAWシステム110は、電力源112と、ワイヤ駆動アセンブリ114と、シールディングガス供給システム116と、電力送達用のケーブルアセンブリ118と、溶接用スプールワイヤ124と、溶接されるワークピース120に送達されるように構成されたシールドガス源128中のシールディングガスと、を含む。ワイヤ駆動アセンブリ114は、典型的には、連続消耗ワイヤ電極と、さらにはケーブルアセンブリ118を介してスプール124からワークピース120に溶接用ワイヤを駆動するための1つ以上の駆動ホイール(図示せず)を含む駆動機構126と、を含めて、スプール124担持用のリールスタンド122を含む。シールディングガス供給システム116は、通常、シールディングガス源128と、ケーブルアセンブリ118に流体連通するガス供給コンジット130と、を含む。図6に例示されるように、ケーブルアセンブリ118は、典型的には、一方の端が電力源112、ワイヤ駆動アセンブリ114、及びガス供給システム116に、並びに他方の端が溶接ガン134に、装着された長尺状フレキシブルケーブル132を含む。
【0067】
追加例
1.少なくとも70重量%のアルミニウムを含むベース金属組成物と、
アルミニウムと2元系共晶組成物を形成することが可能な流動性向上金属と
を含む溶接用消耗電極であって、2元系共晶組成物は、純粋なアルミニウムの溶解温度よりも90℃未満より低い共晶温度で2元系共晶凝固を受け、
流動性向上金属は、溶接用消耗電極から形成される溶解溶接金属が、流動性向上金属を含まない状態で溶接用消耗電極を使用して実質的に同一の溶接条件下で形成される溶解溶接金属に対して、以下:
少なくとも5%より低い溶接金属高さ(H)、
少なくとも5%より高い溶接金属幅(W)、
少なくとも5%より低いH/W比率、
少なくとも5%より低い侵入(P)、及び
少なくとも5%より低い溶接止端部角度(q)
の1つ以上を有するような形態及び量で存在する、溶接用消耗電極。
【0068】
2.少なくとも70重量%のアルミニウムを含むベース金属組成物と、
アルミニウムと2元系共晶組成物を形成することが可能な流動性向上金属と
を含む溶接用消耗電極であって、2元系共晶組成物は、純粋なアルミニウムの溶解温度よりも90℃未満より低い共晶温度で2元系共晶凝固を受け、
流動性向上金属は、溶接用消耗電極から形成される溶解溶接金属が、流動性向上金属を含まない状態で溶接用消耗電極を使用して実質的に同一の溶接条件下で形成される溶解溶接金属に対して少なくとも5%より高い流動性を有するような形態及び量で存在する、溶接用消耗電極。
【0069】
3.少なくとも70重量%のアルミニウムを含むベース金属組成物と、
ニッケル(Ni)、金(Au)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ユウロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、イッテルビウム(Yb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ランタン(La)、ジスプロシウム(Dy)、サマリウム(Sm)、ルテチウム(Lu)、ツリウム(Tm)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)又はその組合せからなる群から選択される流動性向上金属と
を含む溶接用消耗電極であって、
流動性向上金属は、アルミニウム及び流動性向上金属の合計重量に基づき、2元系共晶組成物に対して0.05重量%より多い及び以下の量で存在する、溶接用消耗電極。
【0070】
4.少なくとも70重量%のアルミニウムを含むベース金属組成物と、
ニッケル(Ni)、金(Au)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ユウロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、イッテルビウム(Yb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ランタン(La)、ジスプロシウム(Dy)、サマリウム(Sm)、ルテチウム(Lu)、ツリウム(Tm)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)又はその組合せからなる群から選択される流動性向上金属と
を含む溶接用消耗電極であって、
流動性向上金属は、溶接用消耗電極から形成される溶解溶接金属が、流動性向上金属を含まない状態で溶接用消耗電極を使用して実質的に同一の溶接条件下で形成される溶解溶接金属に対して少なくとも5%より高い流動性を有するような形態及び量で存在する、溶接用消耗電極。
【0071】
5.少なくとも70重量%のアルミニウムを含むベース金属組成物と、
ニッケル(Ni)、金(Au)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ユウロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、イッテルビウム(Yb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ランタン(La)、ジスプロシウム(Dy)、サマリウム(Sm)、ルテチウム(Lu)、ツリウム(Tm)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)又はその組合せからなる群から選択される流動性向上金属と
を含む溶接用消耗電極であって、
流動性向上金属は、溶接用消耗電極から形成される溶解溶接金属が、流動性向上金属を含まない状態で溶接用消耗電極を使用して実質的に同一の溶接条件下で形成される溶解溶接金属に対して、以下:
少なくとも5%より低い溶接金属高さ(H)、
少なくとも5%より高い溶接金属幅(W)、
少なくとも5%より低いH/W比率、
少なくとも5%より低い侵入(P)、及び
少なくとも5%より低い溶接止端部角度(q)
の1つ以上を有するような形態及び量で存在する、溶接用消耗電極。
【0072】
6.ニッケル(Ni)、金(Au)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ユウロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジミウム(Pr)、イッテルビウム(Yb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ランタン(La)、ジスプロシウム(Dy)、サマリウム(Sm)、ルテチウム(Lu)、ツリウム(Tm)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)又はその組合せからなる群から選択される流動性向上金属が、アルミニウム及び流動性向上金属の合計重量に基づき、共晶組成物の0.1重量%より多い、及びそれ以下の量で存在する、上記実施形態のいずれかの溶接用消耗電極。
【0073】
7.流動性向上金属が、アルミニウムと2元系共晶組成物を形成することが可能であり、2元系共晶組成物が、570~660℃の共晶温度で2元系共晶凝固を受ける、上記実施形態のいずれかの溶接用消耗電極。
【0074】
8.流動性向上金属が、溶接用消耗電極から形成される溶解溶接金属が、流動性向上金属を含まない状態でベース金属組成物を使用して形成される溶解溶接金属に対して少なくとも10%より高い流動性を有するような形態及び量で存在する、上記実施形態のいずれかの溶接用消耗電極。
【0075】
9.ベース金属組成物が、溶接用消耗電極を用いて生成される溶接金属ビーズ中のアルミニウムと合金化するための合金化元素としてシリコン(Si)及びマグネシウム(Mg)の一方又は両方をさらに含む、実施形態1~8のいずれか一つに記載の溶接用消耗電極。
【0076】
10.溶接用消耗電極から形成される凝固された溶接金属が、流動性向上金属を含まない状態でベース金属組成物を使用して形成される凝固された溶接金属の降伏硬度及び/又は引張強度より10%高い又は10%以内で高い降伏硬度及び/又は引張強度を有する、上記実施形態のいずれかの溶接用消耗電極。
【0077】
11.流動性向上金属が、金属元素の形態で存在する、上記実施形態のいずれかの溶接用消耗電極。
【0078】
12.流動性向上金属が、オキシド、ハライド、ヒドロキシド、スルフィド、スルフェート、カーボネート、ホスフェート、ニトリド、ニトリト、ニトリド、カーバイド、ボライド、アルミニド、テルリド又はそれらの組合せから選択される化合物で存在する、上記実施形態のいずれかの溶接用消耗電極。
【0079】
13.溶接条件下で1分あたり10~50インチの溶接移動速度で溶接するために溶接用電極が構成される、実施形態1~12のいずれか一つに記載の溶接用消耗電極。
【0080】
14.溶接電極が、ガスメタルアーク溶接(GMAW)のために構成される、上記実施形態のいずれかの溶接用消耗電極。
【0081】
15.溶接用消耗電極が、ベース金属組成物を含むコアワイヤと、コアワイヤの周囲に流動性向上金属を含む被覆と、を含む、実施形態1~14のいずれか一つに記載の溶接用消耗電極。
【0082】
16.溶接用消耗電極が、コアとシースとを含むコアードワイヤであり、コアが流動性向上金属を含み、及びシースがベース金属組成物を含む、実施形態1~14のいずれか一つに記載の溶接用消耗電極。
【0083】
17.溶接用消耗電極が、ベース金属組成物と流動性向上金属との均一混合物を含むソリッドワイヤである、実施形態1~14のいずれか一つに記載の溶接用消耗電極。
【0084】
18.アルミニウム系ベース金属組成物と、ニッケル(Ni)、金(Au)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ユウロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、イッテルビウム(Yb)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ランタン(La)、ジスプロシウム(Dy)、サマリウム(Sm)、ルテチウム(Lu)、ツリウム(Tm)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd)又はその組合せからなる群から選択される流動性向上金属と、を含む溶接用消耗電極を提供することと、
1分あたり10~50インチの溶接移動速度で溶接用消耗電極を使用して、溶解溶接金属を形成するためのアークを発生させることと、
を含むアルミニウムワークピースの溶接方法であって、
流動性向上金属が、溶解溶接金属が、流動性向上金属を含まない状態で溶接用消耗電極を使用して実質的に同一の溶接条件下で形成される溶接金属よりも高い流動性を有するような形態及び量で存在する、方法。
【0085】
19.溶接用消耗ワイヤが実施形態1~17のいずれか一つに記載のものである、実施形態18に記載の溶接方法。
【0086】
文脈上明らかに必要とされない限り、本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、「comprise(~を含む)」、「comprising(~を含む)」、「include(~を含む)」、「including(~を含む)」などという単語は、排他的意味でも網羅的意味でもなく包括的意味で、すなわち、「including,but not limited to(限定されるものではないが、~を含む)」という意味で解釈されるべきである。本明細書で一般に用いられる「coupled(結合される)」という語は、直接接続されうるか1つ以上の中間要素を介して接続されうるかのどちらかの2つ以上の要素を参照する。同様に、本明細書で一般に用いられる「connected(接続される)」という語は、直接接続されうるか1つ以上の中間要素を介して接続されうるかのどちらかの2つ以上の要素を参照する。そのほか、本願で用いられる「herein(本明細書に)」、「above(以上に)」、「below(以下に)」という語及び類似の意味の語は、全体として本願を参照するものであり、本願のいずれかの特定部分を参照するものではない。文脈上許容される場合、単数又は複数を用いた以上の詳細な説明での語もまた、それぞれ、単数又は複数を含みうる。「or(又は)」という語が2つ以上のアイテムのリストを参照する場合、その語は、次のようなその語の解釈、すなわち、リスト中のアイテムのいずれか、リスト中のアイテムのすべて、及びリスト中のアイテムのいずれかの組合せのすべてをカバーする。
【0087】
さらに、本明細書で用いられる条件語、たとえば、いくつかある中でもとくに、「can(~できる)」、「could(~することもある)」、「might(~かもしれない)」、「may(~しうる)」、「e.g.(たとえば)」、「for example(たとえば)」、「such as(~などの)」などは、とくに明記されていない限り又はとくに用いられる文脈内で理解されない限り、ある特定の実施形態は、ある特定の特徴、要素、及び/又は状態を含むが、他の実施形態はそれらを含まないことを意味することが一般に意図される。そのため、係る条件語は、特徴、要素、及び/又は状態が、1つ以上の実施形態でなんらかの形で必要とされるか、或いはこれらの特徴、要素、及び/又は状態がいずれかの特定の実施形態に含まれるか又はそこで実施されるべきであるか、を示唆することが一般に意図されない。
【0088】
ある特定の実施形態を記載してきたが、これらの実施形態は、単なる例として提示されているにすぎず、本開示の範囲を限定することは意図されない。実際には、本明細書に記載の新規な装置、方法、及びシステムは、さまざまな他の形態で具現化されうるとともに、さらに、本開示の趣旨から逸脱することなく、本明細書に記載の方法及びシステムの形態の各種省略、置換、及び変更を行いうる。たとえば、ブロックが所与の配置で提示されていても、代替実施形態は、異なるコンポーネント及び/又は回路トポロジーを用いて類似の機能を発揮しうるし、いくつかのブロックは、欠失、移動、追加、細分、組合せ、及び/又は修飾が行われうる。これらのブロックの各々は、多種多様な方法で実現されうる。以上に記載の各種実施形態の要素及び作用のいずれかの好適な組合せは、さらなる実施形態を提供するように組合せ可能である。以上に記載の各種特徴及びプロセスは、互いに独立して実現されうるか又は各種方法で組み合わされうる。本開示の特徴のすべての可能な組合せ及び部分的組合せは、本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
2 ワークピース
4 電極
6 溶接用Al系消耗ワイヤ
8 プラズマ
10 金属アーク溶接プロセスの構成
22 ワークピース
24 侵入領域
26 溶接金属
40A 溶接用ソリッドワイヤ
40B 溶接用ソリッドワイヤ
42 被覆ソリッドワイヤ
43 コアワイヤ
44 被覆
46 溶接用コアードワイヤ
47 粉末形態のスマット抑制金属
48 コア
49 シース
54 溶接用消耗電極を提供すること
58 アークを発生すること
110 ガスメタルアーク溶接システム
112 電力源
114 ワイヤ駆動アセンブリ
116 シールディングガス供給システム
118 ケーブルアセンブリ
120 ワークピース
122 リールスタンド
124 スプール
126 駆動機構
128 シールディングガス源
134 溶接ガン
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
【外国語明細書】