(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006437
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】水処理方法、水処理装置、および活性炭用スライム抑制剤
(51)【国際特許分類】
C02F 1/50 20060101AFI20220105BHJP
B01D 61/04 20060101ALI20220105BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20220105BHJP
C02F 1/76 20060101ALI20220105BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C02F1/50 531L
B01D61/04
C02F1/44 D
C02F1/50 510C
C02F1/50 520A
C02F1/50 531P
C02F1/50 532E
C02F1/50 532J
C02F1/50 560B
C02F1/50 560C
C02F1/50 560D
C02F1/50 560E
C02F1/50 560Z
C02F1/76 Z
C02F1/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020108656
(22)【出願日】2020-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 凱
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄大
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌平
【テーマコード(参考)】
4D006
4D050
4D624
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006JA53Z
4D006KA02
4D006KA03
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4D006KA55
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4D624AA01
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4D624DB05
4D624DB10
4D624DB19
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4D624DB29
(57)【要約】
【課題】活性炭処理において、スライム抑制剤の添加から短時間で十分なスライム抑制効果を得ることができる水処理方法、水処理装置、および活性炭用スライム抑制剤を提供する。
【解決手段】被処理水について活性炭塔12で活性炭処理を行う活性炭処理工程を含み、被処理水に臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を存在させる水処理方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水について活性炭処理を行う活性炭処理工程を含み、
前記被処理水に臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を存在させることを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理方法であって、
前記活性炭処理工程において、前記被処理水中の全塩素濃度(mg-Cl2/L)と、活性炭が充填された活性炭塔に通水する前記被処理水の空間速度(h-1)との積が、20(mg-Cl2/L・h)以上であることを特徴とする水処理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水処理方法であって、
前記活性炭処理工程において、前記被処理水中の全塩素濃度が1(mg-Cl2/L)以上となるように前記安定化次亜臭素酸組成物を存在させ、活性炭が充填された活性炭塔に空間速度20(h-1)以上で通水することを特徴とする水処理方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理方法であって、
前記活性炭処理工程において、前記活性炭処理を行った活性炭処理水中の全塩素濃度が0.05(mg-Cl2/L)以上となるように前記被処理水に前記安定化次亜臭素酸組成物を存在させて、活性炭が充填された活性炭塔に通水することを特徴とする水処理方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の水処理方法であって、
前記活性炭処理を行った活性炭処理水の逆浸透膜処理を行う逆浸透膜処理工程をさらに含むことを特徴とする水処理方法。
【請求項6】
被処理水について活性炭処理を行う活性炭処理手段と、
前記被処理水に臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を添加する安定化次亜臭素酸組成物添加手段と、
を備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の水処理装置であって、
前記活性炭処理手段は、活性炭が充填された活性炭塔であり、前記被処理水中の全塩素濃度(mg-Cl2/L)と、前記活性炭塔に通水される前記被処理水の空間速度(h-1)との積が、20(mg-Cl2/L・h)以上であることを特徴とする水処理装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の水処理装置であって、
前記安定化次亜臭素酸組成物添加手段は、前記被処理水中の全塩素濃度が1(mg-Cl2/L)以上となるように前記安定化次亜臭素酸組成物を添加し、
前記活性炭処理手段は、活性炭が充填された活性炭塔であり、前記安定化次亜臭素酸組成物が添加された被処理水を前記活性炭塔に空間速度20(h-1)以上で通水することを特徴とする水処理装置。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載の水処理装置であって、
前記活性炭処理を行った活性炭処理水の逆浸透膜処理を行う逆浸透膜処理手段をさらに備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項10】
臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を含有することを特徴とする活性炭用スライム抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水について活性炭処理を行う水処理方法、水処理装置、および活性炭用スライム抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、活性炭処理は水処理における有機物除去等の目的で行われている。活性炭塔等の活性炭処理装置におけるスライム抑制のために、活性炭処理の被処理水に次亜塩素酸等のスライム抑制剤を添加する場合があるが、活性炭が次亜塩素酸の有効成分を分解してしまうため、活性炭塔内は微生物が繁殖しやすい環境となり、十分なスライム抑制効果を得ることができていない。活性炭塔内に微生物が増殖することにより、活性炭処理の透過水の水質汚染や流量の減少が起きてしまう。
【0003】
活性炭用のその他のスライム抑制剤としては、塩素とスルファミン酸とからなる結合塩素剤が使用されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、特許文献1に挙げられた塩素とスルファミン酸とからなる結合塩素剤では、結合塩素剤の添加から活性炭塔出口に有効成分がリークするまで、すなわちスライム抑制効果を得るのに長時間要することが問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、活性炭処理において、スライム抑制剤の添加から短時間で十分なスライム抑制効果を得ることができる水処理方法、水処理装置、および活性炭用スライム抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被処理水について活性炭処理を行う活性炭処理工程を含み、前記被処理水に臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を存在させる、水処理方法である。
【0007】
前記水処理方法における前記活性炭処理工程において、前記被処理水中の全塩素濃度(mg-Cl2/L)と、活性炭が充填された活性炭塔に通水する前記被処理水の空間速度(h-1)との積が、20(mg-Cl2/L・h)以上であることが好ましい。
【0008】
前記水処理方法における前記活性炭処理工程において、前記被処理水中の全塩素濃度が1(mg-Cl2/L)以上となるように前記安定化次亜臭素酸組成物を存在させ、活性炭が充填された活性炭塔に空間速度20(h-1)以上で通水することが好ましい。
【0009】
前記水処理方法における前記活性炭処理工程において、前記活性炭処理を行った活性炭処理水中の全塩素濃度が0.05(mg-Cl2/L)以上となるように前記被処理水に前記安定化次亜臭素酸組成物を存在させて、活性炭が充填された活性炭塔に通水することが好ましい。
【0010】
前記水処理方法において、前記活性炭処理を行った活性炭処理水の逆浸透膜処理を行う逆浸透膜処理工程をさらに含むことが好ましい。
【0011】
本発明は、被処理水について活性炭処理を行う活性炭処理手段と、前記被処理水に臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を添加する安定化次亜臭素酸組成物添加手段と、を備える、水処理装置である。
【0012】
前記水処理装置において、前記活性炭処理手段は、活性炭が充填された活性炭塔であり、前記被処理水中の全塩素濃度(mg-Cl2/L)と、前記活性炭塔に通水される前記被処理水の空間速度(h-1)との積が、20(mg-Cl2/L・h)以上であることが好ましい。
【0013】
前記水処理装置において、前記安定化次亜臭素酸組成物添加手段は、前記被処理水中の全塩素濃度が1(mg-Cl2/L)以上となるように前記安定化次亜臭素酸組成物を添加し、前記活性炭処理手段は、活性炭が充填された活性炭塔であり、前記安定化次亜臭素酸組成物が添加された被処理水を前記活性炭塔に空間速度20(h-1)以上で通水することが好ましい。
【0014】
前記水処理装置において、前記安定化次亜臭素酸組成物添加手段は、前記活性炭処理を行った活性炭処理水中の全塩素濃度が0.05(mg-Cl2/L)以上となるように前記被処理水に前記安定化次亜臭素酸組成物を添加し、前記活性炭処理手段は、活性炭が充填された活性炭塔であり、前記安定化次亜臭素酸組成物が添加された被処理水を前記活性炭塔に通水することが好ましい。
【0015】
前記水処理装置において、前記活性炭処理を行った活性炭処理水の逆浸透膜処理を行う逆浸透膜処理手段をさらに備えることが好ましい。
【0016】
本発明は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を含有する、活性炭用スライム抑制剤である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって、活性炭処理において、スライム抑制剤の添加から短時間で十分なスライム抑制効果を得ることができる水処理方法、水処理装置、および活性炭用スライム抑制剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る水処理装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本発明の実施形態に係る装置の一例の概略を
図1に示し、その構成について説明する。
【0021】
水処理装置1は、被処理水について活性炭処理を行う活性炭処理手段として、活性炭塔12と、被処理水に臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を添加する安定化次亜臭素酸組成物添加手段として、安定化次亜臭素酸組成物添加配管30と、を備える。水処理装置1は、被処理水を貯留するための被処理水槽10と、活性炭処理を行った活性炭処理水の逆浸透膜処理を行う逆浸透膜処理手段として、逆浸透膜処理装置14と、を備えてもよい。
【0022】
図1の水処理装置1において、被処理水槽10の被処理水入口には、被処理水配管20が接続されている。被処理水槽10の被処理水出口と、活性炭塔12の入口とは、ポンプ16を介して被処理水配管22により接続されている。活性炭塔12の出口と、逆浸透膜処理装置14の入口とは、ポンプ18を介して活性炭処理水配管24により接続されている。逆浸透膜処理装置14の透過水出口には、透過水配管26が接続され、濃縮水出口には、濃縮水配管28が接続されている。被処理水槽10の安定化次亜臭素酸組成物入口には、安定化次亜臭素酸組成物添加配管30が接続されている。被処理水槽10のpH調整剤入口には、pH調整剤添加手段として、pH調整剤添加配管32が接続されていてもよい。
【0023】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置1の動作について説明する。
【0024】
被処理水は、被処理水配管20を通して必要に応じて被処理水槽10へ貯留される。被処理水槽10において、被処理水へ安定化次亜臭素酸組成物添加配管30を通して、活性炭用スライム抑制剤として安定化次亜臭素酸組成物が添加される(安定化次亜臭素酸組成物添加工程)。被処理水へpH調整剤添加配管32を通してpH調整剤が添加されて、被処理水のpHが調整されてもよい(pH調整剤添加工程)。
【0025】
安定化次亜臭素酸組成物、pH調整剤は活性炭処理の前段において添加されればよく、被処理水配管20において添加されてもよいし、被処理水配管22において添加されてもよい。
【0026】
安定化次亜臭素酸組成物が添加された被処理水は、ポンプ16により被処理水配管22を通して活性炭塔12へ送液される。被処理水は活性炭が充填された活性炭塔12に例えば下向流で通水されて、被処理水について活性炭処理が行われ、被処理水中の有機物等が除去される(活性炭処理工程)。
【0027】
活性炭処理水は、ポンプ18により活性炭処理水配管24を通して逆浸透膜処理装置14へ送液されてもよい。逆浸透膜処理装置14において、逆浸透膜処理が行われ、透過水と濃縮水とが得られる(逆浸透膜処理工程)。透過水は、透過水配管26を通して排出され、濃縮水は、濃縮水配管28を通して排出される。
【0028】
本発明者らは、活性炭用のスライム抑制剤として安定化次亜臭素酸組成物を用いることによって、活性炭処理において、スライム抑制剤の添加から短時間で十分なスライム抑制効果を得ることができることを見出した。活性炭用のスライム抑制剤として安定化次亜臭素酸を用いることによって、被処理水への安定化次亜臭素酸組成物の添加から短時間で活性炭塔の後段までスライム抑制剤の有効成分が残留し、活性炭塔内を十分に殺菌することができる。活性炭塔内の微生物の繁殖、増殖を抑制することにより、活性炭処理の透過水の水質汚染や流量の減少を抑制することができる。
【0029】
活性炭処理工程において、被処理水中の全塩素濃度が0.1(mg-Cl2/L)以上となるように安定化次亜臭素酸組成物を存在させることが好ましく、被処理水中の全塩素濃度が0.5~50(mg-Cl2/L)の範囲となるように安定化次亜臭素酸組成物を存在させることがより好ましく、被処理水中の全塩素濃度が1~50(mg-Cl2/L)の範囲となるように安定化次亜臭素酸組成物を存在させることがさらに好ましい。被処理水中の全塩素濃度が0.1(mg-Cl2/L)未満となると、活性炭塔内の微生物の繁殖、増殖が抑制されにくくなり、50(mg-Cl2/L)を超えると、薬剤コストが非常に高くなる場合がある。
【0030】
活性炭処理工程において、活性炭処理を行った活性炭処理水中の全塩素濃度が0.05(mg-Cl2/L)以上となるように被処理水に安定化次亜臭素酸組成物を存在させて、活性炭が充填された活性炭塔に通水することが好ましく、0.1(mg-Cl2/L)以上となるように被処理水に安定化次亜臭素酸組成物を存在させて、活性炭が充填された活性炭塔に通水することがより好ましい。活性炭処理を行った活性炭処理水中の全塩素濃度が0.05(mg-Cl2/L)未満であると、活性炭塔内の微生物の繁殖、増殖が抑制されにくくなる場合がある。
【0031】
活性炭処理工程において、被処理水中の全塩素濃度(mg-Cl2/L)と、活性炭が充填された活性炭塔に通水する被処理水の空間速度(h-1)との積が、20(mg-Cl2/L・h)以上であることが好ましく、20~200(mg-Cl2/L・h)の範囲であることがより好ましい。この積が20(mg-Cl2/L・h)未満であると、活性炭塔内の微生物の繁殖、増殖が抑制されにくい場合があり、200(mg-Cl2/L・h)を超えると、薬剤コストが非常に高くなる、または被処理水由来の有機物や色度等の除去効果が低下する場合がある。なお、空間速度はSV(Space Velocity)とも表され、単位時間あたりに被処理水が活性炭層に接触する時間の逆数で表す。具体的には、単位時間あたりに活性炭の体積の何倍相当分の水を処理しているかを表し、被処理水の流量を活性炭の体積で割ることで求められる。
【0032】
活性炭処理工程において、活性炭が充填された活性炭塔12にSV20(h-1)以上で通水することが好ましく、SV20~200(h-1)の範囲で通水することがより好ましい。SV20(h-1)未満であると、スライム抑制効果を得るのに多大な時間を要する場合があり、SV200(h-1)を超えると、被処理水由来の有機物や色度等の除去効果が低下する場合がある。なお、ポンプ16がSVを調整するSV調整手段として機能する。
【0033】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置1において、活性炭塔12の後段において、活性炭塔12の出口の全塩素濃度を測定し(全塩素濃度測定工程)、測定した全塩素濃度に基づいて、安定化次亜臭素酸組成物の添加量を制御してもよい(制御工程)。
【0034】
例えば、活性炭処理水配管24に全塩素濃度測定装置を設置し、安定化次亜臭素酸組成物添加配管30に安定化次亜臭素酸組成物の添加量を調整するポンプ等の安定化次亜臭素酸組成物添加量調整手段を設置し、制御手段として制御装置を設けて、制御装置と全塩素濃度測定装置、制御装置と安定化次亜臭素酸組成物添加量調整手段とをそれぞれ電気的接続等により接続し、制御装置によって、全塩素濃度測定装置によって測定された活性炭塔12の出口の全塩素濃度に基づいて、ポンプ等の安定化次亜臭素酸組成物添加量調整手段を制御してもよい。
【0035】
安定化次亜臭素酸組成物は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含むものである。「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物」は、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」との混合物を含む安定化次亜臭素酸組成物であってもよいし、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を含む安定化次亜臭素酸組成物であってもよい。
【0036】
すなわち、本実施形態に係る水処理方法では、活性炭処理の被処理水中に、例えば「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」との混合物を存在させる。これにより、被処理水中で、安定化次亜臭素酸組成物が生成すると考えられる。
【0037】
また、本実施形態に係る水処理方法では、活性炭処理の被処理水中に、例えば「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」である安定化次亜臭素酸組成物を存在させる。
【0038】
具体的には本実施形態に係る水処理方法では、活性炭処理の被処理水中に、例えば、「臭素」、「塩化臭素」、「次亜臭素酸」または「臭化ナトリウムと次亜塩素酸との反応物」と、「スルファミン酸化合物」との混合物を存在させる。
【0039】
また、本実施形態に係る水処理方法では、活性炭処理の被処理水中に、例えば、「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」、「塩化臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」、「次亜臭素酸とスルファミン酸化合物との反応生成物」、または「臭化ナトリウムと次亜塩素酸との反応物と、スルファミン酸化合物と、の反応生成物」である安定化次亜臭素酸組成物を存在させる。
【0040】
安定化次亜臭素酸組成物は次亜塩素酸等の塩素系酸化剤等のスライム抑制剤と同等以上のスライム抑制効果を発揮するにも関わらず、塩素系酸化剤等のスライム抑制剤と比較すると、活性炭によって分解されにくく、活性炭処理の後段で逆浸透膜処理を行う場合でも、逆浸透膜への劣化影響も低いため、活性炭の微生物の繁殖、増殖や、逆浸透膜でのファウリングを抑制することができる。このため、本実施形態に係る水処理方法で用いられる安定化次亜臭素酸組成物は、活性炭処理、逆浸透膜処理の順で処理を行う水処理で用いるスライム抑制剤としては好適である。
【0041】
本実施形態に係る水処理方法のうち、「臭素系酸化剤」が、臭素である場合、塩素系酸化剤が存在しないため、逆浸透膜への劣化影響が著しく低い。
【0042】
本実施形態に係る水処理方法では、活性炭処理の被処理水中に、例えば、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とを薬注ポンプ等により注入すればよい。「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とは別々に被処理水に添加してもよく、または、原液同士で混合させてから被処理水に添加してもよい。
【0043】
また、活性炭処理の被処理水中に、例えば、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を薬注ポンプ等により注入してもよい。
【0044】
安定化次亜臭素酸組成物において、「臭素系酸化剤」の当量に対する「スルファミン酸化合物」の当量の比は、1以上であることが好ましく、1以上2以下の範囲であることがより好ましい。「臭素系酸化剤」の当量に対する「スルファミン酸化合物」の当量の比が1未満であると、逆浸透膜を劣化させる可能性があり、2を超えると、製造コストが増加する場合がある。
【0045】
これらのうち、臭素を用いた「臭素とスルファミン酸化合物(臭素とスルファミン酸化合物の混合物)」または「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」のスライム抑制剤は、「次亜塩素酸と臭素化合物とスルファミン酸」のスライム抑制剤および「塩化臭素とスルファミン酸」のスライム抑制剤等に比べて、臭素酸の副生が少なく、スライム抑制剤としてはより好ましい。
【0046】
臭素系酸化剤としては、臭素(液体臭素)、塩化臭素、臭素酸、臭素酸塩、次亜臭素酸等が挙げられる。次亜臭素酸は、臭化ナトリウム等の臭素化合物と次亜塩素酸等の塩素系酸化剤とを反応させて生成させたものであってもよい。
【0047】
臭素化合物としては、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、臭化アンモニウムおよび臭化水素酸等が挙げられる。これらのうち、製剤コスト等の点から、臭化ナトリウムが好ましい。
【0048】
スルファミン酸化合物は、以下の一般式(1)で示される化合物である。
R2NSO3H (1)
(式中、Rは独立して水素原子または炭素数1~8のアルキル基である。)
【0049】
スルファミン酸化合物としては、例えば、2個のR基の両方が水素原子であるスルファミン酸(アミド硫酸)の他に、N-メチルスルファミン酸、N-エチルスルファミン酸、N-プロピルスルファミン酸、N-イソプロピルスルファミン酸、N-ブチルスルファミン酸等の2個のR基の一方が水素原子であり、他方が炭素数1~8のアルキル基であるスルファミン酸化合物、N,N-ジメチルスルファミン酸、N,N-ジエチルスルファミン酸、N,N-ジプロピルスルファミン酸、N,N-ジブチルスルファミン酸、N-メチル-N-エチルスルファミン酸、N-メチル-N-プロピルスルファミン酸等の2個のR基の両方が炭素数1~8のアルキル基であるスルファミン酸化合物、N-フェニルスルファミン酸等の2個のR基の一方が水素原子であり、他方が炭素数6~10のアリール基であるスルファミン酸化合物、またはこれらの塩等が挙げられる。スルファミン酸塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩、マンガン塩、銅塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩等の他の金属塩、アンモニウム塩およびグアニジン塩等が挙げられる。スルファミン酸化合物およびこれらの塩は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。スルファミン酸化合物としては、環境負荷等の点から、スルファミン酸(アミド硫酸)を用いるのが好ましい。
【0050】
活性炭処理の被処理水中に、安定化次亜臭素酸組成物にさらにアルカリを存在させてもよい。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ等が挙げられる。低温の製品安定性等の点から、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとを併用してもよい。また、アルカリは、固形でなく、水溶液として用いてもよい。
【0051】
本実施形態に係る水処理方法は、逆浸透膜として昨今主流であるポリアミド系高分子膜に好適に適用することができる。ポリアミド系高分子膜は、塩素系酸化剤に対する耐性が比較的低く、遊離塩素等をポリアミド系高分子膜に連続的に接触させると、膜性能の著しい低下が起こる場合がある。しかしながら、スライム抑制剤として安定化次亜臭素酸組成物を用いると、ポリアミド高分子膜においても、このような著しい膜性能の低下はほとんど起こらない。
【0052】
被処理水としては、特に制限はないが、例えば、有機物を含む有機物含有水であり、例えば、工業用水、回収水等が挙げられる。
【0053】
被処理水のTOCは、例えば、0.1~50mg/Lの範囲であり、好ましくは0.1~10mg/Lの範囲である。
【0054】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置1によって、活性炭処理水中のTOCを、例えば、5mg/L以下、好ましくは1mg/L以下とすることができる。
【0055】
被処理水のpHは、例えば、2~12の範囲であり、7~11の範囲であることが好ましい。被処理水のpHの下限は、5.5以上であることが好ましく、6.5以上であることがより好ましく、7.0以上であることがさらに好ましい。被処理水のpHの上限は、9.0以下であることが好ましく、8.0以下であることがより好ましい。被処理水のpHが7以上である場合に、本実施形態に係る水処理方法を好適に適用することができる。
【0056】
活性炭処理で用いられる活性炭としては、例えば、粒状活性炭、粉状活性炭等が挙げられ、経済性、操作性等の点から粒状活性炭を用いることが好ましい。活性炭処理工程では、例えば、粒状活性炭が充填された活性炭塔に上向流または下向流で被処理水を通水させればよい。
【0057】
粒状活性炭は、体積平均粒径900~1400μmの活性炭である。粒状活性炭としては、例えば、石炭系粒状活性炭であるオルビーズQHG(オルガノ株式会社製)、ヤシ殻粒状活性炭等を用いることができる。ヤシ殻系粒状活性炭に比べて石炭系粒状活性炭の方が十分なスライム抑制効果を得られるため、石炭系粒状活性炭が好ましい。
【0058】
逆浸透膜処理の後段において、第2の逆浸透膜処理装置、UV処理装置、または、イオン交換処理装置のうち少なくとも1つを備え、逆浸透膜処理の透過水について第2の逆浸透膜処理、UV処理、または、イオン交換処理のうち少なくとも1つの処理を行ってもよい。
【0059】
本実施形態に係る水処理方法において、被処理水のpH5.5以上でスケールが発生する場合には、スケール抑制のために分散剤を上記安定化次亜臭素酸組成物と併用してもよい。分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ホスホン酸等が挙げられる。分散剤の被処理水への添加量は、例えば、RO濃縮水中の濃度として0.1~1,000mg/Lの範囲である。
【0060】
また、分散剤を使用せずにスケールの発生を抑制するためには、例えば、RO濃縮水中のシリカ濃度を溶解度以下に、カルシウムスケールの指標であるランゲリア指数を0以下になるように、逆浸透膜処理の回収率、水温、pH等の運転条件を調整することが挙げられる。
【0061】
<活性炭用スライム抑制剤>
本実施形態に係る水処理方法で用いられる活性炭用スライム抑制剤は、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とを含む安定化次亜臭素酸組成物を含有し、さらにアルカリを含有してもよい。
【0062】
また、本実施形態に係る水処理方法で用いられる活性炭用スライム抑制剤は、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を含む安定化次亜臭素酸組成物を含有し、さらにアルカリを含有してもよい。
【0063】
臭素系酸化剤、臭素化合物、塩素系酸化剤およびスルファミン酸化合物については、上述した通りである。
【0064】
本実施形態に係る安定化次亜臭素酸組成物としては、ポリアミド系等の逆浸透膜をより劣化させず、RO透過水への有効ハロゲンのリーク量がより少ないため、臭素と、スルファミン酸化合物とを含有するもの(臭素とスルファミン酸化合物の混合物を含有するもの)、例えば、臭素とスルファミン酸化合物とアルカリと水との混合物、または、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有するもの、例えば、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物と、アルカリと、水との混合物が好ましい。
【0065】
本実施形態に係る安定化次亜臭素酸組成物、特に臭素とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物は、次亜塩素酸等の塩素系酸化剤と比較すると、活性炭によって分解されにくく、活性炭処理の後段で逆浸透膜処理を行う場合でも、ポリアミド系等の逆浸透膜のスライム抑制効果を有しながらも、次亜塩素酸等の塩素系酸化剤のような著しい膜劣化をほとんど引き起こすことがない。通常の使用濃度では、膜劣化への影響は実質的に無視することができる。このため、活性炭処理、ポリアミド系高分子膜等を用いる逆浸透膜処理の順で処理を行う水処理で用いるスライム抑制剤としては最適である。
【0066】
本実施形態に係る安定化次亜臭素酸組成物は、次亜塩素酸等の塩素系酸化剤等とは異なり、逆浸透膜をほとんど透過しないため、RO処理水水質への影響がほとんどない。また、次亜塩素酸等と同様に現場で濃度を測定することができるため、より正確な濃度管理が可能である。
【0067】
安定化次亜臭素酸組成物のpHは、例えば、13.0超であり、13.2超であることがより好ましい。安定化次亜臭素酸組成物のpHが13.0以下であると安定化次亜臭素酸組成物中の有効ハロゲンが不安定になる場合がある。
【0068】
安定化次亜臭素酸組成物中の臭素酸濃度は、5mg/kg未満であることが好ましい。安定化次亜臭素酸組成物中の臭素酸濃度が5mg/kg以上であると、RO透過水等の臭素酸イオンの濃度が高くなる場合がある。
【0069】
<活性炭用スライム抑制剤の製造方法>
本実施形態に係る水処理方法で用いられる活性炭用スライム抑制剤は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを混合することにより得られ、さらにアルカリを混合してもよい。
【0070】
臭素とスルファミン酸化合物とを含む活性炭用スライム抑制剤の製造方法としては、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加して反応させる工程、または、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加する工程を含むことが好ましい。不活性ガス雰囲気下で添加して反応させる、または、不活性ガス雰囲気下で添加することにより、安定化次亜臭素酸組成物中の臭素酸イオン濃度が低くなり、RO透過水等中の臭素酸イオン濃度が低くなる。
【0071】
用いる不活性ガスとしては限定されないが、製造等の面から窒素およびアルゴンのうち少なくとも1つが好ましく、特に製造コスト等の面から窒素が好ましい。
【0072】
臭素の添加の際の反応器内の酸素濃度は6%以下が好ましいが、4%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。臭素の反応の際の反応器内の酸素濃度が6%を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合がある。
【0073】
臭素の添加率は、安定化次亜臭素酸組成物全体の量に対して25重量%以下であることが好ましく、1重量%以上20重量%以下であることがより好ましい。臭素の添加率が安定化次亜臭素酸組成物全体の量に対して25重量%を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合がある。1重量%未満であると、殺菌力が劣る場合がある。
【0074】
臭素添加の際の反応温度は、0℃以上25℃以下の範囲に制御することが好ましいが、製造コスト等の面から、0℃以上15℃以下の範囲に制御することがより好ましい。臭素添加の際の反応温度が25℃を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合があり、0℃未満であると、凍結する場合がある。
【実施例0075】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
[安定化次亜臭素酸組成物の調製]
窒素雰囲気下で、液体臭素:16.9重量%(wt%)、スルファミン酸:10.7重量%、水酸化ナトリウム:12.9重量%、水酸化カリウム:3.94重量%、水:残分を混合して、安定化次亜臭素酸組成物を調製した。安定化次亜臭素酸組成物のpHは14、全塩素濃度は7.5重量%であった。全塩素濃度は、HACH社の多項目水質分析計DR/4000を用いて、全塩素測定法(DPD(ジエチル-p-フェニレンジアミン)法)により測定した値(mg-Cl2/L)である。安定化次亜臭素酸組成物の詳細な調製方法は以下の通りである。
【0077】
反応容器内の酸素濃度が1%に維持されるように、窒素ガスの流量をマスフローコントローラでコントロールしながら連続注入で封入した2Lの4つ口フラスコに1436gの水、361gの水酸化ナトリウムを加え混合し、次いで300gのスルファミン酸を加え混合した後、反応液の温度が0~15℃になるように冷却を維持しながら、473gの液体臭素を加え、さらに48%水酸化カリウム溶液230gを加え、組成物全体の量に対する重量比でスルファミン酸10.7%、臭素16.9%、臭素の当量に対するスルファミン酸の当量比が1.04である、目的の安定化次亜臭素酸組成物を得た。生じた溶液のpHは、ガラス電極法にて測定したところ、14であった。生じた溶液の臭素含有率は、臭素をヨウ化カリウムによりヨウ素に転換後、チオ硫酸ナトリウムを用いて酸化還元滴定する方法により測定したところ16.9%であり、理論含有率(16.9%)の100.0%であった。また、臭素反応の際の反応容器内の酸素濃度は、株式会社ジコー製の「酸素モニタJKO-02 LJDII」を用いて測定した。なお、臭素酸濃度は5mg/kg未満であった。
【0078】
なお、pHの測定は、以下の条件で行った。
電極タイプ:ガラス電極式
pH測定計:東亜ディーケーケー社製、IOL-30型
電極の校正:関東化学社製中性リン酸塩pH(6.86)標準液(第2種)、同社製ホウ酸塩pH(9.18)標準液(第2種)の2点校正で行った
測定温度:25℃
測定値:測定液に電極を浸漬し、安定後の値を測定値とし、3回測定の平均値
【0079】
<実施例1~5、比較例1>
(試験条件および試験方法)
活性炭カラム試験にて、カラムの透過水の全塩素濃度、遊離塩素濃度を吸光光度計DR3900(HACH社製)でDPD法によって測定した。活性炭は、石炭系粒状活性炭オルビーズ(QHG)を用いた。使用した活性炭量は45mLである。
【0080】
試験水は、純水または海水にスライム抑制剤を添加し、pHが7.0になるように塩酸または水酸化ナトリウムを用いて調製したものを使用した。試験水のTOCは純水が0.1~1.0mg/L、海水が3.0±1mg/Lである。また、海水の電気伝導率は、60000±2000μS/cmである。スライム抑制剤の濃度は、被処理水の全塩素濃度で約1(mg-Cl2/L)または0.5(mg-Cl2/L)とした。水温は、20±3℃となるよう調節した。透過水の測定は、通水後3時間まで、1時間ごとに行った。
【0081】
実施例1では、スライム抑制剤として安定化次亜臭素酸組成物を使用し、被処理水の全塩素濃度で1(mg-Cl2/L)、SVが20(h-1)となるように、実施例2では、スライム抑制剤として安定化次亜臭素酸組成物を使用し、被処理水の全塩素濃度で1(mg-Cl2/L)、SVが10(h-1)となるように、純水を活性炭に通水し、そのときのカラムの透過水の全塩素濃度、遊離塩素濃度を測定した。なお、実施例1における被処理水の全塩素濃度(mg-Cl2/L)とSV(h-1)の積は、20(mg-Cl2/L・h)となる。結果を表1に示す。
【0082】
【0083】
実施例3では、スライム抑制剤として安定化次亜臭素酸組成物を使用し、被処理水の全塩素濃度で1(mg-Cl2/L)、SVが50(h-1)となるように海水を活性炭に通水した場合のカラムの透過水の全塩素濃度、遊離塩素濃度を測定した。結果を表2に示す。
【0084】
【0085】
実施例4では、スライム抑制剤として安定化次亜臭素酸組成物を使用し、被処理水の全塩素濃度で0.5(mg-Cl2/L)、SVが40(h-1)となるように、実施例5では、スライム抑制剤として安定化次亜臭素酸組成物を使用し、被処理水の全塩素濃度で0.5(mg-Cl2/L)、SVが20(h-1)となるように、純水を活性炭に通水し、そのときのカラムの透過水の全塩素濃度、遊離塩素濃度を測定した。結果を表3に示す。なお、実施例4における被処理水の全塩素濃度(mg-Cl2/L)とSV(h-1)の積は、20(mg-Cl2/L・h)となる。
【0086】
【0087】
また、比較例1としてスライム抑制剤として次亜塩素酸を使用し、被処理水の全塩素濃度で1(mg-Cl2/L)、SVが100(h-1)となるように純水を活性炭に通水した場合の、カラムの透過水の全塩素濃度、遊離塩素濃度を測定した。結果を表4に示す。
【0088】
【0089】
スライム抑制剤として安定化次亜臭素酸組成物を使用し、被処理水の全塩素濃度が1(mg-Cl2/L)で活性炭に通水した場合、SV10(h-1)以下では添加開始から3時間経過しても全塩素がほとんど残留せず、SV20(h-1)以上では添加開始から1時間で全塩素が残留することがわかる。被処理水の全塩素濃度が0.5(mg-Cl2/L)の場合では、SV20(h-1)以下では添加開始から3時間経過しても全塩素がほとんど残留せず、SV40(h-1)以上で通水した場合に、添加開始から1時間で全塩素が残留することがわかる。また、スライム抑制剤として次亜塩素酸を使用し、被処理水の全塩素濃度が1(mg-Cl2/L)の場合、SV100(h-1)でも全塩素が分解される。また、この結果から、被処理水の全塩素濃度(mg-Cl2/L)とSV(h-1)の積は、20(mg-Cl2/L・h)以上が好ましいことがわかる。
【0090】
一方、特許文献1に挙げた塩素とスルファミン酸からなる結合塩素剤では、結合塩素濃度5(mg-Cl2/L)、SV20(h-1)の条件において、通水BVが約5000で塩素がリークすることが述べられている。これは本実施例の条件と同様の活性炭量45mLで測定した場合、約250時間かかることとなり、SV20(h-1)、通水1時間では活性炭塔出口に塩素がリークしないことがわかる。また、特許文献1に挙げられた塩素とスルファミン酸とからなる結合塩素剤と、安定化次亜臭素酸組成物の殺菌効果を比較した。初期菌数107個/mLの試料水に、全塩素濃度が0.1(mg-Cl2/L)となるように、それぞれのスライム抑制剤を添加したとき、1時間後の菌数は、塩素とスルファミン酸とからなる結合塩素剤を添加した試料水では、変わらず107個/mLであるのに対し、安定化次亜臭素酸組成物を添加した試料水の菌数は、106個/mLであった。すなわち、安定化次亜臭素酸組成物の方が、殺菌効果が大きかった。
【0091】
このように、実施例の方法によって、活性炭処理において、スライム抑制剤の添加から短時間で十分なスライム抑制効果を得ることができた。
1 水処理装置、10 被処理水槽、12 活性炭塔、14 逆浸透膜処理装置、16,18 ポンプ、20,22 被処理水配管、24 活性炭処理水配管、26 透過水配管、28 濃縮水配管、30 安定化次亜臭素酸組成物添加配管、32 pH調整剤添加配管。