(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064375
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】搬送容器、搬送装置および心取り装置
(51)【国際特許分類】
B24B 9/14 20060101AFI20220419BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20220419BHJP
【FI】
B24B9/14 Z
B24B9/14 J
B24B41/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172964
(22)【出願日】2020-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長島 克好
(72)【発明者】
【氏名】石崎 幸治
【テーマコード(参考)】
3C034
3C049
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034BB73
3C034BB83
3C034BB84
3C034DD20
3C049AA03
3C049AB03
3C049AB05
3C049CB02
(57)【要約】
【課題】心出し加工を行う際に、ワークの損傷、ベルヤトイの先端の損傷または変形を抑制することができる搬送容器、搬送装置および心取り装置を提供すること。
【解決手段】搬送容器は、複数のワークを保持するワークトレーと、ワークトレーを保持するベーストレーと、ワークトレーと前記ベーストレーとの距離を、ベーストレーに対して垂直に接近または離間させるガイド部材と、ワークトレーとベーストレーとの間に配置された弾性部材と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワークを保持するワークトレーと、
前記ワークトレーを保持するベーストレーと、
前記ワークトレーと前記ベーストレーとの距離を、前記ベーストレーに対して垂直に接近または離間させるガイド部材と、
前記ワークトレーと前記ベーストレーとの間に配置された弾性部材と、
を備える搬送容器。
【請求項2】
前記ワークトレーは、
前記ワークである光学素子を保持するためのトレーであり、
前記光学素子のコバ部を保持する上トレーと、
前記光学素子の二つの面のうちの一方を保持する下トレーと、
を備える請求項1に記載の搬送容器。
【請求項3】
前記上トレーには、前記光学素子を出し入れするための孔部が形成されており、
前記孔部は、テーパ状をなしている、
請求項2に記載の搬送容器。
【請求項4】
前記上トレーと前記下トレーとの間に配置され、前記上トレーおよび前記下トレー間の距離を規定するスペーサを更に備える、
請求項2または請求項3に記載の搬送容器。
【請求項5】
前記下トレーには、前記光学素子を前記下トレーの裏面から吸引するための吸引孔が形成されている、
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の搬送容器。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の搬送容器と、
前記搬送容器からワークを給排するためのピックアップツールが設けられたワーク給排部へと、前記搬送容器を移動させる輸送機構と、
を備え、
前記輸送機構は、
前記ピックアップツールの位置と、前記搬送容器に載置された複数のワークの位置とを合わせるための二軸の駆動機構と、
前記ピックアップツールの位置と、前記ワークとの間隔を変化させるための一軸の駆動機構と、
を備える搬送装置。
【請求項7】
請求項6に記載の搬送装置と、
互いの中心軸が一致する二つのベルヤトイと、
光学素子の外周面を研削する砥石と、
を備え、
前記二つのベルヤトイのいずれか一方は、前記ピックアップツールである、
心取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送容器、搬送装置および心取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワーク(例えば光学素子)の外周面を研削する心取り装置が開示されている。この心取り装置では、供給トレーに載置されたワークを、ピックアップユニットによってレンズホルダに移動させた後、当該レンズホルダによって、ベルヤトイ(上ベルヤトイ)に合わせてワークの位置および姿勢の制御を行う。そして、ベルヤトイによってワークを吸着して心出しを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示された心取り装置では、ベルヤトイによってワークを吸着する際に、ワークに傷が発生したり、あるいはベルヤトイの先端が損傷または変形したりするおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、心出し加工を行う際に、ワークの損傷、ベルヤトイの先端の損傷または変形を抑制することができる搬送容器、搬送装置および心取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る搬送容器は、複数のワークを保持するワークトレーと、前記ワークトレーを保持するベーストレーと、前記ワークトレーと前記ベーストレーとの距離を、前記ベーストレーに対して垂直に接近または離間させるガイド部材と、前記ワークトレーと前記ベーストレーとの間に配置された弾性部材と、を備える。
【0007】
また、本発明に係る搬送容器は、上記発明において、前記ワークトレーが、前記ワークである光学素子を保持するためのトレーであり、前記光学素子のコバ部を保持する上トレーと、前記光学素子の二つの面のうちの一方を保持する下トレーと、を備える。
【0008】
また、本発明に係る搬送容器は、上記発明において、前記上トレーには、前記光学素子を出し入れするための孔部が形成されており、前記孔部が、テーパ状をなしている。
【0009】
また、本発明に係る搬送容器は、上記発明において、前記上トレーと前記下トレーとの間に配置され、前記上トレーおよび前記下トレー間の距離を規定するスペーサを更に備える。
【0010】
また、本発明に係る搬送容器は、上記発明において、前記下トレーには、前記光学素子を前記下トレーの裏面から吸引するための吸引孔が形成されている。
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る搬送装置は、上記の搬送容器と、前記搬送容器からワークを給排するためのピックアップツールが設けられたワーク給排部へと、前記搬送容器を移動させる輸送機構と、を備え、前記輸送機構が、前記ピックアップツールの位置と、前記搬送容器に載置された複数のワークの位置とを合わせるための二軸の駆動機構と、前記ピックアップツールの位置と、前記ワークとの間隔を変化させるための一軸の駆動機構と、を備える。
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る心取り装置は、上記の搬送装置と、互いの中心軸が一致する二つのベルヤトイと、光学素子の外周面を研削する砥石と、を備え、前記二つのベルヤトイのいずれか一方が、前記ピックアップツールである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る搬送容器、搬送装置および心取り装置は、搬送容器のワークトレーとベーストレーとの間に弾性部材が設けられており、ワークトレーがベーストレーに対して垂直に接近または離間することが可能に構成されている。これにより、ベルヤトイがワークに接触した際の荷重を、弾性部材によって分散させることができるため、心出し加工を行う際に、ワークの損傷、ベルヤトイの先端の損傷または変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る心取り装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る搬送容器の構成の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図2のA部を抜き出して拡大した断面図である。
【
図4】
図4は、
図3の光学素子を別の形状の光学素子に変更した場合を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係る搬送容器において、上ベルヤトイによって光学素子を吸引する際の様子を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態に係る心取り装置による心取り方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る搬送容器、搬送装置および心取り装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、以下の実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものも含まれる。
【0016】
(心取り装置)
本発明の実施の形態に係る心取り装置の構成について、
図1を参照しながら説明する。本実施の形態に係る心取り装置1は、ワークの外周面を研削する加工(心取り加工)を行うためのものである。心取り装置1は、具体的には一対のベルヤトイによってワークを挟持しながら心取り加工を行う、ベル式の心取り装置である。
【0017】
心取り装置1の加工対象となるワークとしては、互いに対向する光学面(レンズ面)が予め研磨された光学素子(レンズ)が挙げられる。また、この光学素子としては、例えば二つの光学面が共に凸球面状をなすレンズ、対向する二つの光学面が共に凹球面状をなすレンズ、対向する二つの光学面がそれぞれ凹球面状および凸球面状をなすレンズ、対向する二つの光学面の一方が平面状のレンズ、等が挙げられる。なお、従来の心取り装置1では、例えば最小でφ3mm程度の光学素子を加工対象としているが、心取り装置1では、例えばφ2mm以下の微小な光学素子についても加工可能である。
【0018】
心取り装置1は、
図1に示すように、光学素子をクランプ部20に搬送する搬送部10と、光学素子を一対のベルヤトイによってクランプして保持するクランプ部20と、光学素子を研削する加工部40と、心取り装置1全体の動作を制御する制御装置50と、を備えている。
【0019】
ここで、
図1では、ワーク軸R1の方向を垂直方向(Z方向)とし、Z方向に対する直交面を水平面(XY面)とする。また、同図では、紙面と平行な方向をX方向とし、紙面と直交する方向をY方向としている。また、同図では図示を省略したが、心取り装置1には、搬送部10における搬送を開始するための「自動搬送ボタン」と、加工部40における心取り加工を開始するための「自動加工ボタン」とが設けられており、オペレータがこれらのボタンを押下することにより各処理が開始される。
【0020】
搬送部10は、搬送台11と、輸送機構12と、供給パレット13と、排出パレット14と、を備えている。なお、
図1では図示を省略したが、搬送部10には、供給パレット13および排出パレット14を、輸送機構12上の所定位置に搬送するための搬送機構が設けられている。また、同図では、搬送部10を心取り装置1の一部として説明しているが、搬送部10を、心取り装置1とは別の独立した搬送装置として設けてもよい。
【0021】
輸送機構12は、ワークを搬送するための搬送容器をクランプ部20へと移動させるためのものである。この搬送容器は、具体的には供給パレット13および排出パレット14から構成される。輸送機構12は、光学素子の心取り加工を行う際に、供給パレット13および排出パレット14を、ワーク軸R1上に移動させる。すなわち、輸送機構12は、クランプ部20に光学素子を供給する際、およびクランプ部20から光学素子を排出する際に、供給パレット13および排出パレット14を、クランプ部20の上ベルヤトイ22の直下に移動させる。
【0022】
輸送機構12は、第一の駆動機構および第二の駆動機構を備えている。第一の駆動機構は、
図1のXY面上において、クランプ部20の上ベルヤトイ22の位置と、供給パレット13および排出パレット14に載置された複数の光学素子の中心の位置とを合わせるための二軸の駆動機構である。また、第二の駆動機構は、同図のZ方向において、上ベルヤトイ22の位置と、光学素子との間隔を変化させるための一軸の駆動機構である。
【0023】
供給パレット13は、心取り加工前の光学素子が載置される搬送容器である。供給パレット13には、複数の光学素子を出し入れするための複数の孔部(孔部131a)が形成されている。また、供給パレット13は、例えば樹脂材料により構成されている。なお、供給パレット13の詳細については後記する(
図2~
図4参照)。
【0024】
排出パレット14は、心取り加工後の光学素子が載置される搬送容器である。排出パレット14には、複数の光学素子を出し入れするための複数の孔部が形成されている。また、排出パレット14は、例えば樹脂材料により構成されている。なお、本実施の形態では、供給パレット13および排出パレット14をそれぞれ別々の構成として説明しているが、供給パレット13が排出パレット14を兼ねてもよい。
【0025】
クランプ部20は、下ベルヤトイ21と、上ベルヤトイ22と、下スピンドル23と、上スピンドル24と、スライドレール25と、上スピンドル移動テーブル26と、ワーク軸回転モータ27と、上スピンドル昇降駆動モータ28と、ベース29と、エアブローノズル30と、研削液ノズル31と、研削液シャッター32と、を備えている。なお、クランプ部20は、光学素子を給排する「ワーク給排部」としても機能する。
【0026】
下ベルヤトイ21および上ベルヤトイ22は、心取り加工の際に光学素子を挟持するためのものである。下ベルヤトイ21および上ベルヤトイ22は、互いに中心軸(ワーク軸R1)を一致させて対向配置されている。すなわち、下ベルヤトイ21および上ベルヤトイ22は、XY面において高精度に位置合わせされている。
【0027】
下ベルヤトイ21および上ベルヤトイ22には、ワーク軸R1に沿って、それぞれ孔部21a,22aが形成されている。孔部21a,22aは、光学素子を吸引するための吸引孔として機能する。また、孔部22aは、光学素子を排出パレット14に載置する際に、エアを噴射する。
【0028】
上ベルヤトイ22は、心取り加工の際に光学素子を挟持する機能の他に、供給パレット13および排出パレット14から光学素子を給排するためのピックアップツールとしても機能する。すなわち、上ベルヤトイ22は、心取り加工の開始時に、輸送機構12によって輸送された供給パレット13上の光学素子を吸引してピックアップし、下ベルヤトイ21の先端に載置する。また、上ベルヤトイ22は、心取り加工の終了時に、下ベルヤトイ21の先端に載置された光学素子を吸引してピックアップし、輸送機構12によって輸送された排出パレット14に載置する。
【0029】
下スピンドル23は、下ベルヤトイ21を保持するためのものである。心取り装置1では、上スピンドル24によって保持された上ベルヤトイ22の先端で光学素子を吸着する。その後、上スピンドル昇降駆動モータ28を駆動して上スピンドル24および上スピンドル移動テーブル26を下方に移動させ、上ベルヤトイ22を下ベルヤトイ21に近づけることにより、下ベルヤトイ21と上ベルヤトイ22とによって光学素子の光学面を挟持する。
【0030】
上スピンドル24は、上ベルヤトイ22を保持するためのものである。スライドレール25は、上スピンドル24および上スピンドル移動テーブル26を案内するためのものであり、ワーク軸R1に沿って設けられている。上スピンドル移動テーブル26には、上スピンドル24が固定されている。
【0031】
ワーク軸回転モータ27は、下スピンドル23および上スピンドル24を、ワーク軸R1を中心として同時に、または独立させて回転させるためのものである。上スピンドル昇降駆動モータ28は、上スピンドル24および上スピンドル移動テーブル26をワーク軸R1に沿って移動させる。なお、ワーク軸回転モータ27および上スピンドル昇降駆動モータ28は、制御装置50の制御に基づいて動作するが、ユーザが手動によって動作を制御(ON/OFF)することも可能である。ベース29には、下スピンドル23およびワーク軸回転モータ27が固定されている。
【0032】
エアブローノズル30は、砥石41によって光学素子の外周面を研削する際に、光学素子に対してエアを噴出する。研削液ノズル31は、砥石41によって光学素子の外周面を研削する際に、光学素子に対して研削液を噴出する。
【0033】
研削液シャッター32は、クランプ部20および加工部40を外部から遮断するためのものである。この研削液シャッター32は、Z方向に開閉(スライド移動)可能に構成されている。例えば、砥石41によって光学素子の外周面を研削する際に、研削液シャッター32を閉鎖することにより、心取り装置1の外部に研削液が飛散することを抑制ことができる。
【0034】
加工部40は、砥石41と、砥石回転モータ42と、スライドレール43と、砥石移動テーブル44と、砥石軸駆動モータ45と、を備えている。
【0035】
砥石41は、ワーク軸R1と平行に設けられた砥石軸R2を中心に、回転可能に構成されている。砥石41は、例えば円盤状に形成されており、当該円盤状の外周面41aが研削面となっている。この砥石41を回転させながら、砥石軸駆動モータ45を駆動して砥石移動テーブル44を図の右方に移動させ、外周面41aを光学素子の外周面に当接させることにより、光学素子の外周面が研削される。
【0036】
砥石回転モータ42は、砥石41を回転させるためのものである。スライドレール43は、砥石移動テーブル44を案内するためのものであり、砥石軸R2と直交する方向(X方向)に沿って設けられている。砥石移動テーブル44には、砥石回転モータ42が設置されている。砥石軸駆動モータ45は、砥石移動テーブル44を、スライドレール43に沿って移動させるためのものである。
【0037】
なお、
図1では図示を省略したが、加工部40には、砥石41を上下方向に移動させるための機構も設けられている。具体的には、加工部40には、砥石軸R2の方向(Z方向)に沿って設けられ、砥石移動テーブル44を上下方向に案内するスライドレールと、当該ライドレールに沿って砥石移動テーブル44を移動させる駆動モータと、が設けられている。
【0038】
ここで、特許文献1に開示された従来の心取り装置では、供給パレットに載置された光学素子を、ピックアップユニットにより一度レンズホルダへと移動させ、レンズホルダによって光学素子の位置および姿勢の制御を行う。そして、上ベルヤトイによって光学素子を吸着した後にレンズホルダを退避させ、上ベルヤトイを下降させて心出し加工を行う。従って、特許文献1に開示された従来の心取り装置では、例えばφ2mm以下の微小な光学素子や、コバ部の厚さが小さい光学素子等を加工する際に、上ベルヤトイの先端または光学素子が損傷するおそれがあった。
【0039】
一方、本実施の形態に係る心取り装置1では、ピックアップユニットやレンズホルダを用いることなく、緩衝機構を備えた供給パレット13を上ベルヤトイ22の直下まで移動させ、上ベルヤトイ22によって光学素子の中央を吸着してピックアップする。これにより、微小な光学素子やコバ部の厚さが小さい光学素子等を加工する場合においても、上ベルヤトイ22の先端または光学素子の損傷を抑制することができる。また、心取り装置1では、ピックアップユニットやレンズホルダを設ける必要がないため、装置構成を簡易化してコストダウンを図ることができる。
【0040】
(搬送容器)
本発明の実施の形態に係る搬送容器の構成について、
図2~
図4を参照しながら説明する。本実施の形態では、搬送容器の具体例として、供給パレット13の構成について説明する。
【0041】
供給パレット13は、上トレー131と、下トレー132と、シャフト133と、スペーサ134と、ベーストレー135と、ガイド部材136と、弾性部材137と、を備えている。供給パレット13の構成要素のうち、上トレー131および下トレー132は、複数の光学素子Wを保持するためのワークトレーとして機能する。
【0042】
上トレー131は、光学素子Wのコバ部を保持するためのものである。上トレー131には、複数の孔部131a,131bが形成されている。孔部131aは、光学素子Wを収容するためのものである。また、孔部131bは、上トレー131と下トレー132との位置を合わせるシャフト133を挿入するためのものである。
【0043】
孔部131aの詳細について、
図2のA部を拡大した
図3を参照しながら説明する。孔部131aは、具体的には、第一の孔部1311と、第二の孔部1312と、から構成されている。第一の孔部1311は、光学素子Wを第二の孔部1312へと案内するための領域であり、テーパ状に形成されている。すなわち、第一の孔部1311は、
図4に示すように断面視すると、上方から下方に向かって径が小さく形成されており、全体として円錐台状の空間に形成されている。また、第二の孔部1312は、光学素子Wの外周面と当接する領域であり、垂直に形成されている。すなわち、第一の孔部1311は、全体として円錐状の空間に形成されている。
【0044】
ここで、第二の孔部1312の高さH1は、光学素子Wのコバ部の高さH2よりも高くすることが好ましい。このように、第二の孔部1312の高さH1を、光学素子Wのコバ部の高さH2よりも高くすることにより、光学素子Wを第二の孔部1312に収容した際の、光学素子Wの横ずれを抑制することができる。
【0045】
第二の孔部1312の高さH1は、上トレー131と下トレー132との間の隙間Gに配置するスペーサ134の厚さを変更し、両者の隙間Gの大きさを変更することにより、調整することができる。例えば
図4に示すように、
図3の光学素子Wよりもコバ部の上端の高さが低い光学素子W1を扱う場合は、
図3よりも厚さの小さいスペーサ134を用いて、隙間Gを小さくする。これにより、第二の孔部1312の高さH1を、光学素子W1のコバ部の高さH2よりも高くすることができる。
【0046】
図2に戻り、供給パレット13の残りの構成について説明する。下トレー132は、光学素子Wの二つの面のうちの一方を保持するためのものである。下トレー132には、複数の孔部132aが形成されている。この孔部132aは、光学素子Wを下トレー132の裏面から吸引するための吸引孔、研削液を排出するための排出孔として機能する。
【0047】
スペーサ134は、上トレー131および下トレー132間の距離(隙間Gの大きさ)を規定するためのものである。このスペーサ134は、上トレー131と下トレー132との間に配置されている。また、スペーサ134は、例えばシャフト133の外径に対応する孔部が形成された、円環状の部材によって構成される。スペーサ134の具体的な厚さは、光学素子Wのコバ部の厚さに応じて決定される。例えば
図3および
図4に示すように、光学素子Wのコバ部の厚さが大きくなるほど、スペーサ134の厚さは小さくなる。
【0048】
ベーストレー135は、下トレー132を保持するためのものである。ガイド部材136は、下トレー132とベーストレー135との距離を、ベーストレー135に対して垂直に接近または離間させるためのものである。ガイド部材136は、具体的には、リニアブッシュ136aと、当該リニアブッシュ136aに挿入されたリニアシャフト136bとから構成される。
【0049】
リニアブッシュ136aは、ベーストレー135に埋設されている。また、リニアシャフト136bの一端側は、下トレー132の下面に埋設されている。弾性部材137は、下トレー132とベーストレー135との間に配置されており、下トレー132とベーストレー135との隙間の大きさを一定に保っている。この弾性部材137とガイド部材136は、上トレー131および下トレー132に加わる荷重を緩衝するための緩衝機構として機能する。なお、ガイド部材136としては、
図2に示した機構の他にも、ワークトレー(上トレー131および下トレー132)を上下に平行的に動作させることが可能な、様々な機構を採用することができ、より傾きの発生が少ない機構を用いることが特に好ましい。
【0050】
このような構成を備える供給パレット13では、例えば
図5に示すように、心取り加工の際に、供給パレット13から光学素子Wをピックアップするために、上ベルヤトイ22を光学素子Wに接触させると、弾性部材137が収縮する。そして、上トレー131および下トレー132が、ベーストレー135に対して垂直に接近し、下トレー132とベーストレー135との間の隙間が狭まる。
【0051】
なお、本実施の形態では、供給パレット13の構成についてのみ具体的に説明したが、排出パレット14については、供給パレット13の構成のうち、少なくとも光学素子Wを収容するための孔部(孔部131aに相当)と、光学素子Wを吸引するための孔部(孔部132aに相当)とを備えていればよい。また、排出パレット14は、供給パレット13と同様の構成を備えていてもよい。
【0052】
(心取り方法)
本発明の実施の形態に係る心取り装置1による心取り方法について、
図6を参照しながら説明する。なお、同図で説明する各処理は、制御装置50が主体となって実施される。また、同図において、左側に列挙したステップS1,S5~S7,S9~S18,S21,S22,S25の処理は、クランプ部20および加工部40において実施される処理を示しており、右側に列挙したステップS2~S4,S8,S19,S20,S23,S24の処理は、搬送部10において実施される処理を示している。また、同図では、時系列の順に各ステップを列挙しており、左右の同じ位置に示したステップ(例えばステップS1とステップS2等)は、概ね同じ時刻に行われる処理を示している。
【0053】
まず、オペレータによって、自動加工ボタンが押下される(ステップS1)。続いて、オペレータによって、自動搬送ボタンが押下されると(ステップS2)、制御装置50は、輸送機構12によって供給パレット13の搬送を開始する(ステップS3)。
【0054】
続いて、制御装置50は、供給パレット13が所定位置に到着したか否かを判定する(ステップS4)。供給パレット13が所定位置に到着していないと判定した場合(ステップS4でNo)、制御装置50は、ステップS4に戻る。一方、供給パレット13が所定位置に到着したと判定した場合(ステップS4でYes)、制御装置50は、上ベルヤトイ22を下降させ(ステップS5)、上ベルヤトイ22を吸引ONとする(ステップS6)。これにより、上ベルヤトイ22によって、供給パレット13の光学素子Wがピックアップされ、下ベルヤトイ21の先端に載置される。
【0055】
なお、ステップS6において、光学素子Wを吸引できなかった場合、制御装置50は、上ベルヤトイ22を吸引OFFとし、ステップS5,S6を繰り返す。そして、ステップS5,S6を三回繰り返しても光学素子Wを吸引できなかった場合、制御装置50は、本処理を一時停止し、例えば心取り装置1に接続された表示装置等に吸引エラー表示を行う。
【0056】
続いて、制御装置50は、上ベルヤトイ22を上昇させ(ステップS7)、供給パレット13を研削液シャッター32の外に退避させる(ステップS8)。続いて、制御装置50は、下ベルヤトイ21を吸引OFFとし(ステップS9)、研削液シャッター32を閉鎖する(ステップS10)。続いて、制御装置50は、上ベルヤトイ22を下降させ(ステップS11)、下ベルヤトイ21と上ベルヤトイ22とによって光学素子Wを保持およびクランプする(ステップS12)。
【0057】
続いて、制御装置50は、上ベルヤトイ22および下ベルヤトイ21を吸引OFFとし(ステップS13)、光学素子Wの加工を開始する(ステップS14)。光学素子Wの加工が終了すると(ステップS15)、制御装置50は、研削液シャッター32を開放する(ステップS16)。続いて、制御装置50は、上ベルヤトイ22を吸引ONとし(ステップS17)、光学素子Wを吸着しながら上ベルヤトイ22を上昇させる(ステップS18)。
【0058】
続いて、制御装置50は、輸送機構12によって排出パレット14の搬送を開始する(ステップS19)。続いて、制御装置50は、排出パレット14が所定位置に到着したか否かを判定する(ステップS20)。排出パレット14が所定位置に到着していないと判定した場合(ステップS20でNo)、制御装置50は、ステップS20に戻る。一方、排出パレット14が所定位置に到着したと判定した場合(ステップS20でYes)、制御装置50は、上ベルヤトイ22を下降させ(ステップS21)、上ベルヤトイ22を吸引OFFとする(ステップS22)。これにより、上ベルヤトイ22によって、加工後の光学素子Wが排出され、排出パレット14に形成された孔部に光学素子Wが収容される。
【0059】
なお、ステップS22において、光学素子Wを排出できなかった場合、制御装置50は、上ベルヤトイ22に光学素子Wが残っていないかを判定する。そして、判定を三回繰り返しても光学素子Wを排出できなかった場合、制御装置50は、本処理を一時停止し、例えば心取り装置1に接続された表示装置等に排出エラー表示を行う。
【0060】
続いて、制御装置50は、光学素子Wが最終ワークであるか否か、すなわち全ての光学素子Wを加工したか否かを判定する(ステップS23)。光学素子Wが最終ワークであると判定した場合(ステップS23でYes)、制御装置50は、排出パレット14を退避させ(ステップS24)、本処理を終了する。一方、光学素子Wが最終ワークではないと判定した場合(ステップS23でNo)、制御装置50は、ステップS3に戻る。
【0061】
以上説明したような本実施の形態に係る搬送容器、搬送装置および心取り装置では、供給パレット13の下トレー132とベーストレー135との間に弾性部材137が設けられており、上トレー131および下トレー132が、ベーストレー135に対して垂直に接近または離間することが可能に構成されている。これにより、上ベルヤトイ22が光学素子Wに接触した際の荷重を、弾性部材137によって分散させることができるため、心出し加工を行う際に、光学素子Wの損傷、上ベルヤトイ22の先端の損傷または変形を抑制することができる。
【0062】
また、本実施の形態に係る搬送容器、搬送装置および心取り装置では、クランプ部20に光学素子Wを供給する際は、輸送機構12によって、供給パレット13を上ベルヤトイ22の直下まで移動させた後、輸送機構12の第一の駆動機構によって、XY面上における上ベルヤトイ22の位置と供給パレット13に載置された光学素子Wの位置とを合わせ、供給パレット13から光学素子Wをピックアップする。また、クランプ部20から光学素子Wを排出する際は、輸送機構12によって、排出パレット14を上ベルヤトイ22の直下まで移動させた後、輸送機構12の第一の駆動機構によって、XY面上における上ベルヤトイ22の位置と排出パレット14の孔部の位置とを合わせ、排出パレット14に光学素子Wを収容する。これにより、光学素子Wの中心位置を正確に保持することが可能となり、光学素子Wを出し入れする際の横ずれが抑制される。
【0063】
また、本実施の形態に係る搬送容器、搬送装置および心取り装置では、上トレー131および下トレー132を、ベーストレー135に対して垂直に接近または離間させるガイド部材136を備えている。これにより、加工前の光学素子Wを供給パレット13からピックアップする際、あるいは加工後の光学素子Wを排出パレット14に収容する際に、光学素子Wの横ずれが抑制され、光学素子Wを高精度に出し入れすることが可能となる。
【0064】
また、本実施の形態に係る搬送容器、搬送装置および心取り装置では、光学素子Wを載置するワークトレーが、上トレー131および下トレー132に分割されており、かつ両者の間にスペーサ134が設けられている。これにより、スペーサ134の厚さを変更することにより、形状やコバ部の厚さが異なる複数種類の光学素子Wを扱うことができる。すなわち、光学素子Wのコバ部の厚さに応じて、複数の上トレー131を用意することなく、一つの上トレー131によって、複数種類の光学素子Wを保持することができる。
【0065】
また、本実施の形態に係る搬送容器、搬送装置および心取り装置では、光学素子Wを載置するワークトレーが、上トレー131および下トレー132に分割されているため、光学素子Wのコバ部を保持する孔部131aを、従来のザグリ孔ではなく、貫通孔として形成することができる。これにより、孔部131aを加工する際に、光学素子Wの外周面と孔部131aとの間のクリアランスを、極めて小さく形成することができる。
【0066】
また、本実施の形態に係る搬送容器、搬送装置および心取り装置では、これらの作用および効果によって、例えば微小なレンズであっても、傷つけることなく高精度な心出し加工が可能となる。
【0067】
また、本実施の形態に係る搬送容器、搬送装置および心取り装置では、孔部131aがザグリ孔ではなく、貫通孔として形成されており、孔部131a内に隅が存在しないため、洗浄性が向上する。
【0068】
また、本実施の形態に係る搬送容器、搬送装置および心取り装置では、供給パレット13の孔部131a(第一の孔部1311)がテーパ状に形成されているため、孔部131aと光学素子Wの外周面とのクリアランスが極めて小さい場合においても、光学素子Wが孔部131aの開口部に噛み込むことがない。これにより、光学素子Wを正確に出し入れすることができ、光学素子Wの損傷や取り出し不良を抑制することができる。
【0069】
また、本実施の形態に係る搬送容器、搬送装置および心取り装置では、供給パレット13(および排出パレット14)の下トレー132の光学素子Wの直下に光学素子Wを吸引するための孔部132aが形成されている。これにより、例えば光学素子Wを供給パレット13(および排出パレット14)に載置する際に、上ベルヤトイ22からエア噴射を行ったとしても、孔部132aから光学素子Wを吸引することにより、光学素子Wを確実に収容することができる。更に、孔部132aから光学素子Wを吸引している状態では、供給パレット13(および排出パレット14)を横向きに倒すことも可能となる。
【0070】
以上、本発明に係る搬送容器、搬送装置および心取り装置について、発明を実施するための形態により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0071】
1 心取り装置
10 搬送部
11 搬送台
12 輸送機構
13 供給パレット
131 上トレー
131a,131b 孔部
1311 第一の孔部
1312 第二の孔部
132 下トレー
132a 孔部
133 シャフト
134 スペーサ
135 ベーストレー
136 ガイド部材
136a リニアブッシュ
136b リニアシャフト
137 弾性部材
14 排出パレット
20 クランプ部
21 下ベルヤトイ
21a 孔部
22 上ベルヤトイ
22a 孔部
23 下スピンドル
24 上スピンドル
25 スライドレール
26 上スピンドル移動テーブル
27 ワーク軸回転モータ
28 上スピンドル昇降駆動モータ
29 ベース
30 エアブローノズル
31 研削液ノズル
32 研削液シャッター
40 加工部
41 砥石
41a 外周面
42 砥石回転モータ
43 スライドレール
44 砥石移動テーブル
45 砥石軸駆動モータ
R1 ワーク軸
R2 砥石軸
W,W1 光学素子