(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064391
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】フェイスシールド、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A41D 13/12 20060101AFI20220419BHJP
A41D 13/11 20060101ALI20220419BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
A41D13/12 118
A41D13/11 Z
A62B18/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172988
(22)【出願日】2020-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594005957
【氏名又は名称】株式会社瀬村商店
(72)【発明者】
【氏名】安田 匡弘
(72)【発明者】
【氏名】瀬村 聡士
【テーマコード(参考)】
2E185
3B011
【Fターム(参考)】
2E185AA06
2E185CC36
3B011AA00
3B011AB09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】唾液の飛沫や薬液等から顔全体を保護できるフェイスシールドにおいて、製造が簡単で、迅速に大量生産することが可能で、非常に安価であると共に、曇りにくく、マスク形状に関係なく装着することができるフェイスシールドを提供する。
【解決手段】マスクに固定して使用されるフェイスシールド1であって、顔面を保護するシールド部材11と、該シールド部材11に接合されたマスク固定部材12と、からなり、該マスク固定部材12により、マスクの耳掛け紐を挿通する為の2つの挿通部14が形成され、前記シールド部材11の略中央部に複数の通気孔17を有することを特徴とするフェイスシールド1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクに固定して使用されるフェイスシールドであって、
顔面を保護するシールド部材と、該シールド部材に接合されたマスク固定部材と、からなり、該マスク固定部材により、マスクの耳掛け紐を挿通する為の2つの挿通部が形成され、
前記シールド部材の略中央部に、複数の通気孔を有することを特徴とするフェイスシールド。
【請求項2】
前記マスク固定部材が、2本の固定用テープからなることを特徴とする請求項1記載のフェイスシールド。
【請求項3】
前記マスク固定部材が、枠部材からなることを特徴とする請求項1記載のフェイスシールド。
【請求項4】
前記挿通部が、前記シールド部材と前記マスク固定部材とを2か所において接合することにより形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフェイスシールド。
【請求項5】
前記挿通部が、前記マスク固定部材に形成された切断部により形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフェイスシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェイスシールドに関する。詳しくは、会話や咳、くしゃみ等により飛び散る唾液の飛沫や薬液等から顔全体を保護するためのフェイスシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
比較的簡易なフェイスシールドとして、頭部に固定するタイプのものが知られているが、シールド部材が額に当たる為、曇りやすく、また額が痛くなりやすいといった問題がある。
特許文献1は、頭部に装着される本体フレームと、該本体フレームの外側に配置され、装着者の顔面の全部又は一部を保護するシールド部材を保持するシールドフレームと、を具備する顔面保護具(本発明のフェイスシールドに相当)に関する発明である。該顔面保護具は頭部の大きさ等に関わらず、装着安定性を確実に確保でき、良好なはめ心地を実現できる。しかしながらここで用いられる本体フレームやシールドフレーム等は金型を起こして成型する必要があり、ウィルスの感染拡大が止まらないオーバーシュートの局面においては、製造が間に合わない恐れがある。
【0003】
特許文献2は、マスクに取り付けて使用されるアイガードに関する発明である。該アイガードは、本体フレームやシールドフレーム等を必要としないため、非常に迅速に大量生産することができる。しかしながら、マスクの形状は多種多様で、耳掛けがゴム紐タイプでなくマスク本体と同じ不織布素材で形作られている特殊形状のマスクの場合には、アイガードの切込部がマスクに取り付けられない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-158119号公報
【特許文献2】実用新案登録第3162641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、唾液の飛沫や薬液等から顔全体を保護するためのフェイスシールドの提供を課題とする。詳しくは、製造が簡単で、迅速に大量生産することが可能で、非常に安価であると共に、曇りにくく、マスク形状に関係なく装着することができるフェイスシールドの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると上記課題を解決する為の手段として以下の[1]~[5]が提供される。
[1] マスクに固定して使用されるフェイスシールドであって、顔面を保護するシールド部材と、該シールド部材に接合されたマスク固定部材と、からなり、該マスク固定部材により、マスクの耳掛け紐を挿通する為の2つの挿通部が形成され、前記シールド部材の略中央部に複数の通気孔を有することを特徴とするフェイスシールド。
[2] 前記マスク固定部材が、2本の固定用テープからなることを特徴とする[1]記載のフェイスシールド。
[3] 前記マスク固定部材が、枠部材からなることを特徴とする[1]記載のフェイスシールド。
【0007】
[4] 前記挿通部が、前記シールド部材と前記マスク固定部材とを2か所において接合することにより形成されていることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載のフェイスシールド。
[5] 前記挿通部が、前記マスク固定部材に形成された切断部により形成されていることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載のフェイスシールド。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフェイスシールドは、顔面を保護するシールド部材と、該シールド部材に接合されたマスク固定部材とからなり、シールド部材に蒸気を通す複数の通気孔が設けられている為、極めて安価で迅速に大量生産することができると共に、曇りにくく、マスク形状に関係なく装着でき、尚且つ、唾液の飛沫や薬液等から顔全体を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のフェイスシールドの第一実施形態を表す模式的平面図である。
【
図2】
図1のフェイスシールドにマスクを取り付けた状態を表す模式的平面図である。
【
図3】
図1のフェイスシールドを装着した状態を示す模式的側面図(A)と上面図(B)である。
【
図4】本発明のフェイスシールドの第二実施形態を表す模式的平面図である。
【
図5】本発明のフェイスシールドの第三実施形態を表す模式的平面図である。
【
図6】本発明のフェイスシールドの第四実施形態を表す模式的平面図である。
【
図7】本発明のフェイスシールドの第五実施形態を表す模式的平面図である。
【
図8】本発明のフェイスシールドの第六実施形態を表す模式的平面図である。
【
図9】本発明のフェイスシールドの第七実施形態を表す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づき、本発明のフェイスシールドについて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく同様の効果を奏する範囲において種々の実施形態をとることができる。
【0011】
<第一実施形態>
図1は本発明の第一実施形態であるフェイスシールド1の模式的平面図である。
図1に示すフェイスシールド1にマスクMを取り付けた状態を
図2に、
図1に示すフェイスシールド1を装着した状態を
図3に示す。以下、
図1~
図3に基づき、本発明の第一実施形態を詳説する。
【0012】
[シールド部材]
シールド部材11は、顔面全体を覆うことができ、諸作業を不自由なく行い得る形状であることが望ましい。
図1に示すシールド部材11の場合、幅Xは200~600mm、特に250~400mm程度が好ましい。また高さYは150~400mm、特に200~350mm程度が好ましい。
尚、シールド部材11の形状は、
図1に示すような、長方形の角が切り取られた略八角形でもよいが、例えば、長方形や楕円形、扇型、台形等でもよい。
【0013】
シールド部材11は、唾液の飛沫等をバリアすることができる透明のプラスチックシートからなる。該シートを成す樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレンやシクロオレフィンやその共重合体等のポリオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートやポリエチルアクリレートやその共重合体等のポリアクリル酸エステル類、ポリスルホン、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体等を例示することができる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン、ポリプロピレンは比較的安価である為、オーバーシュートの局面において大量消費されるシールド部材の材料として適する。
【0014】
また本発明のシールド部材11は、装着時(
図3参照)に撓まない程度の剛性を備えることが望ましい。シールド部材の剛性は、これを成す透明のプラスチックシートを二軸延伸することにより高めることができる。またシートの厚さを適切に管理することによっても調整できる。シールド部材11を成すプラスチックシートの厚さは、20~400μm、特に50~300μ、更には80~200μmであることが好ましい。
【0015】
[通気孔]
本発明のシールド部材11には、略中央部に複数の通気孔17が設けられ、呼吸によりフェイスシールド1の内部が曇りにくくなるように設けられている。
フェイスシールド1に設けられた通気孔17は、マスクの位置に複数設けられていることが好ましい。マスクを通過した息の水蒸気が、通気孔17から排出され、フェイスシールド1内が曇るのを防止することができる
1つの通気孔17の孔径は0.5~2mm程度であることが好ましく、特に0.7~1.5mm程度であることが好ましい。また、複数の通気孔17のピッチは2~10mm、好ましくは4~7mmで、縦横に並列に配列された四角形状に設けられていることが好ましい。この他に、通気孔17が千鳥状に配列されたものでも良く、また全体形状も四角形状でなく、楕円形状等に設けられていても良い。
【0016】
[マスク固定部材]
マスク固定部材は、シールド部材に接合されており、マスクの耳掛け紐を挿通する為の挿通部を形成する。
図1に示すマスク固定部材12は、間隔d1をもって配設された2本の固定用テープからなる。該間隔d1は、マスクMの耳掛け紐を除いた部分の幅α(
図2参照)よりも10~150mm、好ましくは30~100mm、更には50~90mm程度広いことが望ましい。該間隔d1とマスクの耳掛け紐を除いた部分の幅αとの差が10mm未満では、装着時にシールド部材11が顔面に接触し、シールド部材11の内面が曇る恐れがある。また差が150mmを超えると、シールド部材11が顔面から離れすぎる為、顔面とシールド部材11との間から唾液の飛沫等が侵入する恐れが生じる。
【0017】
マスク固定部材12の材料は特に限定されるものではないが、例えば、上述したシールド部材11と同様のプラスチックシートを裁断して用いることができる。中でも、ポリエチレンやポリプロピレンは比較的融点が低いため、これらの樹脂からなるプラスチックシートはマスク固定部材12の材料として適する。マスク固定部材12が融点の低い樹脂から成る場合、シールド部材11への接合をヒートシールや溶断シールなどにより、簡単に行うことができる。
【0018】
[挿通部]
本発明のフェイスシールドは、マスクの耳掛け紐を挿通する為の挿通部を具備する。
図1のフェイスシールド1は、マスク固定部材12の中央部分に形成された左右2つずつ(合計4つ)のヒートシール部13により挿通部14が形成されている。挿通部を形成する為に、シールド部材とマスク固定部材とを接合する場合、該接合はヒートシールに限定されるものではなく、接着剤やインパルスシール等、従来公知の接合手段を用いることができる。しかしながらシールド部材とマスク固定部材の双方が熱可塑性樹脂からなる場合は、強度面に鑑み、ヒートシールによることが望ましい。
【0019】
図1のフェイスシールド1は、
図2に示すように、該挿通部14にマスクMの耳掛け紐を通すことにより、マスクに固定される。よって、挿通部14の間隔d2は装着時(
図3)のマスクの布部分の端部の幅βとおおむね一致することが望ましい。詳しくは40~100mm、特に50~80mm程度であることが望ましい。
【0020】
[シールド部材とマスク固定部材の接合]
本発明のフェイスシールドにおいて、シールド部材とマスク固定部材とは接合されている。
図1に示すマスク固定部材12は、その上端及び下端において、シールド部材11と共に溶断シールされており、該溶断シール部15においてシールド部材11とマスク固定部材12とは接合されている。尚、
図1に示すフェイスシールド1は、既にヒートシール部13において、シールド部材11とマスク固定部材12とは接合されている為、当該溶断シール部15を省略することも可能である。しかしながら
図1に示すように、マスク固定部材12が比較的長い場合は、溶断シール部15によりマスク固定部材12の上端が撓んで顔面に触れることを防止できる。
【0021】
[フェイスシールドの装着]
本発明のフェイスシールドは、
図2に示すように、マスクMの耳掛け紐を挿通部14に挿通し使用する。
図3に示すように、挿通部14を通った耳掛け紐を耳に掛ければフェイスシールド1の装着は完了である。本発明のフェイスシールド1は、顔面だけでなくマスクも保護することができる。またマスクの耳掛け紐を除いた部分の幅αが、マスク固定部材12の間隔d1よりも小さいため、フェイスシールド1は顔面に接触せず、フェイスシール1の内側は曇りにくい。
【0022】
<第二実施形態>
図4は、本発明の別の実施形態を表す模式的平面図である。
図4に示すフェイスシールド2は、シールド部材21の略中央部に複数の通気孔27が設けられていると共に、マスク固定部材22の中央部分に形成された切断部により挿通部24が形成されている。該挿通部24の幅d3も、装着時(
図3)のマスクの布部分の端部の幅βとおおむね一致することが望ましい。尚、
図4における切断部は切込により形成されているが、該切断部はマスク固定部材22の中央部分を幅d3だけくり貫くことにより形成することもできる。
図4に示すマスク固定部材22は上端及び下端において、溶断シールされており、溶断シール部25によりシールド部材21に接合されている。
【0023】
<第三実施形態>
図5も、本発明の別の実施形態を表す模式的平面図である。
図5に示すフェイスシールド3は、シールド部材31の略中央部に複数の通気孔37が設けられていると共に、マスク固定部材32が四角形の枠部材からなる。該フェイスシールド3も、
図1に示すフェイスシールド1と同様に、マスク固定部材32に形成されたヒートシール部33により挿通部34が形成されている。
図5に示すマスク固定部材32も上端及び下端において、溶断シールされており、溶断シール部35によりシールド部材31に接合されている。
【0024】
<第四実施形態>
図6も、本発明の別の実施形態を表す模式的平面図である。
図6に示すフェイスシールド4も、シールド部材41の略中央部に複数の通気孔47が設けられていると共に、マスク固定部材42が四角形の枠部材からなる。該フェイスシールド4は、
図2に示すフェイスシールド1と同様に、マスク固定部材42の中央部分に形成された切断部により挿通部44が形成されている。
図6に示すマスク固定部材42も上端及び下端において、溶断シールされており、溶断シール部45によりシールド部材41に接合されている。
【0025】
<第五実施形態>
図7は、本発明の別の実施形態を表す模式的平面図である。
図7に示すフェイスシールド5は、シールド部材51の略中央部に複数の通気孔57が設けられていると共に、長方形状のシールド部材51の両側端に、固定用テープからなるマスク固定部材52が接合されている。マスク固定部材52は、シールド部材51の両側縁に沿った溶断シール55と、固定部材52の上端及び下端の溶断シール55によってシールド部材51に接合されている。シールド部材51の両側端において、シールド部材51とマスク固定部材52とに施された打ち抜き加工によって、マスクの耳掛け紐を通す挿通部54が形成されている。
尚、上記はシールド部材51と別体の固定用テープによってマスク固定部材52を形成したものであるが、シールド部材51のシートの両側を折り曲げた後、上端及び下端を溶断シールしてマスク固定部材52を形成するものであっても良い。
【0026】
<第六実施形態>
図8は、本発明の別の実施形態を表す模式的平面図である。
図8に示すフェイスシールド6は、
図7に示す長方形状のフェイスシールド5の下端側の両隅部に面取り部66を設けたものである。面取り部66を設けることによって、フェイスシールド6を装着した際、下端側の隅部が肌に触れずに快適に使用することができる。
図7に示す面取り部66は、二等辺三角形の等辺が1~3cm、好ましくは1.5~2.5cmとなるように角を切り欠いたものであるが、切り欠きの角を丸めた丸面形状にするものであっても良い。また、面取り部66を溶断シールにより形成しても良い。
【0027】
<第七実施形態>
図9は、本発明の別の実施形態を表す模式的平面図である。
図9に示すフェイスシールド7は、
図8に示すフェイスシールド6の上端側の両隅部に面取り部76を設けたものである。上端側にも面取り部76を設けることで、尖った角部がないフェイスシールドとすることができる。尚、下端側の面取り部76及び上端側の面取り部76の形状は、上記面取り部66と同様の形状とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0028】
1、2、3、4、5、6、7 フェイスシールド
11、21、31、41、51、61、71 シールド部材
12、22、32、42、52、62、72 マスク固定部材
13、33 ヒートシール部
14、24、34、44、54、64、74 挿通部
15、25、35、45、55、65、75 溶断シール部
66、76 面取り部
17、27、37、47、57、67、77 通気孔