(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064466
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】自動車用フロアボード
(51)【国際特許分類】
B60R 5/04 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
B60R5/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173110
(22)【出願日】2020-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000124454
【氏名又は名称】河西工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069431
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 成則
(74)【代理人】
【識別番号】100102761
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 元也
(72)【発明者】
【氏名】吉原 裕二
(72)【発明者】
【氏名】鷺谷 佳典
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022BA20
3D022BB01
3D022BC10
(57)【要約】
【課題】2WAY開閉方式で自動車ラゲッジルームの床面下を隅々まで有効に活用できる使い勝手の良い自動車用フロアボードを提供する。
【解決手段】自動車用フロア―ボードFBは、自動車ラゲッジルームの幅方向左右に分割された一対の分割ボード1L、1Rと、各分割ボードにそれぞれ設けた一対のグリップ2L、2Rと、を具備し、一対のグリップは互いに隣接する位置に配置されていて、一対のグリップをそれぞれ単独で握って持ち上げた場合、一対の分割ボードは、それぞれのグリップとは反対側に位置する分割ボード外側縁部101を基点とした回転動作により、互いに相反する方向に開く観音開きの状態となる一方、一対のグリップを一緒に握って持ち上げた場合、一対の分割ボードは、自動車前方側に位置する分割ボード前方縁部102を基点とした回転動作により、同じ方向に開く一体開きの状態になる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車ラゲッジルームのフロアボードとして使用される自動車用フロアボードであって、
自動車ラゲッジルームの幅方向左右に分割された一対の分割ボードと、
前記各分割ボードにそれぞれ設けた一対のグリップと、を具備し、
前記一対のグリップは互いに隣接する位置に配置されていること、および、前記一対のグリップをそれぞれ単独で握って持ち上げた場合、前記一対の分割ボードは、それぞれの前記グリップとは反対側に位置する分割ボード外側縁部を基点とした回転動作により、互いに相反する方向に開く観音開きの状態となる一方、前記一対のグリップを一緒に握って持ち上げた場合、前記一対の分割ボードは、自動車前方側に位置する分割ボード前方縁部を基点とした回転動作により、同じ方向に開く一体開きの状態になること
を特徴とする自動車用フロア―ボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ラゲッジルームのフロアボード材として用いられる自動車用フロアボードに関し、特に、2WAY開閉方式で自動車ラゲッジルームの床面下を隅々まで収納として有効に活用できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動車用フロアボードとしては、例えば、
図9に示すフロアボード100(以下「従来のフロアボード100」という)が知られている。この従来のフロアボード100は、フロアボード本体101にヒンジ102およびグリップ103が設けられていて、グリップ103を掴んで自動車前方へフロアボード本体101をスライドさせるように押し付けると、ヒンジ102を介してフロアボード本体101が同図二点破線のように山形に折り畳まれることで開の状態になり(例えば、特許文献1を参照)、この状態において、フロアボード本体101の下面側に位置する収納BXを使用できるように構成されている。
【0003】
しかしながら、従来の自動車用フロアボード100によると、前述の通りフロアボード本体101がヒンジ102を介して山形に折り畳まれることで開の状態になる構造、および、その開時には、自動車ラゲージルームの中央付近からその前方に位置する自動車リアシート付近までの範囲に、山形に折り畳まれたフロアボード本体101全体が配置される構造になっている。このため、フロアボード本体101の開時において収納として実質的に利用可能な自動車ラゲッジルームの床面下は、自動車ラゲージルームの中央付近からその後方の範囲の収納BXだけに限定されてしまい、その床面下を隅々まで収納として有効に活用できず、使い勝手が悪いという問題点がある。
【0004】
また、従来の自動車用フロアボード100では、フロアボード本体101の開閉機構としてヒンジ102を採用していること、および、そのヒンジ102はフロアボード本体101の一部の肉厚を薄く設定することによって形成される樹脂ヒンジであることから、ヒンジ102の板厚を厳重に管理する必要があり、その品質維持が難しく、また、繰り返しの開閉によるヒンジ102の破断という問題点を有するだけでなく、更に、フロアボード本体101の上に荷物を置いたときのヒンジ102を基点としたフロアボード本体101の撓みを防止するために、ヒンジ102下に樹脂部品等の支持部材104を配置する必要があり、かかる支持部材104が自動車ラゲージルームの床面下を収納として利用する際の障害になるという問題点も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、2WAY開閉方式で自動車ラゲッジルームの床面下を隅々まで有効に活用できる使い勝手の良い自動車用フロアボードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、自動車ラゲッジルームのフロアボード材として用いられる自動車用フロアボードであって、自動車ラゲッジルームの幅方向左右に分割された一対の分割ボードと、前記各分割ボードにそれぞれ設けた一対のグリップと、を具備し、前記一対のグリップは互いに隣接する位置に配置されていること、および、前記一対のグリップをそれぞれ単独で握って持ち上げた場合、前記一対の分割ボードは、それぞれの前記グリップとは反対側に位置する分割ボード外側縁部を基点とした回転動作により、互いに相反する方向に開く観音開き状態となる一方、前記一対のグリップを一緒に握って持ち上げた場合、前記一対の分割ボードは、自動車前方側に位置する分割ボード前方縁部を基点とした回転動作により、同じ方向に開く一体開きの状態になることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、自動車用フロアボードの具体的な構成として、前述の通り、分割された一対の分割ボードを採用し、各分割ボードにそれぞれ設けた一対のグリップが互いに隣接する位置に配置される構造を採用した。このため、(1)一対のグリップをそれぞれ単独で握ったり、それらを一緒(同時)に握ったりするなど、グリップの握り方を自由に選択できること、および、(2)一対のグリップをそれぞれ単独で握って持ち上げた場合、一対の分割ボードは観音開き状態となる一方、一対のグリップを一緒に握って持ち上げた場合、一対の分割ボードは一体開きの状態になる、いわゆる2WAY開閉方式を自由に選択できること、並びに、(3)観音開きの状態では、それぞれのグリップとは反対側に位置する分割ボード外側縁部を基点とした回転動作により、一対の分割ボードが互いに相反する方向に開くので、分割ボード前方縁部側に位置する自動車リアシート付近まで奥深く自動車ラゲッジルームの床面下を収納として利用することが可能となることから、自動車ラゲッジルームの床面下を隅々まで収納として有効に活用できる使い勝手の良い自動車用フロアボードを提供し得る。
【0009】
また、本発明によると、自動車用フロアボードの具体的な構成として、従来のヒンジを廃止したので、従来のようにヒンジの板厚を厳重に管理する必要がなく、品質管理が容易になるし、ヒンジの破断という問題も生じない。さらに、ヒンジ下に樹脂部品等の支持部材を配置する必要もなく、かかる支持部材が自動車ラゲージルームの床面下を収納として利用する際の障害になるという従来の問題も解決でき、自動車ラゲッジルームの床面下を隅々まで有効に活用する上で好適である等の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明を適用した自動車用フロアボード(一体開きの途中の状態)とこれを採用した自動車ラゲッジルームの斜視図。
【
図4】
図1(
図2)の自動車用フロアボードにおけるグリップ付近の斜視図。
【
図5】
図1(
図2)の自動車用フロアボートとその下の収納部の斜視図。
【
図6】
図1(
図2)の自動車用フロアボードにおける観音開き状態の説明図。
【
図7】
図1(
図2)の自動車用フロアボードにおける一体開き状態の説明図。
【
図8】
図1(
図2)の自動車用フロアボードの他の使用例の説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明を適用した自動車用フロアボード(一体開きの途中の状態)とこれを採用した自動車ラゲッジルームの斜視図である。また、
図2は、
図1の自動車用フロアボードの平面図、
図3は、
図2のA矢視断面図、
図4は、
図1(
図2)の自動車用フロアボードにおけるグリップ付近の斜視図、
図5は、
図1(
図2)の自動車用フロアボートとその下の収納部の斜視図、
図6は、
図1(
図2)の自動車用フロアボードにおける観音開き状態の説明図、
図7は、
図1(
図2)の自動車用フロアボードにおける一体開き状態の説明図、
図1(
図2)の自動車用フロアボードの他の使用例の説明図である。
【0013】
《自動車用フロアボードの基本構成》
図1から
図5を参照すると、
図1の自動車用フロアボードFBは、自動車ラゲッジルームLRの床面を構成するフロアボードとして使用されるものであって、自動車ラゲッジルームLRの幅方向左右に分割された一対の分割ボード1R、1Lと、各分割ボード1R、1Lにそれぞれ設けた一対のグリップ2R、2Lと、を具備する。
【0014】
自動車ラゲッジルームLRの基本的な構成、たとえば、かかる自動車ラゲッジルームLRが、例えば
図1に示したように自動車用フロアボードFBと、後部座席と、左右の内装トリムなどによって仕切られた空間からなることは、周知であるため、その詳細説明は省略する。
《分割ボードの詳細構成》
【0015】
一対の分割ボード1R、1Lを構成する素材については特に限定されないが、分割ボード1R、1L上には荷物N(
図8参照)が置かれるので、その荷重Nに耐え得る強度を備えた素材で分割ボード1R、1Lを構成する必要がある。
【0016】
図2を参照すると、
図1の自動車用フロアボードFBでは、一枚のフロアボード材を自動車ラゲッジルームLRの幅方向中央付近で2つの分割ボード1R、1Lとして分割した構成を採用しているが、その分割の位置は必要に応じて適宜変形することができ、前記のような幅方向中央付近での分割に限定されることはない。
【0017】
前記のような一対の分割ボード1R、1Lからなる自動車用フロアボードFBの全体形状は、自動車ラゲッジルームLRの仕様設計に応じて適宜変更可能である。
【0018】
《グリップの詳細構成》
図1から
図3を参照すると、一対のグリップ2R、2Lは、いずれも、自動車の外側後方から自動車ラゲッジルームLRを見て手前側に位置し、かつ、互いに隣接する位置に横に並べて配置されている。
【0019】
図1の自動車用フロアボードFBにおいて、一対のグリップ2R、2Lをそれぞれ単独で握って持ち上げた場合、一対の分割ボード1R、1Lは、
図6のように、それぞれのグリップ2R、2Lとは反対側に位置する分割ボード外側縁部101、101(
図1参照)を基点とした回転動作(
図6中の矢印Rを参照)により、互いに相反する方向に開く観音開きの状態となる。
【0020】
前記のような回転動作により立ち上がった分割ボード1Lを支持する手段、要するに分割ボード1Lの立ち上がった状態を継続的に維持する構造例として、
図1の自動車用フロアボードFBにおいては、その立ち上がりの基点、すなわち、分割ボード外側縁部101がこれに対応する溝M(
図6参照)に嵌め込まれる構成を採用しているが、この構成に限定されることはない。
【0021】
この一方、
図1の自動車用フロアボードFBにおいて、一対のグリップ2R、2Lを一緒に握って持ち上げた場合、一対の分割ボード1R、1Lは、
図7のように自動車前方側に位置する分割ボード前方縁部102、102を基点とした回転動作により、同じ方向に開く一体開きの状態になる。
【0022】
図3および
図4を参照すると、分割ボード1R、1Lに対するグリップ2R、2Lの具体的な取付け構造として、
図1の自動車用フロアボードFBでは、分割ボード1R、1Lにおけるグリップ2R、2Lの取付け箇所(具体的には、一対の分割ボード1R、1Lの隣接する縁部)に窪み3R、3Lを設け、この窪み3R、3Lの縁部に嵌め込み可能な断面U字形の取付け部4R、4Lがグリップ2R、2Lの下部に一体形成される構造、および、その取付け部4R、4Lが前述の窪み3R、3Lの縁部に嵌め込まれることで、分割ボード1R、1Lに対するグリップ2R、2Lの取付けが行なわれる構成を採用しているが、これとは別の構成によってグリップ2R、2Lの取付けを行うこともできる。
【0023】
《自動車用フロアボードの下面側に位置する収納の説明》
図1の自動車用フロアボードFBの下面側には複数の収納BXが設けられている。収納BXの具体例として、
図1の例では、3つの収納BX1、BX2、B3を示しているが、これに限定されることはない。
【0024】
図1、
図2、
図5を参照すると、前記3つの収納BX1からBX3のうち、第1の収納BX1は、自動車の外側後方から自動車ラゲッジルームLRを見て手前側に位置し、かつ、自動車ラゲッジルームLRの幅方向に拡がった横長大容積空間として構成されている。
【0025】
第2の収納BX2は、前記手前側より奥に位置し、かつ、第1の収納BX2と連通することで、全体として縦長大容積空間となるように構成してある。
【0026】
第3の収納BX3は、前記手前側より奥に位置し、かつ、第2の収納BX2の横に配置された独立の空間となるように構成してある。
【0027】
《自動車用フロアボードの使用方法など》
例えば
図2中の左側のグリップ2Lだけを単独で握って持ち上げた場合には、左側の分割ボード1Lだけが、
図8のように、そのグリップ2Lとは反対側に位置する分割ボード外側縁部101を基点とした回転動作(
図6中の矢印Rを参照)により、立ち上がって開の状態となる。この場合は、例えば、第1の収納BX1とこれに連通する第2の収納BX2とからなる一つの縦長大容積空間(
図5参照)が開放され、かかる縦長大容積空間に比較的縦長の荷物N(N1)を収めることができる。また、開いていない右側の分割ボード1R上には別の荷物N(N2)を置くことができる。
【0028】
また、左右のグリップ2R、2Lをそれぞれ単独で握って持ち上げた場合には、一対の分割ボード1R、1Lが
図6のように観音開きの状態となる。この場合は、第1の収納BX1から第3の収納BX3が開放されるので、それぞれの収納BX1からBX3に荷物Nを収めることができる。例えば、横長大容積空間である第1の収納BX1には比較的横長の荷物N(N3)を収めてもよい。
【0029】
さらに、左右のグリップ2R、2Lを一緒に握って持ち上げた場合には、一対の分割ボード1R、1Lが
図7のように一体開きの状態になる。この場合も、第1の収納BX1から第3の収納BX3が開放されるので、それぞれの収納BX1からBX3に荷物Nを収めることができる。
【0030】
以上説明した実施形態の自動車用フロアボードFBでは、その具体的な構成として、前述の通り、分割された一対の分割ボード1L、1Rを採用し、各分割ボード1L、1Rにそれぞれ設けた一対のグリップ2L、2Rが互いに隣接する位置に配置される構造を採用した。このため、(1)一対のグリップ2L、2Rをそれぞれ単独で握ったり、それらを一緒(同時)に握ったりする等、グリップ2L、2Rの握り方を自由に選択できること、および、(2)一対のグリップ2L、2Rをそれぞれ単独で握って持ち上げた場合、一対の分割ボード1L、1Rは観音開き状態となる一方、一対のグリップ2L、2Rを一緒に握って持ち上げた場合、一対の分割ボード1L、1Rは一体開きの状態になる、いわゆる2WAY開閉方式を自由に選択できること、並びに、(3)観音開きの状態では、それぞれのグリップ2L、2Rとは反対側に位置する分割ボード外側縁部101を基点とした回転動作により、一対の分割ボード1L、1Rが互いに相反する方向に開くので、分割ボード前方縁部101側に位置する自動車リアシート付近まで奥深く自動車ラゲッジルームLRの床面下を収納として利用することが可能となることから、自動車ラゲッジルームLRの床面下を隅々まで収納として有効に活用できる等、使い勝手に優れる。
【0031】
また、実施形態の自動車用フロアボードFBによると、その具体的な構成として、従来のヒンジを廃止したので、従来のようにヒンジの板厚を厳重に管理する必要がなく、品質管理が容易になるし、ヒンジの破断という問題も生じない。さらに、ヒンジ下に樹脂部品等の支持部材を配置する必要もなく、かかる支持部材が自動車ラゲージルームLRの床面下を収納として利用する際の障害になるという従来の問題も解決でき、自動車ラゲッジルームLRの床面下を隅々まで有効に活用する上で好適である。
【符号の説明】
【0032】
1L、1R 一対の分割ボード
101 分割ボード外側縁部
102 分割ボード前方縁部
2L、2R 一対のグリップ
3L、3R 窪み
4L、4R 取付け部
BX(BX1、BX2、BX3) 収納
FB 自動車用フロアボード
LR 自動車ラゲッジルーム
M 溝