(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064488
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】半導体部品
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
H01L23/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173150
(22)【出願日】2020-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090310
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 正俊
(72)【発明者】
【氏名】前田 昂太郎
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA30
5F136BB04
5F136BB18
5F136DA27
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA12
5F136GA02
5F136GA31
(57)【要約】
【課題】 半導体部品の放熱板と封止体の樹脂との密着度を高くする。
【解決手段】 絶縁基板10の一方の面に銅製の放熱板12が直接接合され、絶縁基板10の他方の面に半導体チップ用回路板14が形成され、その上に半導体チップ20が取り付けられている。絶縁基板10と放熱板12と半導体チップ用回路板14と半導体チップ20とが封止体2の内部に封止されている。封止体2では、放熱板12における絶縁基板10と反対側の面を露出させている。放熱板12における前記露出面と絶縁基板10側の面との間にあり、かつ封止体2内にある放熱板12の周面の少なくとも一部24が、絶縁基板に対して傾斜している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板の一方の面に直接接合された金属製の放熱板と、
前記基板の他方の面に設けられた半導体素子と、
前記基板と前記放熱板と前記半導体素子とを、内部に封止し、前記放熱板における前記絶縁基板と反対側の面を露出させている樹脂製の封止体とを、有し、
前記放熱板における前記露出面と前記絶縁基板側の面との間にあり、前記封止体内にある前記放熱板の周面の少なくとも一部が、前記絶縁基板に対する傾斜面を有している半導体部品。
【請求項2】
請求項1記載の半導体部品において、前記傾斜面は、前記放熱板の周面の少なくとも一部に凹凸が形成されている半導体部品。
【請求項3】
請求項1記載の半導体部品において、前記傾斜面は、放熱板の周面の少なくとも一部が、前記放熱板における前記露出面と前記絶縁基板側の面との方向に段に形成されている半導体部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体部品に関し、特に、半導体部品を封止している樹脂製の封止体と、半導体部品内に埋め込まれている放熱板との密着度を向上させることに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂製の封止体の内部に放熱用の金属板を封止した半導体部品としては、例えば特許文献1の
図2に開示されているようなものがある。この半導体部品では、樹脂製の封止体内に放熱用の金属体、即ち金属製のヘッダが封止されているが、このヘッダの一方の面が封止体から露出し、ヘッダの他方の面に半導体チップが取り付けられている。ヘッダの一方の端は封止体内にあるが、ヘッダの露出面に対しほぼ垂直である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような半導体部品では、ヘッダの封止体内にある面が垂直であるので、樹脂とヘッダとの密着度が低く、両者の境界面から封止体の内部に水分が侵入しやすく、絶縁破壊が生じやすかった。
【0005】
本発明は、樹脂製の封止体と放熱用の金属体との密着度を向上させた半導体部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の半導体部品では、絶縁基板の一方の面に金属製の放熱板が直接接合されている。放熱板としては、例えば銅製のものやアルミニウム製のものを使用することができる。放熱板の縁は、絶縁基板の縁よりも内側に位置することが望ましい。前記基板の他方の面に半導体素子が設けられている。半導体素子としては、ダイオード、サイリスタ、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ等の種々のものを使用することができる。なお、絶縁基板の放熱板が結合されている面とは反対側の面に、金属製の別の回路板を直接接合した基材を用い、放熱板と反対面の回路板の上に半導体チップを取り付けたものを半導体用回路板として使用することもできる。前記絶縁基板と前記放熱板と前記半導体素子とを、樹脂製の封止体の内部に封止している。この封止体では、前記放熱板における前記絶縁基板と反対側の面を露出させている。前記放熱板における前記露出面と前記絶縁基板側の面との間にあって前記封止体内にある前記放熱板の周面の少なくとも一部が、前記基板に対して傾斜している。周面の全域を傾斜させることもできる。
【0007】
このように構成すると、放熱板の周面の少なくとも一部が傾斜しているので、周面が垂直である場合よりも封止体の樹脂が傾斜面まで進入し、樹脂がくさびのように機能し、いわゆるアンカー効果が発生する。その結果、放熱板と封止体の樹脂との密着度が高くなり、両者の境界面から封止体の内部に吸湿されにくくなり、絶縁破壊が生じにくい。
【0008】
上記の態様において、前記傾斜している前記放熱板の周面の少なくとも一部に凹凸を形成することができる。例えば、傾斜している周面を荒らすことによって、凹凸を形成することができる。或いは、前記傾斜している放熱板の周面の少なくとも一部を、前記放熱板における前記露出面と前記絶縁基板側の面との方向に段に形成さすることができる。段は、一段とすることもできるし、多段とすることもできる。
【0009】
いずれの場合でも、樹脂の接触面積が増加し、放熱板と封止体の樹脂との密着度が益々向上する。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、放熱板と封止体の樹脂との密着度を高くでき、両者の境界面から封止体の内部に水分が進入しにくくなり、半導体部品内の半導体素子の絶縁破壊が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態の半導体部品の要部の拡大縦断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態の半導体部品の要部の拡大縦断面図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態の半導体部品の要部の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の実施形態の半導体部品は、ディスクリート半導体、例えばMOSFETであって、
図2、
図3に示すように、例えば合成樹脂製の概略扁平な直方体状の封止体2を有している。封止体2は、相対向する主表面4、6を有している。封止体2内において、主平面6側に偏った位置に、DCB基板8が埋設されている。DCB基板8は、例えばセラミック製の長方形状の絶縁基板10を有し、この絶縁基板10の両面それぞれに、熱接合技術を用いて、高温で銅を焼結もしくはロウ付けしたものである。
【0013】
この実施形態では、絶縁基板10における封止体2の主表面6側の銅が、放熱板12を構成している。なお、この放熱板12は、封止体2の主表面6から露出し、ヒートシンクに接触した状態で取り付けられる。
【0014】
また、放熱板12が形成されている面と反対側の絶縁基板10の面の銅は、例えばエッチングされることによって、半導体チップ用回路板14と、回路板16とに構成されている。
【0015】
半導体チップ用回路板14の絶縁基板10と反対側の面には、半導体チップ、例えばMOSFET半導体チップ18のドレイン領域が、例えばはんだによって接続されており、ドレイン領域とは反対側の半導体チップ18の面には、ゲート用パッド、ソース用パッド(いずれも図示せず)が形成され、これらにそれぞれゲート用及びソース用のリード20が接続され、封止体2の外部に導出されている。なお、図示していないが、ドレイン領域に接続されている半導体チップ用回路板14には、ドレイン用リードが接続されている。
【0016】
回路板16は、半導体チップ用回路板14の側方に位置し、これと、絶縁用基板10と放熱板12とを貫通して、貫通孔22が形成されている。この貫通孔22に挿通されたボルトによって、放熱板12がヒートシンクに密着するように固定される。
【0017】
放熱板12は、上述したように絶縁用基板10よりも幾分内側に位置しており、絶縁用基板10側の面と、これと反対側の露出面との間にある周面全域が、
図1に拡大して示すように、例えばエッチングによって、傾斜面24に形成されている。この傾斜面24は、露出面側に向かって傾斜しており、絶縁用基板10に対して鋭角な角度θをなしている。
【0018】
このように斜面24が鋭角な角度θをなしているので、もし、
図1に点線で示すように放熱板12の周面が絶縁用基板10に対して直角をなしている場合よりも封止体2の樹脂が放熱板12側に食い込んでおり、封止体2の樹脂がくさびのように機能し、いわゆるアンカー効果が発生する。その結果、放熱板12と封止体2の樹脂との密着度が高くなり、放熱板12の露出面側にある両者の境界面から封止体2の内部に水分が侵入しにくくなり、半導体チップ18の絶縁破壊が生じにくい。なお、エッチングによって斜面24を形成する際に、半導体チップ用回路板14及び放熱板16の周面にも、斜面が形成されている。
【0019】
図4に第2の実施形態の半導体部品の要部を示す。この実施形態は、放熱板12の斜面として、凹凸付きの斜面24aが形成されている。これ以外、第1の実施形態の半導体部品と同様に構成されている。同等部分には同一符号を付して、その説明を省略する。なお、
図4では、斜面24aの凹凸は誇張して描いてあり、
図1の斜面24を荒らす程度のものでもよい。このように斜面24aは、凹凸を有するものであるので、その凹部内に封止体2の樹脂が侵入し、第1の実施形態よりも更にアンカー効果が顕著になり、放熱板12と封止体2の樹脂との密着度が高くなる。
【0020】
図5に第3の実施形態の半導体部品の要部を示す。この実施形態は、放熱板12の斜面として、段付きの斜面24bが形成されている。これ以外、第1の実施形態の半導体部品と同様に構成されている。同等部分には同一符号を付して、その説明を省略する。この段は、例えば斜面をハーフエッチングすることによって形成される。斜面を段付きの斜面24bとした場合も、アンカー効果が第1の実施形態よりも更に顕著になり、放熱板12と封止体2の樹脂との密着度が高くなる。
【0021】
上記の各実施形態では、半導体チップ18をMOSFETとしたが、これに限ったものではなく、ダイオード、IGBT、バイポーラトランジスタ、サイリスタ等の各種半導体のチップとすることができる。上記の各実施形態では、放熱板12の周面全域を斜面、24、24aまたは24bとしたが、一部だけ、例えば半導体チップ18に近い部分のみを斜面とすることもできる。また、上記の各実施形態では、半導体チップ用回路板14及び回路板16の周面にも斜面を形成したが、ここには必ずしも形成する必要は無い。上記の実施形態では、DCB基板を使用したが、これに代えて絶縁基板にアルミニウム等の金属を直接に結合したDAB基板を使用することもできる。
【符号の説明】
【0022】
2 封止体
8 DCB基板
10 絶縁基板
12 放熱板
14 半導体チップ用回路板(半導体素子)
20 半導体チップ(半導体素子)
24 傾斜面