(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064545
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】無人車両の制御システム、無人車両、及び無人車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20220419BHJP
【FI】
G05D1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173251
(22)【出願日】2020-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角野 洋輔
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA03
5H301BB02
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301DD17
5H301GG14
5H301GG17
5H301KK03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】無人車両が稼働する作業現場の生産性の低下を抑制することのできる無人車両の制御システムを提供する。
【解決手段】無人車両2の制御システム100は、無人車両2を発進させる発進指令を出力する走行制御部104と、発進指令で無人車両2が発進しないと判定された場合、無人車両2が移動可能な管理エリアを設定する管理エリア設定部107と、を備える。走行制御部104は、無人車両2が管理エリアの外側に移動することを制限した状態で、無人車両2の走行装置51を脱出動作させる脱出指令を出力する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人車両を発進させる発進指令を出力する走行制御部と、
前記発進指令で前記無人車両が発進しないと判定された場合、前記無人車両が移動可能な管理エリアを設定する管理エリア設定部と、を備え、
前記走行制御部は、前記無人車両が前記管理エリアの外側に移動することを制限した状態で、前記無人車両の走行装置を脱出動作させる脱出指令を出力する、
無人車両の制御システム。
【請求項2】
前記無人車両の走行条件を示すコースデータを取得するコースデータ取得部と、
前記コースデータに基づいて実施されるコース走行制御の有効化と無効化とを切り換えるコースデータ設定部と、を備え、
前記走行制御部は、前記コース走行制御が無効化された状態で、前記脱出指令を出力する、
請求項1に記載の無人車両の制御システム。
【請求項3】
前記管理エリア設定部は、前記発進しないと判定された時点の前記無人車両の周囲に前記管理エリアのエッジが配置されるように、前記管理エリアを設定する、
請求項1又は請求項2に記載の無人車両の制御システム。
【請求項4】
前記発進指令は、前記無人車両を所定の進行方向に発進させ、
前記脱出動作は、前記進行方向の反対方向に走行することを含む、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の無人車両の制御システム。
【請求項5】
前記脱出動作は、前進と後進とを繰り返すことを含む、
請求項1又は請求項4に記載の無人車両の制御システム。
【請求項6】
前記脱出動作は、前記無人車両を発進させる駆動力が発生している状態で、前記無人車両の操舵輪の操舵角を変化させることを含む、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の無人車両の制御システム。
【請求項7】
前記脱出動作を規定する脱出条件を記憶する脱出条件記憶部を備え、
前記走行制御部は、前記脱出条件に基づいて、前記脱出指令を出力する、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の無人車両の制御システム。
【請求項8】
前記無人車両の周囲の路面状況の検出データを取得するセンサデータ取得部を備え、
前記走行制御部は、前記路面状況の検出データに基づいて、前記脱出指令を出力する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の無人車両の制御システム。
【請求項9】
前記管理エリアの設定を開始前の前記無人車両の周辺状況に基づいて、前記管理エリアの設定の開始が可能か否かを判定する周辺状況判定部を備え、
前記管理エリア設定部は、前記周辺状況判定部の判定結果に基づいて、前記管理エリアを設定する、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の無人車両の制御システム。
【請求項10】
前記周辺状況は、前記管理エリアに対する前記無人車両の周辺の移動体のコースデータ、及び前記管理エリアに対する前記無人車両の周辺の移動体の位置の少なくとも一方を含む、
請求項9に記載の無人車両の制御システム。
【請求項11】
前記管理エリアの設定の開始前において、前記管理エリアの設定が開始されることを前記無人車両の外部の対象に通知する通知部を備える、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の無人車両の制御システム。
【請求項12】
前記対象は、移動体のコースデータを生成するコースデータ生成部を含み、
前記通知部は、前記管理エリアの設定が予定された予定エリアを通知し、
前記コースデータ生成部は、前記予定エリアに基づいて、前記コースデータを生成する、
請求項11に記載の無人車両の制御システム。
【請求項13】
前記管理エリアの設定が終了したことを前記無人車両の外部の対象に通知する通知部を備える、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の無人車両の制御システム。
【請求項14】
前記対象は、移動体のコースデータを生成するコースデータ生成部を含み、
前記通知部は、前記管理エリアを通知し、
前記コースデータ生成部は、前記管理エリアに基づいて、前記コースデータを生成する、
請求項13に記載の無人車両の制御システム。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の無人車両の制御システムを備える、
無人車両。
【請求項16】
無人車両を発進させる発進指令を出力することと、
前記発進指令で前記無人車両が発進しないと判定された場合、前記無人車両が移動可能な管理エリアを設定することと、
前記無人車両が前記管理エリアの外側に移動することを制限した状態で、前記無人車両の走行装置を脱出動作させる脱出指令を出力することと、を含む、
無人車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無人車両の制御システム、無人車両、及び無人車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱山のような広域の作業現場において、無人車両が稼働する。特許文献1に開示されているように、無人車両がオイルサンド鉱山において稼働する場合がある。オイルサンド(oil sands)とは、高粘度の鉱物油分を含む砂岩をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オイルサンドは、スポンジのように軟弱である。無人車両の重量により、無人車両のタイヤの少なくとも一部がオイルサンドに埋没してしまう可能性がある。無人車両が停止状態において、無人車両のタイヤがオイルサンドに埋没すると、無人車両の発進が困難になる可能性がある。無人車両が発進できなかったり、タイヤをオイルサンドから脱出させるまでに要する時間が長くなったりすると、作業現場の生産性が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は、無人車両が稼働する作業現場の生産性の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、無人車両を発進させる発進指令を出力する走行制御部と、発進指令で無人車両が発進しないと判定された場合、無人車両が移動可能な管理エリアを設定する管理エリア設定部と、を備え、走行制御部は、無人車両が管理エリアの外側に移動することを制限した状態で、無人車両の走行装置を脱出動作させる脱出指令を出力する、無人車両の制御システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、無人車両が稼働する作業現場の生産性の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る無人車両の作業現場を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る作業現場の管理システムを示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る作業現場の管理システムを示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るコースデータを説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る無人車両を示す構成図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る無人車両の制御システムを示す機能ブロック図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る発進条件を説明するための図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る無人車両の状態を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る管理エリアを示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る走行装置の脱出動作を説明するための図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る管理エリアの設定を開始前の無人車両の周辺状況を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る通知部からの通知により他の無人車両のコースデータが変更されることを説明するための図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る通知部からの通知により他の無人車両のコースデータが生成されることを説明するための図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る無人車両の制御方法を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、実施形態に係る発進制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[作業現場]
図1は、実施形態に係る無人車両2の作業現場1を示す模式図である。作業現場1として、鉱山又は採石場が例示される。鉱山とは、鉱物を採掘する場所又は事業所をいう。採石場とは、石材を採掘する場所又は事業所をいう。作業現場1において、複数の無人車両2が稼働する。また、作業現場1において、補助車両3が稼働する。
【0011】
無人車両2とは、運転者による運転操作によらずに無人で稼働する作業車両をいう。無人車両2は、無人で作業現場1を走行して積荷を運搬する無人ダンプトラックである。無人車両2に運搬される積荷として、作業現場1において掘削された掘削物が例示される。
【0012】
補助車両3とは、作業現場1の保守、点検、又は管理のために、作業現場1を走行する有人車両をいう。有人車両とは、搭乗した運転者の運転操作に基づいて稼働する車両をいう。
【0013】
実施形態において、作業現場1は、鉱山である。鉱山として、金属を採掘する金属鉱山、石灰石を採掘する非金属鉱山、又は石炭を採掘する石炭鉱山が例示される。
【0014】
作業現場1に走行エリア4が設定される。走行エリア4とは、無人車両2が走行可能なエリアをいう。走行エリア4は、積込場5、排土場6、駐機場7、給油場8、走行路9、及び交差点10を含む。
【0015】
積込場5とは、無人車両2に積荷を積載する積込作業が実施されるエリアをいう。積込場5において、積込機11が稼働する。積込機11として、油圧ショベルが例示される。
【0016】
排土場6とは、無人車両2から積荷が排出される排出作業が実施されるエリアをいう。排土場6に、破砕機12が設けられる。
【0017】
駐機場7とは、無人車両2が駐機されるエリアをいう。
【0018】
給油場8とは、無人車両2が給油されるエリアをいう。
【0019】
走行路9とは、積込場5、排土場6、駐機場7、及び給油場8の少なくとも一つに向かう無人車両2が走行するエリアをいう。走行路9は、少なくとも積込場5と排土場6とを繋ぐように設けられる。実施形態において、走行路9は、積込場5、排土場6、駐機場7、及び給油場8のそれぞれに繋がる。
【0020】
交差点10とは、複数の走行路9が交わるエリア又は1つの走行路9が複数の走行路9に分岐するエリアをいう。
【0021】
[管理システム]
図2は、実施形態に係る作業現場1の管理システム20を示す模式図である。
図3は、実施形態に係る作業現場1の管理システム20を示す機能ブロック図である。
【0022】
管理システム20は、管理装置21と、入力装置22と、通信システム24とを備える。管理装置21及び入力装置22のそれぞれは、作業現場1の管制施設13に設置される。管制施設13に管理者が存在する。
【0023】
無人車両2は、制御装置30を有する。補助車両3は、制御装置40を有する。管理装置21と無人車両2の制御装置30とは、通信システム24を介して無線通信する。管理装置21と補助車両3の制御装置40とは、通信システム24を介して無線通信する。管理装置21に無線通信機24Aが接続される。制御装置30に無線通信機24Bが接続される。制御装置40に無線通信機24Cが接続される。通信システム24は、無線通信機24A、無線通信機24B、及び無線通信機24Cを含む。
【0024】
入力装置22は、管制施設13の管理者に操作される。入力装置22は、管理者に操作されることにより、入力データを生成する。入力装置22として、タッチパネル、コンピュータ用キーボード、マウス、又は操作ボタンが例示される。
【0025】
管理装置21は、コンピュータシステムを含む。管理装置21は、プロセッサ21Aと、メインメモリ21Bと、ストレージ21Cと、インタフェース21Dとを有する。プロセッサ21Aとして、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)が例示される。メインメモリ21Bとして、不揮発性メモリ又は揮発性メモリが例示される。不揮発性メモリとして、ROM(Read Only Memory)が例示される。揮発性メモリとして、RAM(Random Access Memory)が例示される。ストレージ21Cとして、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)又はソリッドステートドライブ(SSD:Solid State Drive)が例示される。インタフェース21Dとして、入出力回路又は通信回路が例示される。
【0026】
コンピュータプログラム21Eがメインメモリ21Bに展開される。プロセッサ21Aは、コンピュータプログラム21Eに従って処理を実行する。インタフェース21Dは、入力装置22と接続される。
【0027】
管理装置21は、コースデータ生成部211を有する。
【0028】
コースデータ生成部211は、無人車両2の走行条件を示すコースデータを生成する。コースデータ生成部211は、複数の無人車両2のそれぞれについてコースデータを生成する。管制施設13の管理者は、入力装置22を操作して、無人車両2の走行条件を管理装置21に入力する。コースデータ生成部211は、入力装置22により生成された入力データに基づいて、コースデータを生成する。コースデータ生成部211は、通信システム24を介して無人車両2にコースデータを送信する。
【0029】
無人車両2は、管理装置21から送信されたコースデータに基づいて、作業現場1において稼働する。
【0030】
図4は、実施形態に係るコースデータを説明するための模式図である。コースデータは、無人車両2の走行条件を規定する。コースデータは、コース点14、走行コース15、無人車両2の目標位置、無人車両2の目標走行速度、無人車両2の目標方位、及びコース点14における地形を含む。
【0031】
コース点14は、走行エリア4に複数設定される。コース点14は、無人車両2の目標位置を規定する。複数のコース点14のそれぞれに、無人車両2の目標走行速度及び無人車両2の目標方位が設定される。複数のコース点14は、間隔をあけて設定される。コース点14の間隔は、例えば1[m]以上5[m]以下に設定される。コース点14の間隔は、均一でもよいし、不均一でもよい。
【0032】
走行コース15とは、無人車両2の目標走行経路を示す仮想線をいう。走行コース15は、複数のコース点14を通過する軌跡によって規定される。無人車両2は、走行コース15に従って、走行エリア4を走行する。
【0033】
無人車両2の目標位置とは、コース点14を通過するときの無人車両2の目標位置をいう。無人車両2の目標位置は、無人車両2のローカル座標系において規定されてもよいし、グローバル座標系において規定されてもよい。
【0034】
無人車両2の目標走行速度とは、コース点14を通過するときの無人車両2の目標走行速度をいう。
【0035】
無人車両2の目標方位とは、コース点14を通過するときの無人車両2の目標方位をいう。
【0036】
コース点14における地形とは、コース点14における走行エリア4の表面の傾斜角度をいう。
【0037】
[補助車両]
図2及び
図3に示すように、補助車両3は、制御装置40と、無線通信機24Cと、位置センサ41と、出力装置42とを備える。
【0038】
制御装置40は、コンピュータシステムを含む。制御装置40は、プロセッサ40Aと、メインメモリ40Bと、ストレージ40Cと、インタフェース40Dとを有する。コンピュータプログラム40Eがメインメモリ40Bに展開される。インタフェース40Dは、位置センサ41及び出力装置42のそれぞれと接続される。
【0039】
位置センサ41は、補助車両3の位置を検出する。補助車両3の位置は、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)を利用して検出される。全地球航法衛星システムは、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)を含む。全地球航法衛星システムは、緯度、経度、及び高度の座標データで規定されるグローバル座標系の位置を検出する。グローバル座標系とは、地球に固定された座標系をいう。位置センサ41は、GNSS受信機を含み、補助車両3のグローバル座標系の位置を検出する。
【0040】
出力装置42は、補助車両3の運転室に配置される。出力装置42は、出力データを出力する。出力装置42として、表示装置又は音声出力装置が例示される。表示装置として、液晶ディスプレイ(liquid crystal display)又は有機ELディスプレイ(organic electroluminescent display)のようなフラットパネルディスプレイが例示される。
【0041】
[無人車両]
図5は、実施形態に係る無人車両2を示す構成図である。
図2、
図3、及び
図5に示すように、無人車両2は、制御装置30と、無線通信機24Bと、車両本体50と、走行装置51と、ダンプボディ52と、油圧装置60と、位置センサ71と、方位センサ72と、傾斜センサ73と、速度センサ74と、ステアリングセンサ75とを備える。
【0042】
図2に示すように、無人車両2のローカル座標系は、ピッチ軸PAと、ロール軸RAと、ヨー軸YAとにより規定される。ピッチ軸PAは、無人車両2の左右方向(車幅方向)に延伸する。ロール軸RAは、無人車両2の前後方向に延伸する。ヨー軸YAは、無人車両2の上下方向に延伸する。ピッチ軸PAとロール軸RAとは直交する。ロール軸RAとヨー軸YAとは直交する。ヨー軸YAとピッチ軸PAとは直交する。
【0043】
制御装置30は、コンピュータシステムを含む。
図3に示すように、制御装置30は、プロセッサ30Aと、メインメモリ30Bと、ストレージ30Cと、インタフェース30Dとを有する。コンピュータプログラム30Eがメインメモリ30Bに展開される。
【0044】
車両本体50は、車体フレームを含む。車両本体50は、走行装置51に支持される。車両本体50は、ダンプボディ52を支持する。
【0045】
走行装置51は、無人車両2を走行させる。走行装置51は、無人車両2を前進又は後進させる。走行装置51の少なくとも一部は、車両本体50よりも下方に配置される。走行装置51は、車輪53と、タイヤ54と、駆動装置55と、ブレーキ装置56と、トランスミッション装置57と、ステアリング装置58とを有する。
【0046】
タイヤ54は、車輪53に装着される。車輪53は、前輪53Fと、後輪53Rとを含む。タイヤ54は、前輪53Fに装着される前タイヤ54Fと、後輪53Rに装着される後タイヤ54Rとを含む。
【0047】
駆動装置55は、無人車両2を発進又は加速させるための駆動力を発生する。駆動装置55として、内燃機関又は電動機が例示される。内燃機関として、ディーゼルエンジンが例示される。
【0048】
ブレーキ装置56は、無人車両2を停止又は減速させるための制動力を発生する。ブレーキ装置56として、ディスクブレーキ又はドラムブレーキが例示される。
【0049】
トランスミッション装置57は、駆動装置55が発生した駆動力を車輪53に伝達する。トランスミッション装置57は、前進クラッチと後進クラッチとを有する。前進クラッチと後進クラッチとの連結状態が切り換えられることによって、無人車両2の前進と後進とが切り換えられる。車輪53は、駆動装置55が発生する駆動力により回転する。タイヤ54が作業現場の路面と接触した状態で、車輪53が回転することにより、無人車両2は、作業現場1を走行する。
【0050】
ステアリング装置58は、無人車両2の走行方向を調整するための操舵力を発生する。前進する無人車両2の走行方向とは、車両本体50の前部の方位をいう。後進する無人車両2の走行方向とは、車両本体50の後部の方位をいう。ステアリング装置58により、車輪53が操舵される。車輪53が操舵されることにより、無人車両2の走行方向が調整される。
【0051】
車輪53は、駆動装置55からの駆動力が伝達される駆動輪と、ステアリング装置58により操舵される操舵輪とを含む。実施形態において、駆動輪は、後輪53Rである。操舵輪は、前輪53Fである。
【0052】
ダンプボディ52は、積荷が積載される部材である。ダンプボディ52の少なくとも一部は、車両本体50よりも上方に配置される。ダンプボディ52は、ダンプ動作及び下げ動作する。ダンプ動作及び下げ動作により、ダンプボディ52は、ダンプ姿勢及び積載姿勢に調整される。ダンプ姿勢とは、ダンプボディ52が上昇している姿勢をいう。積載姿勢とは、ダンプボディ52が下降している姿勢をいう。
【0053】
油圧装置60は、ステアリングシリンダ61と、ホイストシリンダ62と、油圧ポンプ63と、バルブ装置64とを有する。
【0054】
ステアリングシリンダ61は、ステアリング装置58において前輪53Fを操舵する操舵力を発生する。ステアリングシリンダ61は、油圧シリンダである。ステアリング装置58は、ステアリングシリンダ61を含む。前輪53Fは、ステアリング装置58のリンク機構を介してステアリングシリンダ61に連結される。ステアリングシリンダ61が伸縮することにより、前輪53Fが操舵される。
【0055】
ホイストシリンダ62は、ダンプボディ52を動作させる昇降力を発生する。ホイストシリンダ62は、油圧シリンダである。ダンプボディ52は、ホイストシリンダ62に連結される。ホイストシリンダ62が伸縮することにより、ダンプボディ52がダンプ動作及び下げ動作する。
【0056】
油圧ポンプ63は、駆動装置55が発生した駆動力により作動する。駆動装置55が発生した駆動力の一部は、動力伝達機構59を介して油圧ポンプ63に伝達される。油圧ポンプ63は、ステアリングシリンダ61及びホイストシリンダ62のそれぞれを伸縮させるための作動油を吐出する。
【0057】
バルブ装置64は、ステアリングシリンダ61及びホイストシリンダ62のそれぞれに供給される作動油の流通状態を調整する。バルブ装置64は、制御装置30からの制御指令に基づいて作動する。バルブ装置64は、ステアリングシリンダ61に供給される作動油の流量及び方向を調整可能な第1流量調整弁と、ホイストシリンダ62に供給される作動油の流量及び方向を調整可能な第2流量調整弁とを含む。ステアリングシリンダ61は、油圧ポンプ63からバルブ装置64を介して供給された作動油により伸縮する。ホイストシリンダ62は、油圧ポンプ63からバルブ装置64を介して供給された作動油により伸縮する。
【0058】
位置センサ71は、無人車両2の位置を検出する。無人車両2の位置は、全地球航法衛星システム(GNSS)を利用して検出される。位置センサ71は、GNSS受信機を含み、無人車両2のグローバル座標系の位置を検出する。
【0059】
方位センサ72は、無人車両2の方位を検出する。無人車両2の方位は、無人車両2のヨー角Yθを含む。ヨー角Yθとは、ヨー軸YAを中心とする無人車両2の傾斜角度をいう。方位センサ72として、ジャイロセンサが例示される。
【0060】
傾斜センサ73は、無人車両2の姿勢を検出する。無人車両2の姿勢は、車両本体50の傾斜角度を含む。車両本体50の傾斜角度は、車両本体50のピッチ角Pθ及びロール角Rθを含む。ピッチ角Pθとは、ピッチ軸PAを中心とする車両本体50の傾斜角度をいう。ロール角Rθとは、ロール軸RAを中心とする車両本体50の傾斜角度をいう。傾斜センサ73として、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)が例示される。
【0061】
タイヤ54の下端部54Bが水平面と平行な地面に接触している状態において、ピッチ軸PA及びロール軸RAのそれぞれは、水平面と平行である。タイヤ54の下端部54Bが水平面と平行な地面に接触している状態において、ピッチ角Pθ及びロール角Rθのそれぞれは、0[°]である。タイヤ54の下端部54Bとは、ヨー軸YAと平行な上下方向において最も下方に配置されるタイヤ54の外周面の一部分をいう。
【0062】
速度センサ74は、無人車両2の走行速度を検出する。速度センサ74として、車輪53の回転を検出するパルスセンサが例示される。
【0063】
ステアリングセンサ75は、ステアリング装置58の操舵角を検出する。ステアリングセンサ75として、ポテンショメータが例示される。
【0064】
制御装置30は、車両本体50に配置される。制御装置30は、走行装置51を制御する制御指令を出力する。制御装置30から出力される制御指令は、駆動装置55を作動させるための駆動指令、ブレーキ装置56を作動させるための制動指令、トランスミッション装置57を作動させるための前後進指令、及びステアリング装置58を作動させるための操舵指令を含む。駆動装置55は、制御装置30から出力された駆動指令に基づいて、無人車両2を発進又は加速させるための駆動力を発生する。ブレーキ装置56は、制御装置30から出力された制動指令に基づいて、無人車両2を停止又は減速させるための制動力を発生する。トランスミッション装置57は、制御装置30から出力された前後進指令に基づいて、無人車両2の前進と後進とを切り換える。ステアリング装置58は、制御装置30から出力された操舵指令に基づいて、無人車両2を直進又は旋回させるための操舵力を発生する。
【0065】
[制御システム]
図6は、実施形態に係る無人車両2の制御システム100を示す機能ブロック図である。制御システム100は、制御装置30と、走行装置51と、油圧装置60と、位置センサ71と、方位センサ72と、傾斜センサ73と、速度センサ74と、ステアリングセンサ75とを有する。
【0066】
インタフェース30Dは、走行装置51、油圧装置60、位置センサ71、方位センサ72、傾斜センサ73、速度センサ74、及びステアリングセンサ75のそれぞれと接続される。
【0067】
制御装置30は、コースデータ取得部101と、コースデータ設定部102と、センサデータ取得部103と、走行制御部104と、発進条件生成部105と、発進判定部106と、管理エリア設定部107と、周辺状況判定部108と、通知部109と、発進条件記憶部110と、脱出条件記憶部111とを有する。
【0068】
プロセッサ30Aは、コースデータ取得部101、コースデータ設定部102、センサデータ取得部103、走行制御部104、発進条件生成部105、発進判定部106、管理エリア設定部107、周辺状況判定部108、及び通知部109として機能する。ストレージ30Cは、発進条件記憶部110及び脱出条件記憶部111として機能する。
【0069】
コースデータ取得部101は、コースデータ生成部211から送信されたコースデータを、インタフェース30Dを介して取得する。コースデータ生成部211がコースデータを更新したとき、コースデータ取得部101は、更新されたコースデータを取得する。コースデータ取得部101は、コースデータが更新される度にコースデータを取得する。
【0070】
コースデータ設定部102は、コースデータに基づいて実施されるコース走行制御の有効化と無効化とを切り換える。コース走行制御とは、コースデータに基づいて実施される走行装置51の走行制御をいう。走行装置51のコース走行制御は、無人車両2を走行コース15に追従させるコース追従制御を含む。コース走行制御が有効化された場合、無人車両2は、コースデータに従って走行する。コース走行制御が無効化された場合、無人車両2は、コースデータに従わずに走行する。コースデータは、コースデータ取得部101により取得される。コースデータ取得部101に取得されたコースデータは、常時有効である。コースデータに基づいて実施されるコース走行制御の有効化と無効化とが切り換えられる。
【0071】
センサデータ取得部103は、位置センサ71の検出データ、方位センサ72の検出データ、傾斜センサ73の検出データ、速度センサ74の検出データ、及びステアリングセンサ75の検出データを取得する。
【0072】
走行制御部104は、無人車両2のコース走行制御を実施する。走行制御部104は、コース走行制御が有効化された場合、コースデータに基づいて、走行装置51のコース走行制御を実施する。
【0073】
走行制御部104は、コース走行制御が有効化された状態で、無人車両2が走行コース15に従って走行するように、走行装置51のコース走行制御を実施する。実施形態において、走行制御部104は、無人車両2の車幅方向の中心と走行コース15とが一致した状態で無人車両2が走行するように、走行装置51のコース走行制御を実施する。
【0074】
走行制御部104は、コース走行制御が有効化された状態で、位置センサ71の検出データに基づいて、コース点14を通過するときの無人車両2の実際の位置が目標位置になるように、走行装置51のコース走行制御を実施する。走行制御部104は、位置センサ71の検出データに基づいて、無人車両2が走行コース15に従って走行するように、走行装置51のコース走行制御を実施する。
【0075】
走行制御部104は、コース走行制御が有効化された状態で、方位センサ72の検出データに基づいて、コース点14を通過するときの無人車両2の実際の方位が目標方位になるように、走行装置51のコース走行制御を実施する。走行制御部104は、無人車両2の実際の位置とコース点14により規定される無人車両2の目標位置との偏差が無くなるように、且つ、コース点14を通過するときの無人車両2の実際の方位が目標方位になるように、走行装置51のコース走行制御を実施する。
【0076】
走行制御部104は、コース走行制御が有効化された状態及びコース走行制御が無効化された状態のそれぞれで、無人車両2がコース点14を通過するときの傾斜センサ73の検出データとコース点14における地形とに基づいて、コース点14における無人車両2の姿勢を算出する。
【0077】
走行制御部104は、コース走行制御が有効化された状態で、速度センサ74の検出データに基づいて、コース点14を通過するときの無人車両2の実際の走行速度が目標走行速度になるように、走行装置51のコース走行制御を実施する。
【0078】
走行制御部104は、コース走行制御が有効化された状態で、ステアリングセンサ75の検出データに基づいて、コース点14を通過するときの無人車両2の実際の操舵角が目標操舵角になるように、走行装置51のコース走行制御を実施する。
【0079】
また、走行制御部104は、無人車両2の発進制御を実施する。発進制御とは、停止状態の無人車両2を発進させる制御をいう。実施形態において、発進制御とは、予め定められている発進条件に基づいて実施される走行装置51の走行制御をいう。
【0080】
発進制御において、走行制御部104は、無人車両2を所定の進行方向に発進させる発進指令Caを出力する。実施形態において、所定の進行方向は、無人車両2の前方である。すなわち、発進指令Caは、無人車両2を前進させる。
【0081】
発進条件生成部105は、無人車両2の発進制御に使用される発進条件を生成する。発進条件は、発進制御に係る制御プログラムを含む。発進条件生成部105で生成された発進条件は、発進条件記憶部110に記憶される。走行制御部104は、発進条件記憶部110に記憶されている発進条件に基づいて、無人車両2の発進制御を実施する。
【0082】
図7は、実施形態に係る発進条件を説明するための図である。無人車両2を発進させる場合、走行制御部104から発進指令Caが出力される。
図7において、縦軸は、発進指令Caの指令値を示し、横軸は、発進指令Caの出力が開始された時点taからの経過時間を示す。時点taは、発進指令Caによる発進制御の開始時点である。発進条件は、無人車両2を発進させる発進指令Caと、発進制御の時点taからの経過時間との関係を示す。発進指令Caは、時点taから時点tbまでの規定時間Tだけ出力される。時点tbは、発進指令Caによる発進制御の終了時点である。
【0083】
発進指令Caは、無人車両2の駆動装置55に駆動力Daを発生させる駆動指令を含む。発進指令Caの指令値が大きいほど、駆動装置55が発生する駆動力Daは大きくなり、発進指令Caの指令値が小さいほど、駆動装置55が発生する駆動力Daは小さくなる。指令値が100[%]である場合、駆動装置55は、駆動装置55が発生可能な駆動力の最大値を出力する。すなわち、指令値が100[%]である場合、駆動装置55は、フルアクセル状態で作動する。
【0084】
図7に示す例において、発進条件は、発進指令Caの指令値が100[%]に到達しないように設定される。時点taの発進指令Caの指令値Vaは、50[%]よりも小さい。なお、時点taの発進指令Caの指令値Vaは、50[%]でもよいし、50[%]よりも大きくてもよい。時点tbの発進指令Caの指令値Vbは、指令値Vaよりも大きく100[%]よりも小さい。発進指令Caの指令値は、時点taから時点tbまで単調増加するように設定される。発進指令Caの出力が開始されてから規定時間Tが経過した時点tbにおいて、発進指令Caの出力が停止される。
【0085】
停止状態の無人車両2が時点taにおいて発進するように、発進指令Caの指令値Vaが算出される。発進条件生成部105は、コースデータにより規定される無人車両2の目標走行速度に基づいて、無人車両2の目標加速度を算出する。発進条件生成部105は、無人車両2及び走行エリア4のそれぞれをモデル化した運動方程式に基づいて、目標加速度を発生させる駆動装置55の目標駆動力を算出する。目標駆動力と指令値との関係を示す相関データ(テーブル)が予め定められている。発進条件生成部105は、相関データに基づいて、時点taにおいて目標駆動力を発生させる指令値Vaを決定する。
【0086】
発進条件に基づいて発進制御する場合、走行制御部104は、時点taにおいて発進指令Caの出力を開始する。発進指令Caが出力されることにより、無人車両2は、発進することができる。駆動装置55は、発進指令Caに基づいて、駆動力Daを発生する。
【0087】
なお、時点taにおける指令値Vaは、上述の運動方程式に基づいて算出される理論値である。例えば無人車両2の実際の状態又は走行エリア4の実際の状態により、発進指令Caの出力が開始されても、時点taにおいて無人車両2が発進できない可能性がある。実施形態においては、発進指令Caの指令値が時点taから時点tbまで単調増加するので、無人車両2は、規定時間Tにおいて発進することができる。
【0088】
なお、発進指令Caの指令値は、100[%]に到達してもよい。例えば、時点tbの発進指令Caの指令値Vbが100[%]でもよい。時点taの発進指令Caの指令値Vaが100[%]でもよい。
【0089】
発進判定部106は、発進指令Caで無人車両2が発進したか否かを判定する。発進判定部106は、規定時間T及び速度センサ74の検出データに基づいて、無人車両2が発進したか否かを判定する。発進判定部106は、速度センサ74の検出データに基づいて、無人車両2が加速を開始したか否かを判定することができる。発進判定部106は、規定時間Tにおいて無人車両2が加速を開始したと判定した場合、無人車両2が発進したと判定する。発進判定部106は、規定時間Tにおいて無人車両2が加速を開始しないと判定した場合、無人車両2が発進しないと判定する。
【0090】
なお、発進判定部106は、無人車両2の走行速度、無人車両2の加速度、及び無人車両2の移動距離に基づいて、無人車両2が発進したか否かを判定してもよい。発進判定部106は、パルスセンサを含む速度センサ74の検出データ、GNSS受信機を含む位置センサ71の検出データ、及び慣性計測装置を含む傾斜センサ73の検出データの少なくとも一つの検出データから、無人車両2の走行速度を推定してもよい。発進判定部106は、タイヤ54のスリップ状況を考慮して、無人車両2が発進したか否かを判定してもよい。
【0091】
図8は、実施形態に係る無人車両2の状態を示す図である。無人車両2の状態は、通常状態と異常状態とを含む。
【0092】
図8(A)に示すように、無人車両2の通常状態は、タイヤ54の下端部54Bが路面81に接触している状態を含む。すなわち、無人車両2が通常状態とは、タイヤ54が路面81の下に埋没していない状態又はタイヤ54が路面81に存在する溝に入り込んでいない状態をいう。路面81が強固である場合、無人車両2は、通常状態になる可能性が高い。
【0093】
図8(B)に示すように、無人車両2の異常状態は、タイヤ54の少なくとも一部が路面81の下に埋没している状態又は路面81に存在する溝に入り込んでいる状態を含む。路面81が軟弱である場合、無人車両2は、異常状態になる可能性が高い。また、ダンプボディ52に積荷82が積載され、無人車両2の重量が大きい場合、無人車両2は、異常状態になる可能性が高い。軟弱な路面81として、オイルサンドの路面又は雨水によりぬかるんだ路面が例示される。
【0094】
図7に示す発進条件は、無人車両2が通常状態のときに使用される発進条件である。すなわち、発進指令Caは、通常状態の無人車両2を発進させる場合に使用される。無人車両2が異常状態である場合、発進指令Caで無人車両2が発進しない可能性がある。
【0095】
また、走行制御部104は、発進指令Caで無人車両2が発進しない場合、無人車両2の脱出制御を実施する。脱出制御とは、発進動作とは異なる脱出動作を走行装置51に実施させて無人車両2を発進させる制御をいう。実施形態において、脱出制御とは、予め定められている脱出条件に基づいて実施される走行装置51の走行制御をいう。
【0096】
管理エリア設定部107は、発進指令Caで無人車両2が発進しないと発進判定部106により判定された場合、無人車両2が移動可能な管理エリア83を設定する。
【0097】
図9は、実施形態に係る管理エリア83を示す図である。発進指令Caで無人車両2が発進しないと判定された場合、管理エリア設定部107は、無人車両2が移動可能な管理エリア83を設定する。管理エリア83は、無人車両2を含むように設定される。管理エリア83のエッジは、無人車両2の周囲に配置される。
【0098】
図9に示す例において、管理エリア83の外形は、四角形である。なお、管理エリア83の外形は、五角形又は六角形でもよいし、七角形以上の多角形でもよい。管理エリア83の外形は、円形でもよいし、楕円形でもよい。管理エリア83は、任意の曲線で規定されてもよい。
【0099】
管理エリア設定部107は、発進判定部106により発進しないと判定された時点の無人車両2の周囲に、管理エリア83のエッジが配置されるように、管理エリア83を設定する。
【0100】
管理エリア83が設定された場合、無人車両2が管理エリア83の外側に移動することが制限される。
【0101】
走行制御部104は、管理エリア83が設定された後、無人車両2の脱出制御を実施する。走行制御部104は、無人車両2が管理エリア83の外側に移動することを制限した状態で、無人車両2の走行装置51を脱出動作させる脱出指令Ceを出力する。脱出指令Ceによる走行装置51の脱出動作と、発進指令Caによる走行装置51の発進動作とは、異なる。
【0102】
図10は、実施形態に係る走行装置51の脱出動作を説明するための図である。脱出動作とは、タイヤ54の少なくとも一部が路面81の下に埋没又は路面81に存在する溝に入り込んでいる埋没状態において、タイヤ54を埋没状態から脱出させる動作をいう。タイヤ54の少なくとも一部が路面81の下に埋没している場合、走行制御部104は、タイヤ54を埋没状態から脱出させる脱出動作を走行装置51に実施させる。走行装置51は、走行制御部104から出力された脱出指令Ceに基づいて、脱出動作を実施する。走行制御部104は、コース走行制御が無効化された状態で、脱出指令Ceを出力する。
【0103】
脱出指令Ceは、発進指令Caで発進できなかった無人車両2を発進させる制御指令を含む。脱出指令Ceは、駆動装置55に無人車両2を発進させる駆動力Deを発生させる駆動指令を含む。脱出指令Ceにより出力される駆動力Deは、発進指令Caにより出力される駆動力Daと等しくてもよいし、駆動力Daよりも大きくてもよい。実施形態において、駆動力Deは、無人車両2の駆動装置55が発生可能な駆動力の最大値である。すなわち、脱出指令Ceの指令値は100[%]である。
【0104】
発進指令Caで無人車両2が発進できなかった場合、走行制御部104は、管理エリア83が設定された状態で、無人車両2を発進させるための脱出指令Ceを走行装置51に出力する。走行制御部104は、無人車両2が管理エリア83の外側に出ないように、走行装置51を脱出動作させる。コース走行制御が無効化されているので、走行制御部104は、管理エリア83の内側において無人車両2を自由に移動させることができる。管理エリア83のエッジの位置がグローバル座標系において規定される場合、走行制御部104は、位置センサ71の検出データに基づいて、無人車両2が管理エリア83の外側に出ないように、脱出指令Ceを出力する。
【0105】
脱出動作を規定する脱出条件が脱出条件記憶部111に記憶されている。脱出条件は、タイヤ54を埋没状態から脱出させるために走行装置51に実施させる脱出動作の内容及び順序を示す。脱出条件は、タイヤ54を埋没状態から脱出させることができる経験則に基づいて規定される。走行制御部104は、脱出条件記憶部111に記憶されている脱出条件に基づいて、脱出指令Ceを出力する。走行装置51は、脱出条件に従って脱出動作を実施する。
【0106】
上述のように、発進指令Caは、無人車両2を所定の進行方向に発進させる制御指令である。走行装置51の脱出動作は、無人車両2の進行方向の反対方向に走行する動作を含む。発進指令Caが無人車両2を前進させる制御指令である場合、脱出指令Ceは、無人車両2を後進させる制御指令である。走行装置51の脱出動作は、無人車両2を後進させる動作を含む。発進指令Caで無人車両2が前進できなかった場合、脱出指令Ceに基づいて無人車両2が後進することにより、タイヤ54は埋没状態から脱出することができる。なお、発進指令Caが無人車両2を後進させる制御指令である場合、脱出指令Ceは、無人車両2を前進させる制御指令である。
【0107】
なお、走行装置51の脱出動作は、前進と後進とを繰り返す動作でもよい。発進指令Caに基づいて無人車両2が前進できなかった場合、脱出指令Ceに基づいて無人車両2に前進と後進とを繰り返させることにより、タイヤ54は埋没状態から脱出することができる。
【0108】
走行装置51の脱出動作は、無人車両2を発進させる駆動力Deが発生している状態で、前輪53Fの操舵角を変化させる動作でもよい。前輪53Fは、規定の操舵範囲で操舵することができる。走行制御部104は、操舵範囲において前輪53Fが往復するように、ステアリング装置58に脱出指令Ceを出力してもよい。走行制御部104は、前輪53Fが操舵範囲の一端部と他端部との間を往復するように脱出指令Ceを出力してもよいし、前輪53Fが操舵範囲の一部の範囲において往復するように脱出指令Ceを出力してもよい。なお、前輪53Fは、操舵範囲を往復しなくてもよい。走行制御部104は、前輪53Fが操舵範囲の一端部から他端部まで移動するように脱出指令Ceを出力してもよい。前輪53Fの操舵速度は、一定でもよいしランダムでもよい。前輪53Fの操舵速度は、例えばステアリングシリンダ61が発生可能なシリンダ速度の最大値に対応する速度でもよいし、シリンダ速度の最大値の1[%]以上50[%]以下の値に対応する速度でもよい。
【0109】
タイヤ54が埋没状態でも、走行装置51が発進動作とは異なる脱出動作を実施することにより、タイヤ54は埋没状態から脱出することができる。したがって、無人車両2は発進することができる。
【0110】
実施形態において、コースデータ設定部102は、発進指令Caで無人車両2が発進しないと判定され、管理エリア83が設定された後、コース走行制御を無効化し、脱出制御を有効化する。走行制御部104は、コース走行制御が無効化され、脱出制御が有効化された後、脱出条件に基づいて、走行装置51の脱出制御を実施する。走行制御部104は、コース走行制御が無効化された場合、コースデータによらずに、管理エリア83の内側において無人車両2が移動するように、走行装置51の脱出制御を実施する。
【0111】
コースデータ設定部102は、脱出指令Ceで無人車両2が発進したと判定された後、脱出制御を無効化し、コース走行制御を有効化する。走行制御部104は、脱出制御が無効化され、コース走行制御が有効化された後、コースデータに基づいて、走行装置51のコース走行制御を実施する。管理エリア設定部107は、発進した後の無人車両2の実際の位置と走行コース15との偏差が予め定められている許容値以下になった後、管理エリア83を解除する。
【0112】
実施形態において、無人車両2の中心から管理エリア83のエッジまでの距離は、脱出指令Ceで無人車両2が発進したか否かを判定できるのに十分な距離、且つ、脱出制御により発進した後の無人車両2の実際の位置と走行コース15との偏差が許容値以下になるのに十分な距離に定められる。一例として、無人車両2の中心から管理エリア83のエッジまでの距離は、5[m]以上30[m]以下である。実施形態において、脱出指令Ceで無人車両2が発進したか否かを判定するための距離として15[m]が定められ、発進した後の無人車両2の実際の位置と走行コース15との偏差が許容値以下になるための距離として15[m]が定められる。すなわち、無人車両2の中心から管理エリア83のエッジまでの距離は、30[m]である。
【0113】
周辺状況判定部108は、管理エリア83の設定を開始前の無人車両2の周辺状況に基づいて、管理エリア83の設定の開始が可能か否かを判定する。管理エリア設定部107は、周辺状況判定部108の判定結果に基づいて、管理エリア83を設定する。
【0114】
周辺状況として、管理エリア83に対する無人車両2の周辺の移動体の位置が例示される。移動体として、他の無人車両2A又は補助車両3が例示される。また、周辺状況として、管理エリア83に対する無人車両2の周辺の非移動体の位置が例示される。非移動体として、作業現場に存在する電灯、石、土手、給油設備、及び標識が例示される。また、周辺状況として、管理エリア83に対する無人車両2の周辺の他の無人車両2Aのコースデータが例示される。
【0115】
図11は、実施形態に係る管理エリア83の設定を開始前の無人車両2の周辺状況を示す図である。
図11は、周辺状況が他の無人車両2Aのコースデータである例を示す。
図11に示すように、管理エリア83の設定を開始前において、他の無人車両2Aの走行コース15が管理エリア83の予定エリア83Pに設けられる可能性がある。予定エリア83Pとは、管理エリア83の設定が予定されたエリアをいう。走行コース15が予定エリア83Pに設けられている状態で、管理エリア83の設定が開始されると、管理エリア83を移動する無人車両2により他の無人車両2Aの進行が妨げられる可能性がある。その結果、作業現場の生産性が低下する可能性がある。
【0116】
周辺状況判定部108は、コースデータ生成部211から他の無人車両2Aのコースデータを取得する。他の無人車両2Aの走行コース15が予定エリア83Pに設けられていない場合、周辺状況判定部108は、管理エリア83の設定の開始が可能であると判定する。他の無人車両2Aの走行コース15が予定エリア83Pに設けられている場合、周辺状況判定部108は、管理エリア83の設定の開始が可能ではないと判定する。周辺状況判定部108により管理エリア83の設定の開始が可能であると判定された場合、管理エリア設定部107は、管理エリア83を設定する。周辺状況判定部108により管理エリア83の設定の開始が可能ではないと判定された場合、管理エリア設定部107は、管理エリア83を設定しない。これにより、作業現場の生産性の低下が抑制される。
【0117】
また、管理エリア83の設定を開始前において、他の無人車両2A又は補助車両3が予定エリア83Pに接近している状態で、管理エリア83の設定が開始されると、管理エリア83を移動する無人車両2により他の無人車両2A又は補助車両3の進行が妨げられる可能性がある。その結果、作業現場の生産性が低下する可能性がある。
【0118】
他の無人車両2Aの位置は、他の無人車両2Aが有する位置センサ71により検出される。補助車両3の位置は、位置センサ41により検出される。周辺状況判定部108は、他の無人車両2Aの位置センサ71の検出データ及び補助車両3の位置センサ41の検出データに基づいて、他の無人車両2A又は補助車両3が予定エリア83Pに接近しているか否かを判定することができる。他の無人車両2A及び補助車両3が予定エリア83Pに接近していない場合、周辺状況判定部108は、管理エリア83の設定の開始が可能であると判定する。他の無人車両2A又は補助車両3が予定エリア83Pに接近している場合、周辺状況判定部108は、管理エリア83の設定の開始が可能ではないと判定する。周辺状況判定部108により管理エリア83の設定の開始が可能であると判定された場合、管理エリア設定部107は、管理エリア83を設定する。周辺状況判定部108により管理エリア83の設定の開始が可能ではないと判定された場合、管理エリア設定部107は、管理エリア83を設定しない。これにより、作業現場の生産性の低下が抑制される。
【0119】
通知部109は、発進指令Caで無人車両2が発進しないと発進判定部106により判定された場合、管理エリア83の設定が開始されることを無人車両2の外部の対象に通知する。
【0120】
無人車両2の外部の対象として、管理装置21のコースデータ生成部211が例示される。また、無人車両2の外部の対象として、他の無人車両2A又は補助車両3が例示される。
【0121】
図12は、実施形態に係る通知部109からの通知により他の無人車両2Aのコースデータが変更されることを説明するための図である。
【0122】
通知部109は、発進指令Caで無人車両2が発進しないと判定された場合、管理エリア83の設定の開始前に、管理エリア83の設定が開始されることをコースデータ生成部211に通知する。また、通知部109は、予定エリア83Pをコースデータ生成部211に通知する。
【0123】
コースデータ生成部211は、通知部109から通知された予定エリア83Pに基づいて、他の無人車両2Aのコースデータを生成する。実施形態において、コースデータ生成部211は、通知部109から通知された予定エリア83Pの位置に基づいて、他の無人車両2Aの走行コース15が予定エリア83Pに設けられているか否かを判定する。他の無人車両2Aの走行コース15が予定エリア83Pに設けられていると判定した場合、コースデータ生成部211は、他の無人車両2Aの走行コース15が予定エリア83Pから離隔するように、他の無人車両2Aのコースデータを生成する。他の無人車両2Aの走行コース15は、予定エリア83Pを回避するように変更される。また、他の無人車両2Aの走行コース15は、走行コース15に従って走行する他の無人車両2Aが予定エリア83Pと重複しないように変更される。コースデータ生成部211は、変更後のコースデータを他の無人車両2Aに送信する。他の無人車両2Aは、変更後の走行コース15に従って走行する。変更後の走行コース15は、予定エリア83Pから離隔しているので、他の無人車両2Aは、管理エリア83を回避するように走行することができる。管理エリア設定部107は、他の無人車両2Aの走行コース15が予定エリア83Pから離隔するように変更後、管理エリア83を設定することができる。無人車両2により他の無人車両2Aの進行が妨げられることが予防されるので、作業現場の生産性の低下が抑制される。
【0124】
なお、通知部109は、発進指令Caで無人車両2が発進しないと発進判定部106により判定された場合、管理エリア83の設定の開始前に、管理エリア83の設定が開始されること及び予定エリア83Pを補助車両3に通知してもよい。補助車両3の制御装置40は、通知部109から通知された予定エリア83Pの位置を補助車両3の出力装置42に出力させる。補助車両3の運転者は、出力装置42に出力された予定エリア83Pの位置を確認して、予定エリア83Pを回避するように、走行エリア4を走行することができる。無人車両2により補助車両3の進行が妨げられることが予防されるので、作業現場の生産性の低下が抑制される。
【0125】
また、通知部109は、管理エリア83の設定が終了したことを無人車両2の外部の対象に通知する。
【0126】
無人車両2の外部の対象として、管理装置21のコースデータ生成部211が例示される。また、無人車両2の外部の対象として、他の無人車両2A又は補助車両3が例示される。
【0127】
図13は、実施形態に係る通知部109からの通知により他の無人車両2Aのコースデータが生成されることを説明するための図である。
【0128】
通知部109は、発進制御において管理エリア83が設定された場合、管理エリア83の設定の終了後に、管理エリア83の設定が終了したことをコースデータ生成部211に通知する。また、通知部109は、管理エリア設定部107により設定された管理エリア83をコースデータ生成部211に通知する。
【0129】
コースデータ生成部211は、通知部109から通知された管理エリア83に基づいて、他の無人車両2Aのコースデータを生成する。実施形態において、コースデータ生成部211は、通知部109から通知された管理エリア83の位置に基づいて、他の無人車両2Aの走行コース15が管理エリア83から離隔するように、他の無人車両2Aのコースデータを生成する。他の無人車両2Aの走行コース15は、管理エリア83を回避するように生成される。コースデータ生成部211は、生成されたコースデータを他の無人車両2Aに送信する。他の無人車両2Aは、走行コース15に従って走行する。他の無人車両2Aの走行コース15は、管理エリア83から離隔しているので、他の無人車両2Aは、管理エリア83を回避するように走行することができる。これにより、管理エリア83を移動する無人車両2により他の無人車両2Aの進行が妨げられることが抑制される。したがって、作業現場の生産性の低下が抑制される。
【0130】
なお、通知部109は、管理エリア83の設定の終了後に、管理エリア83の設定が終了したこと及び管理エリア83を補助車両3に通知してもよい。補助車両3の制御装置40は、通知部109から通知された管理エリア83の位置を補助車両3の出力装置42に出力させる。補助車両3の運転者は、出力装置42に出力された管理エリア83の位置を確認して、管理エリア83を回避するように、走行エリア4を走行することができる。これにより、管理エリア83を移動する無人車両2により補助車両3の進行が妨げられることが抑制される。したがって、作業現場の生産性の低下が抑制される。
【0131】
[制御方法]
図14は、実施形態に係る無人車両2の制御方法を示すフローチャートである。以下の説明においては、作業現場1において停止状態の無人車両2が前進を開始するときの発進制御について説明する。
【0132】
走行制御部104は、無人車両2の発進を開始するために、駆動装置55に発進指令Caを出力する(ステップS1)。
【0133】
発進判定部106は、無人車両2の走行速度、無人車両2の加速度、及び無人車両2の移動距離に基づいて、無人車両2が発進したか否かを判定する。例えば規定時間T及び速度センサ74の検出データに基づいて、発進指令Caで無人車両2が発進したか否かを判定する(ステップS2)。
【0134】
ステップS2において、発進指令Caで無人車両2が発進したと判定された場合(ステップS2:Yes)、走行制御部104は、コース走行制御を開始する。無人車両2は、コースデータに従って作業現場1を走行する。
【0135】
ステップS2において、発進指令Caで無人車両2が発進しないと判定された場合(ステップS2:No)、周辺状況判定部108は、管理エリア83の設定を開始前の無人車両2の周辺状況を認識する(ステップS3)。
【0136】
周辺状況判定部108は、認識した周辺状況に基づいて、管理エリア83の設定が可能か否かを判定する(ステップS4)。
【0137】
周辺状況判定部108は、他の無人車両2Aの走行コース15が予定エリア83Pに設けられていない場合、管理エリア83の設定が可能であると判定する。周辺状況判定部108は、他の無人車両2Aの走行コース15が予定エリア83Pに設けられている場合、管理エリア83の設定が可能ではないと判定する。
【0138】
なお、周辺状況判定部108は、他の無人車両2A又は補助車両3が予定エリア83Pに接近又は存在する場合、管理エリア83の設定が可能ではないと判定し、他の無人車両2A又は補助車両3が予定エリア83Pから離隔する場合、管理エリア83の設定の開始が可能であると判定してもよい。周辺状況判定部108は、他の無人車両2Aの位置センサ71の検出データに基づいて、他の無人車両2Aが予定エリア83Pに接近又は存在するか否かを判定することができる。周辺状況判定部108は、補助車両3の位置センサ41の検出データに基づいて、補助車両3が予定エリア83Pに接近又は存在するか否かを判定することができる。
【0139】
ステップS4において、管理エリア83の設定が可能であると判定された場合(ステップS4:Yes)、管理エリア設定部107は、管理エリア83を設定する(ステップS5)。
【0140】
通知部109は、管理エリア83の設定後に、管理エリア83の設定が終了したことを無人車両2の外部の対象に通知する。実施形態において、通知部109は、管理エリア83の設定が終了したことをコースデータ生成部211に通知する(ステップS6)。
【0141】
これにより、コースデータ生成部211は、他の無人車両2Aが管理エリア83を回避するように、他の無人車両2Aのコースデータを生成することができる。
【0142】
管理エリア83の設定後、コースデータ設定部102は、コース走行制御を無効化し、脱出制御を有効化する(ステップS7)。
【0143】
コース走行制御が無効化され、脱出制御が有効化された後、走行制御部104は、脱出指令Ceを出力する(ステップS8)。
【0144】
走行装置51は、脱出指令Ceに基づいて、脱出動作を実施する。走行装置51は、脱出条件記憶部111に記憶されている脱出条件に基づいて、脱出動作を実施する。
【0145】
発進判定部106は、例えば規定時間T及び速度センサ74の検出データに基づいて、脱出指令Ceで無人車両2が発進したか否かを判定する(ステップS9)。
【0146】
ステップS9において、脱出指令Ceで無人車両2が発進したと判定された場合(ステップS9:Yes)、コースデータ設定部102は、脱出制御を無効化し、コース走行制御を有効化する(ステップS10)。
【0147】
走行制御部104は、コース走行制御を開始する。無人車両2は、コースデータに従って作業現場1を走行する。
【0148】
なお、コース走行制御に使用されるコースデータは、既存のコースデータでもよいし、脱出動作により無人車両2が発進した後に無人車両2の位置に基づいて新たに生成されたコースデータでもよい。例えば脱出動作により無人車両2の実際の位置又は実際の方位と既存のコースデータで規定される目標位置又は目標方位との偏差が大きくなりそうなことを管理装置21が検出した場合、脱出動作により無人車両2が発進した後の無人車両2の走行速度及び姿勢に基づいて無人車両2の位置を予測して、新たなコースデータを生成してもよい。無人車両2は、コース走行制御が開始された後に、新たに生成されたコースデータに基づいて走行することにより、実際の位置又は実際の方位と目標位置又は目標方位との偏差を小さくするための無人車両2の無駄な走行が軽減される。これにより、作業現場の生産性の低下が抑制される。
【0149】
コース走行制御が開始され、無人車両2の実際の位置と走行コース15との偏差が許容値以下になった後、管理エリア設定部107は、管理エリア83を解除する(ステップS11)。
【0150】
ステップS4において、管理エリア83の設定が可能ではないと判定された場合(ステップS4:No)、通知部109は、管理エリア83の設定が開始されることを無人車両2の外部の対象に通知する。実施形態において、通知部109は、管理エリア83の設定が開始されることをコースデータ生成部211に通知する。また、実施形態において、通知部109は、管理エリア83の設定が開始されることを補助車両3に通知する(ステップS12)。
【0151】
管理エリア83の設定が開始されることがコースデータ生成部211に通知されることにより、コースデータ生成部211は、他の無人車両2Aが予定エリア83Pを回避するように、他の無人車両2Aのコースデータを生成することができる。
【0152】
管理エリア83の設定が開始されることが補助車両3に通知されることにより、補助車両3は、予定エリア83Pを回避するように走行することができる。
【0153】
管理エリア83の設定が開始されることが通知された後、周辺状況判定部108は、無人車両2の周辺状況を認識する(ステップS13)。
【0154】
周辺状況判定部108は、認識した周辺状況に基づいて、管理エリア83の設定が可能か否かを判定する(ステップS14)。
【0155】
例えば、管理エリア83の設定が開始されること及び予定エリア83Pの通知により、他の無人車両2Aの走行コース15が予定エリア83Pを回避するように生成された場合、他の無人車両2Aが予定エリア83Pから離隔するように走行する場合、又は補助車両3が予定エリア83Pを回避するように走行する場合、周辺状況判定部108は、管理エリア83の設定が可能であると判定する。
【0156】
ステップS14において、管理エリア83の設定が可能であると判定された場合(ステップS14:Yes)、ステップS5からステップS11の処理が実施される。
【0157】
ステップS14において、管理エリア83の設定が可能ではないと判定された場合(ステップS14:No)、ステップS13の処理が実施される。管理エリア83の設定が可能であると判定されるまで、ステップS13の処理及びステップS14の処理が実施される。
【0158】
ステップS9において、脱出指令Ceで無人車両2が発進しないと判定された場合(ステップS9:No)、脱出制御は終了する。例えば、管理装置21にエラー信号が出力され、無人車両2について運転者の運転操作による脱出処理が実施される。
【0159】
[効果]
以上説明したように、実施形態によれば、管理エリア設定部107は、発進指令Caで無人車両2が発進しないと判定された場合、無人車両2が移動可能な管理エリア83を設定する。走行制御部104は、無人車両2が管理エリア83の外側に移動することを制限した状態で、走行装置51を脱出動作させる脱出指令Ceを出力する。走行装置51が発進動作とは異なる脱出動作を実施することにより、発進指令Caで発進できなかった無人車両2は、脱出指令Ceで発進することができる。無人車両2を発進させることができるので、作業現場の生産性の低下が抑制される。
【0160】
走行制御部104は、コース走行制御が無効化された状態で、脱出指令Ceを出力する。コース走行制御が無効化されるので、走行制御部104は、管理エリア83の内側において無人車両2を自由に移動させることができ、走行装置51を自由に脱出動作させることができる。これにより、タイヤ54は、埋没状態から脱出することができる。
【0161】
管理エリア設定部107は、発進指令Caで無人車両2が発進しないと発進判定部106により判定された時点の無人車両2の位置を基準として、管理エリア83を設定する。すなわち、発進判定部106により発進しないと判定された時点の無人車両2の周囲に、管理エリア83のエッジが配置される。これにより、管理エリア83は適正に設定される。無人車両2は、管理エリア83の内側において、前方、後方、左方、及び右方のそれぞれに自由に移動することができる。
【0162】
無人車両2を前進させる発進指令Caで無人車両2が発進できなかった場合、走行制御部104は、無人車両2を後進させるための脱出指令Ceを出力する。発進指令Caに基づいて無人車両2が前進できなかった場合、脱出指令Ceに基づいて無人車両2が後進することにより、タイヤ54は埋没状態から脱出することができる。
【0163】
また、無人車両2を前進させる発進指令Caで無人車両2が発進できなかった場合、走行制御部104は、無人車両2に前進と後進とを繰り返させる脱出指令Ceを出力する。発進指令Caに基づいて無人車両2が前進できなかった場合、脱出指令Ceに基づいて無人車両2が前進と後進とを繰り返すことにより、タイヤ54は埋没状態から脱出することができる。
【0164】
無人車両2を前進させる発進指令Caで無人車両2が発進できなかった場合、走行制御部104は、無人車両2を発進させる駆動力Deが発生している状態で、前輪53Fの操舵角を変化させる脱出指令Ceを出力する。発進指令Caに基づいて無人車両2が前進できなかった場合、脱出指令Ceに基づいて前輪53Fが操舵範囲で操舵されることにより、タイヤ54は埋没状態から脱出することができる。
【0165】
脱出条件記憶部111は、脱出動作を規定する脱出条件を記憶する。走行制御部104は、脱出条件記憶部111に記憶されている脱出条件に基づいて、脱出指令Ceを出力する。脱出条件がタイヤ54を埋没状態から脱出させることができる経験則に基づいて規定される場合、走行装置51は、脱出動作を適正に実施することができる。
【0166】
管理エリア設定部107は、管理エリア83の設定を開始前の無人車両2の周辺状況に基づいて、管理エリア83を設定する。無人車両2の周辺状況に基づいて、管理エリア83の設定の適否が判定される。管理エリア83の設定が不適切であると判定された場合、管理エリア83は設定されない。管理エリア83の設定が適切であると判定された場合、管理エリア83は設定される。これにより、作業現場の生産性の低下が抑制される。
【0167】
通知部109は、管理エリア83の設定の開始前において、管理エリア83の設定が開始されることを無人車両2の外部の対象に通知する。これにより、脱出動作を実施する無人車両2により他の無人車両2A又は補助車両3の進行が妨げられることが予防される。したがって、作業現場の生産性の低下が抑制される。
【0168】
通知部109は、管理エリア83の設定が終了したことを無人車両2の外部の対象に通知する。これにより、脱出動作を実施する無人車両2により他の無人車両2A又は補助車両3の進行が妨げられることが抑制される。したがって、作業現場の生産性の低下が抑制される。
【0169】
[その他の実施形態]
図15は、実施形態に係る発進制御を説明するための図である。上述の実施形態においては、タイヤ54を埋没状態から脱出させるとき、走行装置51は、脱出条件記憶部111に記憶されている脱出条件に基づいて脱出動作することとした。走行装置51は、周辺センサ76の検出データに基づいて脱出動作してもよい。
【0170】
図15に示すように、周辺センサ76は、無人車両2に設けられる。周辺センサ76は、無人車両2の周囲の路面状況を検出可能である。周辺センサ76として、撮像装置が例示される。周辺センサ76により検出された無人車両2の周囲の路面状況の検出データは、制御装置30に送信される。センサデータ取得部103は、無人車両2の周囲の路面状況の検出データを取得する。走行制御部104は、路面状況の検出データに基づいて、脱出指令Ceを出力する。
【0171】
周辺センサ76は、例えば路面81の脱出可能部位84を検出する。脱出可能部位84として、路面81の硬い部位又は岩石が多数存在する部位が例示される。また、脱出可能部位84として、4つのタイヤ54のうち埋没深さが浅いタイヤ54の近傍の部位が例示される。走行制御部104は、周辺センサ76の検出データに基づいて、タイヤ54が脱出可能部位84を乗り上げるようにステアリング装置58を制御する。これにより、無人車両2のタイヤ54は、埋没状態から脱出することができる。
【0172】
上述の実施形態においては、駆動輪が後輪53Rであり、操舵輪が前輪53Fであることとした。駆動輪は、前輪53Fでもよいし、前輪53F及び後輪53Rの両方でもよい。操舵輪は、後輪53Rでもよいし、前輪53F及び後輪53Rの両方でもよい。
【0173】
上述の実施形態においては、発進指令Caで無人車両2が発進しないと発進判定部106により判定された場合、管理エリア設定部107が管理エリア83を設定することとした。管理エリア設定部107は、管理装置21から送信された制御指令に基づいて、管理エリア83を設定してもよい。例えば、発進指令Caで無人車両2が発進しないことを管制施設13の管理者が判定した場合、管理エリア設定部107は、管理装置21から送信された制御指令に基づいて、管理エリア83を設定することができる。また、管理エリア設定部107は、補助車両3から送信された操作指令に基づいて、管理エリア83を設定してもよい。例えば、発進指令Caで無人車両2が発進しないことを補助車両3の運転者が判定した場合、管理エリア設定部107は、補助車両3の制御装置40から送信された制御指令に基づいて、管理エリア83を設定することができる。
【0174】
上述の実施形態において、管理エリア設定部107は、管理エリア83の代わりに、無人車両2が移動可能な3次元の管理スペースを設定してもよい。管理スペースの高さは、タイヤ54が接触する地面と無人車両2の最も高い部位との距離に定められてもよい。無人車両2の最も高い部位として、GNSS受信機に接続されるGNSSアンテナが例示される。なお、無人車両2の最も高い部位の位置が変化する場合、管理スペースの高さが、無人車両2の最も高い部位の位置の変化に合わせて変更されてもよい。例えば無人車両2の最も高い部位がダンプボディ52に規定され、ダンプボディ52がダンプ動作した場合、無人車両2の最も高い部位の位置が変化する。管理エリア設定部107は、ダンプボディ52のダンプ動作に合わせて、管理スペースの高さを変更してもよい。
【0175】
上述の実施形態においては、発進条件が発進条件生成部105により生成されることとした。発進条件は、制御装置30とは異なる演算処理装置で生成されてもよい。演算処理装置で生成された発進条件が発進条件記憶部110に記憶されてもよい。走行制御部104は、発進条件記憶部110に記憶されている発進条件を使用して、無人車両2の発進制御を実施することができる。
【0176】
上述の実施形態において、制御装置30の機能の少なくとも一部が管理装置21に設けられてもよいし、管理装置21の機能の少なくとも一部が制御装置30に設けられてもよい。例えば、上述の実施形態において、管理装置21が、発進条件生成部105の機能を有してもよい。発進条件が、通信システム24を介して管理装置21から無人車両2の制御装置30に送信されてもよい。走行制御部104は、管理装置21から送信された発進条件を使用して、無人車両2の発進制御を実施することができる。また、管理装置21が、例えば発進判定部106及び周辺状況判定部108の機能を有してもよい。
【0177】
上述の実施形態において、コースデータ取得部101、コースデータ設定部102、センサデータ取得部103、走行制御部104、発進条件生成部105、発進判定部106、管理エリア設定部107、周辺状況判定部108、通知部109、発進条件記憶部110、及び脱出条件記憶部111のそれぞれが、別々のハードウエアにより構成されてもよい。
【0178】
上述の実施形態において、無人車両2は、機械駆動式ダンプトラックでもよいし、電気駆動式ダンプトラックでもよい。
【符号の説明】
【0179】
1…作業現場、2…無人車両、2A…他の無人車両、3…補助車両、4…走行エリア、5…積込場、6…排土場、7…駐機場、8…給油場、9…走行路、10…交差点、11…積込機、12…破砕機、13…管制施設、14…コース点、15…走行コース、20…管理システム、21…管理装置、21A…プロセッサ、21B…メインメモリ、21C…ストレージ、21D…インタフェース、21E…コンピュータプログラム、22…入力装置、24…通信システム、24A…無線通信機、24B…無線通信機、24C…無線通信機、30…制御装置、30A…プロセッサ、30B…メインメモリ、30C…ストレージ、30D…インタフェース、30E…コンピュータプログラム、40…制御装置、40A…プロセッサ、40B…メインメモリ、40C…ストレージ、40D…インタフェース、40E…コンピュータプログラム、41…位置センサ、42…出力装置、50…車両本体、51…走行装置、52…ダンプボディ、53…車輪、53F…前輪、53R…後輪、54…タイヤ、54B…下端部、54F…前タイヤ、54R…後タイヤ、55…駆動装置、56…ブレーキ装置、57…トランスミッション装置、58…ステアリング装置、59…動力伝達機構、60…油圧装置、61…ステアリングシリンダ、62…ホイストシリンダ、63…油圧ポンプ、64…バルブ装置、71…位置センサ、72…方位センサ、73…傾斜センサ、74…速度センサ、75…ステアリングセンサ、76…周辺センサ、81…路面、82…積荷、83…管理エリア、83P…予定エリア、84…脱出可能部位、100…制御システム、101…コースデータ取得部、102…コースデータ設定部、103…センサデータ取得部、104…走行制御部、105…発進条件生成部、106…発進判定部、107…管理エリア設定部、108…周辺状況判定部、109…通知部、110…発進条件記憶部、111…脱出条件記憶部、211…コースデータ生成部、Ca…発進指令、Ce…脱出指令、Da…駆動力、De…駆動力、PA…ピッチ軸、Pθ…ピッチ角、RA…ロール軸、Rθ…ロール角、ta…時点、tb…時点、T…規定時間、Va…指令値、Vb…指令値、YA…ヨー軸、Yθ…ヨー角。