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  • 特開-シーリング剤及び物品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064622
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】シーリング剤及び物品
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20220419BHJP
   C08F 22/32 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
C09K3/10 E
C08F22/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173354
(22)【出願日】2020-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一色 絵利香
(72)【発明者】
【氏名】近藤 圭
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 謙一
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 栄一
【テーマコード(参考)】
4H017
4J100
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AA31
4H017AB01
4H017AC16
4H017AC17
4H017AC19
4H017AD05
4H017AE03
4J100AM05P
4J100BA08P
4J100CA01
4J100DA25
4J100DA47
4J100DA50
4J100JA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シール性及び速硬化性に優れるシーリング剤及びこのシーリング剤を用いて得られる物品の提供。
【解決手段】硬化性組成物であって、下記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物を含み、前記硬化性組成物の硬化物の23℃における貯蔵弾性率が、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である硬化性組成物である、シーリング剤。式(1)中、Lはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数2~6の直鎖又は分岐アルキレン基を表し、pは2~8の整数を表し、Rは置換基を有してもよい、炭素数1~8の直鎖若しくは分岐アルキル基、アリール基、アルケニル基、又は、アルキニル基を表す。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物であって、
下記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物を含み、
前記硬化性組成物の硬化物の23℃における貯蔵弾性率が、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である硬化性組成物である、シーリング剤。
【化1】

式(1)中、Lはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数2~6の直鎖又は分岐アルキレン基を表し、pは2~8の整数を表し、Rは置換基を有してもよい、炭素数1~8の直鎖若しくは分岐アルキル基、アリール基、アルケニル基、又は、アルキニル基を表す。
【請求項2】
前記硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度が、60℃以下である請求項1に記載のシーリング剤。
【請求項3】
前記硬化性組成物の硬化物のプローブタック試験におけるタック値が、0.1N/cm以上100N/cm以下である、請求項1又は請求項2に記載のシーリング剤。
【請求項4】
前記硬化性組成物の硬化物の応力-ひずみ曲線における伸び率が、350%以上である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のシーリング剤。
【請求項5】
JIS Z 0237(2009)に準拠して測定されるガラスと易接着性ポリエチレンテレフタレート基材とを前記硬化性組成物を硬化させて接着した接着物の180°引きはがし粘着力が、5N/25mm以上100N/25mm以下である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のシーリング剤。
【請求項6】
JIS Z 0237(2009)に準拠して測定されるアルミニウム基材同士を前記硬化性組成物を硬化させて接着した接着物の180°引きはがし粘着力が、5N/25mm以上50N/25mm以下である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のシーリング剤。
【請求項7】
前記Lがそれぞれ独立に、-CHCH-、-CH(R)CH-又は-CHCH(R)-であり、Rが炭素数1~6のアルキル基である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のシーリング剤。
【請求項8】
前記pが、2~6の整数である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のシーリング剤。
【請求項9】
前記Rが、炭素数1~6の直鎖又は分岐アルキル基である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のシーリング剤。
【請求項10】
前記硬化性組成物の25℃における初期粘度が、300Pa・s以下であり、
25℃60%RHの環境下において、前記硬化性組成物0.1gに対し5体積%トリエタノールアミンのアセトン溶液1μL添加した時から前記硬化性組成物の硬化物の貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下の範囲で略一定になるまでの時間が、60分以下である、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のシーリング剤。
【請求項11】
粘着付与剤、可塑剤、ゴム強化剤、抗酸化剤、及び、ポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を更に含む、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のシーリング剤。
【請求項12】
部材と、前記部材が有する隙間を充填する請求項1~請求項11のいずれか1項に記載のシーリング剤の硬化物と、を備える物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリング剤及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
部材間の隙間やキズを充填するための材料として、種々のシーリング剤が用いられている。例えば、特許文献1には、反応性シリル基を少なくとも2個有するアクリル系重合体を主成分として含むシーリング剤が記載されている。また、このシーリング剤は空気中の水分により室温で硬化可能であり、硬化後の硬化物はゴム弾性を有し、被着体に対する接着性も優れていると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-189772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シーリング剤を使用するにあたり、充填から硬化までの時間が短いと取り扱い性が大きく向上すると考えられる。しかしながら、特許文献1に記載された発明の実施例では硬化までに7日を要しており、シーリング剤の硬化時間の短縮について検討されていない。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、シール性及び速硬化性に優れるシーリング剤及びこのシーリング剤を用いて得られる物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1>硬化性組成物であって、
下記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物を含み、
前記硬化性組成物の硬化物の23℃における貯蔵弾性率が、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である硬化性組成物である、シーリング剤。
【化1】

式(1)中、Lはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数2~6の直鎖又は分岐アルキレン基を表し、pは2~8の整数を表し、Rは置換基を有してもよい、炭素数1~8の直鎖若しくは分岐アルキル基、アリール基、アルケニル基、又は、アルキニル基を表す。
<2>前記硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度が、60℃以下である<1>に記載のシーリング剤。
<3>前記硬化性組成物の硬化物のプローブタック試験におけるタック値が、0.1N/cm以上100N/cm以下である、<1>又は<2>に記載のシーリング剤。
<4>前記硬化性組成物の硬化物の応力-ひずみ曲線における伸び率が、350%以上である、<1>~<3>のいずれか1項に記載のシーリング剤。
<5>JIS Z 0237(2009)に準拠して測定されるガラスと易接着性ポリエチレンテレフタレート基材とを前記硬化性組成物を硬化させて接着した接着物の180°引きはがし粘着力が、5N/25mm以上100N/25mm以下である、<1>~<4>のいずれか1項に記載のシーリング剤。
<6>JIS Z 0237(2009)に準拠して測定されるアルミニウム基材同士を前記硬化性組成物を硬化させて接着した接着物の180°引きはがし粘着力が、5N/25mm以上50N/25mm以下である、<1>~<5>のいずれか1項に記載のシーリング剤。
<7>前記Lがそれぞれ独立に、-CHCH-、-CH(R)CH-又は-CHCH(R)-であり、Rが炭素数1~6のアルキル基である、<1>~<6>のいずれか1項に記載のシーリング剤。
<8>前記pが、2~6の整数である、<1>~<7>のいずれか1項に記載のシーリング剤。
<9>前記Rが、炭素数1~6の直鎖又は分岐アルキル基である、<1>~<8>のいずれか1項に記載のシーリング剤。
<10>前記硬化性組成物の25℃における初期粘度が、300Pa・s以下であり、
25℃60%RHの環境下において、前記硬化性組成物0.1gに対し5体積%トリエタノールアミンのアセトン溶液1μL添加した時から前記硬化性組成物の硬化物の貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下の範囲で略一定になるまでの時間が、60分以下である、<1>~<9>のいずれか1項に記載のシーリング剤。
<11>粘着付与剤、可塑剤、ゴム強化剤、抗酸化剤、及び、ポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を更に含む、<1>~<10>のいずれか1項に記載のシーリング剤。
<12>部材と、前記部材が有する隙間を充填する<1>~<11>のいずれか1項に記載のシーリング剤の硬化物と、を備える物品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シール性及び速硬化性に優れるシーリング剤及びこのシーリング剤を用いて得られる物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例2~4、及び、比較例1の硬化性組成物の硬化物の応力-ひずみ曲線における伸び率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本発明において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
【0010】
本発明のシーリング剤は、硬化性組成物であって、下記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物を含み、前記硬化性組成物の硬化物の23℃における貯蔵弾性率が、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である硬化性組成物である、シーリング剤である。
【0011】
【化2】
【0012】
式(1)中、Lはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数2~6の直鎖又は分岐アルキレン基を表し、pは2~8の整数を表し、Rは置換基を有してもよい、炭素数1~8の直鎖若しくは分岐アルキル基、アリール基、アルケニル基、又は、アルキニル基を表す。
【0013】
本発明のシーリング剤である硬化性組成物は、2個~8個のアルキレンオキシ構造を有する前記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物を含む。この化合物は、例えば、空気中の水分で容易に重合反応を生じ、速やかに硬化する。このため、本発明のシーリング剤は速硬化性に優れている。
【0014】
また本発明のシーリング剤は、優れたシール性を示す。かかる効果の作用機構は明確ではないが、以下のように推定している。
シーリング剤である硬化性組成物が2個~8個のアルキレンオキシ構造を有する前記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物を含み、かつ、その硬化物の23℃における貯蔵弾性率を上記範囲内とすることにより、硬化後であっても適度な柔軟性を有し、硬化物の表面において粘着力を発現すると推定される。このため、例えば、充填後の部材に外力が加わって変形したときなども良好なシール性が保たれる。
【0015】
<硬化物の23℃における貯蔵弾性率>
本発明のシーリング剤である硬化性組成物の硬化物の23℃における貯蔵弾性率は、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であり、得られる硬化物の粘着性の観点から、1.0×10Pa以上5.0×10Pa以下であることが好ましく、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であることがより好ましく、5.0×10Pa以上5.0×10Pa以下であることが特に好ましい。
【0016】
<硬化物のガラス転移温度>
本発明のシーリング剤である硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、得られる硬化物の粘着性の観点から、60℃以下であることが好ましく、35℃以下であることがより好ましく、-20℃以上35℃以下であることが更に好ましく、-10℃以上10℃以下であることが特に好ましい。
【0017】
硬化性組成物の硬化物の貯蔵弾性率及びガラス転移温度(Tg)は、以下の方法により測定するものとする。
硬化性組成物を、トリエタノールアミンを塗布した下記動的粘弾性測定装置用の冶具間に注入後、動的粘弾性測定装置(アントンパール社製、製品名「MCR301」)を用いて、周波数1Hz、温度25℃、厚み300μmの条件下、貯蔵弾性率を測定する。なお、貯蔵弾性率の変化がなくなったことを確認したものを硬化物とする。前記硬化物を用い、周波数1Hz、昇温速度2℃/分で-50℃~100℃の範囲でずりによる貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)、損失正接(tanδ=E”/E’)を測定する。
なお、本発明において、「貯蔵弾性率の変化がなくなったこと」は、1分あたりの貯蔵弾性率変化率が、25℃における最終的な貯蔵弾性率の1%以下になったこととする。
また、前記硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、損失正接(tanδ)のピーク温度を評価指標とし、求める。貯蔵弾性率は、23℃における値を用いる。
【0018】
<硬化物のプローブタック試験におけるタック値>
本発明のシーリング剤である硬化性組成物の硬化物のプローブタック試験におけるタック値は、得られる硬化物の粘着性の観点から、0.1N/cm以上100N/cm以下であることが好ましく、1N/cm以上100N/cm以下であることがより好ましく、10N/cm以上100N/cm以下であることが更に好ましく、50N/cm以上100N/cm以下であることが特に好ましい。
【0019】
硬化性組成物の硬化物のプローブタック試験におけるタック値は、以下の方法により測定するものとする。
抜き枠のある、厚さ38μmのスペーサー(離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡フイルムソリューション(株)製、製品名「ピューレックスA31」))を、厚さ125μmの易接着PETフィルム(東レ(株)製、製品名「ルミラー125U34」)上に乗せ、スペーサー枠内に前記接着剤組成物を滴下した。その上に、トリエタノールアミンを塗布した、別の離型PETフィルムを被せて張り合わせ、室温(25℃、以下同様)で24時間静置し、完全に硬化させる。硬化後、幅15mm、長さ15mmに切断し、離型PETフィルムを剥離して、試験片とする。この試験片について、ASTM D2979:2016(一部準拠)、日本薬局方6.12.(3.4.):第十七改正「プローブタック試験法」に準拠し、プローブタック試験機(テスター産業(株)製、製品名「TE-6002」)を用いて測定し、タック値(単位:N/cm)を算出する。
【0020】
<硬化物の応力-ひずみ曲線における伸び率>
本発明のシーリング剤である硬化性組成物の硬化物の応力-ひずみ曲線における伸び率は、得られる硬化物の粘着性及び柔軟性の観点から、350%以上であることが好ましく、500%以上であることがより好ましく、750%以上であることが更に好ましく、900%以上であることが特に好ましい。また、上限値は、10,000%以下であることが好ましい。
【0021】
硬化性組成物の硬化物の応力-ひずみ曲線における伸び率は、以下の方法により測定するものとする。
硬化性組成物1gに、トリエタノールアミンを1μL添加し撹拌した後、離型PETフィルム(東洋紡フイルムソリューション(株)製、製品名「ピューレックスA31」)に置いた、厚さ1mmのシリコーンゴムの型枠内に流し込む。上に離型フィルムを被せてガラス板で挟み込んで室温で24時間静置し、完全に硬化させる。硬化後、型枠及び離型フィルムを取り除いて、幅5mm、長さ50mm、厚さ1mmの硬化物を作製する。引張試験機((株)東洋精機製作所製、製品名「ストログラフV20-C」)を用いて、この硬化物の応力-ひずみ曲線を測定し、伸び率を算出する。
【0022】
<接着物の180°引きはがし粘着力>
本発明のシーリング剤である硬化性組成物において、JIS Z 0237(2009)に準拠して測定されるガラスと易接着性PET基材とを前記硬化性組成物を硬化させて接着した接着物の180°引きはがし粘着力は、得られる硬化物の粘着性及び柔軟性の観点から、5N/25mm以上100N/25mm以下であることが好ましく、10N/25mm以上50N/25mm以上であることがより好ましく、10N/25mm以上35N/25mm以下であることが更に好ましく、10N/25mm以上25N/25mm以下であることが特に好ましい。
【0023】
また、本発明のシーリング剤である硬化性組成物において、JIS Z 0237(2009)に準拠して測定されるアルミニウム基材同士を前記硬化性組成物を硬化させて接着した接着物の180°引きはがし粘着力は、得られる硬化物の粘着性及び柔軟性の観点から、5N/25mm以上50N/25mm以下であることが好ましく、5N/25mm以上35N/25mm以上であることがより好ましく、5N/25mm以上25N/25mm以下であることが特に好ましい。
【0024】
本発明における「易接着性」とは、硬化性組成物により接着しやすく、かつ、接着した後には、剥がれが生じにくい性質を意味する。
【0025】
硬化性組成物の180°引きはがし粘着力は、以下の方法により測定するものとする。
【0026】
-ガラスと易接着性PET基材との接着物の作製-
幅25mm、長さ150mmの抜き枠のある、厚さ38μmのスペーサー(離型PETフィルム(東洋紡フイルムソリューション(株)製、製品名「ピューレックスA31」))を厚さ1mmのガラス板(AGCファブリテック(株)製、製品名「FL11AK」)に乗せ、スペーサー枠内のガラス上に、硬化性組成物を滴下する。その上に、トリエタノールアミンを塗布した、厚さ125μmの易接着性PETフィルム(東レ(株)製、製品名「ルミラー125U34」)を被せて貼り合わせ、室温で24時間静置し、完全に硬化させる。硬化後、スペーサーを取り除き、厚さ38μm、幅25mm、長さ150mmの接着剤層を有する、片面がガラス基材、もう片面が易接着PET基材である試験片を作製する。
【0027】
-アルミニウム基材同士の接着物の作製-
幅90mm、長さ150mmの抜き枠のある、厚さ38μmのスペーサー(離型PETフィルム(東洋紡フイルムソリューション(株)製、製品名「ピューレックスA31」))を、厚さ0.1mmのアルミニウム板(JIS A6061Pに規定された材質)に乗せ、スペーサー枠内のアルミニウム板上に、接着剤組成物を滴下する。その上に、トリエタノールアミンを塗布した、厚さ1mmのアルミニウム板を被せて貼り合わせ、室温で24時間静置し、完全に硬化させる。硬化後、スペーサーを取り除き、幅25mmに切断し、厚さ38μm、幅25mm、長さ150mmの接着剤層を有する、両面がアルミニウム基材である試験片を作製する。
【0028】
-剥離強度測定-
前記条件で作製した試験片について、片側の基材(ガラスと易接着PET基材との接着物の場合は易接着PET基材)の端を、アルミニウム基材同士は50mm/分の速度で、ガラスと易接着性PET基材は100mm/分の速度で、180°の剥離方向へ剥離し、その時の被着体に対する粘着力(抵抗力)(単位:N/25mm)を測定する。得られた測定結果を硬化性組成物の180°引きはがし粘着力とする。
【0029】
<硬化性組成物の粘度>
本発明のシーリング剤である硬化性組成物の25℃における粘度は、塗布性、及び、得られる硬化物の粘着性の観点から、300Pa・s以下であることが好ましく、100Pa・s以下であることがより好ましく、50Pa・s以下であることが更に好ましく、10Pa・s以上で50Pa・s以下であることが特に好ましい。
硬化性組成物の粘度は、(株)トキメック製E型粘度計を用い、25℃、100rpmの条件下にて測定するものとする。
【0030】
<硬化時間>
本発明のシーリング剤である硬化性組成物において、25℃60%RHの環境下において、前記硬化性組成物0.1gに対し5体積%トリエタノールアミンのアセトン溶液1μL添加した時から前記硬化性組成物の硬化物の貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下の範囲で略一定になるまでの時間は、塗布性、及び、得られる硬化物の粘着性の観点から、60分以下であることが好ましく、30分以下であることがより好ましく、20分以下であることが更に好ましく、10分以下であることが特に好ましい。
なお、前記硬化物の貯蔵弾性率が略一定になるまでの時間とは、1分あたりの貯蔵弾性率変化率が、25℃における最終的な貯蔵弾性率の1%以下になるまでの時間とする。
また、硬化物の貯蔵弾性率の測定方法は、前述した通りである。
【0031】
<式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物>
本発明のシーリング剤である硬化性組成物は、前記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物を含む。
式(1)におけるLが有していてもよい置換基としては、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリーロキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基が挙げられる。
式(1)におけるLはそれぞれ独立に、得られる硬化物の粘着性の観点から、-CHCH-、-CH(R)CH-又は-CHCH(R)-であることが好ましく、-CH(R)CH-又は-CHCH(R)-であることがより好ましい。
前記Rは、炭素数1~6のアルキル基を表し、得られる硬化物の粘着性の観点から、炭素数1~3のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
また、式(1)における全てのRは、同じ基であることが好ましい。
また、式(1)におけるLとして具体的には、エチレン基、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、2,3-プロピレン基、1,2-ブチレン基、1,3-ブチレン基、1,4-ブチレン基、2,3-ブチレン基、2,4-ブチレン基、3,4-ブチレン基、1,2-ペンチレン基、1,3-ペンチレン基、1,4-ペンチレン基、2,3-ペンチレン基、2,4-ペンチレン基、2,5-ペンチレン基、3,4-ペンチレン基、3,5-ペンチレン基、4,5-ペンチレン基等が挙げられる。
中でも、得られる硬化物の粘着性の観点から、エチレン基、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、2,3-プロピレン基、1,2-ブチレン基、1,3-ブチレン基、1,4-ブチレン基、2,3-ブチレン基、2,4-ブチレン基又は3,4-ブチレン基であることが好ましく、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、2,3-プロピレン基又は1,2-ブチレン基であることがより好ましく、1,2-プロピレン基又は2,3-プロピレン基であることが特に好ましい。
【0032】
式(1)におけるRが有していてもよい置換基は、Lが有していてもよい置換基と同様である。
式(1)におけるRとしては、得られる硬化物の粘着性の観点から、炭素数1~8の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~8の直鎖若しくは分岐アルケニル基、又は、炭素数2~8のアルキニル基であることが好ましく、炭素数1~8の直鎖又は分岐アルキル基であることがより好ましく、炭素数1~6の直鎖又は分岐アルキル基であることがより好ましく、炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキル基であることが特に好ましい。また、前記アルキル基は、直鎖アルキル基であることが好ましい。
式(1)におけるRとして具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、1-オクチル基、2-オクチル基、アリル基、フェニル基、ベンジル基が挙げられる。
中でも、得られる硬化物の粘着性の観点から、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、又は、n-ヘキシル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、又は、n-ブチル基であることがより好ましい。
【0033】
式(1)におけるpは、得られる硬化物の粘着性の観点から、2~6の整数であることが好ましく、2~4の整数であることがより好ましく、3又は4であることが更に好ましく、3であることが特に好ましい。また、pは、得られる硬化物の粘着性及び柔軟性の観点から、3以上であることが好ましい。
【0034】
前記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物として、具体的には例えば、2-シアノアクリル酸の2-(2-メトキシエトキシ)エチル、2-(2-エトキシエトキシ)エチル、2-(2-プロピルオキシエトキシ)エチル、2-(2-ブトキシエトキシ)エチル、2-(2-ペンチルオキシエトキシ)エチル、2-(2-ヘキシルオキシエトキシ)エチル、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(2-プロピルオキシエトキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(2-ブチルオキシエトキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(2-ペンチルオキシエトキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(2-ヘキシルオキシエトキシ)エトキシ]エチル、1-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、2-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-エトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-エトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-エトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、2-(2-エトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-プロポキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-プロポキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-プロポキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、2-(2-プロポキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-ブトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-ブトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-ブトキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、2-(2-ブトキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-ヘキシルオキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、1-(2-ヘキシルオキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、2-(2-ヘキシルオキシ-2-メチルエトキシ)プロピル-1-イル、2-(2-ヘキシルオキシ-1-メチルエトキシ)プロピル-2-イル、
【0035】
1-[2-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、2-[2-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、1-[2-(2-エトキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-エトキシ-2-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-エトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-エトキシ-2-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、2-[2-(2-エトキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-エトキシ-2-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-エトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-エトキシ-2-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、1-[2-(2-プロポキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-プロポキシ-2-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-プロポキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-プロポキシ-2-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、2-[2-(2-プロポキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-プロポキシ-2-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-プロポキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-プロポキシ-2-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、
【0036】
1-[2-(2-ブトキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-ブトキシ-2-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-ブトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-ブトキシ-2-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、2-[2-(2-ブトキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-ブトキシ-2-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-ブトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-ブトキシ-2-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、1-[2-(2-ヘキシルオキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-ヘキシルオキシ-2-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-ヘキシルオキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、1-[2-(2-ヘキシルオキシ-2-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-2-イル、2-[2-(2-ヘキシルオキシ-1-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-ヘキシルオキシ-2-メチルエトキシ)-1-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-ヘキシルオキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、2-[2-(2-ヘキシルオキシ-2-メチルエトキシ)-2-メチルエトキシ]プロピル-1-イル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノペンチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル等のエステルが好適に挙げられる。
【0037】
硬化性組成物に含まれる前記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硬化性組成物における前記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物の含有量は、接着性及び硬化性の観点から、硬化性組成物の全質量に対し、40質量%以上100質量%以下であることが好ましく、50質量%以上99.5質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上90質量%以下であることが更に好ましく、70質量%以上85質量%以下であることが特に好ましい。
【0038】
<その他の成分>
本発明のシーリング剤である硬化性組成物は、前記式(1)で表される2-シアノアクリレート化合物以外のその他の成分を含有していてもよい。
例えば、粘着付与剤、安定剤、硬化促進剤、光重合開始剤、可塑剤、増粘剤、粒子、着色剤、香料、溶剤、強度向上剤、ゴム強化剤、抗酸化剤、ポリマー等を、目的に応じて、硬化性組成物の硬化性及び得られる硬化物の粘着性等を損なわない範囲で適量配合することができる。
本発明のシーリング剤がその他の成分を含有する場合、2-シアノアクリレート化合物を硬化させる性質を有していないことが好ましい。
その他の成分の含有量は、2-シアノアクリレート化合物の含有量未満であることが好ましく、また、硬化性組成物の全質量に対し、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
粘着付与剤としては、ロジンエステル、ガムロジン、トール油ロジン、水添ロジンエステル、マレイン化ロジン、不均化ロジンエステル等のロジン誘導体;テルペンフェノール樹脂、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等を主体とするテルペン系樹脂;(水添)石油樹脂;クマロン-インデン系樹脂;水素化芳香族コポリマー;スチレン系樹脂;キシレン系樹脂;(メタ)アクリル系重合体等が挙げられる。
【0040】
また、可塑剤としては、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソトリデシル、フタル酸ジペンタデシル、テレフタル酸ジオクチル、イソフタル酸ジイソノニル、トルイル酸デシル、ショウノウ酸ビス(2-エチルヘキシル)、2-エチルヘキシルシクロヘキシルカルボキシレート、フマル酸ジイソブチル、マレイン酸ジイソブチル、カプロン酸トリグリセライド、安息香酸2-エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエート等が挙げられる。これらの中では、2-シアノアクリレート化合物との相溶性がよく、かつ可塑化効率が高いという点から、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、安息香酸2-エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエートが好ましい。これらの可塑剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
ゴム強化剤としては、公知のゴム強化剤を用いることができる、中でも、エチレンアクリル酸エラストマーが好ましく挙げられる。エチレンアクリル酸エラストマーとしては、例えば、Dupont社製VAMACエラストマーを用いることができる。
ゴム強化剤は、硬化性組成物の全質量に対し、1.5質量%~20質量%であることが好ましく、5質量%~15質量%であることがより好ましく、8質量%~10質量%であることが特に好ましい。
【0042】
抗酸化剤として、公知の抗酸化剤を用いることができる、中でも、ヒンダードフェノール化合物が好ましく挙げられる。
【0043】
ポリマーとしては、ホモポリマー(単独重合体)であっても、コポリマー(共重合体)であってもよいが、コポリマーが好ましく挙げられる。
ポリマーとして具体的には、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルエーテル、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、ブタジエンアクリロニトリルポリマー、熱可塑性エラストマー、スチレン-イソプレン、スチレンイソプレン-スチレンブロックコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー、スチレン-ブタジエンポリマー、ポリ-α-オレフィン、シリコーン、エチレン含有コポリマー、エチレンビニルアセテート、及び、それらの組み合わせよりなる群から選択されるポリマーが挙げられる。中でも、ポリ(メタ)アクリレート、又は、エチレンビニルアセテート共重合体であることが好ましい。
【0044】
安定剤としては、(1)二酸化硫黄及びメタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、三弗化ホウ素メタノール、三弗化ホウ素ジエチルエーテル等の三弗化ホウ素錯体、HBF、トリアルキルボレート等のアニオン重合禁止剤、(2)ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t-ブチルカテコール、カテコール及びピロガロール等のラジカル重合禁止剤などが挙げられる。これらの安定剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
硬化促進剤は、2-シアノアクリレート系硬化性組成物のアニオン重合を促進するものであれば、いずれも使用することができる。硬化促進剤としては、例えば、ポリエーテル化合物、カリックスアレン類、チアカリックスアレン類、ピロガロールアレン類、及びオニウム塩等が挙げられる。これらの硬化促進剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
増粘剤としては、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとの共重合体、メタクリル酸メチルとその他のメタクリル酸エステルとの共重合体、アクリルゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン、セルロースエステル、ポリアルキル-2-シアノアクリル酸エステル及びエチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらの増粘剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
硬化性組成物に配合してもよい粒子は、硬化性組成物を使用した際の接着剤層の厚さを調整するためのものである。
前記粒子の平均粒子径は、10μm~200μmであることが好ましく、15μm~200μmであることがより好ましく、15μm~150μmであることが更に好ましい。
粒子の材質は、使用する2-シアノアクリレート化合物に不溶であり、重合等の変質を引き起こさないものであれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド等の熱可塑性樹脂;不飽和ポリエステル、ジビニルベンゼン重合体、ジビニルベンゼン-スチレン共重合体、ジビニルベンゼン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ジアリルフタレート重合体等の架橋樹脂;球状シリカ、ガラスビーズ、ガラスファイバー等の無機化合物;シリコーン化合物;有機ポリマー骨格とポリシロキサン骨格を含んでなる有機無機複合粒子等が挙げられる。
また、粒子の含有量は特に限定されないが、2-シアノアクリレート化合物の含有量を100質量部とした場合に、0.1質量部~10質量部であることが好ましく、1質量部~5質量部であることがより好ましく、1質量部~3質量部であることが更に好ましい。前記0.1質量部~10質量部の範囲であると、硬化速度や接着強さに与える影響を少なくすることができる。
本発明における粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した体積基準の平均値である。
【0048】
<シーリング剤の使用方法>
本発明のシーリング剤の使用方法は、2-シアノアクリレート化合物の重合反応を生じさせて硬化させる方法であれば、特に制限はない。例えば、湿気等の水分により硬化させても、光重合開始剤を配合し、光により硬化させてもよいが、湿気等の水分により硬化させることが好ましい。
【0049】
本発明のシーリング剤は、あらゆる部材が有する隙間の充填を目的とする用途に使用することができる。シーリング剤を用いて部材が有する隙間を充填する方法は特に制限されず、例えば、ディスペンサー、ヘラ、コテ等を用いて行ってもよい。
本発明のシーリング剤は、同じ材質の部材の隙間を充填するのに用いられても、異なる材質の部材間の隙間を充填するのに用いられてもよい。
必要に応じ、シーリング剤の硬化後の表面の粘着性を低減するための処理を施してもよく、プライマー剤等を併用してもよい。
【0050】
<物品>
本発明の物品は、部材と、前記部材が有する隙間を充填する上述したシーリング剤の硬化物と、を備える物品である。
部材の材質としては、例えば、プラスチック、ゴム、木材、金属、無機材料、紙等が挙げられる。
プラスチックの具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース及びジアセチルセルロース等のセルロースアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等のポリエステル樹脂、ポリエーテルサルホン、ノルボルネン等の環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。
ゴムの具体例としては、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。
木材の具体例としては、例えば、自然の木材及び合成木材等が挙げられる。
金属の具体例としては、例えば、鋼板、アルミニウム、クロム等の金属、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムスズ(ITO)等の金属酸化物等が挙げられる。
無機材料の具体例としては、例えば、ガラス、モルタル、コンクリート、石材、陶磁器、半導体等が挙げられる。
紙の具体例としては、例えば、上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、各種合成紙等が挙げられる。
中でも、本発明のシーリング剤は樹脂部材に対する接着性に優れていることから、樹脂部材間の隙間を充填するためのシーリング剤として特に好適に用いることができる。
【0051】
物品に含まれる部材の種類は1種のみでも2種以上であってもよい。
物品の種類は特に制限されず、例えば、電子部品、家電製品、医療用品、美術工芸品、容器、包装袋、家具類、建造物(建具、壁面等)などが挙げられる。
【実施例0052】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
【0053】
(実施例1~4、及び、比較例1)
表1又は表2に記載の2-シアノアクリレート化合物を硬化性組成物とした。
得られた硬化性組成物を用い、以下の物性値測定、及び、評価を行った。評価結果を表1又は表2に示す。
【0054】
<硬化物のガラス転移温度及び貯蔵弾性率の測定>
硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)及び貯蔵弾性率を以下の方法により測定した。
硬化性組成物を、トリエタノールアミンを塗布した下記動的粘弾性測定装置用の冶具間に注入後、動的粘弾性測定装置(アントンパール社製、製品名「MCR301」)を用いて、周波数1Hz、温度25℃、厚み300μmの条件下、貯蔵弾性率を測定した。なお、貯蔵弾性率の変化がなくなったことを確認したものを硬化物とした。前記硬化物を用い、周波数1Hz、昇温速度2℃/分で-50℃~100℃の範囲でずりによる貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)、損失正接(tanδ=E”/E’)を測定した。ガラス転移温度(Tg)は、損失正接(tanδ)のピーク温度を評価指標とし、求めた。貯蔵弾性率は、23℃における値を用いた。
【0055】
<硬化物のプローブタック試験におけるタック値の測定>
抜き枠のある、厚さ38μmのスペーサー(離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡フイルムソリューション(株)製、製品名「ピューレックスA31」))を、厚さ125μmの易接着PETフィルム(東レ(株)製、製品名「ルミラー125U34」)上に乗せ、スペーサー枠内に前記接着剤組成物を滴下した。その上に、トリエタノールアミンを塗布した、別の離型PETフィルムを被せて張り合わせ、室温(25℃、以下同様)で24時間静置し、完全に硬化させた。硬化後、幅15mm、長さ15mmに切断し、離型PETフィルムを剥離して、試験片とした。この試験片について、ASTM D2979:2016(一部準拠)、日本薬局方 6.12.(3.4.): 第十七改正「プローブタック試験法」に準拠し、プローブタック試験機(テスター産業(株)製、製品名「TE-6002」)を用いて測定し、タック値(単位:N/cm)を算出した。
【0056】
<硬化物の応力-ひずみ曲線における伸び率の測定>
硬化性組成物1gに、トリエタノールアミンを1μL添加し撹拌した後、離型PETフィルム(東洋紡フイルムソリューション(株)製、製品名「ピューレックスA31」)の上に置いた、厚さ1mmのシリコーンゴムの型枠内に流し込んだ。上に離型フィルムを被せてガラス板で挟み込んで室温で24時間静置し、完全に硬化させた。硬化後、型枠及び離型フィルムを取り除いて、幅5mm、長さ50mm、厚さ1mmの硬化物を作製した。引張試験機((株)東洋精機製作所製、製品名「ストログラフV20-C」)を用いて、この硬化物の応力-ひずみ曲線を測定し、伸び率を算出した。
【0057】
<硬化性組成物の粘度>
硬化性組成物の粘度を、(株)トキメック製E型粘度計を用い、25℃、100rpmの条件下にて測定した。
【0058】
<接着物の180°剥離強度試験>
-ガラスと易接着PET基材との接着物の作製-
幅25mm、長さ150mmの抜き枠のある、厚さ38μmのスペーサー(離型PETフィルム(東洋紡フイルムソリューション(株)製、製品名「ピューレックスA31」))を厚さ1mmのガラス板(AGCファブリテック(株)製、製品名「FL11AK」)に乗せ、スペーサー枠内のガラス上に、得られた硬化性組成物を滴下した。その上に、トリエタノールアミンを塗布した、厚さ125μmの易接着PETフィルム(東レ(株)製、製品名「ルミラー125U34」)を被せて貼り合わせ、室温で24時間静置し、完全に硬化させた。硬化後、スペーサーを取り除き、厚さ38μm、幅25mm、長さ150mmの接着剤層を有する、片面がガラス基材、もう片面が易接着PET基材である試験片を作製した。
【0059】
-アルミニウム基材同士の接着物の作製-
幅90mm、長さ150mmの抜き枠のある、厚さ38μmのスペーサー(離型PETフィルム(東洋紡フイルムソリューション(株)製、製品名「ピューレックスA31」))を、厚さ0.1mmのアルミニウム板(JIS A6061Pに規定された材質)に乗せ、スペーサー枠内のアルミニウム板上に、前記接着剤組成物を滴下した。その上に、トリエタノールアミンを塗布した、厚さ1mmのアルミニウム板を被せて貼り合わせ、室温で24時間静置し、完全に硬化させた。硬化後、スペーサーを取り除き、幅25mmに切断し、厚さ38μm、幅25mm、長さ150mmの接着剤層を有する、両面がアルミニウム基材である試験片を作製した。
【0060】
-剥離強度測定-
前記条件で作製した試験片について、片側の基材(ガラスと易接着PET基材との接着物の場合は易接着PET基材)の端を、アルミニウム基材同士は50mm/分の速度で、ガラスと易接着性PET基材は100mm/分の速度で、180°の剥離方向へ剥離し、その時の被着体に対する180°引きはがし粘着力(抵抗力)(単位:N/25mm)を測定した。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
なお、表1及び表2の化学構造式において、Meは、メチル基を表し、Buは、n-ブチル基を表し、COは、-CH(CH)CHO-及び-CHCH(CH)O-が混合した基を表す。実施例1で使用した2-シアノアクリレート化合物は、位置及び光学異性体の混合物となる。
また、図1は、実施例2~4、及び、比較例1の硬化性組成物の硬化物の応力-ひずみ曲線における伸び率を示す。
図1の縦軸は、stress(応力、単位:N/mm)を表し、横軸は、strain(ひずみ=伸び率、単位:%)を表す。
また、図1における略号の詳細は、以下の通りである
ME3CA:メトキシエトキシエトキシエチルシアノアクリレート(実施例2)
MEECA:メトキシエトキシエチルシアノアクリレート(実施例3)
BEECA:ブトキシエトキシエチルシアノアクリレート(実施例4)
EECA:エトキシエチルシアノアクリレート(比較例1)
【0064】
表1に示すように、実施例1~4の硬化性組成物は、比較例1の硬化性組成物に比べ、得られる硬化物の粘着性に優れることができた。
また、表1及び表2に示すように、実施例1~4の硬化性組成物は、硬化速度にも優れ、また、得られる硬化物の柔軟性にも優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のシーリング剤は、あらゆる部材間の隙間の充填に用いることができる。また、充填後速やかに硬化するため、取り扱い性に優れている。
図1