(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064630
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】森林資源情報生成構造、および森林資源情報生成方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20220419BHJP
G01B 11/08 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
G06T7/00 640
G01B11/08 Z
G01B11/08 H
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173364
(22)【出願日】2020-10-14
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】520400841
【氏名又は名称】株式会社興和
(71)【出願人】
【識別番号】309015019
【氏名又は名称】地方独立行政法人青森県産業技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】菊池 元良
(72)【発明者】
【氏名】小野田 幸
(72)【発明者】
【氏名】川又 弓華
(72)【発明者】
【氏名】木村 公樹
(72)【発明者】
【氏名】土屋 慧
【テーマコード(参考)】
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA26
2F065FF05
2F065FF11
2F065GG04
2F065QQ31
2F065QQ34
5L096FA64
5L096FA69
5L096HA08
5L096JA03
5L096JA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】地上調査等の実測データ収集過程を要することなしに胸高直径を直接計測することによって、森林資源情報をより効率的に把握することのできる森林資源情報生成構造および森林資源情報生成方法を提供する。
【解決手段】森林資源情報生成構造は、リモートセンシング技術により取得された森林資源の点群データD00を用いて森林資源情報を生成する構造であって、樹頂点情報D10を得るための樹頂点検出処理部10、胸高直径情報D35を得るための胸高直径算定処理部35、点群データD00から得られる地形高度情報および樹頂点情報D10によって胸高周辺情報D30を得るための樹幹検出処理部30を備える。胸高直径算定処理部35は、胸高周辺情報D30を処理して胸高直径情報D35を生成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リモートセンシング技術により取得された森林資源の点群データを用いて森林資源情報を生成する構造であって、
樹頂点情報を得るための樹頂点検出処理部、および
胸高直径情報を得るための胸高直径算定処理部を備えており、さらに、
点群データから得られる地形高度情報および該樹頂点情報によって胸高周辺情報を得るための樹幹検出処理部を備えており、
該胸高周辺情報が該胸高直径算定処理部において処理されて該胸高直径情報が生成されることを特徴とする、森林資源情報生成構造。
【請求項2】
前記樹幹検出処理部では、前記樹頂点情報を中心とした検出範囲が設定され、該検出範囲において、前記地形高度情報を反映した胸高周辺の点群が胸高周辺情報として取得されることを特徴とする、請求項1に記載の森林資源情報生成構造。
【請求項3】
前記の胸高直径算定処理部では、取得された前記胸高周辺情報からZ座標を除いた略円弧状または略円形状の2次元分布が作成され、該2次元分布の半径を所定方法によって算出することにより前記胸高直径情報が生成されることを特徴とする、請求項2に記載の森林資源情報生成構造。
【請求項4】
前記所定方法による算出とは弦の性質および三平方の定理による算出であることを特徴とする、請求項3に記載の森林資源情報生成構造。
【請求項5】
前記樹頂点検出処理部では、同一形状およびサイズの検出範囲単位(以下「メッシュ」という)が連続的に設けられた平面構造(以下「メッシュ構造」という)を用いて点群データから樹頂点情報を得るが、各メッシュにおいて下記<A1>、<A2>の反復により収束した最高点データを樹頂点情報とする処理が行われることを特徴とする、請求項1、2、3、4のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
<A1> 該メッシュ中でZ座標が最大である最高点データを抽出する。
<A2> 最高点データのX,Y各座標を中心として、該メッシュと同一サイズの検出範囲を再設定する。
【請求項6】
前記樹頂点検出処理部では、前記各メッシュの樹頂点情報について、周辺に存在するよりZ座標の小さいデータを、樹冠径の推測値(以下「推測樹冠径」という)に基づく所定基準によって除去する処理が行われることを特徴とする、請求項5に記載の森林資源情報生成構造。
【請求項7】
前記所定基準は下記<B1>および<B2>であることを特徴とする、請求項6に記載の森林資源情報生成構造。
<B1> 前記推測樹冠径内において、前記樹頂点情報よりZ座標が小さいデータは削除する。
<B2> 前記推測樹冠径×2の範囲内において、樹種から推測される頂点角内に存在するデータは削除する。
【請求項8】
前記樹頂点検出処理部では、前記<A1>、<A2>の反復中において、前記検出範囲再設定前後の最高点データ間にZ座標が極小値をとるデータ(以下「谷間」という)が存在する場合、当該再設定済みの検出範囲を該谷間によって区切る処理が行われることを特徴とする、請求項5、6、7のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
【請求項9】
前記点群データ中の最下層のデータから前記地形高度情報を得、および、該地形高度情報ならびに前記樹頂点情報から樹高情報を得るための樹高算定処理部を備えていることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7、8のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
【請求項10】
前記樹高算定処理部では、前記樹頂点情報に近接する3点のデータから該樹頂点情報のX,Y各座標を内包するTIN(Triangulated Irregular Network)を作成してこれにより前記地形高度情報が得られ、該樹頂点情報のZ座標からの該地形高度情報の減算により前記樹高情報が生成されることを特徴とする、請求項9に記載の森林資源情報生成構造。
【請求項11】
前記胸高直径算定処理部にて生成された胸高直径情報の信頼性を評価するための胸高直径信頼性付加処理部(以下、単に「信頼性付加処理部」という)が備えられており、該信頼性付加処理部では、2次元形態の前記胸高周辺情報と前記胸高直径算定処理部にて生成された胸高直径情報との比較により特定されるところの、該胸高直径情報の信頼性有無を評価する信頼性情報が、該胸高直径情報に付加されることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
【請求項12】
樹冠投影面積情報その他の樹冠情報を得るための樹冠情報算定処理部が備えられており、該樹冠情報算定処理部では、前記樹頂点を中心とする樹冠の特定に用いるためのデータ群(以下「樹冠検出対象データ群」という)を点群データから取出し、これを所定角度で分割して周方向への分画(以下「角度分画」という)とし、各角度分画における該樹冠の最外縁と推測される点(以下「端点」という)を特定し、各端点を結ぶことで該樹冠の外周とする処理が行われることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
【請求項13】
前記樹冠情報算定処理部では、前記角度分画を所定解像度で遠心方向に分割して径方向への分画(以下「解像度小分画」という)とし、各解像度小分画中にて特定される最高点データを結ぶことで該樹冠の側面輪郭の概略図形を描出し、該図形を形成する線分の傾きの大きさに基づいて前記端点を特定する処理が行われることを特徴とする、請求項12に記載の森林資源情報生成構造。
【請求項14】
前記端点の特定が、下記<C1>~<C3>のいずれかによりなされることを特徴とする、請求項13に記載の森林資源情報生成構造。
<C1> 前記傾きが、平坦を示す所定角度よりも所定回数連続して小さい場合、その直前の点を端点とする。
<C2> 前記傾きの正負が、所定回数連続して反転している場合、その直前の点を端点とする。
<C3> 前記解像度小分画中に点が存在しない場合、検出された最後の点を端点とする。
【請求項15】
前記樹冠検出対象データ群中に処理対象の樹頂点(以下「本樹頂点」という)の他に樹頂点(以下「他樹頂点」という)が存在する場合は、両樹頂点の樹高に対応して両樹冠の境界を決める処理が行われることを特徴とする、請求項12、13、14のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
【請求項16】
前記端点における前記樹頂点からの水平距離(以下「端点距離」という)を用いて前記樹冠を特定するための該端点を補正する処理が行われるが、該補正は、補正対象端点の端点距離を、その両隣計2点に係る端点距離に基づいて増減する修正であることを特徴とする、請求項12、13、14、15のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
【請求項17】
前記胸高直径情報に基づき材積情報を算定するための材積算定処理部を備えていることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
【請求項18】
前記胸高直径情報の信頼性を評価するために下記<D1>がなされる胸高直径信頼性付加処理部(信頼性付加処理部)が備えられているとともに、該信頼性がない、または低い胸高直径情報については、本森林資源情報生成構造において生成された情報(以下「生成森林資源情報」という)に基づき胸高直径を推定して推定胸高直径情報を生成するための胸高直径推定処理部が備えられていることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
<D1> 2次元形態の前記胸高周辺情報と前記胸高直径算定処理部にて生成された胸高直径情報との比較により特定されるところの、該胸高直径情報の信頼性有無を評価する信頼性情報の、該胸高直径情報への付加
【請求項19】
前記胸高直径情報または前記推定胸高直径情報に基づき材積情報を算定するための材積算定処理部が備えられていることを特徴とする、請求項18に記載の森林資源情報生成構造。
【請求項20】
前記胸高直径推定処理部での処理は前記生成森林資源情報が包含される情報セット(以下「推定式作成用単木データセット」という)を用いて行われ、該推定式作成用単木データセットにおいては、対象林分を覆うボロノイ図がクラスタリング処理されて生成するクラスター番号が該単木データに空間結合されており、該ボロノイ図を作成するボロノイ図作成処理部、および該クラスタリング処理を行うクラスタリング処理部が備えられていることを特徴とする、請求項18、19のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
【請求項21】
前記ボロノイ図のレイヤには、前記点群データにより得られる数値地形モデル(Digital Terrain Model、以下「DTM」という)から作成される傾斜および曲率の情報が含まれ、これら傾斜および曲率を算定するための傾斜等算定処理部が備えられていることを特徴とする、請求項20のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
【請求項22】
前記点群データが、下記<E1>、<E2>、または<E3>のいずれかのリモートセンシング技術によるものであることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
<E1> UAV(Unmanned Aerial Vehicle、ドローン)搭載型レーザースキャナによる計測技術(以下「UAVレーザー」という)による取得
<E2> UAVレーザー、および地上レーザースキャナによる計測技術(以下「地上レーザー」という)による取得
<E3> UAVを用いたSfM多視点ステレオ写真からの作成、および地上レーザーによる取得
【請求項23】
本森林資源情報生成構造は装置の形態をとる、すなわち森林資源情報生成装置であることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
【請求項24】
本森林資源情報生成構造は前記点群データを取得するためのデータ取得部を備えたシステムの形態をとる、すなわち森林資源情報生成システムであることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
【請求項25】
本森林資源情報生成構造はコンピュータプログラムの形態をとる、すなわち森林資源情報生成プログラムであり、本森林資源情報生成プログラムを構成する各処理部は森林資源情報を生成するための手順であり、コンピュータに該各手順を実行させることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
【請求項26】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25のいずれかに記載の森林資源情報生成構造により森林資源情報を生成する方法であって、該森林資源情報生成構造を構成する各処理部を同時に作用させる、または適宜の順序により作用させることを特徴とする、森林資源情報生成方法。
【請求項27】
前記胸高直径算定処理部にて生成された胸高直径情報の信頼性を評価するための胸高直径信頼性付加処理部(信頼性付加処理部)が前記森林資源情報生成構造に備えられ、該信頼性付加処理部では2次元形態の前記胸高周辺情報と前記胸高直径算定処理部にて生成された胸高直径情報との比較により特定されるところの該胸高直径情報の信頼性有無を評価する信頼性情報が該胸高直径情報に付加される場合において、該比較は目視によりなされることを特徴とする、請求項26に記載の森林資源情報生成方法。
【請求項28】
前記目視によりなされた比較に基づきノイズと判断された点群中のデータを除去するノイズ除去過程が設けられ,ノイズ除去されたデータ群に基づいて再度樹幹検出処理の過程がなされることを特徴とする、請求項27に記載の森林資源情報生成方法。
【請求項29】
前記点群データは、対地高度40m以上100m以下でUAVを飛行させることにより取得されることを特徴とする、請求項26、27、28のいずれかに記載の森林資源情報生成方法。
【請求項30】
前記点群データは、照射角度±60°以下のUAVレーザーにより取得されることを特徴とする、請求項26、27、28、29のいずれかに記載の森林資源情報生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は森林資源情報生成構造、および森林資源情報生成方法に係り、特に、UAV(Unmanned Aerial Vehicle、ドローン)搭載型レーザースキャナを用いて森林域における資源情報を把握する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、上空から調査対象となる森林域にレーザー光を照射することによって得られたレーザー計測データに基づいて、樹木単位で森林資源情報を算定することが行われている。森林資源情報として重要な材積を求める場合、各樹木の樹高と胸高直径の2変数材積式から求めるのが一般的である。しかし従来、胸高直径については航空機からのレーザー計測データでは計測することができない。そこで、地上調査等により得られる実測データに基づいて、胸高直径の推定が行われている。
【0003】
森林資源情報の算定・把握技術についてはこれまで、技術的な提案も多数なされている。たとえば後掲特許文献1には、森林の高分解能の衛星写真画像から樹冠形状を検出し、その樹冠の樹種を正確に判定する森林樹冠評価方法およびプログラムとして、 森林を上空から撮影した画像データの輝度値の空間変化について、樹冠の境界部分の輝度値変化を実質的に変更せずに峰と谷の部分を平坦にする平坦化処理を行い、平坦化された画像データの輝度値の空間変化に対して領域分割処理を行って樹冠の形状を求め、さらに、樹冠の画像データのテクスチャ特徴量を求めてこれを既知の樹種の樹冠画像データによる基準テクスチャ特徴量と比較して樹冠の樹種を判定するという方式が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、高精度な樹木情報を少ない労力で取得できる樹木情報計測方法として、距離データ取得手段が複数の地点で被計測物の任意の部位までの距離データを計測するステップ、特徴データ抽出手段が距離データから樹木の幹に相当するひとまとまりの特徴データを抽出するステップ、マッチング手段が複数地点の距離データをスキャンマッチングにより対応させて三次元の座標系に特定するステップ、単木抽出手段が三次元の座標系に特定された座標点データから単木を抽出するステップ、および樹木情報検出手段が樹高・幹の直径・樹冠長等の樹木情報を単木毎に検出するステップからなる方法が開示されている。なおスキャンマッチングとは、相互に異なるデータセット同士における重畳性の検出(ずれの検出)を行うことにより、両者間における置換・代替等の処理に供する手法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-285310号公報「森林の樹冠の評価方法及びその樹冠評価プログラム」
【特許文献2】特開2010-96752号公報「樹木情報計測方法、樹木情報計測装置、プログラム」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り従来は、森林資源情報として重要な材積を求める際に必要な胸高直径については、航空機からのレーザー計測データでは計測することができないため、地上調査等により得られる実測データに基づいて推定する必要があった。
【0007】
しかし、地上調査等による実測データの収集には多大な時間と労力を要する。このような過程を要することなく、より効率的に森林資源情報を得ることの可能な技術が求められている。
【0008】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点を踏まえ、地上調査等の実測データ収集過程を要することなしに胸高直径を直接計測することによって、森林資源情報をより効率的に把握することのできる、森林資源情報生成構造、および森林資源情報生成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は上記課題について鋭意研究を進めた結果、一定の成果を得た。すなわち、UAV搭載型レーザースキャナなどを用いて、樹幹形状が捕捉可能な標高や角度を検討し、得られた3次元点群データから樹木の頂点を抽出し、樹木頂点を中心とした一定の範囲内で樹幹の胸高周辺の点群を取得することができ、点群の平面的な分布形状から胸高直径を計測することができた。そして、精度よく胸高直径が計測できた一部の個体のデータを用いて推定式を作成することにより、林分全体の森林資源情報を効率的に算定することができ、かかる研究成果に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0010】
〔1〕 リモートセンシング技術により取得された森林資源の点群データを用いて森林資源情報を生成する構造であって、樹頂点情報を得るための樹頂点検出処理部、および胸高直径情報を得るための胸高直径算定処理部を備えており、さらに、点群データから得られる地形高度情報および該樹頂点情報によって胸高周辺情報を得るための樹幹検出処理部を備えており、該胸高周辺情報が該胸高直径算定処理部において処理されて該胸高直径情報が生成されることを特徴とする、森林資源情報生成構造。
〔2〕 前記樹幹検出処理部では、前記樹頂点情報を中心とした検出範囲が設定され、該検出範囲において、前記地形高度情報を反映した胸高周辺の点群が胸高周辺情報として取得されることを特徴とする、〔1〕に記載の森林資源情報生成構造。
〔3〕 前記の胸高直径算定処理部では、取得された前記胸高周辺情報からZ座標を除いた略円弧状または略円形状の2次元分布が作成され、該2次元分布の半径を所定方法によって算出することにより前記胸高直径情報が生成されることを特徴とする、〔2〕に記載の森林資源情報生成構造。
〔4〕 前記所定方法による算出とは弦の性質および三平方の定理による算出であることを特徴とする、〔3〕に記載の森林資源情報生成構造。
〔5〕 前記樹頂点検出処理部では、同一形状およびサイズの検出範囲単位(以下「メッシュ」という)が連続的に設けられた平面構造(以下「メッシュ構造」という)を用いて点群データから樹頂点情報を得るが、各メッシュにおいて下記<A1>、<A2>の反復により収束した最高点データを樹頂点情報とする処理が行われることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
<A1> 該メッシュ中でZ座標が最大である最高点データを抽出する。
<A2> 最高点データのX,Y各座標を中心として、該メッシュと同一サイズの検出範囲を再設定する。
【0011】
〔6〕 前記樹頂点検出処理部では、前記各メッシュの樹頂点情報について、周辺に存在するよりZ座標の小さいデータを、樹冠径の推測値(以下「推測樹冠径」という)に基づく所定基準によって除去する処理が行われることを特徴とする、〔5〕に記載の森林資源情報生成構造。
〔7〕 前記所定基準は下記<B1>および<B2>であることを特徴とする、〔6〕に記載の森林資源情報生成構造。
<B1> 前記推測樹冠径内において、前記樹頂点情報よりZ座標が小さいデータは削除する。
<B2> 前記推測樹冠径×2の範囲内において、樹種から推測される頂点角内に存在するデータは削除する。
〔8〕 前記樹頂点検出処理部では、前記<A1>、<A2>の反復中において、前記検出範囲再設定前後の最高点データ間にZ座標が極小値をとるデータ(以下「谷間」という)が存在する場合、当該再設定済みの検出範囲を該谷間によって区切る処理が行われることを特徴とする、〔5〕、〔6〕、〔7〕のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
〔9〕 前記点群データ中の最下層のデータから前記地形高度情報を得、および、該地形高度情報ならびに前記樹頂点情報から樹高情報を得るための樹高算定処理部を備えていることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
〔10〕 前記樹高算定処理部では、前記樹頂点情報に近接する3点のデータから該樹頂点情報のX,Y各座標を内包するTIN(Triangulated Irregular Network)を作成してこれにより前記地形高度情報が得られ、該樹頂点情報のZ座標からの該地形高度情報の減算により前記樹高情報が生成されることを特徴とする、〔9〕に記載の森林資源情報生成構造。
【0012】
〔11〕 前記胸高直径算定処理部にて生成された胸高直径情報の信頼性を評価するための胸高直径信頼性付加処理部(以下、単に「信頼性付加処理部」という)が備えられており、該信頼性付加処理部では、2次元形態の前記胸高周辺情報と前記胸高直径算定処理部にて生成された胸高直径情報との比較により特定されるところの、該胸高直径情報の信頼性有無を評価する信頼性情報が、該胸高直径情報に付加されることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕、〔9〕、〔10〕のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
〔12〕 樹冠投影面積情報その他の樹冠情報を得るための樹冠情報算定処理部が備えられており、該樹冠情報算定処理部では、前記樹頂点を中心とする樹冠の特定に用いるためのデータ群(以下「樹冠検出対象データ群」という)を点群データから取出し、これを所定角度で分割して周方向への分画(以下「角度分画」という)とし、各角度分画における該樹冠の最外縁と推測される点(以下「端点」という)を特定し、各端点を結ぶことで該樹冠の外周とする処理が行われることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕、〔9〕、〔10〕、〔11〕のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
〔13〕 前記樹冠情報算定処理部では、前記角度分画を所定解像度で遠心方向に分割して径方向への分画(以下「解像度小分画」という)とし、各解像度小分画中にて特定される最高点データを結ぶことで該樹冠の側面輪郭の概略図形を描出し、該図形を形成する線分の傾きの大きさに基づいて前記端点を特定する処理が行われることを特徴とする、〔12〕に記載の森林資源情報生成構造。
〔14〕 前記端点の特定が、下記<C1>~<C3>のいずれかによりなされることを特徴とする、〔13〕に記載の森林資源情報生成構造。
<C1> 前記傾きが、平坦を示す所定角度よりも所定回数連続して小さい場合、その直前の点を端点とする。
<C2> 前記傾きの正負が、所定回数連続して反転している場合、その直前の点を端点とする。
<C3> 前記解像度小分画中に点が存在しない場合、検出された最後の点を端点とする。
【0013】
〔15〕 前記樹冠検出対象データ群中に処理対象の樹頂点(以下「本樹頂点」という)の他に樹頂点(以下「他樹頂点」という)が存在する場合は、両樹頂点の樹高に対応して両樹冠の境界を決める処理が行われることを特徴とする、〔12〕、〔13〕、〔14〕のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
〔16〕 前記端点における前記樹頂点からの水平距離(以下「端点距離」という)を用いて前記樹冠を特定するための該端点を補正する処理が行われるが、該補正は、補正対象端点の端点距離を、その両隣計2点に係る端点距離に基づいて増減する修正であることを特徴とする、〔12〕、〔13〕、〔14〕、〔15〕のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
〔17〕 前記胸高直径情報に基づき材積情報を算定するための材積算定処理部を備えていることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕、〔9〕、〔10〕、〔11〕、〔12〕、〔13〕、〔14〕、〔15〕、〔16〕のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
〔18〕 前記胸高直径情報の信頼性を評価するために下記<D1>がなされる胸高直径信頼性付加処理部(信頼性付加処理部)が備えられているとともに、該信頼性がない、または低い胸高直径情報については、本森林資源情報生成構造において生成された情報(以下「生成森林資源情報」という)に基づき胸高直径を推定して推定胸高直径情報を生成するための胸高直径推定処理部が備えられていることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕、〔9〕、〔10〕、〔11〕、〔12〕、〔13〕、〔14〕、〔15〕、〔16〕、〔17〕のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
<D1> 2次元形態の前記胸高周辺情報と前記胸高直径算定処理部にて生成された胸高直径情報との比較により特定されるところの、該胸高直径情報の信頼性有無を評価する信頼性情報の、該胸高直径情報への付加
〔19〕 前記胸高直径情報または前記推定胸高直径情報に基づき材積情報を算定するための材積算定処理部が備えられていることを特徴とする、〔18〕に記載の森林資源情報生成構造。
【0014】
〔20〕 前記胸高直径推定処理部での処理は前記生成森林資源情報が包含される情報セット(以下「推定式作成用単木データセット」という)を用いて行われ、該推定式作成用単木データセットにおいては、対象林分を覆うボロノイ図がクラスタリング処理されて生成するクラスター番号が該単木データに空間結合されており、該ボロノイ図を作成するボロノイ図作成処理部、および該クラスタリング処理を行うクラスタリング処理部が備えられていることを特徴とする、〔18〕、〔19〕のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
〔21〕 前記ボロノイ図のレイヤには、前記点群データにより得られる数値地形モデル(Digital Terrain Model、以下「DTM」という)から作成される傾斜および曲率の情報が含まれ、これら傾斜および曲率を算定するための傾斜等算定処理部が備えられていることを特徴とする、〔20〕のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
〔22〕 前記点群データが、下記<E1>、<E2>、または<E3>のいずれかのリモートセンシング技術によるものであることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕、〔9〕、〔10〕、〔11〕、〔12〕、〔13〕、〔14〕、〔15〕、〔16〕、〔17〕、〔18〕、〔19〕、〔20〕、〔21〕のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
<E1> UAV(Unmanned Aerial Vehicle、ドローン)搭載型レーザースキャナによる計測技術(以下「UAVレーザー」という)による取得
<E2> UAVレーザー、および地上レーザースキャナによる計測技術(以下「地上レーザー」という)による取得
<E3> UAVを用いたSfM多視点ステレオ写真からの作成、および地上レーザーによる取得
〔23〕 本森林資源情報生成構造は装置の形態をとることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕、〔9〕、〔10〕、〔11〕、〔12〕、〔13〕、〔14〕、〔15〕、〔16〕、〔17〕、〔18〕、〔19〕、〔20〕、〔21〕、〔22〕のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
【0015】
〔24〕 本森林資源情報生成構造は前記点群データを取得するためのデータ取得部を備えたシステムの形態をとる、すなわち森林資源情報生成システムであることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕、〔9〕、〔10〕、〔11〕、〔12〕、〔13〕、〔14〕、〔15〕、〔16〕、〔17〕、〔18〕、〔19〕、〔20〕、〔21〕、〔22〕のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
〔25〕 本森林資源情報生成構造はコンピュータプログラムの形態をとる、すなわち森林資源情報生成プログラムであり、本森林資源情報生成プログラムを構成する各処理部は森林資源情報を生成するための手順であり、コンピュータに該各手順を実行させることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕、〔9〕、〔10〕、〔11〕、〔12〕、〔13〕、〔14〕、〔15〕、〔16〕、〔17〕、〔18〕、〔19〕、〔20〕、〔21〕、〔22〕のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
〔26〕 〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕、〔9〕、〔10〕、〔11〕、〔12〕、〔13〕、〔14〕、〔15〕、〔16〕、〔17〕、〔18〕、〔19〕、〔20〕、〔21〕、〔22〕、〔23〕、〔24〕、〔25〕のいずれかに記載の森林資源情報生成構造により森林資源情報を生成する方法であって、該森林資源情報生成構造を構成する各処理部を同時に作用させる、または適宜の順序により作用させることを特徴とする、森林資源情報生成方法。
【0016】
〔27〕 前記胸高直径算定処理部にて生成された胸高直径情報の信頼性を評価するための胸高直径信頼性付加処理部(信頼性付加処理部)が前記森林資源情報生成構造に備えられ、該信頼性付加処理部では2次元形態の前記胸高周辺情報と前記胸高直径算定処理部にて生成された胸高直径情報との比較により特定されるところの該胸高直径情報の信頼性有無を評価する信頼性情報が該胸高直径情報に付加される場合において、該比較は目視によりなされることを特徴とする、〔26〕に記載の森林資源情報生成方法。
〔28〕 前記目視によりなされた比較に基づきノイズと判断された点群中のデータを除去するノイズ除去過程が設けられ,ノイズ除去されたデータ群に基づいて再度樹幹検出処理の過程がなされることを特徴とする、〔27〕に記載の森林資源情報生成方法。
〔29〕 前記点群データは、対地高度40m以上100m以下でUAVを飛行させることにより取得されることを特徴とする、〔26〕、〔27〕、〔28〕のいずれかに記載の森林資源情報生成方法。
〔30〕 前記点群データは、照射角度±60°以下のUAVレーザーにより取得されることを特徴とする、〔26〕、〔27〕、〔28〕、〔29〕のいずれかに記載の森林資源情報生成方法。
【0017】
従来行われてきた航空機からのレーザー計測では、樹幹を直接計測することはできなかった。しかし、UAV搭載型レーザースキャナを所定の対地高度で飛行させ、所定の照射角度範囲のデータを使用することによって、樹幹を捕捉することができた。そして、得られた樹幹の点群からZ座標を削除し、2次元の円形もしくは円弧状の分布を作成することで、胸高周辺の直径を計測できた。さらに、胸高直径が精度よく計測できた個体のデータをもとに、胸高直径の推定式を一般化線形混合モデルなどにより作成することで、林分全体の胸高直径が推定することができた。本発明は、かかる研究過程を経て完成したものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の森林資源情報生成構造、および森林資源情報生成方法は上述のように構成されるため、これらによれば、地上調査等の実測データ収集過程を要することなしに、樹幹・胸高直径を直接計測することができる。そして、精度よく計測された個体のデータを元に推定式を作成することで、林分全体の胸高直径を効率的に、かつ正確に把握することができる。
【0019】
また、本発明の森林資源情報生成構造、および森林資源情報生成方法によれば、実測データ収集過程を要することなしに得られた一式の点群データを元にして、重要な情報である材積算定に必要な胸高直径を含むさまざまな森林資源情報を、単木データとして、さらに林分全体の情報として、従来よりも効率的に、かつ高精度に、生成、取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明森林資源情報生成構造の基本構成を概念的に示す説明図である。
【
図2】
図1に示す森林資源情報生成構造の作用を示す説明図である。
【
図3】樹高算定処理部を備えた本発明森林資源情報生成構造の構成を概念的に示す説明図である。
【
図4】
図3に示す森林資源情報生成構造の作用を示す説明図である。
【
図5】信頼性付加処理部を備えた本発明森林資源情報生成構造の構成を概念的に示す説明図である。
【
図6】
図5に示す森林資源情報生成構造の作用を示す説明図である。
【
図7】樹冠情報算定処理部を備えた本発明森林資源情報生成構造の構成を概念的に示す説明図である。
【
図8】
図7に示す森林資源情報生成構造の作用を示す説明図である。
【
図9】
図1~8に示した各処理部を備えた本発明森林資源情報生成構造の構成を概念的に示す説明図である。
【
図10】材積算定処理部を備えた本発明森林資源情報生成構造の構成を概念的に示す説明図である。
【
図11】
図10に示す森林資源情報生成構造の作用を示す説明図である。
【
図12】胸高直径推定処理部を備えた本発明森林資源情報生成構造の構成を概念的に示す説明図である。
【
図13】
図12に示す森林資源情報生成構造の作用を示す説明図である。
【
図14】本発明森林資源情報生成構造の胸高直径推定処理部の構成例を概念的に示す説明図である。
【
図15】
図14に示す胸高直径推定処理部およびその前後の構成における作用を示す説明図である(推定式作成用単木データセットを得るまでの作用)。
【
図16】
図14に示す胸高直径推定処理部およびその前後の構成における作用を示す説明図である推定式作成用単木データセットを得た後の作用)。
【
図17】構成要素(各処理部)を全て備えた本発明森林資源情報生成構造の構成を概念的に示す説明図である。
【
図18】
図17に示す構成に加えてデータ取得部をも備えた本発明森林資源情報生成構造の構成を概念的に示す説明図である。
【
図19】構成要素(各処理部)を全て備えた本発明森林資源情報生成構造を用いた森林資源情報生成方法を示す説明図である。 (以下は実施例に係る図面である。)
【
図20】本実施例森林資源情報算定方法のフロー図である。
【
図21】<処理内容詳細1:樹頂点検出> メッシュと過少検出範囲での最高点検出方法を示す説明図。
【
図22】<処理内容詳細1:樹頂点検出>
図21の方法に基づく実際の検出結果例を示す説明図。
【
図23】<処理内容詳細1:樹頂点検出> 最高点までの間に谷間がある場合の検出範囲の変更方法を示す説明図。
【
図24】<処理内容詳細1:樹頂点検出>
図23の方法に基づく実際の検出結果例を示す説明図。
【
図25】<処理内容詳細1:樹頂点検出> 近接点および頂点角による削除方法を示す説明図。
【
図26】<処理内容詳細1:樹頂点検出>
図25の方法に基づく実際の検出結果例を示す説明図。
【
図27】<処理内容詳細2:樹高検出> 地形部近接3点の取得方法を示す説明図。
【
図28】<処理内容詳細2:樹高検出>
図27の方法に基づく実際の検出結果例を示す説明図。
【
図29】<処理内容詳細2:樹高検出> 地形高度の算出および樹高の算出方法を示す説明図。
【
図30】<処理内容詳細3:樹幹検出、および胸高直径算定> 取得した森林点群データと樹頂点検出位置を示す画像。
【
図31】<処理内容詳細3:樹幹検出、および胸高直径算定> 胸高周辺の点群を地形を反映して取得する方法を示す説明図。
【
図32】<処理内容詳細3:樹幹検出、および胸高直径算定> 地形点群データと胸高周辺樹幹検出結果を示す画像。
【
図33】<処理内容詳細3:樹幹検出、および胸高直径算定> 樹径(胸高直径)の算出方法を示す説明図。
【
図34】<処理内容詳細4:胸高直径信頼性付加、およびノイズ除去> 処理用データの表示状態を示す説明図。
【
図35】<処理内容詳細5:樹冠情報算定(樹冠検出)> 樹冠検出範囲の特定方法を示す説明図。視点は真上である。
【
図36】<処理内容詳細5:樹冠情報算定(樹冠検出)> 解像度毎の最高点、および端点の検出方法を示す説明図。視点は真横である。
【
図37】<処理内容詳細5:樹冠情報算定(樹冠検出)> 突出点の補正、極端な凹みの除去
【
図38】<処理内容詳細6:胸高直径推定> ボロノイ図(白線)の例。
【
図39】<処理内容詳細6:胸高直径推定> ボロノイ図のクラスタリング結果例の画像。
【
図40】<処理内容詳細6:胸高直径推定> 半径5m内の立木本数の計測結果を示す画像。
【
図41】<処理内容詳細6:胸高直径推定> 単木データ項目の一覧例。
【
図42】<追記1 ボロノイ図のクラスタリングの実際例> 階層クラスタリングの樹形図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。なお、各図により本発明の種々の形態が説明されるが、各形態で共通する機能を有する要素には、原則として同一の符号を付す。また、各図においては、構成も作用もその要部のみを示す場合がある。
図1は、本発明森林資源情報生成構造の基本構成を概念的に示す説明図である。また
図2は、
図1に示す森林資源情報生成構造の作用を示す説明図である。これらに図示するように本森林資源情報生成構造100は、リモートセンシング技術により取得された森林資源の点群データD00を用いて森林資源情報を生成する構造であって、樹頂点情報D10を得るための樹頂点検出処理部10、および胸高直径情報D35を得るための胸高直径算定処理部35を備えており、さらに、点群データD00から所定の過程を経て得られる地形高度情報D20(
図3、4により後述)および樹頂点情報D10によって胸高周辺情報D30を得るための樹幹検出処理部30を備えており、胸高周辺情報D30が胸高直径算定処理部35において処理されて胸高直径情報D35が生成される構造であることを、基本的な構成とする。
【0022】
かかる構成の本森林資源情報生成構造100では、リモートセンシング技術によって取得された森林資源の点群データD00が用いられ、樹頂点検出処理部10における処理により樹頂点情報D10が得られ、樹幹検出処理部30における処理により点群データ、後出の地形高度情報D20、および樹頂点情報D10に基づき胸高周辺情報D30が得られ、そして胸高直径算定処理部35における処理により胸高周辺情報D30が処理されて、重要な森林資源情報であるところの胸高直径情報D35が生成される。追って説明するあらゆる形態の本発明森林資源情報生成構造100において、かかる重要な胸高直径情報D35を生成できる構成こそが基礎である。
【0023】
なお、本発明において点群データD00は、
<E1> UAV(Unmanned Aerial Vehicle、ドローン)搭載型レーザースキャナによる計測技術(UAVレーザー)による取得
<E2> UAVレーザー、および地上レーザースキャナによる計測技術(地上レーザー)による取得
<E3> UAVを用いたSfM多視点ステレオ写真からの作成、および地上レーザーによる取得
のいずれかによって取得することができる。したがって、従来のように地上調査等の実測データ収集を行う必要がない。なお、UAVレーザー単独による<E1>は、計測コストが低く、高効率である。UAVレーザーと地上レーザーを併用する<E2>は、計測コストは高いが、得られる樹幹の精度が高く、また点群の合成が容易であるという利点がある。またSfM写真と地上レーザーを併用する<E3>も本発明の点群データD00取得に使用できるが、樹頂点の点群取得および計測効率の点では、<E1>または<E2>の方法が望ましい。また、SfM写真のみでは樹幹の点群が得られず、地上レーザーのみでは樹頂点の点群を得ることが困難で計測効率が低いため、点群データD00取得には不利ないしは不可能である。
【0024】
また、本発明森林資源情報生成構造100の具体的な形態は、ハードウェアとしての形態、すなわち装置であっても、またソフトウェア的な形態、すなわちコンピュータプログラムであってもよい。つまり、本発明森林資源情報生成構造100を構成する各要素・各機能を備えたものである限り、その形態はハードウェアでもソフトウェアでもよい。このことについてはさらに後述する。
【0025】
本発明森林資源情報生成構造100は、樹幹検出処理部30において、樹頂点情報D10を中心とした検出範囲が設定されて、その検出範囲において、点群データD00から、後述する地形高度情報D20を反映した胸高周辺の点群が胸高周辺情報D30として取得される構成とすることができる。
【0026】
また、胸高直径算定処理部35では、取得された胸高周辺情報D30からZ座標を除いた略円弧状または略円形状の2次元分布が作成され、この2次元分布の半径を所定の方法によって算出することにより、胸高直径情報D35が生成される構成とすることができる。ここで、所定方法による算出とは幾何学的方法であり、具体的には、弦の性質および三平方の定理による算出方法を用いることができるが、追って実施例(図では、
図31、
図33)にて記述する。
【0027】
また、樹頂点検出処理部10では、同一形状およびサイズの検出範囲単位(メッシュ)が連続的に設けられた平面構造であるところのメッシュ構造を用いて、点群データD00から樹頂点情報D10を得ることができる。そして各メッシュにおいて、
<A1> メッシュ中でZ座標が最大である最高点データを抽出する
<A2> 最高点データのX,Y各座標を中心として、メッシュと同一サイズの検出範囲を再設定する
の各手順を、<A1>、<A2>、<A1>、・・・というように反復することによって、最高点データを収束させていき、データに変化が生じなくなった時点、すなわち収束した時点で、当該収束した最高点データを樹頂点情報D10とする処理が、樹頂点検出処理部10にて行われる構成とすることができる。これも追って実施例(図では、
図21、
図22)にて詳述する。
【0028】
本発明森林資源情報生成構造100の樹頂点検出処理部10では、各メッシュの樹頂点情報10の周辺に存在しているよりZ座標の小さいデータを、樹冠径の推測値(推測樹冠径)に基づく所定基準によって除去する処理が行われる構成とすることができる。これによって、生成される森林資源情報の精度をより高めることができる。具体的な基準としては、
<B1> 推測樹冠径内において、樹頂点情報10よりZ座標が小さいデータは削除する
<B2> 推測樹冠径×2の範囲内において、樹種から推測される頂点角内に存在するデータは削除する
という各基準を設けて処理する構成とすることができるが、追って実施例(図では、
図25、
図26)にて詳述する。
【0029】
また、本発明森林資源情報生成構造100の樹頂点検出処理部10では、上記<A1>、<A2>、・・・の反復中において、検出範囲再設定前後の二つの最高点データ間に、いわばV字形にZ座標が極小値をとるデータ(谷間)が存在する場合、当該再設定済みの検出範囲を谷間によって区切る処理を行う構成とすることができる。つまり、先の最高点データから傾斜をもって谷間(極小値)へ向かい、谷間より先の逆勾配の傾斜をもって再設定後の最高点データへと向かうが、後の方の最高点データを中心とする領域は別の単木に係るものであると推定できるからである。本構成も追って実施例(図では、
図23、
図24)にて詳述する。
【0030】
図3は、樹高算定処理部を備えた本発明森林資源情報生成構造の構成を概念的に示す説明図である。また
図4は、
図3に示す森林資源情報生成構造の作用を示す説明図である。これらに図示するように本森林資源情報生成構造100は、上述した構成に加えて、点群データD00中の最下層のデータから前記地形高度情報D20を得、および、地形高度情報D20ならびに前記樹頂点情報D10から樹高情報D25を得るための樹高算定処理部20を備えていることを、特徴的な構成とする。
【0031】
かかる構成を備えることにより、図示する本森林資源情報生成構造100では、樹高算定処理部20において、点群データD00中の最下層のデータから地形高度情報D20を得る処理がなされ、さらに地形高度情報D20、および樹頂点検出処理部10により検出された樹頂点情報D10から、樹高情報D25を生成する処理がなされる。
【0032】
樹高算定処理部20における処理は、樹頂点情報D10に近接する3点のデータから該樹頂点情報のX,Y各座標を内包するTIN(Triangulated Irregular Network)を作成して、これにより地形高度情報D20が得られ、樹頂点情報D10のZ座標から地形高度情報D20を減算することによって樹高情報D25が生成される構成とすることができる。すなわち、
樹頂点情報D10-地形高度情報D20=樹高情報D25
によって、材積算定に必要な森林資源情報であるところの樹高情報D25が生成される。本構成森林資源情報生成構造100についても、追って実施例(図では、
図27、
図28、
図29)にて詳述する。
【0033】
図5は、信頼性付加処理部を備えた本発明森林資源情報生成構造の構成を概念的に示す説明図である。また
図6は、
図5に示す森林資源情報生成構造の作用を示す説明図である。これらに図示するように本森林資源情報生成構造100は、既述のいずれかの構成に加えて、胸高直径算定処理部35にて生成された胸高直径情報D35の信頼性を評価するための胸高直径信頼性付加処理部(信頼性付加処理部)40が備えられており、信頼性付加処理部40では、2次元形態の前記胸高周辺情報D30と、胸高直径算定処理部35にて生成された胸高直径情報D35との比較により特定されるところの、胸高直径情報の信頼性有無を評価する信頼性情報D40が、胸高直径情報D35に付加されることを、特徴的な構成とする。
【0034】
かかる構成を備えることにより、図示する本森林資源情報生成構造100では、信頼性付加処理部40において、2次元形態の前記胸高周辺情報D30と、胸高直径算定処理部35にて生成された胸高直径情報D35との比較によって特定される所定の信頼性情報D40が、胸高直径情報D35に付加される。この信頼性情報D40は、胸高直径算定処理部35にて生成された胸高直径情報D35がどの程度の信頼性を有するかの評価に係る情報である。たとえば、信頼性が高い場合は「2」、低い場合は「1」、信頼性が認められない場合は「0」などと数値化し、以後の処理の基礎とすることができるが、これも追って実施例(図では、
図34)にて詳述する。
【0035】
図7は、樹冠情報算定処理部を備えた本発明森林資源情報生成構造の構成を概念的に示す説明図である。また
図8は、
図7に示す森林資源情報生成構造の作用を示す説明図である。これらに図示するように本森林資源情報生成構造100は、既述のいずれかの構成に加えて、樹冠投影面積情報D51その他の樹冠情報を得るための樹冠情報算定処理部50が備えられており、樹冠情報算定処理部50では、樹頂点を中心とする樹冠の特定に用いるためのデータ群(樹冠検出対象データ群)を点群データD00から取出し、これを所定角度で分割して周方向への分画(角度分画)とし、各角度分画における樹冠の最外縁と推測される点(端点)を特定し、各端点を結ぶことで該樹冠の外周とする処理が行われることを、特徴的な構成とする。
【0036】
かかる構成を備えることにより、図示する本森林資源情報生成構造100では、樹冠情報算定処理部50において、樹頂点を中心とする樹冠の特定に用いるための樹冠検出対象データ群を点群データD00から取出し、取り出した樹冠検出対象データ群を所定角度で分割して周方向へ分画することにより角度分画を形成し、形成された各角度分画において樹冠の最外縁と推測される端点を特定し、各角度分画において特定された各端点を線で結ぶことによって当該樹冠の外周とする、という処理が行われる。かかる処理に基づいて、樹冠投影面積情報D51、樹冠直径情報D52、樹冠長情報D53、樹冠長率情報D54といった樹冠情報が生成される。
【0037】
樹冠情報算定処理部50では、角度分画を所定解像度で遠心方向に分割して径方向への分画(解像度小分画)とし、各解像度小分画中にて特定される最高点データを線で結ぶことによって樹冠の側面輪郭の概略図形を描出し、当該概略図形を形成する線分の傾きの大きさに基づいて端点を特定する処理が行われる構成とすることができる。
【0038】
ここで、角度分画と解像度小分画との関係を説明する。たとえば、中心が樹頂点と擬されるバウムクーヘンを想定し、これを周方向に所定角度で切り分けた各カット分(以下、「カットバウム」)が角度分画であり、角度分画と擬されるカットバウムにおける切断面の年輪様の筋によって区画される1区画が解像度小分画と擬することができる。すなわち、角度分画は樹冠の水平構造を周方向に分画した区画、解像度小分画は樹冠の垂直構造を遠心方向に分画した区画である。
【0039】
かかる構成を備えることにより、図示する本森林資源情報生成構造100では、樹冠情報算定処理部50における処理によって、角度分画が所定解像度で遠心方向に分割されて解像度小分画が形成され、各解像度小分画中にて特定される最高点データが線で結ばれることによって樹冠の側面輪郭の概略図形が描出され、当該概略図形を形成する線分の傾きの大きさに基づいて端点が特定される。
【0040】
各解像度小分画における端点の特定は、
<C1> 上記概略図形を形成する線分の傾きが、たとえば0°などの平坦を示す所定角度よりも所定回数連続して小さい場合、その直前の点を端点とする
<C2> 当該傾きの正負が所定回数連続して反転している場合に、その直前の点を端点とする
または、
<C3> 解像度小分画中に点が存在しない場合は、検出された最後の点、つまり直前の解像度小分画において最後に検出された点を端点とする
といった基準のいずれか、または複数を併せ用いて行うことができる。
【0041】
本森林資源情報生成構造100の樹冠情報算定処理部50はまた、樹冠検出対象データ群中に処理対象の樹頂点(本樹頂点)の他に樹頂点(他樹頂点)が存在する場合において、両樹頂点の樹高に対応して両樹冠の境界を決める処理が行われる構成とすることもできる。すなわち、本樹頂点に係る本樹冠と他樹頂点に係る他樹冠との境界は、たとえば両者の樹高を変数とした一定の算定式を用いて算定するものとすることができる。
【0042】
上述したように本森林資源情報生成構造100の樹冠情報算定処理部50では、各解像度小分画の端点により樹冠が特定されるが、各端点による樹冠形成の補正処理も可能な構成とすることができる。つまり、単純に各端点を線で結んでいって描画される形状が、異常な凹凸をなすなど、予想される樹冠形状の範囲から逸脱するような場合には、何らかの補正のなされることが望ましいか、または必要であるが、そのような場合における補正を行う機能である。
【0043】
かかる補正処理は、樹冠形状を決める各端点のうちの一部を修正する処理とすることができる。すなわち、各解像度小分画において特定された端点を変更する処理である。具体的な補正処理では、樹頂点から端点までの水平距離(端点距離)を好適に用いることができ、たとえば、補正対象である端点の端点距離を、それを挟む(両隣にある)2つの端点の各端点距離に基づいて増減する修正方法をとることができる。以上説明した樹冠情報算定処理部50を備えた種々の構成の本構成森林資源情報生成構造100についても、追って実施例(図では、
図35、
図36、
図37)にて詳述する。
【0044】
図9は、
図1~8に示した各処理部を備えた本発明森林資源情報生成構造の構成を概念的に示す説明図である。点群データD00に基づき、樹頂点検出処理部10において樹頂点情報D10が得られる。これに基づいて樹高算定処理部20では地形高度情報D20および樹高情報D25が、樹幹検出処理部30では胸高周辺情報D30が、樹冠情報算定処理部50では樹冠投影面積情報D51等の樹冠情報が、それぞれ生成される。また、胸高周辺情報D30に基づいて、胸高直径算定処理部35では胸高直径情報D35が生成される。また、信頼性付加処理部40では所定の処理によって、胸高直径情報D35にその信頼性を示す信頼性情報D40が付加される。
【0045】
図10は、材積算定処理部を備えた本発明森林資源情報生成構造の構成を概念的に示す説明図である。また
図11は、
図10に示す森林資源情報生成構造の作用を示す説明図である。これらに図示するように本森林資源情報生成構造100は、既述の構成に加えて、胸高直径情報D35に基づき材積情報D37を算定するための材積算定処理部37を備えていることを、特徴的な構成とする。なお、ここで既述の構成としては、本図に示した構成中の少なくとも樹頂点検出処理部10、樹高算定処理部20、樹幹検出処理部30、および胸高直径算定処理部35を備えた構成である。
【0046】
かかる構成を備えることにより、図示する本森林資源情報生成構造100では、材積算定処理部37において、胸高直径情報D35および樹高情報D25に基づいて材積情報D37が算定される。材積の具体的な算出方法は公知の方法により求めることができる。たとえば、
図11-2に示すスギ材積式(「林野庁計画課編「立木幹材積表(東日本編)」青森.岩手.宮城地方(日本林業調査会)、1970年)を用いての算定である。
【0047】
図12は、胸高直径推定処理部を備えた本発明森林資源情報生成構造の構成を概念的に示す説明図である。また
図13は、
図12に示す森林資源情報生成構造の作用を示す説明図である。これらに図示するように本森林資源情報生成構造100は、胸高直径情報の信頼性を評価に係る信頼性付加処理部40が備えられているとともに、信頼性がないか、または信頼性が低い胸高直径情報D35については、本森林資源情報生成構造100において生成された情報(生成森林資源情報)に基づき胸高直径を推定して推定胸高直径情報D46を生成するための胸高直径推定処理部46が備えられていることを、特徴的な構成とする。
【0048】
かかる構成を備えることにより、図示する本森林資源情報生成構造100では、信頼性付加処理部40による処理を経て信頼性がないか、または信頼性が低いと評価された胸高直径情報D35については、胸高直径推定処理部46において胸高直径推定処理がなされ、より信頼性・精度の高い胸高直径情報であるところの推定胸高直径情報D46が生成される。胸高直径推定処理には、樹高情報D25、胸高直径情報D35その他の生成森林資源情報が用いられる。本構成森林資源情報生成構造100についても、追って実施例(図では、
図38、
図39、
図40、
図41など)にて詳述する。
【0049】
なお、
図12に示した構成中の樹冠情報算定処理部50は、必須の構成要素ではないが、具備されていることが望ましい。より精度の高い胸高直径推定の可能性を確保するためには、使用可能な生成森林資源情報は多い方が有利だからである。
【0050】
また、
図12、13に示すように本森林資源情報生成構造100は、胸高直径情報D35または推定胸高直径情報D46に基づき材積情報D37を算定するための材積算定処理部37が備えられた構成とすることができる。少なくとも信頼性の低かった胸高直径情報D35については、胸高直径推定処理部46により得られる推定胸高直径情報D46が材積算定処理に用いられる。かかる構成により本森林資源情報生成構造100によれば、より精度の高い材積情報D37を生成することができる。
【0051】
図14は、本発明森林資源情報生成構造の胸高直径推定処理部の構成例を概念的に示す説明図である。図示するように胸高直径推定処理部65は、データセット・胸高直径推定処理部60の一部として構成されているものと把握することができる。また、データセット・胸高直径推定処理部60の後流側には材積算定処理部70を、材積算定処理部70の後流側には森林資源情報集計処理部80を、それぞれ設ける構成とすることができる。材積算定処理部70では、データセット・胸高直径推定処理部60で生成された推定胸高直径情報等により材積が算定され、また森林資源情報集計処理部80では、本森林資源情報生成構造100により生成された材積を初めとする生成森林資源情報が集計処理され、出力に供される。
【0052】
胸高直径推定処理部65における胸高直径推定処理は、生成森林資源情報が包含される情報セット(推定式作成用単木データセット 図示せず)を用いて行われる。また、推定式作成用単木データセットにおいては、対象林分を覆うボロノイ図がクラスタリング処理されて生成するクラスター番号が単木データに空間結合されているが、データセット・胸高直径推定処理部60には、胸高直径推定処理部65の前流側に、かかるボロノイ図を作成するボロノイ図作成処理部61、およびクラスタリング処理を行うクラスタリング処理部64が備えられているものとする。
【0053】
図示するようにデータセット・胸高直径推定処理部60にはボロノイ図作成処理部61の他に、立木本数算出処理部62、および傾斜・曲率等算定処理部(傾斜等算定処理部)63も備えることができる。各処理部により生成される情報、および、クラスタリング処理部64における対象林分を覆うボロノイ図のクラスタリング処理で生成するクラスター番号の空間結合、これらによって生成森林資源情報が補完され、推定式作成用単木データセットが揃えられ、胸高直径推定処理部65における処理に供される。
【0054】
なお、傾斜・曲率等算定処理部(傾斜等算定処理部)63について補足する。胸高直径推定処理部65での処理に供するためのボロノイ図のレイヤに含まれる傾斜・曲率等の地形に係る各情報は、点群データにより得られる数値地形モデル(DTM)から、傾斜・曲率等算定処理部(傾斜等算定処理部)63における処理において生成される。
【0055】
図15、16は、
図14に示す胸高直径推定処理部およびその前後の構成における作用を示す説明図である。このうち、前者は推定式作成用単木データセットを得るまで、後者は同データセットを得た後の作用を示す。すなわち、上述のデータセット・胸高直径推定処理部60のうち、胸高直径推定処理部65より前段階の作用(前流側の構成)は
図15に、胸高直径推定処理部65は
図16に示され、
図16にはさらにその後段階の作用(後流側の構成)が示されている。
【0056】
図15に示すように、点群データD00に基づいて生成された各生成森林資源情報、すなわち胸高直径情報D35、信頼性情報D40、樹高情報D25、樹冠投影面積情報D51等の樹幹情報からなる単木データセットD60は、立木本数算出処理部61およびボロノイ図作成処理部62に供される。立木本数算出処理部61での処理によって立木本数情報D61が生成される。立木本数情報D61は、樹高直径推定に用いる推定式を得る基礎とするための、推定式作成用単木データセットD6Xへと格納される。なお、立木本数情報D61は、各単木を中心として設定された任意の範囲内に含まれる立木本数の計測情報である。
【0057】
また、ボロノイ図作成処理部62では単木データを元にボロノイ
図G62が作成される。一方、点群データD00に基づいて数値地形モデル(DTM)が得られ、これが傾斜・曲率等算定処理部63に供されて傾斜および曲率レイヤが作成される。DTM、傾斜および曲率レイヤから、ボロノイ図の範囲内における標高、傾斜および曲率の平均値が算出されて、ボロノイ図レイヤL62に格納される。
【0058】
クラスタリング処理部64では、ボロノイ図レイヤL62に格納されているボロノイ
図G62の各要素(座標、立木密度、他)を用いて、階層クラスタリングによりボロノイ
図G62をクラスタリングし、各クラスターに任意のクラスター番号D64を付与する処理が行われる。そして、単木データにクラスター番号D64が空間結合され、推定式作成用単木データセットD6Xへと格納される。
【0059】
図16に示すように、推定式作成用単木データセットD6Xは胸高直径推定処理部65に供され、推定胸高直径情報D65が得られる。材積算定処理部70では、推定胸高直径情報D65を用いて材積算定処理がなされ、材積情報D70が生成される。森林資源情報集計処理部80により、本森林情報生成構造によって得られた各生成森林資源情報が集計処理され、森林資源情報一式D80として完成する。なお、
図14~16により説明した構成の森林資源情報生成構造についても、追って実施例(図では、
図38、
図39、
図40、
図41など)にて詳述する。
【0060】
図17は、これまで説明した各形態における構成要素(各処理部)を全て備えた本発明森林資源情報生成構造の構成を概念的に示す説明図である。図中、おおむね上段に示す基本的な森林資源情報を生成する機能部、および下段に示すかかる生成森林資源情報に基づき推定胸高直径情報を得ることを主とする機能部から、本森林資源情報生成構造100は構成されている。本森林資源情報生成構造100の全体は、コンピュータを用いた一式の装置として構成することが可能である。
【0061】
図18は、
図17に示す構成に加えてデータ取得部をも備えた本発明森林資源情報生成構造の構成を概念的に示す説明図である。本森林資源情報生成構造200は、
図17に示した森林資源情報生成構造100と同一構成の装置部150、およびデータ取得部00とから構成される。データ取得部00は、点群データD00を取得するためのUAV、UAV搭載型レーザースキャナ、地上レーザースキャナ等のデータ取得手段を示し、装置部150とは別体である。すなわち本森林資源情報生成構造200は、装置部150とデータ取得部00とによる森林資源情報生成システムであり、本構成も本発明の範囲内である。
【0062】
なお、
図1~17を用いて説明したいずれかの形態の本発明森林資源情報生成構造100は、コンピュータプログラムの形態をとること、すなわち森林資源情報生成プログラムとしてもよい。この場合、本森林資源情報生成構造100を構成する各処理部は森林資源情報を生成するための手順であり、本森林資源情報生成プログラムは、コンピュータに対して各手順を実行させるものであり、それによって所望の森林資源情報生成を得ることができる。森林資源情報生成プログラムが格納された電子情報媒体、または装置も、本発明の範囲内である。
【0063】
また、以上説明したいずれかの形態の本発明森林資源情報生成構造100等により森林資源情報を生成する方法であって、森林資源情報生成構造を構成する各処理部を同時に作用させるか、または適宜の順序により作用させて行う森林資源情報生成方法もまた、本発明の範囲内である。
【0064】
本発明森林資源情報生成方法においては、胸高直径算定処理部35にて生成された胸高直径情報D35の信頼性を評価するための信頼性付加処理部40が森林資源情報生成構造100に備えられており、信頼性付加処理部40では2次元形態の胸高周辺情報D30と胸高直径算定処理部35にて生成された胸高直径情報D35との比較により特定されるところの胸高直径情報信頼性有無を評価する信頼性情報D40が、胸高直径情報D35に付加される場合において、当該比較の過程は、本森林資源情報生成構造100使用者の目視判断によりなされるものとすることができる。
【0065】
ここで、使用者の目視判断によりなされた比較過程において、ノイズであると判断された点群中のデータについては、これを除去するためのノイズ除去過程を、本森林資源情報生成方法においては設けるものとすることができる。そして、ノイズ除去されたデータ群に基づいて、再度樹幹検出処理の過程をなすものとしてもよい。かかるノイズ除去過程、再樹幹検出処理過程を行うことで、得られる生成森林情報の精度を高めることができる。
【0066】
本発明森林資源情報生成方法はまた、点群データを取得する段階をも含むものとすることができる。この場合、点群データはUAVにより取得できるが、その際の対地高度を40m以上100m以下、望ましくは80m程度として飛行させることにしてもよい。また、その際のUAVレーザー照射角度は80°までとすることができるが、±60°以下がより望ましい。
【0067】
従来行われてきた航空機からのレーザー計測では、樹幹を直接計測することはできなかった。しかし、UAV搭載型レーザースキャナを一定範囲の対地高度で飛行させ、一定範囲の照射角度のデータを使用することで、良好に樹幹を捕捉することができる。
【0068】
既に述べたように、得られた樹幹の点群からZ座標を削除し、2次元の円形もしくは円弧状の分布を作成することで、胸高周辺の直径を計測できる。そして、胸高直径が精度よく計測できた個体のデータを元に、一般化線形混合モデルなどにより胸高直径の推定式を作成することで、林分全体の胸高直径を推定することができる。
なお、
図19は、以上説明した各形態における構成要素(各処理部)を全て備えた本発明森林資源情報生成構造を用いた森林資源情報生成方法を示す説明図である。
【実施例0069】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明がかかる実施例に限定されるものではない。本実施例は、装置形態の本森林資源情報生成構造、および当該装置を用いての森林資源情報生成方法を、「森林資源所法算定方法」として説明する。なお、「樹頂点情報」は「樹頂点」、「胸高直径情報」は「胸高直径」というように、得られる個々の情報について末尾の「情報」を原則として省略する。
【0070】
<<森林資源情報算定方法>>
図20は、本実施例森林資源情報算定方法のフロー図である。本フローに示す各処理については追って詳細に説明する。
<処理内容概要>
ドローンレーザーで取得した森林の点群データ、もしくはドローンを用いたSfM多視点ステレオ写真から作成した点群データ、および森林内の地上レーザーで取得した点群データから、樹頂点・樹高・樹径等の森林資源情報を検出する。
【0071】
<処理内容詳細1:樹頂点検出>
1.想定される樹冠径を用いたメッシュを作成し、各メッシュ内での最高点を取得する。
2.取得した最高点を中心とした、メッシュと同サイズの仮想検出範囲を設定し、その中から再度、最高点を取得する(
図21)。
3.新規に取得した最高点との間に谷間がある場合、検出範囲を谷間までに変更する(
図23)。なお、この処理はオプションとする。
4.上記2.以降の処理を収束する(最高点が変わらなくなる)まで繰り返す。
5.全てのメッシュに対して上記1.~4.の処理を行い、重複点を除去する。
6.検出した全ての最高点について、自身より低くかつ想定される樹冠径内に存在する点、および樹種から想定される頂点角内にありかつ想定される樹冠径×2以内にある点を除去する(
図25)。
【0072】
図22に、
図21で示した方法による実際の検出結果の例を示す。図中、濃いオレンジが高い点、青い点が最高点である。また、視点は真上である。ここでは図の中央のメッシュ内では最高点を検出せず、右隣のメッシュ内で最高点を検出している。これを収束させると、結局、右隣のメッシュ内の検出で同じ点を検出するため、一方は重複点として削除する。
【0073】
図24に、
図23で示した方法による実際の検出結果の例を示す。図の中央のメッシュ内では最高点を検出せず、収束させていくとその下のメッシュ内で最高点を検出するが、当該最高点に連なる近傍には谷間があるため、これは中央下メッシュの最高点ではない。中央下メッシュの最高点検出では異なる点を検出するため、このメッシュ内に頂点を2点検出する結果となる。したがって、いずれの最高点でも谷間までを検出範囲とする。
【0074】
図26に、
図25で示した方法による実際の検出結果の例を示す。図中、濃いオレンジが高い点、青い点が最高点であり、視点は斜め上手前からである。頂点検出付近で検出する低い点は削除対象となる。なお、図内下側にある数個の検出点は、かなり手前にあって、検出した樹頂点とは距離が離れているため、削除対象外とする。
【0075】
<処理内容詳細2:樹高検出>
1.ドローン、もしくは地上レーザーから取得した点群のうち、最下層のデータを抽出し、地形とする。
2.樹頂点のX,Y座標を内包するTINが作成できる近接3点を取得(
図27)し、樹頂点位置の地形高度を算出する。
3.樹頂点のZ座標から地形高度を引いた値を樹高とする(
図29)。
【0076】
図28は、
図27の方法に基づく実際の検出結果例を示す説明図であり、視点は真上である。図示するように、樹頂点座標から直近の3点を取得し、樹頂点位置の地上高を算出する。
【0077】
<処理内容詳細3:樹幹検出、および胸高直径算定>
1.ドローン、もしくは地上レーザーから取得した点群(
図30)のうち、樹頂点のX,Y座標を中心とした検出範囲を設定し、胸高周辺の点群を、地形を反映して取得する(
図31)。これが、樹幹検出処理であり、胸高周辺情報(胸高周辺樹幹)が得られる(
図32)。
2.取得した点群からZ座標を削除し、2次元の円形もしくは円弧状の分布を作成する。
3.中心点から一番遠い点(A)、およびその点Aから一番遠い点(B)を端点とした直線を描き、その中点(C)から垂直方向にある一番遠い点、もしくは中点から一番近い点を第3点(D)とし、仮想の中心点(O)までの距離を半径rとして、樹径を算出する(
図33)。以上により、胸高直径が得られる。
【0078】
図33に示した樹径(胸高直径)の算出方法について補足する。仮想の中心点(樹頂点)をO、半径r=OD=OAとした場合、
(r-CD)
2+AC=r
2
から、
r=(CD
2+AC
2)/2CD
となり、半径rを算出でき、樹径(胸高直径)は2rにより求められる。なお、適正な範囲内に点Dを見つけられない場合は、点Cから最も近い点を代用すればよい。
【0079】
<処理内容詳細4:胸高直径信頼性付加、およびノイズ除去>
樹径(胸高直径)検出(処理内容詳細3)のために切り出した点群と、樹頂点検出処理(処理内容詳細1)により自動検出した樹頂点に対する樹径を重ねて表示し(
図34)、誤検出の有無やその程度を目視で確認する。
ノイズによる誤検出の場合、点群から手動でノイズと思われる点を除去し、再度樹径を自動検出する(処理内容詳細3参照)。点の情報が少ない、もしくは樹径部分を正しく検出できないものに関しては、信頼性がないものと判断し、ある程度点があるものの正しく計算できないものに関しては、信頼性が低いと判断する。判断結果は、たとえば「信頼性高:2、信頼性低:1、信頼性なし:0」のように数値化してもよい。
【0080】
なお、
図34において、グレーの点が樹径検出のために切り出した胸高付近の点群、赤い点が樹頂点、緑の円が樹頂点に対し自動検出した樹径である。信頼性が低い、または信頼性がないものはノイズと判断し、これを除去した後、再度上記処理内容詳細3による処理を行えばよい。
【0081】
<処理内容詳細5:樹冠情報算定(樹冠検出)>
1.樹頂点を中心とし、360°方向に任意の角度範囲で想定される樹冠径分の点群を切り出す。これは「角度分画」を形成する処理である。
2.切り出した方向に他の頂点(他頂点)がない場合は、想定される樹冠径分を樹幹検出の検出範囲とする。切り出した方向に他頂点がある場合は、中心に設定した樹頂点(自頂点)からその他頂点までにおける中間位置を特定し、これを検出範囲とする(
図35)。なお、他頂点との中間位置は、自頂点と他頂点の樹高比率に対応して算定することができる。
図35では、黄色破線で示した範囲が樹冠検出範囲として特定された領域である。また、一定角度で区切られた扇形が角度分画である。
【0082】
3.検出角度範囲内をさらに、任意に指定した解像度で区切り、範囲内の最高点を探す(
図36)。本処理で形成される区画は「解像度小分画」であるが、以下は「解像度小分画」を、原則として「解像度」と省略して称する。真横方向からの視点による
図36において、縦線で区切られた区画が解像度小分画(解像度)である。
【0083】
4.各解像度範囲内の最高点を結んだ際の傾きの角度が指定した平坦を検出する角度より連続して小さくなる直前の位置、または反転する(傾きの符号が変わる)直前の位置を、その角度範囲における樹冠の端点とする(
図36)。また、範囲内に点が存在しなくなる場合は、点が検出された最終位置を、その解像度での端点とする。
【0084】
5.上記3.~4.の処理を360°分繰り返し、樹冠の外周とする。
6.外周の、両隣の点より突出している点の補正、凹みすぎている点の除去補正を行い、最終的な樹冠とする。なお、ある端点が両隣の端点よりも突出している場合は、両隣の頂点からの距離の平均値となるように値を修正すればよい(
図37)。
【0085】
<処理内容詳細6:胸高直径推定>
6-1 データセット作成
1.個体番号、X座標、Y座標、Z座標、樹高、胸高直径、樹冠投影面積、樹冠直径、樹冠長、樹冠長率、胸高直径信頼性が格納されている単木データから、胸高直径信頼性の高いデータを用いて、対象林分を覆うボロノイ図を作成する(
図38)。この時、ボロノイ図にはそれぞれIDが割り振られる。なお、図中の白抜き点は、胸高直径の信頼性が高いデータを示す。
2.林分境界でボロノイ図をクリップする。
3.ボロノイ図の範囲に含まれる立木の本数と面積から、立木密度Bsrを算出し、ボロノイ図レイヤに格納する。
【0086】
4.レーザー計測により得られたDTMから、傾斜および曲率レイヤを作成する。
5.DTM、傾斜および曲率レイヤから、ボロノイ図の範囲内における標高、傾斜および曲率の平均値を算出し、ボロノイ図レイヤに格納する。
6.ボロノイ図レイヤに格納されているボロノイ図のID、X座標、Y座標、立木密度Bsr、平均標高、平均傾斜、平均曲率を用い、階層クラスタリングによりボロノイ図をクラスタリングし、クラスターごとに任意の番号Cidを付与する(
図39)。
7.単木データにクラスター番号Cidを空間結合する。
8.各単木を中心とした半径3~10mの円内に含まれる立木本数Bnを計測し単木データに格納する(
図40)。
【0087】
6-2 推定式の作成
1.単木データのうち信頼性の高いデータを使用し、統計学的手法を用いて、胸高直径の推定式の説明変数の選択およびパラメータ推定を行う。
2.説明変数の選択およびパラメータ推定には、下記による一般化線形混合モデルを作成する。
応答変数:胸高直径、
説明変数:樹高、樹冠投影面積または樹冠直径、樹冠長または樹冠長率、半径3~10m以内の立木本数Bn
変量効果:クラスター識別番号Cid
説明変数の数および赤池情報基準値(AIC値)から、最適なモデルを選択することができる。
【0088】
6-3 推定値算定
選択されたモデルの説明変数およびパラメータから信頼性の低いデータの胸高直径を推定し、推定胸高直径として単木データに格納する。
図41は、単木データ項目の一覧であり、個体番号、X座標、Y座標 、樹高、胸高直径、樹冠投影面積、樹冠直径、樹冠長、樹冠長率 、胸高直径精度(信頼性)、クラスター番号、および推定胸高直径の各項目を揃えている。
【0089】
なお、材積算定処理および森林資源所法集計処理は、公知の方法を適宜用いて行えばよい。
以下の追記は、ボロノイ図のクラスタリング、および推定式作成・推定値算定の実際例である。
【0090】
<追記1 ボロノイ図のクラスタリングの実際例>
(1)条件
・調査地:スギ林(1.5ha)
・樹頂点検出本数:1,476本
・信頼性1および2の本数:78本
・ボロノイ図レイヤの格納データ(データを標準化して解析に用いる):
ID、X座標、Y座標、立木密度Bsr、平均樹高、平均標高、平均傾斜、平均曲率
・ウォード法によりユークリッド距離を求め、樹形図(
図42)からクラスターを分割した。なお、
図42は階層クラスタリングの樹形図であり、左からCid1、Cid2、Cid3を例示する。
・解析の組み合わせを複数作成し、各クラスター番号をボロノイ図レイヤに格納した。表1は、ボロノイ図レイヤの属性データ(抜粋)である。
【0091】
(2)解析の組み合わせ
・Cid1:X座標、Y座標、平均標高
・Cid2:X座標、Y座標、平均傾斜
・Cid3:X座標、Y座標、平均曲率
・Cid4:X座標、Y座標、立木密度
・Cid5:X座標、Y座標、平均樹高
・Cid6:立木密度、平均樹高、平均標高
・Cid7:立木密度、平均樹高、平均傾斜
・Cid8:立木密度、平均樹高、平均曲率
【0092】
【0093】
<追記2 推定式作成、推定値算定の実際例>
(1)条件
・調査地:スギ林(1.5ha)
・樹頂点検出本数:1,476本
・胸高直径信頼性1または2の本数:78本
※信頼性1または2の本数が樹頂点検出本数の少なくとも5%以上あることが望ましい。なお、信頼性1,2:信頼性あり、信頼性0:信頼性なし である。
・単木データの格納データ:
個体番号、X座標、Y座標、Z座標、樹高、胸高直径、樹冠投影面積、樹冠直径、樹冠長、樹冠長率、胸高直径信頼性、クラスター番号Cid1~8、半径5m以内の立木本数Bn
・一般化線形混合モデルによる変数の組み合わせを複数作成し、最尤推定値を求め、説明変数の数および赤池情報基準値(AIC値)から最適なモデルを選択した。
・誤差構造:ガンマ分布 確率密度関数は式(1)の通りである。
【0094】
【0095】
式(1)で、sは形状母数、rは尺度母数である。
・リンク関数:対数関数 線形予測子は式(2)の通りである。
μi=exp(a+blogxi) ・・・式(2)
【0096】
(2)変数の組み合わせ
・model1:説明変数(樹高)、変量効果(樹高|クラスター番号Cid1)
・model2:説明変数(樹高、樹冠投影面積)、変量効果(樹冠投影面積|クラスター番号Cid1)
・model3:説明変数(樹高、樹冠投影面積、立木本数Bn)、変量効果(立木本数Bn|クラスター
番号Cid1)
・model4:説明変数(樹高、樹冠投影面積、樹冠長)、変量効果(樹冠投影面積|クラスター番号Cid1)
・model5:説明変数(樹高、樹冠投影面積、樹冠長、立木本数Bn)、変量効果(立木本数Bn|クラ
スター番号Cid1)
【0097】
(3)モデル選択
作成した複数のモデルを比較し、AIC値が低く、説明変数が少ないモデルを選択した。表2は作成したモデルの一覧であり、ここではmodel3が選択された。なお、カイ二乗値および有意確率はmodel1との比較である。
【0098】
【0099】
(4)選択されたモデルによる胸高直径の推定
model3の最尤推定値(表3 固定効果および変量効果の係数)から作成した推定式は式(3)の通りである。
【0100】
【0101】
胸高直径=exp((3.55463 + 変量効果:切片)+ 0.01378*樹高 + (-0.04367 + 変量効果:立木本数Bn)*立木本数Bn + 0.02913*樹冠投影面積) 式(3)
【0102】
式(3)により推定した胸高直径を、推定胸高直径として単木データに格納する。表4は、単木データ一覧(抜粋)である。
【0103】
本発明の森林資源情報生成構造、および森林資源情報生成方法によれば、実測データ収集過程を要することなしに得られた一式の点群データを元にして、重要な情報である材積算定に必要な胸高直径を含むさまざまな森林資源情報を、単木データとして、さらに林分全体の情報として、従来よりも効率的に、かつ高精度に、生成、取得することができる。したがって、林業分野および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
前記樹幹検出処理部では、前記樹頂点情報を中心とした検出範囲が設定され、該検出範囲において、前記地形高度情報を反映した胸高周辺の点群が胸高周辺情報として取得されることを特徴とする、請求項1に記載の森林資源情報生成構造。
前記の胸高直径算定処理部では、取得された前記胸高周辺情報からZ座標を除いた略円弧状または略円形状の2次元分布が作成され、該2次元分布の半径を所定方法によって算出することにより前記胸高直径情報が生成され、
該所定方法による算出とは弦の性質および三平方の定理による算出である
ことを特徴とする、請求項2に記載の森林資源情報生成構造。
前記樹頂点検出処理部では、同一形状およびサイズの検出範囲単位(以下「メッシュ」という)が連続的に設けられた平面構造(以下「メッシュ構造」という)を用いて点群データから樹頂点情報を得るが、各メッシュにおいて下記<A1>、<A2>の反復により収束した最高点データを樹頂点情報とする処理が行われ、
<A1> 該メッシュ中でZ座標が最大である最高点データを抽出する
<A2> 最高点データのX,Y各座標を中心として、該メッシュと同一サイズの検出範囲を再設定する
当該反復中において、該検出範囲の再設定前後の最高点データ間にZ座標が極小値をとるデータ(以下「谷間」という)が存在する場合、当該再設定済みの検出範囲を該谷間によって区切る処理が行われることを特徴とする、請求項1、2、3のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
樹冠投影面積情報その他の樹冠情報を得るための樹冠情報算定処理部が備えられており、該樹冠情報算定処理部では、前記樹頂点を中心とする樹冠の特定に用いるためのデータ群(以下「樹冠検出対象データ群」という)を点群データから取出し、これを所定角度で分割して周方向への分画(以下「角度分画」という)とし、各角度分画における該樹冠の最外縁と推測される点(以下「端点」という)を特定し、各端点を結ぶことで該樹冠の外周とする処理が行われることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
前記樹冠情報算定処理部では、前記角度分画を所定解像度で遠心方向に分割して径方向への分画(以下「解像度小分画」という)とし、各解像度小分画中にて特定される最高点データを結ぶことで該樹冠の側面輪郭の概略図形を描出し、該図形を形成する線分の傾きの大きさに基づいて前記端点を特定する処理が行われることを特徴とする、請求項8に記載の森林資源情報生成構造。
前記樹冠検出対象データ群中に処理対象の樹頂点(以下「本樹頂点」という)の他に樹頂点(以下「他樹頂点」という)が存在する場合は、両樹頂点の樹高に対応して両樹冠の境界を決める処理が行われることを特徴とする、請求項8、9、10のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
前記端点における前記樹頂点からの水平距離(以下「端点距離」という)を用いて前記樹冠を特定するための該端点を補正する処理が行われるが、該補正は、補正対象端点の端点距離を、その両隣計2点に係る端点距離に基づいて増減する修正であることを特徴とする、請求項8、9、10、11のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。
前記胸高直径推定処理部での処理は前記生成森林資源情報が包含される情報セット(以下「推定式作成用単木データセット」という)を用いて行われ、該推定式作成用単木データセットにおいては、対象林分を覆うボロノイ図がクラスタリング処理されて生成するクラスター番号が該単木データに空間結合されており、該ボロノイ図を作成するボロノイ図作成処理部、および該クラスタリング処理を行うクラスタリング処理部が備えられており、
該ボロノイ図のレイヤには、前記点群データにより得られる数値地形モデル(Digital Terrain Model、以下「DTM」という)から作成される傾斜および曲率の情報が含まれ、これら傾斜および曲率を算定するための傾斜等算定処理部が備えられている
ことを特徴とする、請求項13に記載の森林資源情報生成構造。
本森林資源情報生成構造はコンピュータプログラムの形態をとる、すなわち森林資源情報生成プログラムであり、本森林資源情報生成プログラムを構成する各処理部は森林資源情報を生成するための手順であり、コンピュータに該各手順を実行させることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14のいずれかに記載の森林資源情報生成構造。