(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064631
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】昇華転写シート
(51)【国際特許分類】
B41M 5/385 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
B41M5/385 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173366
(22)【出願日】2020-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】椎根 康晴
【テーマコード(参考)】
2H111
【Fターム(参考)】
2H111BA03
2H111BA14
2H111BA39
2H111BA41
2H111BA49
2H111BA74
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高濃度かつ高彩度の黄色の画像を形成することができ、地汚れを生じない昇華転写シートを提供する。
【解決手段】昇華性染料を含有する転写インキ層12Yを有する昇華転写シート10において、前記昇華性染料が、下記式(1)で示される黄色染料とアントラキノン系黄色染料の両者を含有し、かつ、式(1)で示される前記黄色染料とアントラキノン系黄色染料との重量比を90:10~55:45とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇華転写シート基材上に、昇華性染料を含有する転写インキ層を有する昇華転写シートにおいて、
前記昇華性染料が、下記化学式(1)で示される黄色染料とアントラキノン系黄色染料の両者を含有し、
かつ、化学式(1)で示される前記黄色染料とアントラキノン系黄色染料との重量比が90:10~55:45であることを特徴とする昇華転写シート。
【化3】
【請求項2】
前記アントラキノン系黄色染料が、C.I.Disperse Yellow 201から成ることを特徴とする請求項1に記載の昇華転写シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇華転写シート基材上に、昇華性染料を含有する転写インキ層を設けて構成した昇華転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
このような昇華転写シートは周知である。この昇華転写シートを被転写体に重ねて加熱することにより、転写インキ層中の染料が昇華し、被転写体の表面に浸透し、染着して発色する。染料は比較的低い温度で昇華する必要があり、このため、極性基を持たない染料が広く使用されている。そして、このように極性基のない染料が染着して発色する被転写体としては、その表面が疎水性の樹脂で構成されたものが使用されている。例えば、ポリエステルやポリ塩化ビニルである。なお、紙等の親水性表面を有するものについては、その表面に疎水性樹脂を積層して受像層としている。
【0003】
転写は、例えば、サーマルヘッドで加熱することによって可能である。すなわち、昇華転写シートの背面にサーマルヘッドを押し当て、サーマルヘッドの発熱素子に通電して発熱させることにより、この発熱素子に対応する部分の染料を選択して転写することができる。このとき、発熱させた素子の近傍であっても、発熱させていない部位では染料は転写されない。このように、昇華転写シートをパターン状に加熱して、被転写体表面にパターン状の画像を形成することができる。
【0004】
なお、この昇華転写方法においては、染料が被転写体表面に浸透し、染着して発色するため、これに伴ってさまざまな利点が挙げられている。例えば、形成された画像は耐摩耗性が高い。被転写体表面が摩耗した場合であっても、染料は内部に浸透するため、その画像は摩耗し難いのである。
【0005】
また、浸透・染着した染料の量によって画像の濃度を制御できるため、濃淡のある画像を形成することが容易である。また、同じ理由から、それぞれ異なる色彩に発色する昇華性染料を使用して、複数回転写すると、その混合色の画像を形成することができる。
【0006】
例えば、マゼンタに発色する昇華性染料を含有する転写インキ層を使用して転写し、次に、黄色に発色する昇華性染料を含有する転写インキ層を使用して転写し、最後にシアンに発色する昇華性染料を含有する転写インキ層を使用して転写することにより、マゼンタ、黄色及びシアンの3色から成るフルカラーの画像を形成することが可能である。もちろん、このフルカラーの画像は濃淡のある画像である。
【0007】
なお、極性基のない染料を染着させて画像形成しているため、比較的耐光性が弱く、褪色し易いという欠点を有している。
【0008】
ところで、このようにフルカラーの画像を形成するため、昇華転写シート基材の片面に、マゼンタに発色する昇華性染料を含有する転写インキ層、黄色に発色する昇華性染料を含有する転写インキ層、シアンに発色する昇華性染料を含有する転写インキ層を、面順次に配列した昇華転写シートも知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、このような昇華転写シートを使用してフルカラーの画像を形成する場合には、高品質の画像を形成するため、その色彩が目的とする色彩であることはもちろん、濃度及び彩度のいずれもが高い画像が転写形成できることが望まれる。濃度や彩度を十分に高くできないときには、この転写方法によって形成できるフルカラー画像の範囲が制限を受けるのである。なお、単色の画像であっても、高濃度かつ高彩度の画像形成が望まれることは同様である。
【0011】
また、転写しなかった部分においては、染料による地汚れが生じないことも求められている。すなわち、加熱した部分では十分に染料が転写して、目的とする色彩で、高濃度かつ高彩度に発色し、一方、加熱しなかった部分では一切染料が転写されないことが必要なのである。
【0012】
本発明は、各色の転写インキ層のうち、黄色に発色する昇華性染料を含有する転写インキ層に着目してなされたもので、高濃度かつ高彩度の黄色の画像を転写形成することができ、しかも、この際、地汚れを生じない昇華転写シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、請求項1に記載の発明は、昇華転写シート基材上に、昇華性染料を含有する転写インキ層を有する昇華転写シートにおいて、
前記昇華性染料が、下記化学式(1)で示される黄色染料とアントラキノン系黄色染料の両者を含有し、
かつ、化学式(1)で示される前記黄色染料とアントラキノン系黄色染料との重量比が90:10~55:45であることを特徴とする昇華転写シートである。
【0014】
【化1】
次に、請求項2に記載の発明は、前記アントラキノン系黄色染料が、C.I.Disperse Yellow 201から成ることを特徴とする請求項1に記載の昇華転写シートである。
【発明の効果】
【0015】
後述する実施例及び比較例から分かるように、本発明によれば、高濃度かつ高彩度の黄色の画像を転写形成することができ、しかも、この際、地汚れを生じない。転写形成された黄色の画像は、高い色純度を有する黄色を呈する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は昇華転写シートの具体例に係り、
図1(a)はその平面図、
図1(b)は断面図である。
【
図3】
図3は保護層転写シートの具体例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本開示の具体例を説明する。
図1は本発明の昇華転写シートの具体例に係り、
図1(a)はその平面図、
図1(b)は断面図である。
【0018】
これら
図1(a)及び(b)から分かるように、この昇華転写シート10は、その基材11となるフィルムの上に、3種類の転写インキ層12Y,12M,12Cを面順次に配列したものである。
【0019】
この、3種類の転写インキ層12Y,12M,12Cは、昇華性染料を含有する転写インキ層で、加熱によりその染料が被転写体に染着して転写画像を形成する。そして、これら3種類の転写インキ層12Y,12M,12Cに含まれる染料は、それぞれ、色の3原色に発色する染料であり、転写インキ層12Yに含まれる染料は、被転写体に染着して黄色(イエロー)に発色する。また、転写インキ層12Mに含まれる染料は、被転写体に染着してマゼンタに発色し、転写インキ層12Cに含まれる染料は、被転写体に染着してシアンに発色する。なお、この例では、黄色の転写インキ層12Y、マゼンタの転写インキ層12M、シアンの転写インキ層12Cの順番に配列されているが、これに限らず、その配列の順序は任意でよい。いずれにしても、これら色の3原色に発色する染料を転写して染色することにより、被転写体にフルカラーの転写画像を形成することができる。
【0020】
昇華転写シート基材11としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、アセテート、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、アラミド、ポリスチレン等の合成樹脂のフィルムや、コンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類を使用することができる。中でも、物性面、加工性、コスト面等を考慮するとポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。また、その厚みは、特に制限はなく、例えば2~50μmである。
【0021】
昇華性染料を含有する3種類の前記転写インキ層12Y,12M,12Cは、昇華性染料の他に、この染料を固定するバインダを含有していることが通常である。
【0022】
これら3種類の前記転写インキ層のうち、黄色に発色する転写インキ層12Yに含まれる染料は、下記化学式(1)で示される黄色染料とアントラキノン系黄色染料の両者である必要がある。
【0023】
【化2】
このように転写インキ層12Yが化学式(1)で示される黄色染料とアントラキノン系黄色染料の両者を含有する場合には、後述する実施例及び比較例から分かるように、高濃度かつ高彩度の黄色の画像を転写形成することができ、しかも、この際、地汚れを生じない。そして、形成された黄色の画像は、高い色純度の黄色を呈するため、その他の転写インキ層12M,12Cによってマゼンタの画像及びシアンの画像を形成することにより、全体としてフルカラーの画像を表現することができる。
【0024】
アントラキノン系黄色染料としては、C.I.Disperse Yellow 201を好適に使用することができる。そして、化学式(1)で示される前記黄色染料とアントラキノン系黄色染料とはその合計を100重量部として、前記黄色染料が90~55重量部、アントラキノン系黄色染料が10~40重量部である。
【0025】
また、マゼンタに発色する転写インキ層12Yに含まれる染料としては、C.I.Disperse Red 60、C.I.Disperse Violet 26、C.I.Solvent Red 27、あるいはC.I.Solvent Red 19等が挙げられる。
【0026】
また、シアンに発色する転写インキ層12Cに含まれる染料としては、C.I.Disperse Blue 354、C.I.Solvent Blue 63、C.I.Solvent Blue 36、あるいはC.I.Disperse Blue 24等が挙げられる。
【0027】
次に、昇華性染料を含有する3種類のこれら転写インキ層12Y,12M,12Cに含まれるバインダとしては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、スチレン-アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂等の耐熱性、染料移行性等に優れる樹脂が使用できる。
【0028】
前述のように、これら転写インキ層12Y,12M,12Cを使用して順次転写染色することにより、被転写体の表面にフルカラーの転写画像を形成することができる。
【0029】
この昇華転写シート10を使用して画像形成できる被転写体は、その表面が疎水性のものである。例えば、プラスチックシート、プラスチックカード等は、一般にその表面が疎水性であるため、被転写体として画像形成することができる。また、紙等の親水性シートを被転写体とする場合には、その表面に疎水性樹脂の受像層を形成して受像シートとし、この受像シートに画像形成することが可能である。
【0030】
図2は、このような受像シートの例を示す断面説明図であり、この受像シート20は、受像シート基材21の表面に多孔質層22を介して受像層23を積層して構成されている。
【0031】
受像シート基材21としては、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、上質紙、アート紙、コート紙、レジンコート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、板紙等の紙基材を好適に使用することができるが、これに限らず、ポリエステルフィルムやポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルムであってもよい。
【0032】
多孔質層22は、熱転写時の圧力を緩衝してムラのない画像形成を可能とするものである。このような多孔質層22としては、例えば、バインダ樹脂に中空粒子や多孔質材料を分散させて緩衝性を付与したものを使用することができる。また、発泡ポリプロピレンフィルムや発泡ポリエチレンテレフタレート等の発泡フィルムを多孔質層22として使用することもできるし、発泡性樹脂を受像シート基材21に塗布した後発泡させて多孔質層22とすることも可能である。
【0033】
次に、受像層23は、昇華転写シート10から昇華した染料が染着して発色するもので、疎水性樹脂を主成分とするものが使用できる。中でも、疎水性樹脂を水系溶剤中に分散させたエマルジョンを塗布して受像層23とすることが望ましい。例えば、ポリエステル系樹脂エマルジョン、アクリル系樹脂エマルジョン、塩化ビニル系樹脂エマルジョン、塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂エマルジョン、塩化ビニル-アクリル樹脂エマルジョン等である。
【0034】
ところで、この昇華転写シート10を使用して最終目的物に画像を形成する方法は2種類知られている。そのうち1種類は最終目的物を被転写体として、この最終目的物表面に熱転写シート10から直接転写して画像形成する直接転写印刷法である。その他の方法は、中間転写フィルムを被転写体として、中間転写フィルム上に昇華転写シート10から転写(1次転写)して画像形成し、次にこの画像を中間転写フィルムから被転写体に転写(2次転写)する間接転写印刷法である。なお、間接転写印刷法は再転写印刷法と呼ばれることもある。
【0035】
受像シート20に画像形成する場合には、直接転写印刷法が簡便である。この方法では
、まず、受像シート20の受像層23に転写インキ層12Yを重ね、昇華転写シート10の背面からサーマルヘッドを押し付けてその発熱素子を選択して発熱させることにより、この受像層23黄色の画像を形成する。次に、昇華転写シート10を間歇的に移動して転写インキ層12Mを受像層23に重ね、前記黄色画像に重ねて赤色の画像を形成する。また、同様に転写インキ層12Cを重ね、青色の画像を形成する。こうして、受像層23に黄色、赤色、青色の3色から成るフルカラーの画像を形成することができる。なお、この直接転写印刷法においては、形成された画像が露出しているから、この上に保護層を積層して保護することが望ましい。保護層は
図3に示す保護層転写シート30を使用して転写積層することができる。
【0036】
図示のように、保護層転写シート30は、その基材31上に、熱転写の際にこの基材31から剥離容易で、しかも、被転写体20表面に接着できる透明保護層32を積層して構成されたものである。なお、熱転写時に透明保護層32を保護層転写シート基材31から剥離容易とするため、保護層転写シート基材31と透明保護層32との間に剥離層を設けてもよい。
【0037】
保護層転写シート基材31としては、昇華転写シート基材11と同様のシートを使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、アセテート、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、アラミド、ポリスチレン等の合成樹脂のフィルムや、コンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類である。
【0038】
剥離層としては、転写時の熱で溶融する材料を好ましく使用することができる。例えば、パラフィンワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、高級脂肪酸、高級アルコール、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミドである。
【0039】
また、透明保護層32としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、アクリル系樹脂、ポリスチレン等を使用できる。
【0040】
次に、プラスチックカードに画像形成する場合には、直接転写印刷法で画像形成することもできるが、間接転写印刷法で画像形成することも可能である。
【0041】
図4は間接転写印刷法を利用して、カード40上に画像形成する方法を説明するための説明図である。前述のように、間接転写印刷法は中間転写フィルム60を被転写体とする方法である。この中間転写フィルム60は公知であるが、中間転写フィルム基材の表面に、この中間転写フィルム基材から剥離容易でしかもカード40の表面に熱接着可能な受像層を有するものである。
【0042】
カード40は載置台50の上に載置されており、図示矢印のように、この載置台50ごと前後方向に移動可能としている。
【0043】
そして、まず、中間転写フィルム60をその巻き出しロール60aから巻き出し、一方、熱転写シート10もその巻き出しロール10aから巻き出し、昇華転写シート10の転写インキ層12Yを中間転写フィルム60の受像層に重ね、昇華転写シート10の背面からサーマルヘッド70を押し付けて黄色の画像を形成する。そして、転写インキ層12M及び転写インキ層12Cについても染料を転写して、黄色の前記画像に重ねて赤色の画像と青色の画像を形成する。こうして、受像層表面に黄色、赤色、青色の3色から成るフルカラーの画像を形成することができる。
【0044】
次に、中間転写フィルム60をカード40に重ね、背面から熱ロール80で熱圧するこ
とにより、フルカラーの前記画像を有する受像層を転写する。こうしてカード40に画像形成することが可能となる。なお、
図4中、10bは転写後の熱転写シート10を巻き取る巻き取りロール、60bは受像層を転写した後の中間転写フィルム60を、それぞれ、示している。
【実施例0045】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
【0046】
なお、これらの説明では、本発明の特徴部分に関連する事項のみを説明する。例えば、昇華転写シートについては、転写後に黄色に発色する転写インキ層12Yについて説明するが、赤色(マゼンタ)に発色する転写インキ層12M及び青色(シアン)に発色する転写インキ層12Cについては、その説明を省略する。
【0047】
なお、この転写インキ層12Yに使用した染料は次のとおりである。
染料1:化学式(1)で示される前記黄色染料。
染料2:C.I.Disperse Yellow 201。
染料4:C.I.Solvent Yellow 93。
【0048】
また、これらの例において、昇華転写シート基材はポリエステルフィルムである。また、被転写体は受像シート基材の表面に多孔質層を介して受像層を積層して構成され受像シートであり、受像層は塩化ビニル系樹脂の水性エマルジョンを塗布して形成したものである。
【0049】
(実施例1)
黄色の染料として、染料1(化学式(1)で示される前記黄色染料)と染料2(C.I.Disperse Yellow 201)との混合物を使用して、転写インキ層12Yを形成して昇華転写シートとした。その合計を100重量部とすると、染料1が90重量部、染料2が10重量部である。
【0050】
(実施例2)
染料1と染料2との配合比を、染料1が70重量部、染料2が30重量部とした他は実施例1と同様に昇華転写シートを製造した。
【0051】
(実施例3)
染料1と染料2との配合比を、染料1が55重量部、染料2が45重量部とした他は実施例1と同様に昇華転写シートを製造した。
【0052】
(比較例1)
染料1と染料2との配合比を、染料1が45重量部、染料2が55重量部とした他は実施例1と同様に昇華転写シートを製造した。
【0053】
(比較例2)
黄色の染料として、染料1(化学式(1)で示される前記黄色染料)のみを使用した他は実施例1と同様に昇華転写シートを製造した。
【0054】
(比較例3)
黄色の染料として、染料2(C.I.Disperse Yellow 201)と染料3(三菱ケミカル(株)製HSY2701)との混合物を使用した他は実施例1と同様に昇華転写シートを製造した。なお、染料2と染料3との合計を100重量部とすると、染料2が11重量部、染料3が89重量部である。
【0055】
(比較例4)
黄色の染料として、染料2(C.I.Disperse Yellow 201)と染料4(C.I.Solvent Yellow 93)との混合物を使用した他は実施例1と同様に昇華転写シートを製造した。なお、染料2と染料4との合計を100重量部とすると、染料2が85重量部、染料4が15重量部である。
【0056】
(評価方法)
これら実施例1~3、比較例1~4の昇華転写シートを使用して、前述の受像シート上に黄色の画像を転写形成した。転写方法は直接転写印刷法である。
【0057】
すなわち、まず、受像シートの受像層に昇華転写シートの黄色の転写インキ層12Yを重ね、サーマルシミュレーターを使用して転写して黄色のベタ画像を印画した。そして、保護層転写シートを使用して、この黄色のベタ画像を被覆するように保護層を転写した。
【0058】
こうして形成された黄色の画像について、5つの観点から評価した。すなわち、画像の濃度、彩度、色相角、耐光性、地汚れの有無である。
【0059】
(濃度の評価方法)
X-rite社製X-rite528を使用して、黄色の前記ベタ画像の濃度(OD)を測定し、下記基準に従って評価した。
〇:濃度ODが2.3以上。
×:濃度ODが2.3未満。
【0060】
(彩度の評価方法)
X-rite社製X-rite528を使用して、黄色の前記ベタ画像の色度を測定した。色度はL*a*b*表色系における色度(L*,a*,b*)である。そして、次の式に従って彩度C*を算出した。
【0061】
【数1】
そして、次の基準に従って彩度を評価した。
〇:彩度C
*が110以上。
×:彩度C
*が110未満。
【0062】
(色相角の評価方法)
前記色度(L*,a*,b*)を使用し、次の式に従って色相角hを算出した。
【0063】
【数2】
そして、次の基準に従って色相角を評価した。
〇:色相角hが85~95度の範囲内にある。
×:色相角hが85度未満。又は、色相角hが95度より大きい。
【0064】
(耐光性の評価方法)
黄色の前記ベタ画像を形成した印画物を、(株)東洋精機製作所製アラウト・ウエザオメータCi4000に、36時間投入した。そして、投入後の濃度と投入前の濃度との商(投入後の濃度/投入前の濃度)を濃度保持率として、次の基準に従って耐光性を評価した。
〇:濃度保持率が80%以上。
×:濃度保持率が80%未満。
【0065】
(地汚れの評価方法)
X-rite社製X-rite528を使用して、前記印画物の白地部の濃度(OD)を測定し、下記基準に従って評価した。
〇:濃度ODが0.07未満。
×:濃度ODが0.07以上。
【0066】
(評価結果)
これら評価の結果を表1に示す。
【0067】
【0068】
(考察)
この結果から、黄色の染料として、染料1(化学式(1)で示される前記黄色染料)と染料2(C.I.Disperse Yellow 201)との混合物を使用したときには(実施例1~3,比較例1)、その配合比によらず、色相角が85~95度の範囲内にあり、高い色純度の黄色を呈するのに対して、これら染料1と染料2のいずれか一方を配合しない場合には(比較例2~4)、色相角がこの範囲内に収まらず、黄色としての色純度が低いことが理解できる。
【0069】
また、前記染料1と染料2との混合物を使用した場合、印画して形成した画像の濃度及び彩度は配合比によらず優れているが、染料1の配合割合が55重量部を下回ると(比較例1)、地汚れを生じ易い。