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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064645
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】トイレットロール
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/16 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
A47K10/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173384
(22)【出願日】2020-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 良美
【テーマコード(参考)】
2D135
【Fターム(参考)】
2D135AA06
2D135AA10
2D135AA21
2D135AB02
2D135AB14
2D135AC08
2D135AD12
2D135AD15
2D135CA04
2D135DA06
2D135DA13
2D135DA31
(57)【要約】
【課題】長尺品でありながら意匠性に優れる模様が視認でき、しかもシワやヨレが少ないトイレットロールを提供する
【解決手段】
2プライのトイレットペーパーをロール状にした巻径110~115mmのトイレットロールであって、一方面に網点印刷とベタ印刷により形成される図柄が印刷され、図柄部分の総面積の割合が10~20%であり、網点部分の総面積の割合が7.5%以上であり、ベタ部分の総面積の割合が4.0%以下である、1プライの紙厚が60~90μmのトイレットペーパーが、前記図柄が印刷された面が外層側となるようにして、巻密度0.83~2.05で65~90m紙管に巻かれている、トイレットロールにより解決される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2プライのトイレットペーパーをロール状にした巻径110~115mmのトイレットロールであって、
一方面に網点印刷とベタ印刷により形成される図柄が印刷され、図柄部分の総面積の割合が10~20%であり、網点部分の総面積の割合が7.5%以上であり、ベタ部分の総面積の割合が4.0%以下である、1プライの紙厚が60~90μmのトイレットペーパーが、前記図柄が印刷された面が外層側となるようにして、巻密度0.83~2.05で65~90m紙管に巻かれている、ことを特徴とするトイレットロール。
【請求項2】
空隙率が5~18%である、請求項1記載のトイレットロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレットペーパーをロール状に巻いたトイレットロールに関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットロールは、日常的に消費される生活品であるとともに、トイレ空間はスーペースに限りがあるため、巻き長さが長いことは消費者が購入を決める重要な要素である。
【0003】
トイレットロールの巻き長さは、一般家庭向けの普及品においてダブルとも称される2プライのもので25m前後、シングルとも称される1プライのもので50m前後が一般的であったが、近年は、その1.5~3倍の長さの巻き長さの長尺品も普及しつつある(下記、特許文献1)。
【0004】
このような長尺品のトイレットロールでは、一般的に使用されている家庭用トイレットペーパーホルダーで使用可能な巻径にするため、トイレットペーパーを低米坪とし、また、紙厚を薄くするとともに、硬巻きにする必要がある。
【0005】
ところで、従来の一般的な2プライ25m前後、1プライの50m前後のトイレットロールにおいては、トイレットペーパーに花柄等の模様をインキにより印刷したものがある(下記、特許文献2)。このトイレットロールは、意匠性に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-064664号公報
【特許文献2】特開2008-188070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、長尺品のトイレットロールでは、上記のとおりトイレットペーパーを低米坪とし、また、紙厚を薄くするとともに、硬巻きにする必要があるため、模様を印刷するとインキの裏抜けが発生し、裏面に不必要なインキの滲みが発生することがあった。
【0008】
また、紙厚が薄い原紙にインキを付与するとともに巻きが硬くなるため製造時に断紙が発生し易く、シワやヨレが形成されたものとなりやすかった。
【0009】
さらに、トイレットロールは幾重にもトイレットペーパーが積層されているものであるため、長尺品では下層のトイレットペーパーの模様が過度に視認されてしまい、模様による所望の意匠性とならないことがあった。
【0010】
そこで、本発明の主たる課題は、長尺品のトイレットロールにおいて、製造しやすく、シワやヨレがなく、意匠性に優れる図柄が視認できるトイレットロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決した第一の手段は、
2プライのトイレットペーパーをロール状にした巻径110~115mmのトイレットロールであって、
一方面に網点印刷とベタ印刷により形成される図柄が印刷され、図柄部分の総面積の割合が10~20%であり、網点部分の総面積の割合が7.5%以上であり、ベタ部分の総面積の割合が4.0%以下である、1プライの紙厚が60~90μmのトイレットペーパーが、前記図柄が印刷された面が外層側となるようにして、巻密度0.83~2.05で65~90m紙管に巻かれている、ことを特徴とするトイレットロールである。
【0012】
第二の手段は、
空隙率が5~18%である、上記第一の手段に係るトイレットロールである。
【発明の効果】
【0013】
以上の本発明によれば、長尺品のトイレットロールでありながら、製造しやすく、シワやヨレがなく、意匠性に優れる図柄が視認できるトイレットロールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るトイレットロールの斜視図である。
図2】本発明に係る白色度及び色差の測定手順を説明するための概略図である。
図3】本発明に係る図柄印刷を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次いで、本発明に係るトイレットロールを、図面を参照しながら説明する。図1に示されるように、本発明に係るトイレットロール1は、2プライの帯状のトイレットペーパー10を紙管(管芯とも称される)20にロール状に巻いたものである。
【0016】
本発明に係るトイレットペーパーの巻径L2(直径)110~115mmである。トイレットロールの巻径は、JIS P 4501において、120mm以下と定められており、一般的なトイレットロールをセットするためのホルダーはこの120mmを基準として作成されている。本発明のトイレットロールは、巻径が110~115mmであり、一般的なホルダーに十分にセット可能な大きさとなっている。ここで、巻径は、ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールール又はその相当機を用いて測定した値である。測定値は、幅方向に場所を変えて3個所測定した平均値とする。
【0017】
本発明に係るトイレットロールは、特徴的に、一方面に網点印刷とベタ印刷により形成される図柄が印刷され、図柄部分の総面積の割合が10~20%であり、網点部分の総面積の割合が7.5%以上であり、ベタ部分の総面積の割合が4.0%以下である、1プライの紙厚が60~90μmのトイレットペーパーが、前記図柄が印刷された面が外層側となるようにして、巻密度0.83~2.05で65~90m紙管に巻かれている。
【0018】
本発明に係るトイレットロールは、これらの構成を有することで、模様を印刷した際におけるインキの裏抜けが発生しがたく、裏面に不必要なインキの滲みが発生しがたく、製造時に断紙が発生し難いものとなる。また、シワやヨレがなく、さらに網点印刷部分とベタ印刷部分と、さらに下層のトイレットペーパーの模様が過度に視認されず、特徴的な意匠性を有するものとすることができる。
【0019】
本発明に係るトイレットロールは、巻かれているトイレットペーパーの1プライでの紙厚が60~90μmである。1プライの紙厚がこの範囲であると、トイレットペーパーとしての十分な強度と柔らかさにすることができるとともに、65~90mの長さを紙管に巻いた際に、巻径L2(直径)を110~115mmの範囲にすることができる。また、本発明に係る模様印刷の条件において、インキの裏抜けや、裏面に不必要なインキの滲みがなく、製造時の断紙も発生し難いものとすることができる。
【0020】
紙厚の測定方法は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で8時間以上調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(株式会社尾崎製作所製)を用いて1プライの状態で測定するものとする。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。測定時には、プランジャーはのせるだけとして押えない。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この紙厚測定時の荷重は、約70gfである。なお、紙厚は測定を10回行って得られる平均値とする。なお、トイレットペーパーに、エンボス加工による凹凸が形成されていても同様に測定する。この場合には、一つの凹部が全部測定台内の範囲に入るようにして測定する。測定時における凹凸の潰れは無視してよい。本紙厚測定において凹部の潰れによって生ずる紙厚差は無視できる。
【0021】
本発明に係るトイレットペーパーは、坪量が11.5~16.0g/m2の範囲とするのが望ましい。より好ましくは、12.0~15.5g/m2である。12.5~16.0g/m2の範囲であれば本発明に係るトイレットロールの巻密度、空隙率に調整しやすい。また、本発明に係るトイレットロールでは、乾燥引張強度や湿潤引張強度は、本発明の作用効果を妨げない範囲で公知の方法で適宜に調整すればよい。
【0022】
本発明に係るトイレットロールは、トイレットペーパーの一方面に図柄が印刷されており、その図柄が印刷された面が外層側となるようにして紙管に巻かれている。つまり、本発明に係るトイレットロールは、外層に位置する面のみに図柄を有する。外層側に図柄が印刷することで外方から直接に図柄を視認することができ、特に、図柄を網点印刷のように薄くなるように印刷してもしっかりと視認しやすくなる。
【0023】
また、トイレットロールは、トイレットペーパーが幾層にも重なっているため、一層以上下の模様が透けてしまうと、その下層の図柄と外面の図柄とが混在して視認される恐れがある。しかし、特に本発明のトイレットペーパーは、2プライであるため内層側のプライに印刷がされていない層が介在されるため、上記の本発明に規定する紙厚の範囲として外層のみに図柄を形成すれば、外面の図柄を十分に視認できつつ、下層の図柄が視認し難いものとなる。さらに、上記坪量であればなおさらである。なお、外層面側のみに図柄があるようにするには、印刷面が外側となるようにして巻き取りを行えばよい。
【0024】
本発明に係る図柄は、印刷により形成されたものであり、抄紙原料に染料を供給するなどして抄紙段階で着色したものは含まない。図柄の具体的なデザインは、特に限定されない。例えば、花、木、草等の植物や、人、動物、魚、貝、昆虫等の生き物、山、川、海、雲、森、林等の自然、月、太陽、星等の惑星・衛星、車、飛行機、電車等の人工物、などの図柄の中から、1種又は数種が適宜選択されて描かれた形態を、例示することができる。図柄一つの面積は、特に限定されないが、102mm2~918mm2程度であれば、図柄を視認しやすく、意匠性に優れると感じやすいものとなるとともに、一つの図柄部分のインキ量が過度に多くならず裏抜けが発生しがたくなる。
【0025】
本発明に係る図柄は、網点印刷とベタ印刷により形成されている。そして、その図柄部分の総面積の割合が10~20%である。この図柄部分とは、網点部分とベタ部分とを合わせた部分である。総面積の割合とは、トイレットペーパーの一方面の面積に対する図柄部分の割合をいう。なお、図柄が印刷されているトイレットペーパーは、製造工程に起因して所定ピッチにて図柄が繰り返されるため、図柄部分の総面積の割合の算出方法は、トイレットペーパーのテールシール部を除いた先端部から50cmずつ10枚をカットして試料とし、各枚における一方面の面積(トイレットペーパーの幅×50cm)に対する図柄部分の面積の割合を算出し、その10枚の平均値とする。試料中の図柄部分の面積の測定は、試料を光学的にスキャニングして、公知のソフトウェアにより計測すればよい。
【0026】
図柄部分の総面積の割合が10~20%であれば、使用時にインキ付与によってトイレットペーパーが硬質に感じられることがなく、特に巻長さ、巻径等の本発明に係る他のロール構成とするに必要なテンションで行う製造時におけるシワやヨレの発生が防止される。なお、網点印刷は、ミクロ的にはインキ付与部分と非付与部分とで構成されるが、本発明における網点部分とは、実際にインキ付与部分のみならず非付与部分も含めた網点印刷によって一つの図柄と認識される部分全体を意味する。なお、一つの図柄における網点部分とベタ部分の割合は、60:40~90:10が望ましく、特に65:35~85:15であるのが望ましい。
【0027】
本発明に係る網点印刷における、各網点の形状は特に限定されるものではない。例えば、菱形、正方形、長方形、円形、楕円形、多角形、星形などとすることができる。
【0028】
さらに、本発明に係るトイレットペーパーは、網点部分の総面積の割合が7.5%以上であり、ベタ部分の総面積の割合が4.0%以下である。網点部分の総面積の割合を7.5%以上とし、ベタ部分の総面積の割合を4.0%以下とすることで、図柄の認識性を低下させることなくインキ付与による裏抜けがし難く、意匠性に優れるようになる。また、トイレットペーパーが全体として過度に硬質とならず、上記製造時におけるシワやヨレも発生しがたくなる。さらに、本発明に係る他の構成と相まってトイレットロールとした際に、外面側に位置するトイレットペーパーの非図柄部分を介してベタ部分が過度に認識されることがなく、意図した意匠として認識されやすいトイレットロールとなる。
【0029】
なお、網点部分の総面積の割合、及び、ベタ部分の総面積の割合も、図柄部分の総面積の割合と同様に、トイレットペーパーのテールシール部を除いた先端部から50cmずつ10枚をカットして試料とし、各枚における一方面の面積(トイレットペーパーの幅×50cm)に対する図柄部分の面積の割合を算出し、その10枚の平均値とする。試料中における網点部分及びベタ部分の面積の測定も、試料を光学的にスキャニングして、公知のソフトウェアにより計測すればよい。
【0030】
本発明においては網点部分における網点面積率は、20~60%、特に好ましくは、30~50%である。網点面積率とは、網点部分における実際のインキ付与部分の割合である。網点面積率が、20%未満である、図柄の鮮明さが劣るようになり、網点面積率が60%超えると、ベタ印刷に近づき、網点印刷による図柄の淡さがなく意匠性が低下するとともに、図柄部分が硬質になりやすくなる。また、特に、水性インキである場合に、水分により紙を収縮させ、本発明に係る図柄の総面積率において、紙にシワ・ヨレを生じやすくなる。
【0031】
本発明に係るトイレットペーパーにおける図柄は、水性インキによるフレキソ印刷(凸版印刷)によって印刷するのが望ましい。ただし、グラビア印刷等の凹版印刷、オフセット印刷等の平版印刷などを、採用することもできる。特に、水性インキであれば、粘度10~50cps、ビヒクルが5~25質量%、水分量が95~75質量%であるものとすると、図柄の鮮明さを十分なものとできつつ、紙に水分が浸透してもシワやヨレが発生しがたくなる。なお、粘度はB型粘度計により測定した値である。
【0032】
本発明に係る図柄を印刷するにあたっては、網点部分及びベタ部分に関わらず、用いるアニロックスロールの線数は、40~100/1インチ、より好ましくは50~80/1インチとするのが望ましい。本発明に係る図柄を形成するに適する。
【0033】
本発明に係るトイレットロールは、上記の図柄を有するトイレットペーパーが、巻密度0.83~2.05で65~90m紙管に巻かれている。トイレットペーパーの巻き長さ65~90mは、従来の一般家庭向けの普及品の2プライ25m前後の製品に比して巻き長さが2倍以上に長い。なお、巻き長さは、トイレットロールをテンションを掛けずに巻きほどきつつ計測する。例えば、巻きほどきから5mずつジグザグに折り返しつつ測定するようにしてもよい。
【0034】
そして、本発明に係るトイレットロールは、上記の巻き長さを有しつつ、巻密度が0.83~2.05である。好ましくは、1.05~1.45であり、特に好ましくは、1.05から1.25である。本発明に係る巻密度とは、実断面積×理論断面積で算出される値である。実断面積とは、巻長さ×紙厚で算出される値である。一方、理論断面積とは、(巻径/2)×(巻径/2)×π-(紙管外径/2)×(紙管外径/2)×πで算出される値である。つまり、端面の面積から紙管開口端側面積を差し引いた面積である。上記の巻き長さの場合、特に巻密度が0.83~2.05の範囲のものは製造がしやすく、シワやヨレが極めて少ないものとなる。また、ロールを周面で手に持った際に適度に締まりが感じられ、しっかりとした巻き長さがあることを感じられるとともに、過度に柔らかさがなく硬い感じになり難い。2.05を超えると実際の巻き長さよりも硬さを感じるようになりやすい。一方、0.83未満の場合には、巻き長さに対してロールの柔らかさが過度に感じられ、しっかりとした感じがし難くなりやすい。
【0035】
そして、本発明に係るトイレットロールでは、トイレットペーパーを上記のとおり図柄部分の総面積の割合を10~20%とし、網点部分の総面積の割合を7.5%以上とし、さらにベタ部分の総面積の割合を4.0%以下とすることで、図柄を十分に認識できつつ、裏抜けし難く、さらにシワやヨレが極めて少ないものとなる。つまり、巻き長さを長く、巻密度を高める場合、トイレットロールを形成するにテンションを高めてトイレットペーパーを紙管に巻き付ける必要がある。図柄を有するトイレットペーパーでは、インキが付与されている印刷部分と、インキが付与されている非印刷部分とでは紙の伸びが異なるようになるため、テンションを高めるとトイレットロールとなった際にトイレットペーパーにシワやヨレが発生しやすくなるが、本発明に係るトイレットロールでは、このような問題が解決される。つまり、特に、図柄の認識性に優れつつ、裏抜けがなく、トイレットロールを手にもった際に製品として十分な柔らかさを感じつつ、しわやヨレがないトイレットロールが提供される。なお、紙管外径(紙管径)L3は、一般的な大きさと同様に35~45mmφとするのが望ましい。この範囲であれば、本発明に係るトイレットロールの巻密度とすることができる。
【0036】
さらに、本発明に係るトイレットロールは、空隙率が5~18%であるのが望ましい。本発明に係る空隙率(%)とは、(ロール全体の実空隙体積)/(理論ロール体積)×100で算出される値である。ロール全体の実空隙体積は、(実断面積(cm2))×(ロール幅(cm))で算出され、理論ロール体積は(巻長さ(cm)×2×紙厚(1プライ、cm))×(ロール幅(cm))で算出される値である。空隙率(ロール全体の実空隙率、%)は、((理論ロール体積(cm3))-(実ロール体積(cm3)))/(理論ロール体積(cm3))×100(%)で算出される。ロール幅L1は、100~130mm程度とすればよい。本発明に係る空隙率とは、トイレットロール内にどの程度の空間が存在しているかを示す指標である。この指標は、エンボス、紙厚、巻き硬さによって調整される。紙厚が厚い場合には空隙率が低くなるが、これには過度に深く硬い潰れがたいエンボスがある場合、紙層そのものが厚い場合があり、いずれの場合も硬く感じられることがある。本発明に係る空隙率は低い場合にロールが硬く感じられる傾向にあり、空隙率が高いとロールが柔らかく感じられる傾向にある。なお、空隙率が、18%を超えると絵柄の裏抜けが顕著となりロールのデザインが視認しにくく、芯がズレ易くなる。5%を下回るとロールの柔らかさが発現し難くなる。
【0037】
また、本発明に係るトイレットペーパーは、模様印刷がない部分の白色度が80%以上であり、かつ、下層の模様印刷の部分を直接測定したLab値と、その模様印刷を上層のトイレットペーパーの模様印刷のない白色部分を通して測定したLab値との色差ΔE=((ΔL)2+(Δa)2+(Δb)21/2が、2.20以下の範囲にあるのが望ましい。さらに、模様印刷を上層のトイレットペーパーの模様印刷のない白色部分を通して測定したLab値と、上層のトイレットペーパーの模様印刷のない白色部分のLab値との色差ΔE´が、6.0以下であるのが望ましい。このような白色度、ΔE及びΔE´であると、図3に示すように、上層のトイレットペーパーの模様印刷のない白色部分等を介して見える下層の図柄40が過度に明確に過度に視認されるのではなく、ぼんやりと淡く視認されるようになる。それとともに、上層等の直接に視認されるベタ部分41及び網点部分42により構成される図柄が明確に視認されるようになる。このため、直接に視認される図柄41,42とトイレットペーパーの白色部分を介して視認される下層の図柄40とのコントラストにより独特の特徴的な意匠性を呈するようになる。特に、図柄印刷が10~20%の場合、図柄範囲が過度に広くなく、直接視認できる印刷部分と白色部分と上層を透して視認される印刷部分のコントラストによる効果が好適に感じられるようになる。
【0038】
ここで本発明に係る白色度及び色差ΔE,ΔE´の測定手順は、図2に示すとおり、水平な測定台の上に白板紙31を5枚重ねて載置し、その上に測定対象となる試料33を重ねておく、さらに試料33と同じトイレットロールから採取したトイレットペーパー34の図柄のない部分を試料33の測定対象となる図柄部分32を覆うようにして重ねる。さらにその上にφ20mmの窓抜き部分36を有する白板紙35を測定対象となる図柄部分32が窓抜き部分36内に位置するようにして重ねる。
【0039】
そして、その窓抜き部分36からトイレットペーパー34を介して測定対象となる図柄の白色度及びLab値(上記の模様印刷を上層のトイレットペーパーの模様印刷のない白色部分を通して測定したLab値)を分光白色度・色差計により測定する。次に、測定個所が移動しないように試料32に重ねたトイレットペーパー34を取り除き、測定対象となる図柄部分の白色度及びLab値(上記の下層の模様印刷の部分を直接測定したLab値)を分光白色度・色差計により測定する。次に、さらに試料を取り除き、5枚重ねた白板紙31の最上層部分の白色度及びLab値(上記上層のトイレットペーパーの模様印刷のない白色部分のLab値)を分光白色度・色差計により測定する(ブランク値)。なお、分光白色度・色差計は、日本電色工業株式会社製 分光白色度計・色差計 PF7000又はその相当機を用いて測定する。色差ΔE,ΔE´は、測定した各Lab値より算出する。
【0040】
本発明に係るトイレットペーパーに付与する図柄を構成する色数については限定されないが、コスト、設備の観点、また、トイレットペーパーが低密度で滲みやすいことから、1~3色とするのが望ましい。また、ベタ部分と網点部分とで色を異なるようにしてもよい。なお、上記図柄のLab値を測定するにあたって、一つの図柄に複数の色がある場合には、その異なる色の部分の全てを測定し、その全ての測定値が上記数値範囲であるのがよい。
【0041】
本発明に係るトイレットペーパーにおける繊維は、限定されないが、バージンパルプ70~100質量%、古紙パルプ0~30質量%であるのが望ましい。古紙パルプを配合すると、バージンパルプ100質量%からなるものに比して、安価に製造することができる。また、古紙パルプは、古紙からパルプを再生する工程において、再生前のパルプ繊維に比して繊維が細かくなる傾向にあり、このような繊維の性質上、紙厚を厚くせずに、繊維が密となり紙力が高まりやすい。その一方で、過度に配合すると柔軟性などの風合いが低下する。よって古紙パルプの特徴に鑑みて、その配合比率を0~30質量%の範囲で定めればよい。なお、古紙パルプの種類は必ずしも限定されるものではないが、特に、ミルクカートン古紙、上質古紙を原料とする古紙パルプが望ましい。これらは原料由来の広葉樹クラフトパルプ(LBKP)が多く配合されているため、紙力を発現させやすい。
【0042】
用いるバージンパルプとしては、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)と広葉樹クラフトパルプ(LBKP)であるのがよい。これらの配合比率は、NBKP:LBKPを20:80~50:50とするのが望ましい。なお、このバージンパルプと上記の上質古紙パルプとからなる繊維素材を用いて製造されたトイレットペーパーは、古紙由来の機械パルプが5質量%以下、灰分が3質量%以下で、白色度は80~85%程度となる。
【0043】
本発明に係るトイレットロールは、エンボス加工がされていてもよい。トイレットペーパーにエンボス加工がされていると、トイレットペーパー自体が柔らかく、表面の凹凸によって便の拭き取り性に優れるようになる。また、トイレットペーパーにエンボス加工されていると紙面に凹凸が存在するため、紙面を透けて下層の模様が視認し難くなり、意匠性に優れるようになる。
【0044】
ここで、本発明に係るトイレットロールは、エンボス加工がされているが、そのエンボスパターンは必ずしも限定されるわけではない。エンボスは、マイクロエンボスやドット型のエンボス、デザインエンボス等の適宜のエンボスパターンとすることができる。但し、本発明に係るエンボスパターンは、ダブルエンボスと称される1プライずつエンボスを付与し、2プライに積層したエンボスであるのが望ましい。本発明に係る巻密度や巻き硬さとしやすい。
【実施例0045】
次いで、本発明のトイレットロールの実施例及び比較例について裏抜け防止性について検討した。各例に係るトイレットロールの構成及びトイレットペーパーの物性・組成は、下記表1のとおりである。
【0046】
裏抜け防止性は、トイレットペーパーの裏面側(非印刷面側)へのインキの滲みが目視にて確認できるものを×、確認できないものを〇と判断した。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例1~実施例4は、長尺化のために薄い紙厚となっているが、網点印刷にすることで図柄の総面積10%以上の十分な意匠性あるものでありつつ、裏抜けも防止されている。これに対して、比較例1は、図柄の総面積の割合は、実施例1と同様であるが、図柄をすべてベタ印刷としたものである。この比較例1では、裏抜けが確認されている。
【0049】
比較例2は、図柄が網点部分とベタ部分とで構成されているが、ベタ部分の総面積の割合が本発明よりも高い。この比較例2も、裏抜けが確認されている。
比較例3及び比較例4は、実施例2、実施例4とそれぞれ図柄の総面積の割合が同じであるが、図柄がベタ部分のみで構成されている。これらも裏抜けが確認されている。
本発明に係るトイレットロールでは、長尺化しても図柄の裏抜けが防止できることが確認できる。
【符号の説明】
【0050】
1…トイレットロール、10…トイレットペーパー、20…紙管(管芯)、L1…トイレットロールの巻径(直径)、L2…トイレットロールの管芯の直径、L3…トイレットロールの幅、31,32…凹部、33…谷線部、40…下層の図柄、41…上層のベタ部分、42…上層の網点部分。
図1
図2
図3