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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064646
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】木材保存用組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/56 20060101AFI20220419BHJP
   A01N 51/00 20060101ALI20220419BHJP
   A01N 47/12 20060101ALI20220419BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20220419BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220419BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20220419BHJP
   B27K 3/52 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
A01N43/56 C
A01N51/00
A01N47/12 Z
A01N25/00 102
A01P3/00
A01P7/04
B27K3/52 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173385
(22)【出願日】2020-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000232564
【氏名又は名称】バイエルクロップサイエンス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】394013644
【氏名又は名称】ケミプロ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】埜口 勇
(72)【発明者】
【氏名】水口 悟
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 譲治
【テーマコード(参考)】
2B230
4H011
【Fターム(参考)】
2B230AA01
2B230AA05
2B230BA01
2B230CA17
2B230CB02
2B230CB10
2B230CC05
4H011AA01
4H011AC03
4H011BA06
4H011BB09
4H011BB10
4H011BB13
4H011DA15
4H011DA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ペンフルフェンを含み、オオウズラタケに対する防腐性能と、防蟻性能を有する木材保存用組成物を提供する。
【解決手段】ペンフルフェン、およびネオニコチノイド系防蟻剤を含む木材保存用組成物。好ましくは、係るペンフルフェンの濃度が0.025重量%以上である、該木材保存用組成物。より好ましくは、さらに、ヨウ素系抗真菌剤を含む該木材保存用組成物。さらに好ましくは、N-メチルピロリドンを含まない該木材保存用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンフルフェン、およびネオニコチノイド系防蟻剤を含む木材保存用組成物。
【請求項2】
ペンフルフェンの濃度が0.025重量%以上である、請求項1に記載の木材保存用組成物。
【請求項3】
さらに、ヨウ素系抗真菌剤を含む請求項1または2に記載の木材保存用組成物。
【請求項4】
N-メチルピロリドンを含まない請求項1~3のいずれか1項に記載の木材保存用組成物。
【請求項5】
さらに、水、ベンジルアルコール、およびN-ジメチル脂肪酸アミドを含む請求項1~4のいずれか1項に記載の木材保存用組成物。
【請求項6】
さらに、界面活性剤を含む請求項1~5のいずれか1項に記載の木材保存用組成物。
【請求項7】
ネオニコチノイド系防蟻剤が、イミダクロプリドである請求項1~6のいずれか1項に記載の木材保存用組成物。
【請求項8】
ヨウ素系抗真菌剤が、ヨードプロピニルブチルカルバメートである請求項3~7のいずれか1項に記載の木材保存用組成物。
【請求項9】
オオウズラタケおよびカワラタケの増殖を抑制するための、請求項1~8のいずれか1項に記載の木材保存用組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の木材保存用組成物によって処理された木材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材保存用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
木材保存剤は、木部の腐朽菌による劣化と、シロアリによる食害を予防するために用いられる。日本では木材腐朽菌であるオオウズラタケおよびカワラタケに対する防腐性能と、イエシロアリに対する防蟻性能の両方について一定の性能を満たしたものが、木材保存剤として(公社)日本しろあり対策協会および(公社)日本木材保存協会より認定される。
【0003】
木材保存剤は、有機ヨウ素系化合物、アゾール系化合物などの防腐成分と、ピレスロイド系防蟻剤、ネオニコチノイド系防蟻剤などの防蟻成分を組み合わせて製造されている。特許文献1には、防腐成分としてペンフルフェンが開示されているが、オオウズラタケに対する防腐性能は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-544800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ペンフルフェンのオオウズラタケに対する防腐性能は知られていない。本発明は、ペンフルフェンを含み、オオウズラタケに対する防腐性能と、防蟻性能を有する木材保存用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、種々の防蟻成分および防腐成分を検討した結果、ペンフルフェンおよびネオニコチノイド系防蟻剤を含む木材保存用組成物が、オオウズラタケに対する防腐性能と、防蟻性能を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、ペンフルフェン、およびネオニコチノイド系防蟻剤を含む木材保存用組成物に関する。
【0008】
ペンフルフェンの濃度が0.025重量%以上であることが好ましい。
【0009】
前記木材保存用組成物は、さらに、ヨウ素系抗真菌剤を含むことが好ましい。
【0010】
前記木材保存用組成物は、N-メチルピロリドンを含まないことが好ましい。
【0011】
前記木材保存用組成物は、さらに、水、ベンジルアルコール、およびN-ジメチル脂肪酸アミドを含むことが好ましい。
【0012】
前記木材保存用組成物は、さらに、界面活性剤を含むことが好ましい。
【0013】
ネオニコチノイド系防蟻剤が、イミダクロプリドであることが好ましい。
【0014】
ヨウ素系抗真菌剤が、ヨードプロピニルブチルカルバメートであることが好ましい。
【0015】
前記木材保存用組成物は、オオウズラタケおよびカワラタケの増殖を抑制するための木材保存用組成物であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、前記木材保存用組成物によって処理された木材に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の木材保存用組成物は、オオウズラタケに対する防腐性能および防蟻性能を有し、高価なペンフルフェンの使用量を抑えながら十分な木材保存効果を達成できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の木材保存用組成物は、ペンフルフェン、およびネオニコチノイド系防蟻剤を含むことを特徴とする。
【0019】
<ペンフルフェン>
ペンフルフェン(N-(2-[1,3-ジメチルブチルフェニル]-5-フルオロ-1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド)は、下記式(I)
【化1】
で表される。ペンフルフェンは、木材腐朽菌のミトコンドリア電子伝達系に作用してエネルギー代謝を妨げ、木材腐朽菌の菌糸伸長、胞子発芽、発芽管伸長、胞子形成などを阻害する。
【0020】
木材保存用組成物中のペンフルフェンの濃度は、0.025~0.15重量%が好ましく、0.05~0.15重量%がより好ましく、0.1~0.15重量%がさらに好ましい。0.025重量%未満では防腐性能の基準を満たせず、0.15重量%を超えると保存液を保管中に結晶が析出しやすくなる傾向があり、経済的でない。なお、本明細書で記載する各成分の濃度は使用時の最終濃度であり、保存液はこの10~30倍濃度としてもよい。使用時には、保存液を水、アルコール等の溶媒で希釈して使用することができる。
【0021】
<ネオニコチノイド系防蟻剤>
ネオニコチノイド系防蟻剤は、ニコチン性アセチルコリン受容体作動薬である。本発明で用いるネオニコチノイド系防蟻剤は、防蟻性を有していれば特に限定されず、例えば、イミダクロプリド、アセタミプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、ニテンピラム、チアクロプリド、チアメトキサムなどが挙げられる。これらの中でも、水への溶解性が低い、イミダクロプリド、クロチアニジンが好ましく、イミダクロプリドがより好ましい。
【0022】
木材保存用組成物中のネオニコチノイド系防蟻剤の濃度は、0.025~0.2重量%が好ましく、0.05~0.2重量%がより好ましく、0.1~0.2重量%が更に好ましい。0.025重量%未満では防蟻性に劣る傾向があり、0.2重量%を超えると保存液を保管中に結晶が析出しやすくなる傾向があり、経済的でない。
【0023】
<防腐性能および防蟻性能>
本発明の木材保存用組成物は、木材腐朽菌に対する防腐性能とシロアリに対する防蟻性能を有する。
【0024】
木材腐朽菌としては、カワラタケ、オオウズラタケ、ニクイロアナタケモドキ、マワタグサレタケ、Poria megalopora、イドタケ、イドタケモドキ、ワタグサレタケ、チョークアナタケ、ナミダタケ、Serpula incrassanta、キカイガラタケ、Postia placenta、イチョウタケ、ヘラバタケ、マツオオジ、ヒメキカイガラタケ、キチリメンタケ、ホシゲタケ、オガサワラハリヒラタケが挙げられる。これらの中でも、カワラタケ、オオウズラタケに対し防腐性能を有することが好ましい。
【0025】
防腐性能は、JIS K1571(2010)「木材保存剤-性能基準及びその試験方法」に準拠して測定できる。測定条件は実施例に詳述する。処理試験体と無処理試験体を同時に抗菌操作に供し、無処理試験体の質量減少率がオオウズラダケの場合は30%以上、カワラタケの場合は15%以上であれば有効とする。
【0026】
また、防腐性能は、次に述べるプレートアッセイ試験によっても評価できる。すなわち、グルコース18g、ペプトン1.35g、麦芽エキス6.75g、精製水837.9gを1000ml三角フラスコに入れ溶解したのち、寒天6.75gを加え121℃、20分オートクレーブ滅菌したものに、検体を加えて混合しクリーンベンチで固化させる。対象となる木材腐朽菌(オオウズラタケおよびカワラタケ)のコロニーから菌糸片を打ち抜いて寒天培地上で、26℃で1週間インキュベーションする。放射状の菌糸成長を完全に抑制させる検体濃度を、最小発育阻止濃度(MIC)とする。
【0027】
シロアリとしては、イエシロアリ、ヤマトシロアリ、アメリカカンザイシロアリが挙げられる。これらの中でも、イエシロアリに対し防蟻性能を有することが好ましい。
【0028】
防蟻性能は、JIS K1571(2010)「木材保存剤-性能基準及びその試験方法」に準拠して測定できる。測定条件は実施例に詳述する。処理試験体と無処理試験体を同時に食害操作に供し、無処理試験体の質量減少率が20%以上であれば有効とする。
【0029】
<任意成分>
木材保存用組成物は、ペンフルフェン、およびネオニコチノイド系防蟻剤に加えて、他の防蟻成分、防腐成分、溶剤、界面活性剤、増粘剤、顔料、樹脂を含んでいてもよい。
【0030】
ネオニコチノイド系防蟻剤以外の防蟻成分としては、ビフェントリン、シラフルオフェン等のピレスロイド系防蟻剤、フィプロニル、ピリプロール等のフェニルピラゾール系防蟻剤、ブロフラニリド等のメタジアミド系防蟻剤等が挙げられる。
【0031】
ペンフルフェン以外の防腐成分としては、ヨードプロピニルブチルカルバメート(IPBC)等のヨウ素系防腐剤、3ブロモ-2,3ジヨード2-プロピニルエチルカーボネート(EBIP)、p-クロロフェニル-3-ヨード-プロパギルフォーマル(CPIPF)、シプロコナゾール、テブコナゾール、プロピコナゾール、ヘキサコナゾール等のトリアゾール化合物等が挙げられる。
【0032】
ペンフルフェン以外の防腐成分を含む場合、木材保存用組成物中の濃度は0.025~0.1重量%が好ましく、0.05~0.1重量%がより好ましい。
【0033】
溶剤としては、水、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、グリコールエステル系溶剤、ケトン系溶剤、グライム系溶剤、その他特殊溶剤が挙げられる。
【0034】
アルコール系溶剤としては、ベンジルアルコール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテートが挙げられる。グリコール系溶剤としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールが挙げられる。グリコールエーテル系溶剤としては、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルトリグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジプロピレングリコールメチルエーテルが挙げられる。グリコールエステル系溶剤としては、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。グライム系溶剤としては、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。ケトン系溶剤としては、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、イソホロンが挙げられる。その他特殊溶剤としては、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、Nブチルピロリドン(NBP)、N-ジメチル脂肪酸アミド、二塩基酸エステル(DBE)などが挙げられる。なお、ペンフルフェン、およびネオニコチノイド系防蟻剤は、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、特殊溶剤への溶解度が低いため、40~100℃に加温して溶解させられる。貯蔵時(低温)の結晶化防止のためN-ジメチル脂肪酸アミドやロジンエステルを配合し、N-メチルピロリドンなどの溶剤を使用しなくても保存安定性の高い木材保存用組成物を製造できる。
【0035】
本発明の木材保存用組成物は、固形分が10~60重量%であることが好ましく、30~50重量%であることがより好ましい。溶剤を加えることにより、固形分を適宜調整することができる。
【0036】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤が挙げられる。
【0037】
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジル化フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテルなどが挙げられる。製品としては、エマルゲンB66(花王製)、エマルゲンA-60(花王製)、エマルゲンA-90(花王製)、EMULSOGEN EL 360(クラリアントジャパン製)、EMULSOGEN TS 160(クラリアントジャパン製)、ニューコール2609(日本乳化剤製)、ノイゲン EA-137(第一工業製薬製)、DKS NL-Dash408(第一工業製薬製)、DKS NL-Dash410(第一工業製薬製)が挙げられる。これらの中でも、HLB値が10~15のものが好ましい。
【0038】
アニオン系界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシトリデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル(C8)エーテルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0039】
カチオン系界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウム、ココナットアミンアセテート、塩化ベンゼトニウム、NNジデシルNN-ジメチルアンモニウムクロライド(DDAC)、NNジデシルN-メチルポリオキシエチルアンモニウムプロピネート(DMPAP)、ジデシルジメチルアンモニウムメチル硫酸塩などが挙げられる。
【0040】
界面活性剤を含む場合、木材保存用組成物中の濃度は15~20重量%が好ましく、20~30重量%がより好ましい。
【0041】
増粘剤は、粘度や粘性の調整や貯蔵期間中の薬剤の沈殿防止により作業性を向上する目的で使用される。増粘剤としては、ウレタン系増粘剤、アクリル系増粘剤、セルロース系増粘剤、ベントナイト等の粘土鉱物等の公知の増粘剤を使用可能である。特に耐水性等の性能面でウレタン系増粘剤が好ましい。増粘剤を含む場合、木材保存用組成物中の濃度は0.5~5.0重量%が好ましい。
【0042】
本発明の木材保存用組成物は、顔料を実質的に含まないクリア塗料として好適に使用できるが、顔料を含んでもよい。顔料としては、例えば、無機顔料(酸化チタン等の白色顔料、チタニウムイエロー等の黄色顔料、酸化鉄赤等の赤色顔料、クロムグリーン等の緑色顔料、コバルトブルー等の青色顔料、カーボンブラック等の黒色顔料等)、有機着色剤(アゾ染顔料、フタロシアニン染顔料、レーキ染顔料等)、体質顔料(炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、マイカ、タルク、アルミナ、ベントナイト、酸化マグネシウム等)、光沢顔料(ステンレスフレーク等の金属箔、アルミニウム粉、亜鉛粉等の金属粉末等)等が挙げられ、これらを単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。顔料を含む場合、木材保存用組成物中の濃度は、顔料体積濃度(PVC)として10~55%が好ましい。
【0043】
樹脂としては、水に可溶であれば熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂のいずれも使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリアルキレンテレフタレート樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル-ポリビニルアルコール(ポバール)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)等のエマルション樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用できる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用できる。樹脂を用いる場合には、必要に応じて対応する硬化剤を添加することもできる。
【0044】
<調製方法>
本発明の木材保存用組成物の調製方法は、特に制限されず、各成分を混合する慣用の方法で調製できる。組成物の調製において、各成分は一括して混合してもよいし、任意の順序で混合してもよい。一例として、ネオニコチノイド系防蟻剤およびペンフルフェンを溶剤に加えて加熱して溶解させ、その後、界面活性剤を加えて混合する方法が挙げられる。
【0045】
<適用方法>
本発明の木材保存用組成物を木材に適用する方法としては、塗装法、浸漬法、含浸法、灌液法などが挙げられる。
【0046】
塗装法としては、刷毛を用いた塗装、ロールコーティング、スプレーコーティング(例えば、エアスプレー、エアレススプレーコーティング等)が挙げられる。保持量、すなわち、木材によって取り込まれる木材保存用組成物の量は60~300g/mが好ましい。
【0047】
浸漬法の場合、木材保存用組成物を含む浴の中に木材を数秒~数分の間、完全に浸漬させることが好ましい。浸漬後の木材保存用組成物の保持量は60~300g/mが好ましい。
【0048】
含浸法としては、真空プロセス、二重真空プロセス、真空-加圧プロセス、加圧注入プロセスが挙げられる。木材保存用組成物を比較的均質で深くまで分布させるには、加圧プロセスを使用することが好ましい。
【0049】
その他に、例えば木材保存用組成物を含む木材/プラスチック複合材料を製造する場合には、たとえば、木材粒子、熱可塑性ポリマー、および木材保存用組成物を、熱エネルギーを加えながら混合する。混合と同時に押出し成形または吹付け成形してもよい。
【0050】
本発明の木材保存用組成物は、木材に適用後、常温(例えば15~25℃)で、又は加温(例えば50~100℃で加温)することにより、乾燥できる。
【0051】
本発明の木材保存用組成物は、木材と直接接するように下塗り剤として用いてもよい。また、あらかじめ木材の上に形成されたコーティング層の上に、上塗り剤又は中塗り剤として塗布してもよい。
【0052】
木材保存用組成物の適用対象の木材としては、例えば建築構造物、輸送機器、橋梁、標示板、標示器、木工品等が挙げられる。本発明の木材保存用組成物は、木材と樹脂との複合材料、木材と金属との複合材料に対しても有効である。本材の樹種は特に限定されず、例えばタモ材、アッシュ、スギ、エゾ松、松、モミ、エゾ松、松とモミが混在した木材(SPF材)等が例示できる。
【0053】
本発明はまた、上記木材保存用組成物によって処理された木材である。本発明の木材は、腐朽菌およびシロアリに耐性であり、長期にわたって木材の強度および外観を維持できる。また、前記木材からなる木製品、例えば建築構造物、輸送機器、橋梁、標示板、標示器、木工品等も、本発明の対象である。また、前記木材と樹脂との複合材料、木材と金属との複合材料も、本発明の対象である。
【実施例0054】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
【0055】
(1)使用材料
(1-1)防腐成分
ペンフルフェン
ヨードプロピニルブチルカルバメート(IPBC)
(1-2)防蟻成分
イミダクロプリド
(1-3)界面活性剤
ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル
塩化ベンザルコニウム
ココナットアミンアセテート
(1-4)アルコール系溶剤
ベンジルアルコール
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル
N-ジメチル脂肪酸アミド
(1-5)供試菌・供試虫
オオウズラタケ(Fomitopsis(旧名Tyromyces) palustris(Berk.et Curt.)Gilbn.&Ryv.FFPRI 0507)
カワラタケ(Trametes(旧名Coriolus) versicolor(L.:Fr.)Pilat FFPRI 1030)
イエシロアリ Coptotermes formosanus SHIRAKI
【0056】
(2)実施例1~7および比較例1~12
下記表1に記載の組成物を作製した。表1において各成分の配合量は重量%で示し、残部は水とした。各組成物を水で20倍希釈し、後述する条件で防腐試験および防蟻試験を行った。
【表1】
【0057】
(3)防腐試験条件
木材片(杉辺材(木口面5mm×20mm、長さ40mm))に試料を110±10g/m塗布し、7日間以上室温に放置した。試験体の個数は、1試料につき繰り返し個数を9とした。ガラス瓶に海砂と菌の生育に適した液体培地を入れ、そこにオオウズラタケまたはカワラタケを無菌的に接種し、26℃で2週間培養した。培地上に腐朽菌の菌糸が蔓延したら菌糸上にプラスチックの枠で固定した試験体3個を置き、培養瓶を26℃、相対湿度70%以上の場所で12週間静置した。抗菌操作終了後、試験体の腐朽程度を質量減少率から求めた。なお、無処理試験体(比較例12)は抗菌操作における培養菌の活力の判定に用いた。無処理試験体を同時に抗菌操作に供し、その質量減少率がオオウズラダケの場合は30%以上、カワラタケの場合は15%以上であれば培養菌は有効と判断した。質量減少率が3%以下の場合に木材保存剤の性能基準を満足する。
【0058】
(4)防蟻試験条件
木材片(杉辺材(木口面10mm×10mm、長さ20mm))に試料を110±10g/m塗布し、7日間以上室温に放置した。試験体の個数は、1試料につき繰り返し個数を5とした。飼育容器に試験体1個を木口面が上下になるように置き、供試虫(職ぎ(蟻)150頭と兵ぎ(蟻)15頭)を投入し、飼育容器を28℃の暗所に21日間静置した。食害操作終了後、試験体の食害の程度を質量減少率から求め、質量減少率が3%以下の場合に木材保存剤の性能基準を満足するものとした。なお、無処理試験体(比較例12)は食害操作における供試虫の活力の判定に用いた。無処理試験体を同時に食害操作に供し、その質量減少率が20%以上であれば供試虫は有効と判断した。
【0059】
表1に示すように、防蟻成分のみを含む比較例1、9~10は防腐性能が不十分であり、防腐成分のみを含む比較例2~3、6~8は防蟻性能が不十分であった。実施例1~7は、ペンフルフェン、およびネオニコチノイド系防蟻剤を含むことにより、オオウズラタケに対する防腐性能と防蟻性能を有していた。