(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064651
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】手袋の固定部材
(51)【国際特許分類】
B25J 21/02 20060101AFI20220419BHJP
A41D 19/015 20060101ALI20220419BHJP
A61B 42/10 20160101ALI20220419BHJP
【FI】
B25J21/02
A41D19/015 610Z
A61B42/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173393
(22)【出願日】2020-10-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】520113446
【氏名又は名称】株式会社スターボール
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 充紀
【テーマコード(参考)】
3B033
3C707
【Fターム(参考)】
3B033AA15
3C707XJ01
3C707XJ03
(57)【要約】
【課題】簡易な仕切壁に手袋を容易に着脱できるようにする。
【解決手段】手袋10が着脱可能に装着される筒体13と、筒体13を仕切壁1に設置するためのリング状の蓋体14とから構成される。筒体13の本体部15の使用者側の一端に、手袋10の手首部を折り返して取り付けたときの抜け防止のための凸部16が設けられ、筒体13の作業空間側の他側に、仕切壁1に当接するフランジ17が設けられ、フランジ17から他側に向かって突出するように外筒部18が設けられ、蓋体14に、外筒部18に挿入されて嵌まり込む内筒部20が一側に向かって突出するように設けられる。挿通孔11に嵌め込まれた外筒部18に内筒部20が挿入され、フランジ17と蓋体14とによって仕切壁1が挟まれる。手袋10を装着した手を筒体13から引き抜くと、手袋10が一側に引っ張り出され、裏返しに手袋10を固定部材12から外せる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者と作業空間とを隔てる仕切壁に形成された挿通孔に嵌め込まれ、手袋を作業空間に突き出すように固定するための固定部材であって、手袋が着脱可能に装着される筒体と、筒体を仕切壁に固定するためのリング状の蓋体とから構成され、筒体の本体部の使用者側の一端に、手袋の手首部を折り返して取り付けたときの抜け防止のための凸部が設けられ、筒体の作業空間側の他側に、仕切壁に当接するフランジが設けられ、フランジから他側に向かって突出するように外筒部が設けられ、蓋体に、外筒部に挿入されて嵌まり込む内筒部が一側に向かって突出するように設けられ、筒体の外筒部が仕切壁の挿通孔に嵌め込まれ、蓋体の内筒部が外筒部に挿入され、筒体のフランジと蓋体とによって仕切壁を挟み込み、装着された手袋の指先部が作業空間に突き出し、手を筒体から引き抜いたときに手袋が裏返しになって一側に引っ張り出されることを特徴とする手袋の固定部材。
【請求項2】
筒体の外筒部の内径が本体部の内径よりも大とされ、蓋体の内径が本体部の内径と同じとされ、筒体のフランジと蓋体の一側の端面との隙間は仕切壁の厚さ以上とされたことを特徴とする請求項1記載の手袋の固定部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手袋の使用者と作業区間とを隔てる仕切壁において、手袋を簡単に着脱できるようにするための手袋の固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
感染性の飛沫の拡散を防止するために医療従事者と患者とを隔離する仕切壁が用いられる。どこでも容易に対応できるように、現場で組み立て可能な仕切壁として、例えば特許文献1に記載の飛沫感染防止用盾があり、手袋の使用者である医療従事者と患者がいる作業空間を隔てる。この仕切壁は、樹脂パネル製あるいは段ボール製であるので、容易に持ち運ぶことができる。この仕切壁を設置すれば、手袋を装着した医療従事者は、仕切壁に形成された孔から手を患者側に出して、患者を検査することができる。このような仕切壁を用いることにより、どこでも検査場とすることが可能となる。
【0003】
ところで、医療従事者などの手袋の使用者が手袋を簡単に装着できるようにするために、特許文献2には、装置本体の側壁に手袋支持用の装着筒が設置され、手袋の指先部を装着筒に挿入して、手袋の手首部を装着筒の端部に嵌め込み、手を手袋に挿入して装着することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3226600号公報
【特許文献2】特開平6-285083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の装着筒は装置本体に固定されており、容易に着脱することができない。そのため、特許文献1の仕切壁に適用すると、装着筒が仕切壁に一体化され、持ち運びやすいといった利点が薄れる。また、手袋は使い捨てとされ、仕切壁に容易に着脱できることが望まれる。そこで、本発明は、上記に鑑み、簡易な仕切壁において、手袋を容易に着脱することができる固定部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の手袋の固定部材は、使用者と作業空間とを隔てる仕切壁に形成された挿通孔に嵌め込まれ、手袋を作業空間に突き出すように固定するものであって、手袋が着脱可能に装着される筒体と、筒体を仕切壁に設置するためのリング状の蓋体とから構成される。筒体の本体部の使用者側の一端に、手袋の手首部を折り返して取り付けたときの抜け防止のための凸部が設けられ、筒体の作業空間側の他側に、仕切壁に当接するフランジが設けられ、フランジから他側に向かって突出するように外筒部が設けられ、蓋体に、外筒部に挿入されて嵌まり込む内筒部が一側に向かって突出するように設けられる。筒体の外筒部が仕切壁の挿通孔に嵌め込まれ、蓋体の内筒部が外筒部に挿入され、筒体のフランジと蓋体とによって仕切壁を挟み込んで固定部材は仕切壁に取り付けられる。このとき、装着された手袋の指先部が作業空間に突き出す。手袋を外すとき、手を筒体から引き抜くと、手袋が裏返しになって一側に引っ張り出され、手袋の表面に触れることなく手袋を固定部材から外せる。
【0007】
筒体の外筒部の内径が本体部の内径よりも大とされ、蓋体の内径が本体部の内径と同じとされる。これにより、固定部材の内周面が面一となり、固定部材への手袋の出し入れがしやすくなる。筒体のフランジと蓋体の一側の端面との隙間は仕切壁の厚さ以上とされる。これにより、段ボール製などの簡易な仕切壁であっても、筒体に蓋体を確実に挿入することができ、固定部材をしっかりと仕切壁に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、手袋を装着した筒体と蓋体とに分割して、蓋体を筒体に嵌め込んだり、取り外したりすることにより、手袋の固定部材を仕切壁に簡単に着脱することができる。したがって、どこにでも設置できる簡易な仕切壁において、手袋を容易に使用することが可能となり、使用者を守りながらいろいろな作業が可能となる。また、手袋を引っ張り出すことにより、裏返したまま手袋を仕切壁から外すことができ、手袋の表面に付着した生物や物体に触れることなく、手袋を安全に処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態の固定部材を使用した仕切壁の斜視図
【
図3】手袋を装着した医療従事者の使用状態を示す斜視図
【
図4】患者側から見た手袋を装着した医療従事者の使用状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る手袋の固定部材を医療シールドのための仕切壁に使用した実施形態を
図1~4に示す。医療シールド用の仕切壁1は、手袋を使用する使用者である医療従事者と患者がいる作業空間とを隔てる隔離パネル本体2と、その四方に患者側に突出するように形成された上下左右の袖壁部3と、左右の袖壁部3からさらに患者側に突出され、かつ床面に設置可能な高さを有する側方遮蔽部4とから構成される。隔離パネル本体2と側方遮蔽部4とによって囲まれた作業空間に患者が入り、医療従事者は隔離パネル本体2を挟んで患者と対面する。袖壁部3および側方遮蔽部4により患者からの飛沫が医療従事者側に拡散するのを防止できるようになっている。
【0011】
これらの隔離パネル本体2、袖壁部3および側方遮蔽部4は、軽量樹脂パネルまたは段ボール等の平板により形成される。軽量樹脂パネルとしては、発泡スチロールや合成樹脂製の中空パネル等が例示できる。段ボールとしては、紙製あるいは樹脂製のものが例示できる。いずれも軽量であるので、簡単に持ち運びすることができる。
【0012】
袖壁部3は、隔離パネル本体2の周縁を折り返して一体的に形成される。側方遮蔽部4は、左右の袖壁部3に接着剤、粘着テープ、面ファスナ等の接合手段により接合される。組み立てられた仕切壁1は、自立可能であり、軽量であるので、屋内外を問わず持ち運んで任意の場所に設置することができる。なお、平板のまま持ち運んで、仕切壁1を現場で組み立ててもよい。
【0013】
隔離パネル本体2には、その中央部に医療従事者が患者を視認することができるように矩形状の視認用窓5が形成され、視認用窓5には、作業空間と隔離するための透明なフィルム6が貼り付けられている。視認用窓5の下側には、聴診器等を貫通させる蓋付の貫通孔7が形成され、通常は蓋により閉鎖され、必要な場合のみ蓋を開放して聴診器等を通すことができるようになっている。
【0014】
視認用窓5の下側の左右に、手袋10を装着した医療従事者が作業空間に手を差し出すための挿通孔11が形成されている。
図5に示すように、挿通孔11には、手袋10を着脱可能に固定するための固定部材12が嵌め込まれ、手袋10が作業空間に突き出るように固定される。
図6、7に示すように、固定部材12は、2分割された構造とされ、手袋10が装着される筒体13と、筒体13を仕切壁1に設置するためのリング状の蓋体14とから構成される。
【0015】
筒体13の円筒状に形成された本体部15の一側である医療従事者側に、手袋抜け防止のための凸部16が設けられ、凸部16は、本体部15の一端に外周面に盛り上がるように円周方向に形成され、凸部16の外径は、手袋10の手首部の口径よりも少し大とされる。筒体13の他側である患者側に、仕切壁1に当接するフランジ17が設けられ、フランジ17から他側に向かって突出するように外筒部18が設けられる。外筒部18の外径は円形状に形成された挿通孔11と同径とされ、外筒部18の内径は本体部15の内径よりも大とされる。フランジ17の外径や厚さを大きくすることにより、固定部材12の強度が高くなる。
【0016】
蓋体14に、外筒部18に挿入されて嵌まり込む内筒部20が一側に向かって突出するように設けられる。蓋体14の内径は本体部15の内径と同じとされ、
図8に示すように、蓋体14の内筒部20を筒体13の外筒部18に嵌め込んだとき、固定部材12の内周面は面一となる。内筒部20の外周面に、山形状のリブ21が円周方向に形成され、外筒部18の内周面に、リブ21が嵌まる溝22が円周方向に形成される。蓋体14の内筒部20を筒体13の外筒部18に押し込んで挿入すると、リブ21が溝22に嵌まり、蓋体14が筒体13から容易に外れないように嵌め込まれる。また、フランジ17と蓋体14の一側の端面との隙間23は仕切壁1の厚さ以上とされる。この隙間23に応じて内筒部20の突出長さが設定され、外筒部18の突出長さは、蓋体14を筒体13に嵌め込んだときに蓋体14の一側の端面24に当接するように設定される。これにより、フランジ17と蓋体14との隙間23は仕切壁1より大きくなるので、固定部材12は多少厚い仕切壁1にも取り付け可能となり、仕切壁1の強度を高めることができる。
【0017】
現場に設置された上記の仕切壁1において、固定部材12を取り付ける。まず、筒体13を仕切壁1の挿通孔11に差し込み、蓋体14の内筒部20を筒体13の外筒部18に挿入して、蓋体14を筒体13に嵌め込む。このとき、筒体13のフランジ17と蓋体14とによって仕切壁1が挟み込まれ、固定部材12が仕切壁1に固定される。なお、仕切壁1が薄い場合、仕切壁1はフランジ17と蓋体14の両者には接触しないが、固定部材12は仕切壁1の挿通孔11から外れることはない。なお、仕切壁1の厚さに応じて、外筒部18および内筒部20の突出長さを変更してもよい。
【0018】
次に、手袋10の指先部が患者側の空間に突き出るように、手袋10を筒体13の一側から挿入する。そして、手袋10の手首部を折り返して、筒体13の凸部16に被せ、手袋10を固定部材12に取り付ける。ここで、ゴム製やシリコン製などの弾力性を有する手袋10の場合、手袋10の手首部が伸縮するので、手袋10を筒体13に被せると、手袋10の手首部が凸部16を越えて筒体13の外周面に密着する。ポロエチレン製などの弾力性のない手袋10の場合、手袋10の手首部を筒体13の凸部16に被せて、バンド、輪ゴムなどのリング状の締付部材で手首部を筒体13の外周面に固定する。手袋10は、指先部が作業空間に突き出た状態で仕切壁1に固定される。医療従事者は開口した手袋10の手首部から手を差し込むだけで、簡単に手袋10を装着することができる。そして、手袋10の使用中に手を伸ばしたとき、手袋10は引っ張られるが、手首部が凸部16に引っ掛かって手袋10は筒体13から外れることはない。
【0019】
使い捨ての手袋10を交換するとき、手袋10をした手を固定部材12から抜くと、
図9に示すように、手袋10が裏返しになって筒体13の一端から引き出される。固定部材12の内周面は面一になっているので、手袋10が引っかからずにスムーズに手袋10が引き出される。裏返しになった指先部が現れ、手袋10を引っ張ると、手首部が筒体13から抜けて、裏返しになった手袋10が固定部材12から外れる。作業空間に露出していた手袋10の表面に触れることなく、手袋10を仕切壁1から外すことができる。そして、新しい手袋10を装着する。このように、簡単に手袋10を外すことができるので、手袋10の交換を容易に行うことができる。しかも、手袋10の表面に付着した生物や物体に触れることなく、手袋10を安全に処理できる。
【0020】
固定部材12を取り外す場合には、蓋体14を引っ張ると、リブ21が溝22から外れ、蓋体14が筒体13から抜けて、筒体13が仕切壁1から外れる。そして、取り外した固定部材12を別の仕切壁1に簡単に取り付けることができる。例えば、平板に孔を開けて固定部材12を取り付ければ、簡易の仕切壁1ができ、緊急時に活用できる。
【0021】
図10に示すように、上記の固定部材12は、医療用の仕切壁1に限らず、各種の作業空間を形成できる仕切壁1に取り付けることができる。仕切壁1は、どこにでも挿通孔11を開けることができるような紙、プラスチック、木材、金属等の軽量な材料であればよい。そして、仕切壁1を所望の場所に設置し、仕切壁1に取り付けられた手袋10に手を入れて、作業空間で多様な作業が行える。例えば、図中(a)に示すように、段ボール箱に挿通孔11を開けて、固定部材12を取り付け、箱内で塗装作業、洗浄作業、ショットブラスト作業などを行う。図中(b)に示すように、透明な樹脂パネルによって密閉した作業空間を形成し、油、薬品、溶剤などを取り扱う作業、食品の加工作業、部品や製品の検査作業および組立作業などを行うのに使用してもよい。また、図中(c)に示すように、平板の仕切壁1に任意の位置に挿通孔11を複数個開けて、各挿通孔11に固定部材12を取り付けてもよい。図中(d)に示すように、小型の仕切壁1に固定部材12を取り付けると、子供の遊び道具として使用したり、家事などに使用することができる。
【0022】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。固定部材は、円筒に限らず角筒であってもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 仕切壁
2 隔離パネル本体
10 手袋
11 挿通孔
12 固定部材
13 筒体
14 蓋体
15 本体部
16 凸部
17 フランジ
18 外筒部
20 内筒部
21 リブ
22 溝
【手続補正書】
【提出日】2021-01-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者と作業空間とを隔てる仕切壁に形成された挿通孔に嵌め込まれ、手袋を作業空間に突き出すように固定するための固定部材であって、手袋が着脱可能に装着される筒体と、筒体を仕切壁に固定するためのリング状の蓋体とから構成され、筒体の本体部の使用者側の一端に、手袋の手首部を折り返して取り付けたときの抜け防止のための凸部が設けられ、筒体の作業空間側の他側に、仕切壁に当接するフランジが設けられ、フランジから他側に向かって突出するように外筒部が設けられ、蓋体に、外筒部に挿入されて嵌まり込む内筒部が一側に向かって突出するように設けられ、筒体の外筒部の内径が本体部の内径よりも大とされ、蓋体の内径が本体部の内径と同じとされ、筒体のフランジと蓋体の一側の端面との隙間は仕切壁の厚さ以上とされ、筒体の外筒部が仕切壁の挿通孔に嵌め込まれ、蓋体の内筒部が外筒部に挿入され、筒体のフランジと蓋体とによって仕切壁を挟み込み、装着された手袋の指先部が作業空間に突き出し、手を筒体から引き抜いたときに手袋が裏返しになって一側に引っ張り出されることを特徴とする手袋の固定部材。