(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064674
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】マグネットホルダ
(51)【国際特許分類】
H01F 7/02 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
H01F7/02 F
H01F7/02 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173436
(22)【出願日】2020-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000189154
【氏名又は名称】カネテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰正
(72)【発明者】
【氏名】山木 勝
(57)【要約】
【課題】狭い作業箇所であっても確実に吸着面のオンオフ切り替えが可能なマグネットホルダを提供すること。
【解決手段】磁石10と、磁石10を周方向に所要間隔をあけて配設可能に形成されたホルダ20と、ホルダ20を水平面内で回動可能な状態で挟持する上面側磁性体板30,下面側磁性体板40と、下面側磁性体板40のホルダ20の下側面に形成され、下側面の中央位置から外周縁に向かって延設されたセパレータ44と、を具備し、下側面に正対した際、磁石10は下側面の外周縁とセパレータ44により区切られた領域内に収容されていると共に、平板部22Aの周方向に隣り合う磁石10の磁極を互いに異ならせ、ホルダ20は、セパレータ44により磁石10の平面領域がホルダ20の回動方向に分割させた状態の位置とセパレータ44の間の位置に磁石10を収める位置との間で回動することを特徴とするマグネットホルダ100である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石と、
非磁性体からなり、前記磁石を円周状配列で所要間隔をあけて配設可能に形成されたホルダと、
前記ホルダを水平面内で回動可能な状態で前記ホルダを厚さ方向に挟持する第1磁性体板および第2磁性体板と、
前記第2磁性体板の前記ホルダの挟持面と反対側面に形成され、前記反対側面の中央位置から前記反対側面の外周縁に向かって延設された4本以上の偶数本のセパレータと、を具備し、
前記反対側面に正対した際において前記磁石は前記反対側面の外周縁と前記セパレータにより区切られた領域内で磁極が同一となるように収容されていると共に、前記ホルダの回動方向に隣り合う前記磁石の前記磁極が互いに異なる配列をなしており、
前記ホルダは、前記セパレータにより前記磁石の平面領域が前記ホルダの回動方向に分割された状態の位置と前記セパレータの間の位置に前記磁石を収める位置との間で回動することを特徴とするマグネットホルダ。
【請求項2】
前記磁石の平面視形状は扇形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のマグネットホルダ。
【請求項3】
前記ホルダと前記第1磁性体板および前記第2磁性体板がいずれも円形に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のマグネットホルダ。
【請求項4】
前記ホルダと前記第1磁性体板および前記第2磁性体板がいずれも正N角形(Nは4以上の偶数)であって、前記セパレータが前記正N角形の各頂点に向かって延設されていることを特徴とする請求項1または2記載のマグネットホルダ。
【請求項5】
前記第2磁性体板には、前記反対側面から突出させた突出磁極が設けられていることを特徴とする請求項1~4のうちのいずれか一項に記載のマグネットホルダ。
【請求項6】
前記突出磁極は、前記セパレータにより区切られた外周縁位置に配設されていることを特徴とする請求項5記載のマグネットホルダ。
【請求項7】
前記突出磁極は、前記セパレータの配設間隔位置の各々において、前記反対側面の中央部分から前記外周縁に向けた径方向所要範囲に配設されていることを特徴とする請求項5記載のマグネットホルダ。
【請求項8】
前記突出磁極は、前記セパレータおよび前記外周縁によって区切られた領域内において、前記セパレータに沿って平行に配設された2本の直線部と、前記反対側面の中央側端部において前記直線部の内側端部どうしを連結する連結部とを有していることを特徴とする請求項5記載のマグネットホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマグネットホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄定盤または機械テーブル上において、治具または測定装置を固定する際における仮付台としてマグネットホルダが好適に用いられている。このようなマグネットホルダとしては、例えば非特許文献1,2に開示されているような構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“マグネット応用機器の総合メーカー、カネテック 薄型永磁ホルダ台 [MB-L]”[online]、カネテック株式会社、[令和2年9月18日検索]、インターネット<URL:http://www.kanetec.co.jp/products/mb-l.html>
【非特許文献2】“マグネット応用機器の総合メーカー、カネテック 薄型永磁ホルダ台 [MB-L-C]”[online]、カネテック株式会社、[令和2年9月18日検索]、インターネット<URL:http://www.kanetec.co.jp/products/mb-l-C.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1,2に開示されているマグネットホルダは、本体内部に収容された複数の永久磁石を水平面内で回動させることにより、本体底面に配設されたセパレータに対する配列を変更することで本体底面における吸着面のオンオフ切り替えをしている。非特許文献1,2におけるマグネットホルダにおいて、本体底面に配設されたセパレータは1本のみであるため、吸着面のオンオフ切り替え操作は操作レバーを90度回動させなければならず、狭い作業箇所においては吸着面のオンオフ切り替え操作が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは次のとおりである。すなわち、吸着面のオンオフ切り替えをする際における磁石が配設されているホルダの回動角度を小さくすることで、狭い作業箇所であっても確実に吸着面のオンオフ切り替えが可能なマグネットホルダを提供することにある。
【0006】
上記課題を解決するため発明者が鋭意研究した結果、以下の構成に想到した。すなわち、本発明は、磁石と、非磁性体からなり、前記磁石を円周状配列で所要間隔をあけて配設可能に形成されたホルダと、前記ホルダを水平面内で回動可能な状態で前記ホルダを厚さ方向に挟持する第1磁性体板および第2磁性体板と、前記第2磁性体板の前記ホルダの挟持面と反対側面に形成され、前記反対側面の中央位置から前記反対側面の外周縁に向かって延設された4本以上の偶数本のセパレータと、を具備し、前記反対側面に正対した際において前記磁石は前記反対側面の外周縁と前記セパレータにより区切られた領域内で磁極が同一となるように収容されていると共に、前記ホルダの回動方向に隣り合う前記磁石の前記磁極が互いに異なる配列をなしており、前記ホルダは、前記セパレータにより前記磁石の平面領域が前記ホルダの回動方向に分割された状態の位置と前記セパレータの間の位置に前記磁石を収める位置との間で回動することを特徴とするマグネットホルダである。
【0007】
これにより、マグネットホルダの吸着面(第2磁性体板のホルダ挟持面と反対側面)における磁極の数が増加することになるので、吸着面のオンオフ切り替えを行う際における回動角度を大幅に小さくすることができ、狭い作業箇所であっても確実に吸着面のオンオフ切り替えが可能になる。
【0008】
また、前記磁石の平面視形状は扇形状に形成されていることが好ましい。
【0009】
これにより、ホルダに収容する磁石を可及的に大きくすることができるので、吸着面の吸着力を向上させることができる。
【0010】
また、前記ホルダと前記第1磁性体板および前記第2磁性体板がいずれも円形に形成されていることが好ましい。また、前記ホルダと前記第1磁性体板および前記第2磁性体板がいずれも正N角形(Nは4以上の偶数)であって、前記セパレータが前記正N角形の各頂点に向かって延設されていることも好ましい。
【0011】
これらにより、円形状のマグネットホルダや正N角形状(Nは4以上の偶数)のマグネットホルダにすることができ、容易に多極化をすることができる。
【0012】
また、前記第2磁性体板には、前記反対側面から突出させた突出磁極が設けられていることが好ましい。
【0013】
これにより、磁石の磁気を吸着部に集約することができ、吸着力をさらに向上させることができる。また、吸着部の吸着力をオフにした際に、吸着部と被吸着物との分離が容易になる。
【0014】
また、前記突出磁極は、前記セパレータにより区切られた外周縁位置に配設されていることが好ましい。また、前記突出磁極は、前記セパレータの配設間隔位置の各々において、前記反対側面の中央部分から前記外周縁に向けた径方向所要範囲に配設されていることが好ましい。また、前記突出磁極は、前記セパレータおよび前記外周縁によって区切られた領域内において、前記セパレータに沿って平行に配設された2本の直線部と、前記反対側面の中央側端部において前記直線部の内側端部どうしを連結する連結部とを有していることが好ましい。
【0015】
これらにより、被吸着物の形状に応じた磁極形状にすることができる。また、突出磁極と磁石の配設位置を近接させることにより、磁気漏れを削減することができるため、突出磁極における吸着力をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示におけるマグネットホルダの構成を採用することにより、吸着面である第2磁性体板のホルダ挟持面と反対側面における磁極の数が増加するため、吸着面における吸着力のオンオフ操作をする際における磁石が配設されているホルダの回動角度が小さくなる。したがって、狭い作業箇所であっても確実に吸着面のオンオフ切り替えが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態におけるマグネットホルダの斜視図および底面図である。
【
図2】第1実施形態におけるマグネットホルダの一部透視平面図である。
【
図3】
図2に示すマグネットホルダの突出部をオフ方向に切り替えた状態を示す一部透視平面図である。
【
図4】第1実施形態におけるマグネットホルダの突出磁極の磁力による吸着力がオンのときの磁石の配列(A)と、突出磁極の磁力による吸着力がオフのときの磁石の配列(B)を示す説明図である。
【
図5】第2実施形態におけるマグネットホルダの一部透視底面図である。
【
図6】第3実施形態におけるマグネットホルダの一部透視底面図である。
【
図7】第4実施形態におけるマグネットホルダの一部透視底面図である。
【
図8】第1実施形態におけるマグネットホルダの変形例を示す一部透視底面図(A)および第2実施形態におけるマグネットホルダの変形例を示す一部透視底面図(B)である。
【
図9】第3実施形態におけるマグネットホルダの変形例を示す一部透視底面図(A)および第4実施形態におけるマグネットホルダの変形例を示す一部透視底面図(B)である。
【
図10】他の実施形態におけるマグネットホルダの一部透視平面図(A)と斜視図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明にかかるマグネットホルダの実施形態について説明を行う。
【0019】
(第1実施形態)
図1~
図3に示すように、本実施形態におけるマグネットホルダ100は、磁石10、磁石10を保持するホルダ20、磁石10を保持したホルダ20を水平面内で回動可能な状態で厚さ方向に挟持する第1磁性体板としての上面側磁性体板30および第2磁性体板としての下面側磁性体板40を具備している。
【0020】
図2と
図3に示すように、磁石10は平面視形状が扇形に形成されており、ホルダ20の一部である内ホルダ22の平板部22Aの平面領域内において平板部22Aの周方向に所要間隔をあけて4箇所に配設されている。本実施形態における磁石10は、平板部22Aの上下面方向に磁極が形成された平面視扇形状のネオジウム磁石を用いているが、磁石10の種類は特に限定されるものではない。平板部22Aの周方向(ホルダ20の回動方向)において隣り合う磁石10は、平板部22Aの上面にあらわれる磁極が互いに異なるように円周状配列で所要間隔をあけて配設されている。
【0021】
磁石10が収容されるホルダ20は非磁性体により形成された内ホルダ22および外ホルダ24を有している。本実施形態においてはホルダ20をSUS304により形成しているが、非磁性体材料であれば特に限定されるものではない。内ホルダ22は、平面視が円形をなす平板部22Aと平板部22Aの外周縁から平板部22Aの径外方向に突設させた突出部22Bを有している。平板部22Aには磁石10を収容する収容部22Cが平板部22Aの周方向に沿って複数配設されている。本実施形態においては、それぞれの収容部22Cの平面形状を磁石10の平面形状と同一形状に形成し、磁石10を収容部22Cに嵌合させることにより収容しているが、この形態に限定されるものではなく、磁石10を落下させずに保持可能であれば具体的な形状は限定されない。
【0022】
内ホルダ22を収容する外ホルダ24には内ホルダ22の平板部22Aを収容する平板部収容部24Aが形成されたトレー状に形成されている。平板部収容部24Aの内周面には平板部22Aの外周縁に当接する位置決め用突起24Bが複数箇所に配設され、外ホルダ24の側面のうちの一面には、内ホルダ22の突出部22Bを水平面内で回動可能にするための開口部24Cが形成されている。このような外ホルダ24に収容された内ホルダ22は、開口部24Cから外ホルダ24の外方に突出する突出部22Bを
図2に示す状態から
図3に示す状態のように水平面内で回動させることで、位置決め用突起24Bにより平板部22Aの外周縁位置が位置決めされた状態で回動させることができる。
【0023】
水平面内において回動可能な状態で磁石10を収容したホルダ20は、ホルダ20の厚さ方向(上下面)から上面側磁性体板30および下面側磁性体板40により挟持されている。本実施形態においては、上面側磁性体板30および下面側磁性体板40として軟鉄を用いているが、軟鉄に限定されるものではなく、磁性体であれば特に限定されるものではない。
【0024】
上面側磁性体板30と下面側磁性体板40はホルダ20の平面形状よりもわずかに大きい平面形状に形成されており、ホルダ20の突出部22Bの一部が上面側磁性体板30および下面側磁性体板40の側面から突出した状態になっている。上面側磁性体板30の上面側には、外周縁位置に沿って形成された組立用ねじ孔32と上面中央部分に形成された固定用ねじ孔34を有している。組立用ねじ孔32は上面側磁性体板30とホルダ20および下面側磁性体板40を一体に組み立てるためのものであり、固定用ねじ孔34は上面側磁性体板30の上面に載置した物品をねじ固定するためのものである。本実施形態においては固定用ねじ孔34を1箇所のみに配設しているが、上面側磁性体板30の上面に固定用ねじ孔34を複数配設することもできる。
【0025】
下面側磁性体板40のホルダ20の挟持面とは反対側面である底面には、下面側磁性体板40をホルダ20と上面側磁性体板30と一体に組み立てるための組立用ねじ孔42が配設されている。また、下面側磁性体板40の底面には、中心位置を基点として、外周縁に向かって放射状に延設された4本のセパレータ44が形成されている。4本のセパレータ44はそれぞれの起点を共通させた状態で十字形状に形成されている。本実施形態におけるセパレータ44は、下面側磁性体板40に形成された2段底を有する溝体により形成されている。より詳細には、浅底で幅広の第1溝体44Aと第1溝体44Aの幅方向中央部分において第1溝体44Aよりも深底で幅狭の第2溝体44Bとによりセパレータ44が形成されている。このようにセパレータ44を2段底構造の溝体にすることで、セパレータ44の製造時における加工が容易になる。
【0026】
また、本実施形態における下面側磁性体板40の外周縁は、
図1の底面図のハッチング部分で示されているように、下面側磁性体板40の底面から突出する突出磁極46に形成されている。本実施形態においては、セパレータ44により外周縁が長さ方向の中間位置において区切られているため、突出磁極46は下面側磁性体板40の底面のそれぞれの隅角部位置において等脚のL字形状に形成されている。突出磁極46は磁力による吸着部であって、操作レバーである突出部22Bの回動操作により吸着力のオンオフが切り替えられる。
【0027】
図4は、突出磁極46の磁力による吸着力がオンのときの磁石10の配列(A)と、突出磁極46の磁力による吸着力がオフのときの磁石10の配列(B)を示す説明図である。突出磁極46の吸着力がオンの状態では、
図2および
図4(A)に示すように磁石10はセパレータ44により区切られた下面側磁性体板40の底面の平面領域内に収められた状態になっている。このときの磁力線は、2点鎖線の矢印で示すように突出磁極46の突出方向に沿って磁力線が放出されている状態になる。すなわち、突出磁極46に磁性体を近づけると磁性体を十分な磁力線が通過し、磁性体が突出磁極46に吸着されることになる。
【0028】
これに対し、突出磁極46の吸着力がオフの状態では、
図3および
図4(B)に示すように磁石10の平面位置はセパレータ44の平面位置を跨がせた(セパレータ44により磁石10の平面領域が内ホルダ22(ホルダ20)の回動方向に分割された)配列になっている。このときの磁力線は、2点鎖線で示すように、セパレータ44で区切られた下面側磁性体板40の底面の平面領域内で隣り合う磁石10どうしで磁力がショートした状態になり、突出磁極46の突出方向には磁力線が放出されない状態になる。すなわち、突出磁極46に磁性体を近づけても磁性体には磁力線がほとんど通過せず、磁性体が突出磁極46に吸着されない状態になる。
【0029】
このように、本実施形態におけるマグネットホルダ100は、従来技術におけるマグネットホルダに比較して、吸着部のオンオフ動作を切り替える操作レバーである突出部22Bの回動角度を半分程度にすることができる。これにより、従来技術におけるマグネットホルダでは吸着部のオンオフ切り替えが困難であったような狭い場所であっても確実に吸着部のオンオフ操作をすることができる。
【0030】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態におけるマグネットホルダ100の一部透視底面図である。本実施形態においては、第1実施形態と共通する構成については第1実施形態で用いた符号を使用することにより、ここでの詳細な説明は書略している。また、底面図ではあらわれていない部分における構成も特に言及しない限り、本実施形態におけるマグネットホルダ100は第1実施形態におけるマグネットホルダ100と同様の構成を有している。
【0031】
本実施形態におけるマグネットホルダ100は、平面視形状が正六角形状に形成されている点で第1実施形態におけるマグネットホルダ100の構成と異なっている。本実施形態におけるマグネットホルダ100の下面側磁性体板40には、中央部分を基点として正六角形の各頂点に向けて放射状に6本のセパレータ44が延設されている。本実施形態における突出磁極46は、予め下面側磁性体板40の底面の外周縁を突出させておき、セパレータ44の形成時に各頂点位置において突出させた外周縁を区分することにより形成された直線状に形成されている。このようにしてセパレータ44と突出磁極46により6つの三角形状の平面領域が形成され、この平面領域に扇状に形成された磁石10を収めることができるように内ホルダ22の平板部22Aには6つの収容部22Cが配設されている。
【0032】
図5は突出磁極46の吸着力をオンにした状態を示している。突出部22Bを
図5のOFFの位置(破線)に回動させると、平板部22Aが下面側磁性体板40の底面の中央部を中心として回動し、磁石10の平面位置がセパレータ44の平面位置を跨いだ配列になり、突出磁極46の吸着力がオフに切り替えられる。本実施形態のマグネットホルダ100の磁極数は、第1実施形態におけるマグネットホルダ100の磁極数よりも多いため、第1実施形態における突出磁極46のオンオフ切替操作角度よりも小さい操作角度にすることができる点で好都合である。
【0033】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態におけるマグネットホルダ100の一部透視底面図である。本実施形態においては、第1実施形態および第2実施形態と共通する構成については、それぞれの実施形態で用いた符号を使用することにより、ここでの詳細な説明は書略している。また、底面図ではあらわれていない部分における構成も特に言及しない限り、本実施形態におけるマグネットホルダ100は第1実施形態および第2実施形態におけるマグネットホルダ100と同様の構成を有している。
【0034】
本実施形態におけるマグネットホルダ100は、平面視形状が正八角形状に形成されている点で第1実施形態および第2実施形態におけるマグネットホルダ100の構成と異なっている。本実施形態におけるマグネットホルダ100の下面側磁性体板40の底面には、中央部分を基点として正八角形の各頂点に向けて放射状に8本のセパレータ44が延設されている。本実施形態における突出磁極46は、セパレータ44と下面側磁性体板40の底面の外周縁とで区切られた平面領域においてセパレータ44の配設間隔位置の各々に配設されている。本実施形態における突出磁極46は、下面側磁性体板40の底面の中央位置から径方向外方側の所定位置を基点として外周縁までの径方向所要範囲にわたって放射状に配設されている。
【0035】
図6は突出磁極46の吸着力をオンにした状態を示している。突出部22Bを
図6のOFFの位置(破線)に回動させると、平板部22Aが下面側磁性体板40の底面の中央部を中心として回動し、磁石10平面位置がセパレータ44の平面位置を跨いだ配列になり、突出磁極46の吸着力がオフに切り替えられる。本実施形態のマグネットホルダ100の磁極数は、第2実施形態におけるマグネットホルダ100の磁極数よりもさらに多いため、第2実施形態における突出磁極46のオンオフ切替操作角度よりも小さい操作角度にすることができる点で好都合である。
【0036】
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態におけるマグネットホルダ100の一部透視底面図である。本実施形態においては、第1実施形態ないし第3実施形態と共通する構成については、それぞれの実施形態で用いた符号を使用することにより、ここでの詳細な説明は書略している。また、底面図ではあらわれていない部分における構成も特に言及しない限り、本実施形態におけるマグネットホルダ100は、第1実施形態ないし第3実施形態におけるマグネットホルダ100と同様の構成を有している。
【0037】
本実施形態におけるマグネットホルダ100は、平面視形状が正八角形状に形成されている点で第3実施形態と共通している。本実施形態におけるマグネットホルダ100の下面側磁性体板40の底面には、中央部分を基点として正八角形の各頂点に向けて放射状に8本のセパレータ44が延設されている点も同様である。本実施形態における突出磁極46は、セパレータ44と下面側磁性体板40の底面の外周縁とで区切られた平面領域においてV字状に形成されている点が特徴的である。具体的には、セパレータ44に隣接する位置においてセパレータ44と平行に外周縁まで放射状に配設された2本の直線部46Aと、2本の直線部46Aの中央側端部において2本の直線部46Aの内側端部どうしを連結する連結部46Bとにより突出磁極46が形成されている。このように突出磁極46を広範囲に形成することで、吸着可能範囲を広げることができる点で好都合である。
【0038】
図7は突出磁極46の吸着力をオンにした状態を示している。突出部22Bを
図7のOFFの位置(破線)に回動させると、平板部22Aが下面側磁性体板40の底面の中央部を中心として回動し、磁石10の平面位置がセパレータ44の平面位置を跨いだ配列になり、突出磁極46の吸着力がオフに切り替えられる。本実施形態のマグネットホルダ100の磁極数は、第3実施形態と同様に8極であるため、第3実施形態と同じ操作角度にすることができる。
【0039】
以上に本発明にかかるマグネットホルダ100について複数の実施形態に基づいて説明をしたが、本発明にかかるマグネットホルダ100は、以上の実施形態に限定されるものではない。例えば、以上の実施形態においては、マグネットホルダ100の平面視形状が正四角形、正六角形、正八角形の形態について説明しているが、この形態に限定されるものではない。マグネットホルダ100の平面視形状は、正十角形、正十二角形等の正N角形(Nは4以上の偶数)を採用することもできる。本発明におけるマグネットホルダ100は、平面視が正N角形に形成されている場合、平面中央位置から各頂点に向けてN本(4本以上の偶数本)のセパレータ44が延設され、マグネットホルダ100の平面中央位置を中心としてホルダ20の周方向にN個の磁石10が均等間隔に配設されていればよい。
【0040】
また、
図8および
図9に示すように、マグネットホルダ100の平面視形状は円形にすることもできる。なお、
図8(A)は第1実施形態の変形例であり、
図8(B)は第2実施形態の変形例であり、
図9(A)は第3実施形態の変形例であり、
図9(B)は第4実施形態の変形例である。
図8および
図9に示すように、マグネットホルダ100の平面視形状を円形状にした場合、収容部22Cは平板部22Aの周方向にN等分(Nは4以上の偶数)に区分して配設すればよい。マグネットホルダ100は、突出磁極46の数(収容部22Cの数)が増えると、突出磁極46の磁力による吸着力のオンオフ切り替えをする際に必要な突出部22Bの回動角度を小さくすることができるが、突出磁極46の吸着力は低下するので、要求される吸着力に応じて適宜設定すればよい。
【0041】
また、以上の実施形態においては、平面視形状が扇形状に形成された磁石10を用いているが、磁石10の平面視形状は平面視扇形状に限定されるものではない、磁石10は、下面側磁性体板40のホルダ20の挟持面とは反対側面である底面に形成されたセパレータ44と、下面側磁性体板40の外周縁とで区切られた領域内に収容することができればよく、平面視形状は特に限定されるものではない。
【0042】
また、以上の実施形態においては、外ホルダ24には位置決め用突起24Bが形成されているが、位置決め用突起24Bは配設を省略することもできる。この場合、平板部収容部24Aの平面形状を平板部22Aの平面形状と等しく、または、わずかに大きく形成した形態を採用することもできる。要は、平板部22Aの外周縁位置をほぼ維持させた状態で水平面内を回動させることができればよいのである。
【0043】
また、以上の実施形態において磁石10をマグネットホルダ100の平面中央位置を回転の軸として回動可能に保持するホルダ20は、内ホルダ22と外ホルダ24を有する形態で説明しているが、この形態に限定されるものではない。上面側磁性体板30または下面側磁性体板40の少なくとも一方の内ホルダ22との対向面に内ホルダ22を回動可能な状態で収容する平板部収容部24Aに相当する凹部(不図示)を形成し、この凹部に内ホルダ22を収容した形態を採用することもできる。なお、この凹部には、内ホルダ22の平板部22Aの外周縁を位置決めした状態で回動させる位置決め用突起24Bに相当する部分や内ホルダ22の突出部22Bを側面から突出させて水平面内で回動可能にするための開口部24Cに相当する部分も形成されている。
【0044】
以上の実施形態におけるホルダ20は平板部22Aと平板部22Aの径外方向に突設された突出部22Bを有し、突出部22Bを開口部24Cの範囲で所定方向に回動させることで突出磁極46の吸着力のオンオフ切り替えを行っているがこの形態に限定されるものではない。例えば、
図10に示すように、内ホルダ22の固定用ねじ孔34の軸線上位置に固定用ねじ孔34と同一径寸法のねじ穴22Dを形成し、差込側先端部にねじが形成された回動棒50を固定用ねじ孔34とねじ穴22Dに螺入させて内ホルダ22に回動棒50を螺着した形態を採用することもできる。この形態のマグネットホルダ100は、回動棒50をモータ等の駆動源や手動により回動させることにより、他の実施形態と同様に外ホルダ24の内部で内ホルダ22を適宜回動させることができる。
【0045】
なお、
図10に示すマグネットホルダ100の形態を採用した場合には、内ホルダ22の突出部22Bと、外ホルダ24の開口部24Cの構成は省略することができる。そして、このマグネットホルダ100の形態を採用することにより、マグネットホルダ100の平面サイズを他の実施形態に比較してさらに省スペース化することができる。すなわち、以上に説明した他の実施形態であっても使用が困難な作業箇所であっても突出磁極46のオンオフ切り替えを行うことができる点で好都合である。
【0046】
また、以上に説明した実施形態においては、2段底を有する溝体によりセパレータ44を形成した形態について説明しているが、セパレータ44の形態はこの形態に限定されるものではない。セパレータ44は単純な溝体により形成した形態や下面側磁性体板40の底面に非磁性体を埋設した形態を適宜採用することができる。
【0047】
そして以上に説明した変形例の他、実施形態において説明した変形例等を適宜組み合わせた形態を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 磁石
20 ホルダ
22 内ホルダ
22A 平板部
22B 突出部
22C 収容部
22D ねじ穴
24 外ホルダ
24A 平板部収容部
24B 位置決め用突起
24C 開口部
30 上面側磁性体板(第1磁性体板)
32 組立用ねじ孔
34 固定用ねじ孔
40 下面側磁性体板(第2磁性体板)
42 組立用ねじ孔
44 セパレータ
44A 第1溝体
44B 第2溝体
46 突出磁極
46A 直線部
46B 連結部
50 回動棒
100 マグネットホルダ