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  • 特開-定着装置用部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064708
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】定着装置用部材
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173502
(22)【出願日】2020-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000226932
【氏名又は名称】日星電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大庭 康嘉
(72)【発明者】
【氏名】白尾 俊二
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 宏保
(72)【発明者】
【氏名】永田 理人
(72)【発明者】
【氏名】青木 和輝
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 剛志
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA14
2H033AA23
2H033AA31
2H033BA11
2H033BB02
2H033BB04
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB15
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB31
2H033BB34
2H033BB37
2H033BD02
2H033BD03
2H033BD04
(57)【要約】
【課題】定着装置に使用されるローラやベルトと言った定着装置用部材において、弾性層への負荷を抑制しつつ、駆動力の伝搬能力を高めることにある。
【解決手段】基材の外周に、弾性層と表面層が順次設けられた定着装置用部材において、表面層の外周面の一部に、表面層よりも高い摩擦係数を有する高摩擦層を形成する。弾性層の外周面の全体は表面層によって被覆し、弾性層と高摩擦層は独立した状態とすることで、駆動力による負荷を主に高摩擦層に吸収させる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の外周に、弾性層と表面層が順次設けられた定着装置用部材であって、該表面層の外周面の一部に、該表面層よりも高い摩擦係数を有する高摩擦層が形成されていることを特徴とする定着装置用部材。
【請求項2】
該高摩擦層の外径は、該表面層の外径よりも太いことを特徴とする、請求項1に記載の定着装置用部材。
【請求項3】
該高摩擦層の摩擦係数が、該表面層の摩擦係数の10倍以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の定着装置用部材。
【請求項4】
該弾性層の外周面の全体が、該表面層によって被覆されていることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の定着装置用部材。
【請求項5】
該高摩擦層と、該弾性層は、物性が互いに異なることを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の定着装置用部材。
【請求項6】
該高摩擦層の許容伸び率が、該弾性層の許容伸び率よりも高いことを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の定着装置用部材。
【請求項7】
該弾性層は、スポンジ状弾性層であることを特徴とする、請求項1~6の何れか一項に記載の定着装置用部材。
【請求項8】
該弾性層は、多層構造であることを特徴とする、請求項1~7の何れか一項に記載の定着装置用部材。
【請求項9】
該表面層の外周面における該高摩擦層が設けられる領域に、改質処理が施されていることを特徴とする、請求項1~8の何れか一項に記載の定着装置用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、ファクシミリ、あるいはプリンタ等の画像形成装置において、定着部材、加圧部材などとして使用される定着装置用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機、プリンタ等の画像形成装置では、圧力や熱等を用いる定着装置によって記録媒体上のトナー画像の定着を行っている。
【0003】
定着装置では、ローラ、ベルト等の組み合わせにより構成された定着部材及び加圧部材がニップ部を形成するように当接して配置されており、ニップ部に記録媒体を挟みこみ、熱、圧力を加えることでトナー像を記録媒体上に定着させている。
【0004】
このような定着装置では、定着部材、加圧部材の一方をモータ等の動力により回転させ、回転によって生じる駆動力を他方の部材に伝搬し、定着部材、加圧部材が連動して回転するように構成されている。
【0005】
回転によって生じる駆動力を他方の部材に伝搬させるため、定着部材、加圧部材の表面に高摩擦性領域を形成し、高摩擦性領域を介して駆動力を伝搬する方法が用いられている。
【0006】
特許文献1では、弾性ローラの端部に弾性層が露出する領域を設けるとともに、露出した弾性層の直径を太くすることで、駆動力の伝搬能力を高めている。
【0007】
しかしながら、特許文献1の構造は弾性層自体を駆動力の伝搬手段として使用しているため、駆動力による負荷が弾性層に直接かかってしまう状況になる。このため、弾性層としてスポンジ状構造が採用された態様など、弾性層の強度が低い態様の場合は、弾性層が駆動力による負荷によって劣化、破損してしまう可能性がある。
【0008】
特許文献2では、弾性層を有さず、基材上に直接フッ素含有樹脂からなる表面層を設けた定着装置用部材において、表面層の両端部を改質することで動摩擦係数を高め、駆動時の滑りを抑制して駆動安定性を得ている。
【0009】
しかしながら、特許文献2の構造は表面層の両端部の動摩擦係数は高めているものの、表面層自体は滑り性に優れた材料であるため、駆動力の伝搬能力は限定的なものとなってしまう。
【0010】
特許文献3では、弾性ローラの端部に摩擦係数が離型層より大きい弾性体素材によって形成された搬送体を設けることで、駆動力の伝搬能力を高めている。
【0011】
しかしながら、特許文献3の構造は、別途搬送体を準備する必要、及び搬送体の固定方法を考慮する必要があり、弾性ローラの設計が複雑になり、製造コストも高くなる傾向が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003-208055号公報
【特許文献2】特許第6241126号公報
【特許文献3】特開2001-317538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、定着装置に使用されるローラやベルトと言った定着装置用部材において、弾性層への負荷を抑制しつつ、駆動力の伝搬能力を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、定着装置用部材の構造を鋭意検討した結果、表面層上に駆動力を伝播するための高摩擦層を形成することで、上記の課題を解決するに至った。
【0015】
本発明は基材の外周に、弾性層と表面層が順次設けられた定着装置用部材であって、表面層の外周面の一部に、表面層よりも高い摩擦係数を有する高摩擦層が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記の構成を採る本発明によれば、以下のような作用・効果が奏される。

(a)駆動力を伝搬するための高摩擦層と、定着装置用部材が通常有する弾性層とが独立して設けられているため、駆動力による負荷が弾性層に直接作用せず、弾性層への負荷が抑制される。

(b)表面層と異なる材料で高摩擦層を形成することができるため、十分な駆動力の伝搬能力を得ることが出きる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の定着装置用部材の基本的構成である。
図2】弾性層を多層構造とした本発明の定着装置用部材である。
図3】摩擦係数の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の定着装置用部材1の一例を示し、定着装置用部材1は基材10、基材10の外周面に設けられた弾性層11、弾性層11の外周面に設けられた表面層12、表面層12の外周面の一部に設けれた高摩擦層13で構成される。
【0019】
本発明の定着装置用部材1は定着装置における加圧部材、もしくは定着部材として使用され、具体的な態様としてローラ形状、ベルト形状を選択することができる。以下の説明では定着装置用部材1を加圧ローラとして使用することを想定して記載する。
【0020】
本発明で特徴的なことは、表面層12よりも高い摩擦係数を有する高摩擦層13が、表面層12の外周面上に設けられていることである。
【0021】
高摩擦層13は表面層12の外周面の任意の位置に設けることができるが、通常は図1に示したように表面層12の端部に設ける。図1では表面層12の両端部に高摩擦層13を設けた態様を示しているが、片方の端部のみに設けた態様でも良い。
【0022】
高摩擦層13は、定着装置用部材1を回転駆動させた際に、定着装置用部材1とともにニップ部を形成する定着部材に対して駆動力を伝搬する機能を有し、定着部材に対して押圧された状態となる。
【0023】
この時、駆動力による負荷が高摩擦層13に発生するが、高摩擦層13は表面層12上に設けられており、弾性層11とは独立した状態となっているため、駆動力による負荷は主に高摩擦層13で吸収することになり、弾性層11への駆動力による負荷は限られたものになる。
【0024】
このため、本発明の定着装置用部材1は弾性層11の破壊が抑制され、定着装置用部材1の耐久性を高めることができる。
【0025】
加えて、本発明における高摩擦層13は表面層12の外周面に設けられているため、通常、高摩擦層13の外径は表面層12の外径よりも大きくなる。このため、定着装置用部材1を定着部材に接触させてニップ部を形成した際に高摩擦層13と定着部材との接触圧が高くなり、弾性層11への負荷を抑制しつつ、駆動力の伝搬能力を高めることができる。
【0026】
高摩擦層13の肉厚は、極端に薄いと駆動力による負荷を十分に吸収できず、必要以上に厚いと定着装置用部材1の速度と記録媒体の搬送速度に差が生じ画像品質に悪影響が発生することがある。このため、高摩擦層13の肉厚は一定の範囲内とするのが好ましく、具体的には10μm以上500μm以下、より好ましくは50μm以上300μm以下に設定する。
【0027】
本発明のような定着装置用部材1に使用される表面層12は、トナーに対する離型性が高いフッ素樹脂が使用されることが多く、通常、その表面の摩擦係数、表面粗さは小さな値に設定される。
【0028】
本発明は表面層12上に高摩擦層13を設ける態様であるため、表面層12の表面状態に対して特定の表面状態を有する高摩擦層13を設けることが可能であり、両者の表面状態の関係性に起因する効果を得ることができる。
【0029】
好ましい態様の1つとして、高摩擦層13の摩擦係数を、表面層12の摩擦係数の10倍以上とした態様が挙げられる。摩擦係数がこの関係にあることで、表面層12の離型性を確保しつつ、高摩擦層13による駆動力の伝搬能力を高めることができる。
【0030】
本発明においては、弾性層11の外周面の全体が、表面層12によって被覆された状態とするのが好ましい。この状態とすることで、弾性層11の外周面が定着部材に直接接触することがなくなる。
【0031】
弾性層11の外周面が定着部材に直接接触しないことで、主に高摩擦層13が駆動力の伝搬機能を示す部分となるため、駆動力による弾性層11への負荷を抑制することができる。
【0032】
本発明は、駆動力による負荷を高摩擦層13で吸収し、弾性層11への負荷を抑制することを意図したものであるため、高摩擦層13を負荷に耐える材料で形成すれば、弾性層11に使用する材料は高摩擦層13に使用したものを必ずしも使用する必要はなく、定着装置用部材1に所望する事項に応じて適宜選択することができ、弾性層11に使用する材料と高摩擦層13に使用する材料の物性を互いに異ならせることで、所望する性能を有した定着装置用部材1とすることができる。
【0033】
弾性層11への負荷を効果的に抑制するためには、高摩擦層13に使用する材料の許容伸び率を、弾性層11に使用する材料の許容伸び率よりも高いものした態様が好ましく利用できる。
【0034】
本発明では弾性層11への負荷が抑制されるため、充実構造の弾性層に加えて、スポンジ状弾性層を採用することもできる。
【0035】
スポンジ状弾性層は低い硬度を活かして、ニップ部を広くするために定着装置用部材1に採用されるが、強い負荷が掛かった際にスポンジ状構造が破壊されやすく、耐久性に難がある弾性層である。本発明では弾性層11への負荷が抑制されるため、スポンジ状弾性層を採用した場合でも耐久性を確保することができる。
【0036】
スポンジ状弾性層としては、(1)ミラブル型シリコーンゴムに加熱発泡剤を混合し、ゴムを架橋させる段階で発泡剤を分解ガス化させ、気泡を発生させてスポンジ化したもの、(2)中空フィラーを使用したもの、(3)水を含有する吸水性ポリマーを液状シリコーンゴムに混合し、水を蒸発させて空洞を形成したもの、(4)水と乳化剤を液状シリコーンゴムに混合し、ゴム中に水を分散させた後、水を蒸発させて空洞を形成したもの、など、従来知られているシリコーンゴムのスポンジ化方法を適宜選択して形成したスポンジ状弾性層を使用すれば良い。
【0037】
本発明の定着装置用部材1を構成する弾性層11は、図2に示したように多層構造としても良い。図2は弾性層11を外周側弾性層11a、内周側弾性層11bで構成された2層構造の場合を示したものだが、弾性層11を3層以上にしても良い。
【0038】
弾性層11を多層構造とする場合は、弾性層が多層構造となっている定着装置用部材を対象とした技術を適用して本発明を実施することができる。
【0039】
なお、弾性層11が多層構造となっている場合に、段落0030~0036に記載した構成を適用する場合は、表面層12に接触する弾性層(図2では外周側弾性層11a)を、弾性層11と見なして適用する。
【0040】
基材10としては、アルミニウム、鉄、ポリイミドなど、本発明のような定着装置用部材の基材として広く使用されている材料を適宜選択して使用すれば良く、形状も管状、棒状、ベルト状などから選択できる。図1、2における基材10は、棒状のものを使用した例である。
【0041】
弾性層11としては、本発明のような定着装置用部材に広く使用されているシリコーンゴムの中から、所望する特性に合わせて適宜選択して使用すれば良く、先述したスポンジ状弾性層の他、ソリッド状弾性層も使用することが出きる。
【0042】
弾性層11が多層構造の場合は、ソリッド状弾性層/スポンジ状弾性層を適宜選択、組み合わせて使用することができるが、定着装置用部材1の耐久性を考慮した場合、内層側はソリッド状弾性層、外層側はソリッド状弾性層もしくはスポンジ状弾性層とするのが良い。
【0043】
表面層12の材料は特に限定されず、フッ素樹脂など、表面層12の材料として知られているものを適宜選択して使用すれば良い。表面層12の形成方法も、チューブ状に成形したものを弾性層11上に被覆する、あるいは液状にしたものを弾性層11上にコーティングするなど、表面層の形成方法として知られているものを適宜選択して使用すれば良い。
【0044】
本発明においては、基材10と弾性層11の間、及び弾性層11と表面層12の間の固定強度を上げるために、プライマー、RTVゴム接着剤等を適宜併用しても良い。
【0045】
高摩擦層13の材料は、本発明のような定着装置用部材1に広く使用されているシリコーンゴムを使用することができる。高摩擦層13の形成方法は、表面層12の外周面の所定の箇所に高摩擦層13となる材料を塗布し硬化させる方法、高摩擦層13となる材料を管状に押出したものを表面層12の外周面の所定の箇所に被覆固定する方法が挙げられる。
【0046】
高摩擦層13は材料の配合、形成方法によって所望する特性に調整したり、周方向の特性と長さ方向の特性に差を設けたりすることができる。
【0047】
通常、本発明のような定着装置用部材に使用する表面層12は、トナーに対する離型性が高い材料を使用するため、他の材料に対する接着性に乏しく、高摩擦層13を設けるには、表面層12上の高摩擦層13を設けたい領域に対して改質処理を行って接着性を高める必要がある。
【0048】
表面層12に行う改質処理としては、金属ナトリウム-ナフタレン錯体溶液による改質、プラズマ放電・コロナ放電などの放電処理による改質、エキシマレーザの照射による改質などが挙げられる。
【0049】
なお、表面層12に対する改質処理は必須のものではなく、表面層12や高摩擦層13に使用する材料の工夫など、他の手段で表面層12と高摩擦層13との間の接着強度が得られる場合は、改質処理を行わなくても良い。
【0050】
本発明の定着装置用部材1の大きさは特に限定されないが、本発明の定着装置用部材1は主にA3~A4サイズ程度の印刷用紙に対応した画像形成装置に使用されることを想定したものであるため、通常は弾性層11の長さを200~300mm程度、外径をφ15~35mm程度、特にφ25~30mm程度に設定すれば良い。
【実施例0051】
以下に、本発明を利用した定着装置用部材1の実施例について述べる。
【0052】
[実施例1]
基材10として、長さ400mm、外径φ20mmの鉄棒を使用する。
【0053】
基材10を金型に挿入し、金型を直立させた状態で弾性層11となる材料を注入する。弾性層11の材料には、第1の液状シリコーンベースポリマーに乳化剤、水、硬化触媒を添加した第1組成物に、第2の液状シリコーンベースポリマーに乳化剤、水、架橋剤を添加した第2組成物を配合し、攪拌脱泡させた配合材料を使用する。配合材料を注入後、所定の条件にて加熱・加硫を行い、水を蒸発させて、スポンジ状の弾性層11を形成する。弾性層11の外径はφ32mm(肉厚6mm)に設定する。
【0054】
弾性層11の硬度はASKER Cで24~28、引張強さは0.4~1.0MPa、許容伸び率は60~140%の範囲に設定する。
【0055】
さらに、弾性層11上にRTVゴム接着剤を塗布し、表面層12として肉厚30μmの熱収縮性PFAチューブを被覆し、所定の条件にて加熱・収縮を行って表面層12を固定する。
【0056】
表面層12の両端部の、幅8mmに渡る外周面に対し、放電処理を施して改質領域を形成し、液状に希釈したRTVゴム接着剤をスプレーガンにて改質領域に均一に塗布、硬化させ、幅8mm、肉厚100μmの高摩擦層13を形成し、本発明を完成させた。
【0057】
高摩擦層13の硬度はJIS Aで25~35、引張強さは2.0MPa以上、許容伸び率は250%以上の範囲に設定する。
【0058】
表面層12、高摩擦層13の摩擦係数は、図3に示したように50gの重り21が付加された試験フィルム22を、定着装置用部材1を構成する表面層12、もしくは高摩擦層13に摺接させながらfの力で引っ張る実験により算出する。この実験における摩擦係数μはオイラーベルト式(日本機械学会 機械工学便覧 基礎編 A3力学・機械力学 35頁(1986))に従って測定され、以下の摩擦係数算出式(1)によって計算する。式(1)中のwは重り21の重量である。
【0059】
試験フィルム22は、定着装置の定着部材として広く使用されているポリイミド製の定着ベルトを想定し、市販されているポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製、カプトンフィルムHタイプ、肉厚70μm)を幅5mm、長さ297mmのテープ状に切り出したものを使用する。
【0060】
実施例における表面層12の摩擦係数は0.5、高摩擦層13の摩擦係数は6であった。
【0061】
[比較例]
比較例の定着装置用部材1’として、表面層12’の固定までは実施例1と同様に行った後、表面層12’の両端部の幅8mmに渡って表面層12’を除去して弾性層11’を露出させ、液状に希釈した実施例と同じRTVゴム接着剤をスプレーガンにて弾性層11’の露出領域に均一に塗布、硬化を行い、幅8mmの高摩擦層13’を形成したものを作成した。高摩擦層13の肉厚は表面層12の外周面に対して100μm高くなるように形成する。
【0062】
[耐久試験]
以上に述べた実施例、各比較例の定着装置用部材に対し、耐久試験を行う。耐久試験の方法は、定着装置用部材と対になるヒートロール表面を170℃に加熱し、弾性層の厚さが30%圧縮させる荷重を加えた状態で、周速283mm/秒で14秒間回転、1秒間回転停止を繰り返し、時間経過に伴う定着装置用部材の変化を観察する。
【0063】
比較例は耐久試験開始から12時間経過後、弾性層11の端部に破損が発生した。高摩擦層13が弾性層11上に直接設けられているため、駆動力による負荷が直接弾性層11に作用し、破壊に至ったと推測される。
【0064】
一方、実施例は、耐久試験開始から12時間経過の時点では、弾性層11に異常は確認されず、200時間経過した時点でも明らかな異常は確認されなかった。高摩擦層13を表面層12上に設け、弾性層11とは独立した状態としたため、駆動力による弾性層11への負荷が抑制され、耐久性が向上したと推測される。
【0065】
以上の結果から、本発明の定着装置用部材1は従来の定着装置用部材と比較して、耐久性が向上していることが確認できた。
【0066】
以上の実施例は芯金の外周にスポンジ状の弾性層を設けた態様について説明したが、本発明はこの態様に限定されるものではなく、所望する定着装置用部材の特性によって、複数のスポンジ状弾性層を設けた態様や、ソリッド状の弾性層とスポンジ状の弾性層を組み合わせた態様で使用されるスポンジ状弾性層としても利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の定着装置用部材は、定着装置の加圧ローラとしてだけでなく、定着ローラ、プリンタの搬送ローラなど、各種印刷機器のローラとして好適に適用できる。また、ローラのみでなく、定着ベルト、加圧ベルトにも適用できる。
【符号の説明】
【0068】
1 定着装置用部材
10 基材
11 弾性層
11a 外周側弾性層
11b 内周側弾性層
12 表面層
13 高摩擦層
20 オイラーベルト式摩擦係数測定装置
21 重り
22 試験フィルム
23 引張強度計
図1
図2
図3