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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064730
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】撹拌装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 35/00 20220101AFI20220419BHJP
   B01F 27/80 20220101ALI20220419BHJP
【FI】
B01F15/00 A
B01F7/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173532
(22)【出願日】2020-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】502369746
【氏名又は名称】住友重機械プロセス機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 寛
(72)【発明者】
【氏名】金森 頼之
(72)【発明者】
【氏名】竹中 克英
【テーマコード(参考)】
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4G037DA04
4G037EA04
4G078AA09
4G078BA05
4G078BA09
4G078CA08
4G078CA15
4G078DA01
4G078DA03
4G078DA28
4G078DB01
(57)【要約】
【課題】シャフトの摩耗を抑えることでシャフトの寿命を延ばせる撹拌装置を提供する。
【解決手段】撹拌装置10は、撹拌槽12と、撹拌槽12内に配置され撹拌槽12内で回転する撹拌翼と、撹拌翼の回転軸をなすシャフト14と、シャフト14に接続されシャフト14を回転軸周りに駆動させる駆動部と、シャフト14を、撹拌翼に対して駆動部とは反対側の被支持部で回転可能に支持する軸受36とを備え、軸受36は、撹拌槽12に固定されたハウジング42と、シャフト14とハウジング42との間に配置されるブッシュ40とを備え、ブッシュ40の内側面又は外側面の少なくとも一方には、駆動部の側から軸受の側に向けてスラリーを流す溝48が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌槽と、
前記撹拌槽内に配置され前記撹拌槽内で回転する撹拌翼と、
前記撹拌翼の回転軸をなすシャフトと、
前記シャフトに接続され前記シャフトを回転軸周りに駆動させる駆動部と、
前記シャフトを、前記撹拌翼に対して前記駆動部とは反対側の被支持部で回転可能に支持する軸受とを備え、
前記軸受は、前記撹拌槽に固定された固定部と、
前記シャフトと前記固定部との間に配置されるブッシュとを備え、
前記ブッシュの内側面又は外側面の少なくとも一方には、前記駆動部の側から前記軸受の側に向けてスラリーを流す流路が形成されている、撹拌装置。
【請求項2】
前記ブッシュは前記固定部に対して相対移動不能に固定されており、
前記流路は、前記シャフトの外側面との間で前記駆動部の側から前記軸受の側に向けてスラリーを流すよう前記ブッシュの内側面に形成されている、請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記ブッシュは前記シャフトに対して相対移動不能に固定されており、
前記流路は、前記固定部との間で前記駆動部の側から前記軸受の側に向けてスラリーを流すよう前記ブッシュの外側面に形成されている、請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項4】
前記流路は、前記シャフトの軸方向に延びる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撹拌装置。
【請求項5】
前記流路を複数本備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撹拌装置。
【請求項6】
前記流路は、前記軸受の駆動部側の端面から被支持部側の端面まで貫通している、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撹拌装置。
【請求項7】
前記流路は、前記駆動部側から前記被支持部側に向けて前記シャフトの周りで旋回して延びる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撹拌装置。
【請求項8】
前記流路の旋回方向は、前記シャフトの回転方向とは逆向きである、請求項7に記載の撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撹拌槽内に撹拌翼を配置し、撹拌槽の上部に配置されたモータのシャフトに撹拌翼を取り付け、撹拌槽内で撹拌翼を回転させる撹拌装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-108557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
撹拌翼で被処理流体を撹拌すると、シャフトにせん断力が作用しシャフトが安定しないことがある。そこで、特許文献1ではシャフトを安定させるためにシャフトの下部を軸受支持することが提案されている。シャフトは軸受に対して回転するため、軸受とシャフトの間にはわずかなクリアランスが存在する。被処理流体に含まれるスラリーが上方からこのクリアランスに入り込んでそこに溜まり、晶析しうる。晶析したスラリーは、シャフトまたは軸受を摩耗させうる。場合によってはスラリーの晶析によりシャフトが軸受に固着してシャフトや軸受が損傷を受ける恐れもある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものでありシャフトまたは軸受の摩耗を抑えることでその寿命を延ばせる撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によると、攪拌装置は、撹拌槽と、撹拌槽内に配置され撹拌槽内で回転する撹拌翼と、撹拌翼の回転軸をなすシャフトと、シャフトに接続されシャフトを回転軸周りに駆動させる駆動部と、シャフトを、撹拌翼に対して駆動部とは反対側の被支持部で回転可能に支持する軸受とを備え、軸受は、撹拌槽に固定された固定部と、シャフトと固定部との間に配置されるブッシュとを備え、ブッシュの内側面又は外側面の少なくとも一方には、駆動部の側から軸受の側に向けてスラリーを流す流路が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態による撹拌装置の一部切り欠き斜視図を示す。
図2図1のAA断面における断面図である。
図3図2のBB断面における断面図である。
図4】変形例によるブッシュの断面図である。
図5】変形例によるブッシュの展開図である。
図6】変形例によるブッシュの断面図である。
図7】さらなる変形例による軸受の断面図である
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態による撹拌装置について説明する。図1は撹拌装置の一部切り欠き斜視図を示す。図1に示すように撹拌装置10は、撹拌槽12と、シャフト14と、撹拌翼16とを備える。以下の説明において上及び下のような方向を示す用語を用いることがあるが、これらの用語は攪拌装置を使用可能な状態に配置したときの方向を示すものとする。また以下の説明において径方向という用語を用いることがあるが、径方向はシャフトの径方向を示すものとする。また以下の説明において回転軸又は軸という用語を用いることがあるが、これらはシャフト14の回転軸をいう。
【0009】
撹拌槽12は、中空の胴体18と、胴体18の上端を閉じる胴体上部20と、胴体18の下端を閉じる胴体下部22とを備える。胴体18、胴体上部20、及び胴体下部22は一体に形成され、被処理流体を撹拌するための密閉空間が撹拌槽12内に形成される。胴体18の内壁には、上下方向に延びる複数の邪魔板24が形成される。
【0010】
シャフト14及び撹拌翼16は、撹拌槽12内部に配置される。撹拌翼16は、シャフト14に固定される。撹拌翼16は、ボトムパドル26と、格子翼28とを備える。ボトムパドル26はシャフト14の下端付近に固定され、撹拌槽12の底部付近、つまり胴体下部22内の被処理流体を撹拌する。ボトムパドル26の下端と撹拌槽12の底部との間には、撹拌槽12の半径の1~10%程度のクリアランスを設けるのがよい。このような構成によりボトムパドル26は、被処理流体を径方向に移動させながら撹拌槽12の底部に付着したスラリーを掻き取る。
【0011】
格子翼28は、シャフト14の上端付近に固定され、撹拌槽12の胴体18内の被処理流体を撹拌する。格子翼28は、アーム部30と、ストリップ32とを備える。アーム部30は径方向に延びる2枚のパドルにより形成される。ストリップ32は、アーム部30と直交して延びる板棒状体により形成される。このような構成により格子翼28は、被処理流体をせん断して細分化しながら、格子翼28の回転方向下流に生じる微小な渦により細分化した被処理流体を掻き混ぜる。
【0012】
複数の邪魔板24は、上面視したときに等間隔で胴体18の内壁に固定されている。邪魔板24は、上下方向において胴体18の全長にわたり連続する板状体により形成される。隣接する邪魔板24の間には環流路が形成されている。環流路は、撹拌翼16の下端から上端にかけて延びる。環流路は、ボトムパドル26により径方向に押し出された被処理流体を、円運動させずに撹拌翼16の上側まで案内する。
【0013】
胴体上部20には、シャフト14及び撹拌翼16を駆動させるための駆動部34が内蔵される。駆動部34は、シャフト14及び撹拌翼16を軸周りに駆動させる。駆動部34は、シャフト14の上端付近において撹拌槽12と固定される。駆動部34は、カップリングCを介してシャフト14に固定される。
【0014】
胴体下部22には、シャフト14の下端付近の被支持部側を軸周りに回転可能に支持するための軸受36が配置される。シャフト14は上端が駆動部34により支持され、下端が軸受36により支持されている。軸受36は撹拌槽12内に配置される。軸受36の固定側は撹拌槽12の底部に固定され、回転側はシャフト14に固定される。軸受36の具体的な構造について詳述する。
【0015】
図2は、図1のAA断面における断面図である。図3は、図2のBB断面における断面図である。なお図2及び図3は、各断面を概略的に示すものであり、必ずしも正確な寸法を示すものではない。
【0016】
図2及び図3に示すように、軸受36は、スリーブ38と、ブッシュ40と、固定部としてのハウジング42とを備える。スリーブ38は、シャフト14と共に回転し、ブッシュ40及びハウジング42は撹拌槽12に固定される。スリーブ38は、シャフト14の下部の周囲を囲む筒状を有する。スリーブ38は、厚さが均一な円筒形状の底部を塞いだ形状を有する、ということもできる。スリーブ38は、例えばステンレスなどの耐摩耗性の高い金属材料により形成される。スリーブ38は、ストッパープレート52を介してボルト44によりシャフト14に固定される。したがってスリーブ38はシャフト14と一緒に回転し、シャフト14に対して相対移動不能になっている。ボルト44を緩めることでスリーブ38をシャフト14に対して着脱でき、スリーブ38が摩耗した際にスリーブ38を交換できる。なお、スリーブ38は、シャフト14の下端の周囲及び底部を囲むカップ形状を有していてもよい。
【0017】
ブッシュ40は、スリーブ38と接触しないようスリーブ38の径方向外側に配置される。ブッシュ40は、スリーブ38の外径よりも大きい内径を有する円筒体により形成される。ブッシュ40は、樹脂材料、ホワイトメタル等の硬度の低い金属材料、スリーブ38又はシャフト14よりも耐摩耗性の低い材料により形成される。ブッシュ40は全周にわたって厚みが均一である。ブッシュ40の径方向の厚みは、スリーブ38の径方向の厚みよりも大きい。例えばスリーブ38の径方向の厚みを7.5mmとした場合、ブッシュ40の径方向の厚みは10mmとされる。ブッシュ40の上下方向の長さは、スリーブ38の上下方向の長さより短い。これにより、ブッシュ40をスリーブ38の外側に配置したときに、ブッシュ40の内側面全体がスリーブ38の外側面と対向する。ブッシュ40の内径は、スリーブ38の外径よりも僅かに大きい。例えばブッシュ40の内径を111mmとした場合、スリーブ38の外径は110mmとされる。これによりブッシュ40をスリーブ38の外側に配置したときに、スリーブ38とブッシュ40との間に幅0.5mmの環状の隙間46が形成される。円筒形状の隙間46の径方向の厚みは、例えば0.3mm~0.9mmの範囲で設定できる。ブッシュ40の内側面には、隙間46と連通する複数の溝48が形成される。溝48については後述する。
【0018】
隙間46は、スリーブ38とブッシュ40との間に設けられる円筒形状の空間である。隙間46は、軸受36の回転側と固定側との間に形成されている、ということもできる。隙間46は、上側及び下側が撹拌槽12の内部空間に向けて開いている。隙間46の上端は胴体上部20側を向いており、隙間46の下端は撹拌槽12の底部側を向いている。隙間46は上端から下端まで連続して延び、例えば上端から被処理流体を受け入れ、下端から被処理流体を排出する。隙間46の幅は、被処理流体の粘度、スラリーの粒径、スラリーの含有量、撹拌装置10の駆動時の回転速度等に応じて適宜変更可能である。撹拌槽12が被処理流体で充たされると隙間46内にも被処理流体が流れ込み、隙間46内の内圧が高まる。これにより、ブッシュ40とスリーブ38との間の径方向の相対的な位置が固定される。
【0019】
ハウジング42は、ブッシュ40の外側に配置される円筒体により形成される。ハウジング42の内径はブッシュ40の外径と同一であり、ハウジング42の内周にブッシュ40が固定され、ブッシュ40はハウジング42に対して相対移動不能にされる。ハウジング42は、3本の脚部50を介して撹拌槽12に固定される。脚部50はハウジング42の外側に溶接されている。ハウジング42は、撹拌槽12に対してブッシュ40を位置決めし、保持する。
【0020】
駆動部34の側(上側)から軸受36の側(下側)に向けてスラリーを流す流路として、溝48がブッシュ40の内側面とシャフト14の外側面(具体的には、スリーブ38の外側面)との間に形成されている。溝48は、シャフト14の軸方向に延びる。溝48は、ブッシュ40の内側面に形成され、隙間46に向けて開いている。したがって隙間46内に被処理流体が流入すると、溝48は被処理流体で充たされる。この例では3本の溝48が形成されていることとするが、溝48の本数はこれに限定されない。
【0021】
溝48は、ブッシュ40の上端から下端まで連続して延びる。つまり、溝48は軸受36の上側の端面から下側の端面まで軸受36を貫通して延びる。これにより、軸受36を上下方向に貫通する被処理流体の流れを作り出せる。この例では溝48は、ブッシュ40の上端から下端にかけて上下方向に一直線上に延びる。別の観点で説明すると、ブッシュ40は、溝48が形成されていない箇所で第1の直径を有し、溝48が形成されている箇所で第1の直径よりも長い第2の直径の拡径部を有する、とも言える。水平面における溝48の断面は矩形である。水平面で見たときの溝48の底部の角に丸みを付けてもよい。複数の溝48は、周方向において等間隔に配置される。溝48の深さ(径方向の寸法)は、ブッシュ40の厚みに応じて決定できる。例えばブッシュ40の厚みが10mmの場合、溝48の深さは、少なくとも5mm以上であることが好ましい。溝48の深さはブッシュ40の形状を保てる範囲で適宜決定できる。ブッシュ40の形状を保つために最低限、3mmの厚みが必要な場合、溝48の深さはブッシュ40の厚みから3mmを減じた値とすることができる。溝48の深さはブッシュ40の厚みに対する比率に基づいて決定してもよく、溝48の深さをブッシュ40の厚みの例えば30~80%、より好ましくは40%~60%の範囲で決定してもよい。
【0022】
溝48の幅は、ブッシュ40の内側面の表面積に応じて決定できる。例えば、ブッシュ40とスリーブ38の径方向の相対的な位置関係を保持するために必要なブッシュ40の内側面の表面積が、内側面の表面積全体の70%であるとする。この場合、残りの30%を溝48に割り当てられる。したがって残りの30%の表面積を溝48の本数で除し、さらに溝48の長さで除した値が溝の幅となる。ブッシュ40の形状を保つブッシュ40の内側面の表面積に対して溝48の投影面積が占める割合は、10%以上、かつ30%以下であるのがよい。溝48の投影面積が多すぎるとブッシュ40の形状を保ち難くなるからである。このとき溝48により占められる表面積をブッシュ40の内側面の一か所に固めず、複数の溝48を周方向に等間隔に分散させるのがよい。
【0023】
次に撹拌装置10の作用について説明する。
【0024】
撹拌装置10により被処理流体を撹拌する場合、撹拌槽12内に被処理流体を流し込み、さらに必要に応じてガスを注入し、撹拌槽12を密封する。次いで駆動部34をオンにし、シャフト14を回転駆動させる。シャフト14が回転すると、シャフト14に固定された撹拌翼16が撹拌槽12内で回転する。シャフト14の下端は軸受36により支持されるため、シャフト14が被処理流体の抵抗を受けても揺動することなく安定して回転する。被処理流体は撹拌翼16により径方向外側に押し出されながら重力により撹拌槽12底部に向かって流れる。撹拌槽12底部に到達した被処理流体は、上側から流れてくる被処理流体により加圧され、撹拌槽12上部に流れる。
【0025】
撹拌槽12に被処理流体の流れが発生すると、同時に軸受36の隙間46及び溝48内にも被処理流体の流れが発生する。隙間46が被処理流体で充たされると、固定側のスリーブ38と回転側のブッシュ40の間隔は一定に保たれる。これにより、スリーブ38とブッシュ40が接触することなく、スリーブ38がブッシュ40内部で回転する。
【0026】
被処理流体の撹拌が進み被処理流体に含まれるスラリーがスリーブ38とブッシュ40との間に到達することがある。スラリーの径が大きい場合、スリーブ38とブッシュ40との間に入り込んだスラリーが、スリーブ38及びブッシュ40を摩耗させることがある。またスリーブ38とブッシュ40の間にスラリーが詰まるとシャフト14の回転に伴って振動が発生することがある。振動が長期間続いた場合、又は振動が大きくなった場合、例えば相対的に応力が加わりやすい脚部50とハウジング42との溶接部が破損する可能性もある。
【0027】
実施形態による撹拌装置10では、スリーブ38とブッシュ40との間にスラリーが入り込んだとしても、被処理流体の流れによってスラリーが溝48内に流れる。溝48はスラリーの粒径に対して十分大きい断面を有している。したがってスリーブ38とブッシュ40との間に入り込んだスラリーは被処理流体の流れに乗って溝48内に流れ込み、溝48を介して軸受36の外部に排出される。これにより、スラリーが長時間、軸受36内に滞在して晶析する前にスラリーを軸受36外部に排出できる。スラリーを軸受36外部に排出することで、スラリーによるスリーブ38及びブッシュ40の摩耗を減らし、スリーブ38及びブッシュ40の長寿命化を図れる。また、応力が加わり易い箇所の破損の可能性を減らせる。
【0028】
また実施形態による撹拌装置10では、スリーブ38とブッシュ40との間に軸周りの被処理流体の流れ(テイラー渦)を作り出せる。これにより、スリーブ38とブッシュ40の駆動熱を被処理流体により吸収できる。スリーブ38とブッシュ40を除熱することで晶析を減らし、スラリーの量を減らせる。
【0029】
本開示は実施形態に限定されるものではなく、各構成は必要に応じて適宜変更可能である。本開示の範囲内において以下の変形例が想定される。
【0030】
図4は変形例によるブッシュの断面図であり、図5は変形例によるブッシュの展開図である。図4は、軸に沿ったブッシュの縦断面図である。図5は、ブッシュの一部を上下方向に切断して展開し、ブッシュの内側面を示す。図4及び図5に示すように、溝148を回転軸に対して傾斜させてもよい。つまりこの例ではブッシュ140は、シャフト周りに旋回する溝148を有する。このような螺旋状の溝148によっても、実施形態と同様の効果を得られる。
【0031】
また変形例によるブッシュ140を用いた場合、溝148の旋回方向と、シャフトの回転方向を逆向きにするのがよい。つまり、ブッシュ140を上面視したときに溝148が下に向かって時計回りに旋回する場合、シャフトの溝148の方向が反時計周りになるように配置するのがよい。例えば、図5に示す矢印D方向にシャフトを回転させて矢印D方向に被処理流体の流れを作り出すものとする。この場合、スラリーは被処理流体の流れ及び重力の作用により、ブッシュ140の内側面に対して矢印E方向(回転方向下流向き、かつ下向き)に移動する。これにより、溝を上下方向に一直線にした場合と比較して、スラリーと溝148との距離が短くなってスラリーがより早く溝148に到達し、スラリーの排出性能を向上させられる。
【0032】
図6は、変形例による軸受の断面図である。図6図2と同一の断面を示す。図6に示すようにシャフト14に樹脂製のブッシュ40を取り付け、ハウジング42に金属製のスリーブ38を取り付けてもよい。この場合、シャフト14に取り付けられたブッシュ40の外周面に溝48を形成するのがよい。このような構成によっても、実施形態と同様の効果を得られる。
【0033】
図7はさらなる変形例による軸受の断面図である。図7の断面は、図2と同一の断面を示す。図7には、軸受の幾つかの変形例を示す。以下の変形例では説明の便宜上、実施形態と同一の符号を用いるものとする。
【0034】
図7(A)に示すように、スリーブを省略してもよい。この場合、溝48は直接、シャフト14の外側面と対向する。このような構成によっても、実施形態と同様の効果を得られる。
【0035】
図7(B)に示すように、溝48をスリーブ38に形成してもよい。この場合、溝48は固定側ではなく回転側に形成される。このような構成によっても、実施形態と同様の効果を得られる。この場合、スリーブ38を樹脂製のブッシュと入れ替えてもよい。つまり外周面に溝48が設けられたブッシュをシャフト14の外周に取り付けてもよい。
【0036】
図7(C)に示すように、溝48をスリーブ38に形成したうえで、ブッシュを省略してもよい。このような構成によっても、実施形態と同様の効果を得られる。
【0037】
図7に示すように溝48は、軸受36の回転側と固定側との間であれば、径方向におけるどの位置に設けてよく、どの部材と対向するように形成してもよい。
【0038】
上述の実施形態を一般化すると特許請求の範囲に記載された発明に加えて以下のような態様も想定される。
【0039】
撹拌槽と、
前記撹拌槽内に配置され前記撹拌槽内で回転する撹拌翼と、
前記撹拌翼の回転軸をなすシャフトと、
前記シャフトに接続され前記シャフトを回転軸周りに駆動させる駆動部と、
前記シャフトを、前記撹拌翼に対して前記駆動部とは反対側の被支持部で回転可能に支持する軸受とを備え、
前記軸受は、前記撹拌槽に固定された固定側構成部と、前記シャフトとともに回転する回転側構成部とを備え、前記固定側構成部と前記回転側構成部との間には前記駆動部の側から前記軸受の側に向けてスラリーを流す流路が形成されている、攪拌装置。
【符号の説明】
【0040】
10 :撹拌装置、 12 :撹拌槽、 14 :シャフト、 16 :撹拌翼、 36 :軸受、 38 :スリーブ、 40 :ブッシュ、 42 :ハウジング、 48 :溝、 140 :ブッシュ、 148 :溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7