(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006475
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】砂型用模型およびこれを用いて製造された鋳物製立体銘板
(51)【国際特許分類】
B22C 7/00 20060101AFI20220105BHJP
B22C 9/02 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B22C7/00 112D
B22C9/02 103A
B22C7/00 113
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020108701
(22)【出願日】2020-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】596166472
【氏名又は名称】木戸 平太郎
(72)【発明者】
【氏名】木戸 平太郎
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093FA14
4E093FB01
4E093FB03
4E093FB07
4E093FB10
4E093FC10
4E093PA02
4E093PA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】所定の肉厚で文字および/または模様が一体的に形成された砂型用模型およびこれを用いて形成された砂型により鋳造された鋳物製立体銘板の提供。
【解決手段】砂型用模型1は、粉末固着法で形成することができる所定の肉厚で文字3および/または模様が一体的に形成された表示部4と、前記表示部4が固定された基部2とを有し、前記表示部4の反対側に嵌合凸起6を設け、前記基部2に前記嵌合凸起6が嵌入する嵌合凹部5を設けることができる。鋳物製立体銘板は、前記砂型用模型1を囲むように第1の枠体を作業台上に配置し鋳物砂を投入し第1の砂型を形成した後、前記第1の砂型を天地逆にし砂型用模型1背面を露出し第2の枠体を配置し、前記背面側に鋳物砂を投入し第2の砂型を形成後、第1の砂型から第2の砂型を取り外し模型1を除去後、第1の砂型に第2の砂型を載置した鋳造キャビティに溶湯金属を鋳込んで製造する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の肉厚の文字および/または模様が一体的に形成された表示部と、前記表示部が固定された基部とを有していることを特徴とする、砂型用模型。
【請求項2】
所定の肉厚の文字および/または模様が一体的に形成され、かつ、前記文字および/または模様と反対側に突設された嵌合凸起を有する表示部と、前記嵌合凸起が嵌入する嵌合凹部とを有する基部とを有していることを特徴とする、請求項1記載の砂型用模型。
【請求項3】
。
前記表示部の少なくとも文字および/または模様が粉末固着法で成形されていることを特徴とする、請求項1または2記載の砂型用模型
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載した砂型用模型を作業台に載置し、前記模型を囲むように第1の枠体を配置したあと鋳物砂を投入して第1の砂型を形成する第1工程と、
前記第1の砂型を天地逆にして模型の背面を露出させるとともに第2の枠体を配置し、前記背面側に鋳物砂を投入して第2の砂型を形成する第2工程と、
第1の砂型から第2の砂型を取り外し、第1の砂型から模型を除去したあと、第1の砂型に第2の砂型を載置して鋳造キャビティを形成し、前記キャビティに溶湯金属を鋳込んで製造する第3工程を経て製造された鋳物製立体銘板。
【請求項5】
前記砂型模型の背面に壁面固定用柄桿を一体的に形成する棒材を着脱可能に立設したあと、鋳物砂を投入して第2の砂型を形成したものである、請求項4記載の鋳物製立体銘板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂型を製作する際に使用する模型に関するものであり、特に所定の肉厚で文字や模様が一体的に形成された模型(文字や模様が一体的に突設された模型)に関するものである。また、本発明は、前記模型を用いて製造された鋳物製立体銘板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている砂型用模型としては、木製の木型およびプラスチック製の木型がある。木材ブロックないしプラスチック製ブロックを削り出したり、木材片やプラスチック片を立体的につなぎ合わせたりして、立体的な砂型用模型を作成している。
【0003】
木材やプラスチックを使用して砂型用立体模型を製作するには時間がかかり、熟練が必要である。特に、砂型用模型では5度から9度の抜け勾配(抜き勾配)を設けなければならず、文字、例えば画数の多い漢字で構成された文字や欧文文字のE、F、G、Rのような接近した2本の線を有する文字を立体的に形成することは難しく、時間と労力が必要である。同様に、細かな線で構成された模様を立体的に形成することもとても難しく熟練のいる作業である。
【0004】
所定の肉厚で形成した文字や模様の側壁の傾斜角度(抜け勾配)において、文字自体を大きくすれば、文字を構成する線の間隔は大きくなるので、抜け勾配の角度を大きくすることができて、砂型製造時に型崩れのない模型を製作することができる。しかし、文字のエッジが甘くなり、端正で高級感のある鋳物製立体銘板を得ることができない。特にA4版以下の小型の鋳物製立体銘板では顕著である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-15846
【特許文献2】実公昭55-43149
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、立体感のある文字や模様を形成する場合、文字の肉厚(突設高さ)を高くしなければならないが、高くすればするほど抜き勾配を大きくする必要がある。抜き勾配を大きくすると、近接した線の対向斜面(壁面)が途中で交差することになり、所望の突設高さを確保することができない。さらに、文字や模様の壁面の傾斜がなだらかになって、立体感の乏しいものになる。このため、鋳造できる文字の最小寸法には限界があり、端正で立体感のある文字や模様を有する小型の鋳物製立体銘板を得ることは困難であった。つまり、小型の鋳物製立体銘板であって、できるだけ抜け勾配が小さく、かつ所定に肉厚を有する、端正で高級感がある立体銘板を得ることが困難であった。
【0007】
本発明は、所定の肉厚で文字や模様を一体的に形成した砂型用模型およびこれを用いて形成された砂型により鋳造された、端正で高級感のある鋳物製立体銘板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明かかる砂型用模型は、所定の肉厚で文字および/または模様が一体的に形成された表示部と、前記表示部が固定された基部とを有している。
【0009】
請求項2の発明は、所定の肉厚で文字および/または模様が一体的に形成され、かつ、前記文字および/または模様と反対側に突設された嵌合凸起とを有する表示部と、前記嵌合凸起が嵌入する嵌合凹部とを有する基部とを有している。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の砂型用模型において、前記表示部の少なくとも文字および/または模様が粉末固着法で成形されたものである。
【0011】
請求項4の発明にかかる鋳物製立体銘板は、請求項1~3にいずれか記載の砂型用模型を作業台上に載置し、前記模型を囲むように第1の枠体を作業台上に配置したあと鋳物砂を投入して第1の砂型を形成する第1工程と、
前記第1の砂型を天地逆にして砂型用模型の背面を露出させるとともに第2の枠体を配置し、前記背面に鋳物砂を投入して第2の砂型を形成する第2工程と、
第1の砂型と第2の砂型を分離して、第1の砂型から砂型用模型を除去したあと、第1の砂型に第2の砂型を載置して鋳造キャビティを形成し、前記鋳造キャビティに溶湯金属を鋳込む第3工程を経て製造したものである。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4記載の鋳物製立体銘板において、露出した前記背面に壁面取付用柄桿を一体的に成形するための棒材を着脱可能に立設したあと、鋳物砂を投入して第2の砂型を形成する第2の工程を経て製造したものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の砂型用模型は、所定の肉厚で文字および/または模様が一体的に形成された表示部と、前記表示部が固定された基部とを有している。表示部と基部との素材を変えることにより、表示部と基部の表面粗さに変化を持たせることができる。
【0014】
請求項2の砂型用模型は、基部に表示部を嵌合させたものであるから、それぞれ個別に別の素材で製作することができるほか、特にオリジナルな要素の高い表示部の文字および/または模様を一体的に形成する作業が容易になる。
【0015】
請求項3の発明は、前記表示部の少なくとも文字および/または模様が粉末固着法で成形されたものである。粉末固着法のひとつである石膏積層法を用いれば、オリジナルな要素の高い表示部を安価に製造することができる。
【0016】
請求項4の鋳物製立体銘板は、請求項1から3のいずれかに記載の砂型用模型を用いて製造された鋳物製立体鋳物であって、第1工程から第3工程を経て製造されたものであるから、文字および/または模様を一体的に形成した鋳物製立体銘板を製造することができる。
【0017】
請求項5の発明は、第2工程を経ることにより、立体銘板の後面に壁面取付用の柄桿を一体的に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】模型本体部と平板部とを分離して示す砂型用模型の斜視図である。
【
図2】砂型の製造工程のうち、第2の工程を示す斜視図である。
【
図3】砂型用模型で作られた鋳造キャビティにより鋳造された鋳物製立体銘板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
請求項1の砂型用模型は、所定の肉厚で文字および/または模様が一体的に形成された表示部と、前記表示部が着脱自在に固定された基部とを有している。文字が一体的とは、例えば「i」の場合は、「・」と「I」の相対位置が連結部材により固定された状態であり、「谷」の場合は「ハ」と「八」と「ロ」との相対位置が裏打ち部材により固定された状態をいう。または、文字「TEC」のように各文字の相対位置が連結部材により固定されている状態をいう。また、模様が一体的とは、波形の線で構成された模様の場合、連結部材によって各線の相対位置が固定されている状態をいう。基部を着脱自在に固定することにより、表示部の素材と基部の素材を異なったものとすることができる。例えば、表示部を3Dプリンタで出力した石膏製立体造形物とし、基部を化粧板とすることができる。
【0020】
請求項2記載の砂型用模型において、嵌合構造とすることにより表示部と基部の相対位置が固定され、鋳込み時に位置が変化することがない。基部と表示部との嵌合形態としては、裁頭錐形とロート形との対や円柱形と円孔形との対、複数の突起と複数の穴との対などがある、基部の嵌合凹部は底のない貫通孔であってもよい。
【0021】
請求項3記載の発明において、粉末固着法は使用される骨材として、人口鋳物砂、珪砂、石膏などの種々の材料がある。安価な石膏を使用するのがよく、石膏積層法による3Dプリンタの出力により文字や模様を立体的に造形するのがよい。
【0022】
請求項4記載の鋳物製立体銘板は、第2の工程において、湯口孔形成棒や排気孔形成棒を立設しておき、第2の砂型に湯口孔と排気孔を設けておくのが効率的である。一品制作的な要素を有する文字および/または模様を個別的に製造し、画一的な形状の基部を別々に製造して組み立てるものであるから、鋳物製銘板を安価に製造することができる。特に、文字は3Dプリンタを使うことにより端正な文字および/または模様をスピーディに制作することができる。
【0023】
請求項5記載の発明は、砂型用模型の背面に壁面取付用柄桿を形成する棒材を着脱可能に立設したものであるから、鋳込み時に立体銘板に壁面取付用柄桿を一体的に形成することができる。砂型用模型の背面に壁面固定用の柄桿を形成する棒材を着脱自在に立設けることにより、第1の砂型から砂型用模型の撤去作業をした後、第2の砂型から棒材を撤去することができる。棒材を着脱可能に立設する手段としては、棒材の下端に吸盤を設けて模型の背面に吸着させる方法や、下端にフランジを有する棒材を両面接着テープで粘着する方法、蝋製の棒材の下端を溶融させて模型の背面に溶着させる方法などがある。
【実施例0024】
以下、図面にもとづき本発明の実施例を説明する。
図1は、表示部と基部とを分離して示す砂型用模型の斜視図、
図2は砂型の製造工程のうちの第2の工程を示す斜視図、
図3は、 砂型用模型で作られた鋳造キャビティにより鋳造された鋳物製立体銘板の断面図である。
【0025】
図1に示すように、本実施例の砂型用模型1は、縦横300mm、厚さ10mmの直方形の化粧板からなる基部2と、高さ10mmの肉厚(突出高さ10mm)の文字「TEC」3が裏打ち部材で一体的に形成された表示部4を備えている。基部2の中央にはロート形の嵌合凹部5が形成されており、この嵌合凹部5と嵌合する裁頭四角錐形の嵌合凸部6が表示部4の下面側に突設されている。基部2に表示部4が嵌着されたとき、基部2の上面2aと表示部の上面4aとが面一になる。文字は3Dプリンタを使うことにより端正な文字をスピーディに造形することができる。
【0026】
前記模型を用いて砂型を製造するときは、文字3が上側になるようにして模型1を図示しない作業台上に載置し、前記模型を囲むように第1の枠体7を作業台上に配置したあと、第1の枠体内にフラン自硬性の鋳物砂8を投入して第1の砂型9を形成する(第1工程)。次に、
図2に示すように、第1の砂型9を天地逆にして模型1の背面11を露出させるとともに、第2の枠体(図示せず)を第1の砂型8ないし第1の枠体7の上に載置し、下端にフランジ12を有する棒材13を3本、フランジ12の下面に設けられた両面テープにより砂型用模型の背面11に貼着する。さらに湯口孔形成用棒材14と排気孔形成用棒材15の下端面を模型の背面11に立設したあと、フラン自硬性の鋳物砂を投入して第2の砂型を形成する(第2工程)。
【0027】
鋳物砂が固化したら湯口形成棒材14と排気口形成棒材15を抜去したあと、第1の砂型9から棒材13とともに第2の砂型を取り外し、第1の砂型9から模型1を撤去する。第2の砂型から棒材13を撤去し、第1の砂型9に第2の砂型を載置して鋳型を形成するとともに、鋳型の内部に形成された鋳造キャビティにアルミニウム溶湯金属を流し込む。アルミニウム溶湯が冷却したら、第1および第2の砂型を破壊して鋳物製銘板16を取り出す(第3工程)。
【0028】
このような鋳造工程により製造された立体銘板16の中央縦断面が、
図3に示されている。
図3において、17はアルミニウム製の高さ10mmの文字であり、18は文字17と一体のアルミニウム製の基部であり、19は基部18と一体の壁面取付用柄桿である。
所定の肉厚の文字および/または模様が一体的に形成された表示部を基部に嵌着した砂型用模型を作成することができ、立体銘板を製造するための砂型用模型を提供することができる。さらに、この模型を使用して作成した鋳型に金属溶湯を鋳込んで鋳物製立体銘板を製造することができる。鋳造された立体銘板は、端正で高級感があり、エッジの効いた顧客満足度の高いものとなる。