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特開2022-64752タイヤトレッド用ゴム組成物、及びタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064752
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】タイヤトレッド用ゴム組成物、及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20220419BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20220419BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220419BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20220419BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20220419BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L7/00
C08K3/04
C08K3/36
B60C1/00 A
B60C11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173564
(22)【出願日】2020-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】山縣 勇介
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131AA04
3D131BA05
3D131BA07
3D131BA08
3D131BA20
3D131BC01
3D131BC02
3D131BC31
3D131BC35
3D131BC39
3D131EA02U
3D131EA02Z
4J002AC011
4J002AC061
4J002DA036
4J002DJ016
4J002FD016
4J002FD140
4J002FD150
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】高い耐亀裂性を保持しつつ、低発熱性に優れるタイヤトレッド用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】イソプレン系ゴムを含むゴム成分と、フィラーとを含有するタイヤトレッド用ゴム組成物であって、前記フィラーが、窒素吸着比表面積が40m2/g未満であるカーボンブラック(A)と、窒素吸着比表面積が45m2/g以上であるカーボンブラック(B)と、シリカ(C)とを含み、前記フィラーの合計含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して45質量部以下であり、前記カーボンブラック(B)に対する前記カーボンブラック(A)の質量比(A/B)が、1.0以下であり、前記カーボンブラック(A)、前記カーボンブラック(B)及び前記シリカ(C)の合計に対する前記シリカ(C)の質量比(C/(A+B+C))が、0.2以上0.5以下である、ことを特徴とする、タイヤトレッド用ゴム組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴムを含むゴム成分と、フィラーとを含有するタイヤトレッド用ゴム組成物であって、
前記フィラーが、窒素吸着比表面積が40m2/g未満であるカーボンブラック(A)と、窒素吸着比表面積が45m2/g以上であるカーボンブラック(B)と、シリカ(C)とを含み、
前記フィラーの合計含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して45質量部以下であり、
前記カーボンブラック(B)に対する前記カーボンブラック(A)の質量比(A/B)が、1.0以下であり、
前記カーボンブラック(A)、前記カーボンブラック(B)及び前記シリカ(C)の合計に対する前記シリカ(C)の質量比(C/(A+B+C))が、0.2以上0.5以下である、ことを特徴とする、タイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
前記カーボンブラック(A)の窒素吸着比表面積が、25m2/g以上40m2/g未満である、請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
前記カーボンブラック(B)の窒素吸着比表面積が、45m2/g以上90m2/g以下である、請求項1又は2に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
前記カーボンブラック(A)の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して25質量部以下である、請求項1~3のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項5】
前記フィラーの合計含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して25質量部以上である、請求項1~4のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項6】
前記カーボンブラック(B)に対する前記カーボンブラック(A)の質量比(A/B)が、0.65以下である、請求項1~5のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項7】
ゴム成分中の前記イソプレン系ゴムの割合が80質量%以上である、請求項1~6のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項8】
タイヤトレッドのうちの接地しない部材に用いられる、請求項1~7のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物を含有するベーストレッドを備える、ことを特徴とする、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物、及びタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
省エネルギーの社会的な要請及び環境問題への関心の高まりに伴う世界的な二酸化炭素の排出規制の動きに関連して、自動車の低燃費化が一層要求されている。このような要求に対応するため、タイヤに対しても、所定の耐久性を保持しつつ、低発熱性を向上させることが求められている。そして、近年は、タイヤの低発熱性を向上させるための最も一般的な手法として、ゴム組成物に適用可能でより発熱性の低い材料の追求が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1は、イソプレン系ゴムに、特定の性状を有するカーボンブラックと特定の性状を有する比較的大粒径のシリカとを配合してなるゴム組成物をタイヤのトレッドゴムに用いることにより、耐摩耗性が損なわれることなく発熱性能を改良できることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-214000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のゴム組成物は、少なくとも耐亀裂性(破断伸び(EB)、破断応力(TB)など)の保持又は向上の観点で、改良の余地があった。この点、例えば、タイヤのトレッド部が、タイヤの接地部となる径方向外側の層(キャップトレッド)と、径方向内側の層(ベーストレッド)とからなる場合の当該ベーストレッドに対しては、機能上特に、高い耐亀裂性が求められる。そのため、従来のゴム組成物との対比で、耐亀裂性が劣ることなく、低発熱性を有意に向上させる技術が求められていた。
【0006】
そこで、本発明は、高い耐亀裂性を保持しつつ、低発熱性に優れるタイヤトレッド用ゴム組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、かかるトレッド用ゴム組成物を用いた、高い耐亀裂性を保持しつつ、低発熱性に優れるタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0008】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、イソプレン系ゴムを含むゴム成分と、フィラーとを含有するタイヤトレッド用ゴム組成物であって、
前記フィラーが、窒素吸着比表面積が40m2/g未満であるカーボンブラック(A)と、窒素吸着比表面積が45m2/g以上であるカーボンブラック(B)と、シリカ(C)とを含み、
前記フィラーの合計含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して45質量部以下であり、
前記カーボンブラック(B)に対する前記カーボンブラック(A)の質量比(A/B)が、1.0以下であり、
前記カーボンブラック(A)、前記カーボンブラック(B)及び前記シリカ(C)の合計に対する前記シリカ(C)の質量比(C/(A+B+C))が、0.2以上0.5以下である、ことを特徴とする。
かかる本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、高い耐亀裂性を保持しつつ、低発熱性に優れる。
【0009】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物においては、前記カーボンブラック(A)の窒素吸着比表面積が、25m2/g以上40m2/g未満であることが好ましい。この場合、耐亀裂性を十分良好に維持しつつ、低発熱性を向上させることができる。
【0010】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物においては、前記カーボンブラック(B)の窒素吸着比表面積が、45m2/g以上90m2/g以下であることが好ましい。この場合、耐亀裂性をより良好に保持することができる。
【0011】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、前記カーボンブラック(A)の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して25質量部以下であることが好ましい。この場合、耐亀裂性をより一層向上させることができる。
【0012】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、前記フィラーの合計含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して25質量部以上であることが好ましい。この場合、高い耐亀裂性を保持しつつ、低発熱性をより一層向上させることができる。
【0013】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物においては、耐亀裂性をより向上させる観点から、前記カーボンブラック(B)に対する前記カーボンブラック(A)の質量比(A/B)が、0.65以下であることが好ましい。
【0014】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物においては、ゴム成分中の前記イソプレン系ゴムの割合が80質量%以上であることが好ましい。この場合、低発熱性をより向上させることができる。
【0015】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、タイヤトレッドのうちの接地しない部材に好適に用いることができる。
【0016】
また、本発明のタイヤは、上述したタイヤトレッド用ゴム組成物を含有するベーストレッドを備える、ことを特徴とする。かかる本発明のタイヤは、高い耐亀裂性を保持しつつ、低発熱性に優れる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高い耐亀裂性を保持しつつ、低発熱性に優れるタイヤトレッド用ゴム組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、高い耐亀裂性を保持しつつ、低発熱性に優れるタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物及びタイヤを、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0019】
<タイヤトレッド用ゴム組成物>
本発明の一実施形態のタイヤトレッド用ゴム組成物(以下、「本実施形態のゴム組成物」と称することがある。)は、イソプレン系ゴムを含むゴム成分と、フィラーとを含有する。また、本実施形態のゴム組成物は、
(1)上記フィラーが、窒素吸着比表面積(N2SA)が40m2/g未満であるカーボンブラック(A)と、窒素吸着比表面積が45m2/g以上であるカーボンブラック(B)と、シリカ(C)とを含むこと、
(2)上記フィラーの合計含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して45質量部以下であること、
(3)上記カーボンブラック(B)に対する上記カーボンブラック(A)の質量比(A/B)が、1.0以下であること、並びに、
(4)上記カーボンブラック(A)、上記カーボンブラック(B)及び上記シリカ(C)の合計に対する上記シリカ(C)の質量比(C/(A+B+C))が、0.2以上0.5以下であること、
をそれぞれ一特徴とする。驚くべきことに、本実施形態のゴム組成物は、上述した特徴を有するため、これらの複合的な作用により、高い耐亀裂性を保持しつつ、低発熱性に優れる。
【0020】
そして、本実施形態のゴム組成物は、上述の通り少なくとも高い耐亀裂性が保持されているため、タイヤのトレッド部、特には、タイヤトレッドのうちの接地しない部材(ベーストレッドなど)に、好適に用いることができる。
【0021】
なお、本明細書において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2に準拠して測定されるものとする。
【0022】
(ゴム成分)
本実施形態のゴム組成物は、イソプレン系ゴムを含むゴム成分を含有することを要する。イソプレン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、高純度天然ゴム等が挙げられる。イソプレン系ゴムは、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0023】
なお、本実施形態のゴム組成物は、イソプレン系ゴム以外のその他のゴム成分を含有してもよい。かかるその他のゴム成分としては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル-ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。これらその他のゴム成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本実施形態のゴム組成物においては、ゴム成分中のイソプレン系ゴムの割合が80質量%以上であることが好ましい。この場合、低発熱性をより向上させることができる。同様の観点から、ゴム成分中のイソプレン系ゴムの割合は、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが更に好ましい。
【0025】
(フィラー)
本実施形態のゴム組成物は、フィラーを含有する。そして、上記フィラーは、少なくとも、窒素吸着比表面積が40m2/g未満であるカーボンブラック(A)を含むことを要する。ゴム組成物が上記カーボンブラック(A)を含有しない場合には、少なくとも低発熱性を十分に向上させることができない虞がある。カーボンブラック(A)は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0026】
上記カーボンブラック(A)の窒素吸着比表面積は、低発熱性をより向上させる観点から、39m2/g以下であることが好ましく、36m2/g以下であることがより好ましい。
【0027】
本実施形態で用いるカーボンブラック(A)の窒素吸着比表面積は、40m2/g未満であるとともに、25m2/g以上であることが好ましい。この場合、耐亀裂性を十分良好に維持しつつ、低発熱性を向上させることができる。同様の観点から、上記カーボンブラック(A)の窒素吸着比表面積は、27m2/g以上であることがより好ましく、28m2/g以上であることが更に好ましい。
【0028】
本実施形態のゴム組成物におけるカーボンブラック(A)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して25質量部以下であることが好ましい。この場合、耐亀裂性をより一層向上させることができる。同様の観点から、上記ゴム組成物におけるカーボンブラック(A)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。また、上記ゴム組成物におけるカーボンブラック(A)の含有量は、低発熱性の向上効果を十分に得る観点から、ゴム成分100質量部に対して2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましい。
【0029】
また、上記フィラーは、少なくとも、窒素吸着比表面積が45m2/g以上であるカーボンブラック(B)を含むことを要する。ゴム組成物が上記カーボンブラック(B)を含有しない場合には、少なくとも高い耐亀裂性を保持できない虞がある。カーボンブラック(B)は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0030】
上記カーボンブラック(B)の窒素吸着比表面積は、耐亀裂性をより向上させる観点から、50m2/g以上であることが好ましく、60m2/g以上であることがより好ましい。
【0031】
本実施形態で用いるカーボンブラック(B)の窒素吸着比表面積は、45m2/g以上であるとともに、90m2/g以下であることが好ましい。この場合、耐亀裂性をより良好に保持する。同様の観点から、上記カーボンブラック(B)の窒素吸着比表面積は、85m2/g以下であることがより好ましく、80m2/g以下であることが更に好ましく、75m2/g以下であることが一層好ましく、70m2/g以下であることが特に好ましい。
【0032】
本実施形態のゴム組成物におけるカーボンブラック(B)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して25質量部以下であることが好ましい。この場合、低発熱性をより一層向上させることができる。同様の観点から、上記ゴム組成物におけるカーボンブラック(B)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して20質量部以下であることがより好ましい。また、上記ゴム組成物におけるカーボンブラック(B)の含有量は、耐亀裂性の保持効果を十分に得る観点から、ゴム成分100質量部に対して5質量部以上であることが好ましく、7質量部以上であることがより好ましく、8質量部以上であることが更に好ましい。
【0033】
本実施形態のゴム組成物は、カーボンブラック(B)に対するカーボンブラック(A)の質量比(A/B)が、1.0以下であることを要する。上記質量比(A/B)が1.0超であると、高い耐亀裂性を保持できない虞がある。また、上記質量比(A/B)は、耐亀裂性をより向上させる観点から、0.8以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.65以下であることが更に好ましく、0.6以下であることが一層好ましく、0.55以下であることが特に好ましい。一方、上記質量比(A/B)は、特に限定されないが、例えば0.1以上とすることができる。
【0034】
また、上記フィラーは、少なくとも、シリカ(C)を含むことを要する。ゴム組成物が上記シリカ(C)を含有しない場合には、少なくとも高い耐亀裂性を保持できない虞がある。シリカ(C)は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0035】
シリカ(C)としては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ等が挙げられる。また、上記シリカ(C)の窒素吸着比表面積は、100m2/g以上300m2/g以下であることが好ましい。この場合、高い耐亀裂性及び低発熱性をより良好に保持することができる。同様の観点から、上記シリカ(C)の窒素吸着比表面積は、180m2/g以上であることがより好ましく、また、250m2/g以下であることがより好ましい。
また、上記シリカ(C)の臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)吸着比表面積は、100m2/g以上300m2/g以下であることが好ましい。この場合、高い耐亀裂性及び低発熱性をより良好に保持することができる。同様の観点から、上記シリカ(C)のCTAB吸着比表面積は、130m2/g以上であることがより好ましく、また、200m2/g以下であることがより好ましく、180m2/g以下であることが更に好ましい。
【0036】
本実施形態のゴム組成物におけるシリカ(C)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して25質量部以下であることが好ましい。この場合、低発熱性をより一層向上させることができる。同様の観点から、上記ゴム組成物におけるシリカ(C)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。また、上記ゴム組成物におけるシリカ(C)の含有量は、耐亀裂性の保持効果を十分に得る観点から、ゴム成分100質量部に対して3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。
【0037】
本実施形態のゴム組成物は、カーボンブラック(A)、カーボンブラック(B)及びシリカ(C)の合計に対するシリカ(C)の質量比(C/(A+B+C))が、0.2以上0.5以下であることを要する。上記質量比(C/(A+B+C))が0.2未満、又は0.5超であると、高い耐亀裂性の保持及び低発熱性の有意な向上を両立できない虞がある。また、上記質量比(C/(A+B+C))は、特に低発熱性をより向上させる観点から、0.22以上であることが好ましく、0.25以上であることがより好ましく、また、0.4以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましい。
【0038】
本実施形態のゴム組成物は、上述したカーボンブラック(A)、カーボンブラック(B)及びシリカ(C)以外のその他のフィラーを含有してもよい。かかるその他のフィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム等が挙げられる。これらその他のフィラーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
但し、所望の効果をより確実に得る観点から、本実施形態のゴム組成物におけるフィラーは、上記その他のフィラーの割合が20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、0質量%である(即ち、フィラーが、カーボンブラック(A)、カーボンブラック(B)及びシリカ(C)のみからなる)ことが特に好ましい。
【0040】
本実施形態のゴム組成物は、フィラーの合計含有量が、ゴム成分100質量部に対して45質量部以下であることを要する。フィラーの合計含有量が45質量部超であると、高い耐亀裂性の保持及び低発熱性の有意な向上を両立できない虞がある。
【0041】
また、ゴム成分100質量部に対するフィラーの合計含有量は、耐亀裂性及び/又は低発熱性を一層向上させる観点から、40質量部以下であることが好ましい。一方、ゴム成分100質量部に対するフィラーの合計含有量は、高い耐亀裂性を保持しつつ、低発熱性をより一層向上させる観点から、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることが更に好ましく、25質量部以上であることが一層好ましい。
【0042】
(その他の成分)
本実施形態のゴム組成物は、上述したもののほか、目的を損なわない範囲で、硫黄等の加硫剤、ステアリン酸等の加硫助剤、加硫促進剤、亜鉛華等の加硫促進助剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、加工性改良剤などの各種配合剤を適宜含有することができる。
【0043】
加硫促進剤としては、例えば、グアニジン類、スルフェンアミド類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、チオウレア類及びキサントゲン酸塩類の加硫促進剤が挙げられる。
【0044】
グアニジン類の加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。
【0045】
スルフェンアミド類の加硫促進剤としては、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-メチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-エチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-プロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オクチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-2-エチルヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-デシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ドデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ステアリル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジメチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジエチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジプロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジオクチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジ-2-エチルヘキシルベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジドデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジステアリル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。
【0046】
チアゾール類の加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(N,N-ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(4-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、4-メチ
ル-2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-(4-メチル-2-ベンゾチアゾリル)ジスルフィド、5-クロロ-2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、2-メルカプト-6-ニトロベンゾチアゾール、2-メルカプト-ナフト[1,2-d]チアゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンゾチアゾール、6-アミノ-2-メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0047】
チウラム類の加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラプロピルチウラムジスルフィド、テトライソプロピルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラペンチルチウラムジスルフィド、テトラヘキシルチウラムジスルフィド、テトラヘプチルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、テトラノニルチウラムジスルフィド、テトラデシルチウラムジスルフィド、テトラドデシルチウラムジスルフィド、テトラステアリルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムモノスルフィド、テトラプロピルチウラムモノスルフィド、テトライソプロピルチウラムモノスルフィド、テトラブチルチウラムモノスルフィド、テトラペンチルチウラムモノスルフィド、テトラヘキシルチウラムモノスルフィド、テトラヘプチルチウラムモノスルフィド、テトラオクチルチウラムモノスルフィド、テトラノニルチウラムモノスルフィド、テトラデシルチウラムモノスルフィド、テトラドデシルチウラムモノスルフィド、テトラステアリルチウラムモノスルフィド、テトラベンジルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
【0048】
ジチオカルバミン酸塩類の加硫促進剤としては、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジイソプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジペンチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジヘキシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジヘプチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ(2-エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸亜鉛、ジデシルジチオカルバミン酸亜鉛、ジドデシルジチオカルバミン酸亜鉛、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、N-エチル-N-フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジプロピルジチオカルバミン酸銅、ジイソプロピルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、ジペンチルジチオカルバミン酸銅、ジヘキシルジチオカルバミン酸銅、ジヘプチルジチオカルバミン酸銅、ジオクチルジチオカルバミン酸銅、ジ(2-エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸銅、ジデシルジチオカルバミン酸銅、ジドデシルジチオカルバミン酸銅、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸銅、ジベンジルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジプロピルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジイソプロピルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジペンチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジヘキシルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジヘプチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジオクチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ(2-エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸ナトリウム、ジデシルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジドデシルジチオカルバミン酸ナトリウム、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸ナトリウム、ジベンジルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジプロピルジチオカルバミン酸第二鉄、ジイソプロピルジチオカルバミン酸第二鉄、ジブチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジペンチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジヘキシルジチオカルバミン酸第二鉄、ジヘプチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジオクチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジ(2-エチルヘキシル)ジチオカルバミン酸第二鉄、ジデシルジチオカルバミン酸第二鉄、ジドデシルジチオカルバミン酸第二鉄、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸第二鉄、ジベンジルジチオカルバミン酸第二鉄等が挙げられる。
【0049】
チオウレア類の加硫促進剤としては、チオ尿素、N,N’-ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素、N,N’-ジメチルチオ尿素、N,N’-ジブチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N’-ジイソプロピルチオ尿素、N,N’-ジシクロヘキシルチオ尿素、1,3-ジ(o-トリル)チオ尿素、1,3-ジ(p-トリル)チオ尿素、1,1-ジフェニル-2-チオ尿素、2,5-ジチオビ尿素、グアニルチオ尿素、1-(1-ナフチル)-2-チオ尿素、1-フェニル-2-チオ尿素、p-トリルチオ尿素、o-トリルチオ尿素等が挙げられる。
【0050】
キサントゲン酸塩類の加硫促進剤としては、メチルキサントゲン酸亜鉛、エチルキサントゲン酸亜鉛、プロピルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛、ペンチルキサントゲン酸亜鉛、ヘキシルキサントゲン酸亜鉛、ヘプチルキサントゲン酸亜鉛、オクチルキサントゲン酸亜鉛、2-エチルヘキシルキサントゲン酸亜鉛、デシルキサントゲン酸亜鉛、ドデシルキサントゲン酸亜鉛、メチルキサントゲン酸カリウム、エチルキサントゲン酸カリウム、プロピルキサントゲン酸カリウム、イソプロピルキサントゲン酸カリウム、ブチルキサントゲン酸カリウム、ペンチルキサントゲン酸カリウム、ヘキシルキサントゲン酸カリウム、ヘプチルキサントゲン酸カリウム、オクチルキサントゲン酸カリウム、2-エチルヘキシルキサントゲン酸カリウム、デシルキサントゲン酸カリウム、ドデシルキサントゲン酸カリウム、メチルキサントゲン酸ナトリウム、エチルキサントゲン酸ナトリウム、プロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、ブチルキサントゲン酸ナトリウム、ペンチルキサントゲン酸ナトリウム、ヘキシルキサントゲン酸ナトリウム、ヘプチルキサントゲン酸ナトリウム、オクチルキサントゲン酸ナトリウム、2-エチルヘキシルキサントゲン酸ナトリウム、デシルキサントゲン酸ナトリウム、ドデシルキサントゲン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0051】
なお、加硫促進剤の具体例として上述した化合物の多くは、硫黄化合物に該当する。そして、本実施形態のゴム組成物は、上述したような硫黄化合物を含有してもよい。但し、本実施形態のゴム組成物は、所望の効果をより確実に得る観点から、下記一般式(I):
A-(CH2n-Sx- (I)
[式中、Aは複素環を示し、nは1以上の整数を示し、xは1以上の整数を示す。]で表される骨格を有する硫黄化合物は、含有しないことが好ましい。
【0052】
本実施形態のゴム組成物の調製方法は、特に限定されず、例えば、常法に従って、上述したゴム成分及びフィラーを含む各成分を配合して混練することにより、本実施形態のゴム組成物を得ることができる。なお、配合及び混練に際しては、全ての成分を一度に配合して混練してもよく、2段階又は3段階等の多段階に分けて各成分を配合して混練してもよい。なお、混練に際しては、ロール、インターナルミキサー、バンバリーローター等の混練機を用いることができる。また、本実施形態のゴム組成物は、架橋物(加硫物)とすることができる。その場合、架橋(加硫)の条件としては、特に限定されないが、圧力は、2MPa~15MPaが好ましく、2MPa~5MPaがより好ましく、また、温度は、120~200℃が好ましく、130~170℃がより好ましい。加硫時間は、特に限定されないが、3分~60時間が好ましい。
【0053】
<タイヤ>
本発明の一実施形態のタイヤ(以下、「本実施形態のタイヤ」と称することがある。)は、上述したゴム組成物を、ベーストレッドに用いたことを特徴とする。換言すると、本実施形態のタイヤは、上述したゴム組成物を含有するベーストレッドを備えることを特徴とする。本実施形態のタイヤは、上述したゴム組成物を備えるため、高い耐亀裂性を保持しつつ、低発熱性に優れる。
【0054】
なお、本実施形態のタイヤにおいては、トレッド部が、タイヤの接地部となる径方向外側の層(キャップトレッド)と、径方向内側の層(ベーストレッド)とからなる構造を有することができる。また、本実施形態のタイヤにおいては、トレッド部が、キャップトレッドとベーストレッドとの間に、更なる層を有することもできる。
【0055】
本実施形態のタイヤは、上述したゴム組成物をベーストレッドに適用すること以外、特に制限はなく、常法に従って製造することができる。また、本実施形態のタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例0056】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
(ゴム組成物の調製)
表1又は表2に示す配合処方にて配合、混練したのち、加硫して、加硫ゴム組成物を作製した。得られた加硫ゴム組成物のサンプルについて、以下の手順に従い、耐亀裂性及び低発熱性の評価を行った。
【0058】
<耐亀裂性>
各例のサンプルについて、JIS K 6251:2004に準拠し、25℃にて引張試験を行い、破断伸び(EB)(%)及び破断応力(TB)(MPa)を測定した。結果を表1及び表2に示す。それぞれ値が大きいほど、耐亀裂性に優れることを示す。なお、本実施例においては、破断伸び(EB)が680%以上、及び破断応力(TB)が19.35MPa以上であれば、十分に高い耐亀裂性が保持できているものと認められる。
【0059】
<低発熱性>
各例のサンプルについて、粘弾性測定装置(GABO社製)を用い、周波数50Hz、歪み2%にて、100℃におけるtanδを測定した。比較例1のtanδの測定値を100として、各例におけるtanδの測定値を指数化した。結果を表1及び表2に示す。指数値が小さいほど、低発熱性に優れることを示す。なお、本実施例においては、指数値が70未満であれば、低発熱性が有意に向上しているものと認められる。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
*1 CB(A1):カーボンブラック、旭カーボン株式会社製「旭#8」、N2SA 11m2/g
*2 CB(A2):カーボンブラック、旭カーボン株式会社製「旭#50」、N2SA 23m2/g
*3 CB(A3):カーボンブラック、N2SA 28m2/g、DBP(ジブチルフタレート)吸油量 89ml/100g
*4 CB(X):カーボンブラック、N2SA 40m2/g、DBP吸油量 121ml/100g
*5 CB(B1):カーボンブラック、N2SA 69m2/g、DBP吸油量 104ml/100g
*6 CB(B2):カーボンブラック、N2SA 86m2/g、DBP吸油量 74ml/100g
*7 CB(B3):カーボンブラック、N2SA 114m2/g、DBP吸油量 114ml/100g
*8 シリカ(C):N2SA 205m2/g、CTAB吸着比表面積 155m2/g
*9 加硫促進剤:大内新興化学工業株式会社製「NOCCELER CZ」
*10 シリカ(C)/(全カーボンブラック+シリカ(C))の値を表記。
【0063】
表1及び表2より、本実施形態に従う実施例1~8のゴム組成物は、いずれも、破断伸び(EB)が680%以上、及び破断応力(TB)が19.35MPa以上であるので、高い耐亀裂性を保持できているとともに、tanδの指数値が70未満であるので、低発熱性が有意に向上していることが分かる。
【0064】
一方、窒素吸着比表面積が40m2/g未満であるカーボンブラック(A)を含有していない場合には、たとえ他の要件を満たしていたとしても、低発熱性を十分に向上させることができないことが分かる(比較例1-4,7,13,14など)。
【0065】
特に、実施例1と比較例13との比較から、窒素吸着比表面積が40m2/g未満であるカーボンブラック(A)に代えて、窒素吸着比表面積が40m2/gであるカーボンブラックを用いたとしても、低発熱性の向上効果を十分に得ることができないことが分かる。
【0066】
また、窒素吸着比表面積が45m2/g以上であるカーボンブラック(B)を含有していない場合には、たとえ他の要件を満たしていたとしても、少なくとも高い耐亀裂性を保持できないことが分かる(比較例3-6など)。
【0067】
なお、比較例3及び比較例4は、カーボンブラックとして、窒素吸着比表面積が40m2/g未満であるカーボンブラック(A)及び窒素吸着比表面積が45m2/g以上であるカーボンブラック(B)を用いない代わりに、窒素吸着比表面積が40m2/gであるカーボンブラックのみを用いているが、この場合には、少なくとも低発熱性の向上効果を十分に得ることができないことが分かる。
【0068】
また、シリカ(C)を含有していない場合には、たとえ他の要件を満たしていたとしても、高い耐亀裂性を保持できないことが分かる(比較例15,16など)。
【0069】
また、フィラーの合計含有量が、ゴム成分100質量部に対して45質量部超である場合には、たとえ他の要件を満たしていたとしても、高い耐亀裂性の保持及び低発熱性の有意な向上を両立できないことが分かる(比較例9-12など)。
【0070】
また、カーボンブラック(B)に対するカーボンブラック(A)の質量比(A/B)が1.0超である場合には、たとえ他の要件を満たしていたとしても、少なくとも高い耐亀裂性を保持できないことが分かる(比較例8,10など)。
【0071】
また、カーボンブラック(A)、カーボンブラック(B)及びシリカ(C)の合計に対するシリカ(C)の質量比(C/(A+B+C))が0.2未満である場合には、たとえ他の要件を満たしていたとしても、高い耐亀裂性の保持及び低発熱性の有意な向上を両立できないことが分かる(比較例15,16など)。
【0072】
また、カーボンブラック(A)、カーボンブラック(B)及びシリカ(C)の合計に対するシリカ(C)の質量比(C/(A+B+C))が0.5超である場合には、たとえ他の要件を満たしていたとしても、高い耐亀裂性の保持及び低発熱性の有意な向上を両立できないことが分かる(比較例17など)。
【0073】
また、実施例1と実施例4,5との比較から、カーボンブラック(A)として窒素吸着比表面積が25m2/g以上のものを用いることで、耐亀裂性をより一層向上させることができることが分かる。
【0074】
また、実施例1と実施例6,7との比較から、カーボンブラック(B)に対するカーボンブラック(A)の質量比(A/B)を0.65以下とすることで、耐亀裂性をより一層向上させることができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、高い耐亀裂性を保持しつつ、低発熱性に優れるタイヤトレッド用ゴム組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、高い耐亀裂性を保持しつつ、低発熱性に優れるタイヤを提供することができる。