(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064771
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】円周面測定装置および円周面測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 5/20 20060101AFI20220419BHJP
G01B 21/20 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
G01B5/20 C
G01B21/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173600
(22)【出願日】2020-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】特許業務法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一朗
(72)【発明者】
【氏名】北風 絢子
(72)【発明者】
【氏名】野口 賢次
(72)【発明者】
【氏名】中谷 尊一
(72)【発明者】
【氏名】三宮 一彦
【テーマコード(参考)】
2F062
2F069
【Fターム(参考)】
2F062AA55
2F062AA57
2F062AA61
2F062AA66
2F062BB03
2F062CC23
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2F062DD03
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2F062FF03
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2F062JJ08
2F069AA54
2F069AA56
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2F069CC05
2F069DD12
2F069DD16
2F069GG01
2F069GG04
2F069GG62
2F069HH02
2F069HH09
2F069JJ06
2F069JJ10
2F069JJ13
2F069JJ17
2F069JJ25
2F069JJ28
2F069NN09
(57)【要約】
【課題】無数の凸状微細部または凹状微細部が周期的に分散して残存した被加工物の表面形状を正確に測定する円周面測定装置および円周面測定方法を提供する。
【解決手段】尾根線PLと谷線VLとの配置周期が一周期以上存在する方向を被切削物Wに対する測定方向として特定する測定方向特定手段162aと、モーター123およびプローブ移動機構150を制御して測定プローブ130を所定の測定開始点から測定方向に少なくとも1つの被切削物Wの凹部Vと少なくとも1つの被切削物Wの凸状微細部Tとを通過するように移動させる駆動制御部161とを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無数の凸状微細部と該凸状微細部の相互間に形成された無数の凹部とが円周面に周期的に分散して残存すると共に前記凸状微細部の頂点の近傍を結び最も高さ方向の凹凸が大きい直線状の尾根線と該尾根線と平行な線であって最も高さ方向の凹凸が小さい直線状の谷線とが円周上に周期的に配置される被加工物の表面形状を測定する円周面測定装置であって、
前記被加工物の円周面に沿って前記被加工物の表面形状を測定する測定プローブと、
前記被加工物の軸心を中心に前記被加工物または前記測定プローブの少なくとも一方を回転させる回転手段と、
前記測定プローブまたは前記被加工物の少なくとも一方を前記被加工物の軸心と平行に直線移動させる測定点移動手段と、
前記尾根線と前記谷線との配置周期が一周期以上存在する方向を前記被加工物に対する測定方向として特定する測定方向特定手段と、
前記回転手段および前記測定点移動手段を制御して前記測定プローブを所定の測定開始点から前記測定方向に少なくとも1つの前記被加工物の凹部と少なくとも1つの前記被加工物の凸状微細部とを通過するように移動させる駆動制御手段とを備えている、円周面測定装置。
【請求項2】
前記測定開始点から前記測定方向に延びる検査経路と前記凸状微細部の頂点との距離を小さい順に並べたときに、第n(n=1、2・・・)番目の前記凸状微細部の頂点と前記検査経路との距離が第n+1番目の前記凸状微細部の頂点と前記検査経路との距離の次に小さいとして、
前記第n番目の凸状微細部の頂点と前記検査経路との距離と前記第n+1番目の凸状微細部の頂点と前記検査経路との距離との差が、所定の間隔値以下である、請求項1に記載の円周面測定装置。
【請求項3】
前記測定方向特定手段が、前記測定プローブを前記被加工物の円周面に沿って走査させた結果に基づいて前記測定方向を特定する、請求項1または請求項2に記載の円周面測定装置。
【請求項4】
前記被加工物が、低周波振動切削加工により切削された被切削物である、請求項1乃至請求項3に記載の円周面測定装置。
【請求項5】
前記測定プローブが、複数設置されている、請求項1乃至請求項4に記載の円周面測定装置。
【請求項6】
無数の凹状微細部と該凹状微細部の相互間に形成された無数の凸部とが円周面に周期的に分散して残存すると共に前記凹状微細部の頂点の近傍を結び最も高さ方向の凹凸が大きい直線状の谷線と該谷線と平行な線であって最も高さ方向の凹凸が小さい直線状の尾根線とが円周上に周期的に配置される被加工物の表面形状を測定する円周面測定装置であって、
前記被加工物の円周面に沿って前記被加工物の表面形状を測定する測定プローブと、
前記被加工物の軸心を中心に前記被加工物または前記測定プローブの少なくとも一方を回転させる回転手段と、
前記測定プローブまたは前記被加工物の少なくとも一方を前記被加工物の軸心と平行に直線移動させる測定点移動手段と、
前記尾根線と前記谷線との配置周期が一周期以上存在する方向を前記被加工物に対する測定方向として特定する測定方向特定手段と、
前記回転手段および前記測定点移動手段を制御して前記測定プローブを所定の測定開始点から前記測定方向に少なくとも1つの前記被加工物の凸部と少なくとも1つの前記被加工物の凹状微細部とを通過するように移動させる駆動制御手段とを備えている、円周面測定装置。
【請求項7】
無数の凸状微細部と該凸状微細部の相互間に形成された無数の凹部とが円周面に周期的に分散して残存すると共に前記凸状微細部の頂点の近傍を結び最も高さ方向の凹凸が大きい直線状の尾根線と該尾根線と平行な線であって最も高さ方向の凹凸が小さい直線状の谷線とが円周上に周期的に配置される被加工物の円周面に沿って前記被加工物の表面形状を測定する測定プローブと、前記被加工物の軸心を中心に前記被加工物または前記測定プローブの少なくとも一方を回転させる回転手段と、前記測定プローブまたは前記被加工物の少なくとも一方を前記被加工物の軸心と平行に直線移動させる測定点移動手段と、前記尾根線と前記谷線との配置周期が一周期以上存在する方向を前記被加工物に対する測定方向として特定する測定方向特定手段と、前記回転手段および前記測定点移動手段を制御する駆動制御手段とを備えて前記被加工物の表面形状を測定する円周面測定装置を用いた円周面測定方法であって、
前記測定方向特定手段が前記尾根線と前記谷線とが一周期以上存在する方向を前記被加工物に対する測定方向として特定する測定方向特定ステップと、
前記駆動制御手段が前記測定プローブを所定の測定開始点から前記測定方向に少なくとも1つの前記被加工物の凹部と少なくとも1つの前記被加工物の凸状微細部とを通過するように移動させる測定ステップとを備えている、円周面測定方法。
【請求項8】
無数の凹状微細部と該凹状微細部の相互間に形成された無数の凹部とが円周面に周期的に分散して残存すると共に前記凹状微細部の頂点の近傍を結び最も高さ方向の凹凸が大きい直線状の谷線と該谷線と平行な線であって最も高さ方向の凹凸が小さい直線状の尾根線とが円周上に周期的に配置される被加工物の円周面に沿って前記被加工物の表面形状を測定する測定プローブと、前記被加工物の軸心を中心に前記被加工物または前記測定プローブの少なくとも一方を回転させる回転手段と、前記測定プローブまたは前記被加工物の少なくとも一方を前記被加工物の軸心と平行に直線移動させる測定点移動手段と、前記尾根線と前記谷線との配置周期が一周期以上存在する方向を前記被加工物に対する測定方向として特定する測定方向特定手段と、前記回転手段および前記測定点移動手段を制御する駆動制御手段とを備えて前記被加工物の表面形状を測定する円周面測定装置を用いた円周面測定方法であって、
前記測定方向特定手段が前記尾根線と前記谷線とが一周期以上存在する方向を前記被加工物に対する測定方向として特定する測定方向特定ステップと、
前記駆動制御手段が前記測定プローブを所定の測定開始点から前記測定方向に少なくとも1つの前記被加工物の凸部と少なくとも1つの前記被加工物の凹状微細部とを通過するように移動させる測定ステップとを備えている、円周面測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円周面測定装置および円周面測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒体の検査方法として、円筒体の軸方向にわたって、円筒体の軸に対する一円周上の半径方向の変位量の最大値である円周振れを測定することにより凹凸を検出するものであって、円筒体の表面を軸方向にスパイラル状に走査するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-292539号公報(特に、請求項3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した円筒体の検査方法により、例えば、低周波振動切削加工により円周面に無数の凸状微細部が周期的に分散して残存した被切削物を検知しようとすると、走査経路上に凹部しか存在しなかった場合に正しい被切削物の表面形状を測定できない虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、無数の凸状微細部または凹状微細部が周期的に分散して残存した被加工物の表面形状を正確に測定する円周面測定装置および円周面測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1に、無数の凸状微細部と該凸状微細部の相互間に形成された無数の凹部とが円周面に周期的に分散して残存すると共に前記凸状微細部の頂点の近傍を結び最も高さ方向の凹凸が大きい直線状の尾根線と該尾根線と平行な線であって最も高さ方向の凹凸が小さい直線状の谷線とが円周上に周期的に配置される被加工物の表面形状を測定する円周面測定装置であって、前記被加工物の円周面に沿って前記被加工物の表面形状を測定する測定プローブと、前記被加工物の軸心を中心に前記被加工物または前記測定プローブの少なくとも一方を回転させる回転手段と、前記測定プローブまたは前記被加工物の少なくとも一方を前記被加工物の軸心と平行に直線移動させる測定点移動手段と、前記尾根線と前記谷線との配置周期が一周期以上存在する方向を前記被加工物に対する測定方向として特定する測定方向特定手段と、前記回転手段および前記測定点移動手段を制御して前記測定プローブを所定の測定開始点から前記測定方向に少なくとも1つの前記被加工物の凹部と少なくとも1つの前記被加工物の凸状微細部とを通過するように移動させる駆動制御手段とを備えていることを特徴とする。
ここで、本発明における「無数」とは、「数え切れないほど多いこと」を意味するが、「2以上の複数」という意味でもよいことはいうまでもない。
【0007】
第2に、前記測定開始点から前記測定方向に延びる検査経路と前記凸状微細部の頂点との距離を小さい順に並べたときに、第n(n=1、2・・・)番目の前記凸状微細部の頂点と前記検査経路との距離が第n+1番目の前記凸状微細部の頂点と前記検査経路との距離の次に小さいとして、前記第n番目の凸状微細部の頂点と前記検査経路との距離と前記第n+1番目の凸状微細部の頂点と前記検査経路との距離との差が、所定の間隔値以下であることを特徴とする。
【0008】
第3に、前記測定方向特定手段が、前記測定プローブを前記被加工物の円周面に沿って走査させた結果に基づいて前記測定方向を特定することを特徴とする。
【0009】
第4に、前記被加工物が、低周波振動切削加工により切削された被切削物であることを特徴とする。
【0010】
第5に、前記測定プローブが、複数設置されていることを特徴とする。
【0011】
第6に、無数の凹状微細部と該凹状微細部の相互間に形成された無数の凸部とが円周面に周期的に分散して残存すると共に前記凹状微細部の頂点の近傍を結び最も高さ方向の凹凸が大きい直線状の谷線と該谷線と平行な線であって最も高さ方向の凹凸が小さい直線状の尾根線とが円周上に周期的に配置される被加工物の表面形状を測定する円周面測定装置であって、前記被加工物の円周面に沿って前記被加工物の表面形状を測定する測定プローブと、前記被加工物の軸心を中心に前記被加工物または前記測定プローブの少なくとも一方を回転させる回転手段と、前記測定プローブまたは前記被加工物の少なくとも一方を前記被加工物の軸心と平行に直線移動させる測定点移動手段と、前記尾根線と前記谷線との配置周期が一周期以上存在する方向を前記被加工物に対する測定方向として特定する測定方向特定手段と、前記回転手段および前記測定点移動手段を制御して前記測定プローブを所定の測定開始点から前記測定方向に少なくとも1つの前記被加工物の凸部と少なくとも1つの前記被加工物の凹状微細部とを通過するように移動させる駆動制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0012】
第7に、無数の凸状微細部と該凸状微細部の相互間に形成された無数の凹部とが円周面に周期的に分散して残存すると共に前記凸状微細部の頂点の近傍を結び最も高さ方向の凹凸が大きい直線状の尾根線と該尾根線と平行な線であって最も高さ方向の凹凸が小さい直線状の谷線とが円周上に周期的に配置される被加工物の円周面に沿って前記被加工物の表面形状を測定する測定プローブと、前記被加工物の軸心を中心に前記被加工物または前記測定プローブの少なくとも一方を回転させる回転手段と、前記測定プローブまたは前記被加工物の少なくとも一方を前記被加工物の軸心と平行に直線移動させる測定点移動手段と、前記尾根線と前記谷線との配置周期が一周期以上存在する方向を前記被加工物に対する測定方向として特定する測定方向特定手段と、前記回転手段および前記測定点移動手段を制御する駆動制御手段とを備えて前記被加工物の表面形状を測定する円周面測定装置を用いた円周面測定方法であって、前記測定方向特定手段が前記尾根線と前記谷線とが一周期以上存在する方向を前記被加工物に対する測定方向として特定する測定方向特定ステップと、前記駆動制御手段が前記測定プローブを所定の測定開始点から前記測定方向に少なくとも1つの前記被加工物の凹部と少なくとも1つの前記被加工物の凸状微細部とを通過するように移動させる測定ステップとを備えていることを特徴とする。
【0013】
第8に、無数の凹状微細部と該凹状微細部の相互間に形成された無数の凹部とが円周面に周期的に分散して残存したすると共に前記凹状微細部の頂点の近傍を結び最も高さ方向の凹凸が大きい直線状の谷線と該谷線と平行な線であって最も高さ方向の凹凸が小さい直線状の尾根線とが円周上に周期的に配置される被加工物の円周面に沿って前記被加工物の表面形状を測定する測定プローブと、前記被加工物の軸心を中心に前記被加工物または前記測定プローブの少なくとも一方を回転させる回転手段と、前記測定プローブまたは前記被加工物の少なくとも一方を前記被加工物の軸心と平行に直線移動させる測定点移動手段と、前記尾根線と前記谷線との配置周期が一周期以上存在する方向を前記被加工物に対する測定方向として特定する測定方向特定手段と、前記回転手段および前記測定点移動手段を制御する駆動制御手段とを備えて前記被加工物の表面形状を測定する円周面測定装置を用いた円周面測定方法であって、前記測定方向特定手段が前記尾根線と前記谷線とが一周期以上存在する方向を前記被加工物に対する測定方向として特定する測定方向特定ステップと、前記駆動制御手段が前記測定プローブを所定の測定開始点から前記測定方向に少なくとも1つの前記被加工物の凸部と少なくとも1つの前記被加工物の凹状微細部とを通過するように移動させる測定ステップとを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下の効果を奏することができる。
(1)尾根線と谷線との配置周期が一周期以上存在する方向を被加工物に対する測定方向として特定する測定方向特定手段と、回転手段および測定点移動手段を制御して測定プローブを所定の測定開始点から測定方向に少なくとも1つの被加工物の凹部と少なくとも1つの被加工物の凸状微細部とを通過するように移動させる駆動制御手段とを備えていることにより、測定開始点が被加工物の円周面のいずれの箇所であっても、測定プローブが確実に被加工物の凸状微細部を通過するため、測定開始点が被加工物の円周面のいずれの箇所であっても、無数の凸状微細部が周期的に分散形成された被加工物の表面形状を正確に測定することができる。
【0015】
(2)測定開始点から測定方向に延びる検査経路と凸状微細部の頂点との距離を小さい順に並べたときに、第n(n=1、2・・・)番目の凸状微細部の頂点と検査経路との距離が第n+1番目の凸状微細部の頂点と検査経路との距離の次に小さいとして、第n番目の凸状微細部の頂点と検査経路との距離と第n+1番目の凸状微細部の頂点と検査経路との距離との差が、所定の間隔値以下であることにより、測定開始点によらず検査方向が凸状微細部の近傍を通過しやすくなるため、無数の凸状微細部が周期的に分散して残存した被加工物の表面形状をより正確に測定することができる。
【0016】
(3)測定方向特定手段が、測定プローブを被加工物の円周面に沿って走査させた結果に基づいて測定方向を特定することにより、実際に測定する被加工物に即して測定方向が特定されるため、より正確に被加工物の表面形状を測定することができる。
【0017】
(4)被加工物が、低周波振動切削加工により切削された被切削物であることにより、無数の凸状微細部とこの凸状微細部の相互間に形成された無数の凹部とが円周面に周期的に分散して残存すると共に凸状微細部の頂点の近傍を結び最も高さ方向の凹凸が大きい直線状の尾根線とこの尾根線と平行な線であって最も高さ方向の凹凸が小さい直線状の谷線とが円周上に周期的に配置される。
被加工物がこのような被切削物であっても、円周面測定装置が上述した構成により、測定プローブが確実に被切削物の凸状微細部を通過するため、測定開始点が被切削物の円周面のいずれの箇所であっても、低周波振動切削加工により無数の凸状微細部が周期的に分散形成された被切削物の表面形状を正確に測定することができる。
【0018】
(5)測定プローブが、複数設置されていることにより、複数の点を同時に測定可能となるため、単位時間あたりの測定点数が増加し、より測定データを高密度化することができることに加え、複数の測定プローブの先端形状をそれぞれ異なる形状とすることができるため、粗さ測定に用いる先端半径の小さい測定プローブ、うねり・形状測定に用いる先端半径の大きい測定プローブ、特殊測定に用いる当該測定に見合う特殊な先端形状の測定プローブなどを併用することができる。
【0019】
(6)尾根線と谷線との配置周期が一周期以上存在する方向を被加工物に対する測定方向として特定する測定方向特定手段と、回転手段および測定点移動手段を制御して測定プローブを所定の測定開始点から測定方向に少なくとも1つの被加工物の凸部と少なくとも1つの被加工物の凹状微細部とを通過するように移動させる駆動制御手段とを備えていることにより、測定開始点が被加工物の円周面のいずれの箇所であっても、測定プローブが確実に被加工物の凹状微細部を通過するため、測定開始点が被加工物の円周面のいずれの箇所であっても、無数の凹状微細部が周期的に分散形成された被加工物の表面形状を正確に測定することができる。
【0020】
(7)測定方向特定手段が尾根線と谷線との配置周期が一周期以上存在する方向を被加工物に対する測定方向として特定する測定方向特定ステップと、駆動制御手段が測定プローブを所定の測定開始点から測定方向に少なくとも1つの被加工物の凹部と少なくとも1つの被加工物の凸状微細部とを通過するように移動させる測定ステップとを備えていることにより、測定開始点が被加工物の円周面のいずれの箇所であっても、測定プローブが確実に被加工物の凸状微細部を通過するため、測定開始点が被加工物の円周面のいずれの箇所であっても、無数の凸状微細部が周期的に分散形成された被加工物の表面形状を正確に測定することができる。
【0021】
(8)測定方向特定手段が尾根線と谷線との配置周期が一周期以上存在する方向を被加工物に対する測定方向として特定する測定方向特定ステップと、駆動制御手段が測定プローブを所定の測定開始点から測定方向に少なくとも1つの被加工物の凸部と少なくとも1つの被加工物の凹状微細部とを通過するように移動させる測定ステップとを備えていることにより、測定開始点が被加工物の円周面のいずれの箇所であっても、測定プローブが確実に被加工物の凹状微細部を通過するため、測定開始点が被加工物の円周面のいずれの箇所であっても、無数の凹状微細部が周期的に分散形成された被加工物の表面形状を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】本発明の一実施例である切削円周面測定装置による測定対象物である被切削物の斜視図。
【
図2】本発明の一実施例である切削円周面測定装置の斜視模式図。
【
図4A】被切削物の表面形状の3次元データを画像化した結果を示す図。。
【
図4C】第1の特徴方向に対する測定方向範囲を示す図。
【
図4D】第2の特徴方向に対する測定方向範囲を示す図。
【
図4E】第3の特徴方向に対する測定方向範囲を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、無数の凸状微細部とこの凸状微細部の相互間に形成された無数の凹部とが円周面に周期的に分散して残存すると共に凸状微細部の頂点の近傍を結び最も高さ方向の凹凸が大きい直線状の尾根線とこの尾根線と平行な線であって最も高さ方向の凹凸が小さい直線状の谷線とが円周上に周期的に配置される被加工物の表面形状を測定する円周面測定装置であって、被加工物の円周面に沿って被加工物の表面形状を測定する測定プローブと、被加工物の軸心を中心に被加工物または測定プローブの少なくとも一方を回転させる回転手段と、測定プローブまたは被加工物の少なくとも一方を被加工物の軸心と平行に直線移動させる測定点移動手段と、尾根線と谷線との配置周期が一周期以上存在する方向を被加工物に対する測定方向として特定する測定方向特定手段と、回転手段および測定点移動手段を制御して測定プローブを所定の測定開始点から測定方向に少なくとも1つの被加工物の凹部と少なくとも1つの被加工物の凸状微細部とを通過するように移動させる駆動制御手段とを備え、無数の凹状微細部が周期的に分散して残存した被加工物の表面形状を正確に測定するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0024】
また、本発明は、無数の凹状微細部とこの凹状微細部の相互間に形成された無数の凸部とが円周面に周期的に分散して残存すると共に凹状微細部の頂点の近傍を結び最も高さ方向の凹凸が大きい直線状の谷線とこの谷線と平行な線であって最も高さ方向の凹凸が小さい直線状の尾根線とが円周上に周期的に配置される被加工物の表面形状を測定する円周面測定装置であって、被加工物の円周面に沿って被加工物の表面形状を測定する測定プローブと、被加工物の軸心を中心に被加工物または測定プローブの少なくとも一方を回転させる回転手段と、測定プローブまたは被加工物の少なくとも一方を被加工物の軸心と平行に直線移動させる測定点移動手段と、尾根線と谷線との配置周期が一周期以上存在する方向を被加工物に対する測定方向として特定する測定方向特定手段と、回転手段および測定点移動手段を制御して測定プローブを所定の測定開始点から測定方向に少なくとも1つの被加工物の凸部と少なくとも1つの被加工物の凹状微細部とを通過するように移動させる駆動制御手段とを備え、無数の凸状微細部が周期的に分散して残存した被加工物の表面形状を正確に測定するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0025】
例えば、円周面測定装置が測定する被加工物に対する加工は、無数の島状に形成された凸状微細部又は凹状微細部が円周面に周期的に分散して残存すれば、切削工具による切削、タイリング工具によるタイリング加工、きさげ加工、レーザー加工等、如何なる加工であってもよい。
【0026】
例えば、円周面測定装置が測定する被加工物の表面形状は、表面性状、表面粗さ、平面度、真直度、円筒度、真円度等、如何なるものであってもよい。
【0027】
例えば、測定プローブは、被加工物に接触して被加工物の表面形状を測定するものであってもよいし、非接触で被加工物の表面形状を測定するものであってもよい。
【0028】
例えば、測定点移動手段は、測定プローブを被加工物の軸心と平行に直線移動させるものであってもよいし、被加工物を被加工物の軸心と平行に直線移動させるものであってもよいし、測定プローブおよび被加工物を被加工物の軸心と平行に直線移動させるものであってもよい。
【0029】
例えば、回転手段は、被加工物の軸心を中心に被加工物を回転させるものであってもよいし、被加工物の軸心を中心に測定プローブを回転させるものであってもよいし、被加工物の軸心を中心に被加工物および測定プローブを回転させるものであってもよい。
【実施例0030】
以下、
図1乃至
図4Gに基づいて、本発明の一実施例である円周面測定装置および円周面測定装置による円周面測定方法について説明する。
【0031】
<1.被加工物の形状>
まず、
図1A乃至
図1Dに基づき、本発明の一実施例である円周面測定装置による測定対象物である被加工物について説明する。
図1Aは本発明の一実施例である切削円周面測定装置による測定対象物である被切削物の斜視図であり、
図1Bは
図1Aの部分拡大図であり、
図1Cは
図1Bを線図で示した図であり、
図1Dは
図1Bの展開図である。
【0032】
円周面測定装置による測定対象物である被加工物は、丸棒を低周波振動切削加工で加工した被切削物である。
したがって、本発明の一実施例である円周面測定装置は、被加工物である被切削物の円周面を測定する切削円周面測定装置であるともいえる。
【0033】
さて、低周波振動切削加工とは、被切削物または切削工具の少なくともいずれか一方を切削方向に振動させつつ、被切削物を把持する主軸の回転を切削方向の振動と同期させて行う加工である。
このような低周波振動切削加工を被切削物Wに行うと、
図1Bおよび
図1Cに示すような切削経路CLを切削工具が通過するため、被切削物Wの加工済み部分の円周面は、
図1B、
図1C、
図1Dに示すように島状にも見える無数の凸状微細部Tと、切削工具の通過により凸状微細部Tの相互間に形成された凹部Vが周期的に分散して残存する。
なお、
図1Bおよび
図1Dにおいて、色が白い箇所は高さが高く、色が黒い箇所は高さが低くなっている。
【0034】
<2.切削円周面測定装置の概要>
次に、
図2に基づき、円周面測定装置である切削円周面測定装置100の概要について説明する。
図2は、本発明の一実施例である切削円周面測定装置の斜視模式図である。
【0035】
被切削物Wの表面形状を測定する切削円周面測定装置100は、水平が保たれた床面Fに載置されて表面が水平な基台110と、円周面を有する被切削物Wを保持する被切削物保持部材120と、被切削物Wの表面形状を測定する測定プローブ130と、この測定プローブ130を支持する支持アーム140と、測定プローブ130を移動させるプローブ移動機構(測定点移動手段)150と、コントローラー160とを有している。
【0036】
被切削物保持部材120は、基台110に載置される角柱状のベース121と、このベース121の上部に取り付けられるチャック122と、ベース121に内蔵されてチャック122を回転させるモーター(回転手段)123とを有している。
チャック122は、水平方向に伸びて被切削物Wを回転自在に把持する。
したがって、被切削物Wの軸心Zは水平方向に向かって伸び、被切削物Wは軸心Zを中心に回転する。
【0037】
測定プローブ130は、被切削物Wの円周面と対向する接触式のプローブである。
【0038】
支持アーム140は、基台110から鉛直方向に伸びる直立部141と、この直立部141から水平方向に伸びる水平部142とから構成されている。
【0039】
プローブ移動機構150は、支持アーム140の水平部142に取り付けられており、水平方向に移動自在となっている。
また、プローブ移動機構150には、測定プローブ130の先端が鉛直下方を向くように取り付けられている。
したがって、測定プローブ130は、被切削物Wの円周面に沿って被切削物Wの軸心Zと平行に直線移動することができる。
【0040】
コントローラー160は、モーター123とプローブ移動機構150とを制御する駆動制御部(駆動制御手段)161と、CPU等の演算部162と、測定プローブ130による被切削物Wの表面形状の測定結果や演算部162による演算結果を記憶する記憶部163とを有している。
演算部162は、被切削物Wに対する測定方向として特定する測定方向特定手段162aを有している。
【0041】
切削円周面測定装置100が以上のように構成されていることにより、切削円周面測定装置100は、被切削物Wの表面の表面形状を長手方向および周方向だけでなく、螺旋方向に計測が可能になっている。
【0042】
<3.切削円周面測定方法>
次に、
図3乃至
図4Gに基づき、切削円周面測定装置100による切削円周面測定方法について説明する。
【0043】
<3.1.測定方向の特定>
まず、
図3乃至
図4Gに基づき、切削円周面測定装置100が事前に行う測定方向の特定について説明する。
図3は測定方向の特定手順を示すフローチャートであり、
図4Aは被切削物の表面形状の3次元データを画像化した結果を示す図であり、
図4Bは
図4Aに対して凸状微細部および特徴方向を示す図であり、
図4Cは第1の特徴方向に対する測定方向範囲を示す図であり、
図4Dは第2の特徴方向に対する測定方向範囲を示す図であり、
図4Eは第3の特徴方向に対する測定方向範囲を示す図であり、
図4Fは測定方向範囲を示す図であり、
図4Gは測定方向の候補を特定する方法を示す図である。
【0044】
(ステップS10)
切削円周面測定装置100は、まず、測定対象となる被切削物の表面形状の3次元データを読み込む。
この3次元データは、測定対象となる被切削物に対する加工条件と同条件による加工シミュレーションに基づくシミュレーションデータであり、少なくとも送り方向(被切削物の長手方向)位置、位相(回転角)、高さの3つを含む。
図4Aは、測定対象となる被切削物の表面形状の3次元データを画像化したものであり、位相を横軸、送り方向位置を縦軸に取り、高さを色の違いで表現した図であり、色が白い点ほど高さが高く、色が黒い点ほど高さが低くなっている。
【0045】
(ステップS11)
そして、切削円周面測定装置100の演算手段162は、ステップS10で読み込んだ3次元データから、島状の凸状微細部Tを抽出する。
具体的には、ステップS10で読み込んだ3次元データに対して自己相関関数やウェーブレット解析を適用したり、ステップS10で読み込んだ3次元データを画像データ化した
図4Aに示すような画像データに対して、2値化や数値微分やデジタルフィルタを適用したり、パターン認識等の画像処理技術・画像認識技術を適用したりして、
図4Bに示すような無数の島状にも見える凸状微細部Tを抽出する。
凸状微細部Tは、
図4Bに示すように、頂点の一帯を含むエリアとなっている。
【0046】
(ステップS12)
そして、切削円周面測定装置100の測定方向特定手段162aは、ステップS11で処理した画像データから、
図4Bに示すように、1つの凸状微細部T1を選択する。
次に、画像認識により、凸状微細部T1から凸状微細部Tが相互に連なる配列方向を特徴方向として特定する。
この特徴方向は、
図4Aのように画像化される3次元データであれば、
図4Bに示すように、斜めに伸びる方向(d1、d4)、周(位相)方向と概ね平行に伸びる方向(d2)、送り方向と概ね平行に伸びる方向(d3)となる。
【0047】
(ステップS13)
そして、切削円周面測定装置100の測定方向特定手段162aは、ステップS12で特定した特徴方向に基づき、測定を行う際の測定方向が含まれる測定方向範囲Aを特定する。
この測定方向範囲は、特徴方向に対して特定されるため、以下、特徴方向ごとにそれぞれ説明する。
【0048】
まず、
図4Cに基づき、特徴方向d1に対する測定方向範囲の特定について説明する。
切削円周面測定装置100の測定方向特定手段162aは、特徴方向d1とほぼ平行な線、すなわち、凸状微細部Tの頂点の近傍を結び最も高さ方向の凹凸が大きい直線状の尾根線PLと尾根線PLと平行な線であって最も高さ方向の凹凸が小さい直線状の谷線VLとを抽出する。
図4Cのように尾根線PLと谷線VLとを抽出すると、被切削物が低周波振動切削加工により加工されていることから、無数の凸状微細部Tおよびこの凸状微細部Tの相互間に形成された凹部Vが被切削物の円周面に周期的に分散して残存するため、尾根線PLおよび谷線VLは周期性をもって被切削物の円周面上に配置される。
切削円周面測定装置100の測定方向特定手段162aは、
図4Cの中央領域に示す凸状微細部T1から距離Dだけ送り方向に離れた位置を通って位相方向に延びる直線Xと特徴方向d1から1周期分離れた尾根線PLとの交点pを画像処理により求める。
次に、切削円周面測定装置100の測定方向特定手段162aは、凸状微細部T1と交点pとを結ぶ線から外方(すなわち、凸状微細部T1から距離Dだけ送り方向に離れた位置において、特徴方向d1から尾根線PLと谷線VLとが1周期以上配置されている範囲)を画像処理により測定方向範囲A1として特定する。
換言すると、「凸状微細部T1と交点pとを結ぶ線から外方」とは、凸状微細部T1から距離Dだけ送り方向に離れた位置において、特徴方向d1から尾根線PLと谷線VLとが1周期未満配置されている範囲を除く範囲である。
【0049】
次に、特徴方向d2に対する測定方向範囲A2の特定、特徴方向d3に対する測定方向範囲A3の特定、特徴方向d4に対する測定方向範囲A4の特定も特徴方向d1に対する測定方向範囲A1の特定と同様に行う。
なお、特徴方向d2に対する測定方向範囲A2の特定については
図4D、特徴方向d3に対する測定方向範囲A3の特定については
図4Eに示すとおりであり、特徴方向d4に対する測定方向範囲A4の特定については、特徴方向d1に対する測定方向範囲の特定と同様であるため、図示を省略する。
【0050】
このようにして特定された特徴方向d1~d4に対する測定方向範囲A1~A4において、隣接する特徴方向に対する測定方向範囲が重なる範囲(例えば、測定方向範囲A1とA3とが重なる範囲)が、
図4Fに示すような、ステップS10で読み込んだ3次元データの凸状微細部T1に対する測定方向範囲Aとなる。
この測定方向範囲Aは、
図4Fに示すように、特徴方向d1~d4を挟んで形成されている。
【0051】
(ステップS14)
そして、切削円周面測定装置100の測定方向特定手段162aは、それぞれの測定方向範囲Aの中から一つの測定方向の候補を特定する。
具体的には、
図4Gに示すように、まず、凸状微細部T1を通り測定方向範囲Aの内側の方向線Mを設定する。
【0052】
次に、凸状微細部T1の頂点を通る方向線Mと直交する投影線Nを設定し、この投影線N上に凸状微細部Tの頂点を投影させる。
このとき、投影線N上に投影させた凸状微細部Tの頂点を投影点iとする。
【0053】
次に、凸状微細部T1に対してn(n=1,2,3・・・)番目に近い投影点をtnとし、投影点tnと投影点tn+1との距離をδnとすると、切削円周面測定装置100の測定方向特定手段162aは、すべてのnにおいて、
【数1】
となるような方向線Mの伸びる方向を各測定方向範囲Aに測定方向として特定する。
【0054】
そして、切削円周面測定装置100は、各測定方向範囲Aにおいて特定された測定方向から、測定距離等から1つの測定方向を特定する。
【0055】
なお、δnを求めるために必要な投影点tnと凸状微細部T1との距離Lnは次のようにして求めることができる。
すなわち、
図4Gに示すように、横軸(位相)をX、縦軸(送り方向)をYとする直交座標系を設定したとき、凸状微細部T1の座標を(x1、y1)、投影点tnに対応する凸状微細部Tnの座標を(xn、yn)とし、方向線MのX軸に対する傾斜角をθとし、投影線Nを
【数2】
とすると、
【数3】
であることから、
【数4】
となる。
【0056】
<3.2.表面形状の測定>
次に、被切削物の表面形状の測定について説明する。
切削円周面測定装置100は、測定対象となる被切削物Wから利用者が選択した測定開始点からステップS14で特定した測定方向に少なくとも1つの被切削物Wの凹部Vと少なくとも1つの被切削物Wの凸状微細部Tとを通過するように移動させて、被切削物Wの表面形状の測定を行う。
この測定開始点から測定方向に向けた測定プローブ130による走査の回数は、1回に限らず、複数回行っても良い。
また、測定開始点を僅かにずらして測定方向に測定プローブ130を走査させることを繰り返した結果を測定結果としても良い。
【0057】
なお、このときの検査経路は、すべてのnにおいて式(1)が満たされており、換言すると、「凸状微細部T1から測定方向に延びる検査経路と凸状微細部T1の頂点との距離を小さい順に並べたときに、第n(n=1、2・・・)番目の凸状微細部Tnの頂点と検査経路との距離が第n+1番目の凸状微細部Tn+1の頂点と検査経路との距離の次に小さいとして、第n番目の凸状微細部Tnの頂点と検査経路との距離と第n+1番目の凸状微細部Tn+1の頂点と検査経路との距離との差δnが、所定の間隔値であるδc以下」となっている。
【0058】
<4.本実施例の切削円周面測定装置が奏する効果>
以上説明したように、本発明の一実施例である切削円周面測定装置100によれば、尾根線PLと谷線VLとの配置周期が一周期以上存在する方向を被切削物Wに対する測定方向として特定する測定方向特定手段162aと、回転手段であるモーター123および測定点移動手段であるプローブ移動機構150を制御して測定プローブ130を所定の測定開始点から測定方向に少なくとも1つの被切削物Wの凹部Vと少なくとも1つの被切削物の凸状微細部Tとを通過するように移動させる駆動制御手段である駆動制御部161とを備えていることにより、測定開始点が被切削物Wの円周面のいずれの箇所であっても、測定プローブ130が確実に被切削物Wの凸状微細部Tを通過するため、測定開始点が被切削物Wの円周面のいずれの箇所であっても、無数の凸状微細部Tが周期的に分散形成された被切削物Wの表面形状を正確に測定することができる。
【0059】
また、測定開始点から測定方向に延びる検査経路と凸状微細部Tの頂点との距離を小さい順に並べたときに、第n(n=1、2・・・)番目の凸状微細部Tnの頂点と検査経路との距離が第n+1番目の凸状微細部Tn+1の頂点と検査経路との距離の次に小さいとして、第n番目の凸状微細部Tnの頂点と検査経路との距離と第n+1番目の凸状微細部Tn+1の頂点と検査経路との距離との差δnが、所定の間隔値δ以下であることにより、測定開始点によらず検査経路が凸状微細部T近傍を通過しやすくなるため、低周波振動切削加工により無数の凸状微細部Tが周期的に分散して残存した被切削物Wの表面形状をより正確に測定することができる。
【0060】
<5.変形例>
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記の実施例に限定されるものではない。
【0061】
例えば、本実施例において、切削円周面測定装置は、測定プローブを1本のみ有していたが、切削円周面測定装置が有する測定プローブの本数は1本に限定されるものではなく、切削円周面測定装置は、測定プローブを複数有していてもよい。
なお、切削円周面測定装置が測定プローブを複数有することにより、複数の点を同時に測定可能となるため、単位時間あたりの測定点数が増加し、より測定データを高密度化することができる。
加えて、測定プローブのそれぞれが独立に移動自在である場合、複数の測定方向を同時に測定することができる。
また、複数の測定プローブは被加工物に接触して被加工物の表面形状を測定するものと非接触で被加工物の表面形状を測定するものの一方のみで構成されてもよいし、両方を用いて構成されてもよい。
さらに、複数の測定プローブの先端形状や材質をそれぞれ異なる形状とすることができるため、粗さ測定に用いる先端半径の小さい測定プローブ、うねり・形状測定に用いる先端半径の大きい測定プローブ、円盤形、ナイフエッジ形、楔形、円柱形、先端の曲がった鉤形など特殊測定に用いる当該測定に見合う特殊な先端形状の測定プローブなどを併用することができる。
【0062】
例えば、本実施例において、被切削物Wは中実の丸棒を低周波振動切削加工したものであったが、被切削物Wはこれに限定されるものではなく、例えば、中空の丸棒を低周波振動切削加工したものであってもよい。
【0063】
例えば、本実施例において、測定方向の候補を特定する際に、加工シミュレーションに基づくシミュレーションデータを用いていたが、測定プローブを測定対象である被切削物の円周面に沿って走査させた結果に基づいて測定方向の候補を特定してもよい。
この場合、実際に測定する被切削物に即して測定方向が特定されるため、より正確に被切削物の表面形状を測定することができる。
また、切削条件と測定方向とを対応づけるテーブルを予め用意しておいて、当該テーブルを参照して切削条件から測定方向を特定してもよい。
【0064】
例えば、本実施例の円周面測定方法においては、ステップS10からステップS14を全て実施して測定方向を特定していたが、ステップS10からステップS13までを実施して測定方向範囲を定めた後、この測定方向範囲に属する方向を測定方向として特定してもよい。
【0065】
例えば、本実施例において、各特徴方向に対する測定方向範囲を特定する際、点pは
図4Cの中央領域に示す凸状微細部T1から距離Dだけ送り方向に離れた位置を通って位相方向に延びる直線Xと特徴方向d1から1周期分離れた尾根線PLとの交点であったが、点pの位置は特徴方向d1から1周期以上離れた尾根線PLと直線Xとの交点であってもよい。
【0066】
例えば、本実施例において、切削円周面測定装置は、無数の凸状微細部とこの凸状微細部の相互間に形成された無数の凹部とが円周面に周期的に分散して残存すると共に凸状微細部の頂点の近傍を結び最も高さ方向の凹凸が大きい直線状の尾根線とこの尾根線と平行な線であって最も高さ方向の凹凸が小さい直線状の谷線とが円周上に周期的に配置される被切削物を測定対象物としていたが、測定対象物はこれに限定されるものではない。
例えば、無数の凹状微細部とこの凹状微細部の相互間に形成された無数の凸部とが円周面に周期的に分散して残存したすると共に凹状微細部の頂点の近傍を結び最も高さ方向の凹凸が大きい直線状の尾根線とこの尾根線と平行な線であって最も高さ方向の凹凸が小さい直線状の谷線とが円周上に周期的に配置される被切削物を切削円周面測定装置の測定対象物となる被加工物としてもよい。
この場合、測定開始点が被加工物の円周面のいずれの箇所であっても、測定プローブが確実に被加工物の凹状微細部を通過するため、測定開始点が被加工物の円周面のいずれの箇所であっても、無数の凹状微細部が周期的に分散形成された被加工物の表面形状を正確に測定することができる。