(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064774
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】印判、印材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B41K 1/02 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
B41K1/02 C
B41K1/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173605
(22)【出願日】2020-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】518351045
【氏名又は名称】一般社団法人未来ものづくり振興会
(74)【代理人】
【識別番号】100150430
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 元
(74)【代理人】
【識別番号】100217191
【弁理士】
【氏名又は名称】林 信吾
(72)【発明者】
【氏名】石川 草太
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 大地
(57)【要約】 (修正有)
【課題】印影の美しさを向上させて「しるし」としての新たな価値を提供する。
【解決手段】印影の外周形状が式(1)で表される曲線となるように印面を形成する。
ただし、a>0、b>0、2.2≦n≦3である。
式(1)で表される曲線は、所謂「スーパー楕円」や「スーパー円」と呼ばれるものである。このような曲線形状を印影の外周形状(印面形状)とすることで、デザイン性に優れ、見た目の美しさが際立つ印影を得ることが可能となる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印影の外周形状が下記式(1)で表される曲線となるように形成された印面を備えることを特徴とする印判。
【数1】
ただし、a>0、b>0、2.2≦n≦3である。
【請求項2】
前記式(1)中のnの値が2.5であることを特徴とする請求項1に記載の印判。
【請求項3】
前記式(1)中のaとbの比が(1~1.1):1又は1:(1~1.1)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の印判。
【請求項4】
前記比が1:1であることを特徴とする請求項3に記載の印判。
【請求項5】
押印する際の持ち手となる把手部を備え、
前記把手部の水平断面外周形状が前記式(1)で表される曲線を有することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の印判。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の印判を製造する方法であって、
前記式(1)中のa、b、nの各値を設定して印影の外周形状を決定する工程を含む、印判の製造方法。
【請求項7】
印影の外周形状が下記式(1)で表される曲線となるように印面が形成されたことを特徴とする印材。
【数2】
ただし、a>0、b>0、2.2≦n≦3である。
【請求項8】
前記式(1)中のnの値が2.5であることを特徴とする請求項7に記載の印材。
【請求項9】
前記式(1)中のaとbの比が(1~1.1):1又は1:(1~1.1)であることを特徴とする請求項7又は8に記載の印材。
【請求項10】
前記比が1:1であることを特徴とする請求項9に記載の印材。
【請求項11】
請求項7から10の何れか一項に記載の印材を製造する方法であって、
前記式(1)中のa、b、nの各値を設定して印影の外周形状を決定する工程を含む、印材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印判、印材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、個人や団体等のしるしとして文書等に押される印判は、その印影(印面)の輪郭の形状(外周形状)が円形(正円)や楕円形、正方形、長方形等とされるのが一般的である(例えば特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3138247号公報
【特許文献2】特開2000-43391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような印影の外周形状(印影形状、印面形状)は古くから用いられている形状であり、デザイン性に乏しい。このため、既存の印判(印影)は代わり映えのしないものであり、新しさを感じにくいという問題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、印影の美しさを向上させて「しるし」としての新たな価値を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するためになされた本発明の印判は、
印影の外周形状が下記式(1)で表される曲線となるように形成された印面を備えることを要旨とする。
【数1】
ただし、a>0、b>0、2.2≦n≦3である。
【0007】
なお、「印判」とは、象牙、水牛、柘、金属、プラスチック等の印材の端面を印面とした硬質印、無数の連続気孔を有する多孔質体からなる印字体(多孔質印材)を備えた浸透印、ゴムや樹脂等の非多孔質体からなる印字体(非多孔質印材)を備えたゴム印や樹脂印等、種々のタイプの印判を指す。また、電子文書に印影イメージを付加することによって電子的に押印を行うことが可能な電子印鑑も、本発明の印判(電子的な印判)として捉えることができる。この場合、電子印鑑による印影イメージ(電子的な印影)の外周形状が、上記式(1)で表される曲線となるように形成される。
【0008】
また、前述の課題を解決するためになされた本発明の印材は、
印影の外周形状が下記式(1)で表される曲線となるように形成されたことを要旨とする。
【数2】
ただし、a>0、b>0、2.2≦n≦3である。
【0009】
なお、「印材」とは、象牙、水牛、柘、金属、プラスチック等の硬質印材、無数の連続気孔を有する多孔質体からなる多孔質印材、ゴムや樹脂等の非多孔質体からなる非多孔質印材等、印面を形成することが可能な種々の印材を指す。また、電子文書に印影イメージを付加することによって電子的に押印を行うことが可能な電子印鑑で用いられる印影イメージデータも、本発明の印材(電子的な印材)として捉えることができる。この場合、印影イメージ(電子的な印影)の外周形状が、上記式(1)で表される曲線となるように形成される。
【0010】
本発明に係る印判及び印材の上記式(1)で表される曲線は、所謂「スーパー楕円」や「スーパー円」と呼ばれるものである。上記式(1)中のaとbの関係が「a>b」である場合は「スーパー楕円」となり、「a=b」である場合は「スーパー円」となる。なお、円は楕円の特別な場合(楕円の一種)であると考えられることから、本明細書でいう「スーパー楕円」には「スーパー円」が含まれるものとする。また、式(1)のことを「スーパー楕円の式」ともいう。
【0011】
本発明において、上記式(1)中のnは「2.2以上3以下」とするのが適当である。2.2未満では従来の正円の印影に近似したものとなり、3を超えると従来の四角形の印影に近似したものとなり、何れの場合も従来との差別化が図れず、印影の美しさを際立たせることが困難だからである。このようなスーパー楕円の形状(「スーパー楕円形状」ともいう。)を印影の外周形状とすることで、デザイン性に優れ、見た目の美しさが際立つ印影を得ることが可能となる。特に、nを「2.5」とした場合、印影の美しさは顕著である。
【0012】
本発明において、上記式(1)中のaとbの比(a:b)は「(1~1.1):1」又は「1:(1~1.1)」とするのが適当である。a:bのa(前項)とb(後項)の何れか一方が1で他方が1.1を超えると、印影の外周形状が小判形状に近似したものとなって縦横のバランスの違いが目立つようになり、印影の見た目の美しさを向上させるのに不適当だからである。特に、aとbの比を「1:1」とした場合、すなわち、印影の外周形状をスーパー円形状とした場合、印影の美しさは顕著である。
【0013】
また、本発明の印判において、
押印する際の持ち手となる把手部を備え、
前記把手部の水平断面外周形状が上記式(1)で表される曲線を有することとしてもよい。
【0014】
このようにすれば、印影の外周形状に合わせて、把手部の外周形状(外観)をスーパー楕円形状とすることができる。これにより、印判全体のデザイン性を高め、印判(把手部)を持ったときの感触や押印操作性を向上させることが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る印判及び印材の製造方法は、
上記式(1)中のa、b、nの各値を設定して印影の外周形状を決定する工程を含むことを要旨とする。これによれば、上記式(1)中のa、b、nの各値を、印面サイズに応じて適宜設定することで、印影の外周形状を容易に決定することができ、延いては、美しい見た目の印影を残すことができる印判や印材を効率的に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上の本発明によれば、印影の美しさを向上させて「しるし」としての新たな価値を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る印判を示す図であり、(A)は印判の平面図であり、(B)は印判の正面図であり、(C)は印判の底面図であり、(D)は(B)のA-A断面図である。
【
図3】実施形態に係る印判の印影と押印欄の形状との関係を示す図である。
【
図4】(A)はスーパー楕円の説明図であり、(B)はスーパー円の説明図である。
【
図7】他の実施形態に係る印判(浸透印)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る印判1は、プラスチック製の硬質印材からなるもので、胴体2と、その一端面(底面)に形成された印面3とに大別される。胴体2は、押印する際の持ち手となる把手部を兼ねる。印面3には、印影を構成する文字等が彫られる。
【0020】
本実施形態に係る印判1は個人印であり、印面3には、印影の周縁線(枠線)を構成する周縁部4の内側に氏名(苗字)が逆文字で凸状に彫られる(
図1(C)を参照)。なお、
図1において、印判1の背面図、左側面図及び右側面図は、
図1(B)に示す正面図と同一にあらわれるため、図示を省略している。
【0021】
胴体2(把手部)は、上端から下端まで垂直に(まっすぐ)延びる柱状とされており、印判1を平面視したときの胴体2の外周形状は、
図1(A)に示すようにスーパー楕円形状となっている。つまり、胴体2の水平断面外周形状は、
図1(D)に示すようにスーパー楕円形状となっている。これに伴って、印判1を底面視したときの印面3の外周形状も、
図1(C)に示すようにスーパー楕円形状となっている。
【0022】
図1(A)、(C)、(D)に示す印判1の胴体2及び印面3の外周形状を形成する曲線は、以下の式(1)で表される。
【数1】
【0023】
上記式(1)において、胴体2の水平断面(
図1(D)を参照)の中心を原点とした場合と、印面3(
図1(C)を参照)の中心を原点とした場合とのぞれぞれについて、左右方向をx軸、上下方向をy軸にとるものとする。式(1)中のaは、原点からのx軸方向の距離であり、式(1)中のbは、原点からのy軸方向の距離であるから、式(1)で表されるスーパー楕円のx軸方向の長さ(直径)は2aとなり、y軸方向の長さ(直径)は2bとなる。このため、x軸方向の長さ(2a)は、胴体2の水平断面横寸法や印面3(印影)の横寸法として捉えることができ、y軸方向の長さ(2b)は、胴体2の水平断面縦寸法や印面3(印影)の縦寸法として捉えることができる。つまり、aは、胴体2の水平断面横寸法の半径に対応するパラメータであり、印面3(印影)の横寸法の半径に対応するパラメータでもある。また、bは、胴体2の水平断面縦寸法の半径に対応するパラメータであり、印面3(印影)の縦寸法の半径に対応するパラメータでもある。なお、a、bの単位はmmである。
【0024】
例えば、印面3の横寸法(直径)および縦寸法(直径)がともに12mmである場合(印面サイズが12mm×12mmである場合)、上記式(1)において、a=6mm、b=6mmとなる。
【0025】
図1(A)、(C)、(D)に示す胴体2及び印面3の外周形状は、上記式(1)において、a=b、n=2.5の場合の形状を示しており、厳密にいうとスーパー円形状である。
【0026】
胴体2の外周形状(水平断面外周形状)をスーパー楕円形状とすることで、机上等で印判1が転がらないようにすることができる。また、従来の円形(正円)や楕円形等の胴体にはない手触り感(感触)を使用者(押印者)に与えることができ、押印する際の印面の向きの確認や押印箇所の位置決めもしやすいため、押印操作性に優れた印判とすることができる。
【0027】
本実施形態に係る印判1を文書等に押印した際に得られる印影を
図2に示す。同図に示すように、スーパー楕円形状の印面3により得られる印影5は、その外周形状が印面3と同様のスーパー楕円形状(本例ではスーパー円形状)となる。すなわち、印影5の外周形状(輪郭)を形成する周縁線6が、上記式(1)で表される曲線となる。その周縁線6の内側に、文字7(本例では「石川」をあらわす文字)が配置される。
【0028】
このようなスーパー楕円形状の外周形状(周縁線6)を有する印影5(「スーパー楕円印影」ともいう。)は、
図9(A)~(C)に示す従来の円形(正円)や楕円形、四角形の印影とは一線を画した美しいかたちの印影となる。また、
図3(A)、(B)に示すように、例えば、文書等に設けられる押印欄の形状が四角であったり円(丸)であったりしても、違和感なくきれいに押印することができる。
【0029】
[スーパー楕円について]
上記式(1)はスーパー楕円の式であり、スーパー楕円は、上記式(1)で表される曲線である。その式(1)で表される曲線の例を
図4に示す。
【0030】
図4(A)は、上記式(1)中、a=3、b=2、n=2~5の場合を示しており、
図4(B)は、上記式(1)中、a=3、b=3、n=2~5の場合を示している。なお、x軸の径(直径)は2a 、y軸の径(直径)は2bとなる。
【0031】
図4(A)に示すように、a、bが正の実数(a>0、b>0)であって、a>bの場合、n(スーパー楕円指数)が大きくなるほど長方形に近くなる。n=2のときが通常の楕円であるので、スーパー楕円はn>2である。このことは、a<bの場合についても同様である。
【0032】
図4(B)に示すように、a、bが正の実数(a>0、b>0)であって、a=bの場合、n(スーパー楕円指数)が大きくなるほど正方形に近くなる。n=2のときが通常の円(正円)であるので、スーパー円はn>2である。
【0033】
[印影の例]
次に、印判1の印影5(印面3)の外周形状が、上記式(1)中のa、b、nの各値に応じてどのように変化するのかについて説明する。なお、a、bは、印面(印影)サイズ(横寸法、縦寸法)に応じて適宜設定される。
【0034】
図5は、上記式(1)において、a=b(a>0、b>0)、かつ、n=2~5のときの印影を示している。
【0035】
図5(A)は、n=2のときの印影であり、その形状は通常の円である。この場合の印影は、従来の円形(正円)のものと同じである。
【0036】
これに対して、
図5(B)~(F)は、n=2.2、n=2.35、n=2.5、n=3、n=5のときの印影である。そのうち、n=2.2~3の場合の印影は、正円とは違った全体的に緩やかな丸みを帯びたものとなり、見た目の心地よさや美しさを備えた印影となる(
図5(B)~(E)を参照)。一方、n=5の場合の印影は、正方形の角を円弧状にした形状に近似したものとなり、従来の正方形の印影と然程変わらないものとなる(
図5(F)を参照)。
【0037】
したがって、上記式(1)で表される曲線により印影の外周形状を形成する場合のnの値は2.2以上3以下(2.2≦n≦3)とするのが適当であり、この条件でnの値を設定することで、従来にない美しさを備えた印影(スーパー楕円印影)を得ることができる。特に、nが2.5の場合、正円と正方形の何れにも近似せず曲線美が一段と際立つものとなり、印影のデザイン性や美しさの面でより優れたものとなる。
【0038】
図6は、上記式(1)において、a>0、b>0、n=2.5であり、aとbの比が1:1~1.2:1のときの印影を示している。
【0039】
図6(A)は、aとbの比が1:1のとき(a=bのとき)の印影であり、その形状は、
図2や
図5(D)に示すものと同様のスーパー円形状である。この場合、印影の縦横比が等しいので、印影全体のバランスがよいものとなる。
【0040】
また、
図6(B)~(F)は、aとbの比が1.02:1、1.05:1、1.1:1、1.15:1、1.2:1のとき(a≠bのとき)の印影である。そのうち、aとbの比が(1.02~1.1):1の場合の印影は、1:1の場合の印影に比べ、横寸法(x軸方向の長さ)が大きくなるものの、縦横のバランスの違いは然程目立たず、比較的バランスのよいものとなる(
図6(B)~(D)を参照)。一方、aとbの比が1.15:1及び1.2:1の場合(aがbの1.1倍を超える場合)の印影は、横長の印象が強くなり、縦横のバランスの違いが目立つものとなる(
図6(E)、(F)を参照)。このことは、aとbの比が1:(1.02~1.2)の場合についても同様であり、bがaの1.1倍を超えると、縦長の印象が強くなる。
【0041】
したがって、上記式(1)で表される曲線により印影の外周形状を形成する場合のaとbの比は、(1~1.1):1又は1:(1~1.1)とするのが適当であり、この条件でa、bの値を設定することで、印影の縦横のバランス(縦横比)をよくして見た目の美しさを向上させることができる。
【0042】
以上の本実施形態に係る印判1の印影(スーパー楕円印影)は、デザイン性に優れ、従来にない美しさを備えるものであり、「しるし」としての新たな価値の創造に資するものである。
【0043】
[製造方法について]
印判を製造するにあたり、専用の彫刻機を用いて印面を形成する場合、印判の製造工程には、印面(印影)を構成する文字や印面(印影)のレイアウト等を定める版下を作成する工程と、その作成した版下に基づいて印面を形成する工程とが含まれるのが一般的である。そのうち、版下を作成する工程では、版下作成用のソフトウェア(「版下作成ソフト」ともいう。)を用いることができ、コンピュータ処理により版下(版下データ)を作成することができる(例えば、特開2000-43391号公報、特開2002-215724号公報等を参照)。
【0044】
そのような版下作成ソフトに、上記式(1)に基づく曲線(スーパー楕円)を算出するプログラムを組み込むことで、スーパー楕円印影(スーパー楕円形状の印面)の版下をコンピュータ処理により作成することが可能となり、その版下に基づいて、スーパー楕円印影が得られる印判を製造することが可能となる。
【0045】
上記式(1)に基づく曲線を算出するプログラムを組み込んだ版下作成ソフトは、当該ソフトに基づく処理の中で、上記式(1)中のa、b、nの各値を版下作成者による操作のもとで任意に設定(入力)し、その設定内容に基づいて曲線(スーパー楕円)を算出して、その算出した曲線を印影(印面)の外周形状(周縁部4、周縁線6)として決定するように構成することができる。
【0046】
この場合において、上記式(1)中のa、b、nの各値を設定する際、a>0、b>0、2.2≦n≦3、かつ、a:b=(1~1.1):1又は1:(1~1.1)の各条件を満たすように設定することで、
図5(B)~(E)や
図6(A)~(D)に示すようなスーパー楕円印影が得られるようになる。
【0047】
このように、上記式(1)中のa、b、nの各値を、印面サイズに応じて適宜設定することで、スーパー楕円による印影の外周形状を容易に決定することができ、延いては、美しい見た目の印影を残すことができる印判を効率的に製造することが可能となる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0049】
例えば、上記実施形態では、硬質印タイプの印判1としていたが、印判のタイプはこれに限定されるものではなく、
図7に示すような浸透印タイプの印判10であってもよい(他の実施形態1)。この場合、連続気孔を有するスポンジゴム等(多孔質体)からなる印字体12(多孔質印材)の印面13の外周形状を、上記実施形態に係る印判1の印面3と同様にスーパー楕円形状とすればよい。また、把手部として機能するホルダー11の水平断面外周形状を、上記実施形態に係る印判1の胴体2と同様にスーパー楕円形状とすればよい。さらに、こうした浸透印の他、ゴムや樹脂等の非多孔質体からなる印字体(非多孔質印材)を備えたゴム印や樹脂印等にも、本発明は適用可能である。なお、印判1の胴体2や印判10のホルダー11等、押印する際の持ち手となる把手部の水平断面外周形状は、必ずしもスーパー楕円形状である必要はなく、通常の円(正円)や楕円、四角等の形状であってもよい。把手部の水平断面外周形状がスーパー楕円形状でなくても、スーパー楕円印影が得られる印面を備えた印判とすることは可能だからである。
【0050】
また上記実施形態では、本発明の実施の形態として印判を例示したが、前述の浸透印やゴム印等の印判に備えられる印字体(印材)を実施形態とすることもできる(他の実施形態2)。印字体(印材)が取引対象として流通し得るからである。この場合、印字体に形成される印面の外周形状を、上記式(1)で表される曲線(スーパー楕円形状)とし、式(1)中のa、b、nの各値を、上記実施形態と同様に、a>0、b>0、2.2≦n≦3、かつ、a:b=(1~1.1):1又は1:(1~1.1)の各条件を満たすように設定する。これにより、美しいかたちの印影(スーパー楕円印影)が得られる印字体とすることができる。なお、印字体の外周形状をスーパー楕円形状としてもよい。
【0051】
また、前述した印判の製造工程に含まれる版下作成工程を印字体の製造工程に含めて、上記式(1)に基づく曲線を算出するプログラムを組み込んだ版下作成ソフトを用いて、他の実施形態1及び2に係る印字体の印面の版下を作成することができる。この版下に基づいて、スーパー楕円印影が得られる印字体を製造することが可能となる。
【0052】
また、所謂「消しゴムはんこ」等のように、印面を手彫りしてオリジナルの印判を作成するための素材として用いられる印材にも、本発明は適用可能である。この場合、印材の手彫りされる面(印面)の外周形状をスーパー楕円形状としてもよいし、印材全体の外周形状をスーパー楕円形状としてもよい。
【0053】
また、上記実施形態に係る印判1は個人印であったが、法人印や役職印、士業印、落款印等、様々な種類や用途の印判及び印材に本発明は適用可能である。
【0054】
また上記実施形態では、スーパー楕円形状の枠線(周縁線6)の内側に氏名(文字7)が縦書きで配置された印影としていたが(
図2等を参照)、氏名(文字)は横書きでもよく、氏名以外の文字や図形等を印影(印面)にしてもよい。また、
図8に示すように白抜き文字の印影5aとしてもよい。すなわち、印影の外周形状がスーパー楕円形状であれば、印影(印面)を構成する文字やレイアウト等の印影内容(印面内容)は特に問わない。
【0055】
また、上記実施形態で説明したスーパー楕円印影は、電子印鑑(電子的な印判)の印影イメージ(イメージデータ)として提供されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 印判、2 胴体、3 印面、4 周縁部、5 印影、6 周縁線、7 文字、10 印判(浸透印)、11 ホルダー、12 印字体、13 印面。