(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006481
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】塗布装置
(51)【国際特許分類】
E01C 23/16 20060101AFI20220105BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20220105BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
E01C23/16
B05C5/00 Z
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020108709
(22)【出願日】2020-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】511071278
【氏名又は名称】テック鬼城株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107917
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 英俊
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 實
【テーマコード(参考)】
2D053
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2D053AA28
2D053AA29
2D053EA12
2D053EA14
4F041AB01
4F041BA07
4F041BA12
4F041BA32
4F041BA34
4F041CA02
4F041CA16
4F042AA16
4F042AB00
4F042BA03
4F042BA12
4F042CA01
(57)【要約】
【課題】塗布幅を変更することができる塗布装置を提供する。
【解決手段】塗布面に沿う第1方向に移動しつつ、塗料を流出させる塗料開口から塗布面に向かって塗料を流出させ塗布面に塗料を付着させることで、第1方向に沿って塗布面に塗料を塗布する塗布装置であって、塗布面に対して平行な仮想上の平面である仮想平面への塗料開口の垂直投影像である塗料開口投影像の第1方向に対して垂直な方向である幅方向への最大寸法が、少なくとも異なる2以上の値をとり得るものである、塗布装置である。
【選択図】
図25
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布面に沿う第1方向に移動しつつ、塗料を流出させる塗料開口から塗布面に向かって塗料を流出させ塗布面に塗料を付着させることで、第1方向に沿って塗布面に塗料を塗布する塗布装置であって、
塗布面に対して平行な仮想上の平面である仮想平面への塗料開口の垂直投影像である塗料開口投影像の第1方向に対して垂直な方向である幅方向への最大寸法が、少なくとも異なる2以上の値をとり得るものである、塗布装置。
【請求項2】
下方に形成された容器開口を有し塗料を収容する塗料容器と、
容器開口を閉鎖した閉鎖状態から容器開口に対して開閉部材移動方向に相対的に移動することで容器開口の少なくとも一部を開放し塗料開口を形成する開閉部材と、を備えてなるものである、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
開閉部材移動方向が、第1方向の成分を有するものである、請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
開閉部材が、少なくとも塗料開口を規定する部分が幅方向に分割され相対的に移動が可能な第1部分と第2部分とを含んでなり、
第1部分が容器開口の一部を開放し第1塗料開口部分を形成すると共に第2部分が容器開口の一部を開放し第2塗料開口部分を形成する第1部分と第2部分との相対位置が変化不可能な全幅状態と、全幅状態から第1部分が第2部分に対して相対的に移動し第1部分が第1塗料開口部分を形成しないと共に第2部分が第2塗料開口部分を形成する前記幅方向への最大寸法が全幅状態よりも小さい一部幅状態と、をとりうるものである、請求項2又は3に記載の塗布装置。
【請求項5】
閉鎖状態から全幅状態への遷移においては、第1部分と第2部分との相対的位置が一定であり、
閉鎖状態から一部幅状態への遷移においては、第1部分と塗料容器との相対的位置が一定であり、第2部分と容器開口との相対的位置が変化するものである、請求項4に記載の塗布装置。
【請求項6】
閉鎖状態から一部幅状態への遷移においては、第1部分と第2部分とが液密的に互いに摺動するものである、請求項5に記載の塗布装置。
【請求項7】
開閉部材が、第2部分を構成する板状の閉鎖本体板と、閉鎖本体板に対して開閉部材移動方向に相対的に移動可能な第1部分を構成する閉鎖補助板と、を含んでなるものである、請求項6に記載の塗布装置。
【請求項8】
全幅状態における第1部分と第2部分との相対的位置を保持する第1部分と第2部分とを互いに係止する係止手段を備えてなる、請求項6又は7に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記相対的位置を、一部幅状態における第1部分と第2部分との相対的位置に変化させるように第1部分及び/又は第2部分を付勢する付勢手段を備えるものである、請求項8に記載の塗布装置。
【請求項10】
第1部分が、全幅状態において塗料開口を規定する第1移動端部を有し、
付勢手段は、第1移動端部が第1塗料開口部分を閉じる方向に移動するよう第1部分を付勢するものである、請求項9に記載の塗布装置。
【請求項11】
付勢手段は、第1部分を塗料容器に対して付勢する圧縮バネを含んでなるものである、請求項10に記載の塗布装置。
【請求項12】
一部幅状態において塗料開口から塗布面に向かって流出し塗布面に塗布される塗料により描かれる線の両縁のうち第1部分に近い縁に沿って、塗布面に対し垂直な平面の一部に沿う壁面を有する堰部材を着脱自在に備えるものである、請求項4乃至11のいずれか1に記載の塗布装置。
【請求項13】
第1部分が、全幅状態において塗料開口を規定する第1移動端部を有し、
第2部分が、全幅状態及び一部幅状態において塗料開口を規定する第2移動端部を有し、
塗布面に対し前記垂直な平面が、一部幅状態における第1移動端部の第2部分側の端の位置を通過するものである、請求項12に記載の塗布装置。
【請求項14】
開閉部材移動方向が塗布面と略平行なものである、請求項2乃至13のいずれか1に記載の塗布装置。
【請求項15】
前記塗布面が道路面又は駐車場面であり、
前記塗布装置が、道路面又は駐車場面における区画や位置を表示するための線を描くものである、請求項1乃至14のいずれか1に記載の塗布装置。
【請求項16】
前記塗料が、加熱溶融型の標示塗料組成物である、請求項1乃至15のいずれか1に記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置に関し、より詳細には、塗布面に沿う第1方向に移動しつつ、開口から塗布面に向かって塗料を流出させ塗布面に塗料を付着させることで、第1方向に沿って塗布面に塗料を塗布する塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以前から、塗布面に沿う第1方向に移動しつつ、開口から塗布面に向かって塗料を流出させ塗布面に塗料を付着させることで、第1方向に沿って塗布面に塗料を塗布する塗布装置が知られている。例えば、道路や駐車場等において区画や位置を表示するための線を描くために用いられる塗布装置が用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
特許文献1には、「ガソリン又は軽油エンジンを搭載した熱溶融型塗料用道路区画線施工機において、現在用いられているガソリン又は軽油エンジンをLPG工式ンジンに換え、燃料を一種類にすることにより、火災の危険のない安全な、かつ効率のよい道路区画線施工機を提供する」(特許文献1の要約)ためになされたもので、具体的には「塗料の加熱、保温、あるいは塗布装置の加熱源としてLPGの燃焼器具を使用した熱溶融型塗料用の道路区画線施工機において、その施工機の走行や装置類の作動用の動力源として、LPGを燃料とする内燃機(以下LPGエンジンと呼称)を使用し、そのLPG源を燃焼器具とエンジンのそれぞれにガス圧力調整レギュレータを用いて、同一のLPGボンベから分配して供給する構成とすることを特徴とするLPGエンジン搭載式道路区画線施工機。」(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1)が開示されている。
【0003】
特許文献2には、「道路区画線施工機に取付けられている塗布シュ-の底部に設けたシャッタ-を開閉操作する道路区画線用塗布シュ-のシャッタ-開閉装置」(特許文献2の考案の詳細な説明中の段落番号0001)に関し、「リンク機構の動きが操作杆の不具合な操作や塗布シュ-の揺動等に対しても余り影響されることなく、円滑にシャッタ-を開閉でき、且つ耐久性も長い。」(特許文献2の要約の目的)ものを提供するためになされたもので、具体的には「塗布シュ-(1)の底部のシャッタ-(2)と、該シャッタ-(2)を開閉操作する斜め上下に摺動自在な操作杆(4)とを接続するリンク機構(5)は、前記塗布シュ-(1)の左右に枢着し、先端に溝穴(51a)を形成した一対のL形状の開閉ア-ム(51)と、該開閉ア-ム(51)の後端間を連結固定させた固定杆(52)と、該固定杆(52)の中央から後方に突出し長穴(53a)を有する開閉ガイドプレ-ト(53)と、前記操作杆(4)に一端を固着し、他端側が前記開閉ガイドプレ-ト(53)と連結する連結ア-ム(54)とから成る。そして前記開閉ガイドプレ-ト(53)の溝穴(51a)には、前記シャッタ-(2)の左右から突設させた係合ピン(2a)を係合させる。又、前記開閉ガイドプレ-ト(53)と、その上方に位置する前記操作杆(4)に固着させた連結ア-ム(54)の先端側とを、前記長穴(53a)に挿通するロ-ラピン(8)で接続したもの」(特許文献2の考案の詳細な説明中の段落番号0006)が開示されている。
【0004】
このように特許文献1及び2に記載の道路区画線施工機は、塗布面である道路面に沿う第1方向(前方向)に移動しつつ、開口から道路面(塗布面)に向かって塗料(例えば、特許文献1においては熱溶融型塗料)を流出させ道路面(塗布面)に該塗料を付着させることで、第1方向(前方向)に沿って道路面(塗布面)に該塗料を塗布して道路区画線を形成する塗布装置である。
【0005】
図1は従来の区画線塗布器101(塗布装置)の側面図であり、
図2は従来の区画線塗布器101の平面図(
図1中の矢印A方向から見たところを示す。)であり、
図3は
図2のB-B断面図であり、
図4は
図2のC-C断面図であり、そして
図5は、後方(
図2中の矢印D方向)から見た従来の区画線塗布器101の下部部分の一部拡大図である。
図1乃至
図5を参照して、従来の区画線塗布器101について説明する。なお、この従来の区画線塗布器101は、特許文献1の発明の実施の形態に開示の道路区画線施工機における区画線塗布器3と、特許文献2の道路区画線施工機(特に、特許文献2の第1図~第3図に示される塗布シュ-(1)、シャッタ-(2)及び開閉ア-ム(51)に係る部分)と、同様の構造を有している。説明及び理解を容易にするため、互いに直交する3軸であるX軸、Y軸及びZ軸を用い、それぞれの方向を図中にX、Y及びZの矢印により表す。また、区画線塗布器101が前進する方向を前として矢印X1にて示し、それと反対方向を後として矢印X2にて示す(前後方向はX軸に平行である)。なお、「右」及び「左」は、前方(矢印X1方向)を向いた区画線塗布器101の操作者(不図示)が認識する右及び左をいう。
【0006】
従来の区画線塗布器101は、大まかには、塗布器本体103と、塗布器本体103が有する底板111をX軸方向に移動させるための一対の開閉アーム部121、123と、を含んでなる。
【0007】
塗布器本体103は、大まかには、無底無蓋の容器104と、容器104の底部開口104bを開閉する底板111と、容器104の左右両側面にそれぞれ取り付けられた右サイドライナー133及び左サイドライナー135と、容器104の後縁部に取り付けられたテールライナー137と、を有してなる。
容器104は、辺がX軸、Y軸及びZ軸のいずれかに沿うような直方体から、直三角柱(該直三角柱の両底面が直角三角形をなし、該直角三角形の斜辺を除く2辺がZ軸及びX軸に沿っている。該直三角柱と該直方体とのY軸方向への寸法は同じ。)を切り取った中空の無底無蓋の箱体を形成している。該直三角柱の一側面により、容器104の内面のうち傾斜面104fが形成されている。容器104のY軸に垂直な2の内面104c、104dには、X軸に平行な嵌入溝104k(
図4に内面104dに形成されたものを示す。内面104cにも、これと同様の嵌入溝が形成されている。)が形成されている。なお、内面104cに形成された嵌入溝と、内面104dに形成された嵌入溝104kと、は、Z軸に垂直な一平面に略属する。
【0008】
底板111は、両主表面が長方形を略なす平板状の前板113と、前板113の後縁側に取り付けられた後板115と、前板113と後板115とを取り付ける底板取付ボルト112と、前板113の前端に取り付けられた左右一対の取付部117a、117bと、を有してなる(前板113と後板115とは、液密的に取り付けられている。)。前板113の左右両側面には、X軸に平行な突条113k(
図4に左側面に形成されたものを示す。右側面にも、これと同様の突条が形成されている。)が形成されている。なお、左側面に形成された突条113kと、右側面に形成された突条と、は、Z軸に垂直な一平面に略属する。この左右両側面に形成された突条113kは、内面104c、104dに形成された嵌入溝104kに嵌入されることで、底板111は容器104に対してX軸方向(前後方向)にスライド自在に支持されている。
【0009】
右サイドライナー133及び左サイドライナー135は、いずれも主表面がY軸に略平行な平板部材により形成されており、それらの下縁133b、135bが、Z軸に垂直な一平面p1に略属するように、容器104の左右両側面に取り付けられている。
テールライナー137は、Y軸に垂直ないずれの平面による断面においても同じアルファベットの「L」字形状の断面を有し、「L」字形状の折り曲げ線により分けられる一方側137aは容器104の後外面104nの下端近傍に沿うようにテールライナー取付ボルト138により着脱自在に取り付けられている(テールライナー137の長手方向はY軸に略平行になっている。)。テールライナー137の該「L」字形状の折り曲げ線により分けられる他方側137bは、容器104の後外面104nの下縁から前方側に延びるように配設されており、他方側137bの下面137bbはZ軸に垂直な一平面に略属する。
【0010】
開閉アーム部121、123は、いずれもアルファベットの「L」字形状を有し、真っ直ぐ延びる基端部121a、123aと、基端部121a、123aの先端に基端が取り付けられた真っ直ぐ延びる先端部121b、123bと、が互いの長手方向が略直角になるように取り付けられてなる。開閉アーム部121、123は、基端部121a、123aと先端部121b、123bとの連結部分近傍が回動支持ピン121p、123pにより回動自在に容器104に取り付けられている(
図1では、回動中心を点c1にて示し、
図2及び
図4においては回動中心軸が存する直線の一部を点線c1にて示す。なお、回動中心軸が存するこの直線はY軸に略平行である。)。先端部121b、123bの先端には、先端部121b、123bの長手方向に沿った長穴121f、123fが形成されている。
【0011】
軸部(Y軸に略平行)が長穴121fの長手方向に沿って自由に移動可能であると共に頭部は長穴121fを通過不能な連結ボルト117abが、該頭部が突出するように底板111の取付部117aに取り付けられている。同様に、軸部(Y軸に略平行)が長穴123fの長手方向に沿って自由に移動可能であると共に頭部は長穴123fを通過不能な連結ボルト117bbが、該頭部が突出するように底板111の取付部117bに取り付けられている。
このため開閉アーム部121、123を回動支持ピン121p、123pを中心に回動させると、連結ボルト117ab、117bbをX軸方向に移動させることができ、これによって底板111を容器104に対してX軸方向(前後方向)にスライドさせることができる。
【0012】
図1乃至
図4の状態(以下「閉鎖状態」という。)においては、底板111の後板115の後縁115b(Y軸に略平行)が、容器104の内面及びテールライナー137の他方側137bの表面に略当接しているので、容器104の底部開口104bは底板111により閉じられている。かかる状態において、容器104の上部開口104aから、道路や駐車場等において線を描くための塗料を容器104内部に受け入れることで、該塗料を容器104内部に貯留することができる。
【0013】
そして、閉鎖状態から、開閉アーム部121、123の基端部121a、123aを下げる方向(
図1及び
図3において矢印Qにて示す。)に開閉アーム部121、123を回動支持ピン121p、123pを中心に回動させると、長穴121f、123fが前方向(矢印X1方向)に移動するので、長穴121f、123fに係合する連結ボルト117ab、117bbも前方向(矢印X1方向)に移動する。これにより底板111を容器104に対して前方向(矢印X1方向)にスライド移動させることができる。なお、開閉アーム部121、123の回動支持ピン121p、123p中心の回動は、基端部121a、123aを手で把持する等して人の力で行っても、またアクチュエータ等によって基端部121a、123aに力を加えるようにして行ってもよい。
【0014】
図6乃至
図8は、閉鎖状態から基端部121a、123aを下げる方向(
図1及び
図3において矢印Qにて示す。)に開閉アーム部121、123を回動させた状態(以下「開放状態」という。)を示している。
図6は、開放状態の区画線塗布器101を
図1と同じ位置から見たところを示す図であり、
図7は、開放状態の区画線塗布器101を
図2と同じ位置から見たところを示す図であり、そして
図8は、
図7のB-B断面図(
図3と同じ断面を示している。)である。
図6乃至
図8に示す通り、開放状態においては、閉鎖状態に比し、開閉アーム部121、123が回動支持ピン121p、123pを中心に回動し、長穴121f、123fが前方向(矢印X1方向)に移動している。これにより長穴121f、123fに係合する連結ボルト117ab、117bbが前方向(矢印X1方向)に移動し、底板111が容器104に対して前方向(矢印X1方向)に移動している。これによって、底板111の後板115の後縁115bが、容器104に対して前方向(矢印X1方向)に移動し、後縁115bと容器104内面との間に開口109が形成されている。容器104内部に貯留されている塗料が、この開口109(塗料開口)を経て流出し、Z軸に垂直な一平面p1に属する塗布面(例えば、道路面や駐車場面)に流下する。この流下と共に区画線塗布器101を前進(矢印X1方向)させることで、開口109のY軸方向の寸法Syに応じた幅(塗布面において塗料がY軸方向に広がる傾向があっても、右サイドライナー133及び左サイドライナー135により広がりが制限される。)で塗布面に塗料を流下させ、区画線塗布器101の後方(矢印X2方向)に塗料を塗布できる。
【0015】
このように、区画線塗布器101を前進(矢印X1方向)させつつ、開口109を形成することで(開放状態)、容器104内部に貯留されている塗料を塗布面に塗布することができる(例えば、
図7において、塗布面151のうち、X軸に平行な一対の直線e1、e2の間に存し、区画線塗布器101の後方(矢印X2方向)に存する領域153に塗料を塗布することができる。)。
なお、開放状態において、基端部121a、123aを上げる方向(
図6及び
図8において矢印Qbにて示す。)に開閉アーム部121、123を回動させることで、底板111を容器104に対して後方向(矢印X2方向)に移動させ開口109を閉じることができる(閉鎖状態。塗料塗布を中止)。
このように
図1乃至
図8を参照して説明した区画線塗布器101は、塗布面151(例えば道路面)に沿う第1方向(矢印X1方向)に移動しつつ、開口109から塗布面に向かって塗料(例えば熱溶融型塗料)を流出させ塗布面151に該塗料を付着させることで、第1方向(矢印X1方向)に沿って塗布面151に該塗料を塗布する塗布装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2000-17609号公報
【特許文献2】登録実用新案第3013652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
図1乃至
図8を参照して説明した従来の区画線塗布器101(塗布装置)においては、塗布面151への塗料の塗布幅(進行方向に対して垂直方向の寸法。上記の例ではY軸方向の寸法。
図7においては、直線e1、e2との間の距離に同じ。)を変更することはできなかった。このため複数の塗布幅で塗料を塗布する必要がある場合には、それぞれの塗布幅で塗料を塗布することができる塗布装置を塗布現場に準備し(塗布幅の数だけ塗布装置を要する)、運転する必要があった(例えば、20cmと30cmとの2つの塗布幅で塗料を塗布する必要がある場合には、20cmの塗布幅で塗料を塗布することができる塗布装置と、30cmの塗布幅で塗料を塗布することができる塗布装置と、の2台を要していた。)。
このように各塗布幅毎に塗布装置を要することは、塗布工事のコストや期間を増加させることになることがあった。
そこで、本発明では、塗布幅を変更することができる塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の塗布装置(以下「本装置」という。)は、塗布面に沿う第1方向に移動しつつ、塗料を流出させる塗料開口から塗布面に向かって塗料を流出させ塗布面に塗料を付着させることで、第1方向に沿って塗布面に塗料を塗布する塗布装置であって、塗布面に対して平行な仮想上の平面である仮想平面への塗料開口の垂直投影像である塗料開口投影像の第1方向に対して垂直な方向である幅方向への最大寸法が、少なくとも異なる2以上の値をとり得るものである、塗布装置である。
本装置は、上述の特許文献1及び2に記載の道路区画線施工機や、
図1乃至
図8を参照して説明した区画線塗布器101と同様、塗布面に沿う第1方向に移動しつつ、塗料を流出させる塗料開口から塗布面に向かって塗料を流出させ塗布面に塗料を付着させることで、第1方向に沿って塗布面に塗料を塗布する塗布装置であり、例えば、道路面や駐車場面に区画線を描く施工機として用いることができる。
本装置においては、塗布面(例えば、道路面や駐車場面等を挙げることができる。)に向かって塗料を流出させる塗料開口を仮想平面へ垂直投影したときの垂直投影像である塗料開口投影像の幅方向への最大寸法が少なくとも異なる2以上の値をとり得る。塗料開口を垂直投影する該仮想平面は、塗布面に対して平行な仮想上の平面であり、例えば塗布面が略水平面をなす場合には水平面とすればよい。そして、幅方向は、本装置が移動する第1方向に対して垂直な方向(無論、塗布面に対して平行な方向である。)の寸法である。また、幅方向への最大寸法は、塗料開口投影像の幅方向への寸法のうち最大のものをいう(仮想平面に存すると共に第1方向に平行な一対の直線に塗料開口投影像が存するように該一対の直線が塗料開口投影像の外縁に接する状態における該一対の直線の間の距離である。)。
かかる本装置では、塗布面に沿う第1方向に移動しつつ、塗料開口から塗布面に向かって塗料を流出させ塗布面に塗料を付着させる際の塗布幅(第1方向に対して垂直な方向である幅方向の寸法)は、塗料開口投影像の幅方向への最大寸法に応じて変化することから、該最大寸法が少なくとも異なる2以上の値をとることにより塗布幅も少なくとも異なる2以上の値をとることができる(塗布幅を変更することができる)。
【0019】
本装置においては、下方に形成された容器開口を有し塗料を収容する塗料容器と、容器開口を閉鎖した閉鎖状態から容器開口に対して開閉部材移動方向に相対的に移動することで容器開口の少なくとも一部を開放し塗料開口を形成する開閉部材と、を備えてなるもの(以下「開閉部材具備本装置」という。)であってもよい。
開閉部材具備本装置は、塗料容器と開閉部材とを備えてなる。
塗料容器は、塗料を収容するものであり、容器開口を有する。容器開口は、塗料容器が収容する塗料が流出可能に下方に形成される。
開閉部材は、容器開口を閉鎖した閉鎖状態から、容器開口に対して開閉部材移動方向に相対的に移動することにより、容器開口の少なくとも一部を開放して塗料開口(塗布面に向かって塗料を流出させる開口)を形成する。
こうすることで、容器開口を開閉部材が閉鎖した閉鎖状態から、開閉部材が容器開口に対して開閉部材移動方向に相対的に移動して塗料開口を形成するので、開閉部材を容器開口(塗料容器)に対して相対的に移動させることで、塗料容器が収容する塗料を塗料開口から塗布面に向かって流出させ、塗布面に塗料を付着させることができる。
【0020】
開閉部材具備本装置においては、開閉部材移動方向が、第1方向の成分を有するもの(以下「第1方向成分移動本装置」という。)であってもよい。
容器開口を有し塗料を収容する塗料容器と、容器開口を閉鎖した閉鎖状態から容器開口に対して開閉部材移動方向に相対的に移動することで容器開口の少なくとも一部を開放し塗料開口を形成する開閉部材と、を備えてなる場合、本装置が塗布面に沿って移動する方向である第1方向の成分を開閉部材移動方向が有することで、開閉部材移動方向への開閉部材の移動量によって塗布量(幅方向の単位長さ当たりに塗布される量)を調整することができる(該移動量が大きくなれば該塗布量が増加する。)。
【0021】
開閉部材具備本装置においては、開閉部材が、少なくとも塗料開口を規定する部分が幅方向に分割され相対的に移動が可能な第1部分と第2部分とを含んでなり、第1部分が容器開口の一部を開放し第1塗料開口部分を形成すると共に第2部分が容器開口の一部を開放し第2塗料開口部分を形成する第1部分と第2部分との相対位置が変化不可能な全幅状態と、全幅状態から第1部分が第2部分に対して相対的に移動し第1部分が第1塗料開口部分を形成しないと共に第2部分が第2塗料開口部分を形成する前記幅方向への最大寸法が全幅状態よりも小さい一部幅状態と、をとりうるもの(以下「分割本装置」という。)であってもよい。
分割本装置においては、開閉部材が第1部分と第2部分とを含んでなる。第1部分と第2部分とは、少なくとも塗料開口を規定する開閉部材の部分が幅方向に分割され、該分割されて形成される複数の部分のうち1の部分を第1部分が有し、該複数の部分のうち該1の部分とは異なる部分を第2部分が有している。第1部分と第2部分とは相対的に移動が可能である。
分割本装置は、塗布幅が大きな全幅状態と、塗布幅が全幅状態よりも小さい一部幅状態と、をとりうる。
全幅状態は、第1部分と第2部分との相対位置が変化不可能であり、第1部分及び第2部分のいずれもが容器開口の一部を開放し塗料開口を形成するものであり、詳細には、第1部分が容器開口の一部を開放し第1塗料開口部分を形成すると共に第2部分が容器開口の一部を開放し第2塗料開口部分を形成する。
一部幅状態は、全幅状態から第1部分が第2部分に対して相対的に移動し、第2部分のみが容器開口の一部を開放し塗料開口を形成し、第1部分は容器開口の一部を開放せず塗料開口を形成しない(第1部分が第1塗料開口部分を形成せず、第2部分が第2塗料開口部分を形成する。)。
このようにして一部幅状態においては、塗料開口投影像の前記幅方向への最大寸法が全幅状態よりも小さくなることで、塗布面に塗料を付着させる際の塗布幅を全幅状態の塗布幅よりも小さくすることができる。
【0022】
分割本装置においては、閉鎖状態から全幅状態への遷移においては、第1部分と第2部分との相対的位置が一定であり、閉鎖状態から一部幅状態への遷移においては、第1部分と塗料容器との相対的位置が一定であり、第2部分と容器開口との相対的位置が変化するもの(以下「相対位置変化本装置」という。)であってもよい。
閉鎖状態から全幅状態への遷移については、第1部分及び第2部分のいずれもを塗料容器(容器開口)に対して移動させて、第1塗料開口部分と第2塗料開口部分とを形成する必要があるので、第1部分と第2部分との相対的位置を変えることなく行うことができる。
一方、閉鎖状態から一部幅状態への遷移においては、第1部分は塗料容器(容器開口)に対して移動させず、第2部分を塗料容器(容器開口)に対して移動させて、第1塗料開口部分を形成せず第2塗料開口部分のみを形成する必要があるので、第1部分と塗料容器(容器開口)との相対的位置を変えず(一定)、第2部分と塗料容器(容器開口)との相対的位置を変化させるようにすることができる(第1部分と第2部分との相対的位置は変化する。)。
こうすることで、第1部分と第2部分との相対的位置の変更によって全幅状態と一部幅状態とを選択することができる。
【0023】
相対位置変化本装置においては、閉鎖状態から一部幅状態への遷移においては、第1部分と第2部分とが液密的に互いに摺動するもの(以下「摺動本装置」という。)であってもよい。
閉鎖状態から一部幅状態への遷移においては、第1部分と塗料容器との相対的位置が一定(不変)であり、第2部分と容器開口との相対的位置が変化することで、第1部分が第1塗料開口部分を形成しないと共に第2部分が第2塗料開口部分を形成する一部幅状態となることから、閉鎖状態から一部幅状態への遷移においては、第1部分と第2部分とが液密的に互いに摺動することで、塗料容器が収容する塗料が第1部分と第2部分との間から漏れることを防止できる。
【0024】
摺動本装置においては、開閉部材が、第2部分を構成する板状の閉鎖本体板と、閉鎖本体板に対して開閉部材移動方向に相対的に移動可能な第1部分を構成する閉鎖補助板と、を含んでなるものであってもよい。
こうすることで板状の閉鎖本体板により第2部分が形成され、板状の閉鎖補助板により第1部分が形成され、閉鎖本体板に対して閉鎖補助板が開閉部材移動方向に相対的に移動可能とされる。このため、閉鎖状態から一部幅状態への遷移においては、第2部分を構成する板状の閉鎖本体板は、塗料容器(容器開口)に対して開閉部材移動方向に移動することで第2塗料開口部分を形成すると共に、第1部分を構成する閉鎖補助板は、閉鎖本体板に対して開閉部材移動方向に相対的に移動することで塗料容器(容器開口)に対して同じ位置のまま存在する(第1塗料開口部分は形成されない。)ことができる(この遷移においては閉鎖補助板と閉鎖本体板とは液密的に互いに摺動する。)。
【0025】
摺動本装置においては、全幅状態における第1部分と第2部分との相対的位置を保持する第1部分と第2部分とを互いに係止する係止手段を備えてなるもの(以下「係止手段具備本装置」という。)であってもよい。
全幅状態は、第1部分が容器開口の一部を開放し第1塗料開口部分を形成すると共に第2部分が容器開口の一部を開放し第2塗料開口部分を形成する第1部分と第2部分との相対位置が変化不可能な状態であるので、かかる第1部分と第2部分との相対的位置を保持するための第1部分と第2部分とを互いに係止する係止手段を備えれば、この全幅状態を確実に保持することができる。
【0026】
係止手段具備本装置においては、前記相対的位置を、一部幅状態における第1部分と第2部分との相対的位置に変化させるように第1部分及び/又は第2部分を付勢する付勢手段を備えるもの(以下「付勢手段具備本装置」という。)であってもよい。
この付勢手段は、全幅状態における第1部分と第2部分との相対的位置から、第1部分が第1塗料開口部分を形成しないと共に第2部分が第2塗料開口部分を形成する一部幅状態における第1部分と第2部分との相対的位置に変化させるように第1部分及び/又は第2部分を付勢する。このため全幅状態における第1部分と第2部分との相対的位置を保持する前記係止手段の係止を解いた状態では、第1部分が第1塗料開口部分を形成せず、第2部分が第2塗料開口部分を形成する状態の第1部分及び第2部分の相対的位置になるように変化が促されるが、付勢手段の付勢力に抗して第1部分と第2部分との相対的位置を変化させることもできる。このため前記係止手段の係止を解いた状態では、第2部分が容器開口に対して開閉部材移動方向に相対的に移動しても、第1部分が第1塗料開口部分を形成しない状態の一部幅状態を保つことができる(例えば、前記係止手段の係止を解いた状態では、閉鎖状態と一部幅状態とを第2部分の容器開口に対する相対的移動によって容易に遷移させることができる。)。
【0027】
付勢手段具備本装置においては、第1部分が、全幅状態において塗料開口を規定する第1移動端部を有し、付勢手段は、第1移動端部が第1塗料開口部分を閉じる方向に移動するよう第1部分を付勢するもの(以下「第1部分付勢本装置」という。)であってもよい。
こうすることで、全幅状態において塗料開口を規定する第1移動端部(例えば、面や縁)が第1塗料開口部分を閉じる方向に移動するよう付勢手段が第1部分を付勢するので、第2部分が第2塗料開口部分を形成している状態と第2部分が第2塗料開口部分を形成していない状態とその両状態を遷移する過程とにおいて、第1部分が第1塗料開口部分を形成しない状態を保持できる。
【0028】
第1部分付勢本装置においては、付勢手段は、第1部分を塗料容器に対して付勢する圧縮バネを含んでなるものであってもよい。
このように圧縮バネが第1部分を塗料容器に対して付勢することで、塗料開口を規定する第1移動端部が第1塗料開口部分を閉じる方向に移動するよう付勢手段が第1部分を確実に付勢することができる。なお、この圧縮バネは、第1部分を塗料容器に対して直接的に付勢するもの(例えば、圧縮バネの一端が塗料容器に取り付けられると共に圧縮バネの他端が第1部分に取り付けられる。)のみならず、第1部分を塗料容器に対して間接的に付勢するもの(例えば、圧縮バネの一端が別の部材を介して塗料容器に取り付けられ、及び/又は圧縮バネの他端が他の部材を介して第1部分に取り付けられる。)であってもよい。
【0029】
分割本装置においては、一部幅状態において塗料開口から塗布面に向かって流出し塗布面に塗布される塗料により描かれる線の両縁のうち第1部分に近い縁に沿って、塗布面に対し垂直な平面の一部に沿う壁面を有する堰部材を着脱自在に備えるもの(以下「堰部材具備本装置」という。)であってもよい。
一部幅状態においては第1部分が第1塗料開口部分を形成しないと共に第2部分が第2塗料開口部分を形成することで、第2塗料開口部分が塗料開口を形成する。この第2塗料開口部分から塗布面に向かって流出し塗布面に塗布される塗料により描かれる線の両縁(通常は第1方向に平行)のうち第1部分に近い縁は、外方(該両縁のうち第1部分から遠い縁から遠ざかる方向)に不意に広がることがある(これにより該描かれる線が見づらくなることがある。)。該描かれる線の両縁のうち第1部分に近い該縁に沿って、塗布面に対し垂直な平面の一部に沿う壁面を有する堰部材を設けることにより、該壁面が該広がりを制限することができる。なお、全幅状態において堰部材が取り付けられていると、塗布面に塗布される塗料の表面を該壁面がきずつけることがあるので堰部材は本装置に着脱自在にされることが好ましい。
【0030】
堰部材具備本装置においては、第1部分が、全幅状態において塗料開口を規定する第1移動端部を有し、第2部分が、全幅状態及び一部幅状態において塗料開口を規定する第2移動端部を有し、塗布面に対し前記垂直な平面が、一部幅状態における第1移動端部の第2部分側の端の位置を通過するものであってもよい。
全幅状態においては塗料開口を第1移動端部と第2移動端部とが規定し、一部幅状態においては塗料開口を第2移動端部が規定する。このため一部幅状態において第2塗料開口部分から塗布面に向かって流出し塗布面に塗布される塗料により描かれる線の両縁のうち第1部分に近い縁は、幅方向に関し、一部幅状態における第1移動端部の第2部分側の端の位置にほぼ一致することから、堰部材が有する前記壁面が沿う前記垂直な平面が、一部幅状態における第1移動端部の第2部分側の端の位置を通過するようにしてもよい。
なお、堰部材が有する前記壁面が、一部幅状態における第1移動端部の第2部分側の端の位置を通過するものであってもよく、そうすれば第2塗料開口部分から塗布面に向かって流出する塗料が流出直後から該壁面により不意に広がることを効果的に防止又は減少できる。
【0031】
開閉部材具備本装置においては、開閉部材移動方向が塗布面と略平行なものであってもよい。
こうすることで、開閉部材が、容器開口を閉鎖した閉鎖状態から容器開口に対して塗布面と略平行に相対的に移動することで容器開口の少なくとも一部を開放することから、塗料開口のいずれの位置から塗布面に向かって流出した塗料も塗布面から略同じ高さを流下するので、塗布面に塗着した塗料の状態をほぼ一定にし、線をきれいに描くことができる。
【0032】
本装置においては、前記塗布面が道路面又は駐車場面であり、前記塗布装置が、道路面又は駐車場面における区画や位置を表示するための線を描くもの(以下「道路ライン施工本装置」という。)であってもよい。
上述の特許文献1及び2に記載の道路区画線施工機のように、道路面又は駐車場面を塗布面とし、該道路面又は該駐車場面における区画や位置を表示するための線を描くことに本装置は好適に用いることができる。
【0033】
道路ライン施工本装置においては、前記塗料が、加熱溶融型の標示塗料組成物であってもよい。
加熱溶融型の標示塗料組成物は、特開2012-197556号に記載のように、道路面又は該駐車場面における区画や位置を表示するための線を描くことに好適に用いられている。なお、加熱溶融型の標示塗料組成物は、高温時には流動性を有するが、低温時には固化するので、塗料開口から塗布面に向かって流出させるための流動性を保つには高温にて保つ必要がある。このため本装置に供給する前の加熱溶融型の標示塗料組成物を加熱する加熱器や、本装置に供給した後の加熱溶融型の標示塗料組成物を保温のため加熱する保温器を本装置は有するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】従来の区画線塗布器(塗布装置、閉鎖状態)の側面図である。
【
図2】
図1に示した従来の区画線塗布器(閉鎖状態)の平面図である。
【
図5】後方から見た従来の区画線塗布器の下部部分の一部拡大図である。
【
図6】開放状態の
図1に示した区画線塗布器の側面図である。
【
図7】開放状態の
図2に示した区画線塗布器の平面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る区画線塗布器(本塗布器、閉鎖状態)を示す側面図である。
【
図10】
図9に示した本塗布器(閉鎖状態)の平面図である。
【
図12】
図11中の円D1(点線により示す)中の拡大図である。
【
図14】
図13中の円D2(点線により示す)中の拡大図である。
【
図15】後方から見た本塗布器の下部部分の一部拡大図である。
【
図28】後方から見た本塗布器の下部部分の一部拡大図である。
【
図29】塗布面に対して平行な仮想上の平面である仮想平面への塗料開口の垂直投影像である塗料開口投影像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。しかしながら、これらによって本発明は何ら制限されるものではない。
【0036】
図9は、本発明の一実施形態に係る区画線塗布器(本塗布器)201を示す側面図であり、
図10は本塗布器201の平面図(
図9中の矢印A方向から見たところを示す。)であり、
図11は
図10のB-B断面図であり、
図12は
図11中の円D1(点線により示す)中の拡大図であり、
図13は
図10のG-G断面図であり、
図14は
図13中の円D2(点線により示す)中の拡大図であり、そして
図15は、後方(
図10中の矢印D方向)から見た本塗布器201の下部部分の拡大図である。さらに、
図16は、後述の底板211の分解図(図示及び理解を容易にするため第1後板214及び第2後板216のX軸方向の位置をずらして示している。)であり、
図17は、底板211に含まれる第1後板214(
図17(b))及び第2後板216(
図17(a))の側面図(それぞれ
図16中の矢印Q1、Q2方向からそれぞれ見たところを示している。)であり、
図18は、後述の第1テールライナー261の拡大図(詳細には、
図18(a)は、第1テールライナー261を後方(
図10中の矢印D方向)から見たところを示し、
図18(b)は
図18(a)中の矢印D5方向から第1テールライナー261を見たところを示す。)であり、
図19は、後述の第2テールライナー262の拡大図(詳細には、
図19(a)は、第2テールライナー262を後方(
図10中の矢印D方向)から見たところを示し、
図19(b)は
図19(a)中の矢印D6方向から第2テールライナー262を見たところを示す。)であり、そして
図20は、後述の第3テールライナー263の拡大図(詳細には、
図20(a)は、第3テールライナー263を後方(後述の
図25のように第3テールライナー263が本塗布器201に装着された際、矢印D方向)から見たところを示し、
図20(b)は
図20(a)のJ1-J1断面図であり、
図20(c)は
図20(a)中の矢印D7方向から第3テールライナー263を見たところを示す。)である。なお、第3テールライナー263は、第2テールライナー262に代えて装着されるものであり、
図9乃至
図15には図示されていない。
【0037】
説明及び理解を容易にするため、互いに直交する3軸であるX軸、Y軸及びZ軸を用い、それぞれの方向を図中にX、Y及びZの矢印により表す。また、本塗布器201が前進する方向を前として矢印X1にて示し、それと反対方向を後として矢印X2にて示す(前後方向はX軸に平行である)。
なお、本塗布器201は、道路面や駐車場面等のような塗布面に沿って移動する移動体(ここでは不図示)に取り付けられて、該塗布面に規制線(例えば、道路面に表示する白線等)を描く等のために用いられる。例えば、上述した特許文献1(特開2000-17609号)の発明の実施の形態に開示の道路区画線施工機における区画線塗布器3や、特許文献2(登録実用新案第3013652号公報)の道路区画線施工機(特に、特許文献2の第1図~第3図に示される塗布シュ-(1)、シャッタ-(2)及び開閉ア-ム(51)に係る部分)として用いることができる。
【0038】
本塗布器201は、大まかには、塗布器本体203と、塗布器本体203が有する底板211をX軸方向に移動させるための一対の開閉アーム部121、123と、を含んでなる。
【0039】
塗布器本体203は、大まかには、無底無蓋の容器104と、容器104の底部開口104bを開閉する底板211と、容器104の左右両側面にそれぞれ取り付けられた右サイドライナー133及び左サイドライナー135と、容器104の後縁部に取り付けられた第1テールライナー261及び第2テールライナー262と、後述の第2後板216を後方(矢印X2方向)に付勢する付勢具271と、を有してなる。
容器104は、辺がX軸、Y軸及びZ軸のいずれかに沿うような直方体から、直三角柱(該直三角柱の両底面が直角三角形をなし、該直角三角形の斜辺を除く2辺がZ軸及びX軸に沿っている。該直三角柱と該直方体とのY軸方向への寸法は同じ。)を切り取った中空の無底無蓋の箱体を形成している。該直三角柱の一側面により、容器104の内面のうち傾斜面104fが形成されている(傾斜面104f以外の容器104内面は、X軸又はY軸に垂直な平面に沿っている。)。容器104のY軸に垂直な2の内面104c、104dには、X軸に平行な嵌入溝104k(
図4に示されたものと同様。内面104cにも、これと同様の嵌入溝が形成されている。)が形成されている。なお、内面104cに形成された嵌入溝と、内面104dに形成された嵌入溝104kと、は、Z軸に垂直な一平面に略属する。
【0040】
底板211は、両主表面が長方形を略なす平板状の前板213と、前板213の後縁側に取り付けられる第1後板214と、前板213の後縁側に取り付けられる第2後板216と、前板213と第1後板214とを取り付ける第1取付ボルト212aと、前板213と第2後板216とを取り付ける第2取付ボルト212bと、前板213の前端に取り付けられた左右一対の取付部217a、217bと、を有してなる。
前板213の左右両側面213fa、213fbには、X軸に平行な突条213k(
図4に示された突条113kと同様のもの)が形成されている。なお、左側面213fbに形成された突条213kと、右側面213faに形成された突条213kと、は、Z軸に垂直な一平面に略属する。この左右両側面213fa、213fbに形成された突条213kは、内面104c、104dに形成された嵌入溝104kに嵌入されることで、前板213を含む底板211は容器104に対してX軸方向(前後方向)にスライド自在に支持されている。
【0041】
第1後板214は、前板213の下面213b(Z軸に垂直な平面に沿っている)のうち後縁213e近傍に当接する当接上面214aaと、当接上面214aaから降下した位置にY軸に沿って形成された閉塞面214d(X軸に対して垂直な平面に沿っている。)と、を有してなり、当接上面214aa位置に形成されたボルト穴214hと、前板213に形成されたボルト穴213haと、に第1取付ボルト212aが螺嵌されることで、当接上面214aaが下面213bに当接した状態で第1後板214は前板213に取り付けられる。
第2後板216は、前板213の下面213b(Z軸に垂直な平面に沿っている)のうち後縁213e近傍に当接する当接上面216aaと、当接上面216aaから降下した位置にY軸に沿って形成された閉塞面216d(X軸に対して垂直な平面に沿っている。)と、を有してなり、当接上面216aa位置に形成されたボルト穴216hと、前板213に形成されたボルト穴213hbと、に第2取付ボルト212bが螺嵌されることで、当接上面216aaが下面213bに当接した状態で第2後板216は前板213に取り付けられている。
【0042】
なお、第1後板214及び第2後板216が前板213に取り付けられた状態においては、閉塞面214dと閉塞面216dとは、X軸に垂直な一平面に属すると共に、閉塞面214d及び閉塞面216dは、該一平面に存する一長方形の一部及び残部をそれぞれ構成する(閉塞面214d及び閉塞面216dは、Z軸方向に関して同じ位置に存する。)。また、第1後板214及び第2後板216が前板213に取り付けられた状態においては、突条213kを除いて、Z軸に沿って見ると1の長方形を略形成している。そして、第1後板214及び第2後板216が前板213に取り付けられた状態においては、第1後板214と第2後板216との間、第1後板214と前板213との間、第2後板216と前板213との間、のいずれの間も液密性が保たれる。
【0043】
右サイドライナー133及び左サイドライナー135は、いずれも主表面がY軸に略平行な平板部材により形成されており、それらの下縁133b、135bが、Z軸に垂直な一平面p1に略属するように、容器104の左右両側面に取り付けられている。
【0044】
第1テールライナー261は、Y軸に垂直ないずれの平面による断面においても同じアルファベットの「L」字形状の断面を有し、「L」字形状の折り曲げ線により分けられる一方側261aは容器104の後外面104nの下端近傍に沿うようにテールライナー取付ボルト138aにより容器104に取り付けられている(第1テールライナー261の長手方向及び該折り曲げ線はY軸に略平行になっている。)。なお、テールライナー取付ボルト138aが貫入されるボルト貫入穴261hは、Z軸方向に長手方向が沿った長穴とされているので、テールライナー取付ボルト138aを緩めた状態で容器104に対する第1テールライナー261の高さ(Z軸方向の位置)や傾きを調節した後に、テールライナー取付ボルト138aを締めることで、該高さや傾きを調節することができる。第1テールライナー261の該「L」字形状の折り曲げ線により分けられる他方側261bは、容器104の後外面104nの下縁から前方側に延びるように配設され、他方側261bの下面261bbはZ軸に垂直な一平面に略属する。
【0045】
第2テールライナー262は、Y軸に垂直ないずれの平面による断面においても同じアルファベットの「L」字形状の断面を有し、「L」字形状の折り曲げ線により分けられる一方側262aは容器104の後外面104nの下端近傍に沿うようにテールライナー取付ボルト138bにより容器104に取り付けられている(第2テールライナー262の長手方向及び該折り曲げ線はY軸に略平行になっている。)。なお、テールライナー取付ボルト138bが貫入されるボルト貫入穴262hは、Z軸方向に長手方向が沿った長穴とされているので、テールライナー取付ボルト138bを緩めた状態で容器104に対する第2テールライナー262の高さ(Z軸方向の位置)や傾きを調節した後に、テールライナー取付ボルト138bを締めることで、該高さや傾きを調節することができる。第2テールライナー262の該「L」字形状の折り曲げ線により分けられる他方側262bは、容器104の後外面104nの下縁から前方側に延びるように配設され、他方側262bの下面262bbはZ軸に垂直な一平面に略属する。
なお、下面262bbと下面261bbとはZ軸に垂直な一平面に略属し、下面262bbと下面261bbとは塗布する塗料の上面を規定するものであり、前述の一平面p1から下面262bb、261bbまでの高さが、塗布する塗料の厚みとなる。
【0046】
第3テールライナー263は、第2テールライナー262に比し、下面に形成されたX軸方向に沿った突条263tが存することが異なるのみでその余りは同じである。第3テールライナー263は、突条263tが形成されている部分を除き、Y軸に垂直ないずれの平面による断面においても同じアルファベットの「L」字形状の断面形状を有し、「L」字形状の折り曲げ線により分けられる一方側263aは容器104の後外面104nの下端近傍に沿うようにテールライナー取付ボルト138bにより容器104に取り付けられる(第3テールライナー263の長手方向及び該折り曲げ線はY軸に略平行になっている。)。なお、テールライナー取付ボルト138bが貫入されるボルト貫入穴263h(
図20(a)(b)参照)は、Z軸方向に長手方向が沿った長穴とされているので、テールライナー取付ボルト138bを緩めた状態で容器104に対する第3テールライナー263の高さ(Z軸方向の位置)や傾きを調節した後に、テールライナー取付ボルト138bを締めることで、該高さや傾きを調節することができる。第3テールライナー263の該「L」字形状の折り曲げ線により分けられる他方側263bは、容器104の後外面104nの下縁から前方側に延びるように配設されている。突条263tは、辺がX軸、Y軸及びZ軸のいずれかに沿うような直方体形状を有し、突条263tの下面263tbはZ軸に垂直な一平面に略属する。なお、突条263tの下面263tb以外の他方側263bの下面263bbは、第2テールライナー262の下面262bbと同じ位置に存している。また、突条263tが形成する該直方体の1の外面は、塗布する塗料をせき止める堰面263fを構成する。
【0047】
付勢具271は、容器104に取り付けられた付勢本体部275と、付勢本体部275に出没自在に支持された付勢棒273と、を有してなり、付勢棒273の基端側は付勢本体部275内部に収容されると共に、付勢棒273の先端は第2後板216に取り付けられており、付勢本体部275内部に収容された圧縮ばね(不図示)によって付勢棒273は後方(矢印X2方向)に向けて付勢されている。これにより第2後板216は後方(X軸方向と平行な矢印X2方向)に向けて付勢される。
【0048】
開閉アーム部121、123は、いずれもアルファベットの「L」字形状を有し、真っ直ぐ延びる基端部121a、123aと、基端部121a、123aの先端に基端が取り付けられた真っ直ぐ延びる先端部121b、123bと、が互いの長手方向が略直角になるように取り付けられてなる。開閉アーム部121、123は、基端部121a、123aと先端部121b、123bとの連結部分近傍が回動支持ピン121p、123pにより回動自在に容器104に取り付けられている(
図9では、回動中心を点c1にて示し、
図10においては回動中心軸が存する直線の一部を点線c1にて示す。なお、回動中心軸が存するこの直線はY軸に略平行である。)。先端部121b、123bの先端には、先端部121b、123bの長手方向に沿った長穴121f、123fが形成されている。
軸部(Y軸に略平行)が長穴121fの長手方向に沿って自由に移動可能であると共に頭部は長穴121fを通過不可能な連結ボルト217abが、該頭部が突出するように底板211の取付部217aに取り付けられている。同様に、軸部(Y軸に略平行)が長穴123fの長手方向に沿って自由に移動可能であると共に頭部は長穴123fを通過不可能な連結ボルト217bbが、該頭部が突出するように底板211の取付部217bに取り付けられている。
このため開閉アーム部121、123を回動支持ピン121p、123pを中心に回動させると、連結ボルト217ab、217bbをX軸方向に移動させることができ、これによって底板211を容器104に対してX軸方向(前後方向)にスライドさせることができる。
【0049】
図9乃至
図15の状態(以下「閉鎖状態」という。)においては、第1後板214の閉塞面214dは、容器104の内面及び第1テールライナー261の他方側261bの表面に略当接し(特に
図14参照)、第2後板216の閉塞面216dは、容器104の内面及び第2テールライナー262の他方側262bの表面に略当接している(特に
図12参照。閉塞面214dと閉塞面216dとは、X軸に垂直な一平面に属する。なお、図示及び理解を容易にするため、閉塞面214dと、容器104の内面及び他方側261bの表面との間と、閉塞面216dと、容器104の内面及び他方側262bの表面との間と、は実際よりも大きな隙間を図では示している。)と共に、第1後板214と第2後板216との間、第1後板214と前板213との間、第2後板216と前板213との間、いずれの間も液密性が保たれている。このため容器104の上部開口104aから、道路や駐車場等において線を描くための塗料(ここでは加熱溶融型の標示塗料組成物が予め加熱されて液状となったもの)を容器104内部に受け入れることで、該塗料を容器104内部に貯留することができる。なお、この貯留する塗料の流動性を保つ等の目的で、本塗布器201は該塗料の加熱手段(例えば、LPガスを燃焼させ、塗料を加熱するような装置等)を有するようにしてもよい。
【0050】
そして、閉鎖状態から、開閉アーム部121、123の基端部121a、123aを下げる方向(
図9、
図11及び
図13において矢印Qにて示す。)に開閉アーム部121、123を回動支持ピン121p、123pを中心に回動させると、長穴121f、123fが前方向(矢印X1方向)に移動し、長穴121f、123fに係合する連結ボルト217ab、217bbも前方向(矢印X1方向)に移動し、底板211を容器104に対して前方向(矢印X1方向)にスライド移動させることができる。なお、開閉アーム部121、123の回動支持ピン121p、123p中心の回動は、基端部121a、123aを把持する等して人の力で行っても、またアクチュエータ等によって基端部121a、123aに力を加えるようにしてもよい。
【0051】
図21乃至
図24は、閉鎖状態から基端部121a、123aを下げる方向(
図9、
図11及び
図13において矢印Q)に開閉アーム部121、123を回動させた状態(以下「全幅状態」という。)を示している。具体的には、
図21は、全幅状態の本塗布器201を示す側面図(
図9と同様の位置から見ている。)であり、
図22は、全幅状態の本塗布器201を
図10と同じ位置から見たところを示す図であり、
図23は、
図22のB-B断面図(
図11と同じ断面を示している。)であり、そして
図24は、
図22のG-G断面図(
図13と同じ断面を示している。)である。
【0052】
図21乃至
図24に示す通り、全幅状態においては、閉鎖状態に比し、開閉アーム部121、123が回動支持ピン121p、123pを中心に回動し、長穴121f、123fが前方向(矢印X1方向)に移動している。これにより長穴121f、123fに係合する連結ボルト217ab、217bbが前方向(矢印X1方向)に移動し、底板211が容器104に対して前方向(矢印X1方向)に移動している。これによって、第1後板214の閉塞面214dと、第2後板216の閉塞面216dと、は容器104に対して前方向(矢印X1方向)に移動し、これら閉塞面214d、216dと容器104内面との間に開口209が形成されている。なお、この底板211の移動に伴い、第2後板216に先端が取り付けられている付勢棒273は付勢本体部275に押し込まれる(付勢具271の付勢力に抗して底板211が前方向(矢印X1方向)に移動する。)。
【0053】
容器104内部に貯留されている塗料が、この開口209を経て流出し、Z軸に垂直な一平面p1に属する塗布面(例えば、道路面や駐車場面)に流下する。この流下と共に本塗布器201を前進(矢印X1方向)させることで、開口209のY軸方向の寸法に応じた幅(塗布面において塗料がY軸方向に広がる傾向があっても、右サイドライナー133及び左サイドライナー135により広がりが制限される。)で塗布面に塗料を流下させ、本塗布器201の後方(矢印X2方向)に塗料を塗布できる。
このように、本塗布器201を前進(矢印X1方向)させつつ、開口209を形成することで、容器104内部に貯留されている塗料を塗布面に塗布することができる(例えば、
図22において、塗布面251のうち、X軸に平行な一対の直線e1、e2の間に存し本塗布器201の後方(矢印X2方向)に存する領域253に塗料を塗布することができる。)。
なお、全幅状態において、基端部121a、123aを上げる方向(
図21、
図23及び
図24において矢印Qbにて示す。)に開閉アーム部121、123を回動させることで、底板211を容器104に対して後方向(矢印X2方向)に移動させ開口209を閉じることができる(閉鎖状態。塗料塗布を中止)。
【0054】
そして、閉鎖状態において、(a)前板213と第2後板216とを取り付ける第2取付ボルト212bを取り外すと共に、(b)第2テールライナー262に代えて第3テールライナー263を取り付けることで、
図22乃至
図24に示された状態(以下「全幅状態」という。)よりも塗料を幅(Y軸方向への寸法)が小さく塗布面に塗布することができる。
図25乃至
図28は、閉鎖状態において上記(a)及び(b)の作業を行った本塗布器201において、基端部121a、123aを下げる方向(
図9において矢印Qにて示す。)に開閉アーム部121、123を回動させた状態(以下「一部幅状態」という。)を示している。
図25は、一部幅状態の本塗布器201を
図22と同じ位置から見たところを示す図であり、
図26は、
図25のB-B断面図(
図23と同じ断面を示している。)であり、
図27は、
図25のG-G断面図(
図24と同じ断面を示している。)であり、そして
図28は、後方(
図25中の矢印D方向)から見た本塗布器201の下部部分の拡大図である。
【0055】
図25乃至
図28に示す通り、一部幅状態においては、閉鎖状態に比し、開閉アーム部121、123が回動支持ピン121p、123pを中心に回動し、長穴121f、123fが前方向(矢印X1方向)に移動している。これにより長穴121f、123fに係合する連結ボルト217ab、217bbが前方向(矢印X1方向)に移動し、前板213及びそれに取り付けられた第1後板214が容器104に対して前方向(矢印X1方向)に移動している。しかしながら、第2取付ボルト212bが取り外されているため、付勢具271の後方向(矢印X2方向)への付勢力によって第2後板216は後方向に留まっている(第2後板216は閉鎖状態における位置と同様である。)。これによって、第1後板214の閉塞面214dは容器104に対して前方向(矢印X1方向)に移動し、閉塞面214dと容器104内面との間に開口209aが形成されているが、第2後板216の閉塞面216dは容器104の内面及び第3テールライナー263の他方側263bの表面に略当接しているので、閉塞面216dと容器104内面との間に開口は形成されていない。なお、第2後板216の当接上面216aaは、前板213の下面213bに液密的にX軸方向にスライド自在とされているので、前板213に対する第2後板216の相対的位置が変化しても、前板213と第2後板216との間から塗料が漏れて流下することはない。
【0056】
容器104内部に貯留されている塗料が、この開口209aを経て流出し、Z軸に垂直な一平面p1に属する塗布面(例えば、道路面や駐車場面)に流下する。この流下と共に本塗布器201を前進(矢印X1方向)させることで、開口209aのY軸方向の寸法(開口209のY軸方向の寸法よりも小さい)に応じた幅(塗布面において塗料がY軸方向に広がる傾向があっても、右サイドライナー133及び第3テールライナー263の堰面263f(突条263tのY軸に略垂直な平面に沿った外面(第3テールライナー263のY軸方向に関する(右)端面を形成する。)を含んでなる。)により広がりが制限される。)で塗布面に塗料を流下させ、本塗布器201の後方(矢印X2方向)に塗料を塗布できる。
【0057】
このように、本塗布器201を前進(矢印X1方向)させつつ、開口209aを形成することで、容器104内部に貯留されている塗料を塗布面に塗布することができる(例えば、
図25において、塗布面251のうち、X軸に平行な一対の直線e2、e3の間に存し本塗布器201の後方(矢印X2方向)に存する領域253aに塗料を塗布することができる。)。従って、本塗布器201を前進(矢印X1方向)させつつ、全幅状態においては、開口209から塗料を塗布面に流下させてX軸に平行な一対の直線e1、e2の間に存する領域253に塗料を幅広く塗布することができると共に、一部幅状態においては、開口209aから塗料を塗布面に流下させてX軸に平行な一対の直線e2、e3(直線e1、e2の間の距離よりも小さい)の間に存する領域253aに塗料を幅狭に塗布することができる。
なお、一部幅状態においても、基端部121a、123aを上げる方向(
図21、
図26及び
図27において矢印Qbにて示す。)に開閉アーム部121、123を回動させることで、前板213及びそれに取り付けられた第1後板214を容器104に対して後方向(矢印X2方向)に移動させ開口209aを閉じることができる(閉鎖状態。塗料塗布を中止)。
【0058】
以上説明の通り、本塗布器201は、塗布面251(ここでは道路面又は駐車場面等)に沿う第1方向(ここでは前方向(矢印X1方向))に移動しつつ、塗料(ここでは加熱溶融型の標示塗料組成物)を流出させる塗料開口(ここでは開口209、開口209a)から塗布面251に向かって塗料を流出させ塗布面251に塗料を付着させることで、第1方向(前方向(矢印X1方向))に沿って塗布面251に塗料を塗布する塗布装置であって、塗布面251に対して平行な仮想上の平面である仮想平面への塗料開口(開口209、開口209a)の垂直投影像である塗料開口投影像(
図29(a)に、塗料開口たる開口209の垂直投影像である塗料開口投影像209iを示し、
図29(b)に、塗料開口たる開口209aの垂直投影像である塗料開口投影像209aiを示す。なお、理解及び説明を容易にするために、塗料開口投影像209i及び塗料開口投影像209aiいずれにも斜線を付している。)の第1方向(前方向(矢印X1方向))に対して垂直な方向(ここではY軸方向)である幅方向(Y軸方向)への最大寸法(
図29において、塗料開口投影像209iについては最大寸法dy1であり(
図29(a))、塗料開口投影像209aiについては最大寸法dy2である(
図29(b))。)が、少なくとも異なる2以上の値(ここではdy1とdy2との2の値。ただしdy1>dy2である。)をとり得るものである、塗布装置である。
【0059】
本塗布器201においては、下方に形成された容器開口(ここでは底部開口104b)を有し塗料を収容する塗料容器(ここでは容器104)と、容器開口(底部開口104b)を閉鎖した閉鎖状態(
図9乃至
図15の状態)から容器開口(底部開口104b)に対して開閉部材移動方向(ここではX軸に沿った矢印X1方向)に相対的に移動することで容器開口(底部開口104b)の少なくとも一部を開放し塗料開口(開口209、開口209a)を形成する開閉部材(ここでは底板211)と、を備えてなるものである。
本塗布器201においては、開閉部材移動方向(ここではX軸に沿った矢印X1方向)が、第1方向の成分を有する(ここでは第1方向と開閉部材移動方向とは平行である。)ものである。
【0060】
本塗布器201においては、開閉部材(底板211)が、少なくとも塗料開口(開口209、開口209a)を規定する部分(ここでは閉塞面214d、216d)が幅方向(Y軸方向)に分割され相対的に移動が可能な第1部分(ここでは第2後板216)と第2部分(ここでは前板213とそれに取り付けられた第1後板214とを含んでなる。)とを含んでなり、第1部分(第2後板216)が容器開口(底部開口104b)の一部を開放し第1塗料開口部分(
図22において、閉塞面216dと塗料容器(ここでは容器104)との間に形成された開口部分)を形成すると共に第2部分(前板213とそれに取り付けられた第1後板214とを含んでなる。)が容器開口(底部開口104b)の一部を開放し第2塗料開口部分(
図22において、閉塞面214dと塗料容器(ここでは容器104)との間に形成された開口部分)を形成する第1部分(第2後板216)と第2部分(前板213とそれに取り付けられた第1後板214とを含んでなる。)との相対位置が変化不可能な全幅状態(
図22乃至
図24に示された状態)と、全幅状態(
図22乃至
図24に示された状態)から第1部分(第2後板216)が第2部分(前板213とそれに取り付けられた第1後板214とを含んでなる。)に対して相対的に移動し第1部分(第2後板216)が第1塗料開口部分を形成しないと共に第2部分(前板213とそれに取り付けられた第1後板214とを含んでなる。)が第2塗料開口部分(
図25において、閉塞面214dと塗料容器(ここでは容器104)との間に形成された開口部分)を形成する前記幅方向(Y軸方向)への最大寸法(dy2)が全幅状態(
図22乃至
図24に示された状態)よりも小さい(dy2<dy1)一部幅状態(
図25乃至
図28に示された状態)と、をとりうるものである。
【0061】
本塗布器201においては、閉鎖状態(
図9乃至
図15の状態)から全幅状態(
図22乃至
図24に示された状態)への遷移においては、第1部分(第2後板216)と第2部分(前板213とそれに取り付けられた第1後板214とを含んでなる。)との相対的位置が一定であり、閉鎖状態(
図9乃至
図15の状態)から一部幅状態(
図25乃至
図28に示された状態)への遷移においては、第1部分(第2後板216)と塗料容器(容器104)との相対的位置が一定であり、第2部分(前板213とそれに取り付けられた第1後板214とを含んでなる。)と容器開口(底部開口104b)との相対的位置が変化するものである。
本塗布器201においては、閉鎖状態(
図9乃至
図15の状態)から一部幅状態(
図25乃至
図28に示された状態)への遷移においては、第1部分(第2後板216)と第2部分(前板213とそれに取り付けられた第1後板214とを含んでなる。)とが液密的に互いに摺動するものである(第2後板216の当接上面216aaが、前板213の下面213bに液密的に摺動する。)。
【0062】
本塗布器201においては、開閉部材(底板211)が、第2部分を構成する板状の閉鎖本体板(前板213とそれに取り付けられた第1後板214とを含んでなる。)と、閉鎖本体板(前板213とそれに取り付けられた第1後板214とを含んでなる。)に対して開閉部材移動方向(ここではX軸に沿った矢印X1方向)に相対的に移動可能な第1部分を構成する閉鎖補助板(第2後板216)と、を含んでなるものである。
【0063】
本塗布器201においては、全幅状態(
図22乃至
図24に示された状態)における第1部分(第2後板216)と第2部分(前板213とそれに取り付けられた第1後板214とを含んでなる。)との相対的位置を保持する第1部分(第2後板216)と第2部分(前板213とそれに取り付けられた第1後板214とを含んでなる。)とを互いに係止する係止手段(ここでは前板213と第2後板216とを取り付ける第2取付ボルト212b)を備えてなる。
本塗布器201においては、前記相対的位置(全幅状態(
図22乃至
図24に示された状態)における第1部分(第2後板216)と第2部分(前板213とそれに取り付けられた第1後板214とを含んでなる。)との相対的位置)を、一部幅状態(
図25乃至
図28に示された状態)における第1部分(第2後板216)と第2部分(前板213とそれに取り付けられた第1後板214とを含んでなる。)との相対的位置に変化させるように第1部分(第2後板216)及び/又は第2部分(前板213とそれに取り付けられた第1後板214とを含んでなる。)を付勢する付勢手段(ここでは付勢具271)を備えるものである(ここでは第1部分(第2後板216)を付勢する。)。
本塗布器201においては、第1部分(第2後板216)が、全幅状態(
図22乃至
図24に示された状態)において塗料開口(開口209)を規定する第1移動端部(ここでは閉塞面216d)を有し、付勢手段(付勢具271)は、第1移動端部(閉塞面216d)が第1塗料開口部分(全幅状態において、閉塞面216dと塗料容器(ここでは容器104)との間に形成された開口部分)を閉じる方向(ここでは後方(矢印X2方向))に移動するよう第1部分(第2後板216)を付勢するものである。
本塗布器201においては、付勢手段(付勢具271)は、第1部分(第2後板216)を塗料容器(容器104)に対して付勢する圧縮バネ(付勢棒273を後方(矢印X2方向)に向けて付勢するために付勢本体部275に内蔵されている圧縮バネ)を含んでなるものである。
【0064】
本塗布器201においては、一部幅状態(
図25乃至
図28に示された状態)において塗料開口(開口209a)から塗布面251に向かって流出し塗布面251に塗布される塗料により描かれる線の両縁(ここでは直線e2、e3に沿う)のうち第1部分(第2後板216)に近い縁(直線e3に沿う縁)に沿って、塗布面251に対し垂直な平面の一部に沿う壁面(ここでは堰面263f)を有する堰部材(ここでは第3テールライナー263)を着脱自在に備えるものである。
本塗布器201においては、第1部分(第2後板216)が、全幅状態(
図22乃至
図24に示された状態)において塗料開口(開口209)を規定する第1移動端部(閉塞面216d)を有し、第2部分(前板213とそれに取り付けられた第1後板214とを含んでなる。)が、全幅状態(
図22乃至
図24に示された状態)及び一部幅状態(
図25乃至
図28に示された状態)において塗料開口(開口209a)を規定する第2移動端部(ここでは閉塞面214d)を有し、塗布面251に対し前記垂直な平面(その一部に前記壁面(ここでは堰面263f)が沿う平面)が、一部幅状態(
図25乃至
図28に示された状態)における第1移動端部(閉塞面216d)の第2部分(前板213とそれに取り付けられた第1後板214とを含んでなる。)側の端の位置を通過するものである。
本塗布器201においては、第1部分(第2後板216)が、全幅状態(
図22乃至
図24に示された状態)において塗料開口(開口209)を規定する第1移動端部(閉塞面216d)を有し、第2部分(前板213とそれに取り付けられた第1後板214とを含んでなる。)が、全幅状態(
図22乃至
図24に示された状態)及び一部幅状態(
図25乃至
図28に示された状態)において塗料開口(開口209a)を規定する第2移動端部(ここでは閉塞面214d)を有し、前記壁面(堰面263f)が、一部幅状態(
図25乃至
図28に示された状態)における第1移動端部(閉塞面216d)の第2部分(前板213とそれに取り付けられた第1後板214とを含んでなる。)側の端の位置を通過するものである。
【0065】
本塗布器201においては、開閉部材移動方向(ここではX軸に沿った矢印X1方向)が塗布面251と略平行なものである。
本塗布器201においては、前記塗布面251が道路面又は駐車場面であり、前記塗布装置(本塗布器201)が、道路面又は駐車場面における区画や位置を表示するための線を描くものである。
本塗布器201においては、前記塗料が、加熱溶融型の標示塗料組成物である。
【符号の説明】
【0066】
101 従来の区画線塗布器
103 塗布器本体
104 容器
104a 上部開口
104b 底部開口
104c、104d 内面
104f 傾斜面
104k 嵌入溝
104n 後外面
109 開口
111 底板
112 底板取付ボルト
113 前板
113k 突条
115 後板
115b 後縁
117a、117b 取付部
117ab、117bb 連結ボルト
121、123 開閉アーム部
121a、123a 基端部
121b、123b 先端部
121f、123f 長穴
121p、123p 回動支持ピン
133 右サイドライナー
133b 下縁
135 左サイドライナー
135b 下縁
137 テールライナー
137a 一方側
137b 他方側
137bb 下面
138、138a、138b テールライナー取付ボルト
151 塗布面
153 領域
201 本塗布器
203 塗布器本体
209、209a 開口
209i、209ai 塗料開口投影像
211 底板
212a 第1取付ボルト
212b 第2取付ボルト
213 前板
213b 下面
213e 後縁
213fa、213fb 側面
213ha ボルト穴
213hb ボルト穴
213k 突条
214 第1後板
214aa 当接上面
214d 閉塞面
214h ボルト穴
216 第2後板
216aa 当接上面
216d 閉塞面
216h ボルト穴
217a、217b 取付部
217ab、217bb 連結ボルト
251 塗布面
253 領域
261 第1テールライナー
261a 一方側
261b 他方側
261bb 下面
261h ボルト貫入穴
262 第2テールライナー
262a 一方側
262b 他方側
262bb 下面
262h ボルト貫入穴
263 第3テールライナー
263a 一方側
263b 他方側
263bb 下面
263f 堰面
263h ボルト貫入穴
263t 突条
263tb 下面
271 付勢具
273 付勢棒
275 付勢本体部