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特開2022-64811反射型マスク及び反射型マスクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064811
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】反射型マスク及び反射型マスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20220419BHJP
【FI】
G03F1/24
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064242
(22)【出願日】2021-04-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2020173230
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】市川 顯二郎
(72)【発明者】
【氏名】合田 歩美
(72)【発明者】
【氏名】中野 秀亮
(72)【発明者】
【氏名】山形 悠斗
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA02
2H195BA10
2H195BB20
2H195BB30
2H195BC05
2H195BC19
2H195CA01
2H195CA20
2H195CA22
2H195CA24
(57)【要約】
【課題】本発明は、射影効果を低減可能であり、かつ水素ラジカル耐性を十分に備える反射型マスク及び反射型マスクの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態に係る反射型マスク100は、基板11と、基板11上に形成された多層膜構造を有するEUV光を反射する反射膜12と、反射膜12上に形成され、反射膜12を保護する保護膜13と、保護膜13上に形成されたEUV光を吸収する吸収膜パターン14aと、吸収膜パターン14a上に形成された酸化皮膜15と、を備え、吸収膜パターン14aは、Snと、Sn以外の金属元素とを含み、且つSn以外の金属元素の合計原子量に対して、Snの原子量比(Sn/Sn以外の金属元素)が1以上20未満の範囲内であり、酸化皮膜15は、水素ラジカルに対して耐性を有しており、吸収膜パターン14aの表面及び側面に形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された多層膜構造を有するEUV光を反射する反射膜と、
前記反射膜上に形成され、該反射膜を保護する保護膜と、
前記保護膜上に形成されたEUV光を吸収する吸収膜と、
前記吸収膜上に形成された酸化皮膜と、を備え、
前記吸収膜は、Snと、Sn以外の金属元素とを含み、且つ前記Sn以外の金属元素の合計原子量に対して、前記Snの原子量比(Sn/Sn以外の金属元素)が1以上20未満の範囲内であり、
前記酸化皮膜は、水素ラジカルに対して耐性を有しており、前記吸収膜の表面及び側面に形成されることを特徴とする反射型マスク。
【請求項2】
基板と、
前記基板上に形成された多層膜構造を有するEUV光を反射する反射膜と、
前記反射膜上に形成され、該反射膜を保護する保護膜と、
前記保護膜上に形成されたEUV光を吸収する吸収膜と、
前記吸収膜上に形成された酸化皮膜と、を備え、
前記吸収膜は、Snを50原子%以上含み、
前記酸化皮膜は、水素ラジカルに対して耐性を有しており、前記吸収膜の表面及び側面に形成されることを特徴とする反射型マスク。
【請求項3】
前記酸化皮膜は、Cr、Ta、Nb、Ti、Al、V、及びHfの酸化物を少なくとも1種類含む化合物を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の反射型マスク。
【請求項4】
前記酸化皮膜は、Snを含まない、または前記酸化皮膜は、Snを含み、そのSnの含有量は、Cr、Ta、Nb、Ti、Al、V、及びHfの酸化物を少なくとも1種類含む化合物の含有量よりも少ないことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の反射型マスク。
【請求項5】
前記吸収膜は、前記Sn以外の金属元素として、Cr、Ta、Nb、Ti、Al、V、及びHfのうち少なくとも1種類を含む化合物を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の反射型マスク。
【請求項6】
前記酸化皮膜は、前記酸化皮膜の膜厚が1nm以上であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の反射型マスク。
【請求項7】
前記吸収膜は、半金属元素である、B、C、P、Si、及びGeを含まない、または前記半金属元素のうち少なくとも1種類を含み、且つ前記Sn以外の金属元素の合計原子量に対して、前記半金属元素の合計原子量比(半金属元素/Sn以外の金属元素)が0以上1以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の反射型マスク。
【請求項8】
前記吸収膜は、Cr、Ta、Nb、Ti、Al、V、及びHfのうち少なくとも1種類の化合物を5原子%より多く含有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の反射型マスク。
【請求項9】
前記吸収膜は、フッ素系ガスまたは塩素系ガスでエッチング可能であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の反射型マスク。
【請求項10】
前記吸収膜と前記酸化皮膜との合計膜厚は、45nm以下であり、
OD値(Optical Density:光学濃度)は、1.0以上であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の反射型マスク。
【請求項11】
基板と、
前記基板上に形成された多層膜構造を有するEUV光を反射する反射膜と、
前記反射膜上に形成された該反射膜を保護する保護膜と、
前記保護膜上に形成されたEUV光を吸収する吸収膜と、
前記吸収膜上に形成された酸化皮膜と、を備えた反射型マスクの製造方法であって、
前記吸収膜は、Snと、Sn以外の金属元素とを含み、且つ前記Sn以外の金属元素の合計原子量に対して、前記Snの原子量比(Sn/Sn以外の金属元素)が1以上20未満の範囲内であり、
前記酸化皮膜は、水素ラジカルに対して耐性を有しており、前記吸収膜の表面及び側面に形成されることを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【請求項12】
基板と、
前記基板上に形成された多層膜構造を有するEUV光を反射する反射膜と、
前記反射膜上に形成された該反射膜を保護する保護膜と、
前記保護膜上に形成されたEUV光を吸収する吸収膜と、
前記吸収膜上に形成された酸化皮膜と、を備えた反射型マスクの製造方法であって、
前記吸収膜は、Snを50原子%以上含み、
前記酸化皮膜は、水素ラジカルに対して耐性を有しており、前記吸収膜の表面及び側面に形成されることを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【請求項13】
前記酸化皮膜は、前記吸収膜を酸化させて形成されることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の反射型マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、反射型マスク及び反射型マスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波長の短いEUV光を用いたEUV露光装置を使用することによりフォトリソグラフィの微細化を可能にした反射型マスクは、EUV光の入射において光軸を傾斜させることから、入射したEUV光がフォトマスクのパターン(吸収膜パターン)の影をつくるために転写性能が悪化する、いわゆる「射影効果」と呼ばれる問題が発生するという課題があった。
これに対し、吸収膜に消衰係数kが高い材料を用いてEUV反射率を抑えることによって、従来より膜厚が薄い吸収膜の形成が可能となり、射影効果を低減する反射型マスクが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/159785号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
EUV露光装置では、コンタミ(不純物の混入)によるチャンバー内の汚染を防ぐため、水素ラジカルによるクリーニングが行われる。つまり、反射型マスクは水素ラジカル還元に対して耐性を有する材料を用いて形成する必要がある。しかし、消衰係数kが高い材料の中には水素ラジカル耐性が低い材料もあり、水素ラジカル耐性が低い材料により形成された反射型マスクは長期間の使用に耐えられないという問題があった。
【0005】
本開示は、射影効果を低減可能であり、かつ水素ラジカル耐性を十分に備える反射型マスク及び反射型マスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る反射型マスクは、基板と、前記基板上に形成された多層膜構造を有するEUV光を反射する反射膜と、前記反射膜上に形成され、該反射膜を保護する保護膜と、前記保護膜上に形成されたEUV光を吸収する吸収膜と、前記吸収膜上に形成された酸化皮膜と、を備え、前記吸収膜は、Snと、Sn以外の金属元素とを含み、且つ前記Sn以外の金属元素の合計原子量に対して、前記Snの原子量比(Sn/Sn以外の金属元素)が1以上20未満の範囲内であり、前記酸化皮膜は、水素ラジカルに対して耐性を有しており、前記吸収膜の表面及び側面に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様に係る反射型マスクであれば、射影効果を低減可能であり、かつ水素ラジカル耐性を十分に備える反射型マスク及び反射型マスクの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る反射型マスクの一構成例を模式的に示す断面図である。
図2】EUV光の波長における各金属の光学定数を示すグラフである。
図3】本実施形態に係る水素ラジカル耐性評価方法を示す概念図である。
図4】本実施形態に係る反射型マスクの製造工程を示す概略断面図である。
図5】本実施形態に係る反射型マスクの製造工程を示す概略断面図である。
図6】本実施形態に係る反射型マスクの製造工程を示す概略断面図である。
図7】本実施形態に係る反射型マスクの製造工程を示す概略断面図である。
図8】本実施形態に係る反射型マスクの製造工程を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
ここで、図面に示す構成は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率などは現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本開示の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造などが下記のものに限定されるものでない。本開示の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
(反射型マスクの構成)
本開示の実施形態に係る反射型マスクの基本構成について、図1を用いて説明する。図1は、本開示の実施形態に係る反射型フォトマスク(反射型マスク)100の一構成例を説明するための断面図である。
図1に示すように、本開示の一実施形態に係る反射型フォトマスク100は、基板11の一方の面側に、多層反射膜12、保護膜13、吸収膜パターン14aがこの順に積層されている。なお、吸収膜パターン14aは、後述する吸収膜14をパターニングすることにより形成される。また、吸収膜パターン14aの表面及び側面に酸化皮膜15が形成されている。以下、各層について詳細に説明する。
【0011】
(基板)
基板11は、反射型フォトマスク100の基材となる層である。本実施形態に係る基板11には、平坦なSi基板や合成石英基板等を用いることができる。また、基板11には、チタンを添加した低熱膨張ガラスを用いることができるが、熱膨張率の小さい材料であれば、本実施形態ではこれらに限定されるものではない。
また、図8に示すように、基板11の多層反射膜12を形成していない面に裏面導電膜16を形成することができる。裏面導電膜16は、反射型フォトマスク100を露光機に設置するときに静電チャックの原理を利用して固定するための膜である。
【0012】
(多層反射膜)
多層反射膜12は、基板11上に形成される多層膜構造を有する層であり、反射型フォトマスク100において露光光であるEUV光(極端紫外光)を反射するために設けられた層である。
多層反射膜12は、EUV光に対する屈折率の大きく異なる材料の組み合わせによる複数の反射膜から構成されている。例えば、多層反射膜12は、Mo(モリブデン)とSi(シリコン)、またはMo(モリブデン)とBe(ベリリウム)といった組み合わせの層を40周期程度繰り返し積層することにより形成することができる。
【0013】
(保護膜)
保護膜13は、多層反射膜12上に形成される層であり、吸収膜パターン14aをエッチングによって形成する際に、多層反射膜12へのダメージを防ぐエッチングストッパとして機能する層である。なお、多層反射膜12の材質やエッチング条件により、保護膜13はなくてもかまわない。本実施形態に係る保護膜13は、吸収膜14のパターン形成の際に行われるドライエッチングに対して耐性を有する材質で形成されている。
【0014】
(吸収膜)
吸収膜14は、保護膜13上に形成される層であり、反射型フォトマスク100において露光光であるEUV光を吸収する層である。また、吸収膜14は、転写するための微細パターンである吸収層パターン(転写パターン)を形成する層である。
【0015】
図1に示すように、反射型フォトマスクブランクの吸収膜14の一部を除去することにより、即ち吸収膜14をパターニングすることにより、反射型フォトマスク100の吸収パターン(吸収膜パターン14a)が形成される。EUVリソグラフィにおいて、EUV光は斜めに入射し、多層反射膜12で反射されるが、吸収膜パターン14aが光路の妨げとなる射影効果により、ウェハ(半導体基板)上への転写性能が悪化することがある。この転写性能の悪化は、EUV光を吸収する吸収膜パターン14aの厚さを薄くすることで低減される。吸収膜パターン14aの厚さを薄くするためには、従来の材料よりEUV光に対する吸収性の高い材料、つまり波長13.5nmに対する消衰係数kの高い材料を適用することが好ましい。
【0016】
図2は、各金属材料のEUV光の波長13.5nmに対する光学定数を示すグラフである。図2のグラフの横軸は屈折率nを表し、縦軸は消衰係数kを示している。従来の吸収膜14の主材料であるタンタル(Ta)の消衰係数kは0.041である。タンタル(Ta)より大きい消衰係数kを有する化合物材料であれば、従来に比べて吸収膜14の厚さを薄くすることが可能である。消衰係数kが0.06以上である材料を主成分として使用すれば、吸収膜14の厚さを十分に薄くすることが可能であり、射影効果を低減できる。
【0017】
上記のような光学定数(nk値)の組み合わせを満たす材料としては、図2に示すように、例えば、銀(Ag)、インジウム(In)、錫(Sn)、ニッケル(Ni)、テルル(Te)などが存在し、それらの消衰係数kは0.07から0.08の範囲内にある。上記材料であれば、その消衰係数kを、従来の吸収膜材料であるタンタル(Ta)の消衰係数0.041に対して約2倍と大幅に大きくできるため、高い光吸収性が得られる。しかしながら、これらの高い光吸収性を有する材料は、ドライエッチング性が悪い(換言すると、これらの元素のハロゲン化物の揮発性が低い)ために反射型マスクに加工することが困難であり、反射型マスクとしての実用性に乏しいものがほとんどである。これらの材料に対し、消衰係数kが高いSnは、フッ素系ガスまたは塩素系ガスに対するドライエッチングレートが高く、加工性の良い吸収膜材料である。なお、反射型フォトマスクを備えるEUV露光装置において、フォトマスクが水素ラジカル環境下にさらされると、単体のSnは水素ラジカルと反応し気体であるSnHへと変換されてしまい、吸収膜パターン14aの膜減りが生じてしまう。この対策として、吸収膜パターン14aの表面及び側面を後述する酸化皮膜15で覆うことにより、フォトマスクの長寿命化を図ることができる。
【0018】
吸収膜14には、Snと、Sn以外の金属元素Mとを含んだ化合物材料を用いることができる。吸収膜14は、Sn以外の金属元素Mの合計原子量に対して、主成分であるSnの原子量比(以下、単に「Sn/M」とも表記する)が1以上であることが望ましい。吸収膜14におけるSn/Mが1以上である場合には、射影効果を低減し、転写性能を向上させることができる。なお、本実施形態において、「主成分」とは、吸収膜14を構成する元素(成分)のうち、最も含有率が高い元素(成分)を意味する。
【0019】
また、吸収膜14には、Sn以外の金属元素Mとして、Cr、Ta、Nb、Ti、Al、V、及びHfを少なくとも1種類を含んだ化合物材料を用いることができる。これらの化合物の混合比は、水素ラジカル耐性を有する酸化皮膜15が安定して形成される混合比である必要がある。従って吸収膜14における上記化合物材料(Sn以外の金属元素M)の混合比は上記のSn/Mの比率から、最高で20未満である必要がある。つまり、水素ラジカル耐性を有する酸化皮膜15を安定して形成するためには、吸収膜14におけるSn/Mは20未満であることが望ましい。また、吸収膜14におけるSn/Mは、より好ましくは、2以上6以下の範囲内である。吸収膜14において上記化合物材料(Sn以外の金属元素M)の含有量を、Sn/Mが2以上6以下となるように調整した場合には、酸化皮膜15をより安定的に形成することができる。
また、吸収膜14は、Snを50原子%以上含有していてもよい。吸収膜14がSnを50原子%以上含むことにより、射影効果を低減し、転写性能を向上させることができる。
【0020】
また、吸収膜14がSnを50原子%以上含んだ場合であっても、上述したSn以外の金属元素M、即ちCr、Ta、Nb、Ti、Al、V、及びHfを少なくとも1種類を含んだ化合物材料を吸収膜14に添加することができる。Snを50原子%以上含んだ吸収膜14における上記化合物材料(Sn以外の金属元素M)の混合比は、吸収膜14の合計原子量に対して5原子%よりも大きい必要があり、より好ましくは、15原子%以上である。吸収膜14において上記化合物材料を5原子%よりも多く含む場合、酸化皮膜15を安定的に形成することができる。また、吸収膜14において上記化合物材料を15原子%以上含む場合、酸化皮膜15をより安定的に形成することができる。
なお、Sn以外の金属元素Mは、上述した元素のうちCr、Nb、Hfが安定した酸化皮膜を形成するためより好ましい。
【0021】
吸収膜14には上記記載の元素以外に、半金属元素としてB、P、C、Si及びGeから選ばれる少なくとも1種類の元素を含んでいてもよい。これらの元素(半金属元素)を吸収膜14に含めることで酸化皮膜15をより安定的に形成することができる。これらの元素の含有量は、Sn以外の金属元素Mの合計原子量より多いと酸化皮膜15の形成が不安定になるため、Sn以外の金属元素Mの合計原子量より少ない必要がある。つまり、酸化皮膜15を安定的に形成するためには、Sn以外の金属元素Mの合計原子量に対する半金属元素Lの合計原子量比(以下、単に「L/M」とも表記する)は、L/Mが0以上1以下の範囲内であることが望ましく、より好ましくは0.1以上0.5以下の範囲内である。吸収膜14におけるL/Mが上記範囲内である場合には、酸化皮膜15をより安定的に形成することができる。
【0022】
なお、吸収膜14は、上述した半金属元素を含まなくてもよい。その場合には、Sn以外の金属元素Mの合計原子量に対する半金属元素Lの合計原子量比であるL/Mは、0となる。
また、半金属元素は、上述した元素のなかでもB、P、Siがより好ましく、迅速に酸化皮膜を形成できるため、Pが最も好ましい。
【0023】
また、吸収膜14は、Sn/MとL/Mとに関して、上述した数値範囲内であれば、Sn以外の金属元素Mや半金属元素L以外の元素として、例えばOやNを含んでいてもよい。
【0024】
吸収膜14は、微細なパターンを形成するためにフッ素系ガスまたは塩素系ガスでエッチング可能な材料である必要がある。吸収膜14を構成可能な材料であるSn、Cr、Ta、Nb、Ti、Al、V、Hf、B、P、C、Si及びGeはいずれもフッ素系ガスまたは塩素系ガスでエッチング可能な材料であり、微細な吸収膜パターン14aを形成することができる。
【0025】
ここで、多層反射膜12と吸収膜14との光強度のコントラストを表す指標である光学濃度(OD:Optical Density)値について説明する。多層反射膜12からの反射光の強度をRmとし、吸収膜14からの反射光の強度をRaとしたとき、OD値は、以下の式(1)で規定される。
OD=-log(Ra/Rm) ・・・式(1)
【0026】
OD値は大きいほうがコントラストは良く、高い転写性が得られる。反射型フォトマスクにおいてパターン転写にはOD>1が必要であるが、従来膜より高い転写性能を得るために、OD値は1.5以上であると、更に好ましい。
【0027】
吸収膜14(吸収膜パターン14a)の膜厚は、45nm以下であることが好ましい。吸収膜14の膜厚が45nmである場合、射影効果を低減し、転写性能を向上させることができる。また、吸収膜14は、パターン転写が可能なコントラストを維持するため、OD値が1以上になるよう計算された混合比であることが好ましい。
【0028】
(酸化皮膜)
酸化皮膜15は、水素ラジカルに対して耐性を有しており、吸収膜パターン14aの表面及び側面に形成された膜である。すなわち酸化皮膜15は、吸収膜パターン14aの露出した部分を覆うように形成された膜である。
酸化皮膜15は吸収膜パターン14aを形成したのちに、例えば、吸収膜パターン14aの表面を酸化することで形成することができる。従って、吸収膜14にはCr、Ta、Nb、Ti、Al、V、及びHfを少なくとも1種類含む化合物が含有されていれば好ましい。吸収膜14にCr、Ta、Nb、Ti、Al、V、及びHfを少なくとも1種類含む化合物が含有されていれば、酸化皮膜15にCr、Ta、Nb、Ti、Al、V、及びHfを少なくとも1種類含む化合物を容易に添加することができる。
【0029】
このように、酸化皮膜15は、Cr、Ta、Nb、Ti、Al、V、及びHfの酸化物を少なくとも1種類含む化合物を含有していることが好ましい。また、上述した元素のないでもCr、Nb、Hfが安定した酸化皮膜を形成するためより好ましい。
また、酸化皮膜15は、Snを含んでいなくてもよい。また、酸化皮膜15は、Snを含み、そのSnの含有量は、Cr、Ta、Nb、Ti、Al、V、及びHfの酸化物を少なくとも1種類含む化合物の含有量よりも少なくてもよい。
【0030】
酸化皮膜15の形成方法としては、硝酸や硫酸などの薬液による化学的処理または硝酸や硫酸等の薬液中でのアノード分極などの電気化学的処理に代表される、薬液を用いるウェットプロセスまたは、酸素プラズマなどの酸化性ガスを用いたドライプロセスでの方法が挙げられる。酸化皮膜15を形成するためには上記以外の薬液やガスを用いてもよいし、いくつかの方法を組み合わせてもよい。
【0031】
現在のEUV露光装置では、コンタミによるチャンバー内の汚染を防ぐため、水素ラジカルによるクリーニングが行われる。このため、反射型フォトマスクは水素ラジカルに対する耐久性が低いと、マスクの寿命が短くなってしまう。反射型フォトマスクの長寿命化を図るために、反射型フォトマスクは水素ラジカル耐性の高い化合物材料で形成される必要がある。吸収膜14の材料として用いられるSnは、消衰係数kが高い材料であるが、水素ラジカル環境下において、単体のSnが水素ラジカルと反応し気体であるSnHへと変換されてしまい、吸収膜パターン14aの膜減りが生じるという問題がある。
【0032】
水素ラジカル環境下で反射型フォトマスクを使用するためには、Snを水素ラジカルに直接曝されなければよい。具体的には、例えば水素ラジカルに対して耐性のある材料により形成された酸化皮膜15が、Snを含む吸収膜パターン14aの表面上に存在すれば、Snは水素ラジカルに曝されず、長時間水素ラジカル環境下において使用することが可能となる。
【0033】
水素ラジカルに対して耐性のある材料としては、例えば図3に示す装置を用い、水素の流量100sscm、2.45GHzのMWP(Micro Wave Plasma:マイクロ波プラズマ)を使って電極301間の距離を18mmに設定した条件で励起された水素ラジカル環境下で、膜減り1nm以下となる化合物材料が好ましい。なお、図3では、サンプル(試験対象)を「302」で示し、チャンバーを「300」で示している。
【0034】
水素ラジカル耐性を備える酸化皮膜15を形成する材料としてはCr、Ta、Nb、Ti、Al、V、及びHfの酸化物が挙げられる。この酸化皮膜中には上記金属元素やO以外の元素として、Fのような水素ラジカルに対して不活性の元素が含まれていてもよい。
【0035】
酸化皮膜15を形成する元素は酸化されやすい材料であるため、吸収膜14の表面が自然酸化されてしまう場合がある。これらの酸化膜は非常に安定な材料であるため、エッチングレートが悪化し、微細なパターンの形成が不利になる場合がある。その場合、例えば、吸収膜14上に自然酸化を防ぐハードマスク層を設けてもよい。
このハードマスク層に使用される材料としては、SiO、SiON、TaO、TaN、TaBN、CrN、CrON、CrOなどの材料が好ましい。
【0036】
酸化皮膜15の膜厚は、1nm以上10nm以下が好ましい。酸化皮膜15の膜厚が1nm以上である場合、安定した水素ラジカル耐性を備えることができる。酸化皮膜15の膜厚が10nm以下である場合、吸収膜14の射影効果低減やEUV反射率、コントラスト等の光学特性への影響を抑えることができる。また、酸化皮膜15の膜厚は、ラジカル耐性と光学特性変化のバランスが最もとれることから2nm以上5nm以下がより好ましい。
【0037】
また、吸収膜14と酸化皮膜15との合計膜厚は、45nm以下であればより好ましい。吸収膜14と酸化皮膜15との合計膜厚が45nm以下である場合、射影効果を低減し、転写性能を向上させることができる。また、パターン転写が可能なコントラストを維持するため、吸収膜14と酸化皮膜15の全体として、OD値が1以上になるように設定されていれば好ましい。
【0038】
ここで、射影効果の影響を評価するために、既存のTa膜(下層にTaN層を備え、上層にTaO層を備えた積層膜:膜厚60nm)及びTiを含むSn膜(膜厚40nm)上に形成されたTiOの酸化皮膜(膜厚5nm)を有する吸収膜のそれぞれを使用したときに、HVバイアス値がどのように変化するかをシミュレーションにより比較した。HVバイアス値は、マスクパターンの向きに依存した転写パターンの線幅差、つまり、水平(Horizontal:H)方向の線幅と垂直(Vertical:V)方向の線幅との差のことである。H方向の線幅は、入射光と反射光とが作る面(以下、「入射面」と称する場合がある)に直交する線状パターンの線幅を示し、V方向の線幅は、入射面に平行な線状パターンの線幅を示している。つまり、H方向の線幅は、入射面に平行な方向の長さであり、V方向の線幅は、入射面に直交する方向の長さである。
【0039】
射影効果により影響を受けるのは、H方向の線幅であり、転写パターンのエッジ部のコントラスト低下やH方向の線幅の減少が生じる。射影効果の影響を受けたパターンは、転写後の線幅が所望の線幅よりも小さくなる。一方、V方向の線幅は、射影効果の影響をほとんど受けない。このため、入射面に垂直な方向の転写パターンの線幅と入射面に平行な方向の転写パターンの線幅とで、線幅差(HVバイアス)が生じる。
【0040】
既存のTa膜及びTiを含むSn膜上に形成されたTiOの酸化皮膜を有する吸収膜のそれぞれのHVバイアス値の比較において、表1の参考例のタンタル(Ta)マスク及び実施例1の反射型フォトマスクを使用した。参考例のタンタル(Ta)マスク及び実施例1の反射型フォトマスクのそれぞれのHVバイアス値を比較したところ、表1に示すように、HVバイアス値は、Ta膜では7.3nmと非常に大きいが、Tiを含むSn膜上に形成されたTiOの酸化皮膜を有する吸収膜では5.7nmと大幅に低減でき、改善されている。このように、本実施形態の反射型フォトマスク100では、吸収膜パターン14aの形成材料にTiを含むSn膜、吸収膜14上に形成されたTiOの酸化皮膜15を有する吸収膜を用いることで、射影効果の影響(HVバイアス)を大幅に低減できることが分かる。
【0041】
(反射型マスクの製造方法)
次に、反射型フォトマスク(反射型マスク)の製造方法について図4から図8を用いて説明する。
図4に示すように、反射型フォトマスクブランク200に備えられた吸収膜14の上に、ポジ型化学増幅型レジスト(SEBP9012:信越化学工業株式会社製)を120nmの膜厚にスピンコートで成膜した。その後、110℃で10分間ベークし、レジスト膜17を形成した。
【0042】
次いで、電子線描画機(JBX3030:日本電子株式会社製)によってポジ型化学増幅型レジストで形成されたレジスト膜17に所定のパターンを描画した。その後、110℃、10分間ベーク処理を施し、次いでスプレー現像(SFG3000:シグマメルテック社製)した。これにより、図5に示すように、レジストパターン17aを形成した。
【0043】
次に、図6に示すようにレジストパターン17aをエッチングマスクとして、塩素系ガスを主体としたドライエッチングにより吸収膜14のパターニングを行い、吸収膜パターン14aを形成した。
【0044】
次に、図7に示すように残存したレジストパターン17aの剥離を行い、吸収膜パターン14aを露出させた。本実施形態において、吸収膜14において形成された吸収膜パターン14aは、線幅64nmLS(ラインアンドスペース)パターンとした。この線幅64nmLSパターンは、EUV照射による射影効果の影響が見えやすくなるように、x方向とy方向にそれぞれ設計した。
【0045】
次に、重量濃度90%、液温25度の硫酸溶液を用いて、吸収膜パターン14aの表面を酸化させて、図8に示すように、酸化皮膜15を形成した。このとき、酸化皮膜15が吸収膜パターン14aの露出部分を覆うようにして、吸収膜14の表面及び側面に形成した。こうして、本実施形態に係る反射型フォトマスク100を製造する。
【0046】
<本実施形態の効果>
本実施形態に係る反射型フォトマスク100は、以下の効果を有する。
(1)本実施形態の反射型フォトマスク100において、吸収膜14(吸収膜パターン14a)は、Snと、Sn以外の金属元素Mとを含み、且つSn以外の金属元素Mの合計原子量に対して、Snの原子量比(Sn/Sn以外の金属元素M)が1以上20未満の範囲内である。
この構成によれば、射影効果を低減し、転写性能を向上させることができる。
【0047】
(2)本実施形態の反射型フォトマスク100において、酸化皮膜15は水素ラジカル耐性を有しており、吸収膜14の表面及び側面に形成されている。
この構成によれば、反射型フォトマスク100がラジカル耐性を備え、反射型フォトマスク100の長寿命化を実現することができる。
【0048】
(3)本実施形態の反射型フォトマスク100において、吸収膜14はCr、Ta、Nb、Ti、Al、V、及びHfのうち少なくとも1種類を含む化合物を含有していてもよい。また、吸収膜14はCr、Ta、Nb、Ti、Al、V、及びHfのうち少なくとも1種類を含む化合物を、吸収膜14の合計原子量の5原子%よりも多く含有していてもよい。
この構成によれば、水素ラジカル耐性を備える酸化皮膜15を安定して形成することができる。
【0049】
(4)本実施形態の反射型フォトマスク100において、吸収膜14は半金属元素LであるB、C、P、Si、及びGeのうち少なくとも1種類を含有していてもよい。また、その半金属元素Lの含有量は、Sn以外の金属元素Mの合計原子量に対して、L/Mが0以上1以下の範囲内あってもよい。勿論、本実施形態の反射型フォトマスク100において、吸収膜14は半金属元素LであるB、C、P、Si、及びGeのうち少なくとも1種類を含有していなくてもよい。
この構成によれば、水素ラジカル耐性を備える酸化皮膜15をより安定的に形成することができる。
【0050】
(5)本実施形態の反射型フォトマスク100において、吸収膜14はフッ素系ガスまたは塩素系ガスでエッチング可能であってもよい。
この構成によれば、吸収膜14において微細なパターンを形成することができる。
(6)本実施形態の反射型フォトマスク100において、OD値が1.0以上であってもよい。
この構成によれば、吸収膜14においてパターン転写が可能なコントラストを維持することができる。
【0051】
(7)本実施形態の反射型フォトマスク100において、吸収膜14は、Snを50原子%以上含んでいてもよい。
この構成によれば、射影効果を低減し、転写性能を向上させることができる。
(8)本実施形態の反射型フォトマスク100において、酸化皮膜15は、Cr、Ta、Nb、Ti、Al、V、及びHfの酸化物を少なくとも1種類含む化合物を含有していてもよい。
この構成によれば、水素ラジカル耐性を備える酸化皮膜15を安定して形成することができる。
【0052】
(9)本実施形態の反射型フォトマスク100において、酸化皮膜15は、Snを含まなくてもよい。また、酸化皮膜15は、Snを含み、そのSnの含有量は、Cr、Ta、Nb、Ti、Al、V、及びHfの酸化物を少なくとも1種類含む化合物の含有量より少なくてもよい。
この構成によれば、水素ラジカル耐性を備える酸化皮膜15を安定して形成することができる。
【0053】
(10)本実施形態の反射型フォトマスク100において、酸化皮膜15は、その膜厚が1nm以上であってもよい。
この構成によれば、水素ラジカル耐性を備える酸化皮膜15を安定して形成することができる。
【0054】
(11)本実施形態の反射型フォトマスク100において、吸収膜14と酸化皮膜15との合計膜厚は、45nm以下であってもよい。
この構成によれば、射影効果を低減し、転写性能を向上させることができる。
【実施例0055】
以下、本開示を実施例によりさらに詳しく説明するが、本開示は実施例により何ら限定されるものではない。
<実施例1>
基板として低熱膨張性を有する合成石英基板を用いた。基板の上に、多層反射膜としてシリコン(Si)とモリブデン(Mo)とを一対とする積層膜を40枚積層して形成した。多層反射膜の膜厚は280nmとした。
次に、多層反射膜上に、ルテニウム(Ru)を用いて膜厚が2.5nmになるように保護膜を成膜した。
【0056】
保護膜の上に、錫(Sn)とチタン(Ti)を用いて吸収膜を成膜した。このとき吸収膜は、後述する酸化皮膜との合計膜厚が45nmになるように成膜した。錫(Sn)、チタン(Ti)の原子数比率は、XPS(X線光電子分光法)で測定したところ80.0:20.0であった。従って、Sn/Mは4、L/Mは0であることが分かった。また、XRD(X線回析装置)で測定したところ、わずかに結晶性が見られるものの、アモルファスであることがわかった。
次に、基板の多層反射膜が形成されていない側に、窒化クロム(CrN)を100nmの厚さとなるように裏面導電膜を成膜した。
【0057】
基板上へのそれぞれの膜の成膜は、多元スパッタリング装置を用いた。各々の膜の膜厚は、スパッタリング時間で制御した。
【0058】
次に、吸収膜上にポジ型化学増幅型レジスト(SEBP9012:信越化学工業株式会社製)を120nmの膜厚にスピンコートで成膜し、110度で10分間ベークし、レジスト膜を形成した。
次いで、電子線描画機(JBX3030:日本電子株式会社製)によってポジ型化学増幅型レジストに所定のパターンを描画した。
その後、110度、10分間ベーク処理を施し、次いでスプレー現像(SFG3000:シグマメルテック株式会社製)した。これによりレジストパターンを形成した。
【0059】
次に、レジストパターンをエッチングマスクとして、塩素系ガスを主体としたドライエッチングにより吸収膜のパターニングを行い、吸収膜パターンを形成した。
次に、残ったレジストパターンの剥離を行った。こうして、吸収膜の表面及び側面が露出した吸収膜パターンを形成した。
【0060】
本実施例において、吸収膜パターンは、線幅64nmLS(ラインアンドスペース)パターンとした。この線幅64nmLSパターンは、EUV照射による射影効果の影響が見えやすくなるように、x方向とy方向にそれぞれ設計した。
【0061】
次に、重量濃度90%、液温25度の硫酸溶液を用いて、酸化皮膜を形成した。TEM(透過型電子顕微鏡)で膜厚と組成の確認を行ったところ、酸化皮膜の膜厚は5nm、組成はTi:O=1:2で形成されており、酸化皮膜と吸収膜との合計膜厚は45nmで形成されていることが分かった。以上により、実施例1の反射型フォトマスクを作製した。
【0062】
なお、実施例1の吸収膜について、多層反射膜領域の反射率Rmと、吸収膜領域の反射率Raを、EUV光による反射率測定装置で測定した。その測定結果から、マスク特性であるOD値を計算した結果、表1に示すように、EUV反射率が0.72%、OD値が1.9に作製されていることが分かった。
【0063】
<実施例2>
吸収膜の材料を錫(Sn)とクロム(Cr)に変更して成膜した。このとき、錫(Sn)とクロム(Cr)との原子数比率は、80.0:20.0とした。従って、Sn/Mは4、L/Mは0であることが分かった。これに伴い、酸化皮膜の組成は、Cr:O=2:3となった。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例2の反射型フォトマスクを作製した。
なお、実施例2の反射型フォトマスクは、EUV反射率が0.50%、OD値が2.1であった。
【0064】
<実施例3>
吸収膜の材料を錫(Sn)とニオブ(Nb)に変更して成膜した。このとき、錫(Sn)とニオブ(Nb)との原子数比率は、80.0:20.0とした。従って、Sn/Mは4、L/Mは0であることが分かった。これに伴い、酸化皮膜の組成は、Nb:O=2:3となった。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例3の反射型フォトマスクを作製した。
なお、実施例3の反射型フォトマスクは、EUV反射率が0.34%、OD値が2.3であった。
【0065】
<実施例4>
吸収膜の材料を錫(Sn)とタンタル(Ta)に変更して成膜した。このとき、錫(Sn)とタンタル(Ta)との原子数比率は、80.0:20.0とした。従って、Sn/Mは4、L/Mは0であることが分かった。これに伴い、酸化皮膜の組成は、Ta:O=2:5となった。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例4の反射型フォトマスクを作製した。
なお、実施例4の反射型フォトマスクは、EUV反射率が0.34%、OD値が2.3であった。
【0066】
<実施例5>
吸収膜の材料を錫(Sn)とアルミニウム(Al)に変更して成膜した。このとき、錫(Sn)とアルミニウム(Al)との原子数比率は、80.0:20.0とした。従って、Sn/Mは4、L/Mは0であることが分かった。これに伴い、酸化皮膜の組成は、Al:O=2:3となった。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例5の反射型フォトマスクを作製した。
なお、実施例5の反射型フォトマスクは、EUV反射率が0.25%、OD値が2.4であった。
【0067】
<実施例6>
吸収膜の材料を錫(Sn)とバナジウム(V)に変更して成膜した。このとき、錫(Sn)とバナジウム(V)との原子数比率は、80.0:20.0とした。従って、Sn/Mは4、L/Mは0であることが分かった。これに伴い、酸化皮膜の組成は、V:O=2:5となった。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例6の反射型フォトマスクを作製した。
なお、実施例6の反射型フォトマスクは、EUV反射率が0.39%、OD値が2.2であった。
【0068】
<実施例7>
吸収膜の材料を錫(Sn)とハフニウム(Hf)に変更して成膜した。このとき、錫(Sn)とハフニウム(Hf)との原子数比率は、80.0:20.0とした。従って、Sn/Mは4、L/Mは0であることが分かった。これに伴い、酸化皮膜の組成は、Hf:O=1:2となった。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例7の反射型フォトマスクを作製した。
なお、実施例7の反射型フォトマスクは、EUV反射率が0.44%、OD値が2.2であった。
【0069】
<実施例8>
吸収膜の材料を錫(Sn)とハフニウム(Hf)に変更して成膜した。このとき、錫(Sn)とハフニウム(Hf)との原子数比率は、95.0:5.0とした。従って、Sn/Mは19、L/Mは0であることが分かった。これに伴い、酸化皮膜の組成は、Hf:Sn:O=1:1:2となり、HfOのみの酸化皮膜は形成されなかった。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例8の反射型フォトマスクを作製した。
なお、実施例8の反射型フォトマスクは、EUV反射率が0.25%、OD値が2.4であった。
【0070】
<実施例9>
吸収膜の材料を錫(Sn)とチタン(Ti)に変更して成膜した。このとき、錫(Sn)とチタン(Ti)との原子数比率は、93.8:6.2とした。従って、Sn/Mは15、L/Mは0であることが分かった。これに伴い、酸化皮膜の組成は、Ti:Sn:O=1:1:2となり、TiOのみの酸化皮膜は形成されなかった。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例9の反射型フォトマスクを作製した。
なお、実施例9の反射型フォトマスクは、EUV反射率が0.36%、OD値が2.3であった。
【0071】
<実施例10>
吸収膜の材料を錫(Sn)とチタン(Ti)、ホウ素(B)に変更して成膜した。このとき、錫(Sn)とチタン(Ti)、ホウ素(B)との原子数比率は、90.9:6.1:3.0とした。従って、Sn/Mは15、L/Mは0.5であることが分かった。これに伴い、酸化皮膜の組成は、Ti:O=1:2となった。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例10の反射型フォトマスクを作製した。
なお、実施例10の反射型フォトマスクは、EUV反射率が0.42%、OD値が2.2であった。
【0072】
<実施例11>
吸収膜の材料を錫(Sn)とチタン(Ti)、炭素(C)に変更して成膜した。このとき、錫(Sn)とチタン(Ti)、炭素(C)との原子数比率は、90.9:6.1:3.0とした。従って、Sn/Mは15、L/Mは0.5であることが分かった。これに伴い、酸化皮膜の組成は、Ti:O=1:2となった。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例11の反射型フォトマスクを作製した。
なお、実施例11の反射型フォトマスクは、EUV反射率が0.42%、OD値が2.2であった。
【0073】
<実施例12>
吸収膜の材料を錫(Sn)とチタン(Ti)、リン(P)に変更して成膜した。このとき、錫(Sn)とチタン(Ti)、リン(P)との原子数比率は、90.9:6.1:3.0とした。従って、Sn/Mは15、L/Mは0.5であることが分かった。これに伴い、酸化皮膜の組成は、Ti:O=1:2となった。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例12の反射型フォトマスクを作製した。
なお、実施例12の反射型フォトマスクは、EUV反射率が0.43%、OD値が2.2であった。
【0074】
<実施例13>
吸収膜の材料を錫(Sn)とチタン(Ti)、ケイ素(Si)に変更して成膜した。このとき、錫(Sn)とチタン(Ti)、ケイ素(Si)との原子数比率は、90.9:6.1:3.0とした。従って、Sn/Mは15、L/Mは0.5であることが分かった。これに伴い、酸化皮膜の組成は、Ti:O=1:2となった。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例13の反射型フォトマスクを作製した。
なお、実施例13の反射型フォトマスクは、EUV反射率が0.43%、OD値が2.2であった。
【0075】
<実施例14>
吸収膜の材料を錫(Sn)とチタン(Ti)、酸素(O)に変更して成膜した。このとき、錫(Sn)とチタン(Ti)、酸素(O)との原子数比率は、27.4:6.8:65.8とした。従って、Sn/Mは4、L/Mは0であることが分かった。これに伴い、酸化皮膜の組成は、Ti:O=1:2となった。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例14の反射型フォトマスクを作製した。
なお、実施例14の反射型フォトマスクは、EUV反射率が0.60%、OD値が2.0であった。
【0076】
<実施例15>
吸収膜の材料を錫(Sn)とチタン(Ti)、ホウ素(B)、酸素(O)に変更して成膜した。このとき、錫(Sn)とチタン(Ti)、ホウ素(B)、酸素(O)との原子数比率は、28.8:4.8:1.0:65.4:とした。従って、Sn/Mは6、L/Mは0.2であることが分かった。これに伴い、酸化皮膜の組成は、Ti:O=1:2となった。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例15の反射型フォトマスクを作製した。
なお、実施例15の反射型フォトマスクは、EUV反射率が0.54%、OD値が2.1であった。
【0077】
<実施例16>
吸収膜の材料を錫(Sn)とビスマス(Bi)に変更して成膜した。このとき、錫(Sn)とビスマス(Bi)との原子数比率は、80.0:20.0とした。従って、Sn/Mは4、L/Mは0であることが分かった。これに伴い、酸化皮膜の組成は、Bi:O=2:3となった。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例16の反射型フォトマスクを作製した。
なお、実施例16の反射型フォトマスクは、EUV反射率が0.19%、OD値が2.5であった。
【0078】
<実施例17>
吸収膜の材料を錫(Sn)とチタン(Ti)に変更して成膜した。このとき、錫(Sn)とチタン(Ti)との原子数比率は、93.8:6.2とした。従って、Sn/Mは15、L/Mは0であることが分かった。また、重量濃度60%、液温25℃の硫酸溶液を用いて、酸化皮膜を形成した。これに伴い、酸化皮膜の組成は、Ti:Sn:O=1:2:4となり、TiOのみの酸化皮膜は形成されなかった。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例17の反射型フォトマスクを作製した。
なお、実施例17の反射型フォトマスクは、EUV反射率が0.36%、OD値が2.3であった。
【0079】
<実施例18>
吸収膜の材料を錫(Sn)とチタン(Ti)、ホウ素(B)に変更して成膜した。このとき、錫(Sn)とチタン(Ti)、ホウ素(B)との原子数比率は、86.7:5.8:7.5とした。従って、Sn/Mは15、L/Mは1.3であることが分かった。これに伴い、酸化皮膜の膜厚は2nm、酸化皮膜の組成は、Ti:Sn:O=1:1:2となった。それ以外は実施例1と同様の方法で、実施例18の反射型フォトマスクを作製した。
なお、実施例18の反射型フォトマスクは、EUV反射率が0.27%、OD値が2.4であった。
【0080】
<比較例1>
吸収膜の材料を錫(Sn)とチタン(Ti)に変更して成膜した。このとき、錫(Sn)とチタン(Ti)との原子数比率は、30.0:70.0とした。従って、Sn/Mは0.4、L/Mは0であることが分かった。これに伴い、酸化皮膜の組成は、Ti:O=1:2となった。それ以外は実施例1と同様の方法で、比較例1の反射型フォトマスクを作製した。
なお、比較例1の反射型フォトマスクは、EUV反射率が5.40%、OD値が1.1であった。
【0081】
<比較例2>
吸収膜の材料を錫(Sn)とチタン(Ti)、ホウ素(B)に変更して成膜した。このとき、錫(Sn)とチタン(Ti)、ホウ素(B)との原子数比率は、66.7:11.1:22.2とした。従って、Sn/Mは6、L/Mは2であることが分かった。なお酸化チタンからなる酸化皮膜は形成されなかった。それ以外は実施例1と同様の方法で、比較例2の反射型フォトマスクを作製した。
なお、比較例2の反射型フォトマスクは、EUV反射率が0.58%、OD値が2.0であった。
【0082】
<比較例3>
吸収膜の材料を錫(Sn)とチタン(Ti)に変更して成膜した。このとき、錫(Sn)とチタン(Ti)との原子数比率は、95.2:4.8とした。従って、Sn/Mは20、L/Mは0であることが分かった。なお酸化チタンからなる酸化皮膜は形成されなかった。それ以外は実施例1と同様の方法で、比較例3の反射型フォトマスクを作製した。
なお、比較例3の反射型フォトマスクは、EUV反射率が0.02%、OD値が3.5であった。
【0083】
<評価>
上述した実施例1~18、比較例1~3で得られた反射型フォトマスクについて、以下の方法で転写性能及び水素ラジカル耐性の評価を行った。なお、転写性能はウェハ露光評価により確認した。なお、上述した「既存のタンタル(Ta)マスク」については、表1において「参考例」として記載した。
【0084】
〔ウェハ露光評価〕
EUV露光装置(NXE3300B:ASML社製)を用いて、EUVポジ型化学増幅型レジストを塗布した半導体ウェハ上に、各実施例、比較例で作製した反射型フォトマスクの吸収膜パターンを転写露光した。このとき、露光量は、x方向のLSパターンが設計通りに転写するように調節した。その後、電子線寸法測定機により転写されたレジストパターンの観察及び線幅測定を実施し、測定値から解像性とHVバイアスの確認を行った。
【0085】
<評価基準>
既存のタンタル(Ta)マスクを用いた場合と比較したときのHVバイアスの大小で評価した。つまり、x方向のLSパターンが設計通りに転写するように調節した状態で、y方向のLSパターンが設計通りに転写され、HVバイアスが既存のタンタル(Ta)マスクを用いた場合よりも小さい場合を「合格」とした。そして、x方向のLSパターンが設計通りに転写するように調節した状態で、設計通りに転写されない場合(y方向のLSパターンが解像しない場合)、あるいはHVバイアスが既存のタンタル(Ta)マスクを用いた場合よりも大きい場合を「不合格」とした。
【0086】
〔水素ラジカル耐性〕
2.45GHzのMWP(Micro Wave Plasma:マイクロ波プラズマ)を使って、水素の流量100sscmを励起し、電極間距離18mmの片方の電極上に、作製した反射型フォトマスクを設置した。水素ラジカル処理後での吸収膜の膜厚変化を、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて確認し、以下の◎、〇、×の3段階で評価した。なお、測定は線幅200nmLSパターンで行った。
<評価基準>
◎:水素ラジカルに対して膜厚変化が見られなかった場合
○:水素ラジカルに対して僅かな膜厚変化が見られた場合
×:水素ラジカルに対して膜厚変化が見られた場合
【0087】
また、表1の「マスク特性」の欄には、既存のタンタル(Ta)マスクと比較して、OD値及び転写性の観点から以下の◎、△、×の3段階で評価した。
<評価基準>
◎:OD値及び転写性の両観点において優位性を見いだせた場合
△:OD値及び転写性のどちらか一方の観点において優位性を見いだせなかった場合
×:OD値及び転写性の両観点において劣っていた場合
【0088】
表1の「判定」の欄には、以下の◎、〇、△、×の4段階で評価した。
<評価基準>
◎:マスク特性及び水素ラジカル耐性の両観点において評価が◎である場合
○:マスク特性の評価が◎であり、かつ水素ラジカル耐性の評価が〇である場合
△:マスク特性の評価が△であり、かつ水素ラジカル耐性の評価が◎または〇である場合
×:マスク特性及び水素ラジカル耐性のどちらか一方または両観点において評価が×の場合。
以上の評価結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
表1中に表されるように、実施例1~18、比較例1~3の評価結果から、実施例1から18のように吸収膜がSn/Mが1以上である場合には、比較例1のように吸収膜がSnをSn/Mが1未満である場合と比べて反射率が低く、射影効果を低減できることがわかった。
【0091】
また、実施例1~9、16、18、比較例3の評価結果から、実施例1~9、16、18のようにSn/Mが20未満である場合には、比較例3のようにSn/Mが20以上である場合と比べて水素ラジカル耐性が高いことがわかった。
【0092】
さらに、実施例9と実施例10~13、17の評価結果から、半金属元素を含む場合、Sn/Mが大きくとも酸化皮膜が安定的に形成することで水素ラジカル耐性が向上することが分かった。
また、比較例2のようにL/Mが1より大きい場合と比較して実施例10~13の水素ラジカル耐性が高いことが分かった。
【0093】
また、実施例14から15の評価結果から、酸素のような、Sn、上述の金属元素及び半金属元素以外の元素が入っていても、酸化皮膜が形成された場合には水素ラジカル耐性が高いことがわかった。
【0094】
なお、本開示の反射型マスク及び反射型マスクの製造方法は、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0095】
11:基板
12:多層反射膜
13:保護膜
14:吸収膜
14a:吸収膜パターン
15:酸化皮膜
16:裏面導電膜
17:レジスト膜
100:反射型フォトマスク(反射型マスク)
200:反射型フォトマスクブランク(反射型マスクブランク)
300:チャンバー
301:電極
302:サンプル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2021-09-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された多層膜構造を有するEUV光を反射する反射膜と、
前記反射膜上に形成され、該反射膜を保護する保護膜と、
前記保護膜上に形成されたEUV光を吸収する吸収膜と、
前記吸収膜上に形成された酸化皮膜と、を備え、
前記吸収膜は、Snと、Sn以外の金属元素とを含み、且つ前記Sn以外の金属元素の合計原子量に対して、前記Snの原子量比(Sn/Sn以外の金属元素)が1以上20未満の範囲内であり、
前記酸化皮膜は、水素ラジカルに対して耐性を有しており、前記吸収膜の表面及び側面に形成されることを特徴とする反射型マスク。
【請求項2】
基板と、
前記基板上に形成された多層膜構造を有するEUV光を反射する反射膜と、
前記反射膜上に形成され、該反射膜を保護する保護膜と、
前記保護膜上に形成されたEUV光を吸収する吸収膜と、
前記吸収膜上に形成された酸化皮膜と、を備え、
前記吸収膜は、Snを50原子%以上含み、
前記酸化皮膜は、水素ラジカルに対して耐性を有しており、前記吸収膜の表面及び側面に形成されることを特徴とする反射型マスク。
【請求項3】
前記酸化皮膜は、Cr、Ta、Nb、Ti、Al、V、及びHfの酸化物を少なくとも1種類含む化合物を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の反射型マスク。
【請求項4】
前記酸化皮膜は、Snを含まない、または前記酸化皮膜は、Snを含み、そのSnの含有量は、Cr、Ta、Nb、Ti、Al、V、及びHfの酸化物を少なくとも1種類含む化合物の含有量よりも少ないことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の反射型マスク。
【請求項5】
前記吸収膜は、前記Sn以外の金属元素として、Cr、Ta、Nb、Ti、Al、V、及びHfのうち少なくとも1種類を含む化合物を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の反射型マスク。
【請求項6】
前記酸化皮膜は、前記酸化皮膜の膜厚が1nm以上であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の反射型マスク。
【請求項7】
前記吸収膜は、半金属元素である、B、C、P、Si、及びGeを含まない、または前記半金属元素のうち少なくとも1種類を含み、且つ前記Sn以外の金属元素の合計原子量に対して、前記半金属元素の合計原子量比(半金属元素/Sn以外の金属元素)が0以上1以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の反射型マスク。
【請求項8】
前記吸収膜は、Cr、Ta、Nb、Ti、Al、V、及びHfのうち少なくとも1種類の化合物を5原子%より多く含有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の反射型マスク。
【請求項9】
前記吸収膜は、フッ素系ガスまたは塩素系ガスでエッチング可能であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の反射型マスク。
【請求項10】
前記吸収膜と前記酸化皮膜との合計膜厚は、45nm以下であり、
前記吸収膜及び前記酸化皮膜からなる積層膜全体としての、EUV光に対するOD値(Optical Density:光学濃度)は、1.0以上であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の反射型マスク。
【請求項11】
前記EUV光は、波長13.5nmの光であることを特徴とする請求項10に記載の反射型マスク。
【請求項12】
基板と、
前記基板上に形成された多層膜構造を有するEUV光を反射する反射膜と、
前記反射膜上に形成された該反射膜を保護する保護膜と、
前記保護膜上に形成されたEUV光を吸収する吸収膜と、
前記吸収膜上に形成された酸化皮膜と、を備えた反射型マスクの製造方法であって、
前記吸収膜は、Snと、Sn以外の金属元素とを含み、且つ前記Sn以外の金属元素の合計原子量に対して、前記Snの原子量比(Sn/Sn以外の金属元素)が1以上20未満の範囲内であり、
前記酸化皮膜は、水素ラジカルに対して耐性を有しており、前記吸収膜の表面及び側面に形成されることを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【請求項13】
基板と、
前記基板上に形成された多層膜構造を有するEUV光を反射する反射膜と、
前記反射膜上に形成された該反射膜を保護する保護膜と、
前記保護膜上に形成されたEUV光を吸収する吸収膜と、
前記吸収膜上に形成された酸化皮膜と、を備えた反射型マスクの製造方法であって、
前記吸収膜は、Snを50原子%以上含み、
前記酸化皮膜は、水素ラジカルに対して耐性を有しており、前記吸収膜の表面及び側面に形成されることを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【請求項14】
前記酸化皮膜は、前記吸収膜を酸化させて形成されることを特徴とする請求項1または請求項1に記載の反射型マスクの製造方法。