(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064812
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】防災頭巾
(51)【国際特許分類】
A42B 1/04 20210101AFI20220419BHJP
【FI】
A42B1/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021067075
(22)【出願日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2020173480
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514060961
【氏名又は名称】株式会社エルトップ
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 達司
(57)【要約】
【課題】利便性を向上させた防災頭巾を提供すること。
【解決手段】防災頭巾3は、避難者2の頭部21から頸部22にかけて保護するためのものである。防災頭巾3は、内側が頭部21に接する側となる防災頭巾本体31と、この防災頭巾本体31の外側を覆う防災頭巾カバー32とを備えて構成される。防災頭巾カバー32のカバー本体321は、防災頭巾本体31の一部を保持する本体保持部321aと、防災頭巾本体31の顔側開口部33の配置に合わせて形成される第一開口部35と、防災頭巾本体31の首側開口部34に配置に合わせて形成されるとともに第一開口部35に連続して形成される第二開口部36とを有する。避難者2は、防災頭巾本体31が防災頭巾カバー32で覆われたままの状態でも防災頭巾3を装着することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
避難者の少なくとも頭部から頸部にかけて保護するための防災頭巾本体と、当該防災頭巾本体を覆う防災頭巾カバーと、を備える防災頭巾において、
前記防災頭巾本体は、前記避難者の顔を臨むように開口形成される顔側開口部と、当該顔側開口部に連続し且つ当該避難者の前記頸部の挿通が可能に開口形成される首側開口部と、を有する頭巾部を備え、
前記防災頭巾カバーは、前記頭巾部の一部を保持する本体保持部と、前記顔側開口部の配置に合わせて開口形成される第一開口部と、前記首側開口部の配置に合わせて開口形成され且つ前記第一開口部に連続して開口形成される第二開口部と、を有するカバー本体を備える防災頭巾。
【請求項2】
前記防災頭巾カバーは、伸縮自在な紐状の第一紐部を更に有し、
前記第一紐部は、当該第一紐部の一端が前記カバー本体に対し固定状態に取り付けられ且つ当該第一紐部の他端が所定の外力の付加により当該カバー本体から外れる状態に取り付けられる、
請求項1に記載の防災頭巾。
【請求項3】
前記防災頭巾カバーは、伸縮自在な紐状の第二紐部を更に有し、
前記第二紐部は、当該第二紐部の一端および他端が共に前記カバー本体に対し固定状態に取り付けられ、且つ、当該一端から当該他端にかけての前記第二紐部の中間と、当該カバー本体との間に生じる空間が前記防災頭巾カバーに対し別の物体の挿通部として形成される、
請求項1又は2に記載の防災頭巾。
【請求項4】
前記防災頭巾カバーは、前記カバー本体において前記第二紐部から離れた位置に設けられる紐状の第三紐部を更に有し、
前記第三紐部は、当該第三紐部の一端が前記カバー本体に対し固定状態に取り付けられ且つ当該第三紐部の他端が当該カバー本体に対し着脱自在の状態に取り付けられる、
請求項3に記載の防災頭巾。
【請求項5】
前記頭巾部は、前記避難者の前記頭部における後頭部の配置に合わせて形成される後頭部保護部を更に有し、
前記防災頭巾本体は、前記避難者の顎の位置に合わせて設けられる伸縮自在な紐状の顎紐部を更に備え、
前記顎紐部は、当該顎紐部の一端および他端の間となる顎紐中間が前記顔側開口部を交差するように配置され且つ当該顎紐部の当該一端が前記後頭部保護部の側に固定状態に取り付けられる、
請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の防災頭巾。
【請求項6】
前記顎紐部は、当該顎紐部の前記他端が前記顔側開口部の側に固定状態に取り付けられる、
請求項5に記載の防災頭巾。
【請求項7】
前記防災頭巾本体は、前記頭巾部の内部および外部のうち何れか一方に前記避難者の所有物であることを名前で表示するための名前表示部を更に有し、
前記名前表示部は、前記何れか一方に対して着脱自在に取り付けられる、
請求項5又は6に記載の防災頭巾。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災頭巾に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自然災害発生時には、避難者の身を守るため、防災頭巾が一般的に利用されている。防災頭巾の取り出しから着用までの時間を短縮するため、防災頭巾の構造に関する技術が提案されている(例えば特許文献1)。
防災頭巾を被り避難した先の避難場所においては、集まった避難者同士のプライバシー確保のために、避難者と避難者とを隔てるための仕切り、いわゆるパーテーションが利用されている。このパーテーションに関しては、パーテーションの利用に際する利便性を向上させるため、その間仕切構造に関する技術が提案されている(例えば特許文献2)。
また、このような避難場所等においては、折り畳めて持ち運べる、いわゆる簡易ベッドが利用されることがある。簡易ベッドの保管、組み立て、および利用に際する利便性を向上させるため、簡易ベッドの構造、および設置方法に関する技術が提案されている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-29807号公報
【特許文献2】特開2006-328834号公報
【特許文献3】特開2010-69276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1乃至3に記載の技術を含む従来技術のみでは、利便性の面でユーザ(避難者。防災頭巾にあっては例えば着用する子供の保護者を含む)の要望に十分に応えることができていなかった。
【0005】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、ユーザの利便性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の防災頭巾は、
避難者の少なくとも頭部から頸部にかけて保護するための防災頭巾本体と、当該防災頭巾本体を覆う防災頭巾カバーと、を備える防災頭巾において、
前記防災頭巾本体は、前記避難者の顔を臨むように開口形成される顔側開口部と、当該顔側開口部に連続し且つ当該避難者の前記頸部の挿通が可能に開口形成される首側開口部と、を有する頭巾部を備え、
前記防災頭巾カバーは、前記頭巾部の一部を保持する本体保持部と、前記顔側開口部の配置に合わせて開口形成される第一開口部と、前記首側開口部の配置に合わせて開口形成され且つ前記第一開口部に連続して開口形成される第二開口部と、を有するカバー本体を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、利便性を向上させた防災頭巾の提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】自然災害発生時における避難者の行動の一例について示す図である。
【
図2】防災頭巾の装着状態(防災頭巾カバーありの装着状態)を示す図であり、(a)は避難者の左側頭部の側から見た図、(b)は避難者の顔の側から見た図、(c)は避難者の後頭部の側から見た図である。
【
図3】防災頭巾本体のみの装着状態を示す図であり、(a)は避難者の左側頭部の側から見た図、(b)は避難者の右側頭部の側から見た図、(c)は避難者の顔の側から見た図、(d)は避難者の後頭部の側から見た図である。
【
図4】防災頭巾を示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【
図5】防災頭巾を示す図であり、(a)は左側面図、(b)は右側面図である。
【
図6】防災頭巾を示す図であり、(a)は平面図、(b)は底面図である。
【
図7】防災頭巾を示す図であり、(a)は装着直前の正面図、(b)は(a)を下側から見た図である。
【
図8】防災頭巾カバーを示す図であり、(a)は一部内側を見せた状態の左側面図、(b)は一部内側を見せた状態の右側面図である。
【
図9】防災頭巾本体を示す図であり、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【
図10】防災頭巾本体を示す図であり、(a)は左側面図、(b)は右側面図である。
【
図11】防災頭巾本体を示す図であり、(a)は平面図、(b)は底面図である。
【
図12】第一紐部の機能を示す図であり、(a)は外力が付加される前の状態を示す図、(b)は外力が付加され始めた状態を示す図、(c)は第一紐部の端部が外力の付加によって外れ始めた状態を示す図、(d)は第一紐部の端部が外力の付加によって外れた状態を示す図である。
【
図13】防災頭巾に係る図であり、(a)は防災頭巾の装着について説明するための図、(b)は名前表示部の構成について説明するための図、(c)は頭巾部に設けられた名前表示部の図、(d)は(a)の矢印Y3の方向から見た第一紐部の一端の拡大図、(e)は(a)の矢印Y3の方向から見た第一紐部の他端の拡大図である。
【
図14】防災頭巾本体を示す図であり、(a)は右側頭巾部の側から見た図、(b)は(a)の枠Wの拡大図、(c)は左側頭巾部の側から見た図、(d)は(c)の矢印Y4の方向から見た顎紐部の一端の拡大図である。
【
図15】防災頭巾を座布団として使用し椅子に括り付けた状態を示す図であり、(a)は第一紐部に外力が付加される直前の状態を示す図、(b)は外力の付加により第一紐部の端部が外れた状態を示す図である。
【
図16】防災頭巾をランドセルに括り付けた状態を示す図であり、(a)はランドセルに括り付けた状態の外観を示す図、(b)はランドセルのかぶせに括り付けた状態を示す図、(c)はランドセルの吊カンに取り付けた状態を示す図である。
【
図17】簡易テントを示す図であり、(a)は前方幕部が開いた状態の正面図、(b)は背面図である。
【
図18】前方幕部を説明するための図であり、(a)は右開閉部を開いた状態の図、(b)は(a)の留め具について説明するための拡大図、(c)は(a)の目印について説明するための拡大図である。
【
図19】留め具およびアジャスターを示す図であり、(a)は支柱部に取り付けられた状態の留め具の拡大図、(b)は梁部に取り付けられた状態の留め具の拡大図、(c)はアジャスターの構成を示す図、(d)はアジャスターの使用について説明するための図である。
【
図20】簡易ベッドを示す図であり、(a)は外観および構成を説明するための図、(b)は簡易ベッドを構成する箱体の配置について説明するための図である。
【
図21】簡易テーブルを含む簡易テーブルセットを示す図であり、(a)は外観および構成を説明するための図、(b)は簡易テーブルおよび簡易椅子を構成する箱体の配置について説明するための図である。
【
図22】
図20および
図21の箱体を示す図であり、(a)は箱上部の側から見た図、(b)は箱下部の側から見た図、(c)は補強部を設けて箱上部の側から見た図である。
【
図23】箱上部の組み立てを説明するための図であり、(a)は4枚の上板が開いた状態の図、(b)は2枚の上板が閉じられた状態の図、(c)は最後1枚の上板が閉じられる直前の状態の図である。
【
図24】簡易ベッドおよび簡易テーブルの補足説明図であり、(a)は測定試験装置による評価について説明するための図、(b)は収納箱および組立図について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(防災頭巾)
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、自然災害発生時における避難者の行動の一例について示す図である。
【0010】
図1において、人々は、比較的大きな自然災害が発生した時に、この自然災害による被害を免れるため、また、安全を確保するために地域所定の避難場所1に避難する。避難場所1に避難してくる避難者2としては、子供から老人まで様々である。ここで、避難場所1としては、例えば地域住民が利用する公民館や公園、体育館、運動競技場等が挙げられ、屋内や屋外を限定しないものとする。
図1では、避難場所1として公民館を一例に挙げて説明する。
上述の自然災害とは、危機的な自然現象によって、人命や人間の社会的活動に被害が生じる現象を言うものとする。自然災害の発生が懸念される場合もここでは含むものとする。自然災害とは、「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象により生ずる被害」と定義され、ここでは身を守る必要性がある一例として、地震を挙げて以下に説明する。
【0011】
比較的大きな地震が発生した際に、防災頭巾3を所有する避難者2や、後述の備え付けの防災頭巾3を利用できる避難者2は、この防災頭巾3を被り、自身の頭部21や頸部22を保護するような状態で避難場所1まで避難する。
避難者2が例えば小学生(6歳から12歳の児童)であって、小学校で授業を受けている場合等であれば、教員の指示に従い教室の机の下に入って身を守ったり、教員の誘導で校庭へと避難したりする。この時、小学生である避難者2は、教員の指示に従って、又は、自発的に防災頭巾3を被って自身の頭部21や頸部22を保護する行動をとる。校庭への避難の後に、この校庭が地域所定の避難場所1に該当しない場合には、余震の状況や周辺の被害状況等を見て待機し、保護者によるお迎えを待ったり、地域所定の避難場所1まで避難したりする。
【0012】
地震発生時、素早く身の安全を確保するためには、小学生のような年齢の低い子供であっても防災頭巾3を容易に被ることができるようにすることが重要である。ここで「防災頭巾3を被る」とは、防災頭巾3を頭に(頭部21に)所定の状態で装着することを言うものとする。所定の状態とは、顔が見える状態で頭部21全体を覆うとともに、首回りも部分的に、又は全体的に覆うような状態であるものとする。勿論、すぐ脱げてしまうような状態であってはいけない。
【0013】
防災頭巾3は、地震が頻繁に発生する地域では、また、過去に大きな地震に見舞われて被害を受けた地域では、自宅や避難場所1に、或いは児童館を含む公共の施設等に常備されていることもある。小学生(児童)であれば、小学校に備えておいたり、毎日持ち歩いて登下校したりすることもある。小学校に備えておく、又は登校後に教室内に置いておく場合には、素早く防災頭巾3を被ることができるようにする必要がある。そのため、使用者自身(児童自身)の周囲にあることが望ましい。机の脇に防災頭巾3をぶらさげておくことの他、椅子に括り付けておくことが考えられる。防災頭巾3を椅子に括り付けておく場合には、椅子の背もたれ部や座部が括り付けの部分に該当する。例えば、座部が該当する場合には、防災頭巾3を座部に括り付けた状態から、素早く取り外して被ることができるようにすることが重要である。
【0014】
ところで、防災頭巾3を椅子に括り付けておくことは、授業中、防災頭巾3に対して自身の服や皮膚が触れていることになる。そのため、防災頭巾本体の汚れ等を防止する目的としてカバー(防災頭巾カバー)を設けることが有効になる。カバーや防災頭巾本体に汚れが生じた場合には、洗濯のために自宅へ持ち帰ることになるが、これがし易い形態が好ましい。学期末や学年末等で防災頭巾3を持ち帰るのであれば、その持ち帰り頻度は少ないが、週末や毎日、或いは汚れた都度、自宅に持ち帰って洗濯するのであれば、持ち歩きのし易い形態が好ましいのは勿論である。
【0015】
防災頭巾3の持ち歩きのし易さを考えれば、直接手で待たずに運ぶことができるようにすることが好ましい。小学生のような小さな子供であれば、防災頭巾3のために片手がふさがれてしまうことは、例えば安全面で避けたいものである。低学年の子供であれば身長が低いことから、持ち帰りの際に、防災頭巾3を地面に引きずってしまうことも考えられる。両手を使えるようにしたり、地面への引きずりを防止したりするためには、ランドセルと一緒に防災頭巾3を運ぶことができる形態が有効になる。即ち、ランドセルに括り付けて運ぶことができるようにすることが有効になる。
【0016】
以下、図面を参照しながら防災頭巾3の詳細について説明をする。
図2は、防災頭巾3の装着状態(防災頭巾カバーありの装着状態)を示す図であり、(a)は避難者の左側頭部の側から見た図、(b)は避難者の顔の側から見た図、(c)は避難者の後頭部の側から見た図である。
【0017】
図2において、防災頭巾3は、少なくとも避難者2の頭部21から頸部22にかけて保護するための防災用の頭巾であって、防災頭巾本体31と、防災頭巾カバー32とを備えて構成される。防災頭巾3は、防災頭巾本体31が防災頭巾カバー32で覆われたままの状態であっても避難者2が装着できるようなものに形成される。このような防災頭巾3を採用することで、避難者2は、防災頭巾カバー32から防災頭巾本体31を取り出さずに装着することができ、結果、素早い避難対応をすることができるようになる。
【0018】
防災頭巾3は、この内部(内側)に避難者2の顔が存するような比較的大きなフード形状に形成される。即ち、避難者2の顔が防災頭巾3の外に露出してしまわないような比較的大きなものに形成される。防災頭巾3は、避難者2の安全を確保することができるように形成される。このような防災頭巾3は、容易に脱げてしまわないように形成される。即ち、自然災害発生時における(例えば地震発生時における)例えば避難最中において、脱げを防止して安全を確保することができるように形成される。防災頭巾3について、もう少し詳しく以下に説明する。
【0019】
防災頭巾3は、防災頭巾本体31と防災頭巾カバー32とが分離可能に構成される。即ち、別体に構成される。防災頭巾3は、防災頭巾本体31が内側、防災頭巾カバー32が外側となるように配置される。防災頭巾3は、
図2に示すように、防災頭巾本体31が防災頭巾カバー32で覆われたままの状態でも避難者2が装着できる(この点が防災頭巾3の特徴になる。尚、この他の特徴については、後述するものとする)。防災頭巾3は、小学生のような小さな子供であっても負担にならないような軽量なものに形成される。即ち、防災頭巾3の重さが首への負担にならないように軽量に形成される(長時間でも防災頭巾3を装着し続けることができるように軽量に形成される)。
【0020】
図3は、防災頭巾本体31のみの装着状態を示す図であり、(a)は避難者2の左側頭部の側から見た図、(b)は避難者2の右側頭部の側から見た図、(c)は避難者2の顔の側から見た図、(d)は避難者2の後頭部の側から見た図である。
【0021】
図3において、防災頭巾本体31は、少なくとも避難者2の頭部21から頸部22にかけて保護するための防災用の頭巾の本体であって、頭巾部311と、顎紐部312とを備えて構成される。防災頭巾本体31は、頭巾部311が全体的にクッション性を有し、避難者2の頭部21から頸部22にかけて、外部からの衝撃を受けても、これを緩衝することができるように形成される。換言すれば、安全を確保することができるように形成される。本実施形態においては、避難者2の肩の一部まで緩衝することができるように形成される。防災頭巾本体31は、上述の如く、避難者12の顔が外に露出してしまわないような大きさに形成される。防災頭巾本体31は、避難者12を保護して安全を確保することができるような大きさに形成される。尚、防災頭巾本体31を構成する頭巾部311および顎紐部312の詳細については、後述するものとする。
【0022】
図4(a)は、防災頭巾3の正面図である。また、
図4(b)は、防災頭巾3の背面図である。
【0023】
防災頭巾3は、防災頭巾本体31が防災頭巾カバー32で覆われた状態であっても、比較的薄いものに形成される。換言すれば、防災頭巾3は、平たいものに形成される。防災頭巾3は、主にクッション性を持たせた分だけ図の左右方向に厚みが生じるように形成される。また、防災頭巾3は、
図4(a)に示すように、二つ折りに見えるようなものに形成される。防災頭巾3は、上記厚みに関し、小学生のような小さな子供でも、親指と、残りの4本の指とで防災頭巾3を挟み持つことができるような厚みに形成される。
【0024】
図4(a)において、防災頭巾本体31の符号33は顔側開口部を示すものとする。また、符号311は頭巾部を示すものとする。また、符号312は顎紐部を示すものとする。顔側開口部33は、詳しくは
図2および
図3に示すように、避難者2の顔の位置および首の位置に合わせて図の上下にのびる開口に形成される。顔側開口部33は、第三者から見て避難者2の顔を見ることができるような開口に形成される。また、顔側開口部33は、避難者2自身の視界や呼吸等を確保することができる開口に形成される。顎紐部312は、
図2および
図3に示すように、避難者2の顎の位置に合わせて配置される。顎紐部312は、顔側開口部33を交差するように(左右に横切るように)配置される。顎紐部312は、避難者2の顎に係合して(引っかかって)、防災頭巾3(防災頭巾本体31)の抜け止めをすることができるように形成される。
【0025】
一方、防災頭巾カバー32の符号35は第一開口部を示すものとする。また、符号36は第二開口部を示すものとする。また、後述するが、符号321はカバー本体を示すものとする。また、符号323は第二紐部を示すものとする。第一開口部35は、顔側開口部33の配置に合わせて形成される。第一開口部35は、顔側開口部33の機能を確保するために開口形成される。第一開口部35は、
図4(a)に示すように、顔側開口部33よりも外側に位置し、防災頭巾3の装着前の状態においては、顔側開口部33付近の汚れ等を防止することができるように形成される。第二開口部36は、避難者2の首や肩がある側に形成される。このような第二開口部36は、第一開口部35に連続して開口するように形成される。第二開口部36は、避難者2の頭部21を通過させることができる大きさに開口形成される。また、第二開口部36は、頸部22が挿通されるような開口に形成される。カバー本体321には、上述の他に、一対の本体保持部321aが形成される(後述する)。一対の本体保持部321aは、第二開口部36が形成される側に配置される。
【0026】
図4(b)において、この図には、避難者2の後頭部および後頸部を保護する部分が示される(
図2も参照)。後頭部および後頸部を保護する部分は、上記のような開口ではなく、接合(縫い合わせ)の部分を含んで形成される。
図4(b)における符号38は、カバー側スリットを示すものとする。カバー側スリット38は、上記接合(縫い合わせ)の部分に連続するように形成される。カバー側スリット38は、第二開口部36に連続して切り欠かれるように形成される。
【0027】
図5において、
図5(a)は、防災頭巾3の左側面図である。また、
図5(b)は、防災頭巾3の右側面図である。
【0028】
防災頭巾3は、避難者2(
図2参照)の左側頭部および右側頭部を保護することができるように形成される。左側頭部および右側頭部を保護する部分は、図の上下に長くなるような長方形に形成される。尚、
図5から分かるように、防災頭巾3は恰も座布団に見えるような形状に形成される(座布団としての使用例については
図15を参照しながら後述する)。
図5には、第一紐部322、第二紐部323、および第三紐部324が示される。これら第一紐部322、第二紐部323、および第三紐部324は、カバー本体321の所定位置に夫々配置される。第一紐部322は、図の上下にのびるように配置される。また、第二紐部323は、この一部が図の左右にのびるように配置される。また、第三紐部324は、防災頭巾3の頂部に配置される。
【0029】
図6(a)は、防災頭巾3の平面図である。また、
図6(b)は、防災頭巾3の底面図である。
【0030】
図6(a)に示すように、防災頭巾3の頂部には、第三紐部324が配置される。第三紐部324がある防災頭巾3の頂部は、避難者2の頭頂部を保護することができるように形成される(
図2も参照)。防災頭巾3の頂部は、カバー本体321および防災頭巾本体31の中央を折り返すようにして夫々形成される。
図6(b)には、カバー本体321の第二開口部36が示される。第二開口部36は、第一開口部35およびカバー側スリット38に連続するように形成される。
【0031】
図7(a)は、防災頭巾3の装着直前の状態を示す正面図である。また、
図7(b)は、
図7(a)をこの下側から見た図である。即ち、
図7(b)は、カバー本体321の第二開口部36の側から防災頭巾3を見た図である。
【0032】
図7(a)に示すように、防災頭巾3を単に立てて置いた状態で見てみると、装着直前の防災頭巾3は、柔軟性により、また、自重により、顎紐部312の上下で顔側開口部33が若干開いた状態に見える。一方、顎紐部312の位置では、顔側開口部33が閉じた状態に見える。また、
図7(b)に示すように、第二開口部36の側においても、この第二開口部36の奥位置では、閉じた状態に見える(顎紐部312の作用により閉じた状態に見える)。
【0033】
以下、防災頭巾本体31を覆う防災頭巾カバー32の詳細について説明する。
図8は、防災頭巾カバー32を示す図であり、
図8(a)は一部内側を見せた状態の左側面図、
図8(b)は一部内側を見せた状態の右側面図である。
【0034】
図8において、防災頭巾カバー32は、カバー本体321と、第一紐部322と、第二紐部323と、第三紐部324とを備えて構成される。防災頭巾カバー32は、防災頭巾本体31に対し取り外しが容易な形状に形成される。防災頭巾カバー32のカバー本体321には、一対の本体保持部321aが形成される。このようなカバー本体321に対しては、第一紐部322、第二紐部323および第三紐部324が所定位置に夫々設けられる。
カバー本体321は、一枚の布にて形成される。ここでは、吸水性に優れ、洗濯もし易いと言う理由から木綿が採用される(一例であるものとする。例えば、防火、防炎、熱の遮断等に配慮するのであれば、難燃性のアクリル、ポリエステル、アラミド等の素材を使用してもよいものとする。また、撥水素材や防水素材の使用、撥水加工や防水加工を施した素材を使用してもよいものとする。素材に関しては、後述する頭巾部311の素材も同様であるものとする)。
【0035】
カバー本体321は、長辺が短辺に対して十分に長い長方形の上記布を二つ折りにして形成される。二つ折り後のカバー本体321は、同じ大きさとなる長方形の本体左カバー部321bと、本体右カバー部321cとを有する。また、本体折り返し頂部321dを有する。本体左カバー部321bおよび本体右カバー部321cは、夫々、一対の長辺部を有し、一対の長辺部のうちの一方は、短く折り返されてパイピング処理が施される。一対の長辺部のうちの一方は、上記第一開口部35となるように形成される。一対の長辺部のうちの他方同士は、縫い合わせられて本体縫い合わせ後部321eが形成される。本体縫い合わせ後部321eの下側には、カバー側スリット38が形成される。本体左カバー部321bおよび本体右カバー部321cは、一対の短辺部のうちの一方が上記二つ折りの部分(本体折り返し頂部321d)に相当する。一対の短辺部のうちの他方は、比較的長く折り返されて本体保持部321aを夫々有するように形成される。
【0036】
一対の本体保持部321aは、防災頭巾本体31の一部を保持するために袋状に夫々形成される。一対の本体保持部321aは、防災頭巾本体31の首側開口34となる端部が夫々差し込まれると、これを保持することができるように袋状に形成される。一対の本体保持部321aは、上記首側開口34となる端部の厚みに合わせた差し込みスペースを有するように夫々形成される。一対の本体保持部321aは、上記首側開口34となる端部が差し込まれた後に、すぐに抜け出さないような大きさに形成される(但し、防災頭巾カバー32の取り外し容易性は損なわれないものとする)。一対の本体保持部321aは、上述のように袋状に形成されることから、防災頭巾本体31の首側開口34となる端部を保持する以外に、例えばマスクやハンカチ等を収容しておくための収容部として利用することが可能になる。マスク等は、防災頭巾本体31の端部の差し込みによって、この端部と本体保持部321aとの間に挟みこまれて脱落し難くなる。マスク等は、例えば火災現場からの避難の際や、避難場所1での滞在の際に有効である。一対の本体保持部321aがあることにより、マスク等を避難者2が手で持ち歩く必要がないのは勿論である。
【0037】
第一紐部322は、伸縮性を有する帯状のゴム紐であって、本体左カバー部321bおよび本体右カバー部321cの上記縫い合わせられた長辺部(本体縫い合わせ後部321e)およびカバー側スリット38に沿って長くのびるように形成される。第一紐部322は、本体右カバー部321cの上記縫い合わせられた長辺部(本体縫い合わせ後部321e)およびカバー側スリット38の近傍に配置される。尚、第一紐部322は、後述する椅子への括り付けに配慮して上記位置に配置される。第一紐部322の配置は、防災頭巾3の装着の際に邪魔にならないように配慮されている。
【0038】
第一紐部322の一端は、本体右カバー部321cに対し固定状態に取り付けられる。即ち、第一紐部322の一端は、本体右カバー部321cに対し縫い付けられる。第一紐部322の一端は、上述の二つ折りの側(本体折り返し頂部321dの側)に縫い付けられ、これによって固定される。第一紐部322の一端は、帯状の第一紐部322の一方の面(表面)が外側になるように、また、他方の面(裏面)が本体右カバー部321cの生地外面に接して内側になるように固定される。第一紐部322の他端は、本体右カバー部321cに対し着脱自在の状態に取り付けられる。即ち、第一紐部322の他端は、本体右カバー部321cに対し縫い付けでない状態に取り付けられる。具体的には、第一紐部322の他端は、一対の面ファスナー325(マジックテープ(登録商標)の接合部材)によって着脱自在の状態に取り付けられる。第一紐部322の他端は、帯状の第一紐部322の一方の面(表面)が内側になるように折り返されて、本体右カバー部321cの生地外面に対向するように取り付けられる。第一紐部322の他端と、本体右カバー部321cの生地外面との間には、一対の面ファスナー325が設けられる。第一紐部322の他端は、所定の外力の付加により、本体右カバー部321cから外れる状態(離れる状態)に取り付けられる。尚、第一紐部322の他端の位置での、上記外れる状態(離れる状態)に関しては(換言すれば第一紐部322の作用については)、
図12を参照しながら後述するものとする。
【0039】
第二紐部323は、第一紐部322と同様に伸縮性を有する帯状のゴム紐にて形成される。第二紐部323は、この一端および他端が本体左カバー部321bの一対の長辺部に位置するように夫々取り付けられる。即ち、第二紐部323の一端は、第一開口部35の位置に合わせて取り付けられ、他端は上記縫い合わせられた長辺部(本体縫い合わせ後部321e)の位置に合わせて取り付けられる。第二紐部323は、本体左カバー部321bの生地内面の側において袋形状に形成された本体保持部321aの開口位置に合わせて配置される。尚、第二紐部323は、ゴム紐であることから、のばすことによって本体右カバー部321cの側へ移動させることも可能である。即ち、
図4(a)の状態では、第二紐部323が右側に示されているが、これを左側に移動させることが可能である(
図4(b)の状態では、第二紐部323が左側に示されているが、これを右側に移動させて第一紐部322の一端側の上に配置することが可能である)。このような移動をさせた状態の一例が
図15(a)に少しだけ示されている。例えば、
図15(a)のように移動させれば、座布団として使用する際に、第二紐部323は全く邪魔にならないのは勿論である(以上のような移動をさせなくとも、第二紐部323は臀部に触れるような位置に配置されていないことから、元々邪魔にならないのは勿論である)。
【0040】
第二紐部323の一端および他端は、本体左カバー部321bに対し固定状態に夫々取り付けられる。即ち、第一紐部322の一端および他端は、本体左カバー部321bに対し夫々縫い付けられる。第二紐部323は、この一端から他端にかけての、第二紐部323の中間が、本体左カバー部321bの生地外面に対し非固定状態になるように取り付けられる。即ち、空間が生じるように取り付けられる。第二紐部323の中間と、本体左カバー部321bの生地外面との間は、防災頭巾3に対し別の物体(後述する)を挿通するための挿通部(符号省略)として形成される。尚、上記別の物体を挿通する際に、第二紐部323を引っ張ってのばすことにより、上記挿通部が本体左カバー部321bの生地外面との間で形成される。
【0041】
第三紐部324は、帯状の紐にて形成される。第三紐部324は、特に限定するものでないが、第一紐部322および第二紐部323と異なり、伸縮性を持たせないものが採用される。また、第三紐部324は、第一紐部322および第二紐部323と比べて十分短く形成される。第三紐部324は、カバー本体321における上記二つ折りの部分(本体折り返し頂部321d)に配置される。即ち、第三紐部324は、本体左カバー部321bおよび本体右カバー部321cの境界に配置される。第三紐部324は、防災頭巾3における頂部となる位置に配置される(
図2参照)。第三紐部324の一端は、カバー本体321に対し固定状態に取り付けられる。即ち、第三紐部324の一端は、本体左カバー部321bに対し縫い付けられる。これに対し、第三紐部324の他端は、カバー本体321に対し着脱自在の状態に取り付けられる。第三紐部324の他端には、一対のホック326が設けられる。一対のホック326は、カバー本体321側に設けられる凹ホックと、第三紐部324の他端側に設けられる凸ホックとで構成される。尚、第三紐部324の一端を着脱自在にするとともに、他端を固定状態に取り付けてもよいものとする。第三紐部324は、上記二つ折りの部分(本体折り返し頂部321d)の中央位置に配置される。第三紐部324は、この一端から他端にかけての、第三紐部324の中間が、上記二つ折りの部分を跨ぐように配置される。第三紐部324の中間は、略環状になるようなフック形状に形成される。
【0042】
以下、防災頭巾本体31の詳細について説明する。
図9は、防災頭巾本体31を示す図であり、(a)は防災頭巾本体31の正面図、(b)は防災頭巾本体31の背面図である。
【0043】
図9において、防災頭巾本体31は、頭巾部311と、顎紐部312とを備えて構成される。防災頭巾本体31は、この防災頭巾本体31のみであっても自然災害時の保護機能を十分に確保することができるように形成される。頭巾部311は、木綿製の二枚の布の間に、綿やスポンジ等のクッション材を入れ、そして、キルト加工やパイピング処理を施して形成される。頭巾部311は、長辺が短辺に対して十分に長い長方形のもの(上記キルト加工等がなされたもの)を二つ折りにして形成される。頭巾部311は、この二つ折りの部分の両側に、同じ大きさとなる長方形の左側頭巾部311aと右側頭巾部311bとを有するように形成される。左側頭巾部311aと右側頭巾部311bの上記二つ折りの部分は、折り返し頂部311jとして形成される。
【0044】
左側頭巾部311aおよび右側頭巾部311bは、夫々、一対の長辺部を有し、一対の長辺部のうちの一方には、顔側開口部33が形成される。これに対し、一対の長辺部のうちの他方同士は、縫い合わせられて縫い合わせ後部311kが形成される。縫い合わせ後部311kの下側には、頭巾側スリット37が形成される。頭巾部311は、上記キルト加工の縫い目があることから、この縫い目による凹みによって、避難者2の頬との間に空気の通路が生じるようになる。即ち、頭巾部311の内側は、上記キルト加工によって避難者2の頬が密着しないようになる。キルト加工における上記クッション材としては、上記綿やスポンジの他に、発泡ウレタンやフェルト、発泡ゴム、プラスチックパイプ等も挙げられる。
【0045】
図9には、顔側開口部33が示される。顔側開口部33は、この顔側開口部33を横切って(交差して)配置される顎紐部312の作用により、閉じた状態が維持される。顔側開口部33の下側には、首側開口部34が配置される。首側開口部34は、顔側開口部33の下側に連続するように形成される。首側開口部34は、
図9の紙面垂直方向にのびるように形成される。顔側開口部33は、上述したように、避難者2の顔を臨むことができるように開口形成される(
図2および
図3参照)。また、首側開口部34は、避難者2の頸部22を挿通することができるように開口形成される(
図2および
図3参照)。顔側開口部33および首側開口部34は、L字状に連続するように配置される。
【0046】
図9の符号311cは、左側頭部保護部を示すものとする。左側頭部保護部311cは、顔側開口部33と後述する後頭部保護部311fとの間に配置されて、避難者2の左側頭部や左耳を保護することができるように(覆うことができるように)形成される。
図9の符号311dは、右側頭部保護部を示すものとする。右側頭部保護部311dは、顔側開口部33と後述する後頭部保護部311fとの間に配置されて、避難者2の右側頭部や右耳を保護することができるように(覆うことができるように)形成される。
図9の符号311eは、頭頂部保護部を示すものとする。頭頂部保護部311eは、左側頭部保護部311cや右側頭部保護部311d、後述する後頭部保護部311fの上側に配置されて、避難者2の頭頂部を保護することができるように(覆うことができるように)形成される。頭頂部保護部311eは、折り返し頂部311jの位置を中心に配置される。
【0047】
図9の符号311fは、後頭部保護部を示すものとする。後頭部保護部311fは、顔側開口部33の反対側の位置(左側頭巾部311aおよび右側頭巾部311bの上記縫い合わせの位置(縫い合わせ後部311k))に配置されて避難者2の後頭部を保護することができるように形成される。
図9の符号311gは、左頸部保護部を示すものとする。左頸部保護部311gは、左側頭部保護部311cの下側に配置されて、避難者2の左頸部および左肩の一部を保護することができるように(覆うことができるように)形成される。
図9の符号311hは、右頸部保護部を示すものとする。右頸部保護部311hは、右側頭部保護部311dの下側に配置されて、避難者2の右頸部および右肩の一部を保護することができるように(覆うことができるように)形成される。
図9の符号311iは、後頸部保護部を示すものとする。後頸部保護部311iは、後頭部保護部311fの下側に配置されて、避難者2の後頸部を保護することができるように(覆うことができるように)形成される。尚、後頸部保護部311iの下側には、頭巾側スリット37が配置される。
【0048】
図9において、顎紐部312は、伸縮性を有する帯状のゴム紐が採用される。顎紐部312は、この一端が後頭部保護部311fの側(後頸部保護部311iの側)に取り付けられる。また、顎紐部312の他端は、顔側開口部33の側に取り付けられる。もう少し具体的に説明すると、顎紐部312の一端は、縫い付けによって後頭部保護部311fの側(後頸部保護部311iの側)に固定される。即ち、縫い合わせ後部311kの位置でこれと一緒に縫い合わせられて固定される。顎紐部312の他端は、縫い付けによって顔側開口部33の近傍に固定される。尚、顎紐部312の他端は、例えば面ファスナー等を用いて着脱自在に取り付けてもよいものとする。
【0049】
顎紐部312の一端から他端にかけての、顎紐部312の中間は、右側頭巾部311bの外面(表面)に対し接するような長さに形成される。即ち、顎紐部312は、装着前の状態において、だぶつきがないように形成される(
図9および
図10参照)。顎紐部312の中間と他端の境界部分(中間における他端側となる部分(顎紐中間と呼ぶことにする))は、顔側開口部33を
図9(a)の左右方向に横切るように(交差するように)配置される。顎紐部312は、顔側開口部33を横切る部分(顎紐中間)を含んで避難者2の顎に引っ掛かるように配置される(
図2および
図3参照)。顎紐部312は、上述の如く、一端から他端にかけて長く形成される。また、全体的に伸縮性を有するように形成される。そのため顎紐部312は、避難者2の装着性を十分に確保した状態に形成されると言える。顎紐部312はのび代が長く、避難者2の頭部21のような比較的大きなサイズであっても通過させることが可能であることから、装着性を十分に確保することができる。
【0050】
図10は、防災頭巾本体31を示す図であり、(a)は防災頭巾本体31の左側面図、(b)は防災頭巾本体31の右側面図である。
【0051】
図10(a)には、頭巾部311の左側頭巾部311a、および顎紐部312の中間が示される。左側頭巾部311aにおける顎紐部312よりも図の上側には、左側頭部保護部311cが示される。この左側頭部保護部311cの図の右側には、後頭部保護部311fが示される。また、左側頭部保護部311cの図の上側には、頭頂部保護部311eが示される。一方、左側頭巾部311aにおける顎紐部312よりも図の下側には、左頸部保護部311gが示される。左頸部保護部311gにおける図の下側の部分(防災頭巾カバー32の本体保持部321aによって保持される部分、即ち防災頭巾本体31の端部)は、他の部分と比べて若干厚みを有するように形成される。これは本体保持部321aに差し込まれた際に潰れて元の状態に戻ろうとする力が生じることから、これを利用して脱落し難くするためである。また、避難者2が防災頭巾3を装着する(被る)際に、手で掴み易くするためである。
【0052】
以上のような頭巾部311の左側頭巾部311aは、
図10(b)に示される右側頭巾部311bと同じ形状に形成される。
図10(b)には、頭巾部311の右側頭巾部311b、および顎紐部312の他端が示される。右側頭巾部311bにおける顎紐部312の他端よりも図の上側には、右側頭部保護部311dが示される。この右側頭部保護部311dの図の右側には、後頭部保護部311fが示される。また、右側頭部保護部311dの図の上側には、頭頂部保護部311eが示される。一方、右側頭巾部311bにおける顎紐部312の他端よりも図の下側には、右頸部保護部311hが示される。右頸部保護部311hにおける図の下側の部分(防災頭巾カバー32の本体保持部321aによって保持される部分、即ち防災頭巾本体31の端部)は、他の部分と比べて若干厚みを有するように形成される。これは上述同様、本体保持部321aに差し込まれた際に、元の状態に戻ろうとする力を利用して脱落し難くするためである。また、避難者2が防災頭巾3を装着する(被る)際に、手で掴み易くするためである。
【0053】
図11は、防災頭巾本体31を示す図であり、(a)は防災頭巾本体31の平面図、(b)は防災頭巾本体31の底面図である。
【0054】
図11(a)には、頭巾部311の折り返し頂部311jおよび頭頂部保護部311eが示される。折り返し頂部311jは、左側頭巾部311aおよび右側頭巾部311bの境界で二つ折りにして形成される。折り返し頂部311jは、避難者2が防災頭巾3を装着すると(被ると)、この時、曲げ半径が大きくなるように形成される。折り返し頂部311jは、二つ折りによって、避難者2の頭部21(頭頂部)にフィットし易くなるように形成される(
図3参照)。避難者2の頭頂部は、頭頂部保護部311eにより保護される。
図11(b)には、首側開口部34が示される。首側開口部34は、まず先に避難者2の頭部21が差し込まれる部分であって、その後、避難者2の頸部22が挿通状態になるように開口形成される(
図3参照)。首側開口部34は、
図11(b)の状態で閉じているように見えるが、避難者2の頭部21や頸部22に合わせて図の左右方向に広げることができるように形成される。
【0055】
以上のような構成および構造の防災頭巾3に関し、以下、第一紐部322の機能について説明をする。
図12は第一紐部322の機能を示す図であり、(a)は第一紐部322に外力が付加される前の状態を示す図、(b)は第一紐部322に外力が付加され始めた状態を示す図、(c)は第一紐部322の端部(他端)が外力の付加によって外れ始めた状態を示す図、(d)は第一紐部322の端部(他端)が外力の付加によって外れた状態を示す図である。
【0056】
図12(a)に示すように、外力が付加されない状態において、第一紐部322の中間(一端と他端との間)は、本体右カバー部321cの生地外面に対し単に載せたような状態にある。仮に、
図12(b)に示すように、第一紐部322の中間が引っ張られるような外力が付加されると、その外力は第一紐部322の一端および他端に向けて分散される。尚、第一紐部322の一端(
図12では図示省略)は、上述の如く縫い付けにより固定状態にあることから外れることはない。面ファスナー325の係合力以上の外力が第一紐部322の他端に付加されると、この第一紐部322の他端は、
図12(c)、(d)に示すように外れた状態になる。
【0057】
第一紐部322を用いて防災頭巾3を別の物体に括り付けておいた場合には、例えば防災頭巾3の方を引っ張れば、上記別の物体に対する括り付けを解除することができるようになる。
第一紐部322の他端が折り曲げられ、このような折り曲げにより形成される他端を、面ファスナー325を用いて着脱自在にしていることから、外力が付加されると、上記のような外れをスムーズに生じさせることができるようになる。
【0058】
図13は防災頭巾3に係る図であり、(a)は防災頭巾3の装着について説明するための図、(b)は名前表示部313の構成について説明するための図、(c)は頭巾部311に設けられた名前表示部313の図、(d)は(a)の矢印Y3の方向から見た第一紐部322(変形例)の一端の拡大図、(e)は(a)の矢印Y3の方向から見た第一紐部322(変形例)の他端の拡大図である。
【0059】
図13(a)において、防災頭巾3は、図の下から上に向けて示された矢印Y1方向に沿って装着が行われるようになる。装着が開始されると、先ず、第二開口部36(首側開口部34(
図2参照))が図の左右方向となる矢印Y2方向に広げられる。第二開口部36が矢印Y2方向に広げられると、第二開口部36の位置と顎紐部312の位置との間に、避難者2の頭部21(
図2参照)が挿入可能となる空間(符号省略)が形成される。この空間には、頭部21が挿入される。そして、防災頭巾3の端部(第二開口部36の側となる下側の端部)を持って、防災頭巾3を図の下側に向けて引き下げると、顎紐部312が矢印Y2の方向に沿ってのばされるような状態になり、顎紐部312の位置よりも上側に頭部21が入り込む。頭部21が顎紐部312の位置よりも上側に入り込み、第一開口部35および顔側開口部33から避難者2の顔が臨める状態になると、且つ、顎紐部312が避難者2の顎に引っ掛かると、防災頭巾3の装着が完了する。
【0060】
以上の説明から分かるように、防災頭巾カバー32をしたままの状態で防災頭巾3の装着が可能である。防災頭巾3は、少なくとも防災頭巾カバー32の取り外し時間を削減して、素早く被ることができる。
【0061】
図13(b)および(c)において、頭巾部311の内面(内部)又は外面(外部)には、避難者2の所有物であることを例えば名前で表示するための表示部(ここでは名前表示部313)が設けられる。名前表示部313は、例えば長方形で表面に名前の記入枠がある名前表示部本体313aと、この名前表示部本体313aの取り換えが可能となる面ファスナー313bとを備えて構成される。名前表示部313は、例えば小学生であれば、6年間の学年やクラスの変化に対応することができるような着脱自在の名前表示部本体313aが6枚用意される(購入等で枚数を増やすと、例えば兄弟や知人子息まで対応することが可能になる)。尚、面ファスナー313bは一例であり、例えばホック等を使用して対応してもよいものとする。名前表示部313は、頭巾部311に限らず、防災頭巾カバー32の適宜位置に設けたり、頭巾部311および防災頭巾カバー32の両方に設けたりしてもよいものとする。
【0062】
図13(a)および(d)において、防災頭巾カバー32における第一紐部322の一端は、縫い付けによって固定状態に取り付けられる。第一紐部322の一端は、細かく縫い付けられるとともに、縫い代が二列になるように縫い付けられる。即ち、第一紐部322に例えば大きな外力が付加されたとしても簡単にとれてしまわないように縫い付けられる。小学生の場合、取り扱いが悪い(例えば第一紐部322を持って振り回す等)ことも想定されることから、簡単にとれてしまわないように縫い付けられるのは有効である。長期にわたって使用しても機能が損なわれないように縫い付けられるのが好ましい。
【0063】
図13(a)および(e)において、第一紐部322の他端は、次のように形成される。即ち、先ず、第一紐部322の表面側に面ファスナー325が取り付けられる。次に、面ファスナー325が本体左カバー部321bの側に向くように第一紐部322を折り返して、上記他端が形成される。第一紐部322の他端は、面ファスナー325により着脱自在になり、外力が付加された時には、上記折り返しの位置から面ファスナー325が剥がれるようになる。尚、
図13(a)における第一紐部322は、例えば
図5および
図8に示される第一紐部322と比べて長さが短いものに形成される。つまり
図13は、
図5および
図8の第一紐部322の変形例を示すものとする。
【0064】
図14は防災頭巾本体31を示す図であり、(a)は右側頭巾部311bの側から見た図、(b)は(a)の枠Wの拡大図、(c)は左側頭巾部311aの側から見た図、(d)は(c)の矢印Y4の方向から見た顎紐部312の一端の拡大図である。
【0065】
図14(a)および(c)において、右側頭巾部311b、左側頭巾部311a、および折り返し頂部311jの外観から分かるように、頭巾部311にはキルト加工314が施される。キルト加工314は、一般的に「キルト加工」や「キルティング加工」と呼ばれるもので、生地と生地の間に中綿等のクッション材を挟み、ミシン縫いで刺し縫いをして膨らみを持たせ、直線や曲線等、一定の周期で繰り返し模様を出しているものである。キルト加工314が施された防災頭巾本体31は、クッション性や保温性に優れ、加工を施していないものと比べると、強度も高くなっている。キルト加工314による上記強度に関し、右側頭巾部311bおよび左側頭巾部311aの周囲には、
図14(a)乃至(c)に示すような縫い合わせが施される。即ち、周囲縫い合わせ314a、314bが施される。これら周囲縫い合わせ314a、314bにより、生地同士がしっかりと縫い合わせられることから、強度がアップするのは勿論である。強度アップにより安全性を高めることができる。
【0066】
図14(b)において、周囲縫い合わせ314aと折り返し頂部311jとの間に通気口314cが形成される。通気口314cは、周囲縫い合わせ314aの縫い合わせを施さないことで形成される。
図14(d)において、顎紐部312の一端は、縫い合わせ後部311kの形成に伴い、一緒に縫い合わせられる。これにより、顎紐部312の一端は簡単に外れてしまうことがない。顎紐部312の一端が縫い合わせ後部311kの位置にあることから、装着時における、顎紐部312が元の状態に戻ろうとする弾性復帰の力を有効に作用させることができる(顎紐部312の機能を発揮させることに寄与するのは勿論である)。尚、
図14では、顎紐部312の一端の直下に頭巾側スリット37が配置される(変形例として示すものである)。
【0067】
図15は、防災頭巾3を座布団として使用し椅子CHに括り付けた状態を示す図であり、(a)は第一紐部322に外力が付加される直前の状態を示す図、(b)は外力の付加により第一紐部322の端部(他端)が外れた状態を示す図である。
【0068】
図15(a)において、防災頭巾3は、第一紐部322を用いて例えば椅子CHに括り付けることができる。即ち、椅子CHの座部CHaと、背もたれCHbとの境界に存するパイプ部分に括り付けることができる。このような括り付けの状態において、避難者2が矢印Y5の方向に防災頭巾3を引っ張り、第一紐部322に外力が付加されると、第一紐部322の他端に設けられる面ファスナー325(
図12参照)同士の接合が剥がれることになる。これにより、
図15(b)に示すように、第一紐部322の他端が外れて括り付けの状態が解除される。従って、上述の引っ張る、と言うワンアクションだけで、避難者2は防災頭巾3の装着が可能になる。換言すれば、素早く防災頭巾3を被る行動へ移行することができる。
【0069】
図16は、防災頭巾3をランドセルSBに括り付けた状態を示す図であり、(a)はランドセルSBに括り付けた状態の外観を示す図、(b)はランドセルSBのかぶせSBbに括り付けた状態を示す図、(c)はランドセルSBの吊カンSBcに取り付けた状態を示す図である。
【0070】
図16(a)において、防災頭巾3は、第二紐部323を用いてランドセルSBに括り付けることができる。即ち、第二紐部323の中間と、防災頭巾カバー32の生地外面との間は、防災頭巾3に対し別の物体を挿通するための挿通部(符号省略)として形成されることから、ランドセルSBのかぶせSBbに括り付けることができる。この括り付けの状態においては、ランドセルSBの吊カンSBcに第三紐部324を取り付けることで、防災頭巾3の脱落を防止することができる。図中の符号SBaはランドセル本体を示す。尚、
図16では、ランドセルSBの例を挙げたが、第二紐部323を用いて、例えば老人用手押し車におけるハンドルを支える支柱部分に括り付けることができる。また、第三紐部324を用いて、身近にある、フック状の部分や、水平方向にのびる例えばパイプ状の部分に、ひっかけたり、ぶらさげたりしておくこともできる。
【0071】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0072】
即ち、
図1乃至
図16の防災頭巾3の構成は例示に過ぎず、特に限定されないものとする。即ち、上述した一連の構成の一部又は全部が防災頭巾3に備えられていれば足り、この構成を実現するためにどのような形状(デザイン)や素材を有するのかは特に上述の例に限定されないものとする。また、防災頭巾3の構成も、上述に特に限定されず、任意でよいものとする。
例えば、家庭で単に座布団として使用するだけであれば、防災頭巾カバー32の構成をカバー本体321のみとし、第一紐部322、第二紐部323、第三紐部324を設けないシンプルなものにしてもよいものとする。このような構成であっても、例えば地震が発生した際に、カバー本体321が存在した状態のままで防災頭巾3を素早く装着することができるのは勿論である。
また、例えば、避難者2の頭部21から頸部22にかけて保護する以外に、避難者2の肩全体を保護するような形状の防災頭巾3であってもよいものとする。
また、例えば、防災頭巾3をロール状に巻いたり、折り畳んだりして、枕として使用することも可能であるものとする。尚、枕としては、例えば
図20を参照しながら後述する簡易ベッド7での使用が有用である。
【0073】
以上をまとめると、本発明が適用される防災頭巾は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態をとることができる。
【0074】
即ち、本発明が適用される防災頭巾(例えば
図1の防災頭巾3)は、避難者(例えば
図1の避難者2)の少なくとも頭部(例えば
図1の頭部21)から頸部(例えば
図1の頸部22)にかけて保護するための防災頭巾本体(例えば
図2の防災頭巾本体31)と、この防災頭巾本体を覆う防災頭巾カバー(例えば
図2の防災頭巾カバー32)とを備え、防災頭巾本体は、避難者の顔を臨むように開口形成される顔側開口部(例えば
図2の顔側開口部33)と、この顔側開口部に連続し且つ避難者の頸部の挿通が可能に開口形成される首側開口部(例えば
図2の首側開口部34)と、を有する頭巾部(例えば
図2の頭巾部311)を備え、防災頭巾カバーは、頭巾部の一部を保持する本体保持部(例えば
図2の本体保持部321a)と、顔側開口部の配置に合わせて開口形成される第一開口部(例えば
図2の第一開口部35)と、首側開口部の配置に合わせて開口形成され且つ第一開口部に連続して開口形成される第二開口部(例えば
図2の第二開口部36)と、を有するカバー本体(例えば
図2のカバー本体321)を備える。
本発明が適用される防災頭巾によれば、首側開口部の位置で第二開口部が開口することから、防災頭巾カバーがある状態でも、避難者は第二開口部および首側開口部を介して装着を開始することができる。また、第二開口部に連続して顔側開口部の位置で第一開口部が開口することから、防災頭巾を装着してすぐに、避難者は顔側開口部および第一開口部を介して外を見ることができる。本発明が適用される防災頭巾によれば、防災頭巾カバーがある状態でも防災頭巾を素早く装着することができる。換言すれば、ユーザ(避難者)の利便性を向上させた防災頭巾を提供することができる。
【0075】
また、防災頭巾カバーは、伸縮自在な紐状の第一紐部(例えば
図2の第一紐部322)を更に有し、第一紐部は、この第一紐部の一端がカバー本体に対し固定状態に取り付けられ、且つ、第一紐部の他端が所定の外力の付加によりカバー本体から外れる状態に取り付けられる。
第一紐部の他端が所定の外力の付加によりカバー本体から外れる状態に取り付けられることから、第一紐部を用いて防災頭巾を括り付けておいた状態でも、所定の外力が付加されることにより、第一紐部の他端がカバー本体から外れ、その結果、素早く防災頭巾を被る行動へ移行することができる。
また、防災頭巾カバーは、伸縮自在な紐状の第二紐部(例えば
図2の第二紐部323)を更に有し、第二紐部は、この第二紐部の一端および他端が共にカバー本体に対し固定状態に取り付けられ、且つ、第二紐部の一端から他端にかけての、第二紐部の中間と、カバー本体との間に生じる空間が防災頭巾カバーに対し別の物体(例えば
図16のランドセルSBや老人用手押し車)の挿通部(例えば
図16のかぶせSBbに対する挿通の部分)として形成される。
第二紐部を利用して別の物体に取り付ける(括り付ける)ことができることから、防災頭巾を直接持たずに運ぶことが可能になる。例えば、小学生や老人が防災頭巾を運ぶ際に、片手又は両手がふさがれてしまうことがなく、安全を確保することができる。
また、防災頭巾カバーは、カバー本体において第二紐部から離れた位置に設けられる紐状の第三紐部(例えば
図2の第三紐部324)を更に有し、第三紐部は、この第三紐部の一端がカバー本体1に対し固定状態に取り付けられ、且つ、第三紐部の他端がカバー本体に対し着脱自在の状態に取り付けられる。
別の物に取り付けて運ぶ際に第三紐部も利用して取り付ければ、防災頭巾の脱落をより確実に防止することができる。
また、頭巾部は、避難者の頭部における後頭部の配置に合わせて形成される後頭部保護部(例えば
図3の後頭部保護部311f)を更に有し、防災頭巾本体は、避難者の顎の位置に合わせて設けられる伸縮自在な紐状の顎紐部(例えば
図3の顎紐部312)を更に備え、顎紐部は、この顎紐部の一端および他端の間となる顎紐中間が顔側開口部を交差するように配置され、且つ、顎紐部の一端が後頭部保護部の側に固定状態に取り付けられる。
顎紐部の取り付け位置から分かるように、顎紐部を十分にのばすことができる。即ち、装着時に十分にのびて、装着をスムーズに行うことができる。
また、防災頭巾本体は、頭巾部の内部および外部のうち何れか一方に避難者の所有物であることを名前で表示するための名前表示部(例えば
図13の名前表示部313)を更に有し、名前表示部は、上記何れか一方に対して着脱自在に取り付けられる。
名前表示部があることにより、防災頭巾の所有者が誰であるかを容易に確認することができる。また、着脱自在であることから、例えば所有者の名前の変更があっても、容易に対応することができる。
また、頭巾部は、キルト加工(例えば
図14のキルト加工314)により形成される。これにより、防災頭巾本体の強度アップに寄与することができる。
【0076】
本発明が適用される防災頭巾を被った避難者は、例えば
図1に示すように避難場所1に避難する。避難場所1には、例えば簡易テント5や簡易ベッド7等が設置されており、これら簡易テント5や簡易ベッド7等を利用することになる。
【0077】
(簡易テント)
図17は、簡易テント5を示す図であり、(a)は前方幕部522が開いた状態の正面図、(b)は背面図である。尚、
図17(a)を見た時の上下を「上・下」、左右を「左・右」、紙面手前を「前」、紙面奥を「後」と定義して、以下説明をするものとする(後述する
図18、
図19にも適用する)。
【0078】
図17において、簡易テント5は、テント骨格(外枠)としての骨組み51と、この骨組み51に取り付けられるテント本体52とを備えて構成される。簡易テント5は、避難場所1(
図1参照)の例えば屋内において(屋外でもよいものとする)、集まった避難者2(
図1参照)同士のプライバシー確保のために、避難者2と避難者2とを隔てることができるように形成される。
【0079】
骨組み51は、例えば仮想の四角形を床に描いたときに、4つの角の位置に配置されて上下方向にのびる4本の支柱部511と、前側および後ろ側の夫々2本の支柱部511に対し左右方向にのびるように設けられる梁部512と、前後の夫々2本の支柱部511に対し前後方向にのびるように設けられる桁部513と、4本の支柱部511の上端から中央に向けて錐状(錐形)に配置される4本の合掌部514と、この4本の合掌部514を支える4本の筋交い部515とを有する。骨組み51は、例えば磁石がつくような鉄製のものが採用される(材質は一例であるものとする)。骨組み51は、組み立て性の面から考えて、軽量なものが好ましい。尚、特に図示しないが、支柱部511の本数を増やし且つ頂部となる位置に棟部を設けるような構造であってもよいものとする。
【0080】
テント本体52は、上側(天井側)に配置される天幕部521と、前側に配置される前方幕部522と、後側に配置される後方幕部523と、左側に配置される左方幕部524と、右側に配置される右方幕部525と、下側に配置される床幕部526と、これらの幕部を夫々、骨組み51に取り付けるための複数の留め具527と、例えばシート状のマグネットから形成される複数の留め具528とを有する。テント本体52の素材としては、例えばマスクに使用されるような不織布が採用される(一例であるものとする)。不織布製のテント本体52は、外側から見て内側が透けず、また、内側で例えば懐中電灯を灯したときに、外側ではほんのりと明るく見えるように形成されることが好ましい。
【0081】
天幕部521は、四角錐形状に形成される。即ち、中央部分が高くなるように形成される。換言すれば、天井部分が平とならず、内部容積をアップさせた形状に形成される。このような形状の天幕部521は、圧迫感を生じさせないようにすると言う狙いがある。前方幕部522には、スリット522aが形成される。スリット522aは、前方幕部522の左右方向中央位置で上下方向に切り欠くように形成される。前方幕部522は、後方幕部523、左方幕部524、および右方幕部525と異なり、前方幕部522の下端が床幕部526に対して繋ぎ合わせられていない状態に形成される。この繋ぎ合わせられていない状態は、前方幕部522に左開閉部522bおよび右開閉部522cを形成して、入口・出口とすることができるようにするためである。
【0082】
図18は、前方幕部522を説明するための図であり、(a)は右開閉部522cを開いた状態の図、(b)は(a)の留め具28について説明するための拡大図、(c)は(a)の目印527cについて説明するための拡大図である。また、
図19は、留め具527およびアジャスター529を示す図であり、(a)は支柱部511に取り付けられた状態の留め具527の拡大図、(b)は梁部512に取り付けられた状態の留め具527の拡大図、(c)はアジャスター529の構成を示す図、(d)はアジャスター529の使用について説明するための図である。
【0083】
図17乃至
図19において、留め具527は、テント本体52を骨組み51に取り付けるために複数個所設けられる(図中の配置に限定されないものとする。テント組み立て性の向上のため、最小限の数で設けることが好ましい)。留め具527は、帯状の留め具本体527aと、この留め具本体527aに設けられるホック527bとを有する。留め具527には、
図19(a)および(b)に示すように、例えば「A」や「B」の印(符号省略。シールの貼り付け等でもよいものとする)が設けられ、同様に骨組み51に設けられた印に合わせて取り付ければよい。取り付けは、留め具本体527aを環状にした後にホック527bを係合させれば完了である。尚、留め具527を単なる紐としてもよいが、結ぶ手間を考えると図示形態の方が好ましい。
【0084】
留め具527は、
図19(a)および(b)に示すように、遊びが少なくサイズ調整が不要で、設置時間短縮に効果的である。しかしながら、例えば骨組み51と異なる骨組みを使用しなければならない等の状況であれば、
図19(c)および(d)に示すようなアジャスター529を用いて対応することができる。アジャスター529は、例えば不織布テープであるアジャスター本体529aと、このアジャスター本体529aの両端に夫々設けられる面ファスナー529bとを有する。アジャスター529は、留め具527に対し繋ぐように自身を環状にして使用される。アジャスター529は、上述のような遊び調整以外に、例えば天幕部521の内側で懐中電灯を吊るしたりする際に有用である。
【0085】
図17および
図18において、上述の如く、シート状のマグネットから形成される複数の留め具528は、前方幕部522のスリット522aや床幕部526に適宜配置される(図中の配置は一例であるものとする)。留め具528は、前方幕部522の左開閉部522bおよび右開閉部522cを閉じたり開いたりする際に用いられる。
図18(a)および(b)に示すように、右開閉部522cを開いた状態にする際には、留め具528を支柱部511に張り付けるようにすればよい。留め具528は、開閉の簡素化に有効である。尚、
図18(a)には、開いた状態の右開閉部522cの奥に簡易ベッド7が見える(設置位置は一例であるものとする)。簡易ベッド7については、
図20を参照しながら後述するものとする。
【0086】
図17(a)および
図18(c)において、前側の梁部512に取り付けられる留め具527の下には、目印527cが設けられる。目印527cは、骨組み51に取り付ける前の、畳んだ状態のテント本体52の前面(前方幕部522)の向きを容易に確認できるようにするために設けられる。目印527cは、テント本体52の素材である白い不織布に対し識別が容易となる例えば赤色のものが採用される。テント本体52の素材である不織布は、ポリエステル不織布にポリエチレンシートをラミネートしたものが採用される(衝撃投下性、静水圧において適合判定を取得したものである)。
【0087】
以上、簡易テント5の一実施形態について説明したが、簡易テント5は、上述の実施形態に限定されるものではなく、簡易テント5としての目的を達成できる範囲での変形、改良等は含まれるものである。
【0088】
即ち、
図17乃至
図19の簡易テント5の構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の構成の一部又は全部が簡易テント5に備えられていれば足り、この構成を実現するためにどのような形状(デザイン)や素材(上述の実施形態では不織布)を有するのかは特に
図17乃至
図19の例に限定されない。具体的には、上述の実施形態では、簡易テント5の素材として不織布を使用したが、これに限定されない。例えば、この不織布を防水布に変更し、一部の留め具等を変更すれば、アウトドア用としても利用できるようになる。簡易テント5によれば、従来から利用されるテントと比較して、その設営時間が1/5から1/6に短縮できるようになる。また、簡易テント5の構成も、
図17乃至
図19に特に限定されず、任意でよい。例えば、
図19に示す複数のパーツの一部又は全部を1つのパーツとして提供してもよい。
【0089】
簡易テント5は、
図17乃至
図19に記載の構成を有し、これにより簡易テント5の利便性を向上させることができる。
【0090】
(簡易ベッド)
図20は、簡易ベッド7を示す図であり、(a)は外観および構成を説明するための図、(b)は簡易ベッド7を構成する箱体71の配置について説明するための図である。尚、
図20を見た時の上下を「上・下」、左右を「左・右」、紙面手前を「前」、紙面奥を「後」と定義して、以下説明をするものとする。
【0091】
図20において、簡易ベッド7は、段ボール製の例えば12個の箱体71と、この箱体71を2列に並べてその上に載せられる天板72とを備えて構成される。簡易ベッド7は、避難場所1(
図1参照)等において使用されるものであって、折り畳めて持ち運べることができるように形成される。天板72は、箱体71と同様に段ボール製であって、前後方向に長い長方形に形成される。天板72は、4個の箱体71のサイズで三つ折りすることができるように形成される。以上のような簡易ベッド7は、
図21に示すようなテーブルセット8に変化させることができる。
【0092】
図21は、簡易テーブル81を含む簡易テーブルセット8を示す図であり、(a)は外観および構成を説明するための図、(b)は簡易テーブル81および簡易椅子82を構成する箱体71の配置について説明するための図である。
【0093】
図21(a)において、簡易テーブルセット8は、簡易テーブル81と、4つの簡易椅子82(71)とを備えて構成される。簡易テーブル81は、8個の箱体71と、この箱体71を組み合わせた上に載せられる天板83とを備えて構成される。天板83は、箱体71と同様に段ボール製であって、8個の箱体71の組み合わせ形状に合わせて平面視正方形に形成される。尚、簡易椅子82は、箱体71を椅子として使用するものである。
【0094】
図20(a)の簡易ベッド7および
図21(a)の簡易テーブルセット8は、構造が簡単であるため、直感的に作る(組み立てる)ことができるようなものである(組み立て作業時間が少なく、利便性が高い)。以下、簡易ベッド7および簡易テーブルセット8に使用される箱体71について説明する。尚、箱体71の上部を箱上部711、側部を箱側部712、下部を箱下部713と呼ぶことにする。
【0095】
図22は、
図20および
図21の箱体71を示す図であり、(a)は箱上部711の側から見た図、(b)は箱下部713の側から見た図、(c)は補強部714を設けて箱上部711の側から見た図である。
【0096】
図22において、箱体71の箱上部711(
図20参照)は、第1上板711aと、第2上板711bと、第3上板711cと、第4上板711dとを有し、夫々、蓋状に形成される。第1上板711aには、凸形状の差し込みとなる係合凸部711eが形成される。第2上板711bには、係合凸部711eが差し込まれる凹形状の係合凹部711fが形成される。また、箱体71の箱側部712(
図20参照)は、第1側板712aと、第2側板712bと、第3側板712cと、第4側板712dとを有する。また、箱体71の箱下部713(
図20参照)は、第1下板713aと、第2下板713bと、第3下板713cと、第4下板713dとを有する。第1下板713a~第4下板713dは、底の部分がワンタッチで組み立てできるような(テープを用いずに組み立てできるような)係合部(符号省略)を夫々有する。補強部714は、スリットを有する四角形の段ボール製の板であって、2枚の補強部714をスリットの位置でX状に組み合わせて(
図22(c)参照)使用される。
【0097】
図23は、箱上部711(
図20および
図21参照)の組み立てを説明するための図であり、(a)は4枚の上板が開いた状態の図、(b)は2枚の上板が閉じられた状態の図、(c)は最後1枚の上板が閉じられる直前の状態の図である。
【0098】
図23(a)において、2枚の補強部714を収容した箱体71は、4方向の矢印が示すように、第1上板711a~第4上板711dが開いた状態にある。このような状態から、先ず、
図23(b)に示すように第3上板711cおよび第4上板711dが夫々閉じられ、次に、
図23(c)に示すように第2上板711bが閉じられ、最後に第1上板711aが閉じられ、そして、係合凸部711eが係合凹部711fに差し込まれると、箱体71の組み立てが完了する。箱体71は、4枚の段ボール板(第1上板711a~第4上板711d)にて箱上部711(
図20および
図21参照)が形成され、また、この下にX状に組み合わせた2枚の補強部714があることから、十分な強度が確保される。
【0099】
図24は、簡易ベッド7および簡易テーブルセット8の補足説明図であり、(a)は測定試験装置MATEによる評価について説明するための図、(b)は収納箱73および組立
図731について説明するための図である。
【0100】
図24(a)において、測定試験装置MATEは、いわゆる耐荷重試験装置であって、これを用いて測定したところ、最大耐圧14365Nが表示されたと言う結果が得られた(この数値に限定されないものとする。尚、箱体71を、手前に3個、奥に3個の合計6個配置した測定値である)。従って、上述のように十分な強度が確保される。
【0101】
図24(b)において、収納箱73から各パーツを取り出し、組立
図731に基づいて(又は直感的に)組み立てを行うと、
図20および
図21に示すような簡易ベッド7および簡易テーブルセット8を簡単に作ることができる。尚、符号732は注意書きを示す。簡易ベッド7や簡易テーブルセット8として使用した後には、収納箱73に戻すことができる。即ち、再使用ができる。
【0102】
以上、簡易ベッド7および簡易テーブルセット8の一実施形態について説明したが、簡易ベッド7および簡易テーブルセット8は、上述の実施形態に限定されるものではなく、簡易ベッド7および簡易テーブルセット8としての目的を達成できる範囲での変形、改良等は含まれるものである。
【0103】
即ち、上述した一連の構成の一部又は全部が簡易ベッド7および簡易テーブルセット8に備えられていれば足り、この構成を実現するためにどのような形状(デザイン)や素材(例えば、段ボール)を有するのかは特に
図20乃至
図24の例に限定されない。また、簡易ベッド7および簡易テーブルセット8の構成も、
図20乃至
図24に特に限定されず、任意でよい。例えば、
図20および
図21に示す複数のパーツの一部又は全部を1つのパーツとして提供してもよい。
【0104】
簡易ベッド7および簡易テーブルセット8は、
図20乃至
図24に記載の構成を有し、これにより簡易ベッド7および簡易テーブルセット8の利便性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0105】
1・・・避難場所、2・・・避難者、3・・・防災頭巾、5・・・簡易テント、7・・・簡易ベッド、8・・・簡易テーブルセット、21・・・頭部、22・・・頸部、31・・・防災頭巾本体、32・・・防災頭巾カバー、33・・・顔側開口部、34・・・首側開口部、35・・・第一開口部、36・・・第二開口部、311・・・頭巾部、312・・・顎紐部、313・・・名前表示部、314・・・キルト加工、321・・・カバー本体、322・・・第一紐部、323・・・第二紐部、324・・・第三紐部