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特開2022-64863少なくとも1つの被吊上部を有するクレーン用敷板
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064863
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】少なくとも1つの被吊上部を有するクレーン用敷板
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/78 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
B66C23/78 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021166105
(22)【出願日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】10 2020 126 978.1
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】597120075
【氏名又は名称】リープヘル-ヴェルク エーインゲン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Liebherr-Werk EhingenGmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キースリック マーカス
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA06
3F205FA10
(57)【要約】
【課題】容易に取り扱うことができ、使用する所望の場所にできるだけ短時間で配置し、その後そこから拾い上げることができるクレーン用敷板を作成する。
【解決手段】本発明は、クレーン用敷板を吊り上げ、位置決めする少なくとも1つの被吊上部を備えたクレーン用敷板に関し、このクレーン用敷板は、クレーン支持体を支持するための上面と、床上に敷設するための下面とを有し、板状、好ましくは直方体の基本構造、並びに、上面及び下面を周方向に接続する側面から突出する少なくとも1つの被吊上部を備える。このクレーン用敷板では、被吊上部が敷板から突出した2本のバーと、バーを連結する係止棒とを有していることを特徴としており、バーと係止棒で形成された受け入れ領域によりフックを取り付けるようになっている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り上げて位置決めするための少なくとも1つの被吊上部(20)を備えたクレーン用敷板(7)であって、
クレーン支持体(3,4,5)を支持するための上面(715)及び地面に接地するための下面(716)を有する板状、好ましくは直方体の基本構造と、
前記上面(715)及び下面(716)を周方向に接続する側面(711,712)から突出する前記少なくとも1つの被吊上部(20)とを備えており、
前記被吊上部(20)が、バー(21)及び係止棒(22)により形成され、フック(821)が取り付けられる受け入れ領域を形成するように、前記クレーン用敷板(7)から突出する2本のバー(21)と、前記バー(21)を連結する係止棒(22)とを含む
ことを特徴とするクレーン用敷板(7)。
【請求項2】
前記クレーン用敷板(7)の高さ方向に前記被吊上部(20)が、前記クレーン用敷板(7)の上面(715)を超えて、前記上面(715)又は前記下面(716)に垂直に隆起している
請求項1に記載のクレーン用敷板(7)。
【請求項3】
前記被吊上部(20)の隆起部(23)は、前記クレーン用敷板(7)を越えて高さ方向に延びた後、前記上面(715)の高さよりも低くなるように傾斜して下降している
請求項2に記載のクレーン用敷板(7)。
【請求項4】
2本の前記バー(21)は、前記係止棒(22)と共に、共通平面内に配置され、好ましくは、前記共通平面は、前記クレーン用敷板(7)の上面(715)によって規定される
請求項1から3のいずれか1つに記載のクレーン用敷板(7)。
【請求項5】
前記バー(21)とは反対側に面する前記係止棒(22)の側面に2つの離間したカム(212)が設けられ、
好ましくは、前記カム(212)のそれぞれが、前記係止棒(22)と交差する前記バー(21)のそれぞれの長手方向軸の領域に配置される
請求項1から4のいずれか1つに記載のクレーン用敷板(7)。
【請求項6】
前記係止棒(22)は、前記バー(21)の互いに対向する側面を越えて延び、2本の前記バー(21)の外側の側面で突起(222)を形成するように、2本の前記バー(21)を互いに連結している
請求項1から5のいずれか1つに記載のクレーン用敷板(7)。
【請求項7】
前記カム(212)と前記突起(222)とが互いに直交している
請求項5及び6に記載のクレーン用敷板(7)。
【請求項8】
2つの前記バー(21)を連結する前記係止棒(22)の断面が、フックの湾曲断面と低摩耗の態様で相互作用できるように断面円形形状とされ、
好ましくは、前記係止棒(22)が前記バー(21)を越えて延在するカム(212)を備える
請求項1から7のいずれか1つに記載のクレーン用敷板(7)。
【請求項9】
前記下面(716)に面する前記バー(21)の領域は、前記バー(21)への丸スリング(81)の摩耗のない嵌合を可能にするように丸くなっている
請求項1から8のいずれか1つに記載のクレーン用敷板(7)。
【請求項10】
前記被吊上部(20)、前記バー(21)及び/又は前記係止棒(22)が、鍛造加工を行うことにより、中実に形成されている
請求項1から9のいずれか1つに記載のクレーン用敷板(7)。
【請求項11】
略矩形状の下面を有し、この下面には、前記被吊上部(20)が配置される少なくとも1つの凹部が設けられている
請求項1から10のいずれか1つに記載のクレーン用敷板(7)。
【請求項12】
前記クレーン用敷板(7)は、本質的に直方体の外側輪郭を有し、
好ましくは、前記外側輪郭には、前記被吊上部(20)を配置するために、上面(715)から下面(716)に向かって広がる少なくとも1つの凹部が設けられ、
好ましくは、前記凹部は、配置された前記被吊上部(20)が外側輪郭(71)で定められる矩形領域を超えないように設計されている
請求項1から11のいずれか1つに記載のクレーン用敷板(7)。
【請求項13】
前記被吊上部(20)のそれぞれを配置するために、前記クレーン用敷板(7)に互いに対向して2つ以上の凹部が配置され、
好ましくは、前記クレーン用敷板(7)の四隅にそれぞれ前記凹部が設けられ、前記凹部のそれぞれが前記被吊上部(20)を収容している
請求項12に記載のクレーン用敷板(7)。
【請求項14】
請求項2及び11に記載のクレーン用敷板(7)であって、
前記クレーン用敷板(7)を積み重ねた場合に、前記クレーン用敷板(7)の下面(716)が、前記下面(716)の下に配置された前記クレーン用敷板(7)と摩擦接続するための凹部を有し、
下側の前記クレーン用敷板(7)の前記被吊上部(20)の隆起部(23)が上側の前記クレーン用敷板(7)の前記凹部に収まるようになっている
請求項1から13のいずれか1つに記載のクレーン用敷板(7)。
【請求項15】
前記被吊上部(20)のそれぞれがコーナーに隣接する上面(715)、前記コーナーに隣接する下面(716)、及び前記コーナーに延びる2つの側面(711,712)に隣接するコーナー板(717)に接続されている
請求項12~14のいずれか1つに記載のクレーン用敷板(7)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの被吊上部を有するクレーン用敷板に関する。
【0002】
移動式クレーンは、通常、取り外し可能及び/又は旋回可能な支持梁を含むアウトリガを有する下部構造を備える。支持梁には、支持板を介して地上に取り付けることができる垂直方向に伸縮可能な支持シリンダが装備されている。移動式クレーンを支えることは、クレーン吊り作業の安定性確保にとって有益である。
【0003】
しかし、地面は必ずしも支持板が伝達する力を吸収できるほど耐久性があるとは限らない。しかしながら、これは、クレーンの転倒を引き起こす可能性のある、地盤の故障(破損)に対する重要な安全基準である。
【0004】
そこで、クレーン用敷板を設け、アウトリガを介してクレーンから伝達される力をより広い面積に分散させることで、地盤破壊の危険性を低減している。クレーン支持板の下に、地面に向かって垂直に移動できるクレーン用敷板を設けることで、地面の面圧を軽減することができる。
【0005】
移動式クレーンの吊り上げ能力、使用形態及び地面の耐荷重に応じて、異なる寸法の敷板が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、容易に取り扱うことができ、使用する所望の場所にできるだけ短時間で配置し、その後そこから拾い上げることができるクレーン用敷板を作成することである。
【0007】
さらに、本発明のクレーン用敷板によれば、異なる種類の吊上手段で吊り上げることが可能であることが望ましく、また、本発明のクレーン用敷板は、ワイヤロープだけでなく、例えば、スリーブで吊り上げることができるものである。フックとの連結は、スリングの滑りが発生しないので、より安全である。しかし、変動性の理由から、スリングを介して接続することも可能であるはずである。
【0008】
さらに、本発明は、複数のクレーン用敷板の積み重ねを簡素化することも目的としている。クレーン用敷板は、原則として、積み重ねた状態で移動式クレーンの補助車両により配送される。また、輸送中に個々の敷板が互いにずれないようにすることも重要である。この点も本発明の主題である。
【0009】
本発明の目的は、上記の欠点の一部又は全部を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、請求項1の全ての特徴を有するクレーン敷板によって達成することができる。本発明の更なる有益な実施形態は従属クレームに記載されている。
【0011】
本発明によれば、クレーン用敷板を吊り上げ、位置決めする少なくとも1つの被吊上部を備えたクレーン用敷板は、クレーン支持体を載置する上面と地面に載置するための下面とを備えた板状の、好ましくは直方体状の基本構造を有すると共に、上面及び下面を周方向に接続する側面から突出する少なくとも1つの被吊上部を備えるものとする。クレーン用敷板は、被吊上部が敷板から突出する2本のバーと、これらのバーを連結する係止棒とを含み、これらのバーと係止棒とで、フックを取り付けるための受け入れ領域を形成することを特徴とする。
【0012】
クレーン用敷板から側方に突出するバーと、これらのバーをつなぐ係止棒とで受け入れ領域を形成することで、クレーン用敷板を吊上手段のフックをつなぐことができるようになる。被吊上部は、接続手段のシャックルやフックを有するスリングチェーン及び丸スリングを使用できるように設計されている。基本には、クレーン使用場所に存在する、又は必要箇所の近くにある吊上手段のほとんど全てを使用することができる。
【0013】
加えて、本発明による被吊上部は、上面又は下面に垂直な高さ方向に敷板の上面を超えて隆起してもよい。
【0014】
この隆起部は、複数の同じデザインのクレーン敷板を複数積み重ねて運搬する際に、位置合わせしてずれないように固定するために使用される。この目的のために、1番目のクレーン用敷板の上面からの被吊上部の上方へ突出する隆起部が、その上方に配置されたクレーン用敷板の対応する形状の下面と共同し、その結果、下方に配置されたクレーン用敷板に対して上方に配置されたクレーン用敷板が滑ることが回避される。
【0015】
敷板上方の高さ方向に延びる被吊上部の隆起部は、上面から斜めに延びることが好ましい。
【0016】
これは、別のクレーン用敷板の上にクレーン用敷板を配置したい場合に有利である。積み重ねたクレーン用敷板の搬送寸法をできるだけコンパクトに保つためには、できるだけずれのないように互いに積み重ねる必要がある。下側のクレーン用敷板の被吊上部の隆起部が傾斜を有する場合、上側のクレーン用敷板を載せるときの位置合わせ機能を発揮する。上側のクレーン用敷板を下側の被吊上部の斜面に降ろすと、その自重により横方向の動きを発生させ、これにより、下側のクレーン用敷板に対していかなるオフセットもなしに、上側のクレーン敷板を好ましい位置に自動的に移動させることができる。
【0017】
本発明の任意の変形例では、2本のバーが、係止棒とともに共通平面内に配置され、好ましくは、この共通平面は、クレーン用敷板の上面によって画定され得る。
【0018】
このバーと係止棒の配置は、クレーン用敷板を吊り上げる点で有利であり、それは、敷板を吊り上げるときの吊り上げ力の最適な流れを可能にする。
【0019】
本発明の任意の変形例では、間隔を空けて配置された2つのカムがバーから遠ざかる方向を向く係止棒の側面に設けられ、好ましくは、各カムが、係止棒を横切るそれぞれのバーの長手方向軸線の領域内に設けられ得る。
【0020】
クレーン用敷板の外側に突出する被吊上部のカムは、下側のクレーン用敷板から上方に案内される吊上手段を介してクレーン敷板を固定する役割を果たす。このように、ロープ状のスリングであっても、複数のリンクからなるチェーンであってもよい吊上手段を、2つのカムによって形成される窪みに挿入することができるので、クレーン用敷板が横方向に滑り出すのを防止することができる。例えば、荷卸し又は荷積み中に複数のクレーン敷板の積層体が衝突すると、積層体が傾斜し、個々のクレーン用敷板が積層体から滑り落ちる可能性がある。このような場合には、カムは、吊上手段と協働して敷板を安定させ、敷板に発生しようとする滑りを抑制する。このため、滑りが発生すると、カムが吊上手段と接触し、それ以上の滑りを防止する。
【0021】
本発明の更なる有利な変形例では、係止棒は、2本のバーの対向する側面を超えて延び、2本のバーの外側側面に突起を形成するように、2つのバーを接続してもよい。
【0022】
冒頭で説明したように、本発明の被吊上部は、フックと直接共同できることも望ましい。これは、2つのバーに接続することによって、フックを取り付けるための受け入れ領域を形成する係止棒によって達成される。
【0023】
ここで、それぞれのバーの反対側の突起を設けることで、クレーン用敷板を保持スリングに取り付けることも可能である。したがって、緩んだ状態のスリングは、2つの突起を乗り越えてクレーン用敷板に向かって移動することができるが、2本のバーに取り付けられた緊密な状態のスリングは、突起を乗り越えて外側に向かうことはできない。
【0024】
これにより、被吊上部は、特に可変で汎用性があり、フックやスリングとの相互作用に適している。
【0025】
さらに、本発明によれば、カムと突起とが垂直に整列するように設けられてもよい。また、カム及び突起の長手方向の長さが、上面又はそれに平行な平面によって規定される平面内にあることも可能である。
【0026】
本発明の更なる任意の変形例では、2本のバーを連結する係止棒の断面は、低摩耗でフックの丸い断面と相互作用できるように断面円形であり、好ましくは、バーを超えて延びる突起を有する断面円形であってもよい。
【0027】
本発明によれば、バー上のスリングの摩耗のない嵌合を可能にするように、下側に面するバーの領域が丸みを帯びるようにしてもよい。
【0028】
バーと同様に、係止棒は中実でも中空でもよい。
【0029】
好ましくは、被吊上部、バー及び/又は係止棒は、例えば、鋳鋼製造工程を行うことにより、中実に形成される。しかし、例えば、特殊な素材を使用する、成形、成型、接合、又は剥離など、他の製造プロセス及び/又は製造方法も可能である。しかしながら、鍛造プロセスは、大きな力が加わるので、被吊上部のための好ましい製造方法である。
【0030】
本発明の更なる有利な実施形態では、クレーン用敷板の基本領域に、被吊上部が配置される少なくとも1つの凹部が設けられていてもよい。クレーン用敷板の上面と下面の両方が基本領域に対応している。
【0031】
上面から下面に連続する凹部の利点は、被吊上部の高さが上面よりも高いため、いくつかの同一に形成されたクレーン用敷板を積み重ねるための位置合わせ補助として適していることである。
【0032】
本発明によると、クレーン用敷板は本質的に直方体の外側輪郭であることが好ましい。この外側輪郭の上面から下面にかけて延びる少なくとも1つの凹部を用いて被吊上部を配置することができ、好ましくは、外側面によって画定される基本的な矩形範囲を被吊上部が超えないように設計することができる。
【0033】
これにより、側縁の想像上の枠範囲よりも被吊上部が内側にある場合に、被吊上部にダメージを与える物体との衝突の危険性が低減される。このため、クレーン敷板の側縁は、被吊上部の保護として機能する。
【0034】
さらに、それぞれの被吊上部を配置するための2つ以上の凹部がクレーン用敷板の対向する位置に配置され、好ましくは、実質的に直方体形状であるクレーン用敷板の四角のそれぞれに凹部が設けられ、それぞれに1つの被吊上部が配置されてもよい。
【0035】
凹部は、平面図において、その対角線に沿って分割された半正方形形状を有することができる。
【0036】
本発明の更なる発展形では、クレーン用敷板の下面に凹部を有することが想定され、その結果、この凹部内に敷板を積み重ねる場合には、下に配置されたクレーン用敷板との摩擦接続が行われる。そうすることにより、下側の敷板の被吊上部の隆起部は、上側の敷板の凹部にぴったりと合う。このような摩擦接続が複数存在することで、積み重ねられた敷板を互いに単純に動かすことができない。
【0037】
本発明の好ましい設計によれば、各被吊上部は、コーナーに隣接する上面、コーナーに隣接する下面、及びコーナーに延びる2つの側面の両方に隣接するコーナー板に接続されていてもよい。
【0038】
本発明の更なる特徴、詳細及び利点が、次の図の説明に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】支持アームがクレーン用敷板に支持されている状態の移動式クレーンを示す斜視図である。
図2a】吊上手段に固定された複数の積み重ねられたクレーン用敷板を示す斜視図である。
図2b】4つの被吊上部を備えた本発明のクレーン用敷板の平面図である。
図3a】被吊上部の側面図である。
図3b】被吊上部の斜視図である。
図3c】被吊上部の平面図である。
図4a】敷板の被吊上部に係止された吊上手段の詳細図である。
図4b】吊上手段が取り付けられた敷板の積層体の詳細図である。
図4c】敷板の積層体の上側の敷板の詳細図及び被吊上部に沿う吊上手段の案内を示す図である。
図4d】別のタイプの吊上手段を備えた敷板の積層体の詳細図である。
図5】間隔を空けて配置された2枚のクレーン用敷板を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、移動式クレーン1の斜視図を示しており、その支持アーム3は、支持シリンダ4及び支持板5によってクレーン用敷板7上に支持されている。
【0041】
敷板7で支持することにより、地面に力を伝達することができる接触面積が増加するので、地面破壊のリスクが減少する。
【0042】
これにより、移動式クレーンは、吊り上げ作業によって転倒する危険なしに、安定性の低い表面でも作業することができる。分かりやすくするために、本図面では、移動式クレーンは、その下部構造2のみ示されているが、クレーンブームを有する上部構造は図示されていない。
【0043】
図2aは、いくつかの積み重ねられたクレーン用敷板7を示しており、これらの敷板は、吊上手段8に取り付けられており、この場合、吊りロープである。
【0044】
上述したように、建設現場の地面が十分に安定していない場合は、クレーン用敷板7を使用する必要がある。原則として、移動式クレーン1の各クレーン側支持板5の下にクレーン用敷板7を配置する。移動式クレーン1を接地させるには、4枚の敷板7を配置する必要がある。移動式クレーン1がこれを単独で行うと有利である。そこで、輸送車両が重い敷板7を現場に運び、4枚の敷板7を積層物として積み重ねて配送することになる。
【0045】
移動式クレーン1は、被吊上部20に連結した吊上手段8で敷板7上の積層物を吊り上げ、その積層物を吊り上げて1枚目のクレーン用敷板7の所望の位置に配置する。積層物が地面6上にある場合、補助者は、吊上手段8を最も下のクレーン用敷板7の被吊上部20から取外し、吊上手段8を下から2番目のクレーン用敷板7の被吊上部20と接続する。これは、最後のクレーン用敷板7が所望の位置に来るまで行われる。
【0046】
工事現場から離れて運搬するために、逆の順序で敷板7の積み重ねが行われる。被吊上部20で敷板7の明確な重心を吊り上げさせるためには、1枚の敷板7につき少なくとも2個の被吊上部20が必要である。しかしながら、一般に、敷板7の安定した移動のために、4つの被吊上部20が設けられている。しかし、本発明では、上記被吊上部20の数に限定されないことは、当業者には明らかである。必ずしも被吊上部20の位置をコーナーに限定する必要はない。また、全ての側面に1つの被吊上部20を設けたり、2つの対向する側面のそれぞれに、2つの被吊上部20を配置したりすることも考えられるであろう。
【0047】
クレーン用敷板7は重く、このような大きな寸法を有する重荷重を建設現場で取り扱うため、被吊上部20を損傷から保護しなければならない。したがって、基本的には敷板7の全体的な外側輪郭71に、本質的に凹んだ領域に被吊上部20を配置することが提案される。これは、クレーン用敷板7の全ての点で行うことができ、クレーン用敷板7の四隅の上側又は下側の位置が有利であることが分かっている。
【0048】
丸スリング81は最も下のクレーン用敷板7の被吊上部20の周囲に巻き付けられている。上にある敷板7は、2つのバー21上の丸スリング81によって案内され、これにより、敷板7上の積層物の移動中にも安全に案内される。最上段の敷板7は、丸スリング81を移動式クレーン1上の吊上用アタッチメントの方向に偏向させる。
【0049】
図2bでは、側面711,712の延長部は、実線71によって示されており、それを見ると、それぞれの被吊上部20が、2つの側面711,712の延長部内にあることが分かる。2つの構成要素が建設現場で衝突した場合、通常、安定した側面711,712が衝撃を吸収し、被吊上部20は保護される。
【0050】
図3aは、被吊上部20の側面図である。通常、クレーン用敷板7の上面715と概ね一致する平坦な領域から出発して、この平坦な領域から傾斜を介して突出する隆起部23があることが分かる。また、被吊上部20の有利な設計では、2本のバー21を連結する係止棒22が上面から続く平面内にあることが分かる。
【0051】
図3bは、その基本構造が分かるように、被吊上部20の斜視図を示している。敷板7から突出している2本のバー21が係止棒22で互いに連結されることにより、フックなどを係止するための受け入れ領域が設けられている。バー21と反対側に面する係止棒22の側面には、2つのカム212が突出しており、このカム212は、いくつかの敷板7の積層体で吊上手段8を固定する効果があり、少なくとも被吊上部20の長手方向に平行な動きにおいて、これを制限する。
【0052】
さらに、係止棒22は、2つのバー21の外側を互いに反対方向に向かって延び、スリングが被吊上部20と相互作用するときにスリングの滑りを防止する、いわゆる突起222を形成する。
【0053】
図3cは、被吊上部20の上面図である。被吊上部20のベース板24を見ることができ、このベース板24は、敷板7に密着しており、好ましくは、敷板7の上面715と位置合わせされる。
【0054】
2本のバー21は、丸スリング81とクレーン用敷板7とを接続するために使用される。丸スリング81は、バー21(図2a参照)の周囲に案内される。摩耗を減らすために、バー21は、適切な半径211を有することができる。これらの半径211は、好ましくは、被吊上部20上のほとんど又は全ての遷移部に設けることができる。2つの突起222は、基本的に、丸スリング81をスリップから保護するために使用される。反対側では、敷板7の鋼構造体への連結としてのベース板24がスリングの位置を固定し、スリングの滑りを防止している。
【0055】
図4aは、クレーン用敷板7上の吊上手段8(スリング手段8ともいう)の詳細図である。
【0056】
敷板7とスリングチェーン82とを連結するために、係止棒22が設けられている。係止棒22には、スリングチェーン82の端部に取り付けられた吊りフック821又はシャックル822を取り付けることができる。2つのバー21と係止棒22は、この目的のために安全な受け入れ領域を囲んでいる。バー21は、係止棒22を貫通し、これにより、2つの隆起部、すなわちカム212を形成し、吊りフック821の位置精度を高めることができる。
【0057】
上述したように、隆起部23は、敷板7の上面715を越えて突出している。したがって、隆起部23自体は損傷から保護されなくなるが、頑丈で斜面があるように設計されている。敷板7の下面716は、対応する凹部7161が設けられている。2枚の敷板7を積み重ねると、隆起部23は凹部7161の位置に達し、斜面によって2枚の敷板7が並べられる。2枚の敷板7を互いに配置すれば、十分な形態の整合がなされ、上側の敷板7の重量で固定される。
【0058】
図4bは、下方に配置された敷板7に吊上手段8が取り付けられた敷板7の積層物の詳細図である。ここでは、スリングチェーン82が積み上げられた敷板7のカム212の間に導かれることで、上側の敷板7が追加で案内されることが示されている。
【0059】
図4cは、カム212がスリングチェーン82の移動を制限し、これにより、積層体に配置された敷板7の一定の安定化効果が達成されることを示している。
【0060】
図4dは、敷板7に取り付けられた別のタイプの吊上手段(シャックル822)を示す。ここでは、被吊上部20から敷板7の鋼構造への力の流れに注目すべきである。移動式クレーン1が積み重ねられた敷板7を移動させるので、これが特に当てはまる。この目的のために、適切に傾斜したコーナー板717が設けられ、これはクレーン用敷板7のできるだけ多くの鋼板に接続されている。これらは、上面715、下面716及び隣接する側面の鋼板、例えば側面711及び側面712の鋼板である。また、補強用の力偏向板7171を設け、被吊上部20並びにコーナー板717及び下面716の両方に接続してもよい。この力偏向板7171は、上方から下方へ下向きに延びる平面に対して斜めに延びている。
【0061】
図5は、吊上部20が設けられた状態で上下に並べられた2枚の敷板7が、互いに移動している様子を示す。隆起部23は、上面で定義された平面から上方に延びる境界輪郭を有し、これは、下面の対応する箇所の輪郭に対応している。したがって、2枚の敷板7が互いに正しく配置されると形状適合が生じ、2枚の敷板7の滑りが妨げられる。隆起部23の傾斜により、2枚の敷板7を一緒に移動する際に自動位置合わせが確実に行われる。
【0062】
傾斜は、2枚のクレーン用敷板7を正しく位置合わせするのに役立つ。2枚の敷板7を重ねて配置すれば、十分な形状適合がなされ、それが上側の敷板7の重量によって固定される。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図4d
図5
【外国語明細書】