(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064882
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】NOx吸蔵触媒及びSCRシステムのための排気取込型電気式要素
(51)【国際特許分類】
F01N 3/22 20060101AFI20220419BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20220419BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20220419BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220419BHJP
B60K 6/24 20071001ALI20220419BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20220419BHJP
【FI】
F01N3/22 301L
F01N3/08 B ZAB
F01N3/20 K ZHV
B01D53/94 222
B60K6/24
B60K6/40
F01N3/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021200517
(22)【出願日】2021-12-10
(62)【分割の表示】P 2018551369の分割
【原出願日】2017-03-30
(31)【優先権主張番号】62/315,985
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ベルジャル, ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ダンクリー, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ハッチャー, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】イザード, アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス, ポール
(57)【要約】 (修正有)
【課題】NO
x吸蔵触媒;電気加熱要素;及びNO
x還元触媒を備える排気システムを提供する。
【解決手段】加熱要素は、NO
x吸蔵触媒の下流に位置している。内燃エンジンからの排ガス流を処理する方法であって、NO
xを、低温又は低温を下回る温度でNO
x吸蔵触媒に吸着させること;前記低温を上回る温度で、前記NO
x吸蔵触媒からNOxを熱により脱着させること;電気加熱要素により、下流のNO
x還元触媒を加熱すること;及び前記NO
x還元触媒にある脱着されたNOxを、触媒により除去すること、を含む方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.NOx吸蔵触媒、
b.電気加熱要素、及び
c.NOx還元触媒
を備える排気システムであって、
加熱要素が、NOx吸蔵触媒の下流に位置している、排気システム。
【請求項2】
前記電気加熱要素が、前記NOx吸蔵触媒の直後に位置している、請求項1に記載の排気システム。
【請求項3】
前記NOx吸蔵触媒が、コールドスタート触媒を含む、請求項1に記載の排気システム。
【請求項4】
前記NOx吸蔵触媒が、受動的なNOx吸着材を含む、請求項1に記載の排気システム。
【請求項5】
前記NOx吸蔵触媒が、NOxトラップを含む、請求項1に記載の排気システム。
【請求項6】
前記電気加熱要素が、還元剤注入部の下流に位置している、請求項1に記載の排気システム。
【請求項7】
前記NOx還元触媒の上流に還元剤注入部をさらに備える、請求項1に記載の排気システム。
【請求項8】
前記電気加熱要素が、ミキサと連結されている、請求項1に記載の排気システム。
【請求項9】
前記電気加熱要素が、加水分解触媒と連結されている、請求項1に記載の排気システム。
【請求項10】
前記電気加熱要素が、選択的接触還元(SCR)触媒と連結されている、請求項1に記載の排気システム。
【請求項11】
前記NOx還元触媒が、選択的接触還元(SCR)触媒である、請求項1に記載の排気システム。
【請求項12】
前記NOx還元触媒が、選択的接触還元フィルタ(SCRF)である、請求項1に記載の排気システム。
【請求項13】
前記電気加熱要素が、前記NOx還元触媒の上流に位置している、請求項1に記載の排気システム。
【請求項14】
前記電気加熱要素が、前記NOx還元触媒と連結されている、請求項1に記載の排気システム。
【請求項15】
前記電気加熱要素及び前記NOx還元触媒が、単一の基材内で組み合わされている、請求項1に記載の排気システム。
【請求項16】
前記電気加熱要素及び前記NOx還元触媒の下流に、さらなるNOx還元触媒をさらに備える、請求項1に記載の排気システム。
【請求項17】
前記排気システムが、ハイブリッド式の電動モータ及び内燃機関を動力とする車両と関連するものである、請求項1に記載の排気システム。
【請求項18】
内燃機関からの排ガス流を処理する方法であって、
a.NOxを、低温又は前記低温を下回る温度でNOx吸蔵触媒に吸着させること;
b.前記低温を上回る温度で、前記NOx吸蔵触媒からNOxを熱により脱着させること;
c.電気加熱要素により、下流のNOx還元触媒を加熱すること;及び
d.前記NOx還元触媒にある脱着されたNOxを、触媒により除去すること、
を含む、方法。
【請求項19】
前記低温が、約200℃~約250℃である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
加熱要素が、断続的なパターンでNOx還元触媒を加熱し、残りの時間の間、NOxが前記NOx吸蔵触媒に吸蔵される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記NOx還元触媒を、触媒を活性化させるために充分な温度に加熱する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記NOx還元触媒が、SCR触媒である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記NOx還元触媒が、SCRF触媒である、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記電気加熱要素が、前記NOx吸蔵触媒の直後に位置している、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記電気加熱要素及び前記NOx還元触媒が、単一の基材内で組み合わされている、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記電気加熱要素の下流、かつ前記NOx還元触媒の下流に、さらなるNOx還元触媒をさらに備える、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記NOx吸蔵触媒が、コールドスタート触媒を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
前記NOx吸蔵触媒が、受動的なNOx吸着材を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
前記NOx吸蔵触媒が、NOxトラップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記電気加熱要素が、前記NOx還元触媒と連結されている、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
前記排気システムが、ハイブリッド式の電動モータ及び内燃機関を動力とする車両と関連するものである、請求項18に記載の方法。
【請求項32】
工程bが、熱によるパージを発生させることを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項33】
前記熱によるパージが30秒未満、継続する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記NOx還元触媒を、活性化するために充分な温度に加熱すると、NOxが、前記NOx吸蔵触媒から放出されるように、前記熱によるパージの持続時間及びタイミングを、工程cと調和するように選択する、請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
内燃機関の排気通路に配置された選択的接触還元(SCR)触媒又はフィルタ上にある選択的接触還元触媒(SCRF)を利用する排ガス浄化デバイスは、広く使用されている。一般的に、このような浄化デバイスで使用される触媒は、触媒の温度が特定の温度よりも高くなった場合にのみ、排ガス中にある汚染物質を浄化することができる。すなわちコンバータにおける触媒は、触媒の活性化温度よりも温度が低い場合、働かない。
【0002】
通常、浄化デバイスにおける触媒は、排ガスによって徐々に加熱され、エンジン始動後に活性化温度に達する。しかしながらエンジンの温度が低い場合、例えばエンジンのコールドスタート後には、触媒を活性化温度まで加熱するには長い時間が掛かることがある。なぜならば排ガスの熱は、コンバータに到達する前に、排気通路の冷たい壁によって除去されることがあるからである。そのため、エンジンのコールドスタートでは、エンジンの排ガスは充分に浄化されないことがある。なぜならば触媒の温度は、活性化温度よりも低いからである。
【0003】
排ガスをより早く加熱するための一つのアプローチは、電気加熱システムを備えさせることである。電気エネルギーを使用する現行のシステムはしばしば、酸化被覆を支持する基材内に組み合わされており、電気加熱触媒(EHC)として知られる。この種のシステムは触媒を加熱し、これによって高レベルの炭化水素/ディーゼル燃料及び一酸化炭素を低い入口排気温度で変換することが可能になり、その結果、発熱性で対流する下流が生じ、これによってより早いSCR又はSCRF触媒性能が可能になる。加熱要素は通常、基材の前部にある。
【0004】
基材の前部に加熱要素を備える現行のシステムの問題は、NOx吸蔵触媒を使用することが望ましいシステムでは、下流のSCR触媒がその活性化温度に達する前に、加熱要素がNOx吸蔵触媒を加熱することがあり、熱によるNOxの放出が始まり得ることである。これによりNOxは、還元されずに排気システムを通過してしまうだろう。
【0005】
よって、NOxをNOx吸蔵触媒へと吸蔵させ続けながら、下流のSCRに熱を供給するシステムをもたらすことが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明の幾つかの実施形態によれば、排気システムは、NOx吸蔵触媒;電気加熱要素;及びNOx還元触媒を有し、この際に加熱要素は、NOx吸蔵触媒の下流に位置している。電気加熱要素は、NOx吸蔵触媒の直後に位置していてよい。
【0007】
幾つかの実施形態において、NOx吸蔵触媒は、コールドスタート触媒、受動的なNOx吸着材、及び/又はNOxトラップを備える。
【0008】
幾つかの実施形態において、電気加熱要素は、還元剤注入部の下流に位置している。還元剤注入部は、NOx還元触媒の上流に備えられていてよい。
【0009】
幾つかの実施形態において、電気加熱要素は、ミキサと連結されており、加水分解触媒と連結されており、かつ/又は選択的接触還元(SCR)触媒と連結されている。
【0010】
幾つかの実施形態において、NOx還元触媒は、選択的接触還元(SCR)触媒である。幾つかの実施形態において、NOx還元触媒は、選択的接触還元フィルタ(SCRF)である。電気加熱要素は、NOx還元触媒の上流に位置していてよい。幾つかの実施形態において、電気加熱要素は、NOx還元触媒と連結されている。幾つかの実施形態において、電気加熱要素及びNOx還元触媒は、単一の基材内に組み合わされている。
【0011】
システムは、電気加熱要素及びNOx還元触媒の下流に、さらなるNOx還元触媒をさらに有することができる。
【0012】
幾つかの実施形態において、排気システムは、ハイブリッド式の電動モータ及び内燃機関を動力とする車両と関連するものである。
【0013】
本発明の幾つかの実施形態によれば、内燃機関からの排ガス流を処理する方法は、(a)NOxをNOx吸蔵触媒に低温又は低温よりも低い温度で吸着させること;(b)低温を上回る温度で、NOx吸蔵触媒からNOxを熱により脱着させること:(c)下流にあるNOx還元触媒を、電気加熱要素で加熱すること;及び(d)脱着されたNOxを、NOx還元触媒により触媒で除去することを含む。幾つかの実施形態において低温とは、約200℃~約250℃の温度である。幾つかの実施形態において、加熱要素は、断続的なパターンでNOx還元触媒を加熱し、残りの時間の間、NOxは、NOx吸蔵触媒に吸蔵される。NOx還元触媒は、触媒を活性化させるために充分な温度に加熱することができる。幾つかの実施形態において、電気加熱要素は、NOx吸蔵触媒の直後に位置している。幾つかの実施形態において、NOx吸蔵触媒は、コールドスタート触媒、受動的なNOx吸着材、及び/又はNOxトラップを備える。
【0014】
幾つかの実施形態において、NOx還元触媒は、SCR触媒又はSCRF触媒である。電気加熱要素は、NOx還元触媒の上流に位置していてよい。幾つかの実施形態において、電気加熱要素は、NOx還元触媒と連結されている。幾つかの実施形態において、電気加熱要素及びNOx還元触媒は、単一の基材内に組み合わされている。システムは、電気加熱要素及びNOx還元触媒の下流に、さらなるNOx還元触媒をさらに有することができる。
【0015】
幾つかの実施形態において、排気システムは、ハイブリッド式の電動モータ及び内燃機関を動力とする車両と関連するものである。
【0016】
幾つかの実施形態において、前述の方法の工程bは、熱によるパージを生成させることを含む。熱によるパージは例えば、30秒未満、継続し得る。幾つかの実施形態において、熱によるパージの持続時間及びタイミングは、NOx還元触媒を、活性化するために充分な温度に加熱すると、NOxがNOx吸蔵触媒から放出されるように、前述の方法の工程cと調和するように選択する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】温度及びNO
x累積質量の差異を、時間の関数として示す。
【
図3】加熱ありのシステムの温度、及び加熱なしのシステムの温度を、時間の関数として示す。
【
図4】加熱ありのシステムのNO
x累積質量、及び加熱なしのシステムのNO
x累積質量を、時間の関数として示す。
【
図5】加熱ありのシステムの温度及びNO
x累積、並びに加熱なしのシステムの温度及びNO
x累積を、時間の関数として示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のシステム及び方法は、内燃機関、特にディーエルエンジンの排気通路に配置された電気加熱要素を、NOx吸蔵触媒の下流であって、SCR又はSCRF触媒の上流で使用することに関する。電気加熱要素は、NOx吸蔵触媒の直後に位置決めされているか、又は連結されずにさらに下流に位置していてよい。電気加熱要素は例えば、還元剤射出部の下流で(従ってミキサ、加水分解触媒、又は小さなSCRとして連結される)、慣用のSCR又はSCRF触媒の前に位置決めされていてよい。
【0019】
本発明のシステム及び方法は、排ガス浄化システムのNOx変換全体を改善するように設計されている。SCR又はSCRF触媒が続く、NOx吸蔵触媒を有する現行のシステムでは、SCR又はSCRF触媒がその活性化温度に達する前に、NOx吸蔵触媒が、吸着されたNOxを放出し得ることが判明しており、これによってNOxが、還元されずに排気システムから放出され得る。同様に、電気加熱要素を有する既存のシステムは、電気加熱要素が、酸化触媒よりも上流に、又は酸化触媒と組み合わされて、位置付けられるように構成されている。NOx吸蔵触媒を電気加熱要素よりも後ろで、又は電気加熱要素と組み合わせて用いる場合、加熱されたNOx吸蔵触媒は、熱によりNOxを放出することができ、一方で下流のSCRは、NOxを還元するための活性温度に未だ加熱されていない。よってこのようなシステムは、排気中のNOx放出を減少させるために効果的ではない。
【0020】
現在、NOx吸蔵被覆は、下流のSCR又はSCRF触媒との強固なNOx性能オーバーラップを可能にするために、幅広い吸蔵温度範囲、例えば20℃~400℃までを必要とする。吸蔵範囲を拡大する必要性に対する主な理由は、以下の2つである:a)SCR又はSCRF触媒は、エンジンベイにおけるパッケージ上の制約のため、かなり冷たい位置、例えば本体下部の位置に位置していることがあること;及びb)システムのエネルギー収支:NOx吸蔵触媒(通常、SCR又はSCRF触媒よりも熱容量が低い)は、より迅速に熱くなるであろう。よって、比較的熱容量が高いSCR又はSCRF触媒は、特に二回目の急激な加速(hill acceleration)が非常に攻撃的なFTP放出試験のような状況では、稼働させるには依然として温度が低過ぎる。
【0021】
本発明のシステム及び方法は、これらの論点を取り扱っている。それと言うのも、電気加熱要素をNOx吸蔵触媒の下流であって、SCR触媒の上流に備えさせることによって、NOxをなおも吸蔵しながらSCR触媒が加熱され、これによってNOx吸蔵触媒が、吸着されたNOxを放出すれば、SCR触媒は、NOxを減少させるために活性になることが判明したからである。NOxをなおも吸蔵しながら、SCR又はSCRF触媒を加熱することにより、本発明のシステム及び方法は、以下のことによりさらなる利点をもたらすことができる:a)高価な/多いウォッシュコート負荷量を有するNOx吸蔵触媒(NSC)の必要性が減少する;及び/又はb)NSCのリッチパージに対する必要性が最小化/取り除かれる。この効果はまた、エンジンキャリブレーションを単純化する。それと言うのも、リッチな燃料/空気混合気によりディーゼルエンジンを稼働させることは、複雑だからである。
【0022】
本明細書に記載するNOx吸蔵触媒と加熱要素との組み合わせによってまた、慣用のEHC(その操作は、NOx処理を開始するために、SCRの稼働範囲にできるだけ早く到達する必要がある)において発熱性である必要性と関連する燃料面での不利益及び汚染物質の発生を回避することができる。
【0023】
従来技術による典型的なシステムの例は、以下のものを有する:
NOx吸蔵触媒(広い温度範囲)+SCRF+SCR
【0024】
このようなシステムは、NOx吸蔵触媒の吸蔵能力によって制限され得る。触媒が満杯になるか、又はNOx吸蔵触媒効率が、許容できないほど満杯になるにつれて、SCR又はSCRF触媒が稼働するには温度が低過ぎる場合、NOxはテールパイプへとスリップする。このようなNOxスリップは、NOx吸蔵触媒をリッチな混合気でパージ可能であれば、防止できる(慣用のNOx吸蔵触媒)。通常は、この稼働を250℃より低い温度で行うと、吸蔵されたNOxのかなりの量は還元されず、テールパイプへとスリップし得る。
【0025】
本発明のシステム及び方法は、SCR又はSCRF触媒が許容可能な温度にあること、及び還元剤注入を、吸蔵されたNOxの放出に先立ち開始させ、これによってNOx吸蔵触媒に吸蔵されたNOxを、SCR反応によって変換可能にすることを保証するように、行うことができる。さらに、本発明のシステム及び方法により、システムの設計を、NOx吸蔵触媒がより狭くより低い温度範囲を有するようにすることができ、よってこの触媒の属性を、下流にあるSCR又はSCRF触媒の老化を最小化するように、選択することができる。慣用のNOx吸蔵触媒は、リッチな混合気により高温で(>700℃)脱硫する必要がある。しかしながらこれらの措置により、その稼働寿命の間に、SCR又はSCRF触媒の不活性化が加速する。本発明のシステム及び方法の実施形態で使用可能な好ましい触媒では、リッチな混合気による脱硫の必要がないか、又は<700℃の温度でリッチな混合気により脱硫する必要がなく、これによってその稼働寿命の間に、SCR又はSCRF触媒の不活性化が最小化される。
【0026】
従来技術のシステムの別の例は、以下のものを有する:
EHC(+エンジンアウトの熱/燃料)+SCRF+SCR
【0027】
このようなシステムは、NOxの吸蔵を可能にせず、従ってこのシステムは、SCR又はSCRF触媒ライトオフよりも低い稼働温度ではNOx除去力を有さない。本発明の実施形態に記載したEHCを用いることによって、HCライトオフの達成が保証されることにより、加熱フェーズの間における汚染物質スリップの危険性が最小になる。
【0028】
本発明のシステム及び方法は好ましくは、エンジンのコールドスタートからNOxを吸蔵するために使用することができる。しかしながらより一般的には、加熱要素を、NOx吸蔵触媒からNOxが放出される前に稼働させる。加熱要素のスイッチをいつ入れるかという正確なタイミングは、後処理システムキャリブレーションの戦略による。幾つかの実施形態では、NOxを断続的なパターンでSCR又はSCRF触媒により処理するために、加熱要素を使用することができ、残りの時間の間、NOxは、NOx吸蔵触媒に吸蔵される。このような稼働モードは、本発明のシステム及び方法について特徴的であり得る。なぜならば、NOx吸蔵触媒とSCR機能との間に加熱要素を位置決めすることにより、選択する場合には独立して、双方の触媒の属性を使用するための自由度が得られるからである。加熱要素をNOx吸蔵触媒の前に位置決めする場合、こうすることはできない。
【0029】
上流のNO
x
吸蔵触媒
本発明の実施形態のシステム及び方法は、電気加熱要素の上流に、NOx吸蔵触媒を含む。NOx吸蔵触媒は、特定の条件(一般的には温度及び/又はリッチ/リーン排気条件による)に従って、NOxを吸着、放出及び/又は還元するデバイスを有することができる。NOx吸蔵触媒は例えば、パッシブなNOx吸着材、コールドスタート触媒、NOxトラップなどを有することができる。
【0030】
パッシブなNO
x
吸着材
パッシブなNOx吸着材とは、低温で、又は低温を下回る温度ではNOxを吸着し、低温を超える温度では吸着されたNOxを放出するために効果的なデバイスである。パッシブなNOx吸着材は、貴金属、及び小細孔モレキュラーシーブを有することができる。貴金属は好ましくは、パラジウム、白金、ロジウム、金、銀、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、又はこれらの混合物である。好ましくは、低温とは約200℃、約250℃、又は約200℃~約250℃である。適切なパッシブなNOx吸着材の例は、米国特許出願公開第20150158019号に記載されており、その内容は参照によりその全体が本願に組み込まれるものとする。
【0031】
小細孔モレキュラーシーブは、あらゆる天然又は合成のモレキュラーシーブであってよく、これにはゼオライトが含まれ、好ましくはアルミニウム、ケイ素、及び/又はリンから構成されている。モレキュラーシーブは通常、酸素原子を共有することによって連結されたSiO4、AlO4及び/又はPO4の三次元的配置を有するが、これは二次元構造であってもよい。モレキュラーシーブの骨格構造は通常、アニオン性であり、この骨格構造は電荷補償カチオン、通常はアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素(例えばNa、K、Mg、Ca、Sr及びBa)、アンモニウムイオン、並びにプロトンにより平衡されている。金属組込型モレキュラーシーブを作製するために、その他の金属(例えばFe、Ti及びGa)が、小細孔モレキュラーシーブの骨格構造に組み込まれていてよい。
【0032】
小細孔モレキュラーシーブは好ましくは、アルミノケイ酸塩モレキュラーシーブ、金属置換されたアルミノケイ酸塩モレキュラーシーブ、アルミノホスフェートモレキュラーシーブ、又は金属置換されたアルミノホスフェートモレキュラーシーブから選択される。小細孔モレキュラーシーブはより好ましくは、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、及びZONの骨格型の種類、並びにこれら2つ以上の混合体又は連晶を有するモレキュラーシーブである。小細孔モレキュラーシーブの特に好ましい連晶には、KFI-SIV、ITE-RTH、AEW-UEI、AEI-CHA、及びAEI-SAVが含まれる。小細孔モレキュラーシーブは最も好ましくは、AEI若しくはCHA、又はAEI-CHAの連晶である。
【0033】
適切なパッシブなNOx吸着材は、あらゆる既知の手段によって調製することができる。例えば、あらゆる既知の手段によって小細孔モレキュラーシーブに貴金属を添加して、パッシブなNOx吸着材を形成することができる。例えば、(硝酸パラジウムのような)貴金属化合物を、含侵、吸着、イオン交換、インシピエントウェットネス、沈殿などによって、モレキュラーシーブに担持することができる。その他の金属も、パッシブなNOx吸着材に添加することができる。パッシブなNOx吸着材中にある貴金属のうち一部(添加された合計貴金属の1パーセント超)は好ましくは、小細孔モレキュラーシーブの細孔内に位置している。より好ましくは、貴金属の合計量の5%超が、小細孔モレキュラーシーブの細孔内に位置しており;さらにより好ましくは、小細孔モレキュラーシーブの細孔内に位置している貴金属の合計量の10%より多く、又は25%より多く、又は50%より多くであり得る。
【0034】
パッシブなNOx吸着材は好ましくは、フロースルー基材、又はフィルタ基材をさらに有する。パッシブなNOx吸着材は、フロースルー又はフィルタ基材の上に被覆され、好ましくはウォッシュコート手順を用いてフロースルー又はフィルタ基材の上に堆積され、パッシブなNOx吸着材システムが製造される。
【0035】
コールドスタート触媒
コールドスタート触媒とは、低温で、又は低温を下回る温度では、NOx及び炭化水素(HC)を吸着し、低温を上回る温度では吸着されたNOx及びHCを変換及び放出するために効果的なデバイスである。好ましくは、低温とは約200℃、約250℃、又は約200℃~約250℃である。適切なコールドスタート触媒の例は、国際公開第2015085300号に記載されており、その内容は参照により本願にその全体が組み込まれるものとする。
【0036】
コールドスタート触媒は、モレキュラーシーブ触媒と、担持型白金族金属触媒とを有することができる。モレキュラーシーブ触媒は、貴金属及びモレキュラーシーブを有するか、又は実質的にこれらから成っていてよい。担持型白金族金属触媒は、1つ又は複数の白金族金属と、1つ又は複数の無機酸化物担体とを含む。貴金属は好ましくは、パラジウム、白金、ロジウム、金、銀、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、又はこれらの混合物である。
【0037】
モレキュラーシーブは、あらゆる天然又は合成のモレキュラーシーブであってよく、これにはゼオライトが含まれ、好ましくはアルミニウム、ケイ素、及び/又はリンから構成されている。モレキュラーシーブは通常、酸素原子を共有することによって連結されたSiO4、AIO4及び/又はPO4の三次元的配置を有するが、これは二次元構造であってもよい。モレキュラーシーブの骨格構造は通常、アニオン性であり、この骨格構造は電荷補償カチオン、通常はアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素(例えばNa、K、Mg、Ca、Sr及びBa)、アンモニウムイオン、並びにプロトンにより平衡されている。
【0038】
モレキュラーシーブは好ましくは、最大環サイズが8個の四面体原子である小細孔モレキュラーシーブ、最大環サイズが10個の四面体原子である中細孔モレキュラーシーブ、又は最大環サイズが12個の四面体原子である大細孔モレキュラーシーブであり得る。モレキュラーシーブはより好ましくは、AEI、MFI、EMT、ERI、MOR、FER、BEA、FAU、CHA、LEV、MWW、CON、EUO又はこれらの混合体の骨格構造を有する。
【0039】
担持型白金族金属触媒は、1つ又は複数の白金族金属(「PGM」)と、1つ又は複数の無機酸化物担体とを有する。PGMは、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、又はこれらの組み合わせであってよく、最も好ましくは、白金及び/又はパラジウムである。無機酸化物担体は最も一般的には、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族及び第14族元素の酸化物を含む。有用な無機酸化物担体は好ましくは、10~700m2/gの範囲内の表面積、0.1~4mL/gの範囲内の細孔容積、及び約10~1000オングストロームの細孔直径を有する。無機酸化物担体は好ましくは、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、ニオビア、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、又はそれらのうち2種以上の混合酸化物若しくは複合酸化物、例えばシリカ-アルミナ、セリア-ジルコニア又はアルミナ-セリア-ジルコニアである。アルミナ及びセリアは特に好ましい。
【0040】
担持型白金族金属触媒は、あらゆる既知の方法によって調製することができる。好ましくは、1つ又は複数の白金族金属が、あらゆる既知の手段によって1つ又は複数の無機酸化物上に負荷されて担持型PGM触媒を形成し、添加のやり方は、特に重要ではない。例えば、(硝酸白金のような)白金化合物を、含侵、吸着、イオン交換、インシピエントウェットネス、沈殿などによって、無機酸化物に担持することができる。その他の金属、例えば鉄、マンガン、コバルト及びバリウムも、担持型PGM触媒に添加することができる。
【0041】
本発明のコールドスタート触媒は、従来技術で良く知られたプロセスによって調製することができる。モレキュラーシーブ触媒、及び担持型白金族金属触媒を物理的に混合して、コールドスタート触媒を作製することができる。コールドスタート触媒は好ましくは、フロースルー基材又はフィルタ基材をさらに有する。1つの実施形態では、モレキュラーシーブ触媒、及び担持型白金族金属触媒を、フロースルー又はフィルタ基材の上に被覆し、好ましくはウォッシュコート手順を用いてフロースルー又はフィルタ基材の上に堆積させて、コールドスタート触媒システムを作製する。
【0042】
NO
X
トラップ
NOXトラップとは、リーン排気条件ではNOXを吸着し、リッチ条件では吸着されたNOXを放出し、放出されたNOXを還元してN2にするデバイスである。
【0043】
本発明の実施形態のNOXトラップは、NOX吸蔵のためのNOX吸着材と、酸化/還元触媒とを含むことができる。酸化窒素は通常、酸化触媒の存在下で、酸素と反応してNO2を生成する。次に、無機硝酸塩の形態のNOx吸着材により、NO2が吸着される(例えばBaO又はBaCO3は、NOx吸着材上でBa(NO3)2に変換される)。最後に、エンジンがリッチ条件下で作動する場合、吸蔵された無機硝酸塩は分解してNO又はNO2を形成し、これがその後、還元触媒の存在下で、一酸化炭素、水素及び/又は炭化水素との反応によって(又はNHX若しくはNCO中間体を経由して)還元されてN2を形成する。通常、窒素酸化物は、排気流内で熱、一酸化炭素及び炭化水素の存在下で窒素、二酸化炭素及び水に変換される。
【0044】
NOX吸着材成分は好ましくは、アルカリ土類金属(例えばBa、Ca、Sr及びMg)、アルカリ金属(例えばK、Na、Li及びCs)、希土類金属(例えばLa、Y、Pr及びNd)、又はこれらの組合せである。これらの金属は通常、酸化物の形態で見られる。酸化/還元触媒は、1つ又は複数の貴金属を含有することができる。適切な貴金属には、白金、パラジウム及び/又はロジウムが含まれ得る。好ましくは、酸化作用を実行させるために白金が含まれ、還元作用を実行させるためにロジウムが含まれる。酸化/還元触媒及びNOx吸着材は、排気システム内で使用するために、無機酸化物のような支持体材料上に負荷されていてよい。
【0045】
加熱要素
電気加熱要素は、内燃機関の排気通路内で、NOx吸蔵触媒の下流であって、NOx還元触媒の上流に備えられている。あらゆる適切な電気加熱要素が、本発明のシステム及び方法に備えられていてよい。
【0046】
1つの態様において電気加熱要素は、端部と、各端部にそれぞれに配置された電力接続部とを有する電気加熱ハニカム体とを備える。ハニカム体は、電気的な絶縁ギャップにわたるねじれ状電流路(twisting current path)を画定することができる。
【0047】
本明細書に記載するように、電気加熱要素が触媒/吸収材と連結されている態様では、電気的に絶縁性の支持要素は、ハニカム体を少なくとも1つの触媒担持体に固定することができる。或いは、加熱要素のための支持体として役立つ触媒担持体は、触媒活性被覆を有することができる。例えば、触媒活性被覆は、排ガス中にある成分、特に一酸化炭素及び炭化水素の酸化若しくは還元、又はNOxの還元を促進させることができる。加熱可能なハニカム体には、このような触媒活性層が備えられていてもよい。
【0048】
触媒担持体及び/又はハニカム体は、ハニカムを形成する平滑で波型のシート状金属層から作成されていてよい。
【0049】
ハニカム体は大きな表面積を有することができ、これによってその中を流れる排ガスへの良好な熱伝導が保証される。その結果、また放射により、発生する熱を排ガスへと、又は下流の構成要素へと迅速に移動させることができる。放射により、排ガス方向の上流に配置された触媒担持体へと受け渡され得る加熱出力は、今度はこの担持体から排ガスへと受け渡され、これによって完全な加熱出力が、下流の構成要素にとって利用可能になる。
【0050】
幾つかの態様においてハニカム体は、電流路がほぼメアンダ状又はらせん状の形状を有するように、成形されていてよい。
【0051】
本発明の幾つかの態様において、電気加熱要素は、触媒基材と単一のユニットを形成する。例えば、電気加熱要素は、NOx吸蔵触媒と単一のユニットを形成することができる。この場合、NOx吸蔵触媒は、ユニットの上流端部で被覆されていてよく、電気加熱要素は、ユニットの下流端部にある。同様に、電気加熱要素は、特定のシステムのために望まれるように、触媒が、ユニットの上流端部又は下流端部で被覆されている場合、選択的還元触媒、加水分解触媒、又は酸化触媒と単一のユニットを形成することができる。好ましくは、電気加熱要素がNOx吸蔵触媒と単一の基材を形成する場合、基材は(加熱されない)前部ゾーンと、(加熱される)後部ゾーンとの間に熱的な絶縁部を備える。しかしながら一般的には、NOx吸蔵触媒と加熱要素とを2つの異なる基材に備えることによって、電気加熱要素によるNOx吸蔵触媒の加熱を最小限にすることが好ましい。或いは、電気加熱要素は、例えば選択的還元触媒、加水分解触媒又は酸化触媒のような触媒層によって、完全に被覆されていてよい。
【0052】
電気加熱要素は、システムのその他のいずれかの構成要素から隔離された構成要素であってよい。或いは、電気加熱要素は、システムの別の構成要素(例えばこれらに限られないが、SCR/SCRF触媒、パティキュレートフィルタ、ミキサ又は加水分解触媒のような構成要素)の一部として連結されていてよい。
【0053】
電気加熱要素は、10℃/秒までの迅速な温度上昇を発生可能なように設計されていてよく、好ましくは稼働させるために2kw超を必要としない。SCR又はSCRF触媒に入る排ガス温度が150℃を上回るときに、好ましくはNOx吸蔵触媒に入る排ガス温度が250℃に到達する前に、電気加熱要素を稼働させるのが好ましいだろう。
【0054】
下流のNO
x
還元触媒
加熱要素から下流にある適切なNOx還元触媒は、選択的接触還元(SCR)触媒、又はフィルタを有する選択的接触還元触媒(SCRF)を備える。SCR触媒とは、窒素化合物(例えばアンモニア若しくは尿素)との、又は炭化水素(リーンNOx還元)との反応により、NOxをN2に還元する触媒である。SCR触媒は、バナジア-チタニア触媒、バナジア-タングスタ-チタニア触媒、又は遷移金属/モレキュラーシーブ触媒から構成されていてよい。遷移金属/モレキュラーシーブ触媒は、遷移金属及びモレキュラーシーブ、例えばアルミノケイ酸塩ゼオライト又はシリコアルミノリン酸塩を含む。
【0055】
遷移金属は、クロム、セリウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル及び銅、並びにこれらの混合物から選択され得る。鉄及び銅が、特に好ましいことがある。
【0056】
モレキュラーシーブには、ベータゼオライト、ホージャサイト(例えばX-ゼオライト又はY-ゼオライト、これにはNaY及びUSYが含まれる)、L-ゼオライト、ZSMゼオライト(例えばZSM-5、ZSM-48)、SSZ-ゼオライト(例えばSSZ-13、SSZ-41、SSZ-33)、フェリエライト、モルデナイト、チャバサイト、オフレタイト、エリオナイト、クリノプチロライト、シリカライト、リン酸アルミニウムゼオライト(これにはSAPO-34のような金属アルミノリン酸塩が含まれる)、メソ多孔性ゼオライト(例えばMCM-41、MCM-49、SBA-15)、又はそれらの混合物が含まれ得る。好ましくはモレキュラーシーブには、ベータゼオライト、フェリエライト、又はチャバサイトが含まれ得る。好ましいSCR触媒には、Cu-CHA、例えばCu-SAPO-34、Cu-SSZ-13及びFe-ベータゼオライトが含まれる。
【0057】
基材
NOx吸蔵触媒及びSCR触媒はそれぞれさらに、フロースルー基材又はフィルタ基材を備えることができる。1つの実施形態では、触媒/吸着材がフロースルー又はフィルタ基材上に被覆されていてよく、好ましくはウォッシュコート手順を用いてフロースルー又はフィルタ基材上に堆積されている。
【0058】
SCR触媒とフィルタとの組み合わせは、選択的接触還元フィルタ(SCRF触媒)として知られている。SCRF触媒とは、SCRの機能とパティキュレートフィルタの機能とを組み合わせた単一基材デバイスであり、所望の場合には、本発明の実施形態にとって適切である。本願を通じて、SCR触媒についての説明及び言及は、適切であれば、SCRF触媒にも当てはまると理解される。
【0059】
フロースルー又はフィルタ基材とは、触媒/吸収材の構成要素を収容可能な基材である。基材は、好ましくは、セラミック基材又は金属基材である。セラミック基材は、あらゆる適切な耐火性材料、例えばアルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、マグネシア、ゼオライト、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩及びメタロアルミノケイ酸塩(例えばコーディエライト及びスポジュメン)、又はこれらのいずれか2つ以上の混合物若しくは混合酸化物から作られていてよい。コーディエライト、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、及び炭化ケイ素が、特に好ましい。
【0060】
金属基材は、あらゆる適切な金属から作られてよく、特に耐熱性の金属及び金属合金、例えばチタン及びステンレス鋼、また他の微量金属に加えて、鉄、ニッケル、クロム及び/又はアルミニウムを含有するフェライト合金である。
【0061】
フロースルー基材は好ましくは、多数の小さくて平行な薄壁を有するチャンネルを備えるハニカム構造を有するフロースルーモノリスであり、これらのチャンネルは、基材を軸方向に通り、基材の入口部又は出口部から全体に延びるものである。基材のチャンネル断面は、いかなる形状でもよいが、好ましくは正方形、シヌソイド形、三角形、長方形、六角形、台形、円形、又は楕円形である。
【0062】
フィルタ基材は好ましくは、ウォールフロー式モノリスフィルタである。ウォールフローフィルタのチャンネルは、交互にブロックされており、これによって排ガス流は、入口部からチャンネルに入り、次いでチャンネル壁面を通じて流れて、出口部につながる異なるチャンネルからフィルタを出ることが可能になる。こうして排ガス流内の微粒子は、フィルタ内に捕捉される。
【0063】
触媒/吸収材は、あらゆる既知の手段、例えばウォッシュコート手順により、フロースルー又はフィルタ基材に添加することができる。
【0064】
還元剤/尿素注入部
NOx還元触媒がSCR又はSCRF触媒である場合、排気システムは、SCR又はSCRF触媒の上流に、排気システム内へと窒素還元剤を導入するための手段を備えることができる。排気システム内へ窒素還元剤を導入するための手段が、SCR又はSCRF触媒のすぐ上流にある(例えば、窒素還元剤を導入するための手段とSCR又はSCRF触媒との間に介在する触媒が存在しない)ことが、好ましいこともある。
【0065】
還元剤は、排ガス内へと還元剤を導入するためのあらゆる適切な手段によって、流れている排ガスに添加される。適切な手段には、注入器、噴霧器、又は供給装置が含まれる。このような手段は、当技術分野でよく知られている。
【0066】
システムで使用するための窒素還元剤は、アンモニア自体、ヒドラジン、又は尿素、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム及びギ酸アンモニウムから成る群から選択されるアンモニア前駆体であってよい。尿素が特に好ましい。
【0067】
排気システムはまた、排ガス内のNOxを還元するために、排ガス内への還元剤の導入を制御する手段を備えることができる。好ましい制御手段は、電子制御ユニット、任意でエンジン制御ユニットを備えることができ、さらに、NOx還元触媒の下流に位置するNOxセンサを備えることができる。
【0068】
後処理デバイスを有する排気システム
本発明のシステム及び方法は、通常の稼働温度で内燃機関排ガスから汚染物質を除去可能な、1つ又は複数のさらなる後処理デバイスを備えることができる。排気システムは、前述の電気加熱要素と、NOx吸蔵触媒及びSCR/SDRFと、以下のものから選択される1つ又は複数のさらなる触媒構成要素とを有することができる:(1)SCR/SCRF触媒、(2)パティキュレートフィルタ、(3)NOxトラップ(NOx吸蔵触媒とも呼ばれる)、(4)三元触媒、(5)酸化触媒、又はこれらのあらゆる組み合わせ。
【0069】
これらの後処理デバイスは、本技術分野でよく知られている。前述のように、選択的接触還元(SCR又はSCRF)触媒とは、窒素化合物(例えばアンモニア若しくは尿素)との、又は炭化水素(リーンNOx還元)との反応により、NOxをN2に還元する触媒である。典型的なSCR又はSCRF触媒は、バナジア-チタニア触媒、バナジア-タングスタ-チタニア触媒、又は金属/ゼオライト触媒、例えば鉄/ベータゼオライト、銅/ベータゼオライト、銅/SSZ-13、銅/SAPO-34、Fe/ZSM-5、又は銅/ZSM-5を含む。選択式接触還元フィルタ(SCRF)とは、SCRの機能と、パティキュレートフィルタの機能とを組み合わせた単一基材デバイスである。これらは、内燃機関からのNOx及び微粒子の排出を減少させるために使用される。フィルタにより捕捉されたスートを破壊することに加えて、炭化水素及び一酸化炭素を酸化するために、パティキュレートフィルタは、SCR触媒被覆に加えて、その他の金属及び金属酸化物成分(例えばPt、Pd、Fe、Mn、Cu及びセリア)を有することもできる。
【0070】
前述のようにNOXトラップは、リーン排気条件ではNOXを吸着し、リッチ条件下では吸着されたNOXを放出し、かつ放出されたNOXを還元してN2を形成するよう、設計されている。NOXトラップは通常、NOX吸蔵成分(例えばBa、Ca、Sr、Mg、K、Na、Li、Cs、La、Y、Pr、及びNd)、酸化成分(好ましくはPt)、及び還元成分(好ましくはRh)を含む。これらの成分は、1つ又は複数の支持体に含まれている。
【0071】
パティキュレートフィルタは、内燃機関の排気から微粒子を減少させるデバイスである。パティキュレートフィルタには、触媒化されたパティキュレートフィルタと、そのままの(触媒化されていない)パティキュレートフィルタが含まれる。(ディーゼル及びガソリン用途のための)触媒化されたパティキュレートフィルタは、フィルタによって捕捉されたスートを破壊することに加えて、炭化水素及び一酸化炭素を酸化するために、金属及び金属酸化物成分(例えばPt、Pd、Fe、Mn、Cu及びセリア)を含有する。
【0072】
三元触媒(TWC)は通常、単独のデバイスでNOxをN2に、一酸化炭素をCO2に、炭化水素をCO2及びH2Oに変換するために、化学量論条件下でガソリンエンジンに使用される。
【0073】
酸化触媒、特にディーゼル酸化触媒(DOC)は、この技術分野でよく知られている。酸化触媒は、COを酸化してCO2にするように、気相炭化水素(HC)及びディーゼル微粒子の有機フラクション(可溶性有機フラクション)を酸化してCO2及びH2Oにするように、設計されている。通常、酸化触媒は、白金及び任意でパラジウムを、表面積の大きい無機酸化物、例えばアルミナ、シリカ-アルミナ及びゼオライト上に有する。
【0074】
例示的実施形態
[NOx吸蔵][EHC]-(還元剤)-[SCR/SCRF]
NOx吸蔵触媒と電気加熱要素とは、連結されていてよい。このような実施形態において加熱要素は、NOx吸蔵触媒(の下流)の直後に設置されている。加熱要素は、NOx吸蔵触媒と同じ基材内に組み合わされていてよく、又はNOx吸蔵触媒とは別個に、しかしながら近くに位置付けられて、設置されていてよい。システムは、加熱要素から下流に、SCR及び/又はSCRF触媒が続く還元剤注入部を備えることができる。任意で、システムはさらに、(1)SCR/SCRF触媒、(2)パティキュレートフィルタ、(3)NOxトラップ(NOx吸蔵触媒とも呼ばれる)、(4)三元触媒、(5)酸化触媒、又はこれらのあらゆる組み合わせを備えることができる。
[NOx吸蔵]-[還元剤注入部]-[EHC]-[SCR/SCRF]
NOx吸蔵触媒と加熱要素とは、連結されていなくてもよい。このような実施形態において加熱要素は、還元剤注入部及び/又はその他の構成要素の下流に位置していてよい。この場合、SCR及び/又はSCRF触媒は、還元剤注入部及び加熱要素の下流に位置していてよい。このような設定において加熱要素は、ミキサ、加水分解触媒、又は小さなSCR/SCRF触媒と連結されていてよい。任意で、システムはさらに、(1)SCR/SCRF触媒、(2)パティキュレートフィルタ、(3)NOxトラップ(NOx吸蔵触媒とも呼ばれる)、(4)三元触媒、(5)酸化触媒、又はこれらのあらゆる組み合わせを備えることができる。
[NOx吸蔵]-[還元剤注入部]-[EHC][SCR/SCRF]
電気加熱要素とSCR/SCRF触媒とは、連結されていてよい。このような実施形態において加熱要素は、SCR/SCRF触媒の下流に直接、設置されていてよい。加熱要素は、SCR/SCRF触媒と同一の基材内で組み合わされていてよく、又は近くに位置付けられていることによって、別個に設置されていてよい。電気加熱要素は、SCR/SCRF触媒と単一のユニットを形成することができる。SCR/SCRF触媒は、ユニットの下流端部で被覆されていてよく、この際に電気加熱要素は、ユニットの上流端部にある。或いは、電気加熱要素は、SCR触媒層によって完全に被覆されていてよい。電気加熱要素/SCR/SCRFのユニットは、NOx吸蔵触媒及び還元剤注入部の下流に位置している。任意で、システムはさらに、(1)SCR/SCRF触媒、(2)パティキュレートフィルタ、(3)NOxトラップ(NOx吸蔵触媒とも呼ばれる)、(4)三元触媒、(5)酸化触媒、又はこれらのあらゆる組み合わせを備えることができる。
【0075】
図1によればシステム(10)は、還元剤注入部(14)が続くNO
x吸蔵触媒(12)を有することができる。電気加熱要素/SCR(F)触媒ユニット(16)は、下流に位置している。電気加熱要素は、SCR/SCRF触媒と、単一のユニット(16)を形成することができる;SCR/SCRF触媒は、ユニット(16)の下流端部で被覆されていてよく、この際に電気加熱要素は、ユニット(16)の上流端部にあり、或いは電気加熱要素は、SCR触媒層によって完全に被覆されて、ユニット(16)を形成することができる。還元剤注入部(18)は、ユニット(16)から下流に位置しており、これにSCR(F)触媒(20)が続く。
【0076】
方法
本発明は、内燃機関からの排ガスを処理するための方法も含む。本方法は、NOxをNOx吸蔵触媒に低温又は低温よりも低い温度で吸着させること、低温を上回る温度で、NOx吸蔵触媒からNOxを熱により脱着させること、下流にあるNOx還元触媒を、電気加熱要素で加熱すること、及び脱着されたNOxを、NOx還元触媒により触媒で除去することを含む。好ましくは、低温は約200℃、約250℃、又は約200~250℃である。
【0077】
排ガスはさらに、NOx吸蔵触媒の下流にあるさらなる触媒構成要素で処理することができ、この触媒構成要素には、さらなるSCR/SCRF触媒、パティキュレートフィルタ、NOx吸着触媒、三元触媒、酸化触媒、又はこれらの組み合わせが含まれる。
【0078】
電気加熱要素は、10℃/秒までの迅速な温度上昇を発生させることができ、好ましくは稼働させるために2kw超を必要としない。SCR又はSCRF触媒に入る排ガス温度が150℃を下回る場合、好ましくはNOx吸蔵触媒に入る排ガス温度が250℃に到達する前に、電気加熱要素を稼働させるのが好ましいだろう。
【0079】
一般的には加熱要素を、NOx吸蔵触媒からNOxが放出される前に稼働させる。加熱要素のスイッチをいつ入れるかという正確なタイミングは、後処理システムキャリブレーションの戦略による。NOxを断続的なパターンでSCR又はSCRF触媒により処理するために、加熱要素を使用することができ、残りの時間の間、NOxは、NOx吸蔵触媒に吸蔵される。このような稼働モードは、本発明のシステム及び方法について特徴的であり得る。なぜならば、NOx吸蔵触媒とSCR機能との間に加熱要素を位置決めすることにより、選択する場合には独立して、双方の触媒の属性を使用するための自由度が得られるからである。加熱要素をNOx吸蔵触媒の前に位置決めする場合、こうすることはできない。
【0080】
本発明のシステムはまた、ハイブリッド式の電動モータ及び内燃機関を動力とする車両において、さらなる利点をもたらすことができる。このような車両では、必要とされる動力が増加する間に、SCRの排ガス温度がライトオフ温度を下回ると、必要とされる動力の一部が電動モータから、以下の目的のために得られる:a)下流にあるSCR触媒のEHC加熱に先立ち、排ガス温度の上昇を低減させ、これによってNOx吸蔵触媒からのNOx放出を減少させるため、及びb)排ガスの質量流量が、エンジンの動力のみを使用する車両と比較して低いので、EHC加熱モードの間にSCRの加熱を改善するため。
【0081】
本発明はまた、EHCの加熱フェーズと、吸蔵触媒の熱によるパージとを組み合わせる方法を含む。NOxは、熱によるパージを短時間発生させることによって、NOx吸蔵触媒から脱着可能なことが判明している。熱による短時間のパージは、CSFスート再生のために使用する条件と同様であってよく、又はラムダ1稼働モードに近くてよく、これはNOxを放出する際に、非常に効率的であることが判明している。幾つかの実施形態において、熱によるパージは、30秒未満、25秒未満、20秒未満、15秒未満、10秒未満、5秒未満、約1秒~約30秒、約5秒~約25秒、又は約10秒~約20秒、継続し得る。
【0082】
熱によるパージを所定の時間で計画することによって、所望の時間に、NOx放出とSCR(F)稼働との間で最適化されたオーバーラップ(触媒の温度が、尿素注入及び高いNOx変換のために充分に高いことを意味する)を保証するために必要な持続時間にわたり、SCR(F)を加熱するためのEHC加熱を引き起こすことができる。
【0083】
本発明の幾つかの実施形態においてシステムは、熱量が大きい/伝導性が低い部分(例えば金属基材又はフィルタ基材)が続く加熱要素を備え、このような基材には例えば、チタン酸アルミニウム、コーディエライト及び/又は炭化ケイ素が含まれる。熱量が大きい/伝導性が低い部分を付加することにより、システムに対してさらなる利点をもたらすことができる。なぜならば、加熱された部分により、EHC加熱と、NOx吸蔵触媒からの活性NOx放出性とを調和させる厳密性をより下げることが可能になるからである。
【0084】
以下の実施例は本発明を単に例示するに過ぎず、当業者であれば、本発明の思想及び特許請求の範囲内にある多くのバリエーションを認識するであろう。
【実施例0085】
実施例1
温度及びNO
x累積質量差異を、
図1に図示したシステムのようにPNA/dCSC/+SCR-EHC+SCRFを備えるシステムにおいて、時間の関数として測定した。
図2における結果は、NO
x吸着材と、下流にあるNO
x還元触媒との典型的なミスマッチを示している。NO
x吸着材は、約250℃の温度でNO
xを放出しているが、NO
x還元触媒はこの温度では効果的ではなく、第一のNO
x放出をかなり逃すであろう。
【0086】
温度及びNOx累積質量を、加熱ありの、及び加熱なしのシステムにおいて時間の関数として特定するために、試験を行った。排ガスについて、PNA/dCSCによって、及びPNA/dCSCとポストSCRF位置との間で、加熱あり、また加熱なしで、試料を採取した。
【0087】
その結果が、
図3及び4に示されている。
図3には、ポストEHC-SCRで測定した温度がハイライトされており、これによりEHC加熱モードありの稼働と、EHC加熱モードなしの稼働が、描かれている。EHCにより熱を加えることによって、NO
x還元触媒(SCR)の活性を、熱を加えない場合よりも早く引き起こし可能なことが保証される。
図4ではこの熱の利点が、(特にこの試験では2kWの電力で)EHCを稼働させた際に、先に記載したシステムの後に測定された累積NO
xの減少により、測定されている。
【0088】
実施例2
この実施例は、熱管理(エンジンの熱)によってPNAのNOx吸蔵-放出特性を制御可能かどうかについて試験しており、さらにEHC-SCRを、NOx吸蔵触媒からの熱によるNOx放出を捕らえるために使用可能かどうかについて試験している。
【0089】
以下の構成を有するシステムをテストした:NOx吸蔵触媒、還元剤注入部、電気加熱要素/SCR、還元剤注入部、SCRF、SCR。このテストサイクルは、NEDCのECE部分であった。これによって4つのECEごとに、リーンパージが引き起こされる。リーンパージによるNOx吸蔵触媒のクリーニングは、脱NOxモードのエンジンを用いた15秒のリーンパージ(ラムダ1.1)を含んでいた。リーンパージによるNOx吸蔵触媒のクリーニング+電気加熱要素/SCRのために、15秒のリーンパージより前に、1.5kWの加熱を、パージに先立つこと50秒で開始した(持続時間は60秒)。
【0090】
測定は、吸蔵及び放出特性を理解するために、PNA/dCSCについて行った。次いで、EHC-SCRへの、アルファ5という尿素注入比率(アンモニアの、NOxに対する比率)を、2つのテストにわたって、1つはEHC加熱なし、1つはEHC加熱ありで適用した。
【0091】
その結果が、
図5に示されている。ここでは、エンジンからの累積NO
x質量が、加熱あり、及び加熱なしのポスト後処理システムと比較されている。これによればPNA/dCSCからのNO
xの放出が、脱NO
xパージによって熱により制御される(ラムダは1に近い)。前述のように戦略的に加熱部を加えることによって、後処理システムの後に試料採取したNO
xが低減される。よって、EHC-SCRを加熱するための戦略的なアプローチをエンジンモードと連結させてPNA/dCSCからNO
xを放出することができ、これによって後処理システムからのNO
x変換上昇がもたらされる。